JP2008285891A - L型擁壁構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】水分の貯留による強度低下が発生せず、大雨等の際の水抜き孔からの大量排水を回避することができるL型擁壁構造を提供する。
【解決手段】L型擁壁構造1は、水抜き孔2が開設された垂直壁部3と水平底板部4とを有する鉄筋コンクリート製のL型擁壁体5を用いて構築されたものである。施工現場である地山6の正面側に設置されたL型擁壁体5の背面側に複数の透水性保水型ブロック8,8aを積層し、これらの透水性保水型ブロック8,8aと地山6との間に埋め戻し材7を充填することによってL型擁壁構造1が形成される。積層された複数の透水性保水型ブロック8,8aのうち、最下部に位置する透水性保水型ブロック8aが、L型擁壁体5の背面側の水抜き孔2に面する領域に配置され、この透水性保水型ブロック8aの正面部8fが水抜き孔2の背面開口部2bに当接している。
【選択図】図1

Description

本発明は、宅地や工場等の造成地の擁壁あるいは道路擁壁等として施工することのできるL型擁壁構造に関する。
宅地、工場、学校等の造成地に擁壁を構築する場合、用地の有効利用と施工の省力化等を図るため、従来、鉄筋コンクリート製のL型擁壁体を用いた工法が実施されている。このようなL型擁壁体を用いて構築されたL型擁壁においては、一般に垂直壁部に水抜き孔が開設されたL型擁壁体が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1記載のL型擁壁体を用いてL型擁壁を構築した場合、L型擁壁体の背面側の埋め戻し部分に集まってくる水分は、L型擁壁体の垂直壁部に開設された複数の水抜き孔を経由して垂直壁部の正面側へ排出されるため、埋め戻し部分に水が溜まるのを防止することができる。
特開平8−326076号公報
特許文献1記載のL型擁壁体を用いてL型擁壁を構築すれば、L型擁壁体の背面側の埋め戻し部分に集まってくる水分は複数の水抜き孔を経由して排出されるが、当該埋め戻し部分に使用されている埋め戻し材が土である場合、排水性(通水性)が悪いので、埋め戻し部分に水分が貯留され、擁壁の強度が低下することがある。
一方、埋め戻し部分の排水性が良い場合は水分の貯留による強度低下は回避されるが、大雨等の際には埋め戻し部分に降り注いだ大量の雨水が一挙に水抜き孔から擁壁の正面側へ排出され、浸水、洪水等を引き起こすことがある。
本発明が解決しようとする課題は、水分の貯留による強度低下が発生せず、大雨等の際の水抜き孔からの大量排水を回避することができるL型擁壁構造を提供することにある。
本発明のL型擁壁構造は、水抜き孔が開設された垂直壁部と水平底板部とを有する鉄筋コンクリート製のL型擁壁体を用いたL型擁壁構造であって、前記L型擁壁体の背面側の少なくとも前記水抜き孔に面する領域に配置された透水性保水型ブロックと、前記透水性保水型ブロックと地山との間に充填された埋め戻し材と、を備えたことを特徴とする。
このような構成とすれば、埋め戻し材中の水分は、鉄筋コンクリート製のL型擁壁体の背面側に配置された透水性保水型ブロックへ吸収され、透水性保水型ブロック中を移動した後、L型擁壁体の垂直壁部に開設された水抜き孔から排出され、埋め戻し部分に水が貯留され難いので、水分の貯留による強度低下が発生しない。また、透水性保水型ブロックは吸収した水分を保持する機能も有しているため、大雨等の際に、当該透水性保水型ブロックが埋め戻し部分から大量の水分を吸収することがあっても、その水分を一挙に排出することがなく、水抜き孔からの大量排水を回避することもできる。なお、透水性保水型ブロックは水分を吸収しても強度が低下しないので、擁壁の強度低下を招くこともない。
この場合、前記透水性保水型ブロックが、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体を含む高分子化合物の水溶液を、ガラス粉末、骨材及びセメント系固化剤の混合物に添加して混練、固化させて形成したものであることが望ましい。ここで、骨材とは外径5mm以下の砕石または砂質土をいう。
アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体とは、鎖状の極めて長い分子長の有機高分子がヘリックス状の分子構造を形成した高分子化合物であって、強い電荷作用を有している。即ち、各分子が強い正の電荷をもっているため、負の表面電荷を有する粒状体や粉状体と混合するとこれらの粒子群と瞬時に反応し、粒子同士を結合して集合体を形成し、さらに、これらの集合体を連結、架橋して立体網目構造を形成する団粒化作用を有している。
また、この複合体は、それ自体の物理的強度も優れているため、前記反応によって形成された立体網目構造体は優れた強度、安定性、持続性を発揮する。
前記高分子化合物の一般的特性は、粘度3000〜9000cp(25℃)の粘稠液体で、pH5.0〜7.0であり、水と任意の割合で混合することができる。この高分子化合物としては、例えば、有限会社グローバル研究所発売のGB−2000(商品名)を使用することができる。
このような高分子化合物の水溶液を、ガラス粉末、骨材及びセメント系固化剤の混合物との混合物に添加して混練すると、ガラス粒子、骨材及びセメント系固化剤とが互いに結合して立体網目構造が形成され、さらに、結合、連結反応が進行して、大小の間隙を有する多孔質状の粗大粒子を有する構造が形成されるため、水分を効率的に吸収、保持及び透過することが可能な透水性保水型ブロックとなる。従って、このような透水性保水型ブロックをL型擁壁体の背面側に配置してL型擁壁構造を形成することにより、水分の貯留による強度低下及び大雨等の際の水抜き孔からの大量排水を防止することができる。
本発明により、水分の貯留による強度低下が発生せず、大雨等の際の水抜き孔からの大量排水を回避することができるL型擁壁構造を提供することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態であるL型擁壁構造を示す垂直断面図、図2は図1に示すL型擁壁構造の施工過程を示す説明図である。
図1に示すように、本実施形態のL型擁壁構造1は、水抜き孔2が開設された垂直壁部3と水平底板部4とを有する鉄筋コンクリート製のL型擁壁体5を用いて構築されたものである。図2に示すように、施工現場である地山6の正面側に設置されたL型擁壁体5の背面側に複数の透水性保水型ブロック8,8aを積層し、これらの透水性保水型ブロック8,8aと地山6との間に埋め戻し材7を充填することによって図1に示すL型擁壁構造1が形成される。積層された複数の透水性保水型ブロック8,8aのうち、最下部に位置する透水性保水型ブロック8aが、L型擁壁体5の背面側の水抜き孔2に面する領域に配置され、この透水性保水型ブロック8aの正面部8fが水抜き孔2の背面開口部2bに当接している。
透水性保水型ブロック8は、後述する図3に示すように、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体を含む高分子化合物の水溶液(団粒化促進剤水溶液14)を、ガラス粉末10、骨材(図示せず)及びセメント系固化剤11の混合物に添加して混練、固化させて形成したものであり、透水性及び保水性を兼備している。なお、骨材としては外径5mm以下の砕石または砂質土が好適である。
図1に示すL型擁壁構造1において、雨水や地下水等に起因する埋め戻し材7中の水分は、鉄筋コンクリート製のL型擁壁体5の背面側に積層された複数の透水性保水型ブロック8に吸収され、これらの透水性保水型ブロック8中を水平移動、垂直移動しながら透水性保水型ブロック8全体に拡散、保持される。透水性保水型ブロック8全体に吸収しきれない水分は最下部の透水性保水型ブロック8aまで移動した後、その正面部8fから水抜き孔2の背面開口部2bを経由して水抜き孔2内へ流れ込み、水抜き孔2内を通過し、その正面開口部2aから排出される。
このように、埋め戻し材7中の水分は、透水性保水型ブロック8,8aを透過して、L型擁壁体5の垂直壁部3に開設された水抜き孔2から排出されるため、埋め戻し材7に過剰な水分が貯留されることがない。このため、埋め戻し材7中の水分貯留に起因する擁壁の強度低下が発生しない。
また、透水性保水型ブロック8,8aは吸収した水分を保持する保水性も有しているため、大雨等の際に、当該透水性保水型ブロック8,8aが埋め戻し材7から大量の水分を吸収することがあっても、その水分を一挙に排出することがない。このため、水抜き孔2からの大量排水が発生せず、垂直壁部3の正面側における洪水や浸水を回避することができる。さらに、透水性保水型ブロック8,8aは保水状態にあるときも強度が低下しないので、水分を吸収による擁壁の強度低下を招くこともない。
次に、図3〜図5に基づいて、透水性保水型ブロック8,8aの製造方法について説明する。図3は図2に示す透水性保水型ブロック型の原材料となる混練物の製造工程を示す説明図、図4は図2に示す透水性保水型ブロック型の製造工程を示す説明図、図5は図3に示す混練物の固化中に形成される立体的網目構造の模式図である。
図3に示すように、ガラス粉末10、骨材(図示せず)及びセメント系固化剤11をミキサ12に投入して十分に撹拌、混合する。ミキサ12はモータ13などによって駆動される一般的なものを用いることができる。
ガラス粉末10、骨材(図示せず)及びセメント系固化材11がむらなく均一に混合されたら、団粒化促進剤水溶液14を添加して、さらに十分に撹拌、混練することによって混練物15を形成する。団粒化促進剤水溶液14は、前述した、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体を含む高分子化合物の水溶液である。団粒化促進剤水溶液14としては、GB−2000(商品名、有限会社グローバル研究所発売)を水で50倍に希釈したものを使用し、ガラス粉末10は、粒径が1μm〜10μm程度の廃ガラスの破砕粉末、骨材(図示せず)は外径5mm以下の砕石(または砂質土)を使用している。
本実施形態では、ガラス粉末10及び骨材(図示せず)とセメント系固化剤11とを体積比1:1の割合で混合し、十分撹拌したものに、団粒化促進剤水溶液14を添加することにより混練物15を形成し、この混練物15の含水率が13%前後となるようにしている。
図3に示す工程で得られた混練物15を、図4(a)に示すように、型枠16に打ち込んだ後、図4(b)に示すように、加振装置17を用いて型枠16に振動を加えることによって混練物15を隙間なく充填する。そして、図4(c)に示すように、常温下で24時間養生する。なお、これらの工程は、従来の設備、工法を用いて行うことができる。
型枠16に打ち込んだ混練物15中においては、図5に示すように、団粒化促進剤水溶液14の団粒化作用により、ガラス粉末10、骨材(図示せず)、セメント系固化剤11などの粒子群が互いに結合して立体網目構造19が形成されるとともに、さらに、結合、連結反応が進行して、大小の間隙を有する多孔質状の粗大粒子20が形成され、前記養生により固化する。
図4(c)に示す養生工程を経た後、型枠16を分解すると、図4(d)に示すような透水性保水型ブロック8,8aが完成する。透水性保水型ブロック8,8aは立体網目構造を有しているため、水分を効率的に透過することができる。
従って、図1,図2に示すように、透水性保水型ブロック8,8aをL型擁壁体5の背面側に配置してL型擁壁構造1を構築すれば、埋め戻し材7中の水分貯留による擁壁の強度低下を回避することができ、また、大雨等の際の水抜き孔2からの大量排水を防止することもできる。
さらに、透水性保水型ブロック8,8aは、ガラス粉末10、骨材(図示せず)及びセメント系固化剤11との混合物に団粒化促進剤水溶液14を添加、撹拌して形成した混練物15を型枠16に充填した後、固化、養生するだけで製造可能である。これらの工程は従来の設備、工法を用いて実施することができ、研磨工程や面倒な手作業などは不要であるため、製造は容易である。また、ガラス粉末10は、使用済みの色つきガラス瓶等のリサイクル使用不可能な廃ガラスの粉砕粉を用いることができるため、資源保護、環境保護にも有効である。また、骨材(図示せず)として砂質土を使用する場合、例えば、学校のグラウンド改修工事のときの発生土を再利用することもできる。
なお、本実施形態の透水性保水型ブロック8は縦横が各1m、厚さが20cmの厚板形状であるが、これに限定するものではないので、施工現場、規模等に適したサイズ、形状にすることができる。
本発明のL型擁壁構造は、宅地や工場等の造成地の擁壁あるいは道路擁壁等として広く利用することができる。
本発明の実施の形態であるL型擁壁構造を示す垂直断面図である。 図1に示すL型擁壁構造の施工過程を示す説明図である。 図2に示す透水性保水型ブロックの原材料となる混練物の製造工程を示す説明図である。 図2に示す透水性保水型ブロックの製造工程を示す説明図である。 図3に示す混練物の固化中に形成される立体的網目構造の模式図である。
符号の説明
1 L型擁壁構造
2 水抜き孔
2a 正面開口部
2b 背面開口部
3 垂直壁部
4 水平底板部
5 L型擁壁体
6 地山
7 埋め戻し材
8,8a 透水性保水型ブロック
8f 正面部
10 ガラス粉末
11 セメント系固化剤
12 ミキサ
13 モータ
14 団粒化促進剤水溶液
15 混練物
16 型枠
17 加振装置
19 立体網目構造
20 粗大粒子

Claims (2)

  1. 水抜き孔が開設された垂直壁部と水平底板部とを有する鉄筋コンクリート製のL型擁壁体を用いたL型擁壁構造であって、前記L型擁壁体の背面側の少なくとも前記水抜き孔に面する領域に配置された透水性保水型ブロックと、前記透水性保水型ブロックと地山との間に充填された埋め戻し材と、を備えたことを特徴とするL型擁壁構造。
  2. 前記透水性保水型ブロックが、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体を含む高分子化合物の水溶液を、ガラス粉末、骨材及びセメント系固化剤の混合物に添加して混練、固化させて形成したものである請求項1記載のL型擁壁構造。
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