JP5262618B2 - グロメット - Google Patents

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本発明は、自動車の車体に設けられた貫通穴にワイヤハーネスを挿通した状態で取り付けるグロメットに関するものである。
自動車のエンジンルームと車室とを仕切る車体パネルに設けた貫通穴にワイヤハーネスを貫通させて配索する場合、ゴムあるいはエラストマーからなる弾性体のグロメットを介在させて、車室への防水、防塵、遮音等を図っている。
このグロメットにおいて、近年、遮音性向上が求められる傾向にあり、従来より、遮音性を高めた様々なグロメットが提供されている。
例えば、本出願人の先の出願に係る特開2002−58141号(特許文献1)では、図6に示すグロメット1は、ワイヤハーネスを挿通する内筒1aと、該内筒1aの前端を折り返して外筒1bを設けた二重筒構造としている。即ち、外筒1bを後方へと拡径化させて大径部1cを形成し、該大径部1cの外周面に環状の車体係止凹部1dを形成し、該車体係止凹部1dに車体パネルの貫通穴の周縁部を落とし込んで該貫通穴に取り付けられるものとしている。
前記グロメット1は、内筒1aと外筒1bとの間に空隙2を設け、該内筒1aと外筒1bの端部をワイヤハーネスにテープで一体に巻き付け固定して、前記空隙2を遮音用の密閉空間とすることにより、グロメット1の遮音性向上を図っている。
しかしながら、外筒1bの大径部1cが開口となっているため、該開口を通して音が伝わり易い問題がある。
また、本出願人は特開2008−27692号(特許文献2)において、図7に示すグロメット5を提供している。該グロメット5は車体パネルへの挿入力を低減することを目的としたグロメット5であり、大径筒部6の先端側には閉鎖壁7を設け、該閉鎖壁7の中央にワイヤハーネスの挿通穴7aを設け、該挿通穴の周縁よりワイヤハーネスを密着して挿通する小径筒部8を突設している。
前記小径筒部8および閉鎖壁7を設けた場合には、グロメットの金型成形時に大径筒部6内に装填する中子C(図中、一点鎖線で示す)を取り出すために、図示のように小径筒部8は半割り形状とされるとともに、該小径筒部8の割れ部分8aに連続して、図8に示すように閉鎖壁7に径方向の外方に延在するスリット9を設ける必要がある。
このように、閉鎖壁7を設けると遮音性能を高めることができるが、中子Cの取り出し時には、閉鎖壁7を大きく無理開きするため、スリット9の先端に亀裂が入りやすい問題がある。
特開2002−58141号公報 特開2008−27692号公報
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、脱型性がよく、かつ、遮音性にも優れたグロメットの提供を課題としている。
前記課題を解決するために、本発明は、車両に配索されるワイヤハーネスを密着させて挿通する第一小径筒部と、該第一小径筒部に連続する大径筒部と、該大径筒部の大径側の外周面に環状に設けた車体係止凹部と、前記大径筒部の先端側内周面から突設した閉鎖壁部を備えた弾性体からなるグロメットであって、
前記閉鎖壁部の中央にワイヤハーネス挿通穴を設けると共に、該ワイヤハーネス挿通穴の周縁に周方向に間隔をあけて外径方向に向けて延在する第一スリットを連通して設け、かつ、各第一スリットの外端に周方向に円弧状に延在する第二スリットを連続して設け、該円弧状の第二スリットは60度以上240度以下の円弧とし、
前記第一、第二スリットはグロメット成形時における中子の抜き出し時に広げられるものである遮音グロメットを提供している。
前記のように、閉鎖壁に径方向の外方に延在する第一スリットの先端に円弧状の第二スリットを設けることにより、中子の脱型時に第一スリットの先端から亀裂が発生するのを防止できる。これにより、大径筒部の内部も略密閉空間とすることができ、遮音性をより高めることができる。
前記のように、円弧状の第二スリットは60度以上240度以下の円弧としており、より好ましくは180度以上である。
また、前記閉鎖壁部に設ける前記第一スリットは、略対向位置に2個以上または周方向に略等間隔に設ける8個以下、好ましくは4個以下としている。
前記大径筒部は前記第一小径筒部と傾斜壁を介して連続し、該傾斜壁に設けたケーブル挿通用の貫通孔の周縁から前記大径筒部の内部を通るケーブル挿通筒部が突出して設けている場合には、前記閉鎖壁部に前記ケーブル挿通筒部の外周に沿って前記円弧状の第二スリットを設けている。
また、前記閉鎖壁部に設ける前記ワイヤハーネス挿通穴の周縁より第二小径筒部を突設し、該第二小径筒部に前記第一スリットと連続する第三スリットを設け、該第二小径筒部を半割り状としてもよい。
上述したように、本発明のグロメットでは、大径筒部の先端側に閉鎖壁部を設けて、大径筒部と閉鎖壁部に囲まれた内部を密閉構造として遮音空間とする場合に、閉鎖壁に設ける中子取出用のスリットの先端から亀裂を発生させないようにしているため、前記遮音空間を略密閉状に保持でき、遮音性能を高めることができる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図3に、本発明の第一実施形態のグロメット10を示す。
グロメット10は、図1に示すように、自動車の室外(エンジンルーム)Xと車室Yとを仕切る車体パネル60に設けた貫通穴61に取り付けられる。
グロメット10はゴムまたはエラストマーからなる弾性材で一体成形している。
該グロメット10は、ワイヤハーネスW/Hを密着させて挿通する第1小径筒部21、該第1小径筒部21の一端と傾斜壁部22を介して連続する大径筒部23、該大径筒部23の大径側の内周面から突設する閉鎖壁部24を連続して設け、該閉鎖壁部24の中心にワイヤハーネス挿通穴25を設けた形状としている。
軸線方向に連続するこれら第1小径筒部21、大径筒部23、閉鎖壁部24のワイヤハーネス挿通穴25をワイヤハーネス挿通空間としている。
大径筒部23の外周面には、車体パネル60の貫通穴61に嵌合する環状の車体係止凹部27を凹設している。
また、前記第1小径筒部21の内径は、ワイヤハーネスW/Hの外周面に直接密着する寸法に設定している。
前記閉鎖壁部24の中央に設けたワイヤハーネス挿通穴25の周縁より180度間隔をあけて一対の第一スリット30を閉鎖壁部24に径方向の外方(外周側)に向けて設けている。
前記各第一スリット30の先端に図2に示すように、第一スリット30の先端を中心として周方向に延在する円弧状の第二スリット31を設けている。該第二スリット31は略180度の円弧としている。
グロメット10は、図3(A)に示すように、製造時には上下金型40、41内に中子42を位置決め保持した状態でゴムまたはエラストマーの溶融物を充填し加熱成形している。成形後は、図3(B)に示すように、上下金型40、41を離型し、成形されたグロメット10の第一、第二スリット30、31を開いて中子42を脱型する。その際、第二スリット31は大きく開かれ、特に、第二スリット31の先端には周方向への引っ張り負荷がかかり亀裂が生じやすい状態となる。しかしながら、第一スリット30の先端に周方向に延在する円弧状の第二スリット31を設けているため、亀裂が生じるのを防止することができる。
前記グロメット10には、図1に示すようにワイヤハーネスW/Hが挿通され、第1小径筒部21の先端とワイヤハーネスW/Hとの間にテープTを巻き付けて密着している。 前記閉鎖壁部24の中央にワイヤハーネスW/Hを押し開いて挿通した状態で、前記第一、第二スリット30、31も略閉鎖状態となり、これにより、グロメット10の大径筒部23の内部に遮音空間Sが形成できる。
前記グロメット10を取り付けたワイヤハーネスW/Hは、自動車組立ラインにおいて、図1に示すように、車体パネル60の貫通穴61に挿通され、車体係止凹部27を貫通穴61の内周面に係止してグロメット10を車体パネル60に固定している。
前記構成のグロメット10は、その内部が遮音空間となるため、優れた遮音性を備えたものとなる。
図4に第二実施形態のグロメット10を示す。
該グロメット10は、前記大径筒部23と第1小径筒部21との間の傾斜壁22にケーブル55を貫通させる貫通穴51を貫設し、該貫通穴51の周縁からケーブル挿通筒部52を突出させている。
前記ケーブル挿通筒部52の先端に対向して、前記閉鎖壁部24にケーブル挿通筒部53を突設している。
本実施形態では前記第一スリット30を90度間隔あけて設け、そのうちの1本の第一スリット30−Aの先端に設ける前記円弧状の第二スリット31−Aは前記ケーブル挿通筒部53の根元部に沿って半周状に設けている。
他の構成は第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
前記構成とすると、ケーブル挿通筒部53を閉鎖壁部24から突設した場合においても、第二スリット31−Aはケーブル挿通筒部53を囲むように円弧状に設けているため、中子脱型時に亀裂が発生するのを防止できる。
図5(A)(B)に第三実施形態のグロメット10を示す。
第三実施形態のグロメットは、閉鎖壁部24の中央に設けたワイヤハーネス挿通穴25の周縁から第2小径筒部26を突設している。
前記第2小径筒部26はワイヤハーネス挿通穴25の周縁から半割れ形状に突出し、分割端の間に軸線方向に延在する第三スリット33を設けている。
即ち、第2小径筒部26の第三スリット33は閉鎖壁部24の第一スリット30に連続し、該第一スリット30が前記第二スリット31に連続した構成としている。
このように、第2小径筒部26を設け、ワイヤハーネスW/Hを第2小径筒部26に通して、ワイヤハーネスW/HとテープTを用いて固着している。
該第三実施形態のグロメット10においても、グロメット10の内部は略密閉状として、遮音空間Sを形成することができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されず、第三スリット33は60度以上240度以下としてもよい。
本発明の第一実施形態に係るグロメットを車体パネルに取り付けた状態を示す断面図である。 図1に示すグロメットの側面図である。 (A)はグロメットを金型成形する状態を示す図面、(B)は中子脱型状態を示す図面である。 (A)は第二実施形態のグロメットの断面図、(B)は側面図である。 (A)は第三実施形態のグロメットの断面図、(B)は側面図である。 従来例のグロメットを示す図面である。 他の従来例のグロメットを示す図面である。 従来の問題点を示す図面である。
符号の説明
10 グロメット
21 第1小径筒部
23 大径筒部
24 閉鎖壁部
30 第一スリット
31 第二スリット
33 第三スリット
C 中子
W/H ワイヤハーネス

Claims (4)

  1. 車両に配索されるワイヤハーネスを密着させて挿通する第一小径筒部と、該第一小径筒部に連続する大径筒部と、該大径筒部の大径側の外周面に環状に設けた車体係止凹部と、前記大径筒部の先端側内周面から突設した閉鎖壁部を備えた弾性体からなるグロメットであって、
    前記閉鎖壁部の中央にワイヤハーネス挿通穴を設けると共に、該ワイヤハーネス挿通穴の周縁に周方向に間隔をあけて外径方向に向けて延在する第一スリットを連通して設け、かつ、各第一スリットの外端に周方向に円弧状に延在する第二スリットを連続して設け、該円弧状の第二スリットは60度以上240度以下の円弧とし、
    前記第一、第二スリットはグロメット成形時における中子の抜き出し時に広げられるものである遮音グロメット。
  2. 前記閉鎖壁部に設ける前記第一、第二スリットは、略対向位置に2個以上または周方向に略等間隔に設ける8個以下である請求項1に記載の遮音グロメット。
  3. 前記大径筒部は前記第一小径筒部と傾斜壁を介して連続し、該傾斜壁に設けたケーブル挿通用の貫通孔の周縁から前記大径筒部の内部を通るケーブル挿通筒部が突出し、前記閉鎖壁部に前記ケーブル挿通筒部の外周に沿って前記円弧状の第二スリットを設けている請求項1または請求項2に記載の遮音グロメット。
  4. 前記閉鎖壁部には、前記ワイヤハーネス挿通穴の周縁より第二小径筒部を突設し、該第二小径筒部に前記第一スリットと連続する第三スリットを設け、該第二小径筒部を半割り状としている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の遮音グロメット。
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