JP3712296B2 - 紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法に関し、さらに詳細には耐ブリスター性及び接着強度に優れ、その他の塗工紙物性も良好な紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
塗工紙は、紙の印刷適性の向上及び光沢などの光学的特性の向上を目的として、抄造された原紙表面に、カオリンクレー、炭酸カルシウム、サチンホワイト、タルク、酸化チタンなどの顔料、それらのバインダーとしての共重合体ラテックス及び保水剤あるいは補助バインダーとしてのスターチ、カゼイン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子を主構成成分とする塗工液が塗布されたものである。上記の共重合ラテックスとしては、スチレンとブタジエンを主要単量体成分とし、これらを乳化重合して得られたスチレンーブタジエン系共重合体ラテックス、いわゆるSB系ラテックスが汎用的に用いられている。
【0003】
近年、出版用あるいは包装用として大量の塗工紙が使用されている。塗工紙の印刷の多くはオフセット輪転印刷によって行われており、需要の拡大や生産コストを下げるために高速印刷の傾向がますます強まっており、その品質に対する要求水準もますます高度化しており、中でも接着強度と耐ブリスター性の向上が強く求められている。このような品質は、顔料のバインダーとして用いられているSB系ラテックスの設計に強く依存することからこれまで様々な検討がなされてきた。中でもラテックスのゲル分率、すなわちラテックスを乾燥して形成させた皮膜のトルエン、テトラヒドロフランなどの溶剤に対する不溶解部分の割合が接着強度と耐ブリスター性の支配因子であることが確認されていることから、この面よりいろいろな検討がなされてきた。具体的にはラテックス中の共重合体の組成及びゲル分率を特定の範囲に調整することにより、優れた性能を発揮させることが提案されている(特公昭59−3598号公報、特公昭60−17879号公報、特開昭58−4894号公報)。
【0004】
ラテックスのゲル分率は単量体組成、重合温度をはじめとした様々な重合因子によって変化するが、連鎖移動剤の添加によりこれを所望の水準に調整することが一般的かつ簡便な方法である。ところが、単に連鎖移動剤の添加量を増やしてゲル分率を低下させると、耐ブリスター性は向上するが接着強度の低下を招くことになる。このような逆バランスを解消すべく、特公平3−42360号公報には連鎖移動剤の添加方法について検討がなされている。すなわち単位時間あたりに添加される単量体混合物に対する連鎖移動剤の量を連続的に変化するように添加する製造方法を用いることが提案されている。
【0005】
しかしながら、接着強度と耐ブリスターのバランスを高い水準にまで向上させるには、前記技術はいずれも十分に満足しうるものではなかった。
また、特開平6−179772号公報では、全単量体混合物の特定量を比較的低温で先ず重合し、次いで残りの単量体混合物を高温で重合する特定の二段重合法が提案されている。しかしながら、この技術はラテックスのフィルム強度と伸びのバランスを向上させることができるが、紙塗工用ラテックスとして用いる場合、接着強度と耐ブリスター性のバランスにおいて高い水準を発現させるには十分満足しうるものではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記従来技術の課題を背景に成されたものであって、高品質の塗工紙の製造を可能にする接着強度や耐ブリスター性が優れた共重合体ラテックスの製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく共重合体ラテックスの製造方法について種々検討を行った結果、先ず比較的低温で全単量体混合物の特定量を特定の転化率まで重合を行い、次いで重合温度を昇温し、残りの単量体混合物を比較的高温で重合し、かつ瞬時の重合転化率が該当する時期までに添加した単量体混合物に対して特定の転化率になるように添加を行う二段重合法により、得られた共重合体ラテックスが意外にも前記の目的が達せられることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1は、共役ジエン系単量体20〜70重量%、エチレン系不飽和
カルボン酸単量体0.5〜10重量%及び、その他共重合可能なビニル系単量体20〜79.5重量%からなる単量体混合物を乳化重合して共重合体ラテックスを製造する方法であって、全単量体混合物の50〜90重量%を添加する(A)工程と、その後残りの単量体混合物10〜50重量%を添加する(B)工程を有し、かつ(A)工程、(B)工程が各々以下の条件を満たす紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法である。
1.(A)工程で添加されるべき全単量体混合物に対するメルカプタン類の使用割合が、0.1重量%以上1.4重量%以下であり、(A)工程の各時点までに系内に添加された全単量体混合物に対する重合転化率が75%を超えず、(A)工程において系内に添加されるべき全単量体混合物に対する最終重合転化率が45〜75%に至るまで、40℃以上60℃未満の温度範囲で乳化重合を行う。
2.(B)で添加されるべき全単量体混合物に対するメルカプタン類の使用割合が、(A)工程における使用割合の1.5倍以上であり、(B)工程の各時点までに系内に添加された全単量体混合物に対する重合転化率を45〜75%に維持しつつ、60℃以上110℃以下の温度範囲で乳化重合を行う。
【0009】
本発明の第2は、(B)工程において添加されるべきその他共重合可能なビニル系単量体が、1,1−ジ置換体シアン化ビニル化合物を含み、かつ該シアン化ビニル化合物の使用割合が、(A)および(B)工程において添加されるべき全単量体混合物に対し、2〜10重量%である発明の第1に記載の紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法である。
【0010】
本発明の第3は、α−メチルスチレンダイマーの存在下で乳化重合を行い、共重合体ラテックスを得る発明の第1にまたは第2に記載の紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法である。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる共役ジエン系単量体としては、例えばブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエンなどが挙げられる。これらの共役ジエン系単量体は、1種あるいは2種以上を組み合わせてもよく、また、その使用量は20〜70重量%、好ましくは25〜60重量%の範囲で選ばれる。この使用量が20重量%未満では得られる共重合体が硬くて脆くなり、70重量%を越えると柔らかくなりすぎて耐水性が劣る。
【0012】
本発明で用いるエチレン系不飽和カルボン酸単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリ酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などが挙げられる。これらのカルボン酸は1種あるいは2種以上組み合わせても良く、その使用量は、0.5〜10重量%、好ましくは、1〜7重量%の範囲で選ばれる。この量が0.5重量%未満ではラテックスの分散安定性が十分でなく、塗工液調整や塗工時において種々の問題が生じ、また接着力が低下する。10重量%を越えるとラテックスや塗工液の粘度が高くなりすぎ好ましくない。
【0013】
本発明で用いるその他共重合可能なビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、アルキルスチレン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミドなどのN−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドなどのN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、グリシジルメタクリルアミドなどのアミド基含有エチレン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジルなどのアクリル酸あるいはメタクリル酸のアルキルエステル類、酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類、塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、アミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートなどのエチレン性アミン類、スチレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの共重合可能な単量体は1種あるいは2種以上組み合わせても良い。また、その使用量は20〜79.5重量%の範囲で選ばれる。この使用量が79.5重量%を越えると塗工紙のピック強度が低下して好ましくない。
【0014】
本発明における重合法は、2段階の工程((A)工程および(B)工程)からなる。以下各工程について説明する。
(A)工程では全単量体混合物の50〜90重量%を添加し、(A)工程の各時点までに系内に添加された全単量体混合物に対する重合転化率が75%を超えないように調整しつつ、その工程において系内に添加されるべき全単量体混合物に対する最終重合転化率が45〜75%になるまで、40℃以上60℃未満の温度範囲で重合を行う。40℃未満の温度で重合を行った場合は一般に重合速度が低下し、重合に長時間を要し、生産性が著しく低下する。また重合安定性が低下し好ましくない。また60℃以上の温度で重合を行った場合は得られる共重合体ラテックスの接着強度と耐ブリスター性のバランスが低下するために好ましくない。単量体混合物の割合が全単量体の90%を越える場合は重合安定性が低下し多量の重合残査が発生し、得られる共重合体ラテックスの粒径肥大化が起こるようになり好ましくない。さらに全単量体の50%未満では得られる共重合体ラテックスの接着強度と耐ブリスター性のバランスが低下し好ましくない。
【0015】
(A)工程における重合転化率が45%未満の場合は、得られる共重合体ラテックスの接着強度と耐ブリスター性のバランスの低下を招き、また75%を越えた場合は得られる共重合体ラテックスの安定性の低下や耐ブリスター性の低下を招くために、いずれの場合も好ましくない。
(A)工程において、単量体混合物の添加は一括仕込みあるいは、分割仕込みや連続添加のいずれの方法も可能であるが、その際系内に添加された単量体混合物に対する重合転化率が常に75%以下になるように添加を行う必要がある。75%を越えた場合、得られる共重合体ラテックスの接着強度、耐ブリスター性バランスが低下し好ましくない。
【0016】
(B)工程では残りの単量体混合物10〜50重量%を添加し、重合温度60〜110℃の範囲で重合を行うが、その際系内に添加された単量体混合物に対する重合転化率が常に45〜75%を維持するように添加を行う必要がある。
この工程における重合温度が60℃未満では、重合安定性の低下や重合速度の低下による生産性の低下を招き好ましくない。110℃を越える温度で重合を行った場合は、臭気の強いスチレンとブタジエンの副生成物が多く生成するようになり好ましくない。
【0017】
また、単量体混合物の添加開始から添加終了までの期間のある時点において、上記の重合転化率が45%未満となった場合は、重合安定性が低下し、得られるラテックスの粒径肥大化や重合残査の発生の問題があり好ましくない。また、75%を越える場合は、得られる共重合体ラテックスの接着強度、耐ブリスター性バランスが低下して好ましくない。
【0018】
(B)工程における単量体混合物の添加方法は、一括添加あるいは分割添加、連続添加のいずれの方法も可能である。また(A)工程から(B)工程に移行する際には、重合温度の昇温が必要となるが、(B)工程における単量体混合物の添加は、所定の重合温度への昇温が完了した後に添加してもよいし、また、昇温の開始とともに添加してもよい。いずれの場合でも、重要なのは系内に添加された単量体混合物に対する重合転化率が常に45〜75%を、好ましくは50〜70%を維持することである。
【0019】
本発明の共重合体の製造方法において、(A)工程と(B)工程で添加する単量体混合物の組成は、同一であっても異なっていてもかまわない。
本発明の共重合体の製造方法において、(A)工程で用いられるメルカプタン類の使用割合は、この工程で添加されるべき単量体混合物に対して0.1重量%以上1.4重量%以下であり、かつ(B)工程で添加されるべき全単量体混合物に対するメルカプタン類の使用割合は(A)工程における使用割合の1.5倍以上である。メルカプタン類の使用割合が本発明の範囲をはずれた場合には、得られる共重合体ラテックスの接着強度と耐ブリスター性のバランスが低下する。
【0020】
本発明の共重合体ラテックスの製造方法において、メルカプタン類の添加については、単量体混合物と混合して同時に、あるいは単量体混合物とは別々に一括添加や連続的もしくは断続的に添加する方法や、一部を単量体混合物と同時に添加し残りを単量体混合物の添加終了後に連続的もしくは断続的に添加する方法が可能である。
【0021】
本発明の共重合体ラテックスの製造方法において、(B)工程で添加されるべきその他共重合可能なビニル系単量体が1,1−ジ置換体シアン化ビニル化合物を含むことにより、本発明の効果がより一層強く発現することが期待される。ここで1,1−ジ置換体シアン化ビニル化合物としては例えば、メタアクリロニトリルが挙げられる。その使用割合は、(A)および(B)工程において添加されるべき全単量体混合物に対して2〜10重量%である。10重量%を越えた場合、得られるラテックスのコロイド的安定性の低下および、接着強度の低下を引き起こし好ましくない。また、2重量%未満では、その効果が十分に発現されない。
【0022】
1,1−ジ置換体シアン化ビニル化合物の添加方法については、以下の方法が可能である。▲1▼所定量の全量を他の単量体混合物と混合して添加する。▲2▼所定量の全量を他の単量体混合物と別々に一括添加や連続的もしくは断続的に添加する。▲3▼所定量の一部を他の単量体混合物と同時に添加し残りを他の単量体と別々に添加する。
【0023】
本発明に用いる重合開始剤、乳化剤、連鎖移動剤は公知のものが特に制限無く使用される。重合開始剤としては、熱または還元性物質の存在下でラジカル分解して単量体の付加重合を開始させるもので、水溶性または油溶性のペルオキソ二硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物などが一般的に用いられる。その例としてはペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、クメンハイドロパーオキサイドなどがあり、これらの中で特にペルオキソ二硫酸塩が好適である。また、重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸あるいはその塩、エルソルビン酸あるいはその塩、ロンガリットなどの還元剤を組み合わせた、いわゆるレドックス系開始剤を挙げることができる。
【0024】
乳化剤としては、脂肪酸せっけん、ロジン酸せっけん、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルアリールスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0025】
連鎖移動剤としては、特にメルカプタン類が好適で、例えばn−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンまどが挙げられる。またテトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどのジスルフィド類、四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化誘導体、α−メチルスチレンダイマー、2−エチルヘキシルチオグリコレートなども使用することができる。
【0026】
また、所望に応じて種々の重合調整剤を添加することもしばしば行われる。例えば、カセイソーダやアンモニア水などの中和剤、ポリリン酸塩や低分子量ポリカルボン酸塩並びに炭酸水素ナトリウム等の塩類などが挙げられる。さらにラテックスの粒子径をコントロールする粒径調整剤として架橋構造を有するかあるいは有しないシードラテックスなども必要に応じて重合時に任意に選択して用いることができる。
【0027】
本発明の製造方法によって得られる共重合体ラテックスをオフセット印刷、あるいはグラビア印刷に供される印刷用塗工紙あるいは、その他塗工用塗料のバインダーとして用いる場合には、通常行われている方法、例えば分散剤を溶解させた水中に、カオリン、炭酸カルシウム、サチンホワイト、タルク、酸化チタンなどの無機顔料・有機顔料、水溶性高分子、各種添加剤と共に本発明によって得られた共重合体ラテックスを添加して混合し、均一な分散液として用いる方法を採用することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
なお、各特性は次のようにして求めた。
(イ)べた付き性
ラテックスをPETフィルム上にNo.14ロッドにより塗布し、130℃で60秒間加熱して皮膜を作製する。この皮膜と黒ラシャ紙を合わせてベンチスパーカレンダーにより線圧100Kg/cm、温度70℃の条件下で圧着させる。これをひきはがして黒ラシャ紙のラテックス皮膜への転写の程度を目視判定した。評価は10点評価法で行い、良好なものほど高得点とした。
(ロ)耐ブリスター性
RI印刷試験機(明製作所製)を用いて、塗工紙の両面を印刷インク(大日本インキ社製、商品名:WebbZett黄)0.3ccを25cm×21cmの面積でべた刷りする。この印刷された塗工紙を適当な大きさに裁断し、その試験片を所定の温度に調整したシリコンオイル恒温漕に浸してブリスターが発生するか否かを観察する。恒温漕の温度を変化させてこの試験を行い、ブリスターの発生が認められる最低温度を求める。この温度が高いものほど耐ブリスター性に優れる。
(ハ)ピック強度
RI印刷試験機(明製作所製)を用いて、印刷インク(T&K TOKA社製、商品名:SDスパーデラックス50紅B、タック18のもの)0.4ccを25cm×21cmの面積で重ね刷りし、ゴムロールに現れたピッキング状態を別の台紙に裏取りし、その状態を観察した。評価は10点評価法とし、ピッキング現象の少ないものほど高得点とした。
(ニ)重合転化率
反応液を約1g採取して精秤し、130℃にて約1時間乾燥した後、残分を秤量して下記(1)式より固形分を求める。次に下記(2)式より重合転化率を求めた。
【0029】
(ホ)粒子平均直径
マイクロトラック超微粒子粒度分析計(日機装株式会社製、モデル9230)を用いて平均粒子径を測定した。
【0030】
【実施例1】
共重合体ラテックスαの製造。
窒素置換してある撹拌機を備えた温度調整可能な加工反応器に、イオン交換水90重量部、平均直径0.037μmのスチレン系シードラテックス2.5重量部、ジアルキルアリールエーテルジスルホン酸ソーダ0.6重量部を仕込み、更に単量体としてイタコン酸2.5重量部、スチレン25.5重量部、ブタジエン24重量部、メチルメタクリレート12重量部、アクリロニトリル9重量部、2−ヒドロキエチルアクリレート2重量部、連鎖移動剤として、ターシャルドデシルメルカプタン0.6重量部、αーメチルスチレンダイマー0.15重量部(表1、A工程欄に記載)を加え、内温を50℃に調整し、ペルオキソ二硫酸ナトリウム0.5重量部を加えて5時間重合させた。この時点における単量体混合物の重合転化率は59%であった(表1、A工程欄に記載)。
【0031】
次いで、内温を80℃まで昇温させ、更にスチレン9重量部、ブタジエン8重量部、メチルメタクリレート4重量部、アクリロニトリル3重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1重量部、ターシャルドデシルメルカプタン0.6重量部、αーメチルスチレンダイマー0.35重量部(表1、B工程欄に記載)を1時間で追添した。追添終了時における単量体混合物の重合転化率は65%であった(表1、B工程欄に記載)。更に3時間クッキングした後冷却し重合を終了した。微量の未反応単量体を水蒸気蒸留で除去した後、カセイソーダを加えてpH8に調整し共重合体ラテックスを50%固形分で得た。
【0032】
得られた共重合体ラテックスを用いて表3に示す配合処方で紙塗工液組成物を調整した。この塗工液を用いての塗工紙の調整条件を表4に示す。
得られた塗工紙の評価を既述した方法で行い、その結果を表5に示す。
表5から、本発明の共重合体ラテックスをバインダーとして用いた塗工紙は耐ブリスター性とピック強度(接着強度)が高度にバランスされたものであることがわかる。
【0033】
【実施例2】
A工程における重合温度およびB工程における重合温度を表1に記載するように変更し、またαーメチルスチレンダイマーの添加量を0.4とした他は、実施例1の方法と同一の方法で共重合体ラテックスβを得た。
このラテックスを用い、実施例1と同様に塗工紙を作成し性能評価を行った。評価条件を表3、4に、結果を表5に示す。
【0034】
【実施例3】
A工程およびB工程における連鎖移動剤量を表1に記載するように変更した他は、実施例1の方法と同一の方法で共重合体ラテックスγを得た。
このラテックスを用い、実施例1と同様に塗工紙を作成し性能評価を行った。評価条件を表3、4に、結果を表5に示す。
【0035】
【実施例4】
A工程およびB工程における連鎖移動剤量を表1に記載するように変更した他は、実施例1の方法と同一の方法で共重合体ラテックスδを得た。
このラテックスを用い、実施例1と同様に塗工紙を作成し性能評価を行った。評価条件を表3、4に、結果を表5に示す。
【0036】
【実施例5】
A工程およびB工程における単量体添加量、組成および連鎖移動剤量を表1に記載するように変更した他は、実施例1の方法と同一の方法で共重合体ラテックスεを得た。
このラテックスを用い、実施例1と同様に塗工紙を作成し性能評価を行った。評価条件を表3、4に、結果を表5に示す。
【0037】
【比較例1】
(70℃)で重合を行ったこと、連鎖移動剤量を変更した他は、実施例1と同じ方法で共重合体ラテックスζを得た。
このラテックスを用い、実施例1と同様に塗工紙を作成し性能評価を行った。評価条件を表3、4に、結果を表5に示す。
【0038】
【比較例2】
表2に記載するように、A工程における重合転化率が本発明の範囲を下回る(38%)処方で重合を行った他は実施例1と同様に重合を行い、共重合体ラテックスηを得た。
このラテックスを用い、実施例1と同様に塗工紙を作成し性能評価を行った。評価条件を表3、4に、結果を表5に示す。
【0039】
【比較例3】
表2に記載するように、B工程において単量体添加終了時の重合転化率が本発明の範囲を上回る(84%)処方で重合を行った他は実施例1と同様にして共重合体ラテックスθを得た。
このラテックスを用い、実施例1と同様に塗工紙を作成し性能評価を行った。評価条件を表3、4に、結果を表5に示す。
【0040】
【比較例4】
表2に記載するように、A工程およびB工程における連鎖移動剤添加量が本発明の範囲をはずれた処方で重合を行い共重合体ラテックスκを得た。
このラテックスを用い、実施例1と同様に塗工紙を作成し性能評価を行った。評価条件を表3、4に、結果を表5に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
【発明の効果】
耐ブリスター性とピック強度(接着強度)が高度にバランスされた共重合体ラテックスが得られ、高品質の塗工紙の製造を可能にすることができる。
Claims (3)
- 共役ジエン系単量体20〜70重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.5〜10重量%及び、その他共重合可能なビニル系単量体20〜79.5重量%からなる単量体混合物を乳化重合して共重合体ラテックスを製造する方法であって、全単量体混合物の50〜90重量%を添加する(A)工程と、その後残りの単量体混合物10〜50重量%を添加する(B)工程を有し、かつ(A)工程、(B)工程が各々以下の条件を満たす紙塗工用装共重合体ラテックスの製造方法。
1.(A)工程で添加されるべき全単量体混合物に対するメルカプタン類の使用割合が、0.1重量%以上1.4重量%以下であり、(A)工程の各時点までに系内に添加された全単量体混合物に対する重合転化率が75%を超えず、(A)工程において系内に添加されるべき全単量体混合物に対する最終重合転化率が45〜75%に至るまで、40℃以上60℃未満の温度範囲で乳化重合を行う。
2.(B)で添加されるべき全単量体混合物に対するメルカプタン類の使用割合が、(A)工程における使用割合の1.5倍以上であり、(B)工程の各時点までに系内に添加された全単量体混合物に対する重合転化率を45〜75%に維持しつつ、60℃以上110℃以下の温度範囲で乳化重合を行う。 - (B)工程において添加されるべきその他共重合可能なビニル系単量体が、1,1−ジ置換体シアン化ビニル化合物を含み、かつ該シアン化ビニル化合物の使用割合が、(A)および(B)工程において添加されるべき全単量体混合物に対し、2〜10重量%である請求項1に記載の紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法。
- α−メチルスチレンダイマーの存在下で乳化重合を行い、共重合体ラテックスを得る請求項1または2記載の紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法。
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