JP3725529B2 - さとうきび収穫機の油圧駆動装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、さとうきび収穫機(ケーンハーベスター)の油圧駆動装置に関するものであり、全長を可及的に短くして小型化、軽量化、低価格化し、比較的作業能率が高く、作業能率が高い割に廉価であり、さとうきび栽培農家が個人専用機として使用することができるものである。
【0002】
【従来の技術】
刈り取り、裁断し、ハカマ(幹に付着している葉)を分離し風選して、幹部だけをかごや袋などに収集するさとうきび収穫機(ケーンハーベスター)は従来公知であり(例えば、特開昭55−48318号公報、特開平5−153836号公報)、刈り取り、裁断機構は共通であるが、搬送機構、風選装置、エンジンの配置については様々なものが実用されている。その一つの従来技術が図1に示されているものであり、これは全体機構が最も単純で、機能的にも優れたものである。
【0003】
上記従来のさとうきび収穫機は、クローラ1で自走して、左右一対のクロップディバイダー2でさとうきびを引き起こしながら機内に引き込み、ベースカッタ3で根切りする。ベースカッタ3で根切りされたさとうきびは、その螺旋状の跳ね上げ具3aでその下端(根元)を跳ね上げられる。跳ね上げられたさとうきびは、その直後に配置された引き込み装置4に根元から引き込まれ、引き込み装置4の送りローラ4aで斜め上方に指向され、搬送ローラコンベア5の下端に無理なく誘導されて搬送ローラコンベア5に引き込まれ、これによって斜め上方に引き上げられる。搬送ローラコンベア5の上端まで引き上げられたさとうきびは搬送ローラコンベア5の上端に設けたチョッピング装置6でほぼ30cm程度の長さに切断されて風選装置7に落とされる。風選装置7に落とされたさとうきびは、ブロア7aによって吹き上げられる高速空気流によってハカマが幹部から分離されて、幹部が袋Bに収集される。風選装置7で幹部から分離されたハカマはファン7bによる吸引装置で上方に吸引され、その排出口から排出される。
【0004】
ベースカッタ3で切断されたさとうきびを、引き込み装置4で搬送ローラコンベア5へ指向させ、搬送ローラコンベア5で上方に引き上げることで、刈り取り後のさとうきびの処理をスムーズにかつ能率的に行うことができるので、作業能率が高い。
長いさとうきびを引き込み装置4で引き込み、斜めの搬送ローラコンベア5の傾斜方向に誘導する引き込み装置4は、斜め上方に小さく傾斜しており、引き込んださとうきびをさらに上方に指向させて搬送ローラコンベア5に無理なく引き渡すために、上下一対のロールによる送りローラ4aを3組備えている。なお、引き込み装置4から搬送ローラコンベア5への引き渡し角度が搬送ローラコンベア5の傾斜角度に比して小さいと、さとうきびが送りローラ5a間の隙間から突き出て搬送ローラコンベア5から逸脱し、地面に落下するばかりでなく、送りローラ5a間の隙間から突き出て突っ掛かって停止したさとうきびが、後続のさとうきびのスムーズな搬送の障害となり、搬送が滞留し、刈り取り作業を中断せざるを得なくなる可能性が高い。したがって、引き込み装置の送りローラは、2組では引き込んださとうきびをさらに上方に指向させることはできないので、最低限3組が必要である。
【0005】
また、さとうきびを引き込み装置4から引き取り、斜め上方に引き上げ、その上端のチョッピング装置6に供給する搬送ローラコンベア5の傾斜角度は約45度であり(曲りくねった細長いさとうきびを引き込み装置4からスムーズに引き取り、斜め上方にスムーズに指向させるにはこれ以上の傾斜角度は無理である)、また、その送りローラ5aは、曲がりくねった長細いさとうきびでも、送りローラ5a間の隙間から突き出て脱落することなく確実に、かつスムーズに搬送されるように密に配列されている。もし、送りローラ5aの配置密度が粗であると、送りローラ5a間の隙間から、さとうきびが突き出て突っ掛かって停止し、停止したさとうきびが後続のさとうきびのスムーズな搬送の障害となり、搬送が滞留し、刈り取り作業を中断せざるを得なくなる可能性が高いので、送りローラ5aの配置密度を高くすることが避けられない。
【0006】
また、さとうきび収穫機は地面が軟らかいさとうきび畑を走行するのであるから重量が左右にバランスしていることが重要である。また、搬送ローラコンベア5及びチョッピング装置6の下部に空間があるので、この空間にエンジンを横置きにして配置してエンジンの重量が左右に均等にかかるようにしている。また、このさとうきび収穫機では、エンジンでポンプを駆動し、クロップディバイダー、ベースカッタ、引き込み装置の引き込みローラ、搬送コンベアの送りローラ、走行駆動輪等は全てオイルモータで駆動されるようになっている。このように多くの機器が油圧で駆動されるので、多量の作動油が必要であり、この作動油の放熱のために大型のオイルタンクが必要であり、その重量は大である。このため大型オイルタンクを運転台の後方に配置している。
【0007】
なお、クロックディバイダーは油圧シリンダS1によって昇降操作され、また、ベースカッタ3及び引き込み装置4は枠体が同じであって、油圧シリンダS2によって昇降操作され、作業時には図示の位置に下降している。
以上の従来のさとうきび収穫機は、全体機構、作動が、従来の他の方式のものに比してシンプルで、耐久性に優れており、高い作業能力を有するが、しかし、他の方式のものと同様に、大型、大重量になることが避けられず、また、高価なものになる。したがって、さとうきび栽培農家が自家用作業機として購入するには高価すぎるという側面がある。また、上記従来のさとうきび収穫機は大面積のさとうきび畑での収穫作業には適しているが、比較的狭いさとうきび畑での収穫作業には大きすぎて不向きであるという面もある。このようなことから、従来のさとうきび収穫機(ケーンハーベスタ)は、わが国における比較的小規模のさとうきび農家には普及し難いという側面がある。
【0008】
他方、稲作からさとうきび栽培に転換する農家が徐々に増加しているので、中小規模のさとうきび栽培農家が増えることが予想される。
以上のようなことから、作業能率は幾分低くても、上記従来のさとうきび収穫機と全く同様の機能を有し、小型、軽量で廉価なさとうきび収穫機が求められている。
小型、軽量化、製造コスト低減を図るには、機構を単純化し、長さを短くしなければならない。しかし、クロップディバイダーからベースカッタまでの機構は、さとうきびの引き起こし、根切りに関わるものであるから、その機構の小形化は可能であるが簡略化は困難であり、また、クロップディバイダーからベースカッタまでの長さはさとうきびの高さに関連するから、この間の長さを短くすることはほとんどできない。
【0009】
したがって、さとうきび収穫機の全体機構を単純化し、全長を短縮化するには、ベースカッタよりも下流側(さとうきびの流れの方向において下流)の装置、すなわち、引き込み装置、搬送装置、風選装置についてその機構を単純化し、これらの配置、エンジンの配置を工夫して、ベースカッタよりも下流側の装置の集約化を図る他はない。
【0010】
【特許文献1】
特開昭55−48318号公報
【特許文献2】
特開平5−153836号公報
【0011】
【先行技術】
そこで、さとうきび収穫機について、その機能を低下させることなしに、小型化、軽量化、低価格化を図ることを目的とし、そのために、ベースカッタよりも下流(さとうきびの流れの方向において下流)の機器、すなわち、引き込み装置、搬送装置、風選装置を単純化し、これらの配置、エンジンの配置を工夫して、ベースカッタから下流側の装置全体を集約化するという課題を解決した小型のハーベスタがある(特願2003−135419号。以下これを「先行技術」という)。
【0012】
先行技術の要点は次のとおりである。
クロップディバイダー、ベースカッタ、引き込み装置、斜め上方に搬送する搬送装置、チョッピング装置、風選装置、吸引装置を有し、エンジンによってポンプを駆動し、走行装置、作業装置をオイルモータで駆動し、クローラで自走するさとうきび収穫機を前提として、
(イ)上記引き込み装置を前後2組の送りローラによるものとし、この引き込み装置の後方にチョッピング装置を配置し、
(ロ)上記搬送装置をJ型チェンコンベアとして、その下端水平部分を上記チョッピング装置の下方に配置し、
(ハ)上記J型チェンコンベアの傾斜部の下方の空間に上記風選装置を配置し、当該風選装置のダクトを傾斜ダクトとしてJ型チェンコンベアの傾斜部の下面に沿わせ、上記ダクトの下部にブロアを配置し、当該ダクト上端をJ型チェンコンベア上端の下方に位置させ、上記風選装置の傾斜ダクトの上端の上方に吸引装置が設けられており、
(ニ)上記エンジンをチェンコンベアの一方の横に、前後方向に向けて配置し、反対側にオイルタンクを配置したものである。
【0013】
そして、上記先行技術は、次のとおりの特有の作用効果を奏する。
すなわち、ベースカッタ、引き込み装置、チョッピング装置、搬送コンベア、風選装置が前後方向に密に集約された状態で配置され、機器配置の全長が大幅に短縮される。そして、その結果、クローラの長さが短縮され、また、機構を単純化し、小形化した結果、作業能率は低下するが、その分だけ引き込み装置、チョッピング装置、搬送コンベアによる一連の装置の幅が狭くなるので、その横にエンジンとオイルタンクとを縦置きに配置することが可能である。そして、オイルタンクを搬送コンベアの横に配置した結果、従来オイルタンクが配置されていた運転室の下部後方の空間が空くので、この空いた空間から、引き込み装置、チョッピング装置などをメンテナンスすることができ、これらの保守点検を極めて容易に行うことができる。
【0014】
また、処理能力の低下割合に比して、大幅に小形化、軽量化されており、大型の従来のさとうきび収穫機に劣らない機能を有し軽便で小回りが利くので、その利用性は極めて高く、さとうきび栽培農家の自家用機として普及することが確実に期待され、その結果、中小規模のさとうきび栽培農家の労働負荷を軽減することができ、また、労力節減に大きく貢献することができる。
以上の先行技術の具体的な機構は次のとおりである(図2〜図6参照)。
【0015】
クロックディバイダー2、ベースカッタ3の機構は基本的には従来のさとうきび収穫機と違いはないが、小形化し、また、左右一対のクロックディバイダー2をそれぞれ単一のロールによるものにしている。そして、ベースカッタ3と引き込み装置10及びチョッピング装置11が一つの枠体に取り付けられており、この枠体が油圧シリンダS2によって昇降操作される。
【0016】
引き込み装置10は、上下ローラによる前後2組の送りローラ10aを備えており、油圧モータで駆動されるチェン伝動装置を備え、このチェン伝動装置を介して前後上下の各ローラが駆動される。
4つの送りローラ10aのうちの下側の2つのローラは固定で、互いにチェンで連動しているが、上側の2つのローラはその中間の歯車を介して互いに連動しており、上記歯車軸を支持点とする支持アームによって上下方向に可動に支持されている。上下一対の2組の送りローラ2組で引き込み装置10を構成することができ、引き込み装置10は上下一対の2組の送りローラ2組で構成されたものであるから、前後方向の長さが短く、かつその支持機構、駆動機構が単純であり、したがって、従来技術における引き込み装置4に比して極めて小型、軽量である。
【0017】
上記チョッピング装置11は、上下一対のローラによる把持ローラとカッタ11aからなるものであり、油圧モータによって、ギヤを介してカッタ及び把持ローラが駆動される。引き込み装置10の後方の送りローラから繰り出されるさとうきびは、チョッピング装置11のカッタ11aで把持され細断される。なお、さとうきび収穫機のカッタには様々な形式のものがあるが、この例では、さとうきびの流れをスムーズにするために、2軸回転刃方式を採用しており、その機構の概要は次のとおりである。
互いに同速度で回転する上下2軸のうちの上軸に180度の間隔で切断刃11xが2枚セットされており、下軸にロール11yが固定されている。そして、このロール11yの外周の切断刃11xが当たるところに、緩衝のためのウレタンゴムが埋め込まれている。そして、引き込み装置11の送りローラ11aから繰り出されたさとうきびを切断刃11xとロール11y間に挟み込みつつ切断刃11xで切断する。
【0018】
チョッピング装置11の後方にJ型チェンコンベア12が配置されている。このJ型チェンコンベア12は、左右のコンベアチェン12a,12aの間に多数の羽根12bを等間隔で配置し、左右のコンベアチェン12aを羽根12bで連結した、いわゆる羽根付きチェンコンベアであり、細断されたさとうきびをこの羽根12bに載せて搬送するものである。この羽根付きチェンコンベアそれ自体は従来周知のものであり、その外観は図6に示すとおりである。
この先行技術では、J型チェンコンベア12の傾斜部の傾斜角度は約60度であり、その長さは200cmであり、幅は50cmである。J型チェンコンベア12の下端の水平部の長さは約50cmであって、チョッピング装置11のカッタの下方に約20cm入り込んでいる。
【0019】
J型チェンコンベア12の傾斜部の下方空間に風選装置13の傾斜ダクト13aがあり、J型チェンコンベア12の下面に沿って斜め上方に傾斜した状態で配置されている。この風選装置13の傾斜ダクト13aの幅は約50cmであり、その上端13eがJ型チェンコンベア12の上端部の下方に位置している。
また、上記傾斜ダクト13aの下部に送風ファン13bがあって、傾斜ダクト13aに風選用風を高速で送り込んでいる。この例では、ダクト13aの上端開口の断面積は650cm2であり、風速40m/秒で風が吹き出される。
上記傾斜ダクト13aの上端13eの開口部に縦方向の整流板が一定間隔で設けられており、J型チェンコンベア12の上端から落下するさとうきびに対して傾斜ダクト13aの上端13eの開口部から斜め上方に向けて風が吹き付けられるようにしている。
【0020】
J型チェンコンベア12の羽根で後方に放り出された落下するさとうきびが、斜め上方に吹き付けられる風によって後方に押し出され、J型チェンコンベア12の上端よりも後方にある収納袋Bのほぼ中央に落下し、収納袋Bの全面にほぼ均等に順次収納されてゆく。
また、J型チェンコンベア12の上端から放り出された直後に、斜め下方から吹き上げられ、ハカマは下から呷られ、さらに吸引装置15によって上方に強力に吸引されるので、さとうきびの幹から確実に分離される。
なお、吸引装置15のケーシングに対する取付け構造は図1の従来例と違いはなく、そのケーシングの上方壁の外にオイルモータがあり、当該オイルモータのファン軸ががケーシングの上方壁を貫通してケーシング内に突出しており、当該ファン軸の下端にファンが取付けられている。
【0021】
また、J型チェンコンベア12の枠の上端に吸引ダクト14が取り付けられており、この吸引ダクト14に吸引装置15を載せて固定していて、その排出口が後方に開口している。ただし、排出口は左方又は右方に開口させることもできる。したがって、分離されたハカマは吸引装置15によって吸引ダクト14から吸引され、吸引装置の上記開口から後方、左方又は右方に排出される。
また、上記風選装置13の傾斜ダクト13aの後方に収納袋Bを装着する袋支持部16があり、J型チェンコンベア12の上端から落下し、ハカマが分離された幹部を収納袋Bに収納するようになっている。
【0022】
ところで、この先行技術の車体フレームの一部平面形状の概要は図4に示すとおり、車体のメインフレームFの後部が左右に張り出している。この右側の張出部(サブフレーム)F1に40馬力のディーゼルエンジンを、前後方向に向けて搭載してあり、また、左側の張出部(サブフレーム)F2に容量が180リットルのオイルタンクTを載せて固定している。
以上の先行技術は、その作業能力が従来のさとうきび収穫機の約50%であるが、車体フレームの全長が560cmで、上記従来のさとうきび収穫機に比して50cm短縮されており、また、作業機の高さが330cmであって、従来のものに比して30cm低い。また、重量が3.8t(トン)で、従来のさとうきび収穫機に比して約2t軽減されており、さらに、走行クローラの前後方向長さが160cmで、従来のさとうきび収穫機に比して約20cm短縮されている。
【0023】
ところで、先行技術のさとうきび収穫機のクロックディバイダー2、ベースカッタ3、引き込み装置10、チョッピング装置11、J型チェンコンベア12、風選装置13、吸引装置15は、個々にオイルモータで駆動されている。
他方、運転中にさとうきびがかみ込んで回転が停止したときに、かみ込んださとうきびを排出するためにただちに逆転させる必要がある装置と、運転中は駆動、停止の繰り返しを避けることが望ましい装置とがあり、また、操作性を単純にするとともに油圧駆動装置の単純化のために、その切り替え弁、操作レバーをできるだけ少なくし、油圧配管構造を単純化することが望まれる。
【0024】
【解決しようとする課題】
そこで、本発明は、上記要求に応えることを目的とし、先行技術の作業装置の油圧駆動装置について、その駆動回路を可及的に単純にし、その切り替え弁、操作レバーをできるだけ少なくするとともに、油圧配管構造を単純化するするように油圧駆動装置の配置、油圧回路を工夫することをその課題とするものである。
【0025】
【課題解決のために講じた手段】
上記課題解決のために講じた手段は、クロップディバイダー2、ベースカッタ3、引き込み装置10、斜め上方に搬送する搬送装置、チョッピング装置11、風選装置13、吸引装置を有し、エンジンによってポンプを駆動し、走行装置、作業装置をオイルモータで駆動し、クローラで自走するさとうきび収穫機であって、
上記引き込み装置10は前後2組の送りローラによるものであり、この引き込み装置の後方にチョッピング装置11が配置されており、
上記搬送装置がJ型チェンコンベア12であり、その下端水平部分が上記チョッピング装置11の下方に配置されており、
上記J型チェンコンベア12の傾斜部の下方の空間に上記風選装置13が配置され、当該風選装置13のダクトがJ型チェンコンベアの傾斜部の下面に沿って配置された傾斜ダクトであり、上記ダクトの下部にブロアが配置され、当該ダクト上端がJ型チェンコンベア上端の下方に位置し、J型チェンコンベア上端の上方に吸引装置が配置されており、上記J型チェンコンベアの一方の横に、前後方向に向けてエンジンが配置され、反対側にオイルタンクが配置されているさとうきび収穫機の油圧駆動装置を前提として、次の(イ)〜(ハ)によるものである。
(イ)クロップディバイダー2のオイルモータを一つのポンプに接続し、左右のクロップディバイダーのオイルモータを直列に接続したこと、
(ロ)ベースカッタ3のオイルモータ、引き込み装置10のオイルモータ、チョッピング装置11のオイルモータを他の一つのポンプに切り替え弁を介して接続し、ベースカッタ3のオイルモータ、引き込み装置10のオイルモータ、チョッピング装置11のオイルモータを直列に接続したこと、
(ハ)J型チェンコンベア12のオイルモータ、風選装置13のオイルモータ、吸引装置15のオイルモータをさらに他のポンプに接続し、J型チェンコンベア12のオイルモータ、風選装置13のオイルモータ、吸引装置15のオイルモータを直列に接続したこと。
【0026】
【作用効果】
上記3つのポンプがエンジンによって駆動され、それぞれの開閉弁が開かれると、左右のクロップディバイダーが同速度で順方向に回転し、また、チェンコンベア、風選装置、吸引装置が順方向に駆動される。
他方、ベースカッタ、引き込み装置、チョッピング装置は、切り替え弁が中立位置にあるときは停止しており、切り替え弁の切り換えによって、正転、逆転する。ところで、先行技術のさとうきび収穫機においては、さとうきびがかみ込むのはベースカッタからチョッピング装置までの間であり、他にはさとうきびがかみ込むところはない。ベースカッタからチョッピング装置の間にさとうきびがかみ込んだときは、上記操作レバーを逆転位置に切り替えることで、ベースカッタ、引き込み装置及びチョッピング装置は直列に接続されているのでこれらが同時に逆転し、かみ込んださとうきびが前方へ排出される。他方、クロップディバーダー、また、チェンコンベア、風選装置及び吸引装置は、開閉弁で始動、停止されるだけであるから常に正転方向に回転し、逆転することはない。
【0027】
そして、最前方に位置するクロップディバーダーと、ベースカッタ、引き込み装置及びチョッピング装置と、最後方に位置している風選装置、チェンコンベア及び吸引装置とが、それぞれひとまとまりとしてそれぞれのポンプに直列に接続されており、さらに、ベースカッタ、引き込み装置及びチョッピング装置が切り替え弁を介してポンプに接続されているので、それぞれの駆動油圧回路は簡略化され、油圧駆動装置の製作コストが著しく低減される。
また、これら3系統の油圧駆動回路がそれぞれ別個のポンプで駆動され、かつ、各系統内のオイルモータは近隣に配置され、かつ直列に接続されているから、油圧回路が極めて簡略であり、また、それぞれのポンプの吐出容量は極めて小さくて済み、したがって、ポンプが小型、軽量であり、配管長さが著しく短縮されるので、油圧駆動装置の製作コストが著しく低減される。
【0028】
【実施態様】
ベースカッタ3の後方の引き込み装置の後方にチョッピング装置を近接して配置し、チョッピング装置で細断されたさとうきびをJ型チェンコンベアの水平部で受けて、これを斜め上方に搬送するようにしたところに、先行技術の最大の特徴がある。この場合、引き込み装置の引き込みローラと、チョッピング装置の押さえローラ及びカッタをほぼ等速で回転させなければならず、他方、引き込み装置とチョッピング装置は一体化され、ベースカッタとともに一つの支持構造物に取り付けられてユニット化される。したがって、ベースカッタのオイルモータ、引き込み装置のオイルモータ、チョッピング装置のオイルモータを直列接続して無理なく配管することが可能であり、また、これらの油圧回路は著しく簡略になり、各モータ間の配管長さが短縮されるので、配管作業が簡単容易であり、そのコストが著しく低減される。
【0029】
【実施例】
この実施例のさとうきび収穫機の全体機構は先行技術のさとうきび収穫機と違いがない。
そして、クロップディバイダー2のオイルモータ2m、ベースカッタ3のオイルモータ3m、引き込み装置10のオイルモータ10ma,10mb、チョッピング装置のオイルモータ11m、風選装置13のオイルモータ13m、チェンコンベア12のオイルモータ12m、吸引装置15のオイルモータ15mが前方から順に後方に配置されている。引き込み装置10は所定位置で回転する前後一対の下方引き込みローラと上下動可能な上方引き込みローラとを有し、上方引き込みローラがオイルモータ10maで、下方引き込みローラがオイルモータ10mbでそれぞれ駆動される。
左右のクロップディバイダー2の油圧駆動装置を第1の油圧駆動系統としてこれをポンプP4で駆動し、ベースカッタ3、引き込み装置及びチョッピング装置を第2の油圧駆動系統としてこれをポンプP2で駆動し、風選装置、チェンコンベア12及び吸引装置15を第3の油圧駆動系統としてこれをポンプP3で駆動している。
【0030】
ポンプP1,P2,P3からなる3連ポンプのうちのポンプP1は、走行用ポンプであって、走行方向及び走行速度制御のための走行制御弁、ステアリングのために流量分配弁を介して、左右のクローラのオイルモータがポンプP1に接続されている。なお、走行制御、ステアリング制御のため油圧駆動装置は、従来周知のものであるから、その詳細な説明は省略している。
上記第1の油圧駆動系統においては、ポンプP4の吐出口が一方のクロップディバイダー2,2の一方のオイルモータ1mの一次側(入り口側)に開閉弁を介して接続されており、当該一方のオイルモータ1mの二次側(出口側)が他方のオイルモータ2mの一次側に接続され、他方のオイルモータ2mの二次側が戻り管Mを介してタンクTに接続されている。一方のオイルモータ2mと他方のオイルモータ2mとは回転方向が逆で、同速度で回転し、ポンプP4の回転速度が変化するにつれてその回転速度が変化する。
【0031】
また、上記第2の油圧駆動系統においては、ポンプP2の吐出口がチョッピング装置11のオイルモータ11mの一次側に接続されており、オイルモータ11mの二次側が引き込み装置のオイルモータ10maに接続されている。オイルモータ10maとオイルモータ10mbとは直列に接続されており、オイルモータ10mbの二次側がベースカッタのオイルモータ3mの一次側に接続されており、当該オイルモータ3mの二次側が戻り管Mを介してタンクTに接続されている。
さらに、上記第3の油圧駆動系統においては、ポンプP3の吐出口が吸引装置のオイルモータ15mの一次側に開閉弁を介して接続されており、オイルモータ15mの二次側が風選装置のオイルモータ13mの一次側に接続され、オイルモータ13mの二次側がチェンコンベアのオイルモータ12mの一次側に接続され、オイルモータ12mの二次側が戻り管Mを介してタンクTに接続されている。
【0032】
第1の油圧駆動系統のポンプP4とオイルモータとの間、第3の油圧駆動系統のポンプP3とオイルモータ15mとの間には開閉弁が介在するだけで、切り替え弁は介在しておらず、他方、第2の油圧駆動系統のポンプP2及び戻り管Mと、オイルモータ11m及びベースカッタのオイルモータ3mとの間に切り替え弁Vがある。この替え弁Vは運転台の操作レバーによって切り替え操作され、これによってポンプP2からの作動油の流れの方向が切り換えられて、チョッピング装置、引き込み装置、ベースカッタがともに逆転駆動され、ベースカッタ3とチョッピング装置の間に介在するさとうきびが速やかに前方に排出される。
各油圧駆動系統のオイルモータは互いに直列接続されているから、下流側の作業機に過大負荷がかかるとその上流側のポンプの背圧(バックプレッシャー)が異常に上昇して様々な不都合を生じるので、この異常なバックプレッシャーを逃がすように、それぞれにドレンが設けられている。
【0033】
また、ポンプP1の定格吐出量は、回転速度2000rpmで毎分最高約40lであり、これによって走行オイルモータが駆動され、さとうきび収穫機は3km/h(ただし、0〜3km/hの範囲で可変)で直進走行し、操向レバー操作で、左右の走行オイルモータの回転速度が加減され、転向操作がなされる。
また、ポンプP2の定格吐出量は、回転速度2000rpmで毎分40lであり、オイルモータ11m、10ma及び10mbは、上記定格流量で140rpmで回転する容量であり、また、オイルモータ3mは上記定格流量で300rpmで回転する容量である。
【0034】
また、ポンプP3の定格吐出量は、回転速度2000rpmで毎分40lであり、オイルモータ15m、オイルモータ13mは上記定格流量で2000rpmで回転し、オイルモータ12mは、上記定格流量で最高160rpmで回転する容量である。この実施例においては、チェンコンベアの搬送速度を必要な限度に抑制するために、流量制御弁(通称「フローコントロールバルブ」FCによるバイパス回路をJ型チェンコンベアのオイルモータ12mと並列に設けて、オイルモータ13mからの作動油の一部が流量制御弁FCを経てタンク戻るようにしている。流量制御弁FCからの戻りが多いほどオイルモータ12mの回転速度が抑制される。この流量制御弁FCからのバイパス流量を調整することによって、オイルモータ12mの回転速度、すなわち、チェンコンベアの搬送速度を適宜調整することができる。
【0035】
さらに、ポンプP4の定格吐出量は、回転速度2000rpmで毎分24lであり、クロップディバイダーのオイルモータは、上記定格流量で140rpmで回転する容量である。
【0036】
以上のように、この実施例はエンジンでポンプP1,P2,P3,P4を直結で駆動し、全ての作業装置、すなわち、クロックディバイダー2、引き込み装置10、チョッピング装置11、J型チェンコンベア12、風選装置13、吸引装置15を上記ポンプからの作動油で駆動する。
また、クロックディバイダー2の昇降シリンダー、ベースカッタ3、引き込み装置10及びチョッピング装置11を1ユニットとして昇降させる昇降シリンダー、収納袋B用リフトの昇降シリンダーを、ポンプP5からの作動油で駆動する。
【図面の簡単な説明】
【図1】は従来のさとうきび収穫機の側面図である。
【図2】は先行技術のさとうきび収穫機の側面図である。
【図3】は先行技術における搬送チェンコンベア及び風選用吸引装置の側面図である。
【図4】は先行技術における車体フレムの平面形状、引き込み装置、チョッピング装置、搬送チェンコンベア、エンジン、オイルタンクの車体フレーム上での配置を模式的に示す平面図である。
【図5】はチョッピング装置のカッタの側面図である。
【図6】は羽根付きチェンコンベアの一部拡大図である。
【図7】はこの発明の実施例を模式的に示す側面図である。
【符号の説明】
1:クローラ
2:クロップディバイダー
2m:クロップディバイダーのオイルモータ
3:ベースカッタ
3m:ベースカッタのオイルモータ
10:引き込み装置
10a:送りローラ
10m:引き込み装置のオイルモータ
11:チョッピング装置
11a:ベースカッタ
11m:ベースカッタのオイルモータ
12:J型チェンコンベア
12m:J型チェンコンベアのオイルモータ
13:風選装置
13a:傾斜ダクト
13b:送風ファン
13e:傾斜ダクトの上端
13m:風選装置のオイルモータ
14:吸引ダクト
15:吸引装置
15m:吸引装置のオイルモータ
Claims (2)
- ベースカッタ3の後方の引き込み装置10の後方にこれに近接してチョッピング装置11を配置し、ベースカッタ3、引き込み装置10、チョッピング装置11を同じ支持構造物に取り付けてユニット化してあり、チョッピング装置11で細断されたさとうきびをJ型チェンコンベア12の水平部で受けて、これを斜め上方に搬送するようにし、これらをそれぞれのオイルモータで独立して駆動するさとうきび収穫機の油圧駆動装置において、
ベースカッタのオイルモータ、引き込み装置のオイルモータ、チョッピング装置のオイルモータを互いに直列に接続して油圧回路が構成されており、さらに当該油圧回路が切り替え弁を介して専用のポンプに接続されている、さとうきび収穫機の油圧駆動装置。 - クロップディバイダー2、ベースカッタ3、引き込み装置10、斜め上方に搬送する搬送装置、チョッピング装置11、風選装置13、吸引装置を有し、エンジンによってポンプを駆動し、走行装置、作業装置をオイルモータで駆動するものであって、クローラで自走するさとうきび収穫機であって、上記引き込み装置10は前後2組の送りローラによるものであり、この引き込み装置の後方にチョッピング装置11が配置されており、
上記搬送装置がJ型チェンコンベア12であり、その下端水平部分が上記チョッピング装置11の下方に配置されており、
上記J型チェンコンベア12の傾斜部の下方の空間に上記風選装置13が配置され、当該風選装置13のダクトがJ型チェンコンベアの傾斜部の下面に沿って配置された傾斜ダクトであり、上記ダクトの下部にブロアが配置され、当該ダクト上端がJ型チェンコンベア上端の下方に位置し、J型チェンコンベア上端の上方に吸引装置が配置されており、上記エンジンをチェンコンベアの一方の横に、前後方向に向けてエンジンが配置され、反対側にオイルタンクが配置されているさとうきび収穫機の油圧駆動装置において、
上記クロップディバイダー2のオイルモータを一つのポンプに接続し、左右のクロップディバイダーのオイルモータを直列に接続し、
上記ベースカッタ3のオイルモータ、引き込み装置10のオイルモータ、チョッピング装置11のオイルモータを切り替え弁を介して他の一つのポンプに接続し、ベースカッタ3のオイルモータ、引き込み装置10のオイルモータ、チョッピング装置11のオイルモータを直列に接続してあり、
上記J型チェンコンベア12のオイルモータ、風選装置13のオイルモータ、吸引装置15のオイルモータをさらに他のポンプに接続し、J型チェンコンベア12のオイルモータ、風選装置13のオイルモータ、吸引装置15のオイルモータを直列に接続している、さとうきび収穫機の油圧駆動装置。
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