JP4362568B2 - 錫−銅合金電気めっき液 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、錫−銅合金めっき液、錫−銅合金めっき方法及び錫−銅合金めっき皮膜が形成された物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリント回路配線板やリードフレーム等の電子部品の接点部分には、ハンダ濡れ性の向上等を目的として、錫と鉛からなるハンダ合金めっきが広く用いられている。
【0003】
ハンダ合金めっきは、ウィスカーの問題のない低融点の被膜を与え、浴管理が比較的容易であり、めっき皮膜の外観やハンダ付け性にも優れたものであるが、浴中に含まれる鉛が有害物質であることから、環境汚染を考慮して鉛を含有しない錫系合金(鉛フリーハンダ合金)めっき皮膜について、種々検討が進められている。
【0004】
鉛フリーハンダ合金としては、錫−銀系、錫−亜鉛系、錫−ビスマス系、錫−銅系などの各種の合金が提案されており、これら合金に対応して各種の合金めっき液が開発されている。
【0005】
これらの合金めっき液の内で、錫−銀合金めっき液と錫−ビスマス合金めっき液については、浴中に含まれる銀とビスマスが、錫よりも貴な析出電位を有することから、素材(銅、42アロイ合金など)や陽極(錫、錫合金)に置換し易く、また、沈殿が発生し易く、めっき液の寿命が短いという欠点がある。更に、処理コストが高く、めっき液の管理も困難である。また、錫−亜鉛合金めっき液は、低コストで管理も比較的容易であるが、合金皮膜が酸化され易く、ハンダ接合性が低下し易いという欠点がある。
【0006】
これに対して、錫−銅合金めっき液は、低コストで浴管理が容易であり、しかも形成されるめっき皮膜は、他の金属と低融点合金を作りにくいので、ハンダ等の接合材の種類についての制限が少ない等各種の点で優れた特性を有する錫系合金めっき液である。錫−銅合金めっき液としては、例えば、特開平8−13185号公報には、Sn2+イオン、Cu2+イオン、非イオン界面活性剤等を含有するめっき液が記載されており、このめっき液は、酸成分としてアルカンスルホン酸又はアルカノールスルホン酸を用いることが好ましいとされている。しかしながら、酸成分としてアルカンスルホン酸又はアルカノールスルホン酸を使用するめっき液は、硫酸単純浴に比べてコストが高いという欠点がある。また、特開平10−306396号公報には、第1錫塩、銅、錯化剤、光沢剤等を含有するめっき液が記載されているが、このめっき液は、有機酸等の錯化剤を含有するために排水処理が困難である。さらに、特開平11−181589号公報には、有機スルホン酸、有機スルホン酸スズ塩、有機スルホン酸銅塩、クエン酸またはクエン酸塩、及び界面活性剤を含有するめっき液が記載されているが、このめっき液も、有機スルホン酸を含有するためにコストが高く、クエン酸等の錯化剤が含まれるために排水処理性が悪いという欠点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の主な目的は、ハンダ接合性の良好な錫―銅合金めっき皮膜を形成でき、しかも低コストで排水処理が容易な錫―銅合金めっき液を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の如き従来技術の問題点を解決するため鋭意研究を重ねてきた。その結果、酸成分として硫酸を含有する錫―銅合金めっき液中に界面活性剤とピリジン類を同時に配合しためっき液によれば、平滑で良好な表面状態であって、優れたハンダ接合性を有する錫―銅合金めっき皮膜を形成できることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、下記の錫−銅合金めっき液、錫−銅合金めっき方法及び錫−銅合金めっき皮膜が形成された物品を提供するものである。
1.第1錫塩、銅塩、硫酸、界面活性剤及びピリジン類を含有する水溶液からなる錫−銅合金電気めっき液であって、
ピリジン類が、ピコリン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸アミド、イソニコチン酸アミド、ピリジン−3−スルホン酸アミド及びピリジンスルホン酸類からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物である錫−銅合金電気めっき液。
2.さらに、アクリルアミド化合物、アルデヒド化合物及びケトン化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物を含有する上記項1に記載の錫−銅合金電気めっき液。
3.上記項1又は2に記載の錫−銅合金電気めっき液中で、被めっき物を陰極として電解することを特徴とする錫−銅合金めっき皮膜の形成方法。
4.上記項3に記載の方法で錫−銅合金めっき皮膜が形成された物品。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の錫−銅合金電気めっき液は、第1錫塩、銅塩、硫酸、界面活性剤及びピリジン類を含有する水溶液である。
【0011】
本発明のめっき液で用いる第1錫塩としては、めっき液に可溶な化合物であれば特に限定されず、例えば、塩化第一錫、硫酸第一錫、酸化第一錫、ピロリン酸第一錫などを用いることができる。特に、本発明のめっき液は、酸成分として硫酸を含有することから、硫酸第一錫が好ましい。第1錫塩は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0012】
第1錫塩の配合量は、特に限定的ではなく、めっき条件などにより適時設定すればよいが、通常は、錫(II)金属量として、0.1〜100g/l程度とすればよく、バレルめっき、ラックめっき等を行う場合は、0.1〜50g/l程度とすることが好ましく、高速めっきを行う場合は、20〜100g/l程度とすることが好ましい。第1錫塩の濃度が低すぎると析出効率が低下して、所定の膜厚のめっき皮膜を形成することが困難となり、作業条件に制約が生じるため好ましくない。また、配合量が多すぎると、めっき液中に完全に溶解させることが難しくなり、また経済的にも望ましくない。
【0013】
本発明のめっき液で用いる銅塩としては、めっき液に可溶な化合物であれば特に限定されず、例えば、硫酸銅、硝酸銅、塩化第二銅、炭酸銅、ピロリン酸銅などを用いることができ、特に、硫酸銅が好ましい。銅塩は、一種単独または二種以上を混合して用いることができる。
【0014】
銅塩の配合量は、目的とする錫−銅合金皮膜の組成に応じて適宜変更することができるが、通常、めっき液中の銅塩と第1錫塩の配合割合として、銅:錫(金属分のモル比)=1:10〜200程度の範囲とすることが適当である。
【0015】
形成される錫−銅合金めっき皮膜では、銅の含有率が高くなると皮膜の融点が上昇してハンダ接合性が低下する傾向があり、接点材料として用いるためには、銅含有率を10重量%以下とすることが望ましい。また、銅の含有率が低くなると、純錫皮膜と同程度の接合特性が得られるが、実装後においてウィスカーと呼ばれる針状突起が生成し易くなり、電子回路の信頼性が低下するため好ましくない。このため、銅含有率は、0.1重量%程度以上とすることが好ましい。特に、ハンダ接合性を重視する場合は、銅含有率を0.5〜5重量%の範囲とすることが好ましい。
【0016】
本発明のめっき液では、上記した銅塩と第1錫塩の配合割合の範囲内において、第1錫塩の比率を多くすると形成されるめっき皮膜中の錫の比率が増加するので、目的とする錫−銅合金皮膜の組成に応じて、上記範囲内で銅塩と第1錫塩のの配合割合を適宜決定すればよい。
【0017】
本発明のめっき液には、金属成分を溶解し、電導性を維持するために、酸成分として硫酸を配合する。硫酸は安価であり、設備などの腐食性も低い点で有利な酸成分である。硫酸の配合量は、98%硫酸として50〜250g/l程度とすることが好ましい。硫酸濃度が高すぎると、皮膜特性に対して大きな影響は無いが、めっき液の汲み出しに伴い使用量が増大するので経済的に好ましくない。一方、硫酸濃度が低すぎると、金属成分(特に錫塩)の溶解性が低下して、不溶性の沈殿が生成するために好ましくない。
【0018】
本発明のめっき液では、界面活性剤は、析出粒子の素材への密着性を確保し、めっき皮膜のパウダー化を抑制する働きをするものと思われる。界面活性剤としては、めっき液に可溶であれば特に限定されないが、例えば、HLBが11程度以上のポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル型、ポリオキシエチレン多核フェノールエーテル型、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル型、ポリオキシエチレンナフトールエーテル型、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンナフトールエーテル型、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリアミン型などの非イオン性界面活性剤;アルキル硫酸塩型、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩型などのアニオン性界面活性剤;アルキルベタイン型、アルキルアミドベタイン型などの両性界面活性剤等を使用することができる。これらの界面活性剤は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0019】
界面活性剤の配合量は、0.1〜50g/lとすることが好ましく、0.5〜20g/l程度とすることがより好ましい。界面活性剤の配合量が多すぎても、上記した効果を増大させることができないので不経済であり、しかもめっき液の発泡が激しくなり、環境に対して悪影響がある点でも好ましくない。また、配合量が少なすぎると、密着性の良いめっき皮膜を形成することが困難になる。
【0020】
本発明のめっき液では、ピリジン類を配合することによって、析出粒子を微細化して、皮膜表面を平滑にし、優れたハンダ接合性を有する無光沢から半光沢のめっき皮膜を得ることができる。
【0021】
ピリジン類としては、めっき液に可溶であれば特に限定されず、ピリジンの他に、可溶性のピリジンの各種誘導体を用いることができる。好ましいピリジン類の具体例としては、ピリジン;2−ピリジンメタノール、3−ピリジンメタノール、4−ピリジンメタノール、2,6−ピリジンジメタノール、2−ピリジンエタノール、4−ピリジンエタノール、6−メチル−2−ピリジンエタノール、5−エチル−2−ピリジンエタノールなどのピリジルアルコール;2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、2,3−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、2,3,6−トリアミノピリジンなどのアミノピリジン;α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−プロピルピリジン、4−プロピルピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジンなどのアルキル(C1〜C3)ピリジン;ピコリン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸などのピリジンカルボン酸、これらのピリジンカルボン酸のアルカリ金属塩などのピリジンカルボン酸類;ケリダム酸、キノリン酸、ルチジン酸、イソシンコメロン酸、ジピコリン酸、シンコメロン酸、ジニコチン酸などのピリジンジカルボン酸、これらのピリジンジカルボン酸のアルカリ金属塩などのピリジンジカルボン酸類;2,3,5−ピリジントリカルボン酸、2,3,6−ピリジントリカルボン酸などのピリジントリカルボン酸、これらのピリジントリカルボン酸のアルカリ金属塩などのピリジントリカルボン酸類;2,3,4,6−ピリジンテトラカルボン酸などのピリジンテトラカルボン酸、これらのピリジンテトラカルボン酸のアルカリ金属塩などのピリジンテトラカルボン酸類;ピリジン−2−スルホン酸、ピリジン−3−スルホン酸、ピリジン−4−スルホン酸などのピリジンスルホン酸、これらのピリジンスルホン酸のアルカリ金属塩などのピリジンスルホン酸類;ピコリン酸アミド、ニコチン酸アミド、イソニコチン酸アミド、ピリジン−3−スルホン酸アミドなどのピリジンのアミド誘導体;2−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2,6−ジヒドロキシピリジンなどのヒドロキシピリジン;2−クロロピリジン、4−クロロピリジン、2,6−ジクロロピリジンなどのハロゲン化ピリジン;ピコリンアルデヒド、ニコチンアルデヒド、イソニコチンアルデヒド等のピリジンアルデヒドなどを挙げることができる。これらのピリジン類は、一種単独または二種以上混合して使用することができる。本発明においては、ピリジン、ピリジンアルコール、アミノピリジン、アルキル(C1〜C3)ピリジン、ピリジンカルボン酸類、ピリジンジカルボン酸類、ピリジントリカルボン酸類、ピリジンテトラカルボン酸類、ピリジンスルホン酸類、ピリジンのアミド誘導体、ピリジンアルデヒドなどが特に好ましい。
【0022】
ピリジン類の配合量は、0.001〜1g/l程度とすることが好ましく、0.01〜0.5g/l程度とすることがより好ましい。ピリジン類を過剰に配合しても皮膜特性の更なる向上につながらなので経済的に好ましくない。また、ピリジン類の配合量は少なすぎると、緻密な析出が得られなくなるので好ましくない。
【0023】
本発明のめっき液には、更に、必要に応じて、アクリルアミド化合物、アルデヒド化合物及びケトン化合物から選ばれた少なくとも一種の化合物を配合することができる。これらの成分を配合することにより、形成されるめっき皮膜の析出組成、接合特性等に殆ど影響を及ぼすことなく、析出皮膜の光沢を向上させることができ、美しい外観のめっき皮膜を形成できる。
【0024】
アクリルアミド化合物としては、ジアセトンアクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N,N'−メチレン−ビス−(アクリルアミド)、1,3,5−トリアクロイルヘキサヒドロ−S−トリアジンを例示でき、アルデヒド化合物としては、ホルマリン、クロトンアルデヒド、バニリン、ベラトラムアルデヒド、アニスアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、ナフトアルデヒド等を例示でき、ケトン化合物としては、ベンザルアセトン等を例示できる。
【0025】
アクリルアミド化合物、アルデヒド化合物及びケトン化合物から選ばれた少なくとも一種の化合物の配合量は、要求されるめっき皮膜の光沢度に応じて適宜決めればよいが、通常は、光沢を向上させる効果を発揮させるためには、0.001g/l程度以上の配合量とすればよい。また過剰に配合すると光沢化作用は強くなるが、析出ムラが発生し易くなり、経済的にも好ましくない。通常は、アクリルアミド化合物、アルデヒド化合物及びケトン化合物から選ばれた少なくとも一種の化合物の配合量は、0.001〜5g/lとすることが好ましく、0.01〜1g/l程度とすることがより好ましい。
【0026】
また、本発明のめっき液には、必要に応じて酸化防止剤を配合できる。酸化防止剤を配合することによって、第1錫塩の酸化を抑制して、めっき液の安定性を向上させることができる。酸化防止剤としては、例えば、カテコール、ピロガロール、レゾルシン、ヒドロキノン、アスコルビン酸、アスコルビン酸のアルカリ塩、エリソルビン酸、、エリソルビン酸のアルカリ塩などを使用できる。酸化防止剤は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。酸化防止剤の配合量は、0.01〜10g/l程度が好ましい。配合量が多すぎても、酸化防止効果がより向上することはなく不経済であり、しかも酸化防止剤の分解生成物が発生するの場合があるので好ましくない。
【0027】
本発明のめっき液の調製方法は特に限定されないが、例えば、濃硫酸を溶解した水溶液に、第1錫塩と銅塩を溶解し、その後界面活性剤とピリジン類を溶解し、必要に応じて、その他の添加剤を配合することによって目的とするめっき液を得ることができる。
【0028】
本発明のめっき液を用いて錫−銅合金めっき皮膜を形成するには、常法に従って、被めっき物をめっき液中に浸漬し、これを陰極として通電すればよい。
【0029】
めっき液の浴温は、低温では析出効率が低下する傾向があり、高温では第1錫塩の酸化が促進されるため、10〜50℃程度とすることが望ましい。
【0030】
陰極電流密度は、めっき方法に応じて設定することができ、バレルめっき、ラックめっき等の場合には、0.05〜10A/dm2程度とすることが適当であり、ジェットめっきの様な強い液流動を行うめっき方法(高速めっき)では、さらに高い電流密度が可能であり、10〜50A/dm2程度とすることができる。
【0031】
陽極としては、錫、錫−銅合金のような可溶性陽極が好ましい。可溶性陽極を使用することにより、浴中の金属成分を極板から補給することが可能となり、めっき性能を維持することが容易になる。Ti−Pt電極のような不溶性陽極を用いることもできるが、この場合は浴中の金属成分を補給するために、金属塩の添加が必要となる。
【0032】
被めっき物については特に限定はなく、通電可能な物品であればよい。特に、ハンダ接合性に優れためっき皮膜を形成できる点から、代表的な被めっき物としては、従来からハンダめっき(Sn−Pb合金)の対象とされていたハンダ接合性が要求される物品、例えば、コネクター、端子部品、リードフレームなどの接点部分やその他の接続特性が要求される電子部品等を例示できる。
【0033】
【発明の効果】
本発明のめっき液は、有害物質である鉛を含有しないために、環境に対する悪影響の少ないめっき液であり、しかも低コストである。そして、該めっき液によれば、平滑な表面状態で優れたハンダ接合性を有する錫―銅合金めっき皮膜を形成できる。
【0034】
【実施例】
以下に、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1〜6
表面を研磨した2×5cmのステンレス板(素材)に、ウッドニッケルストライクめっきを行ったものを試験片とし、下記表1に記載した錫−銅合金電気めっき液を用いて、表1に記載した条件で錫−銅合金めっき皮膜を形成した。浴温は25℃とした。
【0035】
得られた各めっき皮膜について、膜厚、銅含有率、及び外観を評価した。析出皮膜の膜厚は重量法により算出し、銅含有率は皮膜を硝酸で溶解してICP法により測定し換算した。外観は目視で評価した。結果を下記表1に示す。
【0036】
表中、活性剤1〜3とあるのは、以下の各界面活性剤である。
活性剤1:ノニポール140(三洋化成工業(株)製:アルキルフェノール型非イオン活性剤)
活性剤2:プルロニックTR−704(旭電化工業(株)製:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリアミン型非イオン活性剤)
活性剤3:アルスコープTAP−30(東邦化学工業(株)製:ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩型アニオン性活性剤)
【0037】
【表1】
【0038】
比較例1
ニコチン酸アミド及びピリジンスルホン酸を含有しないこと以外は、実施例1と同様の組成の錫−銅合金電気めっき液を用いて、実施例1と同様の方法でめっき皮膜を形成した。
【0039】
実施例1と同様にして膜厚、銅含有率及び外観を評価したところ、形成された錫−銅合金めっき皮膜は、銅含有率:2.8%、膜厚:11.1μmの無光沢皮膜であった。
【0040】
比較例2
下記組成の錫−銅合金電気めっき液を用いて実施例1と同様の方法でめっき皮膜を形成した。
メタンスルホン酸錫 20g/l
メタンスルホン酸 10ml/l
メタンスルホン酸銅 0.5g/l
クエン酸2アンモニウム 100g/l
ノニポール140 5g/l
pH :4.0 (アンモニア水を使用し調整)
形成された錫−銅合金めっき皮膜について、実施例1と同様の方法でめっき皮膜の膜厚、銅含有率、及び外観を評価した結果、銅含有率:4.5%、膜厚:10.8μmの無光沢皮膜であった。
ハンダ濡れ性の評価試験
実施例1〜6及び比較例1〜2の各めっき液を用いて、銅合金のリードフレーム材に陰極電流密度5A/dm2で5分間めっきを行い、水洗、乾燥した。その後、リード部先端を切断し、SN−100C(日本スペリア社、錫−銅系ハンダ)とラピックスRMA(日本ハンダ、弱活性型ロジンフラックス)を使用して、接合温度250℃で、メニスコグラフ法によってハンダ濡れ性を評価した。
【0041】
その結果、実施例1〜6のめっき液を用いて形成されためっき皮膜は、何れも0.5〜1秒以内において濡れが確認され、ハンダ濡れ性が良好であった。
【0042】
これに対して、比較例1及び2のめっきを用いて形成されためっき皮膜は、濡れが認められるまで4秒以上を要し、ハンダ濡れ性が劣ることが判った。
【0043】
表面状態
実施例1と比較例1で形成された各めっき皮膜の表面状態について、走査性電子顕微鏡(SEM)により観察した。図1に実施例1で得られた皮膜の表面状態の電子顕微鏡写真を示し、図2に比較例1で得られた皮膜の表面状態の電子顕微鏡写真を示す。
【0044】
図1と図2から、実施例1のめっき液を用いて得られためっき皮膜は、析出粒子が細かく、均一であることが判る。
【0045】
排水処理試験
実施例1および比較例2のめっき液を50倍に希釈した各溶液について、水酸化カルシウムを添加してpH9に調整して12時間放置し、生成した沈殿を沈降させて、上澄み液中の金属成分についてICP分析を行った。結果を下記表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
この結果から判るように、実施例1のめっき液は、中和処理により排水中の金属成分を殆ど除去することが可能である。特に、有害な重金属成分である銅イオンを検出できなかったことから、環境に対する悪影響が非常に小さいことが判る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られためっき皮膜の粒子構造を示す電子顕微鏡写真。
【図2】比較例1で得られためっき皮膜の粒子構造を示す電子顕微鏡写真。
Claims (4)
- 第1錫塩、銅塩、硫酸、界面活性剤及びピリジン類を含有する水溶液からなる錫−銅合金電気めっき液であって、
ピリジン類が、ピコリン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸アミド、イソニコチン酸アミド、ピリジン−3−スルホン酸アミド及びピリジンスルホン酸類からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物である錫−銅合金電気めっき液。 - さらに、アクリルアミド化合物、アルデヒド化合物及びケトン化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物を含有する請求項1に記載の錫−銅合金電気めっき液。
- 請求項1又は2に記載の錫−銅合金電気めっき液中で、被めっき物を陰極として電解することを特徴とする錫−銅合金めっき皮膜の形成方法。
- 請求項3に記載の方法で錫−銅合金めっき皮膜が形成された物品。
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