JP3711302B2 - スプリンクラー消火設備 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、火災発生時にスプリンクラーヘッドから消火用水を放水して消火するスプリンクラー消火設備に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のスプリンクラー消火設備には、湿式のスプリンクラー消火設備がある。この湿式のスプリンクラー消火設備は、図12のように、消火ポンプ1の給水本管4から分岐した分岐管6に流水検知装置8を設け、その二次側に閉鎖型スプリンクラーヘッド10を接続し、閉鎖型スプリンクラーヘッド10までの全配管内に加圧水を充満させている。
【0003】
給水本管4の圧力は圧力タンク13に導入され、管内圧力を常に規定圧以上に維持している。火災時にスプリンクラーヘッド10が作動すると流水が生じ、これにより流水検知装置8が作動し、流水検知スイッチ9がオンして流水検知信号を自火報受信機34に送る。流水検知信号を受けた自火報受信機34は、火災の区画を表示する。またスプリンクラーヘッド10の作動により給水本管4の圧力が低下し、圧力タンク13の圧力スイッチ14が作動信号をポンプ制御盤15に出力すると、ポンプ制御盤15はモータ2の駆動により消火ポンプ1を運転する。ポンプ運転により、貯水槽3から消火用水が加圧供給され、作動したスプリンクラーヘッドから連続放水が行われる。
【0004】
このような湿式スプリンクラー消火設備にあっては、火災時にスプリンクラーヘッド10が作動すると同時に放水が行われてしまうことから、水損が発生すると共に水を無駄に使用してしまうという問題があった。この湿式スプリンクラー消火設備の問題を解決する設備として、図13の予作動式スプリンクラー消火設備が知られている。
【0005】
予作動式スプリンクラー消火設備は、給水本管4から電気的に開閉可能な制御弁を備えた予作動式流水検知装置36を介して分岐管6を引き出し、閉鎖型スプリンクラーヘッド10を接続している。予作動式流水検知装置36の制御弁は、定常監視状態で閉鎖状態に維持されており、このため予作動式流水検知装置36の一次側まで加圧水が充満されている。
【0006】
スプリンクラー制御盤35は、閉鎖型スプリンクラーヘッド10の防護区画に設けられた火災感知器18からの火災信号を受けると、予作動式流水検知装置36の制御弁を開放制御し、加圧水を閉鎖型スプリンクラーヘッド10のところまで充水させる予作動状態を作り出す。この状態で閉鎖型スプリンクラーヘッド10が火災の熱を受けて作動すると、放水が開始される。
【0007】
このような予作動式スプリンクラー消火設備の構成により、火災以外の原因により誤って閉鎖型スプリンクラーヘッド10が作動しても、火災感知器18が火災信号を出力しないかぎり予作動式流水検知装置36の制御弁は開放せず、誤って放水されることはない。また誤って火災感知器18が作動して火災信号を出力し、制御弁を開放してしまっても、閉鎖型スプリンクラーヘッド10が作動していなければ放水は行われない。
【0008】
このように火災感知器からの火災信号によってのみ制御弁の開放制御を行う方式は、通常、シングルインターロック方式として知られている(特開昭60−174161号公報)。
しかしながら、図13のような予作動式スプリンクラー消火設備にあっては、誤って火災感知器18が作動して火災信号を出力して予作動式流水検知装置36の制御弁を開放してしまうと、スプリンクラーヘッド10の所まで充水されてしまうため、水を抜く等して初期状態に復旧する作業が煩雑であった。
【0009】
このような予作動式スプリンクラー消火設備の問題点を解決するため、図14のような予作動式スプリンクラー設備がある。この予作動式スプリンクラー設備は、予作動式流水検知装置36の二次側の配管に、コンプレッサ39から空気配管40で供給した圧縮空気を充満させる。閉鎖型スプリンクラーヘッド10の作動により圧縮空気が放出されると、規定圧力以下に低下したときに圧力スイッチ38から検知信号が出力される。
【0010】
スプリンクラー制御盤41は、圧力スイッチ38からの検知信号と火災感知器18からの火災信号の両信号が発せられた時に、初めて予作動式流水検知装置36の制御弁を開放制御する。このため火災感知器18が作動しても、スプリンクラーヘッド10が作動しない限り予作動弁36は開放されない。この2つの信号に基づいて制御弁を開放制御する方式は、ダブルインターロック方式として知られている(特開昭62−57569号公報)。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような予作動式スプリンクラー消火設備にあっては、次の問題があった。
予作動式スプリンクラー消火設備は、誤作動による水損の問題を解決することはできるが、制御弁の制御に使用されるシステム系統の障害に弱い問題がある。例えば制御弁の制御システムを構成している感知器回線の断線、制御線の断線、制御弁へのゴミ噛み等の障害が1つでもあると、制御弁を開放することができず、水損の問題は解決できても、本来の消火機能が失われてしまうという本末転倒の結果を招く恐れがある。
【0012】
また、図13のシングルインターロック方式、図14のダブルインターロック方式とシステムを複雑にすればするほど障害が発生する可能性が高くなる。また予作動式スプリンクラー消火設備は、定常監視状態で制御弁を閉鎖し、二次側に消火水を入れていないため、火災感知器等の作動により制御弁を開放制御してから、加圧水がスプリンクラーヘッドに到達するまでに時間が掛かる。このため、図12の湿式スプリンクラー消火設備に比べ初期消火が遅れる可能性がある。この点も、シングルインターロック方式、ダブルインターロック方式とシステムを複雑にすればするほど初期消火が遅れる可能性がある。
【0013】
また誤った火災感知器の作動等により制御弁が開放してスプリンクラーヘッドの所まで加圧水が充水されると、その都度、水抜き等の復旧作業を必要とするため煩雑である。同様に、火災感知器を試験的に動作させてシステム試験を行う場合にも、復旧作業が大変になる。更に、火災時に制御弁を制御しなければならないため、制御盤に予備電池等のバックアップ設備を設ける必要がある。
【0014】
更にまた、給水本管から制御弁を介して分岐管を防護区画に引き出していることから、その防護区画については、同じ予作動方式を採らざるを得ない。このため、同じ防護区画内であっても、部屋によっては通常の湿式設備をとりたい場合があるが、これに対応できない問題がある。
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、湿式消火設備のもつ簡単で信頼性に優れる点と、予作動式消火設備のもつ水損対策の利点の両立を図ることにより最適化されたスプリンクラー消火設備を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため本発明は次のように構成する。
まず本発明は、給水本管から分岐され流水検知装置を介して引き出された分岐管に閉鎖型スプリンクラーヘッドを接続し、定常監視状態で閉鎖型スプリンクラーヘッドまで加圧水が供給されているスプリンクラー消火設備を対象とする。
【0016】
このようなスプリンクラー消火設備につき本発明にあっては、流水検知装置と直列に接続され電気的制御により閉開可能な制御弁と、定常監視状態で制御弁を開放状態に維持し、閉鎖型スプリンクラーヘッドの作動に伴う流水検知装置の検知信号を受けた際に、対応する防護区画に設けている火災検出装置からの火災信号がある場合は制御弁の開放状態を維持し、流水検知装置の検知信号を受けた際に、火災検出装置からの火災信号がない場合は、制御弁を閉止制御するスプリンクラー制御部と、
閉鎖型スプリンクラーヘッドの作動に伴う給水本管の管内圧力の低下により消火ポンプを駆動する制御盤と、
を設けたことを特徴とする。
【0017】
このような本発明のスプリンクラー消火設備によれば、定常監視状態で、制御弁は開放状態にあるため、スプリンクラー制御部の制御に必要な系統及び機器に障害があっても、スプリンクラーヘッドが作動すれば確実に放水が開始できるフェールセーフ機能を本質的に備え、消火設備としての信頼性を向上できる。また、火災時にスプリンクラーヘッドが作動すると、タイムラグなしに直ちに放水が開始される。
【0018】
一方、誤ってスプリンクラーヘッドが作動したとしても、火災信号がなければ直ちに制御弁が閉止制御されて放水が停止されるため、水損による被害を最小限に抑えることができる。また、システム試験は湿式スプリンクラー消火設備と同様に、簡単できる。更に、定常監視状態で、制御弁は開放状態に維持されているため、バックアップ設備が不要になる。
【0019】
スプリンクラー制御部は、制御弁の閉止制御後に、火災検出装置からの火災信号があった場合には、制御弁を開放制御する。このためスプリンラーヘッドの作動で流水検知信号が得られた際に、火災信号がなく一旦制御弁を閉止制御したとしても、その後に火災信号がくれば制御弁が開放制御するので、確実に放水できる。
【0020】
スプリンクラー制御部は、流水検知装置の作動を検知した際に、火災検出装置側に障害がある場合には、制御弁の閉止制御を禁止する。このため火災検出装置側に障害があった場合には、火災信号と同様と見做し、火災信号がないときの制御弁の閉止制御を禁止し、放水を優先させることで、更に信頼性がアップする。スプリンクラー制御部は、制御弁を定常監視状態で閉鎖状態に維持し、弁二次側を空き配管とする予作動モードを選択することもできる。予作動モードの選択状態では、火災検出装置からの火災信号があった場合に、対応する制御弁を開放制御する。
【0021】
本発明は、流水検知装置の二次側の分岐管を複数系統に分岐し、各分岐管毎に制御弁を設け、スプリンクラー制御部は各制御弁を個別に制御する設備形態をとることができる。この場合、必要に応じて予作動モードが選択できる。
また本発明の別の設備形態として、流水検知装置を設けた分岐管の二次側に、定常監視状態で開放状態に維持される制御弁を介して加圧水が閉鎖型スプリンクラーヘッドまで供給された本発明の湿式スプリンクラー設備(第1湿式スプリンクラー設備)に対し、閉鎖型スプリンクラーヘッドまで流水検知装置を経由して固定的に加圧水が供給された従来の湿式スプリンクラー設備(第2湿式スプリンクラー設備)、及び又は定常監視状態で閉鎖状態に維持される制御弁を介して閉鎖型スプリンクラーヘッドを接続し制御弁の一次側まで加圧水が供給された予作動式スプリンクラー設備を、必要に応じて組合わせて複合設備とすることができる。
【0022】
このため、給水本管から分岐管を引き出した警戒区画について、同じ警戒区画内であっても、防護区画例えば部屋によっては、通常の湿式設備、本発明の湿式設備、本発明の予作動モードによる予作動式設備を必要に応じて取り入れることができ、極めて柔軟性の高い設備形態を容易に取ることができる。
スプリンクラー制御部は、鎮火により前記火災検出装置からの火災信号がなくなった際に制御弁を閉止制御する自動消火制御を実現することで、水損被害を最小限に抑えることができる。
【0023】
またスプリンクラー制御部は、火災検出装置から火災信号があったときに所定時間ラッチし、火災信号のラッチ時間中は火災信号がなくなっても制御弁の閉止制御を禁止する。これによって自動消火制御において火災検出装置が火災検出と復旧を繰り返しても、制御弁が開閉を頻繁に繰り返すような事態を回避できる。また、真火災時に火災検出装置側で復旧操作を行うことで火災信号が復旧して途切れた状態で、流水検知信号があった場合による制御弁の閉止制御による消火の遅れを回避できる。
【0024】
更に、スプリンクラー制御部は、制御弁を閉止制御した際に、制御弁を完全に閉鎖せず、制限された水量を作動したスプリンクラーヘッドに供給する。これによって、スプリンクラーヘッドの作動で流水検知信号があり、このとき火災信号がないことで制御弁の閉止制御が行われたとしても、消火に最低限必要な消火用水のスプリンクラーヘッドへの供給が維持でき、火災信号がくるまでの弁閉鎖による消火の遅れを回避できる。
【0025】
この制御弁を閉止制御したときの水量確保は、開放制御時の弁開口面積を大きくし、閉止制御時の弁開口面積を小さくするという制御弁の弁構造により実現してもよい。
【0026】
【発明の実施の形態】
図1は本発明のスプリンクラー消火設備の第1実施形態の説明図である。
図1において、建物の地下階等には消火ポンプ1及びモータ2が設置され、ポンプ制御盤15によるモータ2の駆動で消火ポンプ1を運転し、貯水槽3の消火用水を汲み上げ、建物の垂直方向に配管した給水本管4に加圧供給している。建物の屋上には高架水槽5が設置され、給水本管4に常時、消火用水を充満させている。
【0027】
また給水本管4の管内圧力を規定圧に保持するため圧力タンク13が分岐接続され、給水本管4の管内圧力を導入して内部空気を圧縮している。また圧力タンク13には圧力スイッチ14が設けられ、スプリンクラーヘッドの作動により管内圧力が規定圧力以下に低下すると圧力スイッチ14がオンし、このオンを検出することでポンプ制御盤15がモータ2を駆動して消火ポンプ1を運転する。
【0028】
給水本管4からは建物の階ごとに分岐管6が引き出されている。分岐管6は給水本管4から分岐され流水検知装置8を介して引き出されており、流水検知装置8の二次側の分岐管には閉鎖型スプリンクラーヘッド10が接続されている。これに加え本発明にあっては、流水検知装置と直列に、この実施形態にあっては、流水検知装置8の一次側に制御弁7を設けている。
【0029】
制御弁7は電気的に開閉制御可能な弁であり、例えばモータ駆動により開閉制御できる電動弁を使用することができる。制御弁7は定常監視状態で開放状態に維持されている。このため給水本管4の管内圧力は、分岐管6に設けた開放状態にある制御弁7及び流水検知装置8を通って二次側の閉鎖型スプリンクラーヘッド10まで供給され、従来の湿式スプリンクラー設備と同じ加圧水の供給状態となっている。
【0030】
流水検知装置8は流水検知スイッチ9を備えており、二次側の分岐管6に接続している閉鎖型スプリンクラーヘッドが火災による熱を受けて作動したときの消火用水の放出によって発生する水流による弁開放又は圧力低下等を検出して流水検知スイッチ9をオンし、流水検知信号E1を出力する。
分岐管6の端末側には末端試験弁11とオリフィス12が接続され、更に圧力計42を設けている。末端試験弁11はスプリンクラー消火設備のシステム試験に使用され、試験時に末端試験弁11を開くと、オリフィス12で決まるスプリンクラーヘッド1台の作動に相当する水量が分岐管6に流れ、これにより擬似的に流水検知装置8を作動させてポンプ運転等の試験動作を行わせることができる。
【0031】
流水検知装置8に設けた流水検知スイッチ9からの流水検知信号E1は、消火用中継器17を経由してスプリンクラー制御盤16に与えられている。またスプリンクラー制御盤16からの制御弁7に対する制御信号E3も、消火用中継盤17を経由して出力される。
一方、閉鎖型スプリンクラーヘッド10の防護区画には火災感知器18が設置される。火災感知器は火報用中継器20からの感知器回線に接続されており、火災を検出して火災検出信号E2を、火報用中継器20を介して火災受信盤21に出力する。
【0032】
具体的には、火報用中継器20からの感知器回線に接続された火災感知器18が火災発報で回線間を低インピーダンスに短絡して発報電流を流し、この発報電流を発報用中継器20で受信して発報受信信号を火災受信盤21に送り、火災受信盤21で火災が判断される。火災受信盤21で火災が判断されると、スプリンクラー制御盤16に対し火災信号E20が移報信号として送出される。
【0033】
スプリンクラー制御盤16は、スプリンクラー消火設備の運用を開始する初期状態で、分岐管6に設けている制御弁7を全て開放制御状態とするように初期設定する。この制御弁7を開放状態とした初期設定が終了した後の定常監視状態にあっては、消火用中継器17を経由して得られる流水検知装置8の流水検知スイッチ9からの流水検知信号E1と、閉鎖型スプリンクラーヘッド10の防護区画に設置した火災感知器18からの火災検出信号E2に基づく火災受信盤21からの火災信号E20を監視している。
【0034】
スプリンクラー制御盤16の流水検知信号E1と火災信号E20に基づくスプリンクラー消火設備の動作は、図2〜図6のフェーズ1〜5に分けることができる。
図2はスプリンクラー制御盤16による処理動作のフェーズ1であり、フェーズ1は火災により火災感知器18及び閉鎖型スプリンクラーヘッド10の順番に作動した場合の処理動作である。
【0035】
まず定常監視状態にあっては、ステップS1のように、初期設定によって制御弁7は開放状態に制御され、これを維持している。この状態でステップS2のように、閉鎖型スプリンクラーヘッド10の防護区画で火災が発生し、ステップS3のように、最初に火災感知器18が発報したとする。
火災感知器18の発報による火災検出信号E2は火報用中継器20で受信され、火災受信盤21に送出され、火災が判断されると火災信号E20をスプリンクラー制御盤16に出力する。スプリンクラー制御盤16は、火災受信盤21より火災信号E20を受けた状態では、ステップS4のように、制御弁7の開放状態を維持している。
【0036】
続いてステップS5のように、火災感知器18の発報に続いて、火災による熱を受けて閉鎖型スプリンクラーヘッド10が作動する。このとき加圧水はスプリンクラーヘッドまできているため、スプリンクラーヘッドの作動で直ちに放水が行われる。
閉鎖型スプリンクラーヘッド10が作動すると分岐管6に消火用水が流れ、流水検知装置8が作動し、スプリンクラーヘッドの作動に伴う圧力低下を受けて流水検知スイッチ9がオンし、流水検知信号E1を消火用中継器17を介してスプリンクラー制御盤16に送出する。
【0037】
スプリンクラー制御盤16は流水検知信号E1を受けたとき、既にステップS3で作動した火災感知器18の発報による火災信号E20を火災受信盤21から受けているため、制御弁7の開放状態をステップS7のように維持する。一方、ポンプ制御盤15は、圧力タンク13の圧力スイッチ14のオンを検出すると、モータ2の起動制御を行い、ステップS8のように、消火ポンプ1を運転して、作動したスプリンクラーヘッド10に対する消火用水の加圧供給による連続放水で消火を行う。
【0038】
ステップS8のポンプ運転によるスプリンクラーヘッド10からの放水で火災が鎮火し、ステップS9で鎮火確認が得られると、スプリンクラー制御盤16はステップS10で制御弁7の閉止制御を行う。そして最終的に、ステップS11のような最初の状態にスプリンクラー消火設備を戻す復旧作業を行うことになる。この場合の鎮火確認は、操作員の手動操作または火災信号が一定時間以上こなくなったことで判定すればよい。
【0039】
図3のフェーズ2は、図1において火災により最初にスプリンクラーヘッド10が作動し、次に火災感知器18が作動した場合のスプリンクラー制御盤16による処理動作である。まず定常監視状態にあっては、ステップS1のように制御弁7は開放状態を維持しており、この状態でステップS2のように火災が発生し、火災による熱を受けてステップS3で、閉鎖型スプリンクラーヘッド10が最初に作動したとする。
【0040】
このため、ステップS4のように流水検知装置8が作動し、流水検知スイッチ9のオンにより流水検知信号E1が消火用中継器17を介してスプリンクラー制御盤16に与えられる。このとき火災感知器18は、ステップS5のように非発報であり、火災受信盤21からの火災信号E20は得られていない。そこでスプリンクラー制御盤16は、流水検知信号E1が得られ火災信号E20が得られていない場合には、閉鎖型スプリンクラーヘッドの誤作動の可能性があると見做し、ステップS6で制御弁7の閉止制御を行う。この後、火災感知器18の発報による火災信号E20が得られるまでは、制御弁7は閉鎖状態となる。
【0041】
このとき火災は実際に発生していることから、制御弁7の閉止制御中あるいはその後に、ステップS7のように火災感知器18が発報し、火災受信盤21より火災信号E20が得られる。スプリンクラー制御盤16は、火災信号E20が得られた時点でステップS8のように、閉止制御した制御弁7を再び開放制御する。
【0042】
一方、ポンプ制御盤15は、圧力スイッチ14のオンを検出した時点でモータ2の駆動により消火ポンプ1の運転を開始し、ステップS9のように、ポンプ運転による加圧用水の供給によりスプリンクラーヘッド10から連続放水による消火が行われる。このようなスプリンクラーヘッド10からの加圧消火用水の放水による消火により、ステップS10で鎮火が確認されたならば、ステップS11のように、スプリンクラー制御盤16は制御弁7の閉止制御を行う。そして、最終的にステップS12のように復旧作業を行うことになる。
【0043】
尚、ステップS6で制御弁7の閉止制御を行うと、一度作動した流水検知装置8が元の状態に復旧して流水検知信号E1がなくなるが、スプリンクラー制御盤16にあっては、流水検知装置8が制御弁7の閉止制御により復旧しても、一度受信した流水検知信号E1を維持することで、次に火災信号E20が得られたときに制御弁7の開放制御を確実に行うことができる。
【0044】
図4はフェーズ3の処理動作であり、フェーズ3は火災感知器18、火報用中継器20及び火災受信盤21で構成される火災検出装置となる火報設備に、断線、機能停止、試験中、移報停止中等の非監視状態が発生した場合のスプリンクラー制御盤16による処理動作である。
まずステップS1の定常監視状態にあっては、制御弁7を開放状態に維持している。この状態でステップS2のように火災が発生しても、火報設備側は非監視状態あるため、火災受信盤21から火災信号E20は得られない。次に、ステップS3のように、火災により閉鎖型スプリンクラーヘッド10が作動すると、ステップS4で流水検知装置8が作動して流水検知スイッチ9より流水検知信号E1が得られる。このとき火災受信盤21からは非監視状態を示す障害信号E30がスプリンクラー制御盤16に与えられており、この障害信号E30に基づきステップS5で、スプリンクラー制御盤16は火報設備の障害を認識し、火災信号E20が得られないときに本来行う制御弁7の閉止制御を禁止し、ステップS6で制御弁7の開放状態を維持する。
【0045】
そしてステップS7で、圧力スイッチ14のオン検出に基づくポンプ制御盤15によるモータ2の駆動で消火ポンプ1の運転を行い、ポンプ運転による消火用水の加圧供給でスプリンクラーヘッドから連続放水し、消火を行う。それ以降のステップS8〜S10の鎮火確認、制御弁閉止及び復旧作業はフェーズ1,2と同じである。
【0046】
図5はフェーズ4の処理動作であり、フェーズ4は防護区画の閉鎖型スプリンクラーヘッド10が誤って作動した場合の処理動作である。まず定常監視状態にあっては、ステップS1のように制御弁7は開放状態に維持されており、この状態で例えば室内工事等により閉鎖型スプリンクラーヘッド10に物が当たって破損し、ステップS2のようにスプリンクラーヘッドが作動したとする。
【0047】
このスプリンクラーヘッドの誤作動による放水で流水検知装置8が作動して流水検知スイッチ9より流水検知信号E1がスプリンクラー制御盤16に送出される。このとき火災感知器18は非発報状態であり、火災受信盤21から火災信号E20が得られていないため、スプリンクラー制御盤16はステップS4のように制御弁7の閉止制御を行う。
【0048】
このためスプリンクラーの誤作動による放水がステップS5で停止され、誤作動で放出される消火用水は制御弁7の二次側の分岐管6内の水量で済み、スプリンクラー誤作動による水損を最小限に抑えることができる。そして最終的に、ステップS6の復旧作業を行うことになる。
図6のフェーズ5は火災感知器18が誤報を生じた場合の処理動作である。まずステップS1の定常監視状態にあっては、制御弁7は開放状態に維持されており、この状態で火災感知器18がステップS2のように誤って発報し、火災受信盤21より火災信号E20がスプリンクラー制御盤16に送られたとする。
スプリンクラー制御盤16は火災信号E20を受けても、ステップS3のように制御弁7の開放状態を維持する。そしてステップS4で火災感知器18の誤発報に対する復旧処理を行うことで再び元の定常監視状態に戻すことができる。
【0049】
図7は図2〜図6のフェーズ1〜5に示した各処理動作を実現するためのスプリンクラー制御盤16に設けられたMPU等のプログラム制御で実現されるコントローラの制御処理のフローチャートである。図7において、まずステップS1で初期設定を行う。この初期設定はスプリンクラー消火設備の運用を開始する立上げ時、あるいは設備試験を終了した後の運用再開時等であり、初期設定により制御弁7を開放状態に制御する。
【0050】
ステップS1の初期設定が済むと定常監視状態に入り、スプリンクラー制御盤16はステップS2で流水検知信号E1の有無をチェックし、定常監視状態では流水検知信号E1はないことから、ステップS10に進み、火災信号E20の有無をチェックし、定常監視状態にあっては火災信号E20もないことから、再びステップS2に戻り、ステップS2,S10の処理を繰り返している。
【0051】
このような定常監視状態において、火災によりスプリンクラーヘッド10が作動し、その流水により流水検知装置8が作動し流水検知信号E1が得られると、ステップS2で流水検知有りが判別され、ステップS3に進み、火災信号E20の有無をチェックする。このとき火災信号E20がなければステップS4に進み、制御弁7の閉止制御を行う。制御弁7の閉止制御が済むとステップS5で火災信号E20の有無をチェックしており、火災信号E20があればステップS6で制御弁7の開放制御を行う。一方、ステップS3で火災信号E20が得られればステップS4〜S6をスキップする。
【0052】
圧力スイッチ14のオン検出によるポンプ制御盤15のモータ2の駆動による消火ポンプの運転中にあっては、ステップS7で鎮火確認の有無をチェックしており、鎮火確認を判別するとステップS8に進み、制御弁7を閉止制御する。ステップS7における鎮火確認は、オペレータによる手動操作でもよいし、火災受信盤21からの火災信号E20がなくなったことを検出して自動的に行うようにしてもよい。
【0053】
一方、ステップS2で流水検知信号E1が得られず、ステップS10に進んで最初に火災信号E20が得られると、ステップS11に進んで再度、流水検知信号E20のの有無をチェックする。このとき流水検知が得られるまではステップS12で火災復旧の有無をチェックしており、ステップS11で流水検知有りと判断されるとステップS7に進むことになる。ステップS11,S12の処理中に火災感知器が復旧すれば、火災信号E20の復旧を判別して再びステップS2の処理に戻る。
【0054】
スプリンクラー制御盤16は、火災化が鎮火した際、火災検出装置である火災受信盤21からの火災信号E20がなくなったことを検出して自動的に制御弁7を閉止制御し、更に火災信号E20が入ったことを検出して制御弁7を開放制御する自動消火制御を行うことができる。この自動消火制御にあっては、火災感知器18として自己復旧型の火災感知器を使用する。この自動消火によって水損被害を最小限に抑えることができる。
【0055】
また、スプリンクラー制御盤16は、火災検出装置である火災受信盤21からの火災信号E20があったときに、火災信号をラッチするようにし、火災信号のラッチ時間中は火災信号がなくなっても制御弁7の閉止制御を禁止する。これによって、自動消火制御にあっては、火災受信盤21からの火災信号E20が入ったり、復旧して途切れたりすることを繰り返しても、制御弁7が開閉を頻繁に繰り返すような事態を回避できる。また。真火災時に、火災受信盤21で復旧作業を行うことで火災信号E20が復旧して途切れた状態で、流水検知信号E1があった場合の制御弁7の閉止制御による消火の遅れを回避できる。
【0056】
この実施形態にあっては、制御弁を、分岐管の流水検知装置の一次側に直列に設けるようにしていたが、流水検知装置の二次側に設けても良い。また、流水検知装置内に制御弁を設けるようにしても良い。
図8は本発明のスプリンクラー消火設備の第2実施形態であり、この実施形態にあっては、図1の本発明によるスプリンクラー消火設備と従来の湿式スプリンクラー消火設備とを組合わせたことを特徴とする。
【0057】
前述の通り、本発明によるスプリンクラー消火設備は、従来の湿式スプリンクラー消火設備に比べ、スプリンクラーヘッドが作動した場合の水損を最小限に抑えることができるので、警戒区画内でも水損の影響を嫌う防護区画がある場合には、この防護区画のみに本発明のスプリンクラー消火設備を設けることができる。
【0058】
図8において、給水本管4から分岐された分岐管は例えば2つの防護区画22A,22Bに引き出されている。即ち、流水検知装置8の二次側を分岐管6a,6bに分岐して、各防護区画22A,22Bに配管している。防護区画22Aは図1と同じ本発明のスプリンクラー消火設備であり、流水検知装置8の二次側の分岐管6aには、まず制御弁7aが設けられ、続いて閉鎖型スプリンクラーヘッド10aが設けられている。
【0059】
更に防護区画22Aに対しては、火災感知器18aが感知器回線により設けられている。流水検知装置8の圧力スイッチ9、分岐管6aに設けた制御弁7a及び火災感知器18aのそれぞれは、中継器24に接続されている。ここで、図1の実施形態にあっては、スプリンクラー消火設備に対し別途独立した火報設備を設けたが、図8の実施形態にあっては、火報設備は、スプリンクラー消火設備専用の火報設備としており、中継器24は消火用及び火報用の両方の中継器機能を備え、スプリンクラー制御盤16に対し接続される。
【0060】
これに対し防護区画22Bは、図12と同じ湿式スプリンクラー消火設備であり、流水検知装置8から引き出された二次側の分岐管6bには、直接に閉鎖型スプリンクラーヘッド10aが設けられている。更に、分岐管6a,6bの巻末には、末端試験弁11a,11b、オリフィス12a,12b及び圧力計42a,42bが設けられている。
【0061】
このように図8のスプリンクラー消火設備は、従来型の湿式スプリンクラー設備と本発明のスプリンクラー設備の2種類の複合形態をとった設備構成を、1つの分岐管の系統について防護区画ごとに採用することができる。この結果、例えば部屋ごとの環境に応じて最適なスプリンクラー設備の設備形態を個別に採用することができ、従来、特定の設備構成に固定せざるを得なかったものに比べ、非常に柔軟性の高い設備構成を実現することができる。
【0062】
図9は本発明のスプリンクラー消火設備の第3実施形態であり、この実施形態にあっては、流水検知装置の二次側の分岐管を更に分岐して各防護区画に引き出し、各分岐管ごとにそれぞれ制御弁を設けるようにしたことを特徴とする。
図9において、1つの警戒区画は、例えば2つの防護区画22A,22Bに分けられており、この防護区画22A,2Bに対応するように流水検知装置8の二次側で分岐管6を分岐管6a,6bに分岐して、各防護区画22a,22bに非引き出している。流水検知装置8の二次側で分岐した分岐管6a,6bには、まず制御弁7a,7bが設けられ、続いて閉鎖型スプリンクラーヘッド10a,10bがそれぞれ設けられている。
【0063】
また分岐管6a,6bの巻末には末端試験弁11a,11b、オリフィス12a,12b及び圧力計42a,42bが設けられている。更に防護区画22A,22Bのそれぞれに対しては、火災感知器18a,18bが独立した感知器回線により設けられている。流水検知装置8の圧力スイッチ9、分岐管6a,6bに設けた制御弁7a,7b及び火災感知器18a,18bのそれぞれは、中継器24に接続されている。
【0064】
更に、図9の実施形態も図8と同様、火報設備は、スプリンクラー消火設備専用の火報設備としており、中継器24は消火用及び火報用の両方の中継器機能を備え、スプリンクラー制御盤16に対し接続される。また流水検知装置8からの流水検知信号E1は共通信号として使用される。
図9の第3実施形態にあっては、スプリンクラー制御盤16において、予作動モードを選択することができる。予作動式スプリンクラー消火設備は主に誤作動による水損被害をなくすためのものであり、水損を特に嫌う防護区画について行う。例えば防護区画22Aがコンピュータルームなどのように、水損の影響を極端に嫌う場所であった場合には、制御弁7aについてスプリンクラー制御盤16で予作動モードを選択する。
【0065】
この予作動モードを選択すると、図7に示した本発明による処理制御が解除され、初期設定で制御弁7aを閉止制御し、定常監視状態で閉止状態を維持する。また初期設定で制御弁7aを閉止した後に、制御弁7aの二次側の分岐管6aの消火用水を例えば末端試験弁11aの開放で排出して空配管とし、加圧用水は閉止状態にある制御弁7aの一次側までとしておく。
【0066】
この状態は、図13に示した従来のシングルインターロック方式の予作動式スプリンクラー消火設備と全く同じ状態である。このような予作動モードの選択状態にあっては、防護区画22Aに設置している火災感知器18aが火災により発報して発報信号E2aが中継器24に出力され、スプリンクラー制御盤16で防護区画22Aの火災感知器18aからの火災信号の受信を判断したとき、制御弁7aを開放制御する。この開放制御により給水本管4から加圧用水がスプリンクラーヘッド10aまで供給され、予作動状態を作り出す。
【0067】
その後にスプリンクラーヘッド10aが作動すれば、消火用水が放出され、圧力スイッチ14のオンを検出してポンプ制御盤15がポンプ運転を行うことになる。しかし、スプリンクラーヘッド10aが誤って作動した場合には、火災感知器18aが作動しない限りは、制御弁7aは開放されないため、スプリンクラーヘッド10aから消火用水が放出されることはない。
【0068】
この結果、同じ分岐管6を更に二系統に分けて、それぞれ制御弁7a,7bを設けておくことで、2つの防護区画22A,22Bについて、図1の第1実施形態における制御以外に予作動モードを必要に応じて選択的に設定することができる。
図9の防護区画22Aにおける予作動モードの選択は、図1,図8の実施形態についても、同様にできる。即ち、初期設定で制御弁7を閉止制御し、その後に、制御弁7,7aの二次側の分岐管6,6aの消火用水を例えば末端試験弁11,11aの開放で排出して空配管とし、加圧用水は閉止状態にある制御弁7,7aの一次側までとし、定常監視状態で閉止状態を継続するようにして、予作動モードの選択状態とする。
この場合、予作動モードを手動で固定的に選択する以外に、自動切替することもできる。自動切替としては、例えば昼は予作動モードを選択し、夜は本発明のモードを選択するようにする。このように本発明のモードと予作動モードを必要に応じて選択的に設定できるようにすることで、防護区画の環境が変更した場合にも、変更した環境に対応するモードを設定することができる。
【0069】
図10は本発明の第4実施形態であり、この実施形態にあっては、1つの分岐系統に図12に示した従来の湿式スプリンクラー設備、図13に相当する予作動式スプリンクラー設備、更に図1の実施形態による本発明のスプリンクラー設備の3つの設備形態を組合わせたことを特徴とする。
図10において、給水本管4から分岐管6aが分岐されており、分岐管6aの警戒区画に例えば3つの防護区画24A,24B,24Cがあったとする。この防護区画24A,24B,24Cは、例えば部屋ごとに分かれている。防護区画24Aは水損被害は問題とならないが確実に消火したい場所であることから、湿式スプリンクラー設備25の構成をとる。
【0070】
即ち、分岐管6aに設けた流水検知装置8の二次側に閉鎖型スプリンクラー10aを直接接続している。この場合、閉鎖型スプリンクラーヘッド10aまで加圧用水が加わることから、これは図12の従来の湿式スプリンクラー設備と同じ設備構成である。
湿式スプリンクラー設備25に続いては、分岐管6aを分岐管6b,6cに分岐し、防護区画24B,24Cに配管する。分岐管6b,6bには、まず制御弁7b,7cが設けられ、続いて閉鎖型スプリンクラーヘッド10b,10cを設け、管末には末端試験弁11b,11c、オリフィス12b,12cを設けている。
【0071】
ここで防護区画24Bの制御弁7bは、初期設定で閉止制御することで、定常監視状態で閉止状態を維持しており、制御弁7bの二次側の分岐管6b内の消火用水を抜くことで、予作動式スプリンクラー設備26を構成している。一方、防護区画24Cについては、制御弁7cを定常監視状態で開放状態に維持しており、閉鎖型スプリンクラーヘッド10cまで加圧用水がきており、これは図1の実施形態と同じ本発明のスプリンクラー消火設備27を構成している。防護区画24Bは、水損の影響を極端に嫌う場所であることから、予作動式スプリンクラー設備26の構成をとる。
【0072】
このように本発明のスプリンクラー消火設備は、従来型の湿式スプリンクラー設備25、予作動モードの設定による予作動式スプリンクラー設備26、更には本発明本来のスプリンクラー設備27の3種類の複合形態をとった設備構成を、1つの分岐管の系統について防護区画ごとに採用することができる。この結果、例えば部屋ごとの状況に応じて最適なスプリンクラー設備の設備形態を個別に採用することができ、従来、警戒区画全てを特定の設備構成に固定せざるを得なかったものに比べ、非常に柔軟性の高い設備構成を実現することができる。
【0073】
図11は本発明のスプリンクラー消火設備で使用する制御弁7の実施形態であり、通常の制御弁7にあっては、開放制御により全開、閉止制御により全閉となる弁を使用しているが、図11の制御弁7の実施形態にあっては、閉止制御を行っても全閉とならず、制限された流量を供給できる弁構造としたことを特徴とする。
【0074】
図11(A)は制御弁7の全開状態の断面図であり、フランジ付きのケーシング30に対し円筒状の弁体32を回転自在に設けている。弁体32には全開位置で両側に連通する大流路33が形成されると同時に、直交する方向に小流路34を形成している。
図11(B)は制御弁7を閉止制御した状態であり、弁体32は図11(A)の全開状態に対し90度旋回して小流路34によって両側の流路を連通している。このため、図1,図8,図9,図10の各実施形態で制御弁7を閉止制御しても、図11(B)のように小流路34による開口面積による流量の加圧消火用水がスプリンクラーヘッドに供給され、完全に放水を停止することなく小流路34で決まる放水を行うことができる。
【0075】
この制御弁7の閉止制御状態での小流路の供給機能は、図3のフェーズ2において、最初にスプリンクラーヘッドが作動し放水した状態で火災信号が得られないとき制御弁7は閉止制御されるため、その後に火災信号が得られ開放制御されるまでの間、放水停止となって消火遅れが起きることを防止する。
即ち、火災信号が得られるまで制御弁7を閉止制御していても、図11(B)の全閉状態で小流路34で決まる制限された流量の加圧用水を作動したスプリンクラーヘッドに供給して放水でき、必要最小限の放水を行うことで、火災信号が得られるまでの消火をある程度行い、消火遅れを可能な限り防ぐ。
【0076】
同時に図5のフェーズ4のように、スプリンクラーの誤作動による制御弁7の閉止制御にあっては、小流路34で決まる放水が行われてしまうが、小流路34とすることで可能な限り水損を防ぐことができるようにしている。
制御弁7を閉止制御したときの小流量の供給制御は、図11の弁構造によらず、制御弁7として例えば回動調整可能な電動弁を使用している場合には、閉止制御における弁開度を全閉とせずに、規定の小流量を供給可能な開度位置に制御するようにしてもよい。
【0077】
【発明の効果】
以上説明してきたように本発明によれば、定常監視状態にあっては、分岐管に設けている制御弁は開放状態に維持されており、加圧用水は閉鎖型スプリンクラーヘッドまで供給されているため、制御弁の制御を行うために必要な系統や制御弁自体に障害があっても、火災によりスプリンクラーヘッドが作動すれば確実に放水できるフェールセーフ機能を本質的に備え、消火設備としての信頼性を向上できる。また、火災時にはスプリンクラーヘッドまで加圧消火用水がきているため、タイムラグなしに直ちに放水が開始され、迅速に消火できる。
【0078】
また誤ってスプリンクラーヘッドが作動したとしても、火災信号がなければ直ちに制御弁の閉止制御が行われて放水停止となるため、スプリンクラーヘッドの誤作動による水損被害を最小限に抑えることができる。
また火災検出装置側に障害があった場合には、本来火災であっても制御弁の火災信号がこないため、流水検知装置の作動で制御弁の閉止制御となるが、本発明にあっては、火災検出装置側の障害時には火災信号がなくとも制御弁を閉止制御しないことから、火災検出装置側の障害により消火機能が停止してしまうことがなく、更に信頼性を向上することができる。
【0079】
更にスプリンクラー消火設備のシステム試験は管末の試験弁を開くだけで、従来の湿式スプリンクラー消火設備と同様、簡単に行うことができる。また、分岐管に設けている制御弁は定常監視状態で開放されており、火災時に特に制御する必要は基本的にないため、バッテリー等のバックアップ設備を不要とし設備コストを低減できる。
【0080】
更に制御弁を定常監視状態で開放状態に維持する本発明の設備構成、定常監視状態で閉止状態に維持する予作動モードの設備構成、更に従来の湿式スプリンクラー設備の設備構成の3種を必要に応じて組み合せて複合設備とすることも可能であり、同じ警戒区画内であっても、防護区画例えば部屋ごとに最適な設備構成を設定することで、部屋ごとの条件に見合った消火設備の最適化を容易に行うことができる。
【0081】
更に既設のスプリンクラー消火設備に追加して設置することが容易できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるスプリンクラー消火設備の第1実施形態の説明図
【図2】図1で火災感知器、スプリンクラーヘッドの順に作動したフェーズ1の処理動作のフローチャート
【図3】図1でスプリンクラーヘッド、火災感知器の順に作動したフェーズ2の処理動作のフローチャート
【図4】図1で火報設備に障害が起きたフェーズ3の処理動作のフローチャート
【図5】図1でスプリンクラーヘッドが誤動作したフェーズ4の処理動作のフローチャート
【図6】図1で火災感知器が誤報したフェーズ4の処理動作のフローチャート
【図7】図1のスプリンクラー制御盤の処理動作のフローチャート
【図8】本発明によるスプリンクラー消火設備の第2実施形態の説明図
【図9】本発明によるスプリンクラー消火設備の第3実施形態の説明図
【図10】本発明によるスプリンクラー消火設備の第4実施形態の説明図
【図11】本発明で使用する制御弁の実施形態の断面図
【図12】従来の湿式スプリンクラー消火設備の説明図
【図13】シングルインターロックをとる従来の予作動式スプリンクラー消火設備の説明図
【図14】ダブルインターロックをとる従来の予作動式スプリンクラー消火設備の説明図
【符号の説明】
1:消火ポンプ
4:給水本管
6,6a,6b,6c:分岐管
7,7a,7b:制御弁
8:流水検知装置
9:流水検知スイッチ
10,10a,10b,10c:閉鎖型スプリンクラーヘッド
15:ポンプ制御盤
16:スプリンクラー制御盤
18:火災感知器
21:火災受信盤
22A,22B,24A〜24C:防護区画
Claims (10)
- 給水本管から分岐され流水検知装置を介して引き出された分岐管に閉鎖型スプリンクラーヘッドを接続し、定常監視状態で前記閉鎖型スプリンクラーヘッドまで加圧水が供給されているスプリンクラー消火設備において、
前記流水検知装置と直列に前記分岐管に設けられ、電気的制御により閉開可能な制御弁と、
定常監視状態で前記制御弁を開放状態に維持し、前記閉鎖型スプリンクラーヘッドの作動に伴う前記流水検知装置の検知信号を受けた際に、対応する防護区画に設けている火災検出装置からの火災信号がある場合は、前記制御弁の開放状態を維持し、前記流水検知装置の検知信号を受けた際に、前記火災検出装置からの火災信号がない場合は、前記制御弁を閉止制御するスプリンクラー制御部と、
前記閉鎖型スプリンクラーヘッドの作動に伴う前記給水本管の管内圧力の低下により消火ポンプを駆動する制御盤と、
を設けたことを特徴とするスプリンクラー消火設備。 - 請求項1記載のスプリンクラー消火設備に於いて、前記スプリンクラー制御部は、前記制御弁の閉止制御後に、前記火災検出装置からの火災信号があった場合には、前記制御弁を開放制御することを特徴とするスプリンクラー消火設備。
- 請求項1記載のスプリンクラー消火設備に於いて、前記スプリンクラー制御部は、前記流水検知装置の作動を検知した際に、前記火災検出装置側に障害がある場合には、前記制御弁の閉止制御を禁止することを特徴とするスプリンクラー消火設備。
- 請求項1記載のスプリンクラー消火設備に於いて、前記スプリンクラー制御部は、前記制御弁を定常監視状態で閉鎖状態に維持する予作動モードを選択でき、該予作動モードの選択状態では、前記火災検出装置からの火災信号があった場合に、対応する制御弁を開放制御することを特徴とするスプリンクラー消火設備。
- 請求項1又は4記載のスプリンクラー消火設備に於いて、前記流水検知装置の二次側の分岐管を複数系統に分岐して各分岐管毎に前記制御弁を設け、前記スプリンクラー制御部は各制御弁を個別に制御することを特徴とするスプリンクラー消火設備。
- 請求項1又は4記載のスプリンクラー消火設備に於いて、前記流水検知装置を設けた分岐管の二次側に、定常監視状態で開放状態に維持される制御弁を介して加圧水が閉鎖型スプリンクラーヘッドまで供給された第1湿式スプリンクラー設備に対し、閉鎖型スプリンクラーヘッドまで前記流水検知装置を経由して固定的に加圧水が供給された第2湿式スプリンクラー設備、及び又は定常監視状態で閉鎖状態に維持される制御弁を介して閉鎖型スプリンクラーヘッドを接続し該制御弁の一次側まで加圧水が供給された予作動式スプリンクラー設備を組合わせて複合設備としたことを特徴とするスプリンクラー消火設備。
- 請求項1記載のスプリンクラー消火設備に於いて、前記スプリンクラー制御部は、鎮火により前記火災検出装置からの火災信号がなくなった際に、前記制御弁を閉止制御することを特徴とするスプリンクラー消火設備。
- 請求項1記載のスプリンクラー消火設備に於いて、前記スプリンクラー制御部は、前記火災検出装置から火災信号があった時に所定時間ラッチし、該火災信号のラッチ時間中は火災信号がなくなっても前記制御弁の閉止制御を禁止することを特徴とするスプリンクラー消火設備。
- 請求項1記載のスプリンクラー消火設備に於いて、前記スプリンクラー制御部は、前記制御弁を閉止制御した際に、前記制御弁を完全に閉鎖せずに制限された水量を閉鎖型スプリンクラーヘッドに供給することを特徴とするスプリンクラー消火設備。
- 請求項1記載のスプリンクラー消火設備に於いて、前記制御弁は、開放制御時の開口面積を大きくし、閉止制御時に開口面積を小さくする弁構造を備えたことを特徴とするスプリンクラー消火設備。
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