JP3740559B2 - 保水性コンクリートブロック及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、歩道、車道、駐車場、広場等の舗装材や、建築用ブロックとして使用するコンクリートブロックに関し、特に雨水等の水の吸収保持能力に優れているのでヒートアイランド現象を抑制するのに好適な保水性コンクリートブロック及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
人間は社会生活の快適さを求めることから晴天による土埃と降雨による泥化を嫌らい、社会環境の整備の一環として歩道、車道、駐車場、公園等を舗装材で覆うことを広く行なっている。この目的に使用する従来のコンクリートブロックは、コンクリート材料を密な状態に成形して排水性を持たせるか、逆に無数の連続多孔を形成して透水性(通水性)を持たせることにより、コンクリートブロックの表面に溜水しないようにした構成のものからなっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そして、都市部では前述の理由から歩道、車道、校庭、公園、駐車場等を全てコンクリート或はアスファルトにより舗装しているため、雨水は早期に排水溝から下水に排出されることになるし、舗装面上の溜り水は早期に蒸発してしまう環境になっている。このため、都市部では気温が上昇すると舗装面が高温になるのに対して、この高温状態を気化熱で抑制する水分が殆ど存在しないことから一層気温が上昇して生活環境を悪化させるヒートアイランド現象が生じている。
【0004】
本発明は上述した従来技術の欠点に鑑みなされたもので、雨水等の水を積極的に保持する保水機能を持たせ、保持水を気温の上昇に伴って蒸発させることにより温度の上昇を気化熱により抑えるようにして都市部でのヒートアイランド現象を抑制することができるようにした保水性コンクリートブロック及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
上述した課題を解決するために構成された請求項1に記載の発明を構成する手段は、セメント、砂利、砂を混合したコンクリート材料に、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエステル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミとの複合体からなる高分子化合物を水に溶解した団粒形成液を該コンクリート材料にスランプ0となる適量添加して混練することにより多孔質構造体が全体に形成されたコンクリート混練物を生成し、得られたコンクリート混練物を型枠に充填して振動及び/又は加圧した後即時脱型し、養生したものからなる。
【0006】
また、請求項2に記載の発明を構成する手段は、セメント、砂利、砂を混合する基材混合工程と、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエステル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミとの複合体からなる高分子化合物を水に溶解した団粒形成液を、該基材混合工程により得られたコンクリート材料にスランプ0となる適量添加して混練し、多孔質構造体が形成されたコンクリート混練物を生成するコンクリート混練工程と、該コンクリート混練工程で生成したコンクリート混練物を型枠に充填し、加振及び/又は加圧した後コンクリートブロックを即時脱型するブロック成型工程と、該ブロック成型工程により成型したコンクリートブロックを養生する養生工程とからなる。
【0007】
そして、前記コンクリート混練工程において、前記コンクリート材料に添加する前記団粒形成液の添加量は、コンクリート混練物がスランプ0、即ち体積比含水率が5〜8%の値になるようにするとよい。
【0008】
上述した請求項1及び2に係る発明において、コンクリート材料を構成するセメント、砂利、砂の配合割合は、従来のコンクリートブロックを製造する場合の配合割合と異なるところはない。
【0009】
上述のコンクリート材料に水に溶解した状態で添加する高分子化合物は、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエステル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミとの複合体からなるものである。この高分子化合物は、鎖状の極めて長い分子長の有機高分子がヘリックス状の分子構造を形成したものであって、強い電荷作用を有している。即ち、高分子化合物は各分子が強い正の電荷を持っているため、負の表面電荷を有する微粒子であるセメント粒子と混合するとこれらの粒子群と瞬時に反応し、セメント粒子同士を結合して団粒構造を形成する団粒形成作用を有している。形成された無数の団粒は更に互いに連結、架橋することにより微小間隙が無数に形成された海綿状の多孔質構造体を構成する。この多孔質構造体は、それ自体の物理的強度性も優れており、優れた強度性、安定性、耐久性を発揮する。
【0010】
この高分子化合物の一般的特性は、外観がほぼ透明の無色の粘稠液体であり、pH5,0〜7,0、水に対し任意の割合で溶解することができる。この高分子化合物としては、例えば株式会社アスト・ジャパン発売のAK−1(商品名)、製造元株式会社コウヨウが好適である。このAK−1を水で20〜40倍に希釈する。希釈倍率が20倍より小さいと形成される団粒は小さいため、保水性に富んだ多孔質構造体は形成されない。他方、希釈倍率が40倍より大きいと団粒形成作用自体が低下して多孔質構造体は形成されない。このようにして、高分子化合物を水に溶解して生成した団粒形成液をコンクリート材料に添加して混練すると、セメント粒子同士が結合して団粒構造を形成し、更に結合、連結が進行して無数の微小間隙を有する海綿状の多孔質構造体になる。そして、この多孔質構造体がコンクリートブロック全体に形成されることにより、保水性を有する微多孔質のコンクリートブロックを製造することができる。
【0011】
また、コンクリート材料に添加する団粒形成液の量は、コンクリート混練物をスランプ0の値、即ち体積比含水率を5〜8%にすることが重要である。スランプ0の値より大きいスランプ1の状態にすると、型枠に充填して加振及び/又は加圧した際に団粒構造が破壊されて多孔質構造体が形成されないため、保水能力を発揮することができない。そして、スランプ0(体積比含水率5〜8%)で練り上げたコンクリート混練物は即時脱型することにより、ブロック全体に無数の団粒が連結した多孔質構造体が形成されているので、保水性と強度性とのバランスに優れたコンクリートブロックを得ることができる。
【0012】
養生工程として、保温下で4〜24時間、前養生を行なうことにより、初期強度が高まる。その後はヤードにて常温下で自然養生を行なうことにより、保水性コンクリートブロックの強度性を高めることができる。
【0013】
かくして、セメント、砂利、砂を混合したコンクリート材料に団粒形成液を所望量添加し、スランプ0で混練し、型枠に充填して加振及び/又は加圧した後即時脱型し、養生するだけで保水性コンクリートブロックを製造することができるから、流し込み方式における養生後型枠脱型の作業等は不要であり製造も容易である。
【0014】
次に、本発明の実施の形態について説明する。図1は基材混合工程とコンクリート混練工程を示す。先ず、ミキサーAにセメント1、砂利2、砂3を所定量投入して十分に撹拌し混合する。ミキサーAにはスランプ0の状態での混練に適したコンクリートミキサーを用いる。セメント1、砂利2及び砂3が均一に混合したコンクリート材料が得られたら、コンクリート混練工程として、コンクリート材料に所定量の団粒形成液4を添加し更に十分に撹拌し混合することにより、スランプ0のコンクリート混練物を生成する。なお、団粒形成液4は前述の如く、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエステル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を水に溶解したものである。この団粒形成液4には株式会社アスト・ジャパン販売のAK−1(商品名)、製造元株式会社コウヨウを水に20〜40倍に希釈したものを用いるとよい。
【0015】
団粒形成液4をコンクリート材料に所定量添加して十分に撹拌し混合したコンクリート混練物5の全体には、団粒形成液4の団粒形成作用によりセメント粒子が互いに結合した無数の団粒6、6、・・・が形成され、更に団粒6、6、・・・同志が結合し、連結が進行することにより無数の微小間隙7、7、・・・が形成されている多孔質構造体8が組成される(図4参照)。そして、セメント1により固化が始まり、養生により初期強度を増すことができる。
【0016】
上述のコンクリート混練工程で得られたコンクリート混練物5は図2に示すように型枠Bに画成してある複数の形成室B1 、B1 、・・・に充填し、図3に示すように加振装置Cを用いて型枠Bに振動を加える。なお、加振装置Cに替えて、又はこれと併せてプレス装置Dを用いてコンクリート混練物5に加圧してもよい。然る後、図5に示すように型枠Bから脱型した保水性コンクリートブロック9、9、・・・を養生ヤードEのパレットF上に載置し、保温下で養生する。これらの工程は、従来のコンクリート成型用設備を用いて行なうことができる。
【0017】
かくして、最終工程の養生工程を経た保水性コンクリートブロック9は従来のコンクリートブロックと同等の強度性を備えており、しかも全体に多孔質構造体8が形成されていることにより、水分を吸収して保持する機能を発揮して従来のコンクリートブロックにはない優れた保水力を持つことができる。
【0018】
従って、保水性コンクリートブロック9を歩道、車道、駐車場等に敷設することにより、雨水を吸収し保水性に優れた舗装路面を形成することができるから、夏期に気温が上昇しても気化熱によって舗装路面の温度上昇を抑制し、ヒートアイランド現象を抑えることができる。図6は本実施の形態による保水性コンクリートブロック9と従来のコンクリートブロック及びアスファルトからなる各舗装路面について、降雨後6日間連続して晴天が続いた後の表面温度を測定した線図である。図中、実線は保水性コンクリートブロック9の表面温度、破線は従来のコンクリートブロックの表面温度、一点鎖線はアスファルトの表面温度、細線は外気温度を示す。図によれば、従来のコンクリートブロックと比較して保水性コンクリートブロック9は表面温度が気化熱により約5℃低いことから、気温の温度上昇の防止に有効であることが明らかであり、ヒートアイランド現象の抑制に効果的であることが確認された。
【0019】
なお、本発明による保水性コンクリートブロック及びその製造方法は、実施の形態で説明した形状からなる保水性コンクリートブロック9に限定されるものではなく、ヒートアイランド現象対策用として敷設する場所や用途に応じたサイズ及び形状に形成することができるものである。また、歩道以外にも車道、公園、広場等の舗装資材又は建築用コンクリートブロック、保水効果により緑化の期待ができる植栽ブロックとして広く使用することができる。
【0020】
また、本発明による保水性コンクリートブロックは微多孔質で目詰まりしにくいのに対して、透水性コンクリートブロックは孔径が比較的大きく塵埃が詰まり易いことから、上層に保水性コンクリートブロックを下層に透水性コンクリートブロックを積層した構成にすることにより、目詰まりしない透水性コンクリートブロックにすることができる。
【0021】
【発明の効果】
本発明は以上詳述した如く構成したから、下記の諸効果を奏する。
(1)請求項1に記載の発明によれば、コンクリートブロック全体に海綿状の多孔質構造体が形成されており、雨水等の水を積極的に保持する保水機能を有しているので、保持水が気温の上昇に伴って蒸発することにより温度の上昇を気化熱により抑えることができることから都市部でのヒートアイランド現象を抑制することができる。
(2)請求項2に記載の発明によれば、セメント、砂利、砂を混合したコンクリート材料に団粒形成液を所望量添加し、スランプ0の状態で混練したコンクリート混練物を型枠に充填して加振及び/又は加圧した後即時脱型し、養生する工程だけで海綿状の多孔質構造体が形成された保水性コンクリートブロックを製造することができるから、製造も容易であるし、既存の製造設備を用いて製造することができる。また、従来技術の流し込み方式における養生後型枠脱型の作業等は不要であり製造日数の短縮、製造コストの低減も可能である。
(3)請求項1及び2に記載の発明において、コンクリート材料に添加する団粒形成液の添加量は、コンクリート混練物がスランプ0、即ち体積比含水率5〜8%の値にすることにより、成型時の加振及び/又は加圧によっても多孔質構造体が崩れることがなく保水能力に優れた保水性コンクリートブロックにできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係り、コンクリート材料を生成する基材混合工程及びコンクリート混練工程を示す説明図である。
【図2】コンクリート混練工程により得られたコンクリート混練物を型枠に充填する状態の説明図である。
【図3】ブロック成型工程における加振及び加圧過程を示す説明図である。
【図4】多孔質構造体を示すコンクリートブロックの部分断面図である。
【図5】保水性コンクリートブロックの養生工程を示す説明図である。
【図6】保水性コンクリートブロックの保水能力を従来のコンクリートブロック及びアスファルトと比較して示す線図である。
【符号の説明】
1 セメント
2 砂利
3 砂
4 団粒形成液
5 コンクリート混練物
6 団粒
8 多孔質構造体
9 保水性コンクリートブロック
B 型枠
C 加振装置
D プレス装置

Claims (3)

  1. セメント、砂利、砂を混合したコンクリート材料に、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエステル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミとの複合体からなる高分子化合物を水に溶解した団粒形成液を該コンクリート材料にスランプ0となる適量添加して混練することにより多孔質構造体が全体に形成されたコンクリート混練物を生成し、得られたコンクリート混練物を型枠に充填して振動及び/又は加圧した後即時脱型し、養生してなる保水性コンクリートブロック。
  2. セメント、砂利、砂を混合する基材混合工程と、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエステル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミとの複合体からなる高分子化合物を水に溶解した団粒形成液を、該基材混合工程により得られたコンクリート材料にスランプ0となる適量添加して混練し、多孔質構造体が形成されたコンクリート混練物を生成するコンクリート混練工程と、該コンクリート混練工程で生成したコンクリート混練物を型枠に充填し、加振及び/又は加圧した後コンクリートブロックを即時脱型するブロック成型工程と、該ブロック成型工程により成型したコンクリートブロックを養生する養生工程とからなる保水性コンクリートブロックの製造方法。
  3. 前記コンクリート混練工程おいて、前記コンクリート材料に添加する前記団粒形成液の添加量は、コンクリート混練物がスランプ0、即ち体積比含水率5〜8%の値になるようにしていることを特徴とする請求項2記載の保水性コンクリートブロックの製造方法。
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