JP3741069B2 - 給紙装置及びこれを備えた画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カットされたシートの給紙装置及びこれを備えた画像形成装置の構成に係り、より詳しくは、分離傾斜面にシートの給送前側の端縁を突き当ててシートを分離して1枚ずつ給送できる装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、レーザプリンタ、カラーインクジェットプリンタ、ファクシミリ装置、コピー装置等の画像形成装置には、その画像形成部にカットされたシートを1枚ずつ給送するための給紙装置を備えている。この給紙装置には、特開平10−310274号公報、特開2001−278507号公報等に開示されているように、複数枚のシートを積層状にして載置する傾斜状の載置板と、該載置板の下方において、当該載置板の表面に対して鈍角状に開いて伸びる分離傾斜面を有する分離板とを備え、前記載置板と対峙させて給紙ローラが設けられている。従って、前記載置板上に積層されたシートの下端縁は、前記分離板の分離傾斜面に当接した状態で保持される。給紙ローラが前記載置板上に積層されたシートのうち最上位置のものに押圧して回転駆動すると、下向きに送られたシートの下端縁が分離傾斜面に突き当たり、この分離傾斜面の反力を受けて、シートの下端部がシートの紙面と交差する方向(紙面が積層部から離れるように凸湾曲状)に曲げられた状態で進行し、やがて分離傾斜面からシート先端が離れて1枚のシートだけが分離される。その後、搬送経路中の搬送ローラにより、前記分離されたシートが画像形成部に送られ、画像形成された後、排紙されるのである。
【0003】
また、特開2000−168980号公報では、水平な載置板の先端部に、当該載置板の平面の延長側の線とを挟む角度(外角)が傾斜角度β(90度未満)の固定ガイド板と、前記載置板の先端側に回動支点を有する傾動ガイド板とを、前記載置板に搭載されたシートの幅方向に沿って適宜間隔で交互に配置し、前記傾動ガイド板は、付勢バネの付勢力によって、初期状態で、前記固定ガイド板の傾斜角度βよりも大きい傾斜角度α(同じく90度未満)になるように設定されたものが開示されている。また、この技術では、固定ガイド板の傾斜面の摩擦係数が傾動ガイド板の傾斜面における摩擦係数より小さく設定されている。
【0004】
この構成の給紙装置では、載置板にシートを満載したときには、所定長さの回動アームの先端に設けられた給紙ローラにより送り出されるシートの先端側にて揺動ガイド板が押圧されて揺動する。そして、この揺動ガイド板の傾斜面(分離傾斜面)の角度が前記初期状態の角度βよりも緩やかな角度αの傾斜面を有する固定ガイド板と同じ傾きになったとき、摩擦係数の小さい固定ガイド板の傾斜面(分離傾斜面)にシートの先端縁が突き当たり、且つ給紙ローラとシートとの当接部分から当該シート先端までの距離が長くなって、シートの先端が滑らかに湾曲して1枚ずつに分離できる。他方、載置板に少数のシートを積層した場合には、シートの先端が揺動ガイド板の回動支点に近くなって、当該揺動ガイド板を揺動させるための回動モーメントのアーム長さが短くて、揺動ガイド板を揺動させることができない。しかし、給紙ローラとシートとの当接部分から当該シート先端までの距離は前記満載時よりも長くなり、且つ給紙ローラのアームとシートの表面とのなす角度は大きいから、シートを給送するときの搬送力が大きくなるから揺動ガイド板が揺動しなくても、当該揺動ガイド板の傾斜面(分離傾斜面)尼沿うようにシートの先端が滑らかに湾曲して1枚ずつに分離できるというものであった。また、揺動ガイド板及び固定ガイド板における分離傾斜面は、シートの幅方向に沿って直線的な平面にて形成されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような分離方式は、分離傾斜面と紙との摩擦のみによって分離性能が決まるため、シート(用紙)によっては十分な分離性能が得られないことがあった。そこで、分離傾斜面の一部に分離傾斜面よりも摩擦係数の高い分離部材を並設して、給紙性能(分離性能)を向上させることが考えられている。しかしながら、シートの腰が弱いものでは、給紙ローラの作用部に対応する延長線上の分離傾斜面では、シートの幅方向の中央部における下端縁(先端縁)が分離傾斜面に突き当たって湾曲状態のままシートが進行する一方、作用部からシートの幅方向に離れたシートの両側端部は、前記給紙ローラの回転力による給送の強制力を受けない自由端部となるので、紙面がほぼ平坦状に保たれたまま、シートが進行することになる。
【0006】
この状態をシートの正面から見ると、前記分離傾斜面がシートの幅方向に沿って平面状に形成されているので、進行したシートの両側端寄りのシートの先端縁(下端縁)は、対応する分離傾斜面に対して、シートの幅方向の中央部における下端縁(先端縁)よりも先に当接し、その影響を受けてシートの幅方向の中央部はますます湾曲変形するために、その中央部のシートの先端縁(下端縁)は、対応する箇所の分離傾斜面から離れ易くなる。
【0007】
そうすると、分離傾斜面に設けられた分離部材の位置、幅によっては、分離部材にシートの先端縁(下端縁)が当たり難くなり、分離部材による分離作用を確実に受けることができなくなり、シートの重送が発生するという問題があった。
【0008】
このような問題は、シートの幅方向のサイズ(長さ)が大きいときにも発生するのであった。
【0009】
本発明は、この従来の問題点を解決すべくなされたものであり、シートを確実に分離して給紙できる給紙装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明の給紙装置は、シート収納手段に積層収納されたシートを、給紙手段により送り出して分離傾斜面により1枚ずつ分離給送する給紙装置において、前記分離傾斜面は、前記シートの幅方向の中央部側に位置固定して配置され、且つ高摩擦係数を有する分離手段を備えた固定部材と、該固定部材の左右両側に配置された可動部材とを備え、前記各可動部材は、その表面が前記固定部材における分離手段の配置位置より後退した位置となるように配置され、且つ前記シートが前記表面に接触したときに後退可能に構成されているものである。
【0011】
そして、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の給紙装置において、前記可動部材は前記固定部材の左右両側に各々複数配置され、各可動部材はそれぞれ単独で後退可能に構成されているものである。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の給紙装置において、前記可動部材のうち前記固定部材に隣接する位置の可動部材が先に後退可能に構成されているものである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の給紙装置において、前記可動部材は前記固定部材の左右両側に各々2つ配置され、前記固定部材からもっとも離れた位置の可動部材が後退動するとき、前記固定部材に隣接する位置の可動部材と連動して後退動するように連係手段を設けたものである。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の給紙装置において、前記可動部材は、回動または平行移動により後退動可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の給紙装置において、前記分離傾斜面は、前記分離手段の配置箇所の近傍で高く、シートの幅方向の両側端部側に行くに従って低くなるように凸湾曲状に形成されているものである。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の給紙装置において、前記分離手段は、前記固定部材に対して出没可能に構成されているものである。
【0017】
請求項8に記載の画像形成装置は、前記請求項1乃至7のいずれかの1項に記載の給紙装置と、該給紙装置から給紙されたシートに対して画像形成する画像形成部とを備えたものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を具体化した実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態である給紙装置10を搭載した多機能型の画像形成装置1の斜視図、図2は給紙装置10の斜視図、図3は給紙装置10の要部正面図、図4は図3のIV−IV線矢視断面図、図5は固定部材と可動部材とからなる分割型の分離傾斜面の実施形態を示す斜視図、図6は傾動する分離傾斜面の断面図、図7は分割型の分離傾斜面の他の実施形態を示す正面図、図8(a)は固定分離板の平面図、図8(b)は固定分離板の側断面図、図8(c)は中央部側断面図である。
【0019】
図1に示す多機能型の画像形成装置1は、ファクシミリ機能、プリンタ機能、複写機能、スキャナ機能を等を備えている。多機能型の画像形成装置1は、略箱状の本体2を有し、この本体2の上面には操作パネル3が配置されている。操作パネル3には「0」〜「9」の数字ボタンやスタートボタン、機能操作ボタン等の各種のボタンが設けられており、これらのボタンを押下することにより、各種の操作が行われる。操作パネル3の後部には液晶ディスプレイ(LCD)4が設けられ、画像形成装置1の設定状態や各種の操作メッセージ等が必要に応じて表示される。
【0020】
液晶ディスプレイ4の後部には、ファクシミリ機能時に相手ファクシミリ装置に送信されるファクシミリ原稿や、複写機能時に複写すべき原稿を積層載置する原稿載置部5が設けられている。この原稿載置部5に載置された原稿は、本体2内に設けられたスキャナ装置(図示せず)によって原稿表面の画像が読み取られる。読み取り完了した原稿は、本体2の前部(操作パネル3の下部)に設けられた排紙部7に排出される。
【0021】
前記原稿載置部5の後部には、複数枚のシート(記録紙)Pを積層状態で載置する給紙装置10が設けられている。この給紙装置10に載置されたシートPは本体2内のカラーインクジェット式等の画像形成部(図示せず)に搬送され、画像形成部によって所定の画像が印刷された後、排紙部6に排紙される。
【0022】
図2〜図4に示すように、給紙装置10における台枠フレーム11には、収納手段としての下向き前方傾斜状の載置板12と、該載置板12の左右両側に連設された一対の側壁板14、14と、該一対の側壁板14、14よりも内側に配置されて載置板12に対して左右方向に移動可能な一対の案内板13a,13bとを備えており、載置板12と側壁板14、14とは合成樹脂材にて一体的に形成されている。載置板12は記録紙である複数枚のシートPを積層して載置できるものであり、該載置板12の下端側の下枠部11aには、前記積層されたシートPの下端縁を支持し、画像形成部にシートPを送り出し案内するための上向き凸湾曲状の分離傾斜面が上面に形成された複数の分離板15、32a,32b、33a,33bがシートPの給送方向(図2及び図4の矢印A方向)に突出するように配置されている(図2、図3及び図4参照)。この分離傾斜面及び分離板の構成は後に詳述する。
【0023】
前記一対の案内板13a,13bは、載置板12の裏面に配置された横長のラック16、16に連結され、同じく裏面に設けたピニオン17に前記一対のラック16、16が噛み合うように構成されており、このピニオン17及びラック16、16の連動により一対の案内板13a,13bが載置板12の左右幅方向に移動可能に構成されている(図2及び図3参照)。これにより、一対の案内板13a,13bの間に積層されたシートPの幅方向の寸法に応じて当該シートPの左右両側縁を案内するように遠近移動すると共に、シートPを載置板12の幅方向(左右方向)の中央部にセットできるものである。
【0024】
前記左右両側壁板14、14の間には、前記分離板15の上面から上方に適宜距離隔てて回転自在に伝動軸20が軸支されており、該伝動軸20の中途部、つまりシートPの幅方向(左右方向)の中央部には、給紙手段としての給紙ローラ21を有する給紙ローラユニット22のケース24が回転のみ自在に装着されている。前記一方の側壁板14の外面には、本体2側に配置した駆動モータ(図示せず)からの動力を伝達するギヤ列23a,23b,23c,23dが配置されている(図2参照)。
【0025】
給紙ローラユニット22のケース24内には、図4に示すように、前記伝動軸20と一体的に回転する駆動歯車25と、伝動軸20に回転自在に被嵌したアーム26の先端に枢支され、且つ前記駆動歯車25と噛合う遊星歯車27と、中間歯車28と、該中間歯車28に噛み合い、給紙ローラ21と一体的に回転する歯車29とを備える。また、ケース24は、伝動軸20に被嵌した捩じりバネ30により、給紙ローラ21が前記積層されたシートPの最上面に押圧されるように弾力付勢されている。
【0026】
給紙動作時に伝動軸20の端部に固着されたギヤ23dが正回転(図2において反時計回りの回転)すると、前記駆動歯車25も正回転し、これに噛合う遊星歯車27は、逆回転(時計回りに回転)する方向への回転力が与えられることにより、アーム26が正回動し、遊星歯車27は中間歯車28と噛合う。これにより、中間歯車28は正回転(反時計回りに回転)し、歯車29ひいては給紙ローラ21は逆回転(時計回りに回転)するので、この給紙ローラ21の下面側に当接しているシートPは図4の下方に給送される。
【0027】
他方、前記ギヤ23dを逆回転(時計回りに回転)させた場合には、前記駆動歯車25の逆回転につれて、遊星歯車27が正回転する方向への回転力が与えられることにより、アーム26は逆回動して、遊星歯車27と中間歯車28との噛み合いは解除されて動力伝達は遮断されるから、給紙ローラ21の回転は停止され、給紙作用は行われない。
【0028】
次に、本発明における分離傾斜面の構成について詳細に説明すると、分離傾斜面には、前記シートPの幅方向の中央部側の下端縁(先端縁)に当接して分離させるための高摩擦係数の分離手段31を、前記給紙ローラ21による給紙作用線Q(図5及び図7参照)の延長上にて、前記分離傾斜面より突出させて設けると共に、前記分離傾斜面は、全体として、前記分離手段31の配置箇所の近傍で高く、シートPの幅方向の両側端部側に行くに従って低くなるように形成されている。その第1実施形態は、図2〜図6に示されている。第1実施形態における分離傾斜面は、載置板12の幅方向中央部(前記給紙ローラ21による給紙作用部の延長線上)に対応して固定部材としての固定分離板15と、その左右両側に配置された可動部材としての第1可動分離板32a,32bと、該一対の第1可動板32a,32bの外側(固定分離板15の配置位置と反対(対峙する)側)に配置された第2可動分離板33a,33bとからなるように分割されたものの上面に形成されている。すなわち、固定分離板15、第1可動板32a,32b、第2可動分離板33a,33bは全て合成樹脂製であってそれらの上面全体にわたって上向き凸湾曲状、つまり、固定分離板15の左右両側中央部の上面が最も高く、左右両側端の第2可動分離板33a,33bの外側寄り部位の上面が最も低くなるように形成されている。
【0029】
図6の断面図に示すように、前記第1可動分離板32a,32b及び第2可動分離板33a,33bは、台枠フレーム11における下枠部11aの軸受凹所40に、各可動分離板32a〜33bの基端に一体的に横向き突出させた回動支軸41が回動可能に軸支されている。この回動支軸41に捩じりバネ42を被嵌し、当該捩じりバネ42の両端を所定の個所に係止することにより、各可動分離板32a〜33bを独立的に上向きに付勢している。この構成により、給送されるシートPの横幅寸法の大小に応じて適切な個所の可動分離板のみを逃げ回動させるようにしてシートPの押圧力に対する抵抗力(前記バネ付勢力)も大小過不足のない適切な値にできるのである。但し、可動分離板32a〜33bの基部縦背面43が前記軸受凹所40の内面に当接して、第1可動分離板32a(32b)の上面が、隣接する固定分離板15の上面より上方に各々突出せず、また、第2可動分離板33a(33b)の上面が隣接する第1可動板32a(32b)の上面より上方に各々突出しないように規制されている。このような可動分離板が必要以上に上向き回動するのを阻止するためストッパー手段は他の構成であっても良い。
【0030】
そして、前記各可動分離板32a〜33bの上面(分離傾斜面)の各々に前記給送されるシートPの下端縁(先端縁)が当たって下向きの力が作用すると、前記捩じりバネ42の上向きバネ付勢力に抗して、各可動分離板32a〜33bの先端側が下向きに回動傾動(後退動)して、シートPによる押圧力を逃がすように構成されている。
【0031】
なお、図3に示すように、第1可動分離板32a(32b)と第2可動分離板33a(33b)との隣接個所には、第1可動分離板32a(32b)側から横向きに突出させた係合片44が第2可動分離板33a(33b)の下面に臨むように配置されていることにより、第2可動分離板33a(33b)にのみ下向き荷重が作用して下向き回動するのに連動して、前記各係合片44を下向きに押圧し、もって第1可動分離板32a(32b)も下向き回動するように構成されている。この構成が請求項における連係手段の一例である。
【0032】
第1実施形態では、一対の第2可動分離板33a,33bの外側端部間の寸法を略210mmとするときの高低差を略2〜3mmとする上向き凸円弧状(曲率半径1500mm程度)の面に倣うように形成されている(図3参照)。また、前記固定分離板15及び荷重が作用していない第1可動板32a,32b、第2可動分離板33a,33bの各上面(分離傾斜面)は、水平面に対して各先端側(図2、図4及び図8(a)の矢印A方向)が上方向になるように傾斜角度が略3度程度で傾斜している。また、前記固定分離板15及び荷重が作用していない第1可動板32a,32b、第2可動分離板33a,33bの各上面(分離傾斜面)と載置板12との夾角は略112.5度程度の鈍角に形成されている。
【0033】
そして、固定分離板15の上面のうち左右両側中央位置には、分離手段としての高摩擦係数の細長い分離部材34を配置する。その実施態様は、図8〜図10に示す。固定分離板15の左右両側中央位置には、上下に貫通し、且つシートPの給送方向(図2、図4及び図8(a)の矢印A方向)に沿って長い装着孔36が穿設されている。前記固定分離板15の下面側には、同じく合成樹脂製の取付けブロック37が嵌まり、下面側からネジ38、38にて着脱可能に連結するように構成されている。分離部材34は、ポリエステルウレタン樹脂材等の高摩擦係数を有する材料を燐青銅等のバネ板製のブリッジ板39の複数の櫛歯状の片持ち梁部39aの先端間に掛け渡すようして弾性的に支持されているものである(図10(a)及び図10(b)参照)。
【0034】
図10(a)に示すブリッジ板39の平面視略矩形状の外周枠部39bのみを前記取付けブロック37と固定分離板15とで挟持し、前記分離部材34及び片持ち梁部39aは、取付けブロック37の内径凹所37a内に配置されて空中に浮かんで配置されている(図8(b)、図8(c)及び図9参照)。従って、前記給紙ローラ21による給送作用を受けてシートPの下端縁で分離部材34を下向きに押圧力が作用すると、その作用部の近傍の前記複数の片持ち梁部39aが下向きに撓んで、分離部材34が固定分離板15の上面と同じ高さまで下向きに没することができる。
【0035】
なお、図10(b)の拡大断面図で示すように、分離部材34の上面を、シートPの下端縁との摺接時に大きい摩擦抵抗を受けるように、浅い断面の鋸歯状(凹凸状)に形成することが好ましい。これによって、分離部材34を構成する材料のもつ摩擦係数のみならず、形状による摩擦抵抗によっても結果として摩擦係数を高くすることができる。
【0036】
次に、前記構成による給紙時のシートPの分離作用について説明する。予め、給紙装置10における載置板12に複数枚のシートPを積層して載置する。前記左右一対の案内板13a,13bにより、シートPの左右両側縁が案内規制されて、当該シートPは、載置板12の左右中央位置に、シートPの幅方向の中心線に位置するよう配置される。この状態では積層された各シートPの下端縁(先端縁)はすべて固定分離板15の上面及び/又は分離部材34に当接しているが、それより高さの低い位置の、第1可動分離板32a(32b)及び第2可動分離板33a(33b)の上面(分離傾斜面)には当接していない。
【0037】
パーソナルコンピュータや外部のファクシミリ装置等の外部制御装置からの信号を受けて印刷指令が実行されると、図示しない駆動モータが駆動開始し、前記ギヤ列23a〜23dを介して伝動軸20が逆回転し、給紙ローラ21は図5において時計回りに回転する。これにより給紙ローラ21に押圧されている最上位置のシートPのみが図5の矢印A方向に給送される。
【0038】
載置板12に積層されているシートPの腰が柔らかい場合、このシートPの下端縁(先端縁)のうち、幅方向の中央部側の下端縁(先端縁)が前記給紙ローラ21による給送作用線の延長上に位置する分離手段31(分離部材34)に当接したままさらに給送作用を受けると、給紙ローラ21と分離手段31との間で、シートPの幅方向の中央部側が湾曲しながら矢印A方向に給送されて進行する。
【0039】
その場合、シートPの厚さが薄い等の腰の弱いシートPは、その幅方向の中央部側が積層されたシートPの上面から離れるような凸湾曲変形が発生する。他方、厚紙等の腰の強いシートPでは、その幅方向の中央部側が積層されたシートPの上面に接近するように凹湾曲変形する。
【0040】
しかし、前記給送作用を受けないシートPの前記中央部側以外の個所(幅方向の両側端部寄り部位)では、シートPは平坦状のまま進行することになる。そうすると、給送作用を受けたシートPの幅方向の中央部側での、前記給紙ローラ21との当接線(ニップ線)45から、当該シートPの下端縁までの直線距離よりも、前記給送作用を受けないシートPの前記中央部側以外の個所(幅方向の両側端部寄り部位)での給紙ローラ21との当接点の延長線46からシートPの下端縁までの直線距離のほうが長くなる。
【0041】
その場合に、第1実施形態のように、シートPの幅方向の中央部側に対応する固定分離板15は高さ変化せず、腰の柔らかいシートPの左右両側寄り部位の下端縁を第1可動分離板32a(32b)及び/又は第2可動分離板33a(33b)が、しっかりと受け止めることができる。他方、腰の強いシートPの場合には、更にシートPの下端縁で下向きに押圧されて押圧力が高まったときに、捩じりバネ42の付勢力に抗して、第1可動分離板32a(32b)及び第2可動分離板33a(33b)の先端側が下向きに回動することにより、それらの上面(分離傾斜面)がシートPの下端縁から遠ざかる方向に逃げ移動して、シートPの下端縁と第1可動分離板32a(32b)及び/または第2可動分離板33a(33b)との押圧による支えの干渉を回避できるから、シートPの幅方向の中央部側下端縁での分離手段31による分離作用を確実に受けさせることができ、前記シートPの2重送りなどの紙ジャムの発生をなくすることができるという優れた作用効果を奏する。
【0042】
前記載置板12に積層されたシートPの横幅寸法(サイズ)が小さい場合(固定分離板15の左右両側に隣接する前記第1可動分離板32a(32b)の外側端間の寸法より短い場合)には、シートPの幅方向の両側縁寄り部位に対応する下端縁が前記第1可動分離板32a、32bを下向きに押圧して逃げ回動するが、それより外側の第2可動分離板33a、33bはシートPと干渉しないから、下向き回動しない。シートPの横幅寸法(サイズ)が大きい場合(左右両側の第2可動分離板33a、33bの内側端間の寸法より長い場合)には、シートPの幅方向の両側縁寄り部位に対応する下端縁が先に第2可動分離板33a、33bの上面(分離傾斜面)に当たって、第2可動分離板33a、33bを下向き回動させる。そのときには、前記係合片44を介して第1可動分離板32a、32bも連動して下向き回動できるから、その個所に対応するシートPの幅方向の中央部と幅方向の両側縁寄り部位との中間の下端縁が第1可動分離板32a、32bの上面(分離傾斜面)に当接しなくとも、第1可動分離板32a、32bも下向きに逃げ回動でき、シートPの幅方向の下端縁との干渉を一層確実に減少させることができる。
【0043】
また、前記シートPの幅方向の中央部側の下端縁(先端縁)に当接して分離させるための高摩擦係数の分離手段31を、前記給紙ローラ21による給紙作用線Qの延長上にて、前記分離傾斜面より突出させて設けると共に、前記分離傾斜面は、全体として、前記分離手段31の配置箇所の近傍で高く、シートPの幅方向の両側端部側に行くに従って低くなるように湾曲状または直線状に形成すると、当該シートPの幅方向の両側端部側の下端縁(先端縁)は分離傾斜面に衝突しない状態のもとで、シートPの幅方向の中央部側の下端縁(先端縁)は分離手段31に突き当たって分離作用を十分に受けることができる。その結果、給送されるシートPが2重送りされるという給紙不良が発生しないのである。
【0044】
また、図7に示す、第2実施形態では、前記第1可動分離板32a(32b)及び第2可動分離板33a(33b)の下面側にコイルばね等の上向き付勢手段(図示せず)を設け、且つ各可動分離板がその上面が平行状に昇降可能に支持されたものである。この実施形態でも、前記第1実施形態と同様の優れた作用効果を奏することができる。
【0045】
前記各実施形態における分離手段31(分離部材34)の構成は同じであるが、別の構成のものを使用しても良い。また、前記各実施形態では、給紙装置10における載置板12を傾斜状に立設させ、その下方に、固定分離板15、第1可動分離板32a(32b)及び第2可動分離板33a(33b)を傾斜状に配置したものであったが、本発明は、載置板12を略水平状に配置し、その載置板12上のシートPの給送方向を斜め上向きになるように固定分離板15や可動分離板32a〜33bを配置した給紙装置にも適用できる。
【0046】
さらに、本発明では、固定分離板15から第1可動分離板32a(32b)及び第2可動分離板33a(33b)までの上面(分離傾斜面)を同一平面状に形成しても良いことはいうまでもない。
【0047】
なお、前記の各実施形態の給紙装置を備えた画像形成装置であれば、給紙装置にてシートPの2重送りが確実に防止できるから、1枚ずつ給送された各シートPに対して画像形成部にて確実に所定の画像を形成することができるという効果を奏する。
【0048】
また、上記実施形態では、左右一対の案内板13a,13bによってシートPをガイドすることにより、シートPの大きさ(幅寸法)に関係なく、シートPの幅方向の中央部(真ん中)の端縁に分離手段31(分離部材34)が当接するようにしたものであるが、必ずしもシートPの真ん中である必要はなく、多少左右に偏っていても中央部寄り側の端縁であれば、略同等の効果が期待できる。よって、例えば、シートPの左右いずれか一側を基準としてシートPを給紙するようにした給紙装置においても本発明は適用可能である。
【0049】
また、分離手段31(分離部材34)は、給紙手段による給紙作用線の延長上より若干外れた位置であっても、その近傍であれば分離作用に何ら問題はないことは勿論である。
【0050】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1に記載の発明の給紙装置は、シート収納手段に積層収納されたシートを、給紙手段により送り出して分離傾斜面により1枚ずつ分離給送する給紙装置において、前記分離傾斜面は、前記シートの幅方向の中央部側に位置固定して配置され、且つ高摩擦係数を有する分離手段を備えた固定部材と、該固定部材の左右両側に配置された可動部材とを備え、前記各可動部材は、その表面が前記固定部材における分離手段の配置位置より後退した位置となるように配置され、且つ前記シートが前記表面に接触したときに後退可能に構成されているものである。
【0051】
従って、給紙手段によるシートの分離給送時において、積層収納されたシートの腰が柔らかい場合には、そのシートの左右両側寄り部位の下端縁を固定部材の左右両側の可動部材が、しっかりと受け止めることができる。他方、腰の強いシートの場合には、給紙手段によるシートの給送作用に伴って、更にシートの下端縁で下向きに押圧されて押圧力が高まったときに、付勢手段による付勢力に抗して、可動部材が後退して、それらの分離傾斜面がシートの先端縁から遠ざかる方向に逃げ移動して、シートの先端縁と可動部材との押圧による支えの干渉を回避できるから、シートの幅方向の中央部側下端縁での分離手段による分離作用を確実に受けさせることができ、分離作用を一層向上させて、前記シートの2重送りなどの紙ジャムの発生をなくすることができるという優れた作用効果を奏する。
【0052】
そして、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の給紙装置において、前記可動部材は前記固定部材の左右両側に各々複数配置され、各可動部材はそれぞれ単独で後退可能に構成されているものであるから、請求項1に記載の発明による効果に加えて、シートの横幅寸法(サイズ)の大小に応じて、適切な抵抗力を前記各可動部材を介してシートに与えることができるという効果を奏する。
【0053】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の給紙装置において、前記可動部材のうち前記固定部材に隣接する位置の可動部材が先に後退可能に構成されているものであるから、シートの横幅寸法(サイズ)が小さい場合にも適切な分離作用を付与できるという効果を奏する。
【0054】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の給紙装置において、前記可動部材は前記固定部材の左右両側に各々2つ配置され、前記固定部材からもっとも離れた位置の可動部材が後退動するとき、前記固定部材に隣接する位置の可動部材と連動して後退動するように連係手段を設けたものであるから、シートの横幅寸法(サイズ)が大きい場合に、当該シートの幅方向の中央部以外の個所の先端縁との干渉を少なくできて、適切な分離作用を付与できるという効果を奏する。
【0055】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の給紙装置において、前記可動部材は、回動または平行移動により後退動可能に構成されていることを特徴とするものであり、可動部材の後退動の設計態様を多様化できるという効果を奏する。
【0056】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の給紙装置において、前記分離傾斜面は、シートの給送方向と直交する方向から見て、前記分離手段の配置箇所の近傍で高く、シートの幅方向の両側端部側に行くに従って低くなるように凸湾曲状に形成されているものである。
【0057】
従って、この分離傾斜面がシートの先端縁の湾曲線に略沿うことになり、シートの幅方向の両側端部側の先端縁は分離傾斜面に衝突しない状態のもとで、シートの幅方向の中央部側の先端縁は分離手段に突き当たって分離作用を十分に受けることができる。その結果、給送されるシートが2重送りされるという給紙不良を一層効果的に防止できるのである。
【0058】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の給紙装置において、前記分離手段は、前記固定部材に対して出没可能に構成されているものである。
【0059】
従って、給送されるシートの一定程度以上の押圧力に対して分離手段が固定分離部材の分離傾斜面と同じ高さ位置になるまで後退し、シートの分離作用を確実にできるという効果を奏する。
【0060】
請求項8に記載の画像形成装置は、前記請求項1乃至7のいずれかの1項に記載の給紙装置と、該給紙装置から給紙されたシートに対して画像形成する画像形成部とを備えたものである。従って、給紙装置にてシートの2重送りが確実に防止できるから、1枚ずつ給送された各シートに対して画像形成部にて確実に所定の画像を形成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 画像形成装置の斜視図である。
【図2】 給紙装置の斜視図である。
【図3】 給紙装置の要部正面図である。
【図4】 図3のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】 固定分離板と可動分離板とからなる分割型の分離傾斜面の実施形態を示す斜視図である。
【図6】 傾動する可動分離板の拡大断面図である。
【図7】 分割型の分離傾斜面の他の実施形態を示す正面図である。
【図8】 (a)は分離手段を備えた固定分離板の平面図、(b)は図8(a)の VIIIb−VIIIb 線矢視断面図、(c)は図8(a)の VIIIc−VIIIc −線矢視断面図である。
【図9】 図8(a)のIX−IX線矢視断面図である。
【図10】(a)は分離手段の平面図、(b)は図10(a)のXb−Xb線矢視断面図である。
【符号の説明】
P シート
10 給紙装置
11 台枠フレーム
12 載置板
13a,13b 案内板
15 固定分離板
21 給紙ローラ
31 分離手段
32a,32b 第1可動分離板
33a,33b 第2可動分離板
34 分離部材
42 捩じりバネ
Claims (8)
- シート収納手段に積層収納されたシートを、給紙手段により送り出して分離傾斜面により1枚ずつ分離給送する給紙装置において、
前記分離傾斜面は、前記シートの幅方向の中央部側に位置固定して配置され、且つ高摩擦係数を有する分離手段を備えた固定部材と、該固定部材の左右両側に配置された可動部材とを備え、
前記各可動部材は、その表面が前記固定部材における分離手段の配置位置より後退した位置となるように配置され、且つ前記シートが前記表面に接触したときに後退可能に構成されていることを特徴とする給紙装置。 - 前記可動部材は前記固定部材の左右両側に各々複数配置され、各可動部材はそれぞれ単独で後退可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
- 前記可動部材のうち前記固定部材に隣接する位置の可動部材が先に後退可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の給紙装置。
- 前記可動部材は前記固定部材の左右両側に各々2つ配置され、前記固定部材からもっとも離れた位置の可動部材が後退動するとき、前記固定部材に隣接する位置の可動部材と連動して後退動するように連係手段を設けたことを特徴とする請求項2または3に記載の給紙装置。
- 前記可動部材は、回動または平行移動により後退動可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の給紙装置。
- 前記分離傾斜面は、前記分離手段の配置箇所の近傍で高く、シートの幅方向の両側端部側に行くに従って低くなるように凸湾曲状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の給紙装置。
- 前記分離手段は、前記固定部材に対して出没可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の給紙装置。
- 前記請求項1乃至7のいずれかの1項に記載の給紙装置と、該給紙装置から給紙されたシートに対して画像形成する画像形成部とを、備えたことを特徴とする画像形成装置。
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