JP3714166B2 - グロメット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はグロメットに関し、詳しくは、自動車に配索するワイヤハーネスに組みつけて、車体パネルの貫通穴に装着し、貫通穴の挿通部分におけるワイヤハーネスの保護および防水、防塵を図るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車のエンジンルームから車室内へ配索されるワイヤハーネスにはグロメットを装着して、エンジンルームと車室とを仕切る車体パネルの貫通穴にグロメットを取り付けて、貫通穴を通るワイヤハーネスの保護およびエンジンルーム側から車室への防水、防塵、遮音を図っている。
【0003】
この種のグロメットとして、車体パネルの貫通穴にグロメットを一方向より押し込むだけで、グロメットの外周に設けた車体係止凹部が貫通穴の周縁に係止される所謂ワンモーショングロメットが提供されている。
【0004】
図8に示すように、上記グロメット1は小径筒部2と、該小径筒部2に連続する拡径筒部3を備え、該拡径筒部3の大径側の外周面に車体係止凹部4を設けており、該車体係止凹部4の溝4aを挟む両側壁は、大径側が垂直壁4bで、対向する小径側は傾斜壁4cとなっている。
【0005】
図9に示すように、上記グロメット1は、小径筒部2から拡径筒部3の中空部にワイヤハーネスW/Hを通し、小径筒部2の先端側でテープTにより固着している。車体パネルPの貫通穴Hへの装着作業は、小径筒部2より挿入し、傾斜壁4cを内方に潰すように変形させて貫通穴Hを通過させ、通過後に復帰する傾斜壁4cと垂直壁4bとを車体パネルPの両面に密着させて、グロメット1の車体係止凹部4を車体パネルPの貫通穴Hに装着している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記したワンモーショングロメットの場合、拡径筒部3の外径が貫通穴Hの内径より小さい間はスムーズに挿入でき、拡径筒部3の外径が貫通穴Hの内径より大きくなった時点より作業者は力を入れて押し込む必要がある。
しかしながら、拡径筒部の外周面は滑らかな錐面となっているため、強い力で押し込まなけらばならない位置(貫通穴の内径とグロメットの外径が略一致する接触位置)を正確に認識できず、かつ、貫通穴の中心とグロメットの軸線とを正確に一致させずに挿入すると、上記接触位置に達するまでにグロメットの外周面が貫通穴の内周面と接触する。
このため、作業者は最初から大きな押し込み力でグロメットを貫通穴に押し込み作業することとなり、作業負担が増大している。
【0007】
さらに、図10に示すように、グロメット1が貫通穴Hに斜め挿入されると、一方側の拡径筒部3が過度に押圧され、車体係止凹部4の傾斜壁4cに達するまでの薄肉の拡径筒部3の外周面を内側へと変形させて、内方へと撓ませるべき傾斜壁4cを逆方向の外方へ反り返る方向に屈曲させてしまい、この傾斜壁4cが車体パネルPに当たって貫通穴Hに挿入できなくなる問題がある。
【0008】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたもので、グロメットを貫通穴に押し込んで係止するワンモーショングロメットにおいて、強い押し込み力が必要な位置を作業者が明確に認識できるようにして、無用な負担を無くし、かつ、斜め挿入された場合にも、グロメットが貫通穴と接触する位置で、挿入方向を是正できるようにすることを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、小径筒部と、該小径筒部に連続する拡径筒部を備え、該拡径筒部の外周面に車体係止凹部を設けており、上記小径筒部側から車体パネルの貫通穴に挿入して上記車体係止凹部を上記貫通穴に係止するグロメットであって、
上記車体係止凹部は上記拡径筒部の大径側の垂直壁と、該垂直壁と対向する小径側の傾斜壁を溝を挟んで備え、該傾斜壁を内方に撓ませて、上記貫通穴を通過させるようにしており、
上記拡径筒部の外周面には、軸線方向に延在する複数の突条部を小径筒部側より傾斜壁先端側へと放射状に突設し、かつ、各突条部は、上記小径端側から上記貫通穴の内径と略同一の外径となる接触点までは突出量を徐々に大きくし、接触点の傾斜壁側を切り欠いて段差部を設け、該段差部から傾斜壁側へは突出量を減少させ、傾斜壁先端と同一高さとなる位置から傾斜壁先端まではグロメットの軸線と平行な直線状としていることを特徴とするグロメットを提供している。
【0010】
上記グロメットでは、車体パネルの貫通穴に挿入する時、上記段差部に達すると節度感を発生させる。よって、作業者は節度感が生じるまで、グロメットを貫通穴に強い力で押し込む必要はなく、節度感を得た時点からグロメットを一気に強い力で貫通穴に押し込めば良いため、作業者の負担を軽減できる。
また、貫通穴が段差部に落ち込んだ時点で、グロメットの軸線を貫通穴の中心と略一致する直ぐな姿勢として、斜め挿入姿勢を是正することができる。
かつ、グロメットの拡径筒部の外周面に沿って軸線方向に突条部を設けると、グロメットが斜め挿入された場合、貫通穴の内周面に接触することで、作業者は斜め挿入していることが早期段階でわかり、真っ直ぐな挿入姿勢にやり直すこともできる。
【0011】
上記各段差部の切欠面は傾斜させ、貫通穴の内周面が滑り落ちるように段差部の下端に嵌まり込むようにしている。
【0012】
さらに、上記突条部の間の窪み部には溝を設け、突条部の外面が貫通穴の内周面と接触して内側へと撓ませる時に、溝を中心として縮径方向に撓み易くしている。
上記各窪み部内に設ける上記溝は、窪み部の幅方向の中心に1本あるいは/および上記突条部の根元部に2本設けている。
この場合、上記中心溝と上記両側溝を同じ長さとしてもよいし、両側溝は傾斜壁の先端側まで突出させ、中心溝は先端近傍までとして長さを短くしてもよい。
【0013】
上記突条部の突出量は上記車体係止凹部の傾斜壁先端の突出量と同一となる位置から、突条部の外面を軸線方向と平行として傾斜壁先端に連続させていることが好ましい。これにより、貫通穴を傾斜壁に引っかけることなく、車体係止凹部へとスムーズに導くことができる。
【0014】
上記拡径筒部の大径側の先端には薄肉の端面部を設け、該端面部の中央より第2の小径筒部を突出させ、該第2の小径筒部の対向位置にスリットを設けて、小径筒部を半円環状の2片に分割している。
上記した第2の小径筒部に、拡径筒部の中空部からワイヤハーネスを挿通して、第2の小径筒部とテープ巻き固定している。
このように、ワイヤハーネスを押込側と反対側の第2の小径筒部と固定しておくと、グロメットの小径筒部側に脱落を発生させる負荷が生じた場合、ワイヤハーネスを第2の小径筒部と固定しているため、脱落方向に対する抵抗力を発生し、グロメットの脱落を防止できる。
また、第2の小径筒部にスリットを入れて2つの片に分割しておくと、ワイヤハーネスを通し易くなる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第一実施形態を図1乃至図7を参照して説明する。
グロメット10はゴムで一体成形しており、挿入側前部の第1の小径筒部11と、後部側の第2の小径筒部12の間に拡径筒部13を連続させた形状であり、拡径筒部13は第1の小径筒部11の連続端より円錐形状に拡径し、大径先端を厚肉とし、その外周面に車体係止凹部14を環状に設けている。グロメット10内に貫通させたワイヤハーネスW/Hに第1の小径筒部11と、第2の小径筒部12とをテープ巻き固定する。
【0016】
上記車体係止凹部14の両側壁は、先端側に突出させた垂直壁14aと、溝14bを挟んで対向させた傾斜壁14cとからなる。溝14bは、その奥に前後方向の肉抜部14d、14eを設けると共に溝底面にリップ14hを突出させている。
【0017】
拡径筒部13の外周面に沿って、周方向に間隔をあけて、第1の小径筒部11と連続する小径側より車体係止凹部14の傾斜壁14cの大径側まで、軸線方向Xに延在する複数の突条部20を突設している。該突条部20は拡径筒部13の外周面より段状に厚肉に突出させた言わばリブ形状としている。
本実施形態では8本の突条部20は同一形状で、小径側端P1より傾斜壁先端P5にかけて周方向に同一幅Wで軸線方向Xに延在させている。
【0018】
拡径筒部13の外周面から突出する突条部20の突出量Hは、小径側端P1から、車体パネルPの貫通穴30への挿通時に貫通穴30の内周面30aとの接触点となる位置までの突出量H1を徐々に大きくし、貫通穴30aと接触する位置に接触点の傾斜側を切り欠いて小径化した段差部20dを設け、 該段差部20dの位置の突出量H3を減少させている。該段差部20dは外径端P2より傾斜させた切欠面20d−1を設け、該切欠面20d−1の下端位置P3より傾斜先端P5と同一高さとなる位置P4までの突出量H4は、上記突出量H1より小さくして滑らかに突出させている。
さらに、突条部20の外面20aが傾斜壁先端P5と同一高さとなる位置P4から上記傾斜壁先端P5までは、突条部20の外面20aをグロメット10の軸線方向Xと平行として直線状に連続させている。
【0019】
各突条部20の幅Wは軸線方向Xで同一としているため、各突条部20は小径側端P1から傾斜壁先端P5にかけて放射状に広がった状態で延在する。小径側端P1側の突条部20の端部20bは隣接する突条部同士が接触した状態で密に配置し、傾斜壁先端P5の突条部20の端部20cは隣接する突条部の間には間隔があき、拡径筒部13の外周面13aからなる三角形状の窪み部21が小径側から大径側へと広がる方向に発生させている。
【0020】
窪み部21の周方向の中心に、軸線方向Xの中心溝22を、突条部20の基部に沿って両側溝23、24を傾斜壁付近まで設けている。これらの溝22、23、24により突条部20を突設して拡径筒部13の剛性を高めても、車体パネルの貫通穴に挿通させる時に、縮径方向に容易に撓むことができるようにしている。即ち、上記溝22、23、24により窪み部21が折り畳まれる方向へとガイドして無理なく縮径させている。
【0021】
上記拡径筒部13の大径側の先端には薄肉の環状の端面部25を設け、該端面部25の内周部より軸線方向Xへ第2の小径筒部12を突出させている。該第2の小径筒部12は、対向位置にスリット12aを設けて、小径筒部12を半円環状の2片12b、12cに分割している。
【0022】
また、グロメット10にはオプション部品に接続する2本のケーブル挿通筒部26を設けている。該ケーブル挿通筒部26が、拡径筒部13の外周面の窪み部21に開口26aを設け、拡径筒部13内を通り、端面部25より突出させて形成している。この突出部26bの先端は閉鎖部26cとし、ケーブルを通す時に切断部26dで切断して開口としている。
【0023】
上記構成のグロメット10をワイヤハーネスW/Hに図7に示すように取り付けて、室外側(Y)と室内側(Z)とを仕切るダッシュパネルからなる車体パネルPの貫通穴30にグロメット10を装着する。
【0024】
上記グロメット10の装着作業について、以下に説明する。
室外側(Y)より第1の小径筒部11を貫通穴30に挿入する。この時、グロメット10が斜め傾斜していると突条部20の一部が貫通穴30の内周面に当たり接触抵抗が生じる。これにより、作業者はグロメット10の挿入姿勢を矯正する。
しかも、突条部20を薄肉の拡径筒部13の外周面に多数突設しているため、拡径筒部13の剛性が高まり、グロメット10が斜め挿入された時に、貫通穴内周面と圧接した部分の拡径筒部13が折り曲がるように変形することを防止できる。
【0025】
グロメット10の拡径筒部13が貫通穴30を通過し、該貫通穴30の内径と同一の外径をもつ突条部20の外径端P2に達すると、貫通穴30は段差部20dに落ち込み、ここで節度感が発生する。
作業者は節度感が生じた時点から、グロメット10を一気に押し込み、突条部20を押し潰すように貫通穴30に通す。この時、突条部20の間の窪み部21に溝22、23、24を設けているため、窪み部21がスムーズに縮径し、かつ、突条部20の傾斜角度も緩やかとして拡径筒部13の外周面からの突出量も少なくしているため、大きな押し込み力を必要せず、低挿入力で押し込みができる。
【0026】
さらに、突条部20の外面20aが、車体係止凹部14の傾斜壁14cの先端突出部と同一高さに達すると、この位置P4から突条部20の外面20aは軸線方向Xと平行となり、貫通穴30内に真っすぐな状態で傾斜壁の突出端が貫通するようにガイドする。
【0027】
傾斜壁14cが貫通穴30を通過すると、初期位置に弾性復帰し、傾斜壁14cと垂直壁14aの間の溝14b内に貫通穴30の周縁部が落し込まれる。この状態で、傾斜壁14cと垂直壁14aの対向面が車体パネルPの両面に圧接し、かつ、貫通穴30の内周面の溝底面に突設したリップ14hと圧接して、グロメット10は車体パネルPの貫通穴30にシール状態で係止される。
【0028】
上記のように、グロメット10は、拡径筒部13の外周面に突条部20を設け、この突条部20に節度用の段差部20dを設けているため、作業者は節度を得た時点で力を加えて一気に押し込めばよく、グロメットの貫通穴への装着作業を余分な負担をかけずに効率良く行うことができる。
【0029】
かつ、グロメットの段差部20dに貫通穴30が落ち込んだ状態で、グロメットの挿入姿勢を、グロメット軸線と貫通穴の中心とが略一致する真っすぐな状態に是正して、一気に押し込むことができる。
【0030】
かつ、グロメット10を車体パネルに装着後に、ワイヤハーネスW/Hが引っ張られて第1の小径筒部11側から脱落させる方向の負荷が発生しても、第2の小径筒部12をワイヤハーネスW/Hにテープ巻き固定してワイヤハーネスW/Hの引っ張り力に抗するため、グロメット10の脱落を防止できる。
【0031】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明に係わるグロメットは、拡径筒部の外周面に軸線方向の突条部を周方向に間隔をあけて突設し、これら突条部に節度用の段差部を設けているため、グロメットを貫通穴に装着する時、作業者は節度感を生じるまで、力を入れずにグロメットを貫通穴に通し、節度感が発生した後、一気に押し込むことにより、グロメット装着作業を作業者に負担をかけずに効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態の右側面図である。
【図2】 図1のII−II線断面図である。
【図3】 図1のIII−III線断面図である。
【図4】 上記グロメットの左側面図である。
【図5】 図2のV−V線断面図である。
【図6】 図2の一部拡大図である。
【図7】 グロメットの貫通穴挿通状態を示す図面である。
【図8】 従来のグロメットの断面図である。
【図9】 従来のグロメットの車体パネルの貫通穴への挿入作業例を示す図面である。
【図10】 従来の問題点を示す図面である。
【符号の説明】
10 グロメット
11 第1の小径筒部
12 第2の小径筒部
13 拡径筒部
14 車体係止凹部
14a 垂直壁
14b 溝
14c 傾斜壁
20 突条部
20d 段差部
22、23、24 溝
25 端面部
26 ケーブル挿通筒部
30 貫通穴
P 車体パネル
W/H ワイヤハーネス
Claims (1)
- 小径筒部と、該小径筒部に連続する拡径筒部を備え、該拡径筒部の外周面に車体係止凹部を設けており、上記小径筒部側から車体パネルの貫通穴に挿入して上記車体係止凹部を上記貫通穴に係止するグロメットであって、
上記車体係止凹部は上記拡径筒部の大径側の垂直壁と、該垂直壁と対向する小径側の傾斜壁を溝を挟んで備え、該傾斜壁を内方に撓ませて、上記貫通穴を通過させるようにしており、
上記拡径筒部の外周面には、軸線方向に延在する複数の突条部を小径筒部側より傾斜壁先端側へと放射状に突設し、かつ、各突条部は、上記小径端側から上記貫通穴の内径と略同一の外径となる接触点までは突出量を徐々に大きくし、接触点の傾斜壁側を切り欠いて段差部を設け、該段差部から傾斜壁側へは突出量を減少させ、傾斜壁先端と同一高さとなる位置から傾斜壁先端まではグロメットの軸線と平行な直線状としていることを特徴とするグロメット。
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