JP3737106B2 - アイドリング段階における内燃機関の回転数制御のための方法および装置 - Google Patents

アイドリング段階における内燃機関の回転数制御のための方法および装置 Download PDF

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Description

本発明は、アイドリング段階における内燃機関の回転数制御のための方法および装置に関するものであり、とりわけ、設定回転数と実際の回転数の偏差に応じてこの回転数に影響を及ぼすアクチュエータの制御を補正することによって作用するような方法および装置に関するものである。
内燃機関、とりわけ、自動車の推進用内燃機関は、様々な回転数で動作し、こうした回転数の制御および/または調節は、多くの場合に、そして特にアイドリング段階においては、微妙なものである。アイドリング段階は、通常は、運転者がアクセルから足を上げたときから始まる。この段階における回転数制御の目的は、回転数を設定回転数に合わせ、生じる可能性のある外乱や、なんらかの変速ギアが噛み合った状態で車両が走行しているような「駆動」アイドリング段階またはエンジンの始動段階のような様々な過渡段階を経てもこの設定回転数の付近に回転数を調節することである。
確かに、こうした状況下で回転数を制御することは、低回転状態におけるエンジンの安定性の確保、また、エンジンの挙動のモデル化が困難であることがわかっているため難しい。さらに、アイドリング段階の開始条件は運転者によるアクセルペダルの操作、エンジン冷却水の温度、気温、電気エネルギーを消費するなんらかの装置(照明装置、ファン)あるいは機械エネルギーを消費するなんらかの装置(エアコン、パワーステアリング)の連動作用によって生じる可能性のある予測不可能な外乱の存在などにより、大きく変わる場合がある。また、回転数の制御についても、運転者の快適性(騒音レベル、振動、ノッキング)ならびにエンジンからの排ガスによる環境汚染についての規格に関連する他の制約事項も考慮しなければならない。
今日では、アイドリング段階におけるエンジン回転数の制御を行うために、「監視付き」PID方式のコントローラを含む閉ループ式制御装置がよく用いられている。例えば、これに該当する装置は、参考資料DE-A-4 215 959に説明されているが、この装置は、コントローラのP、I、Dの各項の調整のためにファジー論理を使用している。この結果として、それぞれの種類のエンジンに適合させるためのコントローラの調整は、長時間を要する面倒なものとなっている。また、PID制御は、エンジンの運転のいくつかの様相しか考慮しておらず、エンジンの老朽化または工業上の製造公差により「監視付き」PIDコントローラの動作に悪影響を与えるおそれがあるため、「堅牢性」の観点から完全に満足できるものではないという欠点を有している。
また、アメリカ合衆国の”Society of Automotive Engineers”発行の参考資料900594により、ファジー論理を用いて形式化された実験の結果に全面的に基づいた、つまり、一見したところ、より高い堅牢性と柔軟性を提供することのできる内燃機関のアイドリング回転数制御方法も知られている。しかしながら、説明されている方法は、複雑なテーブルおよび演算子を必要とするため、この方法を実施するために使用するコンピュータのメモリーを多く食うばかりか、計算にも時間を必要とする。
本発明は、アイドリング回転数のすべての段階における堅牢性、外乱に対する安定性、調整の容易さ、そして、このエンジンによって推進される車両の操縦の楽しみという4つの点で満足できるアイドリング段階の内燃機関の回転数制御方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、この方法を実施するための装置の実現もその目的としている。
前述した本発明の目的、ならびに、以下の説明を読むことにより明らかになる本発明のその他の目的は、設定回転数Ncと実際の回転数Nとの間の誤差E=Nc-Nに応じてアイドリング回転数に影響を与えるアクチュエータの制御を補正することによって、アイドリング段階の内燃機関の回転数Nを制御する方法から達成される。この方法は、回転数Nの単調で、素早く、滑らかな変化によって、アクチュエータの制御の補正なしに設定回転数Ncに復帰するのに適したエンジンの状態に相当する、誤差Eとこの誤差の時間導関数E’の特定の値の対によって定められるエンジンの理想的状態の軌跡を確定し、エンジンの実際の状態(E,E’)とこのエンジンの理想的状態の軌跡との間の偏差に応じてアクチュエータの制御を補正することを特徴とする。
後ほど述べるように、本発明に基づいたエンジンの「理想的」状態の軌跡の確定により、アイドリング段階のエンジンン回転数の制御は最適化され、単純化される。
本発明に基づく方法の別の特徴により、それぞれ誤差Eと誤差の導関数E’とによって構成される2つの入力を有するテーブルから、アクチュエータの制御の補正値Δuを引き出す。このテーブルは、アクチュエータの制御の補正用の特定値Δuを含んでおり、これらの値は、それぞれが、誤差Eとこの誤差の導関数E’の特定値の対と関連付けられている。
本発明に基づく方法の1つの有利な変形態様においては、アクチュエータの制御の補正値Δuは、それぞれ前述のテーブルともう1つのテーブルから引き出された部分的補正値の線形組み合わせから引き出される。この2番目のテーブルは、このテーブルが定める部分補正の特定値を、誤差の導関数E’の特定値に対応させる。こうして、アイドリング段階におけるエンジン回転数の制御を、線形組み合わせの係数を変更するだけでエンジンの様々な動作条件に簡単に適合させることができる。
本発明は、この方法の実施のための装置も提供するものであり、この装置は、下記のものを含んでいる:
a)エンジンの実際の回転数Nのセンサーから送出される信号とアイドリングの設定回転数Ncの予め定められた値を表す信号に基づいて、回転数の誤差Eを表す1つ目の信号と、この誤差の導関数E’を表す2つ目の信号を送出するための手段、
b)上記の1つ目および2つ目の信号により明らかになっているエンジンの実際の状態(E,E’)とこのエンジンの理想的状態の軌跡との偏差に応じて、アクチュエータの制御補正値Δuを、前述の1つ目の信号と2つ目の信号ならびに補正Δuの特定値の記憶手段とから引き出す、前述の信号によって作動するコントローラ。
本発明のその他の特徴および長所は、以下に行う説明と併せて、添付図を検討することにより明らかとなる。
−図1は、本発明の実施に必要な制御用電子手段を備えたエンジンの図である。
−図2aおよび図2bは、本発明に基づく方法の説明に役立つグラフである。
−図3は、この方法を実施するための装置の望ましい実施態様図である。
−図4から図7は、本発明に基づく方法において使用することのできる補正用テーブルである。
−図8は、一つの例として、力強い加速をみせた後でアイドリングに入った状態における回転数、回転数誤差ならびにこの誤差の導関数の時間的推移を表すグラフである。
−図9は、図8のグラフに示されている状況においてアイドリング回転の調節を行うために本発明に基づく方法で使用される1つの補正用テーブルを示している。
−図10は、一つの例として、弱い加速をみせた後でアイドリングに入った状態における回転数、回転数誤差ならびにこの誤差の導関数の時間的推移を表すグラフである。
−図11および図12は、図10のグラフに示されている状況においてアイドリング回転の調節を行うために本発明に基づく方法で使用される補正用テーブルを示している。
図1では、センサー、アクチュエータおよびこれらのアクチュエータの電子手段という従来の環境における自動車推進用内燃機関のシリンダ1が示されている。電子計算機2には、このように例えばエンジンのアウトプット・シャフト5上に取り付けられた歯車4に組み合わされているエンジン回転速度(または回転数)を表す信号をコンピュータに送る可変磁気抵抗形センサー3から信号が供給されている。また、圧力センサー6がエンジンの吸気マニホールド7内に取り付けられており、エンジン内に吸入される空気の圧力を表す信号をコンピュータに供給する。エンジンの冷却水温度のセンサー、気温センサー等あるいはエンジンの排ガス内に設置された酸素センサ−10からの他の信号8、9等も従来のようにコンピュータに送出されるようになっていてもよい。
コンピュータは、ガソリン噴射装置11、プラグ点火回路12あるいは吸気マニホールド7を通ってエンジン内に入る空気量の主制御スロットルバルブ15をバイパスするパイプ14上に設置された追加空気制御バルブ13のようなアクチュエータの制御信号の生成および送信のために必要なハードウェアおよびソフトウェア手段を備えている。
以下では、非限定的な参考として、バルブ13の開きに対する作用によるエンジン制御の例を用いて、本発明に基づく制御方法の説明を行う。しかしながら、専門家にとって、同じ制御方法を、噴射装置の開き時間に対する作用あるいは電気制御式の電動スロットルバルブに対する作用によって、あるいは、これらの様々なアクチュエータに対する作用の組み合わせによって拡張することができるということは明らかであろう。
図2aのグラフは、アイドリング段階に入ったエンジン回転数Nの典型的な推移を示している。アイドリング状態は慣例的に下記の条件が揃ったときに生じる:
−運転者がアクセルに乗せていた足を上げる。この状況は、慣例的に、アクセル・ペダル(図示されていない)の高位置への到達を感知するセンサー(図示されていない)によってコンピュータ2に通知される。
−エンジン回転数Nが、「アイドリングしき値」と呼ばれるなんらかのしきい値Ns以下に低下する。
−車両は走行している。この条件は、予想できる他の条件と同様に、不確定なものでしかない。
図2aには、運転者が、例えば、瞬間t1にアクセル・ペダルを踏み、瞬間t2にこのペダルを離した(「足を上げた」位置)場合の、アクセル・ペダルの作動に時間線図Pも示されている。
瞬間t1からの加速状態は、エンジン回転数Nの増加と、その後の瞬間t2後の「足を上げる」ことによるこの回転数の低下の形で表面化する。例えば、アイドリングしきい値をN=1700r.p.m.に定めると、上記の条件に基づくアイドリング段階の開始は、瞬間t3に生じることが見てとれる。この瞬間の後、エンジンの状態は、本発明に基づき、回転数の誤差E(E=Nc-N、この時Ncはアイドリング段階の設定回転数)と、この誤差Eの時間導関数E’とによって定めることができる。
「ノイズ」現象を避けるために、この導関数の代わりに、この導関数をフィルタリングした値を用いてもよく、例えば、下記のような種類の1次帰納的フィルターによってフィルタリングされた値を用いることができる:
Figure 0003737106
こうして、エンジンは、順次に、(E1,E’1)、(E2,E’2)、(E3,E’3)等の状態を経て、回転数Nは、徐々にアイドリング設定回転数Ncに収束していく。
本発明に基づく制御方法の1つの本質的特徴に基づき、ベンチテストでの測定によって、例えば、アイドリング調節段階において、つまり、運転者が「足を上げる」ことによってスロットルバルブ15が再度閉じた場合に、誤差Eの値とこの誤差の導関数の値が、追加空気バルブ13の開きの定格調整のいかなる変更もなしに、車両の操縦の快適性を最大限に保ちつつエンジン回転数が単調で素早く滑らかな変化によって設定値Ncに達することができるような関係になるようなエンジンの複数の状態を確定する。
このようにして求めた値(E,E’)の対を座標系(E,E’)に転記する。こうして得られたグラフは、一般的に、図2bに示されているような曲線となる。本発明に基づき、このグラフを、アイドリング回転数におけるエンジンの「理想的」状態の「軌跡」と定義する。「理想的」と呼ぶのは、操縦の快適性の最適条件において、設定アイドリング回転数(例えば、Nc=700r.p.m)に合わせるためのいかなる調整行為も必要としないからである。
こうして、アイドリング調節段階のエンジンの状態が常にこの軌跡に追従するならば、設定回転数に対する最適な適合が保証されるため、追加空気バルブ13の制御にはいかなる補正も加えられない。
逆に、所与の瞬間に、コンピュータがエンジンの実際の状態(E,E’)と軌跡に最も近い点との間においてなんらかの偏差を確認した場合には、コンピュータは、この偏差が大きければ大きいほど大きな追加空気バルブ13の制御補正値を定めて、この状態を理想的軌跡方向に、あるいは、理想的軌跡上にできるだけ速やかにそして滑らかに移行させる。
こうして、エンジンの実際の状態(E,E’)が軌跡よりも上にある場合には、コンピュータは、バルブに対して、バルブの開き、つまり、吸気量を増大させるような制御を行う。結局、この場合にもコンピュータを介して、噴射燃料量の相関的増加制御が行なわれ、その結果、エンジンの発揮するトルクが増大するため、エンジンの状態を理想的軌跡に近づけるためのエンジン回転数のよりゆっくりとした低下が生じる。補正の幅は、エンジンの実際の状態(E,E’)と軌跡(図2b参照)との間の隔たりdが大きいほど大きなものとなる。
逆に、エンジンの実際の状態(E,E’)が軌跡よりも下にある場合には、コンピュータは、バルブ13の開きを減少させるように制御を行う。
これらの制御原理を、図4に示されているテーブルの形で形式化することができる。このテーブルにより、本発明に基づく方法のとりわけ単純で柔軟な実施が可能になる。このテーブルを構築するためには、回転数の誤差Eとこの誤差の導関数E’の変化領域中において、これらの領域中に選択的に分布しており、このテーブルの2つの入力を構成するそれぞれ(NTG〜PM)ならびに(PTG〜NM)の記号で示される特定の点を選択する。特定の値のそれぞれの対(E,E’)の交差部に、例えば上記の原理に基づいてアイドリング段階のエンジン制御を最適化するためにベンチテストで確定された、対応する補正値を転記する。これらの補正値を、数量化し、ファジー論理において用いられている用語からの類推により、記号NTG〜PTGで識別する。但し、こうした類推は、この時点までとする。こうして、テーブルの入力E,E’ならびに、このテーブルから引き出す制御の補正値Δuについて、用いられるこれらの記号は下記のような名称の特定の値を数量化する:
PTG:非常に大きい正の値
PG :大きい正の値
PM :中程度の正の値
PP :小さな正の値
ZE :ゼロ
NP :小さな負の値
NM :中程度の負の値
NG :大きな負の値
NTG:非常に大きな負の値
これらの記号のそれぞれに組み合わされる実際の値が入力変数E,E’および出力変数Δuのそれぞれについて異なることは明らかである。これらの値の間で、テーブルに示されている特定の値間で補間を行うことによってΔuを計算する。
図4のテーブルにおいては、ゼロ補正を定める”ZE”の欄の斜めの並びに注意する必要がある。この欄の並びが、上記で定められている「理想的」状態に相当し、この場合、このテーブルにおける図2bの軌跡のイメージは、これらの欄が並んだ直線によって構成される。
上記の原理に基づき、この直線よりも上で行なわれる補正は正であり、これよりも下で行なわれる補正は負であり、補正値は、特定の欄と欄(ZE)の直線との間の隔たりに比例することに注意する必要がある。
本発明は、上記の制御方法を実施するための装置を提供しており、図3に同装置の望ましい実施態様を示してある。この装置は、このために用意されたソフトウェアおよびハードウェア手段、メモリー、マイクロプロセッサ、プログラム等を装備したコンピュータ2に組み込まれている。この装置は、回転数の誤差E=Nc-Nを生成するための手段16と、例えば一般的に行なわれているようにシリンダー1のピストンの上死点においてこの誤差のサンプリングを行うための手段17と、誤差の時間微分を行い、誤差Eとこの誤差の導関数E’を表す信号を「コントローラ」19に供給するための手段18とを含む。
コントローラ19は、EおよびE’の実際値すなわち現在値と図4のテーブルに基づいて、追加空気バルブ13の定格制御22の補正値Δu1を送出する。この補正値は、場合によっては、ゲインG1の増幅器20内で増幅され、インテグレータ21によって発生される成分を加えられる。この積分成分は、慣例的に、例えばパワー・ステアリング装置の作動時の場合のように、エンジンに永久的な負荷あるいはゆっくりと変化する負荷が加わることにより、追加空気バルブ13の定格制御22が適しなくなった場合に、この追加空気バルブの定格制御を補正するためのものである。
こうして得られた最終制御値Uは、制御の運動特性を制限するサチュレータ23内に入り、制御値は最終的にエンジンのバルブ13に印加される。
上記のような装置は、図4のテーブルに示されている制御の実施に限定する場合には、本発明に基づく制御方法の実施に十分なものである。
しかしながら、高いEおよびE’の値、例えば、E=NTGおよびE’=PTGでアイドリング状態に入る場合には、図4のテーブルは、空気バルブ13の制御補正値Δu2がほぼゼロ(ZE)でなければならないことを示していることがわかる。このようなゼロ補正は、こうした場合にみられる車両の慣性によるエンジン回転数の大きな低下に対して影響を及ぼさないため、望ましくない場合がある。逆に、エンジンのアイドリング調節段階が開始されたらすぐに、バルブ13の定格制御22を大きく補正してエンジン回転数の低下を抑制すべきである。本発明に基づき、これを行うためには、ゼロ補正の欄(ZE)を含む直線は、図4のテーブルに示されているものとは異なり、対角線であってはならず、E=NTG,E’=PTGに対応する欄は、Δu1=ZEにではなく、例えば、Δu1=PTGに対応するようにしなければならない。このために、図6に示してあるようにZEの欄の直線を、E=ZEおよびE’=ZEに対応する直線の交点となる欄を中心として回転させることができる。この図のテーブルのようなテーブルのセットをメモリーに入れることにより、アイドリング開始直後に様々な度合いの補正を得ることができる。しかしながら、この方法はメモリーをたくさん食う。
この欠点は、本発明に基づき、回転数の誤差の導関数E’によって作動し、図5のテーブル内に示されている補正値に基づく2つ目の補正値Δu2をゲインG2の増幅器20’に送出する2つ目のコントローラ19’(図3参照)を設け、それぞれコントローラ19および19’によって送出される2つの部分的補正値Δu1およびΔu2を25で線形的に組み合わせて、下記のような最終的制御補正値Δuを構成することにより防止することができる:
Δu=G1・Δu1+G2・Δu2
以下にいくつかの例を用いて説明するように、予め定められたなんらかの制御方針に応じて欄(ZE)を結ぶ直線の「傾斜」を調整するために、例えば、アイドリングの調節段階の開始時のエンジン回転数に応じて、場合によっては、エンジンによってもたらされた負荷に応じて、それぞれ増幅器20,20’のゲインG1およびG2を制御するための監視手段24が設けられている。
こうして、図6および図7のような総てが揃ったテーブルを得ることができる。図6のテーブルは、G1=G2となるようなゲインの調整によって得られるのに対し、図7のテーブルは、G1<<G2となるようなゲインの調整に相当するものであり、この場合、部分補正値Δu1およびΔu2の組み合わせにおいて、図5のテーブルが優位となる。
監視手段24と用いられる2つのコントローラによって、総てが揃った補正テーブルを得ることができ、しかも、必要なメモリーは、ほぼ図4および図5のテーブルに相当する量のみに限定されるので有利であることは明らかである。
図8および図9をでは、一例として、図8のグラフN(t)上に示されているように、瞬間t0に「足を上げた」後に、瞬間t1に、より大きな値でアイドリングしきい値(例えば、Ns=1700r.p.m)を越えてしまうという一般的な状況における、本発明に基づく方法の1つの動作様式を説明する。
この同じ図のグラフE(t)およびE’(t)上では、外乱なしに生じると仮定されるしきい値通過時に、誤差Eは非常に大きい(装置の運動特性の正しい適応化によってNTGとコード化される、-1000に近い)のに対し、導関数は正の中程度の値(同様の適応化によってPMとコード化される)であることがわかる。
図9のテーブルのAには、こうしたアイドリング段階に入る初期の条件におけるこのテーブル内のエンジンの「軌跡」が示されている。既に図6に関して上記で見たように、このテーブルは、「足を上げた」とき(図8の瞬間t0)の回転数がアイドリングしきい値Nsよりも高い場合に、G1=G2を得られるように監視手段24をプログラミングすることによって得られる。E=NTGおよびE’=PMであるため、開始は制御補正ゼロ(ZE)で行なわれ、エンジンの「軌跡」は、この場合にも外乱がないという仮定において、欄(ZE)を含む直線上を、最適な状態で継続していくことができる。
逆に、例えば、パワー・ステアリング装置の作動などの外乱が関与する場合には、図9のBに示されているような軌跡が見られる。パワー・ステアリングの作動は、更にエンジンを制動しようとし、アイドリング段階の開始は、この場合、パワー・ステアリングによってエンジンに加えられる負荷によるエンジンの制動の増大のために、例えば、E=NTGおよびE’=PTGで行なわれる。
このエンジン回転数の急速すぎる低下(これにより、エンストが生じる場合がある)を鈍化させるために、バルブ13によって供給される空気量を増やすことによってエンジンの発揮トルクを増大させることが必要であり、この場合、エンジンの制御は、減速段階においても噴射を遮断せずに行なわれ、噴射される燃料の量はコンピュータ2によってバルブ13から供給される空気量に適合させられる。バルブ13の制御の補正が適切な値のものであれば、誤差Eおよび誤差の導関数E’は、順次的補正PG、PM、PPそしてZEのための軌跡Bを辿って減少する。
空気バルブの開き制御の補正が不十分な場合には、導関数E’は大きな値のまま(軌跡C)であるのに対し、誤差Eは減少する。これにより、このバルブの開きは増大され(軌跡は、ZEの欄の直線から遠ざかる)、開きの増大は、制御の補正がこのゼロ補正の直線に戻らしめるに十分なだけ導関数E’が減少するまで続く。この場合、コントローラ19および19’は強調作用して、速さおよび操縦の快適性の点で良好な条件においてエンジンが設定回転数に復帰することができるようにする。
次に、図10〜図12では、他の一般的状況、すなわち、図10のグラフN(t)上に示されているように、アイドリング調節段階の開始は瞬間t1における「足を上げた」ときに行なわれるが、回転数は既にアイドリングしきい値Nsよりも下に低下しているという状況における本発明に基づく制御方法の動作を説明する。
瞬間t1においては、図10のグラフE(t)およびE’(t)は、誤差が比較的大きく(NG)、この誤差の導関数E’はほぼゼロ(ZE)であることを示している。図9のテーブルに基づいたテーブル11には、こうした初期条件において一般的に見られるエンジンの「軌跡」をAで示した。最初に加えられる負の補正(NG)は、エンジンの発揮トルクを減少させることにより、エンジンを更に減速させる。矢印の方向に軌跡Aを辿ることにより、誤差Eが正になる(E>ZE)ことさえもわかる。すなわち、回転数が設定値Ncよりも下に低下するということであるが、この状態は許容できない(エンストのおそれがある)。
こうしたおそれを防止するために、このような初期条件を伝達された監視装置24は、ゲイン比G1/G2を減少させて、エンジンの理想的状態の軌跡のイメージ直線をBからB’に回転させる(図12参照)。このような条件において、図11の軌跡Aは、図12に示されている形A’となる。この軌跡は、この場合、設定回転数よりも下の回転数を経ることなく、従って、エンストのおそれなしに、理想的状態の軌跡のイメージ直線に復帰することがわかる。
既に見たように、監視装置は、「足を上げた」時点におけるエンジン回転数と、場合によっては、例えばエアコンのコンプレッサの作動に左右されるエンジンの「負荷」、あるいは、更に、エンジンによって推進される自動車が走行しているか否かの情報を、入力情報として使用することができる。
こうして、例えば、車両がエンジンをかけたまま停止している場合、監視装置は、「足を上げた」ときの回転数が設定アイドリング回転数から離れていればいるほどゼロ補正ZEの直線の傾斜が大きくなるようにゲインG1とG2の比を調整する(図6参照)。同様に、車両が走行しているときには、監視装置は、この直線が水平線に近くなるようにG1とG2との比を調整する(図7参照)。
上記の2つの状況の間において、また一方では図8および図9に関連して、そして他方では、図10〜図12に関連して、あらゆる中間の状況が可能であり、監視装置24は、これらの状況に応じて、とりわけ、上記で見たように、アイドリング調整段階の開始時のエンジン回転数に応じて、G1/G2の比を適合させる。
このような段階において、エンジンが車両を駆動し続ける場合には(運転者がクラッチペダルを踏まない場合)、本発明に基づく制御方法では、快適性と車両の操縦の楽しみを害するノッキングや振動を避けるために、回転数の誤差Eの影響を減少させることが望ましい。こうして、監視装置は、この誤差を感知する1つ目のコントローラ19の影響を減少させることにより、すなわち、2つのコントローラのゲイン比G1/G2を減少させることによって、この状況を考慮する。
言うまでもなく、本発明は、例としてのみ示したものである説明および図示されている実施態様に限定されるものではない。例えば、監視装置24は、アイドリング調節段階の開始時のエンジン回転数と負荷に応じてだけではなく、エンジンの冷却水温度、気温等のような他の初期条件にも応じてゲイン比を調節するように設計することもできる。

Claims (13)

  1. アイドリング段階において内燃機関の回転数(N)を制御するための方法であって、
    誤差E=NC−Nに依存して前記回転数(N)に影響するアクチュエータの制御を補正することによって、前記回転数(N)を制御し、
    前記誤差E=NC−Nは、設定回転数(NC)と実際の回転数(N)との間の誤差である形式の方法において、
    該内燃機関の理想的状態の軌跡を形成し、
    前記軌跡は、アクチュエータの制御を補正せずに回転数(N)を単調で素早く滑らかに変化させることによって設定回転数(NC)が復帰可能である該内燃機関の状態に相応する誤差(E)および該誤差(E)の時間導関数(E')の特定の値の対によって定義され、
    該内燃機関の実際の状態と該内燃機関の理想的状態の軌跡との間の偏差に依存してアクチュエータの制御を補正することを特徴とする方法。
  2. アクチュエータの制御の補正値(Δu)を、それぞれ回転数誤差(E)とこの誤差の時間導関数(E')によって構成される2つの入力を有するテーブルから引き出すことを特徴とする、特許請求範囲の第1項記載の方法。
  3. テーブルがアクチュエータの制御の補正(Δu)用の特定の値(NTG〜PTG)を含んでおり、このそれぞれの値がそれぞれ誤差(E)、誤差の導関数(E')、そして特定の値(NTG〜PM)および(NM〜PTG)の組み合わせに関連付けられていることを特徴とする、特許請求範囲の第2項記載の方法。
  4. エンジンの理想的状態の軌跡が、前述のテーブル中において、同一直線上に並んだ欄(ZE)の集まりに一致していることを特徴とする、特許請求範囲の第3項記載の方法。
  5. 表の1つの斜線から、誤差(E)およびこの誤差の時間導関数(E')がゼロの値(ZE)になる欄を中心として該斜線を回転させることにより、前述の直線が導き出されることを特徴とする、特許請求範囲の第4項記載の方法。
  6. アクチュエータの制御の補正値(Δu)を、それぞれ前述のテーブルならびに別の1つのテーブルから引き出した部分補正値(Δu1,Δu2)の線形組み合わせ(G1・Δu1+G2・Δu2)から引き出し、この2つ目のテーブルが、これによって定められる部分補正値(Δu2)の特定の値(NM〜PTG)を、誤差の導関数(E')の特定の値(NM〜PTG)に対応させることを特徴とする、特許請求の範囲の第3項から第5項までのいずれか1項記載の方法。
  7. 前述の線形組み合わせの係数(G1,G2)が、アイドリングに入ったエンジン回転数(N)、ならびに、場合により、エンジンの負荷によって定められることを特徴とする、特許請求範囲の第6項記載の方法。
  8. 下記を含むことを特徴とする、特許請求範囲の第1項から第項までのいずれかに記載の方法を実施するための装置:
    (a)エンジンの実際の回転数(N)のセンサー(3)から送出される第1の信号と、アイドリング設定回転数の予め定められた値(NC)を表わす信号とに基づいて、回転数誤差(E)を表す第1の信号と、この誤差の時間導関数(E')を表す第2の信号を送出するための手段(16,17,18)、
    (b)前述の第1および第2の信号により明らかになっているエンジンの実際の状態(E,E')とこのエンジンの理想的状態の軌跡との偏差に応じて、アクチュエータ(11; 12; 13)の制御の補正値(Δu)を、前述の第1第2の信号ならびに補正Δuの特定値の記憶手段とから引き出す、前述の信号によって作動するコントローラ(19)。
  9. (a)エンジンの実際の回転数(N)のセンサー(3)から送出される第1の信号と、アイドリング設定回転数の予め定められた値(N C )を表す信号とに基づいて、回転数誤差(E)を表す第1の信号と、この誤差の時間導関数(E')を表す第2の信号を送出するための手段(16,17,18)と、
    (b)前述の第1および第2の信号により明らかになっているエンジンの実際の状態(E,E')とこのエンジンの理想的状態の軌跡との偏差に応じて、アクチュエータ(11; 12; 13)の制御の第1の補正値(Δu)を、前述の第1と第2の信号ならびに補正(Δu)の特定値の記憶手段とから引き出す、前述の信号によって作動する第1のコントローラ(19)と、
    (c)エンジン回転数誤差の導関数(E')を表す第2の信号で作動する第2のコントローラ(19')とを含んでおり、
    第1のコントローラ(19)と第2のコントローラ(19')が、これらのコントローラのそれぞれの入力信号に応じてアクチュエータ制御用の1番目の部分補正信号(Δu1)と2番目の部分補正信号(Δu2)を送出し、また、これらの部分補正信号を供給されて、これらの部分補正信号(Δu1,Δu2)の線形組み合わせによって生成されるアクチュエータの制御用補正信号(Δu)を生成する手段20,20',24を含んでいることを特徴とする、請求項6または7記載の方法を実施するための装置。
  10. 前述のアクチュエータの制御用補正信号(Δu)の生成手段(20,20',24)が、それぞれ第1のコントローラ(19)と第2のコントローラ(19')の出力信号によって作動するゲイン(G1),(G2)の増幅器(20),(20')と、これらの増幅器(19,19')の出力信号を付加するための手段(25)とからそれぞれ構成されていることを特徴とする、特許請求の範囲の第9項記載の装置。
  11. エンジン回転数が設定回転数を下回らないようにし、かつストールの危険性を排除するため、アイドリング段階の開始時に存在する状態に依存して、前述の増幅器のゲイン値(G1,G2)を制御して、第1のテーブル内のエンジンの理想的状態の軌跡のイメージ直線を回転させる監視手段(24)を含んでいることを特徴とする、特許請求の範囲の第10項記載の装置。
  12. 前述の監視手段(24)が、アイドリングに入る時のエンジン回転数(N)と、場合により、エンジンが受ける負荷とを感知できることを特徴とする、特許請求の範囲の第11項記載の装置。
  13. アクチュエータの被制御パラメータが、追加空気制御バルブ(13)の開き、および燃料噴射装置(11)の開き時間、ならびにガス制御用電動スロットルバルブの制御によって構成される集まりの中から選択されることを特徴とする、特許請求の範囲の第8項から第12項までのいずれか1項記載の装置。
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