JP3707305B2 - 水処理監視制御方法及び装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、都市下水や産業排水,湖沼水あるいはダム湖水の有機物や窒素,リンを生物学的処理あるいは物理化学凝集で除去する水処理方法に関し、特に、物理化学凝集の目的で注入する凝集剤を適正に調節し、処理水中のリン濃度を目標値に維持する水処理監視制御方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
下水処理場では、生活排水や工場排水などを活性汚泥法と呼ばれる微生物で主に有機物を除去している。下水中には有機物の他に窒素やリンが含まれており、リンはオルトリン酸(PO4 −P),窒素はアンモニア性窒素として下水処理場に流入する。これらのリンや窒素を除去せずに放流すると、放流水域では富栄養が進み、藻類の異常繁殖によりさらに水質が悪化する。したがって、下水処理場では有機物に加えてリンや窒素の除去も要求されている。流入下水中のリンや窒素を除去するために、活性汚泥プロセスの一施設である曝気槽を好気領域と嫌気領域に分けた微生物反応槽を使用している。微生物反応槽の方式には嫌気−無酸素−好気法(A2O法),嫌気−好気法(AO法),活性汚泥循環変法などがあり、少なくとも嫌気槽を前段に、好気槽を後段に配置している。これらの方式のうち、A2O法は窒素とリン、AO法はリン,活性汚泥循環変法は窒素の除去率の向上が期待できる。A2O法やAO法は嫌気槽を前段に、好気槽を後段に配置することによって活性汚泥(複合微生物の総称)のリン過剰摂取機能を利用し、活性汚泥は嫌気槽でリンを放出し、好気槽で放出した以上にリンを摂取することで、流入水中のリンを生物学的に除去する。しかし、活性汚泥のリン過剰摂取機能は流入水の水質状態やプラント操作条件、あるいは活性汚泥の管理状態によって変化し、放出不良や摂取不良などを生じて処理水中のリン濃度を増加させることがある。
【0003】
このため、下水処理場では金属塩などの凝集剤を注入し、物理化学的に除去する方法を併用している。凝集剤の注入量が不足するとリン除去が不十分となり、処理水中のリン濃度を高める。一方、過剰注入は運転コストや汚泥発生量の増加、さらに微生物の活性にも影響を与える。したがって、凝集剤の注入量は必要最小限にする必要がある。
【0004】
下水処理場において、物理化学凝集によりリンを除去する場合、アルミニウム系や鉄系の金属塩、あるいは消石灰が凝集剤として用いられる。液中でのリンはオルトリン酸や縮合リン酸の形態で存在し、凝集剤の注入により難溶性の塩を形成する。また、凝集剤は重炭酸塩と反応し、水酸化物のフロックを形成してさらにリンを吸着除去する。アルミニウム系の凝集剤を用いた場合の反応式は(1)式及び(2)式により表される。
【0005】
Al3+ +PO4 3- → AlPO4 …(1)
Al3+ +3HCO3 - → Al(OH)3 +3CO2 …(2)
(1)式から、液中のリンを難溶性塩にするには理論的に1モル比のアルミニウム(以下、Alと称す)を注入すればよいが、(2)式のように他の物質にも消費されるのでモル比を1より大きくする必要がある。また、凝集剤を注入すると、不溶解性の懸濁物が生成される。Al塩の凝集剤では、(1)式及び(2)式から、1mgのAlに対してリン酸アルミニウムが約4.5mg ,水酸化アルミニウムが約2.9mg生成される。2mgのAlが(1)式と(2)式に等量利用されたとすると、全懸濁物は7.4mg 増加し、1mgのAlで換算すると平均3.7mg のAl化合物である懸濁物を生成する。なお、鉄系の凝集剤を用いた場合、Fe1mg当り平均2.3mg の懸濁物を生成する。懸濁物生成量の実測例ではAl添加量の3〜5倍との結果もある(先行技術1:村田恒雄編著;「下水の高度処理技術」,理工図書,平成4年5月)。
【0006】
リン除去を目的とした凝集剤注入量制御方法として、現在の処理水のリン濃度Piと一定時間b前の処理水のリン濃度Poから変化率d(=(Pi−Po)/b)を求め、この変化率で将来も推移するとしてc時間後の処理水のリン濃度変化ΔPc(=d・c)予測し、目標値との偏差で注入量を設定する提案がある(先行技術2:特開平3−89993号)。あるいは、好気槽から採水した活性汚泥混合水を固液分離した液部分のリン濃度と好気槽から流出する処理水流量からリン成分物量を求め、化学的当量関係を利用してリン成分物量から凝集剤所要量を算出して凝集剤量を制御する方式(先行技術3:特開平9−174086 号),処理水のリン濃度に対して凝集剤をモル比換算で一定に制御し、リン含有フロックを砂ろ過で分離する方式(先行技術4:特開昭63−242392号),流入水のリン濃度と処理水リン濃度設定値の偏差に一定のモル比で凝集剤を制御する方式(先行技術5:第33回下水道研究発表会講演集,P492−494,平成8年),脱水ろ液のリン濃度に当量換算係数を乗じて凝集剤注入量を設定する方式(先行技術6:特開平7−88497号)などの提案がある。
【0007】
凝集剤の注入に伴い生成される汚泥量の制御に関しては、Al塩を用いた場合、添加Al量の5倍程度の懸濁物が新たに発生するものとして余剰汚泥量(沈殿地からプロセス外へ排出する汚泥量)を算出する方式(先行技術7:高度処理施設設計マニュアル(案),日本下水道協会,P266),返送比(生物反応槽へ流入する下水流量に対する沈殿池から生物反応槽へ返送する汚泥量の比)に加えてMLSS濃度(生物反応槽の汚泥濃度)や凝集剤添加量の運転条件を考慮して制御する方式(先行技術8:特開平10−43788号)などの提案がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記した先行技術2〜6の凝集剤注入量制御は、(1)式及び(2)式に基づいて、モル比あるいはAlとリンの濃度比を予め設定し、凝集剤を制御する比率一定制御方式を採用している。
【0009】
例えば、先行技術2でその試験結果(第1表)によれば、流入水のリン濃度に対してAl注入率がほぼ比例関係にあり、モル比換算で約1.3 と推算できる。しかし、先行技術2の第2図からも明らかなように、下水処理場などの流入水中のリン濃度は人間の生活周期によって大きく変化する。したがって、将来の処理水のリン濃度が過去と同じ変化率で推移するとした予測法では、凝集剤の適正な制御は困難となる。さらに、流入水リン濃度に比例して凝集剤注入量を制御しているが、嫌気槽と好気槽からなる微生物反応槽のように、流入水のリン濃度より反応槽のリン濃度が高くなるような処理プロセスではモル比を一定とした方式を適用できない。先行技術3〜5は凝集剤注入位置に近い上流部のリン濃度を計測し、このリン濃度あるいは凝集剤注入後のリン濃度目標値との偏差に一定値を乗算して凝集剤注入量を設定している。しかし、本発明者らの試験結果によれば、Alとリンの濃度比を一定とする先行技術に記載のような凝集剤制御方式では、処理水のリン濃度を目標値以下に維持することができなかった。
【0010】
生物反応槽は活性汚泥の生物状態が正常なとき、リン過剰摂取により流入下水の通常範囲のリン濃度を目標値以下に維持することは可能である。しかし、活性汚泥のリン過剰摂取機能は流入水の水質状態やプラントの操作条件等によって大きく変化する。リン濃度を目標値以下に管理するには、結果的に凝集剤の過剰注入を招き、ランニングコストの上昇のみならず、活性汚泥にも悪影響を及ぼす。したがって、生物反応槽のリン過剰摂取機能、すなわちリン除去能力が低下し、目標値を維持できない場合に、過剰注入とならないで目標値を維持できる凝集剤を注入する必要がある。
【0011】
上記した先行技術7において、添加Al量に対して5倍程度の汚泥量が新たに生成されるのは、注入したAlの殆どがリンと反応する(1)式で消費されると仮定した結果によるものと推測される。しかし、本発明者らの試験結果によれば、汚泥発生量は添加Al量に対して一定倍率にならず、被処理水の水質に対応して大きく変化した。したがって、添加Al量に一定倍率を乗算して余剰汚泥量を管理する方式では、引抜き不足や過剰引抜きとなり、プロセス系内の汚泥量が安定せず、処理に悪影響する。先行技術8は、凝集剤添加量の運転条件を考慮して制御するとあるが、具体的な手段の明記がない。先行技術8の図10によれば、余剰汚泥量は好気槽のMLSS濃度計の出力信号を直接用いて設定値となるように制御している。この制御方式では、凝集剤を添加した場合、生物反応槽の汚泥濃度にはAlとの反応で生成された懸濁物質も含まれる。Al起因の懸濁物質は微生物反応に関与しない無機物質であり、MLSS濃度として一括で取扱うと本来管理すべき微生物濃度が低下し、処理が悪化する。
【0012】
本発明の目的は、上記した従来技術の状況に鑑み、生物反応槽でのリン除去効率が悪化した場合にも適正量の凝集剤を注入して、処理水のリン濃度を目標値以下に維持し、さらに凝集剤の注入時に生物反応槽へ環流される無機懸濁量を予測して汚泥量を管理し、生物反応槽の処理効率の低下を抑制する、水処理監視制御方法及び装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の水処理監視制御方法は、生物反応槽と沈殿池を有し、前記生物反応槽あるいは前記沈殿池あるいは前記生物反応槽と沈殿池の間に凝集剤注入設備を具備する水処理プロセスにおいて、被処理水中のリン濃度計測値とアルカリ度計測値の比率に基づいて単位リン量を除去するのに必要な凝集剤量で定義する凝集剤注入係数、あるいは単位凝集剤量が除去できるリン量で定義するリン除去係数を求め、前記リン濃度計測値と予め設定した処理水中のリン濃度目標値との偏差量から前記生物反応槽のリン除去能力を判定するとともに、前記注入係数あるいは除去係数と前記偏差量に基づいて前記目標値を維持するのに必要な凝集剤注入量を求め、リン除去能力が不良と判定されたときに、前記凝集剤注入量に対応して前記凝集剤注入設備を制御することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の水処理監視制御方法は、前記水処理プロセスにおいて、リン除去能力が不良と判定され、凝集剤が注入されたときに、前記被処理水中のリン濃度計測値Piとアルカリ度計測値ALiの比率と前記凝集剤注入量に基づいて凝集剤中の金属塩で形成される懸濁物濃度ΔSaと、前記沈殿池から微生物を前記生物反応槽へ戻す返送汚泥と前記水処理プロセス外に排出する余剰汚泥の流量から返送比率αを求め、該返送比率αと前記懸濁物濃度ΔSaにより前記水処理プロセス内を循環する懸濁物濃度Saを演算し、該懸濁物濃度Saで前記生物反応槽の混合液、あるいは前記沈殿池引抜き汚泥中の懸濁物濃度TSSを補正した微生物濃度を用いて前記返送汚泥流量及び余剰汚泥流量の少なくとも一方を制御することを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の水処理監視制御方法は、前記水処理プロセスにおいて、前記被処理水中のリン濃度とアルカリ度を計測し、これらの計測値の比率と、該比率からリン除去係数とアルカリ除去係数を求め、該除去係数と該除去係数を用いて求めた凝集剤注入量から処理水中のリン濃度とアルカリ度及び懸濁物濃度を算出し、前記凝集剤注入量に対応して前記凝集剤注入設備を制御するとともに、算出結果を出力し表示することを特徴とする。
【0016】
上記の本発明において、リン除去能力の判定は前記リン濃度計測値と予め設定した処理水中のリン濃度目標値との偏差量εpが0より大のときに不良とする。0以下のときは、正常と判定し、前記凝集剤注入設備の稼動を停止することを特徴とする。
【0017】
また、被処理水中のアルカリ度はpH計測値から予測し、該予測値を前記アルカリ度計測値として前記リン濃度計測値との比率を求め、前記凝集剤注入量を演算することができる。
【0018】
さらに、前記被処理水中のリン濃度計測値とアルカリ度計測値の比率に基づいて凝集剤注入量を演算する方式は、前記水処理プロセスの余剰汚泥を濃縮処理する汚泥処理プロセスや、生物反応槽を持たない凝集沈殿プロセス及び膜分離プロセスに利用できる。
【0019】
本発明の水処理監視制御装置は、生物反応槽と沈殿池を有し、前記生物反応槽あるいは前記沈殿池あるいは前記生物反応槽と沈殿池の間に凝集剤注入設備を具備する水処理設備において、前記被処理水中のリン濃度計測値とアルカリ度計測値の比率に基づいて凝集剤注入係数あるいはリン除去係数を求める第1演算手段と、前記リン濃度計測値と予め設定した処理水中のリン濃度目標値との偏差量を出力し、さらに該偏差量から前記生物反応槽のリン除去能力を判定する判定手段と、前記演算手段の注入係数あるいは除去係数と、前記判定手段からの前記偏差量に基づいて前記目標値を維持するのに必要な凝集剤注入量を求める第2演算手段を設け、前記判定手段でリン除去能力が不良と判定されたときに、前記第2演算手段からの凝集剤注入量の出力信号に対応して前記凝集剤注入設備を操作することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の水処理監視制御装置は、前記水処理設備において、被処理水中のリン濃度計測値とアルカリ度計測値の比率に基づいてリン除去係数とアルカリ除去係数を求める第1演算手段と、前記凝集剤注入設備から供給される被処理水流量当たりの凝集剤注入量と前記第1演算手段からの出力信号と前記リン及びアルカリ度計測値から凝集剤によって生成される懸濁物濃度を求める第2演算手段と、前記沈殿池から微生物を前記生物反応槽へ戻す返送汚泥と前記水処理プロセス外に排出する余剰汚泥の流量から返送比率を求め、該返送比率と前記第2演算手段からの懸濁物濃度により前記水処理設備内を循環する懸濁物濃度を求める第3演算手段とを設け、該第3演算手段からの循環懸濁物濃度で前記生物反応槽、あるいは前記返送汚泥中の微生物濃度を補正して前記返送汚泥流量及び余剰汚泥流量の少なくとも一方を制御することを特徴とする。
【0021】
さらに、本発明の水処理監視制御装置は、前記水処理設備において、前記被処理水中のリン濃度とアルカリ度を計測する計測手段と、該計測手段より出力されたリン濃度計測値とアルカリ度計測値から両者の比率と、該比率に基づいてリン除去係数とアルカリ除去係数を求め、該除去係数と該除去係数を用いて求めた凝集剤注入量から前記処理水中のリン濃度とアルカリ度及び懸濁物濃度を算出する演算手段を設け、該演算手段からの出力信号に対応して前記凝集剤注入設備を操作するとともに、前記演算手段の演算結果を出力表示する手段を設けていることを特徴とする。
【0022】
上記した本発明の作用を説明する。本発明は、(1)凝集剤単位重量当たりのリン及びアルカリ除去量は、凝集剤を注入する前の被処理水リン濃度とアルカリ度の初期条件に依存し、定式化できる、(2)被処理水リン濃度とアルカリ度の初期条件で凝集剤中の金属塩消費内訳が変化するのに伴い、凝集剤と反応して生成される懸濁物量も変化する、(3)アルカリ度は、生物反応槽の運転条件が変化しても、pHとの相関が高く予測できる、という実験的知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の凝集剤注入による反応特性と、生物処理特性を説明する。
【0023】
図2は、凝集剤注入前の被処理水中リン濃度Piとアルカリ度ALiの比と凝集剤単位重量当たりのリン及びアルカリ除去量の関係を示したものである。凝集剤単位重量当たりのリン除去量はリン除去係数Υp、アルカリ除去量はアルカリ除去係数Υaで表している。これらの除去係数は、基準化した値(特定値で除算)で示しているが、初期条件であるリン濃度Piとアルカリ度ALiの比で大きく変化する。その変化は、Pi/ALi比が大きくなる、すなわち、アルカリ度に対してリン濃度が増加すると、アルカリ除去係数Υaが低下する反面、リン除去係数Υpが大きくなる。言い換えれば、凝集剤の消費内訳はPi/ALi比で変化し、リン濃度が増加するとリンとの反応に消費される割合が増し、アルカリ成分の消費割合が減る方向に向かうことを見いだした。
【0024】
図3は、下水処理場の流入下水(黒色)と生物反応槽流出水(白色)のリン濃度Piとアルカリ度ALiの変化の一例で、基準化した値で示している。このように、水質に加えて水量も時々刻々変化するため、生物反応時間や処理条件も変化し、処理過程のリン濃度やアルカリ度が影響を受ける。流入下水と処理水で異なるが、都市下水の場合、リン濃度は5mg/L以下、アルカリ度は数十〜200mg/Lの範囲で変化する。これをPi/ALi比で表すと、0〜0.1 となる。図2において、Pi/ALi比が0〜0.1 の範囲は、リン除去係数Υp及びアルカリ除去係数Υaが急激に変化する領域である。したがって、リンを目標通りに除去するには、アルカリ成分に消費される分を考慮した凝集剤の注入操作が必要である。
【0025】
被処理水中のリン濃度Piを目標値Pm以下とするのに必要な凝集剤注入濃度Caは、図2の結果に基づいて、以下のように定式化するに至った。図2から、リン除去係数Υpとアルカリ除去係数Υaは(3)式及び(4)式で求められる。ただし、Ap,Bp,KL,AL,BL は係数、RはPi/ALi比である。(3)
【0026】
【0027】
式及び(4)式は、被処理水の初期条件であるPi/ALi比:Rが決まると、凝集剤の使われ方も定まることを示す。なお、Υp,Υaは凝集剤に含まれる金属塩の単位重量当たりに除去されるリン量とアルカリ量(CaCO3 換算)で、係数の値は金属塩の種類で変化する。
【0028】
ところで、凝集剤にポリ塩化アルミニウム(以下、PACと称す)を用いた本発明者らの実験によれば、除去されたアルカリとリンの総和量は、(1)式及び(2)式の理論式で注入したAl量から求めらた除去量より多い結果を得た。これは、前記したように、(2)式で生成された水酸化物がリンを吸着除去(以下、過剰取込と称す)したことによる。この過剰取込量は、これまで定量化されていなかった。本発明者らは、過剰取込量が生成された水酸化物量、すなわち、アルカリ度の除去量に依存し、定式化できることを明らかにした。。単位アルカリ度当たりのリン過剰取込量PAL(以下、リン過剰取込係数と称す)もまた、Rを用いた(5)式で表現できる。ここで、Pa、Pbは係数である。(5)式を用いたリン除去係数Υp′は、アルカリ除去係数Υaを導入した(6)式で表せる。ここで、ka,kpは定数である。リンの過剰取込を考慮したリン除去係数
PAL=Pa・RPb …(5)
Υp′=PAL・Υa+(1−kp・Υa)/ka …(6)
Υp′は、(5)及び(6)式から求まるが、(3)式で直接表示できる。図2の関係はリンの過剰取込も含めた結果である。
【0029】
被処理水中のリン濃度Piを目標値Pm以下とする凝集剤注入濃度Caは、 (3)式、あるいは(6)式のリン除去係数を用いて次式で演算できる。Caは被処理水単位容積当たりの凝集剤量で、被処理水流量を積算すれば必要な凝集剤量Qaを算出できる。
【0030】
Ca=(Pi−Pm)/Υp または Ca=(Pi−Pm)/Υp′…(7)
(7)式は、リン除去係数ΥpあるいはΥp′の変化に対応して凝集剤注入濃度Caを変化させる操作が必要であることを意味する。さらに、(3)式あるいは(6)式から、単位リン量当たりのAl必要量CAl(以下、Al注入係数と称す)、及びモル比換算の注入係数MAlを導出できる。注入係数CAlはΥpあるいはΥp′の逆数で、モル注入係数MAlはCAlにリンとAlの分子量の比率mを考慮して求められる。図4は、(3)式に基づいてR(Pi/ALi比)とモル注入係数MAlの関係を求めた結果で、R=0.5 で基準化してある。注入係数MAlはR値が高いと低下し、リン濃度が高くなるほど注入モル比を低減させて良い。この場合の凝集剤注入濃度Caは(7)′式で算出できる。
【0031】
Ca=(Pi−Pm)・MAl/m または Ca=(Pi−Pm)・CAl …(7)′
次に、凝集剤と反応して生成される懸濁物量の実験的知見を以下説明する。凝集剤注入濃度Ca,リン過剰取込係数PAL,リン除去係数Υp′、及びアルカリ除去係数Υaから各除去濃度を算出し、これらを用いて生成懸濁物濃度dSaを定式化できることを見いだした。(8)式は金属塩との直接反応で除去されたアルカリ度CL とリン濃度Cp1、及び生成水酸化物に吸着されたリン濃度Cp2である。生成懸濁物濃度dSaは、これらの除去濃度に生成物質と除去物質の分子量比である係数ks1,ks2,ks3を掛け、その総和とした(9)式とな
CL =Υa・Ca,Cp1=(Pi−Pm−Cp2)・Ca,Cp2=PAL・CL・Ca …(8)
dSa=ks1・Cp1+ks2・Cp2+ks3・CL …(9)
る。(9)式で求めた計算値と実測値の一例を図5に示す。両者はほぼ一致しており、懸濁物生成量は凝集剤注入濃度Caと被処理水のリン濃度Piとアルカリ度ALiから精度良く演算できる。
【0032】
ところで、生物反応を利用した水処理プラントでは、処理効率や処理水質に直接影響するため、プロセス系内の微生物量を適正に管理することが重要で、生物反応槽や沈殿池から生物反応槽に戻される返送汚泥中の微生物濃度を計測し、管理している。リン除去を目的とした場合、凝集剤は微生物反応槽あるいは後段の沈殿池、あるいは反応槽と沈殿池の間に注入し、微生物と一緒に生成懸濁物も沈殿池で沈殿回収する。このため、返送汚泥中には生成懸濁物も含まれ、生物反応槽に環流する。生成懸濁物は無機質で、微生物反応に関与しないため、懸濁物濃度を考慮した微生物管理が必要となる。凝集剤を反応槽と沈殿池間に注入させた場合、返送汚泥を介して生物反応槽1に戻された時の反応槽入り口の懸濁物濃度Saは、(9)式で求めた生成濃度dSaと、返送汚泥流量Qr及び系外に排出される余剰汚泥流量Qwで定義した汚泥環流比αにより(10)式で演算できる。ここで、Sa-1は単位時間前の生成濃度で、凝集剤注入直前は0となる。また、微生物濃度比率Υsは(11)式で算出できる。ここで、Stは生物反応槽の全浮遊物質濃度で、例えば、汚泥濃度計で計測される濃度である。この微生物濃Sa=α・(Sa-1+dSa) 但し α=Qr/(Qr+Qw) …(10)
Υs=(St−Sa-1)/(St+dSa) …(11)
度比率Υsを考慮して、生物反応槽の微生物管理や返送汚泥流量あるいは余剰汚泥流量を操作することにより、プラントの処理性能を低下させることなく、適正な運転管理ができる。なお、(8)式において、リン除去量を金属塩との反応と水酸化物への吸着の2種類に分けて生成懸濁物濃度を求めたが、過剰取込も考慮した(3)式の除去係数で演算することもできる。
【0033】
本発明によれば、被処理水のリン濃度とアルカリ度から凝集剤の消費内訳を定量化し、単位リン量を除去するための金属塩量変化に見合って必要な凝集剤量を求めることができ、この演算値に基づいて凝集剤注入量を制御することで、必要最小限の凝集剤量で処理水のリン濃度を目標値以下に維持することができ、懸濁物生成量も抑制できるため、良好な処理水質と低コストの運転管理を実現できる。本発明による被処理水のPi/ALi比に対応した注入モル比変動方式と、従来の注入濃度及び注入モル比一定方式による凝集剤制御の処理水リン濃度をシミュレーション計算で比較した結果を図6から図8に示す。図6は注入モル比変動方式、図7は注入濃度一定方式、図8は注入モル比一定方式で、初期リン濃度Piを0.75 〜10mg/L、アルカリ度ALiを25〜200mg/Lで変化させ、処理水リン濃度目標値Pmを0.5mg/L の条件とした。図7と図8において、初期リン濃度に対して処理水リン濃度が幅をもって変化しているのは初期アルカリ度の影響である。このように、注入濃度及び注入モル比一定方式では、被処理水の変動に対して目標値(一点鎖線)を常時維持することができず、凝集剤を過剰に注入しておく必要がある。これに対して、図6の注入モル比変動方式では処理水リン濃度を目標値に維持でき、安定した処理水を提供することができる。
【0034】
また、本発明によれば、被処理水のPi/ALi比に対応して単位金属塩量が除去できるリン量及びアルカリ量が決まり、これらの値と凝集剤注入量に基づいて生成される懸濁物量を精度良く演算でき、懸濁物量を考慮した微生物管理を実現でき、処理効率を低下させることのない適正な運転管理を提供できる。
【0035】
なお、図11は、嫌気−無酸素−好気法のプラントでpHとアルカリ度の関係を求めたものである。この図は生物反応槽の各槽と処理水の結果を符号変えして纏めている。両者は正の相関関係があり、処理過程に影響されずpHでアルカリ度を予測できることを示す。pHはオンライン計測ができ、被処理水の変化を迅速に把握できるため、信頼性の高い制御の実現に有効である。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の複数の実施例を図面に沿って詳細に説明する。なお、各図を通して同一の構成要素には同一の符号を付してある。
【0037】
〔実施例1〕
図1は嫌気−無酸素−好気法(A2O法)による下水処理設備の構成図で、処理水のリン濃度を目標値以下に管理する凝集剤制御装置を設けている。実施例1の下水処理設備は嫌気槽1A,無酸素槽1B、と好気槽1Cから成る生物反応槽1,最終沈殿池2,凝集剤注入槽3,水中撹拌機5,汚泥返送設備7,汚泥排出設備8,送風機9,循環設備10,凝集剤タンク11,凝集剤注入設備12から構成されている。
【0038】
家庭や工場から排出された流入下水は最初沈殿池(図示せず)で粗大な狭雑物が沈殿除去され、生物反応槽1に流入する。流入下水13の導かれる嫌気槽1Aには最終沈殿池2から汚泥返送設備7を介して活性汚泥と呼ばれる微生物群である返送汚泥14が供給され、流入下水13と返送汚泥14が水中撹拌機5Aで撹拌混合される。嫌気状態下の嫌気槽1Aにおいて、活性汚泥は細胞内に蓄積していたポリリン酸を加水分解してオルトリン酸(PO4 −P)として液中に放出する。また、活性汚泥はリン放出時に有機物を吸着し、細胞内に蓄積する。このため、嫌気槽1Aではリン濃度が増加し、有機物が減少する。
【0039】
嫌気槽1Aの混合液は隔壁4Aを介して無酸素槽1Bに導かれる。無酸素槽1Bには、循環設備10により好気槽1Cから好気槽混合液が循環液18として環流する。無酸素槽1Bでは、嫌気槽1Aからの混合液と循環液18が水中撹拌機5Bで撹拌混合される。無酸素槽1Bは溶存酸素を含む循環液18が流入するが、殆ど酸素のない状態となり、好気槽1Cで生成された硝酸性あるいは亜硝酸性窒素を、嫌気槽1Aから導かれた混合液中の有機物、あるいは活性汚泥が細胞内に蓄積した有機物を利用して窒素ガスに還元する脱窒機能を有する。このため、無酸素槽1Bでは硝酸性あるいは亜硝酸性窒素、及び有機物が減少する。
【0040】
無酸素槽1Bの混合液は隔壁4Bを介して好気槽1Cに導かれる。好気槽1Cの底部には散気管6が設置されており、送風機9からの空気18を散気し、混合液を撹拌するとともに活性汚泥の酸素源を供給する。好気槽1Cにおいて、活性汚泥は吸着した有機物及び混合液中の有機物を酸素存在下のもと水と炭酸ガスに分解する。また、アンモニア性窒素を硝酸性あるいは亜硝酸性窒素に酸化する。さらに、液中のオルトリン酸をポリリン酸として細胞内に摂取する。この摂取量は、通常、嫌気槽1Aで放出した以上の過剰摂取となるため、プロセス全体ではリンが減少して、除去されたことになる。
【0041】
好気槽1Cの流出水15は最終沈殿池2に導かれ、混合液中の活性汚泥が重力沈降する。上澄み液は処理水16として塩素殺菌後河川や海洋に放流される。一方、沈殿した高濃度の活性汚泥は、その大部分が汚泥返送設備7により返送汚泥14として生物反応槽1に返送され、増殖分に相当する一部を余剰汚泥17として汚泥排出設備8を介して系外に排出する。余剰汚泥17には生物反応槽1で除去されたリンも含まれている。
【0042】
このように生物学的にリンを除去するプロセスでは、嫌気槽1Aでの嫌気状態を維持してリンを良好に放出させる必要がある。リン放出が不十分である場合、好気槽1Cでのリンの摂取も悪く、過剰摂取をしなくなる。リン放出・摂取状態の悪化は、プロセス全体でのリン除去率の低下を招き、さらに処理水16のリン濃度が流入下水13より高くなることもある。
【0043】
リン放出・摂取状態が悪化した場合、生物処理による急激な回復は困難なので、悪化現象を正確に検知し、速やかに処理水16のリン濃度を目標値以下に維持するために金属塩などの凝集剤を注入する化学凝集処理を併用する。このため、本実施例の下水処理設備は凝集剤タンク11と凝集剤注入設備12を配設し、さらに、生物反応槽1の後段に凝集剤注入槽3を設け、計算機50により演算制御される必要量の凝集剤20を注入する。なお、凝集剤注入槽3には好気槽1Cの流出水15と凝集剤20を混合撹拌するため、送風機9からの空気18の一部を散気している。流出水15の流れを渦流あるいは乱流とする凝集剤注入槽3の構造にすれば、新たな混合撹拌機構は必要がない。
【0044】
以下、計算機50によって実現される凝集剤注入制御装置の構成と動作について説明する。好気槽1Cに採水設備21を設置し、リン濃度計41とアルカリ度計42に送水する。リン濃度計41及びアルカリ度計42では、送水された好気槽1Cの混合液の活性汚泥を分離し、液中の溶解性リン濃度Piとアルカリ度ALiを計測し、計算機50のデータベース55に入力、記憶される。採水設備21の設置位置は少なくとも凝集剤20の注入位置より上流側とし、凝集剤注入前(本例では好気槽の混合液)の被処理水のリン濃度Piとアルカリ度ALiを測定する。好気槽1C混合液の活性汚泥分離は平膜や中空膜などの膜ろ過方式が適用でき、採水設備21に設置してもよい。流量計31,32及び33で計測された流入下水流量Qiと返送汚泥流量Qr及び余剰汚泥流量Qw,汚泥濃度計44及び43で計測された好気槽1Cの汚泥濃度計測値St及び返送汚泥濃度Srも計算機50のデータベース55に入力される。
【0045】
これらの入力値に基づいて、計算機50はリンの除去が不良か否かを判定し、除去不良の場合、必要な凝集剤注入量を演算し、凝集剤注入設備12を制御するとともに、汚泥濃度中の活性汚泥比率を演算し、汚泥返送設備7及び汚泥排出設備8を制御する。計算機50は、係数演算部60と凝集剤量演算部70及び汚泥量演算部80を有し、データベース55からの計測情報に基づいて必要な凝集剤注入量を凝集剤量演算部70で、返送及び余剰汚泥量を汚泥量演算部80で演算し、夫々の制御装置へ出力する。
【0046】
係数演算部60では、まず、比率演算部62で好気槽1Cのリン濃度Piとアルカリ度ALiの比率Rを演算し、除去係数演算部63に出力する。除去係数演算部63は、比率Rに基づいてリン除去係数Υpとアルカリ度除去係数Υaを (3)式と(4)式から演算する。凝集剤がPACの場合、係数ApとAL は0.4〜2.0、BpとBL は0.1〜1.0、KL は1.0〜5.0の範囲で設定される。注入係数演算部64は、除去係数演算部63から出力されたリン除去係数Υpの逆数である単位リン量を除去するのに必要な金属量である注入係数CAlを演算する。この注入係数CAlをモル比換算して表してもよい。モル注入係数MAlは、リンと凝集剤に含有する金属の分子量比率mを用いて計算できる。含有金属がAlの場合、m≒1.15となる。演算式を(12)式に示す。除去係数ΥpとΥaは汚泥量演算部80に、注入係数CAlあるいはMAlは凝集剤量演算部70に出力される。
【0047】
CAl=Ap-1・R-Bp , MAl=m・CAl …(12)
凝集剤量演算部70では、判定部71でリン濃度Piと凝集剤注入後のリン濃度目標値Pmの偏差量εpを求め、凝集剤注入の要否を判定する。判定は、εp≦0の場合に注入不要とし、εp>0の場合に注入要とする。注入要と判定された場合、注入濃度演算部73は(7)′式あるいは(7)′式の(Pi−Pm)をεpとして、金属換算の注入濃度Caを演算する。
【0048】
注入量演算部74は、注入濃度Caと被処理水流量から金属注入量Mを、金属注入量Mが含まれる凝集剤注入量Gを(13)式より演算する。被処理水流量は、処理方式や凝集剤の注入位置で異なるが、図1の方式の場合、流入下水流量Qiと返送汚泥流量Qrの和となる。また、凝集剤に含有する金属濃度Cmは凝集剤の種類や溶解条件で異なるため、金属量Mを含む凝集剤量に換算する必要がある。
【0049】
M=Ca・(Qi+Qr) , G=M/Cm …(13)
凝集剤量制御装置23は凝集剤注入設備12を調節し、凝集剤注入槽3への凝集剤量が凝集剤量演算部70の出力値Gとなるように制御する。この例の凝集剤注入設備12はポンプであり、凝集剤量制御装置23は流量計24の計測値が凝集剤量Gの流量値となるようにポンプ回転数、あるいはストローク長を設定する。なお、偏差量εp≦0となれば、処理水のリン濃度は目標値を満たしていると判定し、凝集剤を停止する。この間欠操作により、余分な凝集剤の注入を抑制して運転コストを低減し、かつ、活性汚泥への悪影響を回避する。
【0050】
汚泥量演算部80では、係数演算部60からのリン除去係数Υpとアルカリ除去係数Υa、及び凝集剤量演算部70からの金属注入濃度Caが入力され、生物反応槽1を循環する浮遊物質中の凝集剤起因の懸濁物と本来の活性汚泥濃度あるいは濃度比率を演求め、返送汚泥流量あるいは余剰汚泥流量の操作量を演算し、汚泥返送設備7及び汚泥排出設備8を制御する。除去濃度演算部82は、除去係数ΥpとΥa及び注入濃度Caからリン除去量Cpとアルカリ除去量CL を (14)式より求める。懸濁生成濃度演算部83は除去量CpとCL より生成懸濁物濃度dSaを(15)式より求める。凝集剤の金属塩がAlの場合、係数ks1は3.94、ks3は0.5〜1.5の範囲で設定される。
【0051】
Cp=Ca・Υp , CL =Ca・Υa …(14)
dSa=ks1・Cp+ks3・CL …(15)
環流懸濁物濃度演算部84は、凝集剤を注入し、最終沈殿池2から返送汚泥14を介して生物反応槽1に環流されたときの反応槽1における懸濁物濃度Saを(10)式により演算する。演算に必要な汚泥環流比αは、環流比率演算部85で同様に(10)式により求め、環流懸濁物濃度演算部84へ出力する。活性汚泥比率演算部86は、環流時の活性汚泥比率Υsを汚泥濃度計44で計測された全浮遊物濃度Stに基づいて(11)式により予測演算する。流量演算部87は目標値記憶部88に予め入力されている汚泥管理項目の目標値となるように返送汚泥流量あるいは余剰汚泥流量を演算する。本実施例では、生物反応槽1の活性汚泥濃度と汚泥滞留時間(以下、SRTと称す)を管理項目とし、それらの目標値Sm及びTmを設定している。返送汚泥流量Qrは、生物反応槽1の活性汚泥濃度を目標値Smに維持する方式の場合、(16)式により演算できる。余剰汚泥流量Qwは、SRTを目標値Tmに維持する管理条件とした場合、 (17)式により演算できる。ここで、Srは返送汚泥濃度計測値、Vは生物反応槽1の容積である。
【0052】
Qr=Sm・Qi/(Υs・Sr−Sm) …(16)
Qw=(St−Sa-1)・V/(Υs・Sr・Tm) …(17)
返送量制御装置24は汚泥返送設備7を調節し、返送汚泥流量が汚泥量演算部80の出力値Qrとなるように制御する。また、余剰量制御装置27は汚泥排出設備8を調節し、余剰汚泥流量が汚泥量演算部80の出力値Qwとなるように制御する。この例の汚泥返送設備7及び汚泥排出設備8はポンプであり、制御装置24は流量計32の計測値、余剰量制御装置27は流量計33の計測値が出力流量値となるようにポンプ回転数、あるいはストローク長、あるいはポンプ台数を設定する。なお、SRT目標値Tmは、生物反応槽1全体での汚泥滞留時間としたが、好気槽のみを考慮したA−SRTを用いて設定することができる。このように、凝集剤で生成された懸濁物を除いた真の活性汚泥濃度を対象に汚泥管理することにより、安定した微生物処理を実現でき、良質の処理水を提供できる。
【0053】
表示部90を設け、上記した計算機50の判定結果や演算情報を表示することもできる。また、計算機50の演算結果による制御や制御量の実行可否、及び各種目標値や演算係数の設定変更などを入力,指示する機能を持たせることもできる。さらに、凝集剤の注入に対して、必要に応じて警報音を発生させてもよい。
〔実施例2〕
図9は、嫌気−無酸素−好気法による下水処理設備の構成図で、図1の構成との相違は、凝集剤量演算部70における注入濃度の演算方式にある。除去係数演算部63で求められたリン除去係数Υpを係数演算部60から凝集剤量演算部70に出力する。注入濃度演算部73は、(7)式により注入濃度Caを演算する。金属注入量Mと凝集剤注入量Gの演算、及び凝集剤注入設備12の操作方法は実施例1と同様である。
【0054】
実施例2の方式は実施例1に比べて、演算部を少なくでき、演算誤差を低減させる凝集剤制御が可能である。
【0055】
〔実施例3〕
図10は、嫌気−無酸素−好気法による下水処理設備の構成図で、図1の構成との相違は、係数演算部60の演算方式と、演算結果に基づいた凝集剤注入量及び汚泥量の演算方式にある。係数演算部60において、第1除去係数演算部65では(4)式によりアルカリ除去係数Υaを演算する。取込係数演算部66は、(5)式により、アルカリ成分と凝集剤の反応で生成された水酸化物に吸着されるリン量であるリン過剰取込係数PALを求める。第2除去係数演算部67では、取込係数PALを考慮したリン除去係数Υp′を(6)式により演算し、凝集剤量演算部70に出力する。凝集剤量演算部70の注入濃度演算部73は、(7)式の第2式により注入濃度Caを演算する。(5)式におけるPaは0.2〜0.5,Pbは0.1〜1.0の範囲で設定できる。
【0056】
汚泥量演算部80の除去濃度演算部82では、凝集剤量演算部70からの注入濃度Ca、係数演算部60からのアルカリ除去係数Υaとリン過剰取込係数PALに基づいて(8)式からアルカリとリンの除去濃度を演算する。懸濁生成濃度演算部83は、(9)式により懸濁生成物濃度dSaを求める。凝集剤の金属塩がAlの場合、(9)式中の係数ks2は3.0〜3.1に設定される。
【0057】
注入濃度Ca演算後の金属注入量Mと凝集剤注入量Gの演算、及び凝集剤注入設備12の操作方法、さらに、懸濁生成物濃度dSa演算後の返送汚泥流量及び余剰汚泥流量の演算方法、及び汚泥返送設備7,汚泥排出設備8の操作方法は実施例1と同様である。
【0058】
実施例3の方式は実施例1及び2に比べて、懸濁生成物濃度dSaを精度良く演算でき、正確な活性汚泥比率に基づいた返送汚泥や余剰汚泥流量制御を実現でき、安定した微生物処理が可能である。
【0059】
〔実施例4〕
図12は、嫌気−無酸素−好気法による下水処理設備の構成図で、被処理水のpH計測値を用いる係数演算部を設けている。図1の構成との相違は、好気槽1Cを対象にpH計45を設置し、計算機50に被処理水のpH計測値pHiを入力し、アルカリ度の演算方式にある。
【0060】
係数演算部60での濃度演算部61は、被処理水pH計測値pHiに基づいて被処理水のアルカリ度ALiを予測演算する。演算式は、pHとアルカリ度の間に図11に示す特性があることから、その相関式から(18)式で表せる。ここで、ka及びkbは係数で、各々80〜180,50〜220の範囲で設定できる。(18)式は、pH7を基準にpHiからALiを求める方式であるが、pHiの値で直接演算する方式でもよい。
【0061】
ALi=ka+kb(pHi−7) …(18)
比率演算部62は、濃度演算部61からのアルカリ度ALiとリン濃度計41の計測値Piにより比率Rを演算する。演算結果に基づく各係数演算、及び凝集剤注入量,返送汚泥流量,余剰汚泥流量の演算方法は図1と同様である。
【0062】
実施例4によれば、下水処理プロセスでこれまでオンライン計測項目に入っていないアルカリ度ALiを、信頼性の高いpH計で予測できるため、監視制御装置の信頼性を向上できる。また、本実施例は、図1のみならず、図9,図10、さらに後述する図13にも適用可能である。
【0063】
〔実施例5〕
図13は、嫌気−無酸素−好気法による下水処理設備の構成図で、処理水リン濃度の計測値を用いる凝集剤制御装置を設けている。図1の構成との相違は、処理水16を対象にリン濃度計46を設置し、計算機50にリン濃度計測値Poを入力する点と、凝集剤注入濃度Caの演算方式にある。
【0064】
判定部71では、偏差量εpで凝集剤注入の要否を判定するとともに、処理水リン濃度計測値Poと目標値Pmの偏差量εp′を求め、|εp′|>βの場合、補正濃度演算部75で補正注入濃度ΔCaを演算する。βは係数で、β>0とする。演算式は、例えば、注入係数CAlを用いた(19)式が適用できる。CAlの代わりにMAlを用いることもでき、また、Υp,Υp′でεp′を除算する方式でもよい。
【0065】
ΔCa=CAl・εp′ …(19)
必要濃度演算部76は、注入濃度演算部73の注入濃度Caと補正濃度演算部75の補正注入濃度ΔCaを加算し、必要濃度Cを演算する。注入量演算部74は、(13)式のCaをCに置き換えて、金属注入量M及び凝集剤注入量Gを求め、凝集剤注入槽3への凝集剤量が凝集剤量演算部70の出力値Gとなるように、凝集剤注入設備12を制御する。
【0066】
アルカリ成分の組成は日あるいは季節、さらには一時的な原因で変動し、除去係数を変化させる可能性がある。本実施例によれば、リン除去係数Υp,Υp′あるいはアルカリ除去係数Υaが流入下水の水質条件等で変化する場合も、適正な注入量に基づいた安定した凝集剤制御を可能とする。
【0067】
なお、上記実施例では、補正注入濃度ΔCaを演算する方式としたが、注入係数を補正することでもできる。補正注入係数CAl′は補正前の注入濃度Caを偏差量εpで除算することで求まる。
【0068】
〔実施例6〕
図14は、生物処理法による下水処理設備の後段を対象とした実施例の構成図で、処理水16を被処理水とする凝集剤制御装置を設けている。本凝集剤制御装置は最終沈殿池2の後段に凝集剤注入槽3を設け、計算機50により演算制御される必要量の凝集剤20を注入する。凝集剤注入槽3の上流となる処理水16中のリン濃度Piとアルカリ度ALiを計測するリン濃度計41とアルカリ度計42、さらに、処理水16の流量Qoを計測できる流量計31Aを設置し、それらの計測値は計算機50に入力される。凝集剤注入槽3の下流に懸濁物回収装置2Aを設け、回収懸濁物は排泥装置8Aで余剰汚泥17と一緒にプロセス系外に排出し、懸濁物を回収した処理水16Aは殺菌後河川や海洋へ放流される。懸濁物回収装置2Aは重力沈降式、あるいは膜及び遠心分離などの機械式固液分離方法を用いることができる。
【0069】
実施例6における凝集剤注入制御方式は、注入量演算部74の演算を除いて図1と同じである。注入量演算部74では、流量計31Aからの処理水流量Qoを用いて(13)式で金属注入量Mを演算する。
【0070】
本実施例は、リン及びアルカリ除去係数が活性汚泥が存在する場合と存在しない場合とで変化がなく、汚泥の有無に係わらず、同じ特性式で表現された試験結果に基づいている。本実施例では活性汚泥が殆ど存在しない最終沈殿池処理水を対象としたもので、前記実施例に比べて注入対象となる被処理水流量が低くなり、凝集剤量を低減できる効果がある。
【0071】
また、図示しないが、下水処理設備から排出される汚泥を濃縮処理する汚泥処理設備にも本実施例を適用できる。
【0072】
〔実施例7〕
図15は、浄水処理設備の構成例で、沈殿上澄水(処理水)の濁度成分を目標値以下に管理する凝集剤制御装置を設けている。実施例7の浄水処理設備は流入原水中の微小な濁質粒子を凝集剤で凝集沈殿して除去するもので、着水井101,混和池102,フロック形成池103,沈殿池104,凝集剤タンク11,凝集剤注入設備12から構成されている。河川や湖沼から取水した流入原水111は沈砂池(図示せず)などで土砂や狭雑物が除去された後、着水井101に流入する。着水井101では他の原水や後段設備からの返送水と混合され、水質の安定化が図れる。混和池102では、凝集剤20が注入され、撹拌機106で凝集剤を被処理水に均一に拡散させる。フロック形成池103は、撹拌機107を緩やかに回転させ、微小濁質粒子を凝集剤の作用で粗大な凝集塊(以下、フロックと称す)とし、沈降しやすい状態にする。沈殿池104では、粗大化したフロックを沈殿除去し、清澄な上澄液を形成させる。澄液は砂ろ過,殺菌処理などの工程を経て、水道水となる。
【0073】
以下、計算機50で実現される凝集剤制御装置の構成と動作について説明する。着水井101に水質計測器121を設置して濁度,pH,水温,アルカリ度を計測し、それらの計測値Tui,pHi,Tmi,ALiを計算機50に入力する。また、リン濃度計41を設置し、溶解性リン濃度計測値piを計算機50に入力する。浄水処理の場合、流入原水111中の濁質粒子はリンを殆ど含まない物質であるため、図1で説明した濁質の前処理機能を持つ採水設備21を設置しなくてもよい。しかし、取水源に生物が繁殖している、あるいは、浄水処理の前段に生物処理を導入している場合は採水設備21を設置すれば、より正確な溶解性リン濃度を計測できる。着水井101の流出水の流量Qiを計測する流量計123を設け、その出力値Qiを計算機50に入力する。
【0074】
これらの入力値に基づいて、計算機50ではリンによる凝集剤消費の影響を考慮するか否かを判定し、考慮要と判定した場合に凝集剤注入量の補正量を演算し、凝集剤注入設備12を制御する。係数演算部60の比率演算部62の演算機能は上記実施例と同じである。消費比率演算部67は、リン成分による凝集剤中の金属塩消費割合ηpを(20)式から求める。
【0075】
ηp=Rp・RPc …(20)
ここで、Rp及びPcは係数で、各々0.2〜0.8,0.1〜1.0の範囲で設定される。
【0076】
凝集剤量演算部70では、まず、判定部71でリンによる凝集剤補正の可否を判定する。可否の判定は、例えばηpが設定値ηmより大きい場合に補正要とする。注入濃度演算部73は、凝集剤補正否の場合、Tui,pHi,Tmi,ALiに基づいて予め設定された注入モデル:f(Tui,pHi,Tmi,ALi)で注入濃度Caを演算する。補正要の場合は、リン成分による凝集剤中の金属塩消費割合ηpを考慮した(21)式で演算する。注入量演算部74の演算機能は上記実施例と同じである。凝集剤量制御装置23は流量計34の計測値が演算出力値Gとなるように、凝集剤注入設備12を制御する。
【0077】
Ca=(1+ηp)・f(Tui,pHi,Tmi,ALi) …(21)
本実施例によれば、浄水処理において、凝集剤を消費する成分であるリンが流入しても、濁質粒子を適正に除去する凝集剤注入制御が可能である。
【0078】
なお、本発明の実施例1〜5では嫌気−無酸素−好気法(A2O法)を対象としたが、嫌気−好気法(AO法),嫌気−好気−無酸素−好気法(AOAO法)などの高度処理方式だけでなく、標準活性汚泥法や活性汚泥循環変法にも適用可能である。また、膜処理を利用した方式にも適用できる。凝集剤の注入位置は、生物反応槽と沈殿池の間としているが、生物反応槽あるいは沈殿池に注入しても同様の効果が期待できる。さらに、リン及びアルカリ除去係数やリンの金属塩消費率は指数式で表現したが、Rの2次式で表現することもできる。
【0079】
【発明の効果】
本発明によれば、被処理水のリン濃度Piとアルカリ度ALiの比から凝集剤の消費内訳を定量化し、単位リン量を除去するための金属塩量変化に見合って必要な凝集剤量を求めることができ、この演算値に基づいて凝集剤注入量を制御することで、必要最小限の凝集剤量で処理水のリン濃度を目標値以下に維持することができ、懸濁物生成量も抑制できるため、良好な処理水質の運転管理を実現できる。また、本発明によれば、被処理水のPi/ALi比に対応して単位金属塩量が除去できるリン量及びアルカリ量が決まり、これらの値と凝集剤注入量に基づいて生成される懸濁物量を精度良く演算でき、懸濁物量を考慮した微生物管理を実現でき、処理効率を低下させることのない適正な運転管理を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1による凝集剤制御装置と汚泥量制御装置を含む下水処理設備の構成図。
【図2】単位凝集剤量当たりの除去変化特性の試験結果の一例を示すグラフ。
【図3】リン濃度とアルカリ度の試験結果の一例を示すグラフ。
【図4】凝集剤注入量をモル比で表した試験結果の一例を示すグラフ。
【図5】懸濁物生成量の計算値と実測値の試験結果の一例を示すグラフ。
【図6】本発明による凝集剤注入制御方式の試験結果の一例を示すグラフ。
【図7】注入濃度一定による凝集剤注入制御方式の試験結果の一例を示すグラフ。
【図8】注入モル比一定による凝集剤注入制御方式の試験結果の一例を示すグラフ。
【図9】実施例2による凝集剤制御装置と汚泥量制御装置を含む下水処理設備の構成図。
【図10】実施例3による凝集剤制御装置と汚泥量制御装置を含む下水処理設備の構成図。
【図11】pHとアルカリ度の試験結果の一例を示すグラフ。
【図12】実施例4による凝集剤制御装置と汚泥量制御装置を含む下水処理設備の構成図。
【図13】実施例5による凝集剤制御装置と汚泥量制御装置を含む下水処理設備の構成図。
【図14】実施例6による凝集剤制御装置を含む下水処理設備の構成図。
【図15】実施例7による凝集剤制御装置を含む浄水処理設備の構成図。
【符号の説明】
1…生物反応槽、1A…嫌気槽、1B…無酸素槽、1C…好気槽、2…最終沈殿池、3…凝集剤注入槽、7…汚泥返送設備、8…汚泥排出設備、9…送風機、10…循環設備、11…凝集剤タンク、12…凝集剤注入設備、21…採水設備、23…凝集剤量制御装置、25…返送量制御装置、27…余剰量制御装置、31,32,33,34…流量計、39A…空気量制御部、39B…返送量制御部、39C…循環量制御部、41…リン濃度計、42…アルカリ度計、43,44…汚泥濃度計、45…pH計、50…計算機、55…データベース、60…係数演算部、61…濃度演算部、62…比率演算部、63…除去係数演算部、64…注入係数演算部、70…凝集剤量演算部、71…判定部、73…注入濃度演算部、74…注入量演算部、80…汚泥量演算部、82…除去濃度演算部、83…懸濁生成濃度演算部、84…環流懸濁物濃度演算部、85…環流比率演算部、86…活性汚泥比率演算部、87…流量演算部、88…目標値記憶部,90…表示部、101…着水井、102…混和池、103…フロック形成池、104…沈殿池、121…水質計測器、123…流量計。
【発明の属する技術分野】
本発明は、都市下水や産業排水,湖沼水あるいはダム湖水の有機物や窒素,リンを生物学的処理あるいは物理化学凝集で除去する水処理方法に関し、特に、物理化学凝集の目的で注入する凝集剤を適正に調節し、処理水中のリン濃度を目標値に維持する水処理監視制御方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
下水処理場では、生活排水や工場排水などを活性汚泥法と呼ばれる微生物で主に有機物を除去している。下水中には有機物の他に窒素やリンが含まれており、リンはオルトリン酸(PO4 −P),窒素はアンモニア性窒素として下水処理場に流入する。これらのリンや窒素を除去せずに放流すると、放流水域では富栄養が進み、藻類の異常繁殖によりさらに水質が悪化する。したがって、下水処理場では有機物に加えてリンや窒素の除去も要求されている。流入下水中のリンや窒素を除去するために、活性汚泥プロセスの一施設である曝気槽を好気領域と嫌気領域に分けた微生物反応槽を使用している。微生物反応槽の方式には嫌気−無酸素−好気法(A2O法),嫌気−好気法(AO法),活性汚泥循環変法などがあり、少なくとも嫌気槽を前段に、好気槽を後段に配置している。これらの方式のうち、A2O法は窒素とリン、AO法はリン,活性汚泥循環変法は窒素の除去率の向上が期待できる。A2O法やAO法は嫌気槽を前段に、好気槽を後段に配置することによって活性汚泥(複合微生物の総称)のリン過剰摂取機能を利用し、活性汚泥は嫌気槽でリンを放出し、好気槽で放出した以上にリンを摂取することで、流入水中のリンを生物学的に除去する。しかし、活性汚泥のリン過剰摂取機能は流入水の水質状態やプラント操作条件、あるいは活性汚泥の管理状態によって変化し、放出不良や摂取不良などを生じて処理水中のリン濃度を増加させることがある。
【0003】
このため、下水処理場では金属塩などの凝集剤を注入し、物理化学的に除去する方法を併用している。凝集剤の注入量が不足するとリン除去が不十分となり、処理水中のリン濃度を高める。一方、過剰注入は運転コストや汚泥発生量の増加、さらに微生物の活性にも影響を与える。したがって、凝集剤の注入量は必要最小限にする必要がある。
【0004】
下水処理場において、物理化学凝集によりリンを除去する場合、アルミニウム系や鉄系の金属塩、あるいは消石灰が凝集剤として用いられる。液中でのリンはオルトリン酸や縮合リン酸の形態で存在し、凝集剤の注入により難溶性の塩を形成する。また、凝集剤は重炭酸塩と反応し、水酸化物のフロックを形成してさらにリンを吸着除去する。アルミニウム系の凝集剤を用いた場合の反応式は(1)式及び(2)式により表される。
【0005】
Al3+ +PO4 3- → AlPO4 …(1)
Al3+ +3HCO3 - → Al(OH)3 +3CO2 …(2)
(1)式から、液中のリンを難溶性塩にするには理論的に1モル比のアルミニウム(以下、Alと称す)を注入すればよいが、(2)式のように他の物質にも消費されるのでモル比を1より大きくする必要がある。また、凝集剤を注入すると、不溶解性の懸濁物が生成される。Al塩の凝集剤では、(1)式及び(2)式から、1mgのAlに対してリン酸アルミニウムが約4.5mg ,水酸化アルミニウムが約2.9mg生成される。2mgのAlが(1)式と(2)式に等量利用されたとすると、全懸濁物は7.4mg 増加し、1mgのAlで換算すると平均3.7mg のAl化合物である懸濁物を生成する。なお、鉄系の凝集剤を用いた場合、Fe1mg当り平均2.3mg の懸濁物を生成する。懸濁物生成量の実測例ではAl添加量の3〜5倍との結果もある(先行技術1:村田恒雄編著;「下水の高度処理技術」,理工図書,平成4年5月)。
【0006】
リン除去を目的とした凝集剤注入量制御方法として、現在の処理水のリン濃度Piと一定時間b前の処理水のリン濃度Poから変化率d(=(Pi−Po)/b)を求め、この変化率で将来も推移するとしてc時間後の処理水のリン濃度変化ΔPc(=d・c)予測し、目標値との偏差で注入量を設定する提案がある(先行技術2:特開平3−89993号)。あるいは、好気槽から採水した活性汚泥混合水を固液分離した液部分のリン濃度と好気槽から流出する処理水流量からリン成分物量を求め、化学的当量関係を利用してリン成分物量から凝集剤所要量を算出して凝集剤量を制御する方式(先行技術3:特開平9−174086 号),処理水のリン濃度に対して凝集剤をモル比換算で一定に制御し、リン含有フロックを砂ろ過で分離する方式(先行技術4:特開昭63−242392号),流入水のリン濃度と処理水リン濃度設定値の偏差に一定のモル比で凝集剤を制御する方式(先行技術5:第33回下水道研究発表会講演集,P492−494,平成8年),脱水ろ液のリン濃度に当量換算係数を乗じて凝集剤注入量を設定する方式(先行技術6:特開平7−88497号)などの提案がある。
【0007】
凝集剤の注入に伴い生成される汚泥量の制御に関しては、Al塩を用いた場合、添加Al量の5倍程度の懸濁物が新たに発生するものとして余剰汚泥量(沈殿地からプロセス外へ排出する汚泥量)を算出する方式(先行技術7:高度処理施設設計マニュアル(案),日本下水道協会,P266),返送比(生物反応槽へ流入する下水流量に対する沈殿池から生物反応槽へ返送する汚泥量の比)に加えてMLSS濃度(生物反応槽の汚泥濃度)や凝集剤添加量の運転条件を考慮して制御する方式(先行技術8:特開平10−43788号)などの提案がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記した先行技術2〜6の凝集剤注入量制御は、(1)式及び(2)式に基づいて、モル比あるいはAlとリンの濃度比を予め設定し、凝集剤を制御する比率一定制御方式を採用している。
【0009】
例えば、先行技術2でその試験結果(第1表)によれば、流入水のリン濃度に対してAl注入率がほぼ比例関係にあり、モル比換算で約1.3 と推算できる。しかし、先行技術2の第2図からも明らかなように、下水処理場などの流入水中のリン濃度は人間の生活周期によって大きく変化する。したがって、将来の処理水のリン濃度が過去と同じ変化率で推移するとした予測法では、凝集剤の適正な制御は困難となる。さらに、流入水リン濃度に比例して凝集剤注入量を制御しているが、嫌気槽と好気槽からなる微生物反応槽のように、流入水のリン濃度より反応槽のリン濃度が高くなるような処理プロセスではモル比を一定とした方式を適用できない。先行技術3〜5は凝集剤注入位置に近い上流部のリン濃度を計測し、このリン濃度あるいは凝集剤注入後のリン濃度目標値との偏差に一定値を乗算して凝集剤注入量を設定している。しかし、本発明者らの試験結果によれば、Alとリンの濃度比を一定とする先行技術に記載のような凝集剤制御方式では、処理水のリン濃度を目標値以下に維持することができなかった。
【0010】
生物反応槽は活性汚泥の生物状態が正常なとき、リン過剰摂取により流入下水の通常範囲のリン濃度を目標値以下に維持することは可能である。しかし、活性汚泥のリン過剰摂取機能は流入水の水質状態やプラントの操作条件等によって大きく変化する。リン濃度を目標値以下に管理するには、結果的に凝集剤の過剰注入を招き、ランニングコストの上昇のみならず、活性汚泥にも悪影響を及ぼす。したがって、生物反応槽のリン過剰摂取機能、すなわちリン除去能力が低下し、目標値を維持できない場合に、過剰注入とならないで目標値を維持できる凝集剤を注入する必要がある。
【0011】
上記した先行技術7において、添加Al量に対して5倍程度の汚泥量が新たに生成されるのは、注入したAlの殆どがリンと反応する(1)式で消費されると仮定した結果によるものと推測される。しかし、本発明者らの試験結果によれば、汚泥発生量は添加Al量に対して一定倍率にならず、被処理水の水質に対応して大きく変化した。したがって、添加Al量に一定倍率を乗算して余剰汚泥量を管理する方式では、引抜き不足や過剰引抜きとなり、プロセス系内の汚泥量が安定せず、処理に悪影響する。先行技術8は、凝集剤添加量の運転条件を考慮して制御するとあるが、具体的な手段の明記がない。先行技術8の図10によれば、余剰汚泥量は好気槽のMLSS濃度計の出力信号を直接用いて設定値となるように制御している。この制御方式では、凝集剤を添加した場合、生物反応槽の汚泥濃度にはAlとの反応で生成された懸濁物質も含まれる。Al起因の懸濁物質は微生物反応に関与しない無機物質であり、MLSS濃度として一括で取扱うと本来管理すべき微生物濃度が低下し、処理が悪化する。
【0012】
本発明の目的は、上記した従来技術の状況に鑑み、生物反応槽でのリン除去効率が悪化した場合にも適正量の凝集剤を注入して、処理水のリン濃度を目標値以下に維持し、さらに凝集剤の注入時に生物反応槽へ環流される無機懸濁量を予測して汚泥量を管理し、生物反応槽の処理効率の低下を抑制する、水処理監視制御方法及び装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の水処理監視制御方法は、生物反応槽と沈殿池を有し、前記生物反応槽あるいは前記沈殿池あるいは前記生物反応槽と沈殿池の間に凝集剤注入設備を具備する水処理プロセスにおいて、被処理水中のリン濃度計測値とアルカリ度計測値の比率に基づいて単位リン量を除去するのに必要な凝集剤量で定義する凝集剤注入係数、あるいは単位凝集剤量が除去できるリン量で定義するリン除去係数を求め、前記リン濃度計測値と予め設定した処理水中のリン濃度目標値との偏差量から前記生物反応槽のリン除去能力を判定するとともに、前記注入係数あるいは除去係数と前記偏差量に基づいて前記目標値を維持するのに必要な凝集剤注入量を求め、リン除去能力が不良と判定されたときに、前記凝集剤注入量に対応して前記凝集剤注入設備を制御することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の水処理監視制御方法は、前記水処理プロセスにおいて、リン除去能力が不良と判定され、凝集剤が注入されたときに、前記被処理水中のリン濃度計測値Piとアルカリ度計測値ALiの比率と前記凝集剤注入量に基づいて凝集剤中の金属塩で形成される懸濁物濃度ΔSaと、前記沈殿池から微生物を前記生物反応槽へ戻す返送汚泥と前記水処理プロセス外に排出する余剰汚泥の流量から返送比率αを求め、該返送比率αと前記懸濁物濃度ΔSaにより前記水処理プロセス内を循環する懸濁物濃度Saを演算し、該懸濁物濃度Saで前記生物反応槽の混合液、あるいは前記沈殿池引抜き汚泥中の懸濁物濃度TSSを補正した微生物濃度を用いて前記返送汚泥流量及び余剰汚泥流量の少なくとも一方を制御することを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の水処理監視制御方法は、前記水処理プロセスにおいて、前記被処理水中のリン濃度とアルカリ度を計測し、これらの計測値の比率と、該比率からリン除去係数とアルカリ除去係数を求め、該除去係数と該除去係数を用いて求めた凝集剤注入量から処理水中のリン濃度とアルカリ度及び懸濁物濃度を算出し、前記凝集剤注入量に対応して前記凝集剤注入設備を制御するとともに、算出結果を出力し表示することを特徴とする。
【0016】
上記の本発明において、リン除去能力の判定は前記リン濃度計測値と予め設定した処理水中のリン濃度目標値との偏差量εpが0より大のときに不良とする。0以下のときは、正常と判定し、前記凝集剤注入設備の稼動を停止することを特徴とする。
【0017】
また、被処理水中のアルカリ度はpH計測値から予測し、該予測値を前記アルカリ度計測値として前記リン濃度計測値との比率を求め、前記凝集剤注入量を演算することができる。
【0018】
さらに、前記被処理水中のリン濃度計測値とアルカリ度計測値の比率に基づいて凝集剤注入量を演算する方式は、前記水処理プロセスの余剰汚泥を濃縮処理する汚泥処理プロセスや、生物反応槽を持たない凝集沈殿プロセス及び膜分離プロセスに利用できる。
【0019】
本発明の水処理監視制御装置は、生物反応槽と沈殿池を有し、前記生物反応槽あるいは前記沈殿池あるいは前記生物反応槽と沈殿池の間に凝集剤注入設備を具備する水処理設備において、前記被処理水中のリン濃度計測値とアルカリ度計測値の比率に基づいて凝集剤注入係数あるいはリン除去係数を求める第1演算手段と、前記リン濃度計測値と予め設定した処理水中のリン濃度目標値との偏差量を出力し、さらに該偏差量から前記生物反応槽のリン除去能力を判定する判定手段と、前記演算手段の注入係数あるいは除去係数と、前記判定手段からの前記偏差量に基づいて前記目標値を維持するのに必要な凝集剤注入量を求める第2演算手段を設け、前記判定手段でリン除去能力が不良と判定されたときに、前記第2演算手段からの凝集剤注入量の出力信号に対応して前記凝集剤注入設備を操作することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の水処理監視制御装置は、前記水処理設備において、被処理水中のリン濃度計測値とアルカリ度計測値の比率に基づいてリン除去係数とアルカリ除去係数を求める第1演算手段と、前記凝集剤注入設備から供給される被処理水流量当たりの凝集剤注入量と前記第1演算手段からの出力信号と前記リン及びアルカリ度計測値から凝集剤によって生成される懸濁物濃度を求める第2演算手段と、前記沈殿池から微生物を前記生物反応槽へ戻す返送汚泥と前記水処理プロセス外に排出する余剰汚泥の流量から返送比率を求め、該返送比率と前記第2演算手段からの懸濁物濃度により前記水処理設備内を循環する懸濁物濃度を求める第3演算手段とを設け、該第3演算手段からの循環懸濁物濃度で前記生物反応槽、あるいは前記返送汚泥中の微生物濃度を補正して前記返送汚泥流量及び余剰汚泥流量の少なくとも一方を制御することを特徴とする。
【0021】
さらに、本発明の水処理監視制御装置は、前記水処理設備において、前記被処理水中のリン濃度とアルカリ度を計測する計測手段と、該計測手段より出力されたリン濃度計測値とアルカリ度計測値から両者の比率と、該比率に基づいてリン除去係数とアルカリ除去係数を求め、該除去係数と該除去係数を用いて求めた凝集剤注入量から前記処理水中のリン濃度とアルカリ度及び懸濁物濃度を算出する演算手段を設け、該演算手段からの出力信号に対応して前記凝集剤注入設備を操作するとともに、前記演算手段の演算結果を出力表示する手段を設けていることを特徴とする。
【0022】
上記した本発明の作用を説明する。本発明は、(1)凝集剤単位重量当たりのリン及びアルカリ除去量は、凝集剤を注入する前の被処理水リン濃度とアルカリ度の初期条件に依存し、定式化できる、(2)被処理水リン濃度とアルカリ度の初期条件で凝集剤中の金属塩消費内訳が変化するのに伴い、凝集剤と反応して生成される懸濁物量も変化する、(3)アルカリ度は、生物反応槽の運転条件が変化しても、pHとの相関が高く予測できる、という実験的知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の凝集剤注入による反応特性と、生物処理特性を説明する。
【0023】
図2は、凝集剤注入前の被処理水中リン濃度Piとアルカリ度ALiの比と凝集剤単位重量当たりのリン及びアルカリ除去量の関係を示したものである。凝集剤単位重量当たりのリン除去量はリン除去係数Υp、アルカリ除去量はアルカリ除去係数Υaで表している。これらの除去係数は、基準化した値(特定値で除算)で示しているが、初期条件であるリン濃度Piとアルカリ度ALiの比で大きく変化する。その変化は、Pi/ALi比が大きくなる、すなわち、アルカリ度に対してリン濃度が増加すると、アルカリ除去係数Υaが低下する反面、リン除去係数Υpが大きくなる。言い換えれば、凝集剤の消費内訳はPi/ALi比で変化し、リン濃度が増加するとリンとの反応に消費される割合が増し、アルカリ成分の消費割合が減る方向に向かうことを見いだした。
【0024】
図3は、下水処理場の流入下水(黒色)と生物反応槽流出水(白色)のリン濃度Piとアルカリ度ALiの変化の一例で、基準化した値で示している。このように、水質に加えて水量も時々刻々変化するため、生物反応時間や処理条件も変化し、処理過程のリン濃度やアルカリ度が影響を受ける。流入下水と処理水で異なるが、都市下水の場合、リン濃度は5mg/L以下、アルカリ度は数十〜200mg/Lの範囲で変化する。これをPi/ALi比で表すと、0〜0.1 となる。図2において、Pi/ALi比が0〜0.1 の範囲は、リン除去係数Υp及びアルカリ除去係数Υaが急激に変化する領域である。したがって、リンを目標通りに除去するには、アルカリ成分に消費される分を考慮した凝集剤の注入操作が必要である。
【0025】
被処理水中のリン濃度Piを目標値Pm以下とするのに必要な凝集剤注入濃度Caは、図2の結果に基づいて、以下のように定式化するに至った。図2から、リン除去係数Υpとアルカリ除去係数Υaは(3)式及び(4)式で求められる。ただし、Ap,Bp,KL,AL,BL は係数、RはPi/ALi比である。(3)
【0026】
【0027】
式及び(4)式は、被処理水の初期条件であるPi/ALi比:Rが決まると、凝集剤の使われ方も定まることを示す。なお、Υp,Υaは凝集剤に含まれる金属塩の単位重量当たりに除去されるリン量とアルカリ量(CaCO3 換算)で、係数の値は金属塩の種類で変化する。
【0028】
ところで、凝集剤にポリ塩化アルミニウム(以下、PACと称す)を用いた本発明者らの実験によれば、除去されたアルカリとリンの総和量は、(1)式及び(2)式の理論式で注入したAl量から求めらた除去量より多い結果を得た。これは、前記したように、(2)式で生成された水酸化物がリンを吸着除去(以下、過剰取込と称す)したことによる。この過剰取込量は、これまで定量化されていなかった。本発明者らは、過剰取込量が生成された水酸化物量、すなわち、アルカリ度の除去量に依存し、定式化できることを明らかにした。。単位アルカリ度当たりのリン過剰取込量PAL(以下、リン過剰取込係数と称す)もまた、Rを用いた(5)式で表現できる。ここで、Pa、Pbは係数である。(5)式を用いたリン除去係数Υp′は、アルカリ除去係数Υaを導入した(6)式で表せる。ここで、ka,kpは定数である。リンの過剰取込を考慮したリン除去係数
PAL=Pa・RPb …(5)
Υp′=PAL・Υa+(1−kp・Υa)/ka …(6)
Υp′は、(5)及び(6)式から求まるが、(3)式で直接表示できる。図2の関係はリンの過剰取込も含めた結果である。
【0029】
被処理水中のリン濃度Piを目標値Pm以下とする凝集剤注入濃度Caは、 (3)式、あるいは(6)式のリン除去係数を用いて次式で演算できる。Caは被処理水単位容積当たりの凝集剤量で、被処理水流量を積算すれば必要な凝集剤量Qaを算出できる。
【0030】
Ca=(Pi−Pm)/Υp または Ca=(Pi−Pm)/Υp′…(7)
(7)式は、リン除去係数ΥpあるいはΥp′の変化に対応して凝集剤注入濃度Caを変化させる操作が必要であることを意味する。さらに、(3)式あるいは(6)式から、単位リン量当たりのAl必要量CAl(以下、Al注入係数と称す)、及びモル比換算の注入係数MAlを導出できる。注入係数CAlはΥpあるいはΥp′の逆数で、モル注入係数MAlはCAlにリンとAlの分子量の比率mを考慮して求められる。図4は、(3)式に基づいてR(Pi/ALi比)とモル注入係数MAlの関係を求めた結果で、R=0.5 で基準化してある。注入係数MAlはR値が高いと低下し、リン濃度が高くなるほど注入モル比を低減させて良い。この場合の凝集剤注入濃度Caは(7)′式で算出できる。
【0031】
Ca=(Pi−Pm)・MAl/m または Ca=(Pi−Pm)・CAl …(7)′
次に、凝集剤と反応して生成される懸濁物量の実験的知見を以下説明する。凝集剤注入濃度Ca,リン過剰取込係数PAL,リン除去係数Υp′、及びアルカリ除去係数Υaから各除去濃度を算出し、これらを用いて生成懸濁物濃度dSaを定式化できることを見いだした。(8)式は金属塩との直接反応で除去されたアルカリ度CL とリン濃度Cp1、及び生成水酸化物に吸着されたリン濃度Cp2である。生成懸濁物濃度dSaは、これらの除去濃度に生成物質と除去物質の分子量比である係数ks1,ks2,ks3を掛け、その総和とした(9)式とな
CL =Υa・Ca,Cp1=(Pi−Pm−Cp2)・Ca,Cp2=PAL・CL・Ca …(8)
dSa=ks1・Cp1+ks2・Cp2+ks3・CL …(9)
る。(9)式で求めた計算値と実測値の一例を図5に示す。両者はほぼ一致しており、懸濁物生成量は凝集剤注入濃度Caと被処理水のリン濃度Piとアルカリ度ALiから精度良く演算できる。
【0032】
ところで、生物反応を利用した水処理プラントでは、処理効率や処理水質に直接影響するため、プロセス系内の微生物量を適正に管理することが重要で、生物反応槽や沈殿池から生物反応槽に戻される返送汚泥中の微生物濃度を計測し、管理している。リン除去を目的とした場合、凝集剤は微生物反応槽あるいは後段の沈殿池、あるいは反応槽と沈殿池の間に注入し、微生物と一緒に生成懸濁物も沈殿池で沈殿回収する。このため、返送汚泥中には生成懸濁物も含まれ、生物反応槽に環流する。生成懸濁物は無機質で、微生物反応に関与しないため、懸濁物濃度を考慮した微生物管理が必要となる。凝集剤を反応槽と沈殿池間に注入させた場合、返送汚泥を介して生物反応槽1に戻された時の反応槽入り口の懸濁物濃度Saは、(9)式で求めた生成濃度dSaと、返送汚泥流量Qr及び系外に排出される余剰汚泥流量Qwで定義した汚泥環流比αにより(10)式で演算できる。ここで、Sa-1は単位時間前の生成濃度で、凝集剤注入直前は0となる。また、微生物濃度比率Υsは(11)式で算出できる。ここで、Stは生物反応槽の全浮遊物質濃度で、例えば、汚泥濃度計で計測される濃度である。この微生物濃Sa=α・(Sa-1+dSa) 但し α=Qr/(Qr+Qw) …(10)
Υs=(St−Sa-1)/(St+dSa) …(11)
度比率Υsを考慮して、生物反応槽の微生物管理や返送汚泥流量あるいは余剰汚泥流量を操作することにより、プラントの処理性能を低下させることなく、適正な運転管理ができる。なお、(8)式において、リン除去量を金属塩との反応と水酸化物への吸着の2種類に分けて生成懸濁物濃度を求めたが、過剰取込も考慮した(3)式の除去係数で演算することもできる。
【0033】
本発明によれば、被処理水のリン濃度とアルカリ度から凝集剤の消費内訳を定量化し、単位リン量を除去するための金属塩量変化に見合って必要な凝集剤量を求めることができ、この演算値に基づいて凝集剤注入量を制御することで、必要最小限の凝集剤量で処理水のリン濃度を目標値以下に維持することができ、懸濁物生成量も抑制できるため、良好な処理水質と低コストの運転管理を実現できる。本発明による被処理水のPi/ALi比に対応した注入モル比変動方式と、従来の注入濃度及び注入モル比一定方式による凝集剤制御の処理水リン濃度をシミュレーション計算で比較した結果を図6から図8に示す。図6は注入モル比変動方式、図7は注入濃度一定方式、図8は注入モル比一定方式で、初期リン濃度Piを0.75 〜10mg/L、アルカリ度ALiを25〜200mg/Lで変化させ、処理水リン濃度目標値Pmを0.5mg/L の条件とした。図7と図8において、初期リン濃度に対して処理水リン濃度が幅をもって変化しているのは初期アルカリ度の影響である。このように、注入濃度及び注入モル比一定方式では、被処理水の変動に対して目標値(一点鎖線)を常時維持することができず、凝集剤を過剰に注入しておく必要がある。これに対して、図6の注入モル比変動方式では処理水リン濃度を目標値に維持でき、安定した処理水を提供することができる。
【0034】
また、本発明によれば、被処理水のPi/ALi比に対応して単位金属塩量が除去できるリン量及びアルカリ量が決まり、これらの値と凝集剤注入量に基づいて生成される懸濁物量を精度良く演算でき、懸濁物量を考慮した微生物管理を実現でき、処理効率を低下させることのない適正な運転管理を提供できる。
【0035】
なお、図11は、嫌気−無酸素−好気法のプラントでpHとアルカリ度の関係を求めたものである。この図は生物反応槽の各槽と処理水の結果を符号変えして纏めている。両者は正の相関関係があり、処理過程に影響されずpHでアルカリ度を予測できることを示す。pHはオンライン計測ができ、被処理水の変化を迅速に把握できるため、信頼性の高い制御の実現に有効である。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の複数の実施例を図面に沿って詳細に説明する。なお、各図を通して同一の構成要素には同一の符号を付してある。
【0037】
〔実施例1〕
図1は嫌気−無酸素−好気法(A2O法)による下水処理設備の構成図で、処理水のリン濃度を目標値以下に管理する凝集剤制御装置を設けている。実施例1の下水処理設備は嫌気槽1A,無酸素槽1B、と好気槽1Cから成る生物反応槽1,最終沈殿池2,凝集剤注入槽3,水中撹拌機5,汚泥返送設備7,汚泥排出設備8,送風機9,循環設備10,凝集剤タンク11,凝集剤注入設備12から構成されている。
【0038】
家庭や工場から排出された流入下水は最初沈殿池(図示せず)で粗大な狭雑物が沈殿除去され、生物反応槽1に流入する。流入下水13の導かれる嫌気槽1Aには最終沈殿池2から汚泥返送設備7を介して活性汚泥と呼ばれる微生物群である返送汚泥14が供給され、流入下水13と返送汚泥14が水中撹拌機5Aで撹拌混合される。嫌気状態下の嫌気槽1Aにおいて、活性汚泥は細胞内に蓄積していたポリリン酸を加水分解してオルトリン酸(PO4 −P)として液中に放出する。また、活性汚泥はリン放出時に有機物を吸着し、細胞内に蓄積する。このため、嫌気槽1Aではリン濃度が増加し、有機物が減少する。
【0039】
嫌気槽1Aの混合液は隔壁4Aを介して無酸素槽1Bに導かれる。無酸素槽1Bには、循環設備10により好気槽1Cから好気槽混合液が循環液18として環流する。無酸素槽1Bでは、嫌気槽1Aからの混合液と循環液18が水中撹拌機5Bで撹拌混合される。無酸素槽1Bは溶存酸素を含む循環液18が流入するが、殆ど酸素のない状態となり、好気槽1Cで生成された硝酸性あるいは亜硝酸性窒素を、嫌気槽1Aから導かれた混合液中の有機物、あるいは活性汚泥が細胞内に蓄積した有機物を利用して窒素ガスに還元する脱窒機能を有する。このため、無酸素槽1Bでは硝酸性あるいは亜硝酸性窒素、及び有機物が減少する。
【0040】
無酸素槽1Bの混合液は隔壁4Bを介して好気槽1Cに導かれる。好気槽1Cの底部には散気管6が設置されており、送風機9からの空気18を散気し、混合液を撹拌するとともに活性汚泥の酸素源を供給する。好気槽1Cにおいて、活性汚泥は吸着した有機物及び混合液中の有機物を酸素存在下のもと水と炭酸ガスに分解する。また、アンモニア性窒素を硝酸性あるいは亜硝酸性窒素に酸化する。さらに、液中のオルトリン酸をポリリン酸として細胞内に摂取する。この摂取量は、通常、嫌気槽1Aで放出した以上の過剰摂取となるため、プロセス全体ではリンが減少して、除去されたことになる。
【0041】
好気槽1Cの流出水15は最終沈殿池2に導かれ、混合液中の活性汚泥が重力沈降する。上澄み液は処理水16として塩素殺菌後河川や海洋に放流される。一方、沈殿した高濃度の活性汚泥は、その大部分が汚泥返送設備7により返送汚泥14として生物反応槽1に返送され、増殖分に相当する一部を余剰汚泥17として汚泥排出設備8を介して系外に排出する。余剰汚泥17には生物反応槽1で除去されたリンも含まれている。
【0042】
このように生物学的にリンを除去するプロセスでは、嫌気槽1Aでの嫌気状態を維持してリンを良好に放出させる必要がある。リン放出が不十分である場合、好気槽1Cでのリンの摂取も悪く、過剰摂取をしなくなる。リン放出・摂取状態の悪化は、プロセス全体でのリン除去率の低下を招き、さらに処理水16のリン濃度が流入下水13より高くなることもある。
【0043】
リン放出・摂取状態が悪化した場合、生物処理による急激な回復は困難なので、悪化現象を正確に検知し、速やかに処理水16のリン濃度を目標値以下に維持するために金属塩などの凝集剤を注入する化学凝集処理を併用する。このため、本実施例の下水処理設備は凝集剤タンク11と凝集剤注入設備12を配設し、さらに、生物反応槽1の後段に凝集剤注入槽3を設け、計算機50により演算制御される必要量の凝集剤20を注入する。なお、凝集剤注入槽3には好気槽1Cの流出水15と凝集剤20を混合撹拌するため、送風機9からの空気18の一部を散気している。流出水15の流れを渦流あるいは乱流とする凝集剤注入槽3の構造にすれば、新たな混合撹拌機構は必要がない。
【0044】
以下、計算機50によって実現される凝集剤注入制御装置の構成と動作について説明する。好気槽1Cに採水設備21を設置し、リン濃度計41とアルカリ度計42に送水する。リン濃度計41及びアルカリ度計42では、送水された好気槽1Cの混合液の活性汚泥を分離し、液中の溶解性リン濃度Piとアルカリ度ALiを計測し、計算機50のデータベース55に入力、記憶される。採水設備21の設置位置は少なくとも凝集剤20の注入位置より上流側とし、凝集剤注入前(本例では好気槽の混合液)の被処理水のリン濃度Piとアルカリ度ALiを測定する。好気槽1C混合液の活性汚泥分離は平膜や中空膜などの膜ろ過方式が適用でき、採水設備21に設置してもよい。流量計31,32及び33で計測された流入下水流量Qiと返送汚泥流量Qr及び余剰汚泥流量Qw,汚泥濃度計44及び43で計測された好気槽1Cの汚泥濃度計測値St及び返送汚泥濃度Srも計算機50のデータベース55に入力される。
【0045】
これらの入力値に基づいて、計算機50はリンの除去が不良か否かを判定し、除去不良の場合、必要な凝集剤注入量を演算し、凝集剤注入設備12を制御するとともに、汚泥濃度中の活性汚泥比率を演算し、汚泥返送設備7及び汚泥排出設備8を制御する。計算機50は、係数演算部60と凝集剤量演算部70及び汚泥量演算部80を有し、データベース55からの計測情報に基づいて必要な凝集剤注入量を凝集剤量演算部70で、返送及び余剰汚泥量を汚泥量演算部80で演算し、夫々の制御装置へ出力する。
【0046】
係数演算部60では、まず、比率演算部62で好気槽1Cのリン濃度Piとアルカリ度ALiの比率Rを演算し、除去係数演算部63に出力する。除去係数演算部63は、比率Rに基づいてリン除去係数Υpとアルカリ度除去係数Υaを (3)式と(4)式から演算する。凝集剤がPACの場合、係数ApとAL は0.4〜2.0、BpとBL は0.1〜1.0、KL は1.0〜5.0の範囲で設定される。注入係数演算部64は、除去係数演算部63から出力されたリン除去係数Υpの逆数である単位リン量を除去するのに必要な金属量である注入係数CAlを演算する。この注入係数CAlをモル比換算して表してもよい。モル注入係数MAlは、リンと凝集剤に含有する金属の分子量比率mを用いて計算できる。含有金属がAlの場合、m≒1.15となる。演算式を(12)式に示す。除去係数ΥpとΥaは汚泥量演算部80に、注入係数CAlあるいはMAlは凝集剤量演算部70に出力される。
【0047】
CAl=Ap-1・R-Bp , MAl=m・CAl …(12)
凝集剤量演算部70では、判定部71でリン濃度Piと凝集剤注入後のリン濃度目標値Pmの偏差量εpを求め、凝集剤注入の要否を判定する。判定は、εp≦0の場合に注入不要とし、εp>0の場合に注入要とする。注入要と判定された場合、注入濃度演算部73は(7)′式あるいは(7)′式の(Pi−Pm)をεpとして、金属換算の注入濃度Caを演算する。
【0048】
注入量演算部74は、注入濃度Caと被処理水流量から金属注入量Mを、金属注入量Mが含まれる凝集剤注入量Gを(13)式より演算する。被処理水流量は、処理方式や凝集剤の注入位置で異なるが、図1の方式の場合、流入下水流量Qiと返送汚泥流量Qrの和となる。また、凝集剤に含有する金属濃度Cmは凝集剤の種類や溶解条件で異なるため、金属量Mを含む凝集剤量に換算する必要がある。
【0049】
M=Ca・(Qi+Qr) , G=M/Cm …(13)
凝集剤量制御装置23は凝集剤注入設備12を調節し、凝集剤注入槽3への凝集剤量が凝集剤量演算部70の出力値Gとなるように制御する。この例の凝集剤注入設備12はポンプであり、凝集剤量制御装置23は流量計24の計測値が凝集剤量Gの流量値となるようにポンプ回転数、あるいはストローク長を設定する。なお、偏差量εp≦0となれば、処理水のリン濃度は目標値を満たしていると判定し、凝集剤を停止する。この間欠操作により、余分な凝集剤の注入を抑制して運転コストを低減し、かつ、活性汚泥への悪影響を回避する。
【0050】
汚泥量演算部80では、係数演算部60からのリン除去係数Υpとアルカリ除去係数Υa、及び凝集剤量演算部70からの金属注入濃度Caが入力され、生物反応槽1を循環する浮遊物質中の凝集剤起因の懸濁物と本来の活性汚泥濃度あるいは濃度比率を演求め、返送汚泥流量あるいは余剰汚泥流量の操作量を演算し、汚泥返送設備7及び汚泥排出設備8を制御する。除去濃度演算部82は、除去係数ΥpとΥa及び注入濃度Caからリン除去量Cpとアルカリ除去量CL を (14)式より求める。懸濁生成濃度演算部83は除去量CpとCL より生成懸濁物濃度dSaを(15)式より求める。凝集剤の金属塩がAlの場合、係数ks1は3.94、ks3は0.5〜1.5の範囲で設定される。
【0051】
Cp=Ca・Υp , CL =Ca・Υa …(14)
dSa=ks1・Cp+ks3・CL …(15)
環流懸濁物濃度演算部84は、凝集剤を注入し、最終沈殿池2から返送汚泥14を介して生物反応槽1に環流されたときの反応槽1における懸濁物濃度Saを(10)式により演算する。演算に必要な汚泥環流比αは、環流比率演算部85で同様に(10)式により求め、環流懸濁物濃度演算部84へ出力する。活性汚泥比率演算部86は、環流時の活性汚泥比率Υsを汚泥濃度計44で計測された全浮遊物濃度Stに基づいて(11)式により予測演算する。流量演算部87は目標値記憶部88に予め入力されている汚泥管理項目の目標値となるように返送汚泥流量あるいは余剰汚泥流量を演算する。本実施例では、生物反応槽1の活性汚泥濃度と汚泥滞留時間(以下、SRTと称す)を管理項目とし、それらの目標値Sm及びTmを設定している。返送汚泥流量Qrは、生物反応槽1の活性汚泥濃度を目標値Smに維持する方式の場合、(16)式により演算できる。余剰汚泥流量Qwは、SRTを目標値Tmに維持する管理条件とした場合、 (17)式により演算できる。ここで、Srは返送汚泥濃度計測値、Vは生物反応槽1の容積である。
【0052】
Qr=Sm・Qi/(Υs・Sr−Sm) …(16)
Qw=(St−Sa-1)・V/(Υs・Sr・Tm) …(17)
返送量制御装置24は汚泥返送設備7を調節し、返送汚泥流量が汚泥量演算部80の出力値Qrとなるように制御する。また、余剰量制御装置27は汚泥排出設備8を調節し、余剰汚泥流量が汚泥量演算部80の出力値Qwとなるように制御する。この例の汚泥返送設備7及び汚泥排出設備8はポンプであり、制御装置24は流量計32の計測値、余剰量制御装置27は流量計33の計測値が出力流量値となるようにポンプ回転数、あるいはストローク長、あるいはポンプ台数を設定する。なお、SRT目標値Tmは、生物反応槽1全体での汚泥滞留時間としたが、好気槽のみを考慮したA−SRTを用いて設定することができる。このように、凝集剤で生成された懸濁物を除いた真の活性汚泥濃度を対象に汚泥管理することにより、安定した微生物処理を実現でき、良質の処理水を提供できる。
【0053】
表示部90を設け、上記した計算機50の判定結果や演算情報を表示することもできる。また、計算機50の演算結果による制御や制御量の実行可否、及び各種目標値や演算係数の設定変更などを入力,指示する機能を持たせることもできる。さらに、凝集剤の注入に対して、必要に応じて警報音を発生させてもよい。
〔実施例2〕
図9は、嫌気−無酸素−好気法による下水処理設備の構成図で、図1の構成との相違は、凝集剤量演算部70における注入濃度の演算方式にある。除去係数演算部63で求められたリン除去係数Υpを係数演算部60から凝集剤量演算部70に出力する。注入濃度演算部73は、(7)式により注入濃度Caを演算する。金属注入量Mと凝集剤注入量Gの演算、及び凝集剤注入設備12の操作方法は実施例1と同様である。
【0054】
実施例2の方式は実施例1に比べて、演算部を少なくでき、演算誤差を低減させる凝集剤制御が可能である。
【0055】
〔実施例3〕
図10は、嫌気−無酸素−好気法による下水処理設備の構成図で、図1の構成との相違は、係数演算部60の演算方式と、演算結果に基づいた凝集剤注入量及び汚泥量の演算方式にある。係数演算部60において、第1除去係数演算部65では(4)式によりアルカリ除去係数Υaを演算する。取込係数演算部66は、(5)式により、アルカリ成分と凝集剤の反応で生成された水酸化物に吸着されるリン量であるリン過剰取込係数PALを求める。第2除去係数演算部67では、取込係数PALを考慮したリン除去係数Υp′を(6)式により演算し、凝集剤量演算部70に出力する。凝集剤量演算部70の注入濃度演算部73は、(7)式の第2式により注入濃度Caを演算する。(5)式におけるPaは0.2〜0.5,Pbは0.1〜1.0の範囲で設定できる。
【0056】
汚泥量演算部80の除去濃度演算部82では、凝集剤量演算部70からの注入濃度Ca、係数演算部60からのアルカリ除去係数Υaとリン過剰取込係数PALに基づいて(8)式からアルカリとリンの除去濃度を演算する。懸濁生成濃度演算部83は、(9)式により懸濁生成物濃度dSaを求める。凝集剤の金属塩がAlの場合、(9)式中の係数ks2は3.0〜3.1に設定される。
【0057】
注入濃度Ca演算後の金属注入量Mと凝集剤注入量Gの演算、及び凝集剤注入設備12の操作方法、さらに、懸濁生成物濃度dSa演算後の返送汚泥流量及び余剰汚泥流量の演算方法、及び汚泥返送設備7,汚泥排出設備8の操作方法は実施例1と同様である。
【0058】
実施例3の方式は実施例1及び2に比べて、懸濁生成物濃度dSaを精度良く演算でき、正確な活性汚泥比率に基づいた返送汚泥や余剰汚泥流量制御を実現でき、安定した微生物処理が可能である。
【0059】
〔実施例4〕
図12は、嫌気−無酸素−好気法による下水処理設備の構成図で、被処理水のpH計測値を用いる係数演算部を設けている。図1の構成との相違は、好気槽1Cを対象にpH計45を設置し、計算機50に被処理水のpH計測値pHiを入力し、アルカリ度の演算方式にある。
【0060】
係数演算部60での濃度演算部61は、被処理水pH計測値pHiに基づいて被処理水のアルカリ度ALiを予測演算する。演算式は、pHとアルカリ度の間に図11に示す特性があることから、その相関式から(18)式で表せる。ここで、ka及びkbは係数で、各々80〜180,50〜220の範囲で設定できる。(18)式は、pH7を基準にpHiからALiを求める方式であるが、pHiの値で直接演算する方式でもよい。
【0061】
ALi=ka+kb(pHi−7) …(18)
比率演算部62は、濃度演算部61からのアルカリ度ALiとリン濃度計41の計測値Piにより比率Rを演算する。演算結果に基づく各係数演算、及び凝集剤注入量,返送汚泥流量,余剰汚泥流量の演算方法は図1と同様である。
【0062】
実施例4によれば、下水処理プロセスでこれまでオンライン計測項目に入っていないアルカリ度ALiを、信頼性の高いpH計で予測できるため、監視制御装置の信頼性を向上できる。また、本実施例は、図1のみならず、図9,図10、さらに後述する図13にも適用可能である。
【0063】
〔実施例5〕
図13は、嫌気−無酸素−好気法による下水処理設備の構成図で、処理水リン濃度の計測値を用いる凝集剤制御装置を設けている。図1の構成との相違は、処理水16を対象にリン濃度計46を設置し、計算機50にリン濃度計測値Poを入力する点と、凝集剤注入濃度Caの演算方式にある。
【0064】
判定部71では、偏差量εpで凝集剤注入の要否を判定するとともに、処理水リン濃度計測値Poと目標値Pmの偏差量εp′を求め、|εp′|>βの場合、補正濃度演算部75で補正注入濃度ΔCaを演算する。βは係数で、β>0とする。演算式は、例えば、注入係数CAlを用いた(19)式が適用できる。CAlの代わりにMAlを用いることもでき、また、Υp,Υp′でεp′を除算する方式でもよい。
【0065】
ΔCa=CAl・εp′ …(19)
必要濃度演算部76は、注入濃度演算部73の注入濃度Caと補正濃度演算部75の補正注入濃度ΔCaを加算し、必要濃度Cを演算する。注入量演算部74は、(13)式のCaをCに置き換えて、金属注入量M及び凝集剤注入量Gを求め、凝集剤注入槽3への凝集剤量が凝集剤量演算部70の出力値Gとなるように、凝集剤注入設備12を制御する。
【0066】
アルカリ成分の組成は日あるいは季節、さらには一時的な原因で変動し、除去係数を変化させる可能性がある。本実施例によれば、リン除去係数Υp,Υp′あるいはアルカリ除去係数Υaが流入下水の水質条件等で変化する場合も、適正な注入量に基づいた安定した凝集剤制御を可能とする。
【0067】
なお、上記実施例では、補正注入濃度ΔCaを演算する方式としたが、注入係数を補正することでもできる。補正注入係数CAl′は補正前の注入濃度Caを偏差量εpで除算することで求まる。
【0068】
〔実施例6〕
図14は、生物処理法による下水処理設備の後段を対象とした実施例の構成図で、処理水16を被処理水とする凝集剤制御装置を設けている。本凝集剤制御装置は最終沈殿池2の後段に凝集剤注入槽3を設け、計算機50により演算制御される必要量の凝集剤20を注入する。凝集剤注入槽3の上流となる処理水16中のリン濃度Piとアルカリ度ALiを計測するリン濃度計41とアルカリ度計42、さらに、処理水16の流量Qoを計測できる流量計31Aを設置し、それらの計測値は計算機50に入力される。凝集剤注入槽3の下流に懸濁物回収装置2Aを設け、回収懸濁物は排泥装置8Aで余剰汚泥17と一緒にプロセス系外に排出し、懸濁物を回収した処理水16Aは殺菌後河川や海洋へ放流される。懸濁物回収装置2Aは重力沈降式、あるいは膜及び遠心分離などの機械式固液分離方法を用いることができる。
【0069】
実施例6における凝集剤注入制御方式は、注入量演算部74の演算を除いて図1と同じである。注入量演算部74では、流量計31Aからの処理水流量Qoを用いて(13)式で金属注入量Mを演算する。
【0070】
本実施例は、リン及びアルカリ除去係数が活性汚泥が存在する場合と存在しない場合とで変化がなく、汚泥の有無に係わらず、同じ特性式で表現された試験結果に基づいている。本実施例では活性汚泥が殆ど存在しない最終沈殿池処理水を対象としたもので、前記実施例に比べて注入対象となる被処理水流量が低くなり、凝集剤量を低減できる効果がある。
【0071】
また、図示しないが、下水処理設備から排出される汚泥を濃縮処理する汚泥処理設備にも本実施例を適用できる。
【0072】
〔実施例7〕
図15は、浄水処理設備の構成例で、沈殿上澄水(処理水)の濁度成分を目標値以下に管理する凝集剤制御装置を設けている。実施例7の浄水処理設備は流入原水中の微小な濁質粒子を凝集剤で凝集沈殿して除去するもので、着水井101,混和池102,フロック形成池103,沈殿池104,凝集剤タンク11,凝集剤注入設備12から構成されている。河川や湖沼から取水した流入原水111は沈砂池(図示せず)などで土砂や狭雑物が除去された後、着水井101に流入する。着水井101では他の原水や後段設備からの返送水と混合され、水質の安定化が図れる。混和池102では、凝集剤20が注入され、撹拌機106で凝集剤を被処理水に均一に拡散させる。フロック形成池103は、撹拌機107を緩やかに回転させ、微小濁質粒子を凝集剤の作用で粗大な凝集塊(以下、フロックと称す)とし、沈降しやすい状態にする。沈殿池104では、粗大化したフロックを沈殿除去し、清澄な上澄液を形成させる。澄液は砂ろ過,殺菌処理などの工程を経て、水道水となる。
【0073】
以下、計算機50で実現される凝集剤制御装置の構成と動作について説明する。着水井101に水質計測器121を設置して濁度,pH,水温,アルカリ度を計測し、それらの計測値Tui,pHi,Tmi,ALiを計算機50に入力する。また、リン濃度計41を設置し、溶解性リン濃度計測値piを計算機50に入力する。浄水処理の場合、流入原水111中の濁質粒子はリンを殆ど含まない物質であるため、図1で説明した濁質の前処理機能を持つ採水設備21を設置しなくてもよい。しかし、取水源に生物が繁殖している、あるいは、浄水処理の前段に生物処理を導入している場合は採水設備21を設置すれば、より正確な溶解性リン濃度を計測できる。着水井101の流出水の流量Qiを計測する流量計123を設け、その出力値Qiを計算機50に入力する。
【0074】
これらの入力値に基づいて、計算機50ではリンによる凝集剤消費の影響を考慮するか否かを判定し、考慮要と判定した場合に凝集剤注入量の補正量を演算し、凝集剤注入設備12を制御する。係数演算部60の比率演算部62の演算機能は上記実施例と同じである。消費比率演算部67は、リン成分による凝集剤中の金属塩消費割合ηpを(20)式から求める。
【0075】
ηp=Rp・RPc …(20)
ここで、Rp及びPcは係数で、各々0.2〜0.8,0.1〜1.0の範囲で設定される。
【0076】
凝集剤量演算部70では、まず、判定部71でリンによる凝集剤補正の可否を判定する。可否の判定は、例えばηpが設定値ηmより大きい場合に補正要とする。注入濃度演算部73は、凝集剤補正否の場合、Tui,pHi,Tmi,ALiに基づいて予め設定された注入モデル:f(Tui,pHi,Tmi,ALi)で注入濃度Caを演算する。補正要の場合は、リン成分による凝集剤中の金属塩消費割合ηpを考慮した(21)式で演算する。注入量演算部74の演算機能は上記実施例と同じである。凝集剤量制御装置23は流量計34の計測値が演算出力値Gとなるように、凝集剤注入設備12を制御する。
【0077】
Ca=(1+ηp)・f(Tui,pHi,Tmi,ALi) …(21)
本実施例によれば、浄水処理において、凝集剤を消費する成分であるリンが流入しても、濁質粒子を適正に除去する凝集剤注入制御が可能である。
【0078】
なお、本発明の実施例1〜5では嫌気−無酸素−好気法(A2O法)を対象としたが、嫌気−好気法(AO法),嫌気−好気−無酸素−好気法(AOAO法)などの高度処理方式だけでなく、標準活性汚泥法や活性汚泥循環変法にも適用可能である。また、膜処理を利用した方式にも適用できる。凝集剤の注入位置は、生物反応槽と沈殿池の間としているが、生物反応槽あるいは沈殿池に注入しても同様の効果が期待できる。さらに、リン及びアルカリ除去係数やリンの金属塩消費率は指数式で表現したが、Rの2次式で表現することもできる。
【0079】
【発明の効果】
本発明によれば、被処理水のリン濃度Piとアルカリ度ALiの比から凝集剤の消費内訳を定量化し、単位リン量を除去するための金属塩量変化に見合って必要な凝集剤量を求めることができ、この演算値に基づいて凝集剤注入量を制御することで、必要最小限の凝集剤量で処理水のリン濃度を目標値以下に維持することができ、懸濁物生成量も抑制できるため、良好な処理水質の運転管理を実現できる。また、本発明によれば、被処理水のPi/ALi比に対応して単位金属塩量が除去できるリン量及びアルカリ量が決まり、これらの値と凝集剤注入量に基づいて生成される懸濁物量を精度良く演算でき、懸濁物量を考慮した微生物管理を実現でき、処理効率を低下させることのない適正な運転管理を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1による凝集剤制御装置と汚泥量制御装置を含む下水処理設備の構成図。
【図2】単位凝集剤量当たりの除去変化特性の試験結果の一例を示すグラフ。
【図3】リン濃度とアルカリ度の試験結果の一例を示すグラフ。
【図4】凝集剤注入量をモル比で表した試験結果の一例を示すグラフ。
【図5】懸濁物生成量の計算値と実測値の試験結果の一例を示すグラフ。
【図6】本発明による凝集剤注入制御方式の試験結果の一例を示すグラフ。
【図7】注入濃度一定による凝集剤注入制御方式の試験結果の一例を示すグラフ。
【図8】注入モル比一定による凝集剤注入制御方式の試験結果の一例を示すグラフ。
【図9】実施例2による凝集剤制御装置と汚泥量制御装置を含む下水処理設備の構成図。
【図10】実施例3による凝集剤制御装置と汚泥量制御装置を含む下水処理設備の構成図。
【図11】pHとアルカリ度の試験結果の一例を示すグラフ。
【図12】実施例4による凝集剤制御装置と汚泥量制御装置を含む下水処理設備の構成図。
【図13】実施例5による凝集剤制御装置と汚泥量制御装置を含む下水処理設備の構成図。
【図14】実施例6による凝集剤制御装置を含む下水処理設備の構成図。
【図15】実施例7による凝集剤制御装置を含む浄水処理設備の構成図。
【符号の説明】
1…生物反応槽、1A…嫌気槽、1B…無酸素槽、1C…好気槽、2…最終沈殿池、3…凝集剤注入槽、7…汚泥返送設備、8…汚泥排出設備、9…送風機、10…循環設備、11…凝集剤タンク、12…凝集剤注入設備、21…採水設備、23…凝集剤量制御装置、25…返送量制御装置、27…余剰量制御装置、31,32,33,34…流量計、39A…空気量制御部、39B…返送量制御部、39C…循環量制御部、41…リン濃度計、42…アルカリ度計、43,44…汚泥濃度計、45…pH計、50…計算機、55…データベース、60…係数演算部、61…濃度演算部、62…比率演算部、63…除去係数演算部、64…注入係数演算部、70…凝集剤量演算部、71…判定部、73…注入濃度演算部、74…注入量演算部、80…汚泥量演算部、82…除去濃度演算部、83…懸濁生成濃度演算部、84…環流懸濁物濃度演算部、85…環流比率演算部、86…活性汚泥比率演算部、87…流量演算部、88…目標値記憶部,90…表示部、101…着水井、102…混和池、103…フロック形成池、104…沈殿池、121…水質計測器、123…流量計。
Claims (16)
- 生物反応槽と沈殿池を有し、前記生物反応槽あるいは前記沈殿池あるいは前記生物反応槽と沈殿池の間に凝集剤注入設備を具備する水処理プロセスにおいて、
前記凝集剤注入前の被処理水(以下、被処理水)中のリン濃度計測値とアルカリ度計測値の比率と前記リン濃度計測値に基づいて凝集剤注入量を求め、前記凝集剤注入設備を制御することを特徴とする水処理監視制御方法。 - 生物反応槽と沈殿池を有し、前記生物反応槽あるいは前記沈殿池あるいは前記生物反応槽と沈殿池の間に凝集剤注入設備を具備する水処理プロセスにおいて、
被処理水中のリン濃度計測値とアルカリ度計測値の比率、及び前記リン濃度計測値と予め設定した処理水中のリン濃度目標値に基づいて凝集剤注入量を求め、前記凝集剤注入設備を制御することを特徴とする水処理監視制御方法。 - 生物反応槽と沈殿池を有し、前記生物反応槽あるいは前記沈殿池あるいは前記生物反応槽と沈殿池の間に凝集剤注入設備を具備する水処理プロセスにおいて、
被処理水中のリン濃度計測値とアルカリ度計測値の比率に基づいて単位リン量を除去するのに必要な凝集剤量(以下、注入係数)を求め、前記リン濃度計測値と予め設定した処理水中のリン濃度目標値から除去リン濃度を求め、該除去リン濃度と前記注入係数から凝集剤注入濃度を演算し、該注入濃度と前記処理水流量の積により前記目標値を維持するのに必要な凝集剤注入量を求め、前記凝集剤注入設備を制御することを特徴とする水処理監視制御方法。 - 生物反応槽と沈殿池を有し、前記生物反応槽あるいは前記沈殿池あるいは前記生物反応槽と沈殿池の間に凝集剤注入設備を具備する水処理プロセスにおいて、
被処理水中のリン濃度計測値とアルカリ度計測値の比率に基づいて単位凝集剤量が除去できるリン量(以下、リン除去係数)を求め、前記リン濃度計測値と予め設定した処理水中のリン濃度目標値から除去リン濃度を求め、該除去リン濃度と前記除去係数から凝集剤注入濃度を演算し、該注入濃度と前記処理水流量の積により前記目標値を維持するのに必要な凝集剤注入量を求め、前記凝集剤注入設備を制御することを特徴とする水処理監視制御方法。 - 生物反応槽と沈殿池を有し、前記生物反応槽あるいは前記沈殿池あるいは前記生物反応槽と沈殿池の間に凝集剤注入設備を具備する水処理プロセスにおいて、
被処理水中のリン濃度計測値とアルカリ度計測値の比率に基づいて単位凝集剤量が除去するアルカリ成分量(以下、アルカリ除去係数)と、凝集剤とアルカリ成分の反応で生成される物質に除去されるリン量(以下、リン過剰取込係数)を求め、該リン過剰取込係数と前記アルカリ除去係数からリン除去係数を演算し、前記リン濃度計測値と予め設定した処理水中のリン濃度目標値から除去リン濃度を求め、該除去リン濃度と前記リン除去係数から凝集剤注入濃度を演算し、該注入濃度と前記処理水流量の積により前記目標値を維持するのに必要な凝集剤注入量を求め、前記凝集剤注入設備を制御することを特徴とする水処理監視制御方法。 - 請求項3から5のいずれか1つにおいて
前記処理水中のリン濃度計測値で前記リン注入係数、あるいは前記リン除去係数、あるいは前記リン過剰取込係数を補正演算し、該補正演算値に基づいて前記処理水中のリン目標値を維持するのに必要な凝集剤注入量を求め、前記凝集剤注入設備を制御することを特徴とする水処理監視制御方法。 - 被処理水に凝集剤を注入する設備を有する水処理プロセスにおいて、
前記被処理水中のリン濃度計測値とアルカリ度計測値の比率に基づいて前記リン濃度計測値、あるいは前記リン濃度計測値と予め設定した前記処理水中のリン濃度目標値との偏差量をゼロとするのに必要な凝集剤注入濃度を演算し、該注入濃度と前記処理水流量の積により凝集剤注入量を求め、前記凝集剤注入設備を制御することを特徴とする水処理監視制御方法。 - 生物反応槽と沈殿池、及び前記沈殿池で沈殿した生物を引抜いて濃縮する設備を有し、前記濃縮設備の前段あるいは前記濃縮設備あるいは前記濃縮設備の後段に凝集剤注入設備を具備する水処理プロセスにおいて、
被処理水中のリン濃度計測値とアルカリ度計測値の比率に基づいて前記リン濃度計測値、あるいは前記リン濃度計測値と予め設定した処理水中のリン濃度目標値との偏差量をゼロとするのに必要な凝集剤注入濃度を演算し、該注入濃度と前記処理水流量の積により凝集剤注入量を求め、前記凝集剤注入設備を制御することを特徴とする水処理監視制御方法。 - 凝集反応槽と沈殿池、及び前記凝集反応槽に凝集剤を注入する設備を具備し、前記凝集反応槽の被処理水中の水質に基づいて凝集剤注入量を設定する水処理プロセスにおいて、
前記被処理水中のリン濃度計測値とアルカリ度計測値の比率あるいは前記リン濃度計測値で前記凝集剤注入量を補正し、前記凝集剤注入設備を制御することを特徴とする水処理監視制御方法。 - 請求項3から9のいずれか1つにおいて、
被処理水中のpH計測値からアルカリ度を予測し、該アルカリ度予測値を前記アルカリ度計測値として前記リン濃度計測値との比率を求め、該比率に基づいて前記凝集剤注入量を演算し、前記凝集剤注入設備を制御することを特徴とする水処理監視制御方法。 - 請求項2から10のいずれか1つにおいて、
前記被処理水中のリン濃度計測値が予め設定されている目標値を越えた場合に前記被処理水中のリン濃度計測値とアルカリ度計測値の比率に基づいて凝集剤注入量を求め、前記凝集剤注入設備を制御することを特徴とする水処理監視制御方法。 - 請求項1から6のいずれか1つにおいて、
前記被処理水中のリン濃度計測値Piとアルカリ度計測値ALiの比率と前記凝集剤注入濃度に基づいて凝集剤中の金属塩で形成される懸濁物濃度ΔSaと、前記沈殿池から微生物を前記生物反応槽へ戻す返送汚泥(以下、返送汚泥)と前記水処理プロセス外に排出する余剰汚泥(以下、余剰汚泥)の流量から返送比率αを求め、該返送比率αと前記懸濁物濃度ΔSaにより前記水処理プロセス内を循環する懸濁物濃度Saを演算し、該懸濁物濃度Saで前記生物反応槽の混合液、あるいは前記沈殿池引抜き汚泥中の懸濁物濃度TSSを補正した微生物濃度を用いて前記返送汚泥流量及び余剰汚泥流量の少なくとも一方を制御することを特徴とする水処理監視制御方法。 - 生物反応槽と沈殿池を有し、前記生物反応槽あるいは前記沈殿池あるいは前記生物反応槽と沈殿池の間に凝集剤注入設備を具備する水処理設備において、
前記凝集剤注入前の被処理水(以下、被処理水)中のリン濃度計測値とアルカリ度計測値の比率に基づいて単位リン量を除去するのに必要な凝集剤量(以下、リン注入係数)あるいは単位凝集剤量が除去できるリン量(以下、リン除去係数)を求める第1演算手段と、前記リン濃度計測値と予め設定した処理水中のリン濃度目標値との偏差量を出力し、さらに該偏差量から前記生物反応槽のリン除去能力を判定する判定手段と、前記演算手段の注入係数あるいは除去係数と、前記判定手段からの前記偏差量に基づいて前記目標値を維持するのに必要な凝集剤注入量を求める第2演算手段を設け、
前記判定手段でリン除去能力が不良と判定されたときに、前記第2演算手段からの凝集剤注入量の出力信号に対応して前記凝集剤注入設備を操作する制御手段を備えたことを特徴とする水処理監視制御装置。 - 生物反応槽と沈殿池を有し、前記生物反応槽あるいは前記沈殿池あるいは前記生物反応槽と沈殿池の間に凝集剤注入設備を具備する水処理設備において、
前記凝集剤注入前の被処理水(以下、被処理水)中のリン濃度計測値とアルカリ度計測値の比率に基づいて単位凝集剤量が除去できるリン量(以下、リン除去係数)とアルカリ成分量(以下、アルカリ除去係数)を求める第1演算手段と、前記凝集剤注入設備から供給される被処理水流量当たりの凝集剤注入量と前記第1演算手段からの出力信号と前記リン及びアルカリ度計測値から凝集剤によって生成される懸濁物濃度を求める第2演算手段と、前記沈殿池から微生物を前記生物反応槽へ戻す返送汚泥(以下、返送汚泥)と前記水処理プロセス外に排出する余剰汚泥(以下、余剰汚泥)の流量から返送比率を求め、該返送比率と前記第2演算手段からの懸濁物濃度により前記水処理設備内を循環する懸濁物濃度を求める第3演算手段とを設け、
該第3演算手段からの循環懸濁物濃度で前記生物反応槽、あるいは前記返送汚泥中の微生物濃度を補正して前記返送汚泥流量及び余剰汚泥流量の少なくとも一方を制御する制御手段を備えたことを特徴とする水処理監視制御装置。 - 請求項13又は14において、
被処理水中のpH計測値からアルカリ度を予測し、該アルカリ度予測値を前記アルカリ度計測値として前記リン濃度計測値との比率を求める演算手段を設け、
該演算手段からの前記比率に基づいて求めた前記凝集剤注入量に対応して前記凝集剤注入設備を操作する制御手段を備えたことを特徴とする水処理監視制御装置。 - 生物反応槽と沈殿池を有し、前記生物反応槽あるいは前記沈殿池あるいは前記生物反応槽と沈殿池の間に凝集剤注入設備を具備する水処理設備において、
前記被処理水中のリン濃度とアルカリ度を計測する計測手段と、該計測手段より出力されたリン濃度計測値とアルカリ度計測値から両者の比率と、該比率に基づいてリン除去係数とアルカリ除去係数を求め、該除去係数と該除去係数を用いて求めた凝集剤注入量から処理水中のリン濃度とアルカリ度及び懸濁物濃度を算出する演算手段を設け、
該演算手段からの出力信号に対応して前記凝集剤注入設備を操作するとともに、前記演算手段の演算結果を出力する表示手段を設けたことを特徴とする水処理監視制御装置。
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