JP3722996B2 - エンジンの出力制御装置 - Google Patents

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  • Control Of Throttle Valves Provided In The Intake System Or In The Exhaust System (AREA)
  • Control Of Driving Devices And Active Controlling Of Vehicle (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンへの吸入空気量を調節するスロットル弁の開度を、エンジンの回転数やギヤ情報等の運転情報に基づいて電子的に制御する電子制御スロットルシステムを備えたエンジンの出力制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両では、運転者のアクセル操作量に応じて、エンジンの吸気管内に設けられたスロットル弁を機械的に作動させ、エンジンの吸入空気量を調整することによりエンジンの出力を制御している。
近年、エンジン制御の電子化に伴い、例えば、特開平2−201061号公報に開示されているような、アクセル操作量(アクセル開度)を電気的に検出してスロットル弁を電子的に作動させる電子制御スロットルシステムが注目されている。この電子制御スロットルシステムは、アクセル開度と車速とエンジン回転数とからエンジンの目標トルクを算出し、電動モータにて上記スロットル弁を動作させ、エンジンの出力を制御するものである。
【0003】
このような電子制御スロットルシステムでは、エンジンの燃焼状態を決定づける吸入空気量の緻密な制御を行うことができるので、例えば、年々厳しくなる各種排ガス規制をクリアするための高度なエンジンの燃焼制御に用いられる。すなわち、従来のエンジンへの供給燃料量制御に加え、上記電子制御スロットルシステムによってエンジンに吸入される空気量を制御することにより、エンジンから排出される排気ガス特性に大きな影響を及ぼす空燃比(エンジンへの吸入空気量と供給燃料量との比)を正確に制御することが可能となる。したがって、運転状態に応じた燃焼状態を実現でき排ガスの低減を図ることができるとともに、車両の走行状態や運転者の運転操作に応じたエンジンの出力制御を行うことができるので、エンジン側の要求に応じた出力制御が任意に設定でき、自由度の高いエンジン特性を得ることができる。
【0004】
更に、最近、燃費低減,排ガス低減,エンジンの出力向上といった一見相反するニーズをすべて向上させることのできるような技術として話題になっている筒内噴射エンジンのように、超希薄燃焼を行うエンジンにおいては、アクセル開度一定の運転状態、つまり、運転者のエンジンへの要求トルクが一定の状態で通常燃焼と希薄燃焼とを切換えた場合のエンジン出力トルクの変動を抑えるため、エンジンの吸入空気量を精密に制御することが必要となってきている。この筒内噴射エンジンは、従来の希薄燃焼エンジンに比べて燃料の希薄度が高いため上記吸入空気量の制御範囲が広く、吸入空気量を更に精密な制御が必要である。
エンジンの吸入空気量を制御する装置としては、アイドル運転時において、スロットル弁を閉じた状態とし、吸気管内の上記スロットル弁をバイパスする空気通路の空気量を空気制御弁にて制御することにより、エンジンのアイドル回転を制御する装置がある。また、特定の運転状態の場合のみ、スロットル弁を制御してエンジンの出力を制御する装置として、車両を運転者が設定した車速にフィードバック制御するクルーズコントロール装置や、滑りやすい路面での発進時にタイヤがスリップした場合にエンジンの出力を抑えるトラクションコントロール装置等がある。
上述した電子制御スロットルシステムは、これらのエンジンの出力制御を一括して制御するもので、エンジン全体としてみた場合のシステム構成の簡素化と高度な制御の実現を可能としたものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、自動車をバックギヤにて後退運転時においては、車両の進行方向が後方であるため、前進走行時と比べて運転者の運転姿勢が無理な体勢となることが多く、そのため、アクセル操作性が低下する傾向にある。特に、車庫入れや車両の方向切返し等での後退運転においては、比較的低速度で微妙なアクセル操作を要する場合が多く、後退運転時のアクセル操作性の改善が必要とされている。また、後退運転時にはアクセル操作が微妙なため、アクセルを少し踏み過ぎて車速が期待以上に早くなった場合には、車両と運転者の足との位置関係から、運転者がアクセル操作をしていなくても、車両の後退加速度により、結果的にアクセルを更に踏み越してしまうことになり、車速が更に増加してしまうことも考えられる。更に、後退運転時には、運転者が後方を向いている場合が多く、ブレーキ操作の遅れも懸念されるため、万一、これらの状況が重なるようなことが起きた場合には、狭い場所で行われる機会が多い後方運転においては、最悪、後方の物体と接触する可能性が考えられる。
【0006】
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたもので、バックギヤで後退運転を行う場合のエンジンの出力上昇や出力変動を抑制し、安定した運転が可能となるような電子制御スロットルシステムを備えたエンジンの出力制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載のエンジンの出力制御装置は、変速機がバックギヤの状態にある場合には、スロットル弁の開度を算出するための目標スロットル開度予め設定されたエンジン回転数Neに応じた上記目標スロットル開度よりも小さな値に置換えて、エンジンへの吸入空気量を調節するスロットル弁の開度規制を行い、エンジンの出力を抑制するようにしたものである。
【0011】
本発明の請求項に記載のエンジンの出力制御装置は、負荷が接続されている場合には、上記負荷の内、予め指定された負荷の稼動を強制的に停止してスロットル弁の開度を算出するようなスロットル弁の開度規制を行うものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は本発明に関わるエンジン出力制御装置を備えたエンジン制御システムの一実施の形態を示す全体構成図で、1は通常の自動車用エンジン、2は上記エンジン1の図示しない出力軸に接続された変速機(トランスミッション)、3はエンジンの吸気管、4は上記吸気管3に取り付けられ、エンジン1への吸入空気量を調整するスロットル弁、5は上記スロットル弁4の位置を検出するスロットル開度センサ(TPS)、6はモータ6mを備え、上記スロットル弁4の開閉を行うスロットルアクチュエータ、7はエンジン1へ燃料を供給するためのインジェクタ、8はエンジン1の吸気バルブ、9はエンジン1の排気バルブ、10はエンジン1に供給された燃料を燃焼させるための点火プラグ、11は運転者が操作するアクセルペダル12の操作量を検出するアクセル開度センサ(APS)で、アクセル開度情報がエンジン出力を決定するための重要な信号であるので、本例では2個のアクセル開度センサ11a,11bから成る2重系にてアクセル開度センサ(APS)11を構成している。
また、13は上記スロットルアクチュエータ6に指令信号を与えるスロットルコントローラ、14はエアコン15を制御するエアコン作動装置、16は上記トランスミッション2の変速段を制御する変速機制御装置(TCU)、17は運転者の要求エンジン出力を上記アクセル開度センサ(APS)11の出力値から認識し、上記スロットルコントローラ13を介してスロットル弁4を電子的に制御する電子制御スロットルシステムを備え、この電子制御スロットルシステムによってエンジン1への吸入空気量を制御するエンジン出力制御装置(ECU)である。このエンジン出力制御装置(ECU)17は、エンジン1に設けられた回転数検出手段18及び水温センサ19からそれぞれ入力されるエンジン回転数Ne及びエンジン冷却水温度Twや、エンジン1への燃料供給量、点火時期、エアコン15の作動状態等に基づいて、エンジン1の出力を上記要求エンジン出力に制御するもので、更に、ギヤがバックギヤ状態である場合にはスロットル弁4の開度規制を行い、エンジン1の出力を抑制するような制御を行う。なお、上記TCU16とECU17とは情報通信、例えばエンジン1に対するトランスミッション2の接続状態(シフト段)等の情報の送受信を行っている。
【0013】
図2(a)は、エンジン出力制御装置(ECU)17に収納された電子制御スロットルの特性であるアクセル開度センサ(APS)11の出力値とスロットル開度センサ(TPS)5の出力値との関係を示す図で、図2(b)は従来のメカ制御スロットルの特性を示す図である。従来のメカ制御スロットルの場合には、運転者が操作するアクセルペダル12とスロットル弁4とは、アクセルワイヤにて機械的に接続されており、上記スロットル弁4は運転者のアクセル操作量(アクセルペダル12の操作量)と連動して開閉され、その開度は運転者のアクセル操作量にほぼ比例する。
一方、電子制御スロットルの場合、運転者のアクセル操作量はアクセル開度センサ(APS)11の出力値(APS出力値)として検出され、このAPS出力値が運転者のエンジン1への要求トルク情報としてECU17に入力される。ECU17は、このエンジン1への要求トルク情報や上記エンジン回転数Ne等のエンジン1の運転状態に応じてスロットル弁4の開度を制御すべく、スロットルコントローラ13を介して、上記スロットル弁4を操作する。なお、上記スロットル弁4の開度は、スロットル開度センサ(TPS)5の出力値(TPS出力値)としてスロットルコントローラ13を介してECU17にフィードバックされる。また、上記TPS出力値は、APS出力値が増加するに従って増加するが、同じAPS出力値であっても、図2(a)に示すように、エンジン1の高回転時には速やかにスロットル弁4を開き、低回転時には徐々にスロットル弁4を開くように、エンジン回転数Neに応じたスロットル弁4の開度制御を行うようにしている。したがって、電子制御スロットルの場合には運転者の要求トルクに応じたエンジン制御を行うことができる。
【0014】
次に、本実施の形態1に関わるスロットル弁4の開度規制の方法について、図3のフローチャートを用いて説明する。このフローチャートは、エンジンの出力制御装置(ECU)17に組み込まれたエンジン1の制御フロー(制御プログラム)の一部である電子制御スロットルの制御フローである。
制御プログラムが起動(START)すると、ECU17は、燃料供給量制御,点火時期制御等のエンジン制御の処理(ステップS1)を完了した後、電子制御スロットル関連の入力情報を読み込む(ステップS2)。上記入力情報としては、例えば、TCU16から通信にて送られてくるギヤ情報(ニュートラル,1速,2速,バック等)、エアコン作動装置14からのエアコン15の作動要求信号(A/C情報)、回転数検出手段18からのエンジン回転数Ne、アクセル開度センサ(APS)11からのAPS出力値等がある。入力情報の読み込みが終了すると、ECU17は、現在運転者の要求エンジン出力を得るためのエンジン1への吸入空気量を調節するため、予め設定されたAPS出力値とエンジン回転数Neとをパラメータとする目標スロットル開度のマップデータから、上記APS出力値と上記エンジン回転数Neとに応じた目標スロットル開度(TPSN)を算出する(ステップS3)。
次に、ECU17は、上記ステップS2で読み込んだギヤ情報から、現在のギヤ状態がバックギヤ(車両後退走行)かどうかの判定処理を行う(ステップS4)。現在のギヤ状態がバックギヤである場合には、例えば、予め設定されたエンジン回転数Neに応じた所定の係数K(K<1)を、上記ステップS3で算出した目標スロットル開度(TPSN)に乗算した値である目標スロットル開度補正値(TPSZ)を求めるような補正を行い(ステップS5)、更に、上記補正された目標スロットル開度(TPSZ)とTPS出力値との偏差ΔTPSの値に応じたモータ6mのモータ制御量を算出し、スロットル開度を上記目標スロットル開度補正値(TPSZ)にすべく、スロットル弁4の開閉を制御する(ステップS6)。なお、上記ステップS4において、現在のギヤ状態がバックギヤ状態でない場合には、ステップS6に進み、上記ステップS3で算出した目標スロットル開度(TPSN)とTPS出力値との偏差ΔTPSの値に応じたモータ6mのモータ制御量を算出し、スロットル開度を上記目標スロットル開度(TPSN)になるよう、スロットル弁4の開閉を制御する。
【0015】
図4(a),(b),(c)は、車両後退運転時におけるアクセル操作量とスロットル開度及び車速の挙動を示す図で、図中、破線は運転者の期待値の挙動を、実線はメカ制御スロットルを有する従来装置の挙動を、一点鎖線は本発明の電子制御スロットルを有するエンジンの出力制御装置の挙動を示す。また、同図において、運転者のアクセル操作量に対応するAPS出力値をAPS0、スロットル弁4の開度に対応するTPS出力値をTPS0、車両の車速をVsとした。なお、上記車速Vsは、トランスミッション2の後段に連結された図示しない車輪の駆動軸に設けられた車速センサ(図示せず)から、ECU17に入力される。運転者は、図4(a)に示すように、時刻T1から徐々にアクセルペダル12を踏み込み、時刻T3にはアクセルを上記APS0がAPS01で停止するように操作することにより、図4(b)に示すように、上記TPS0をTPS01に保持して、図4(c)に示すように、車速VsをVs01とした後退運転をしようと期待している。
ところが、実際には時刻T2(T1<T2<T3)で車両が動き出したことで、車両の後退加速度により、運転者が相対的にアクセルペダル12を踏み増してしまうことがある。この場合、従来装置では、スロットル弁4の開度はアクセル操作量に比例するので、スロットル弁4は上記踏み増し量に応じた量だけ開き側へ開いてしまい、更にエンジン出力が増大する。したがって、時刻T3では車速Vsが更に加速されるので、運転者による上記アクセルペダル12の踏み増しが繰り返される。この繰り返しでの踏み増し量は徐々に小さくなり、上記APS0がAPS03となったところ(時刻T4)でAPS0はほぼ一定値となる。このとき、TPS0は、上記APS0変化に伴って増加し、スロットル弁4はTPS0がTPS03となるまで開き側へ開くので、結果的に、車速VsはVs03まで上昇してしまうことになる。
一方、本実施の形態1においては、ギヤ状態がバックギヤである場合には、図4(b)に示すように、スロットル弁4の開度を抑制するような開度規制、すなわち、演算された目標スロットル開度(TPSN)に対して予め設定されたエンジン回転数Neに応じた所定の係数K(K<1)を乗算して目標スロットル開度の値を抑制し、上記抑制された目標スロットル開度値に基づいてスロットル弁4の開度を制御するようにしているので、車両発進時に、仮にアクセルペダル12を踏み増しした場合でも車速の上昇を抑制することができ、更に、踏み増し量が小さいために踏み増しの繰り返しもほとんどない。したがって、TPS0を上記TPS03より小さな値に保つことができるので、車速Vs02を上記Vs03に比較して小さな値に抑制でき、後退運転時の車速の急変を抑制することができる。
【0016】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、ギヤがバックギヤ状態である場合には、図3の制御フローにおいて、目標スロットル開度(TPSN)に対してエンジン回転数Neに応じた所定の係数K(K<1)を乗算し、上記目標スロットル開度を規制するような補正を行ったが、上記制御フローのステップS5に示した目標スロットル開度の補正において、スロットル開度の開側の最大値を制限することにより、更に的確なスロットル弁4の開度規制を行なうことができ、後退運転時の車速上昇をより確実に抑制することができる。
図5は、上記スロットル弁4の開度規制を行なうフローチャートを示すもので、現在のギヤ状態がバックギヤである場合には、予め設定されたエンジン回転数Neと目標スロットル開度の上限値である上限スロットル開度(TPSMax)との関係から、当該エンジン回転数Neに応じたTPSMaxを求め(ステップS511)、上記TPSMaxと目標スロットル開度TPSNとを比較する(ステップS512)。上記TPSNが上記TPSMax以上である場合には、スロットル弁4の開度を規制するため、上記TPSNをTPSMaxに置き換え(ステップS513)た後、次のステップ(図3のステップS6)に進み、この置き換えられたTPSNに基づいてスロットル弁4の開閉を制御する。上記ステップS512において、TPSNがTPSMax未満である場合には、スロットル開度そのものが小さいのでスロットル開度を規制する必要がない。したがって、この場合には、図3のステップS3において求めたTPSNに基づいてスロットル弁4の開閉を制御する。
【0017】
次に、本実施の形態2のスロットル開度規制を行った場合の動作について、図6(a)〜(f)を用いて説明する。図6において、(a)図は車両のギヤ状態、(b)図は運転者のアクセル操作量に応じたAPS出力値であるAPS1、(c)図及び(d)図は従来のTPS出力値であるTPS1及びエンジン回転数Ne1、(e)図及び(f)図は本実施の形態2におけるTPS出力値であるTPS2及びエンジン回転数Ne2の時間変化を示す。
はじめに車両のギヤ状態は前進状態で、APS出力値APS1がAPS10であったとする。運転者は、時刻T1からT2間でAPS1がAPS11の状態となるまでアクセルペダル12を踏み込み、ある時間経過した後、時刻T3からT4間でアクセルペダル12を再びAPS10の状態に戻す。その後、時刻T5において車両のギヤ状態をバックギヤに設定して後進状態とし、時刻T6からT7間でアクセルペダル12をAPS11の状態まで踏み込み、ある時間経過した後、時刻T8からT9間でアクセルを再びAPS10の状態に戻すような操作を行ったとする。
このとき、従来装置では、スロットル開度TPS1は上記APS1(図3(b))と連動して動作するため、TPS1はAPS1と同一動作をし、APS1がAPS11の状態では、TPS1はTPS11まで上昇し、これに伴ってエンジン回転数Ne1がNe11まで上昇する。時刻T5までの前進状態運転時には、本実施の形態2のTPS2も、従来装置と同様にTPS21まで上昇し、これに伴ってエンジン回転数Ne2がNe21まで上昇する。
しかしながら、時刻T5からの後進状態運転時においては、従来装置では、上記前進状態運転時と同様に、アクセル開度状態がAPS11に増加したときには、TPS1はTPS11まで上昇し、これに伴ってエンジン回転数Ne1がNe11まで上昇するが、本実施の形態2においては、エンジン回転数Neにより、TPS1はその上限値が上限スロットル開度(TPSMax)により制限されているので、このときの上記TPSMaxをTPS22とすると、スロットル開度TPS2は、上記TPS22を越えることがない。したがって、エンジン回転数Ne2は上記Ne11よりも低い回転数であるNe22に抑制されるので、後退運転時の車速上昇を抑制することができ、バックギヤで後退運転を行う場合にも安定した運転を可能とすることができる。
【0018】
実施の形態3.
上記実施の形態2では、スロットル開度の開側の最大値を制限することにより後退運転時の車速上昇を抑制するようにしたが、スロットル弁4の開側への動作速度を制限するようなスロットル弁4の開度規制を行うことにより、後退運転時の車速上昇を抑制するようにしてもよい。
すなわち、図7の制御フローに示すように、現在のギヤ状態がバックギヤである場合には、まず前回のステップS4におけるギヤ状態の判断でもギヤ状態がバックギヤであったかどうかを判定し(ステップS521)、前回及び今回ともギヤ状態がバックギヤであると判定した場合には、前回の後退走行運転時において算出された目標スロットル開度(TPS0)と今回算出された目標スロットル開度(TPSN)との偏差(δTPSN)を算出し(ステップS522)、上記偏差(δTPSN)と予め設定された基準偏差(TPSrate)とを比較し(ステップS523)、上記δTPSNが上記TPSrate以上である場合には、ステップS524に進み、スロットル弁4の開度の動作速度を規制するため、目標スロットル開度(TPSN)を上記TPS0と上記TPSrateとの和に置き換え(TPSN=TPS0+TPSrate)、次のステップ(図3のステップS6)において、この置き換えられたTPSNに基づいてスロットル弁4の開閉を制御する。上記ステップS523において、δTPSNがTPSrate未満である場合には、スロットル開度の動作速度が遅いのでスロットル開度の動作速度を規制する必要がない。したがって、図3のステップS3において求めたTPSNに基づいてスロットル弁4の開閉を制御する。なお、上記ステップS521において、今回はじめてギヤ状態がバックギヤになったと判定した場合には、今回求めたTPSNに基づいてスロットル弁4の開閉を制御する。
【0019】
次に、本実施の形態3のスロットル開度規制を行った場合の動作について、図6(a)〜(d)及び(g),(h)を用いて説明する。なお、図6(a)〜(d)については上記実施の形態2と同一であるので、説明を省略する。
図6(g),(h)は本実施の形態3によるTPS出力値TPS3とエンジン回転数Ne3の時間変化を示す図で、時刻T5までの前進状態運転時には、スロットル開度TPS3は、従来装置と同様にTPS11まで上昇し、これに伴ってエンジン回転数Ne3がNe31まで上昇する。時刻T5からの後進状態運転時では、上述したように、後退運転時のスロットル弁4の開側への動作速度が制限されているので、運転者が、時刻T6からT7間でアクセルをAPS11の状態まで踏み込んでも、TPS3はゆっくりと上昇するため、TPS2が上記TPS11に達する時刻TSは上記T7よりも遅れるため、エンジン回転数Ne3の上昇が抑制される。なお、同図において時刻TSをT6<TS<T7としたが、時刻T6と時刻T7の間隔によっては、TPS3が上記TPS11に達しない場合もある。いずれにしろ本実施の形態3においては、図6(h)に示すように、回転数Ne32は、上記Ne31よりも低く抑制されるので、バックギヤで後退運転を行う場合にも安定した運転を可能とすることができる。
【0020】
実施の形態4.
上記実施の形態2,3では、バックギヤ状態において、スロットル弁4の開度そのものを制限することにより後退運転時の車速上昇を抑制するようにしたが、図8の制御フローに示すように、目標スロットル開度(TPSN)を算出するためのエンジン回転数Neをアイドル運転時のアイドル制御目標回転数に固定してスロットル弁4の開度を算出するようなスロットル弁4の開度規制を行い、エンジン回転数の上昇を抑制することができる。
すなわち、現在のギヤ状態がバックギヤである場合には、目標スロットル開度を求めるマップデータとして、アイドル運転時のアイドル制御目標回転数(ISC−Ne)とAPS出力値とをパラメータとするスロットル開度のマップデータを用いてAPS出力値を求め、このAPS出力値を目標スロットル開度(TPSN)として、スロットル弁4の開閉を制御する。
図9は、本実施の形態4に係わるバックギヤ状態におけるスロットル制御のタイムチャートを示す図で、(a)図は運転者のアクセル操作量に応じたAPS出力APS1、(b)図及び(c)図は従来装置のTPS出力値TPS1とエンジン回転数Ne1、(d)図及び(e)図は従来の電子制御スロットル対応システムのTPS出力値TPS2とエンジン回転数Ne2、(f)図及び(g)図は本実施の形態4のTPS出力値TPS3とエンジン回転数Ne3である。
はじめに車両のギヤ状態は後進状態で、アクセル開度状態がAPS10の状態であったとする。運転者は、時刻T1からT2間でアクセルペダル12をAPS11の状態まで踏み込み、ある時間経過した後、時刻T3からT4間でアクセルを再びAPS10の状態に戻すような操作を行ったとする。
このとき、従来装置では、TPS1は上記APS1と連動して動作するため、上記APS1がAPS11の状態ではTPS1はTPS11まで上昇し、これに伴ってエンジン回転数Ne1がNe11まで上昇する。また、従来の電子制御スロットルでは、TPS2は上記TPS1とは異なりエンジン回転数Ne2に応じて上昇するが、上記TPS1がNe21まで上昇する時刻T5(T2<TK<T3)までは増加し、その後ほぼ一定の値となるように変化する。それに対して、本実施の形態4においては、目標スロットル開度を算出するためのエンジン回転数をアイドル運転時のアイドル制御目標回転数、例えば、1000rpmに固定しているので、図9(f)に示すように、TPS3はAPS1の上昇に関係なくほぼ一定値TPS33にクリップされる。したがって、エンジン回転数Ne3は上記Ne13や上記Ne23よりも低い回転数であるNe33に抑制され、車速の上昇を抑制することができる。
【0021】
実施の形態5.
ところで、エンジン1にエアコン等の負荷が接続されており、その負荷が稼動している場合には、ECU17は、上記負荷を稼動させるため、目標スロットル開度(TPSN)を開側に補正し、エンジン出力を増加させるようにしている。上記負荷としては、パワ−ステアリング等の車両の運転状態に直接関連する負荷の他に、エアコン等の運転状態に関係ない負荷がある。また、エアコンの負荷量は特に大きいので、エアコンのオン・オフによる目標スロットル開度(TPSN)の増減も大きい。そこで、現在のギヤ状態がバックギヤである場合には、図10の制御フローに示すように、車両の運転状態に関係がなくかつ負荷量の大きいエアコン(A/C)15をオフ状態とし、後退運転時のエンジン回転数の変動を抑制することにより、車速の変動を抑制することができる。
図11は、車両にエアコンが接続されている場合のバックギヤ状態おけるスロットル制御のタイムチャートを示す図で、(a)図は運転者のアクセル操作量に応じたAPS出力APS4、(b)図はエアコン(A/C)の稼動状態、(c)図は電子制御スロットルでのTPS出力値TPS4で、実線は従来装置でのTPS出力値、破線は本実施の形態4のTPS出力値である。また、(d)図はエンジン回転数Ne4で、実線は従来装置の、破線は本実施の形態5のエンジン回転数である。
従来装置でのTPS出力値TPS4は、図11(c)に示すように、時刻T1におけるAPS4の増加に伴って増加するが、時刻T5(T5>T1)でのエアコン15の稼動によるエンジン回転数Ne4の低下を吸収するために、TPS4をΔTPSkだけ開側に補正した値TPS41として、エンジン回転数Ne4をNe41まで上昇させる。また、APS4の増加がない場合でも、例えば、時刻T7でのエアコン15が稼動した場合には、上記エアコン15によるエンジン回転数の低下を吸収するために、再度スロットル開度をΔTPSkだけ開側に補正する。このように、従来装置では、エアコン15の稼動によりTPS4がステップ状にΔTPSkだけ変化するので、エンジンの回転数変動を招くことになる。
それに対して、本実施の形態5においては、例えば、時刻T5あるいは時刻T7におけるように、エアコン15の稼動要求があった場合でも、ECU17は、エアコン15をオフのままにするよう制御するので、エンジン1に対するエアコン15の負荷変動が生じない。したがって、TPS4を補正する必要がないので、エンジン回転数は上記Ne41よりも低いNe42に抑制できるとともに、車速の変動を抑制することができる。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、変速機がバックギヤの状態にある場合には、スロットル弁の開度を算出するための目標スロットル開度予め設定されたエンジン回転数Neに応じた上記目標スロットル開度よりも小さな値に置換えて、エンジンへの吸入空気量を調節するスロットル弁の開度規制を行い、エンジンの出力を抑制するようにしたので、後退運転時のエンジンの出力上昇や出力変動を抑制することができ、安定した後退運転を行うことができる。
【0026】
本発明の請求項に記載のエンジンの出力制御装置は、負荷が接続されている場合には、上記負荷の内、予め指定された負荷の稼動を強制的に停止してスロットル弁の開度を算出するようなスロットル弁の開度規制を行うようにしたので、エアコン等の稼動による負荷変動が生じることがなく、したがって、車速の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わるエンジン制御システムの全体構成図である。
【図2】 電子制御スロットル及びメカ制御スロットルの特性図である。
【図3】 本発明の実施の形態1に係わるスロットル制御フローを示す図である。
【図4】 本実施の形態1に係わるアクセル操作量とスロットル弁開度及び車速との関係を示す図である。
【図5】 本実施の形態2に係わるスロットル制御フローを示す図である。
【図6】 本実施の形態2及び本実施の形態3に係わるアクセル操作量とスロットル弁開度及びエンジン回転数との関係を示す図である。
【図7】 本実施の形態3に係わるスロットル制御フローを示す図である。
【図8】 本実施の形態4に係わるスロットル制御フローを示す図である。
【図9】 本実施の形態4に係わるアクセル操作量とスロットル弁開度及びエンジン回転数との関係を示す図である。
【図10】 本実施の形態5に係わるスロットル制御フローを示す図である。
【図11】 本実施の形態5に係わるアクセル操作量とスロットル弁開度及びエンジン回転数との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 エンジン、2 変速機(トランスミッション)、3 吸気管、4 スロットル弁、5 スロットル開度センサ(TPS)、6 スロットルアクチュエータ、6m モータ、7 インジェクタ、8 吸気バルブ、9 排気バルブ、 10 点火プラグ、11 アクセル開度センサ(APS)、12 アクセルペダル、13 スロットルコントローラ、14 エアコン作動装置、15 エアコン、16 変速機制御装置(TCU)、17 エンジン出力制御装置(ECU)、18 回転数検出手段、19 水温センサ。

Claims (2)

  1. エンジンの目標回転数に基づいてエンジンへの吸入空気量を調節するスロットル弁の開度を算出し、上記スロットル弁を制御してエンジンの出力を制御するエンジンの出力制御装置において、変速機がバックギヤの状態にある場合には、スロットル弁の開度を算出するための目標スロットル開度予め設定されたエンジン回転数Neに応じた上記目標スロットル開度よりも小さな値に置換えて上記スロットル弁の開度規制を行い、エンジンの出力を制御するようにしたことを特徴とするエンジンの出力制御装置。
  2. 負荷が接続されている場合には、上記負荷の内、予め指定された負荷の稼動を強制的に停止してスロットル弁の開度を算出するスロットル弁の開度規制を行うことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの出力制御装置。
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