JP4453287B2 - 下水処理方法および下水処理制御システムと、下水処理場の改造方法 - Google Patents
下水処理方法および下水処理制御システムと、下水処理場の改造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、下水処理方法および下水処理制御システムと、下水処理場の改造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
汚水の処理施設では、処理水質の向上を図るために、有機物に加え窒素及びりんの除去が要求されている。そして、窒素・りんの除去を安定して行うためには、充分な有機物の供給が必要である。この有機物源として、最初沈殿池より引き抜かれた初沈汚泥を直接、あるいは可溶化等の前処理を施して、利用する方法がある。特許文献1には、脱窒槽の酸化還元電位(ORP)が0mV以上のときに、初沈汚泥の一部を脱窒槽あるいは最初沈殿池の上澄み液(以降沈後水と呼ぶ)の流入する嫌気槽に流入させる方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−323693号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来技術では有機物源として初沈汚泥を添加しているため、初沈汚泥の流量を一定にしても初沈汚泥によって供給される有機物量は時間変動する。その理由は、初沈汚泥の有機物濃度が時間変動するためである。また、下水処理場の流入水は、流量,有機物濃度,窒素濃度,りん濃度等の日間変動が大きく、それに伴い生物反応槽の硝酸態窒素濃度,有機物濃度,りん濃度等が変動する。特に、降雨時には流入水の有機物濃度が著しく低下する場合がある。よって、生物反応槽内の有機物量に過不足が生じ、処理水の水質が低下する課題があった。
【0005】
本発明の目的は、下水処理における処理水の水質悪化を抑制し、かつ、水質の維持を容易にすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
初沈汚泥に懸濁している浮遊物質の濃度に基づいて、生物学的に処理する処理工程で使用する初沈汚泥の量を設定して下水処理することを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
汚水処理施設では、処理水質を向上させるために、有機物に加え窒素およびりんの除去が要求されている。そのため、高度処理方式の導入の必要性が高まっている。この高度処理方式は、嫌気−好気法,嫌気−無酸素−好気法,硝化脱窒法などの生物学的窒素・りん除去方式がある。窒素を生物学的除去方式で除去する場合、好気条件下で活性汚泥中の硝化菌がアンモニア態窒素を亜硝酸・硝酸態窒素に酸化し、嫌気条件下で脱窒菌が硝酸態窒素を還元して窒素ガスにして大気中に放出するという、硝化・脱窒プロセスにより除去される。りんの場合は、活性汚泥が嫌気条件下でりんを一旦放出し、その後活性汚泥を好気条件にすると放出量以上にりんを摂取する過剰摂取現象を利用して、りんを除去する。このように、窒素除去の場合は脱窒菌により硝酸態窒素を還元する際に、りん除去の場合は活性汚泥がりんを放出する際に、有機物を必要とする。したがって、安定して窒素・りんの除去を行うためには、充分な有機物の供給が重要となる。この有機物源として、生物反応槽の上流側に設置され、流入原水が最初に供給される最初沈殿池より引き抜かれた初沈汚泥を、直接あるいは可溶化等の前処理を施して利用する方法がある。
【0008】
しかし、下水処理場の流入原水は流量,有機物濃度,窒素濃度,りん濃度等の日間変動が大きく、それに伴い生物反応槽の硝酸態窒素,有機物濃度,りん濃度等が変動する。特に、降雨時には流入原水の有機物濃度が著しく低下する場合がある。また、流入原水に加えて初沈汚泥の成分組成の変動も大きい。初沈汚泥の成分組成の一例として、都市下水処理場における4月から8月までの各指標の平均値と括弧内に平均値の変動範囲を示す。BOD(biochemical oxygen demand)は11711mg/l(5667〜26125),T−N(total nitrogen)は609mg/l(211〜947),T−P(total phosphorus)は121mg/l(54〜158)であり、特にBODは約5倍の変動があった。
【0009】
ここで、本実施例において初沈汚泥の成分組成を把握するために必要な指標について、以下に説明する。溶存酸素の存在のもとで、有機物が生物学的に分解され安定化するために要する生物化学的酸素要求量が、BOD(biochemical oxygen demand)である。BODは、水の汚濁状態を表す指標の一つであり、20℃,5日間で消費する酸素量を標準とする。このBODを把握することで、初沈汚泥に存在する有機物量を把握することが可能である。
【0010】
次に、無機性および有機性の窒素、あるいはりんの総量(全窒素,全りん)をそれぞれT−N,T−P(total nitrogen/phosphorus)で表す。窒素は、りんとともに富栄養化の原因物質とされ、除去が必要となる場合が多くなってきている。その他に、水中の被酸化性物質が一定条件の下で、酸化剤によって酸化されるのに要する酸素量をCOD(chemical oxygen demand)で表す。化学的酸素要求量であるCODは、有機物質による水汚濁の状態を表す指標である。
【0011】
前述したように、流入原水の成分組成が変動することで、反応槽内に流入する有機物が不足すると窒素・りんの除去率が低下するため、有機物源として初沈汚泥を添加する方法が有効である。しかし、初沈汚泥における有機物濃度であるBOD濃度の時間変動を考慮しないと、初沈汚泥を反応槽に同量供給したにも関わらず、初沈汚泥によって供給される有機物量は時間変動することになる。したがって、反応槽内の有機物量に過不足が生じ、処理水の水質が悪化する恐れがある。初沈汚泥を添加して処理水の水質を向上するためには、供給する初沈汚泥の有機物量を把握し、有機物量を表すBOD負荷を一定に制御することが望ましい。
【0012】
しかし、初沈汚泥の有機物濃度を計測する際に必要となるBODやCODは、いずれも化学的変化に基づいた計測値であるため、正確な計測に時間がかかる。例えば、両者の指標を基準通りに分析して求めた場合、BODでは5日間、CODでも30分から1時間程度かかる。そのため、初沈汚泥の有機物濃度を随時測定することは、非常に困難である。
【0013】
そこで、SS濃度に着目し、SS濃度とBOD濃度との相関関係を見出した。
【0014】
ここで多くの場合、最初沈殿池には汚泥の監視のためにSS(suspended solids)計が設置されている。このSS(suspended solids)とは、水中に懸濁している浮遊物質の量を表している。浮遊物質の粒子の大きさは種々の形態で存在し、汚濁の指標の一つである。SSそのものは、有機物のみでなく、多様な浮遊物質による汚濁状態を表しているが、超音波を用いて物理的に計測することが可能であり、BODやCODに比べ短時間に計測値を求めることが可能である。したがって、BODやCODを用いる場合に比べ、容易に水質を維持することが可能である。
【0015】
図3に下水処理場から採取した、初沈汚泥のSS濃度とBOD濃度との分布を示す。図3において、縦軸が初沈汚泥のBOD濃度を示し、横軸は初沈汚泥のSS濃度を示す。図3より、初沈汚泥のSS濃度とBOD濃度との関係は比例関係になることが判明し、例えば、式(1)で表されることが分かった。
【0016】
(初沈汚泥T−BOD)=a×(初沈汚泥SS)+b …(1)
SS濃度は連続計測できるので、初沈汚泥のBOD濃度を随時把握できる。したがって、この相関式を用いることで、初沈汚泥のSS濃度からBOD濃度を算出する。なお、係数a,bは、処理場毎に異なる恐れがあるため、事前に確認することが望ましい。図3では、aが1.86 、bが13731である。このように、SS濃度とBOD濃度との比例関係を利用することで、BOD濃度を容易に求めることができる。
【0017】
また、図4に前日降水量と流入原水のBOD濃度との関係の一例を示す。図4において、縦軸に流入原水のBOD濃度を示し、横軸に前日の降水量を示す。なお、降水量0mmにおける流入原水のBOD濃度値は6ヶ月の平均値である。図4より、降水量と流入原水のBOD濃度との関係は、式(2)で表される。
【0018】
(流入原水T−BOD)=c×(前日降水量)+d …(2)
係数c,dは、前述の式(1)と同様に処理場毎に異なる恐れがあるため、事前に確認することが望ましい。図4では、cが−1.7、dが199.2である。このような関係を用いて、降水量情報から最初沈殿池に流入する有機物濃度を算出することが可能である。また、降水量は入手が容易であり、計測装置の新設も不要である。なお、一般的な下水処理場で設置されている流量計から得られた流入原水の流量と沈後水の流量からも、(2)式と同様の式を用いて、流入する有機物濃度を算出することもできる。
【0019】
(第一の実施例)
本実施例における下水処理装置及びその制御システムの構成図を図1に示す。下水処理装置は、最初沈殿池2,生物反応槽1,最終沈殿池3及び制御手段12を備えている。
【0020】
最初沈殿池2は流入原水が最初に供給される場所である。また、ポンプ等を備えた初沈汚泥排出手段10と、ポンプ等を備えた初沈汚泥移送手段11が設置されている。生物反応槽1は、微生物群が生息する活性汚泥によって、流入水中の有機物,窒素,りんなどを生物学的に処理・分解する場所である。そして、生物反応槽1は複数の嫌気槽と好気槽より構成され、本実施例では、嫌気槽30a,30bと好気槽31a,31bが交互に配置された2段嫌気−好気法を用いている。嫌気槽30a,30bの底部には攪拌手段4を設置する。好気槽31a,31bの底部には、散気・攪拌手段7が設置され、ブロア等からなる酸素含有気体供給手段5が接続されている。この酸素含有気体供給手段5から好気槽31a,31bに空気を供給する。生物反応槽1によって処理された水は最終沈殿池3に供給する。この最終沈殿池3には、ポンプ等を備えた汚泥返送手段8と、ポンプ等を備えた余剰汚泥排出手段9が設置されている。
【0021】
次に、本実施例における下水処理施設で流入原水の処理過程を説明する。下水処理施設の外部から供給された流入原水は、まず、最初沈殿池2に供給される。最初沈殿池2では、流入原水を沈降分離させて初沈汚泥を生成し、生成された初沈汚泥は初沈汚泥排出手段10により下水処理施設の系外へ排出、または初沈汚泥移送手段11によって嫌気槽30bに供給される。なお、初沈汚泥排出手段10の初沈汚泥排出量と、初沈汚泥移送手段11による初沈汚泥移送量は制御手段12によって制御される。また、初沈汚泥移送手段11と嫌気槽30bに設置された初沈汚泥供給口との間には初沈汚泥測定手段16が設置され、初沈汚泥のSS濃度を計測する。そして、初沈汚泥測定手段16により計測されたSS濃度の計測情報は、制御手段12に送られる。
【0022】
最初沈殿池2で粗大な夾雑物が除去された流入原水は、沈後水測定手段15によって流量,有機物濃度,窒素,りん濃度などが測定された後、沈後水として嫌気槽30aに流入する。嫌気槽30aでは、流入した沈後水,汚泥返送手段8から返送された返送汚泥、および反応液とが攪拌手段4によって混合される。嫌気槽30aでは、主に活性汚泥中のりん蓄積菌によるりん放出反応が進行する。活性汚泥中のりん蓄積菌は、有機物を摂取し菌体細胞内に蓄積していたりんを放出する。嫌気槽30aの下流に設置された好気槽31aでは、主にりん蓄積菌によるりんの摂取反応と、硝化菌による硝化反応および有機物の酸化分解反応が進行する。りん蓄積菌のりん放出量とりん摂取量では、一般に摂取量が多くなり、りんは水溶液中から除去される。硝化菌はNH4−NをNO3−Nに酸化する。好気槽31aの下流に設置された嫌気槽30bでは、主に脱窒菌による脱窒反応が進行する。脱窒菌は好気槽31aから流入したNO3 −Nを還元し、窒素ガスとして大気中に放出し窒素を除去する。このとき、脱窒菌は有機物を消費する。そして、嫌気槽30bの下流に位置し、生物反応槽1の最下流部である好気槽31bでは、硝化反応と有機物の酸化分解反応とが進行する。
【0023】
このように、活性汚泥による窒素とりんの除去には有機物が不可欠である。そして、有機物を嫌気槽30aに供給するとりん放出反応が促進され、嫌気槽30bに供給すると脱窒反応が促進される。従来の嫌気−好気活性汚泥法では、沈後水の有機物が窒素とりんの除去に用いられていた。本実施例では、沈後水に加え、さらにこの有機物として最初沈殿池2で発生する初沈汚泥を利用している。また、嫌気槽30bに供給した初沈汚泥の未分解有機物が返送汚泥中に混在して嫌気槽30aに供給され、そこで分解して有機物を供給する場合も含む。なお、以上の説明の中での嫌気槽30bに相当し、生物反応槽中の嫌気槽で硝化液が流入するものを、一般に無酸素槽と称する。
【0024】
生物反応槽1内の嫌気槽及び好気槽を通過して処理された反応液は、最終沈殿池3に供給される。この最終沈殿池3には、ポンプ等を備え、生物反応槽1内の嫌気槽30aに汚泥を返送する汚泥返送手段8と、汚泥をポンプ等で下水処理施設の系外に排出する余剰汚泥排出手段9が設置されている。最終沈殿池3で沈降分離した活性汚泥は汚泥返送手段8で嫌気槽30aに循環し、一部の活性汚泥は余剰汚泥排出手段9によって系外に余剰汚泥として排出される。
【0025】
なお、最初沈殿池2と生物反応槽1との間には沈後水測定手段15が設置され、流量,有機物,窒素,りんなどが計測される。好気槽31aには好気槽測定手段17が設置され、嫌気槽30bには嫌気槽測定手段18が設置されている。これらの測定手段17,18では、有機物,窒素,りんなどが計測される。そして、沈後水測定手段15,好気槽測定手段17および嫌気槽測定手段18から得られる計測情報は制御手段12に送られる。また、制御手段12が制御に使用する演算条件は、運転条件入力手段6によって設定される。
【0026】
本実施例における制御手段12の制御方法を以下に説明する。まず、初沈汚泥に懸濁している浮遊物質量であるSS濃度から初沈汚泥供給量を制御する場合について説明する。図3に示したように初沈汚泥のSS濃度が増加するとBOD濃度は増加する関係にある。そこで、運転条件入力手段6で必要なBOD濃度に対応した初沈汚泥のSS濃度を設定する。設定は手分析,計測器などのデータや実験を元に決定する。制御手段12は運転条件入力手段6の設定条件と、初沈汚泥測定手段16のSS濃度を元に初沈汚泥移送手段11を制御する。なお、制御手段12には図3で示したSS濃度とBOD濃度との対応関係を設定し、記録したデータベースを参照できるようにしている。そのため、初沈汚泥測定手段16から得られるSS濃度に基づいて、制御手段12はデータベースを参照し、対応したBOD濃度を算出する。本実施例により、初沈汚泥移送手段11により嫌気槽30bに供給される初沈汚泥供給負荷量を天候等に左右されず一定に維持し、下水処理における処理水の水質悪化を抑制することができる。また、SS濃度計が設置されていない場合を除き、BOD濃度計といった有機物濃度の測定装置を新設する必要もなく、設備の簡略化が図れる。また、計測時間がかからないSS濃度を用いることで、水質の把握が簡単になり、水質維持を容易にすることも可能である。
【0027】
次に、SS濃度によって求められたBOD濃度により初沈汚泥供給量を制御する方法を詳細に説明した図が、図5のフローチャートに示した方法である。水質把握工程81では、制御手段12が沈後水測定手段15から、沈後水のBOD(濃度)などの有機物濃度と全窒素などの窒素濃度の計測値を得る。または、好気槽31aに設置した好気槽測定手段17や嫌気槽30bに設置した嫌気槽測定手段18により得られる有機物濃度と窒素濃度の計測値を用いても良い。沈後水測定手段15,好気槽測定手段17および嫌気槽測定手段18を設置せずに、嫌気槽30aへの流入原水や生物反応槽1内の反応液の手分析結果を入力しても良い。運転条件入力手段6は手分析の結果が入力できるようにし、制御手段12へ情報を伝達できるように構成することが望ましい。
【0028】
初沈汚泥補充濃度算出工程82は、制御手段12が算出する下水処理施設が稼動している時の窒素濃度当たりの有機物濃度と、予め運転条件入力手段6から与えられた窒素濃度当たりの有機物濃度の設定値とを比較する。下水処理施設が稼動する時の有機物濃度が有機物濃度の設定値よりも小さい場合、制御手段12は両者を等しくするために必要な有機物濃度を算出する。この有機物濃度を、初沈汚泥を供給して補充する有機物濃度とする。なお、有機物濃度の設定値は沈後水測定手段15,好気槽測定手段17および嫌気槽測定手段18の計測値を用いた場合で変更するのが望ましい。沈後水測定手段15で計測された有機物濃度は、嫌気槽30aでりんの放出反応などに有機物が消費されるため、嫌気槽30bで脱窒反応に利用できる濃度より大きい。このため、有機物濃度の設定値は沈後水測定手段15の値を用いた場合、好気槽測定手段17や嫌気槽測定手段18を用いた場合に比べ、設定値を大きくする必要がある。有機物濃度にはBOD,COD,水中に含まれる有機物中の炭素量を表すTOC(total organic carbon)などがあるが、BODを用いることが望ましい。また、嫌気槽30aに流入する有機物濃度にBODを用いた場合、有機物濃度の設定値を2.0 以上に設定することが望ましい。なお、窒素濃度のみを測定し、得られた窒素濃度の所定倍率の有機物濃度を、初沈汚泥を供給して補充する有機物濃度としても良い。この場合、窒素濃度は沈後水測定手段15,好気槽測定手段17に加え、処理水の値を用いても良い。
【0029】
一方、初沈汚泥BOD濃度算出工程83で、制御手段12は初沈汚泥のBOD濃度を算出する。まず、制御手段12は運転条件入力手段6から(1)式の係数aと係数bを得る。この係数は処理場,季節,降雨によって変更することが望ましい。そのため、制御手段12は初沈汚泥測定手段16のSS濃度の計測値から(1)式を用いて初沈汚泥のBOD濃度を算出する。なお、制御手段12には図3で示したSS濃度とBOD濃度との対応関係を設定し、記録したデータベースを参照できるようにしている。そのため、初沈汚泥測定手段16から得られるSS濃度に基づいて、制御手段12はデータベースを参照し、対応したBOD濃度を算出する。
【0030】
最後に、初沈汚泥供給量算出工程84で、制御手段12は沈後水測定手段15から流入原水の流量計測値を得る。制御手段12は流量計測値,初沈汚泥補充濃度算出工程82によって算出された補充すべき有機物濃度、および初沈汚泥BOD濃度算出工程83によって算出された初沈汚泥のBOD濃度より、初沈汚泥の供給量を算出する。制御手段12は初沈汚泥移送手段11に信号を送り、初沈汚泥の供給量を初沈汚泥供給量算出工程84で算出された値に制御する。
【0031】
本実施例により、時間変動する初沈汚泥のBOD濃度をSS濃度により把握でき、必要な有機物量を過不足なく供給することができる。その結果、初沈汚泥の供給によって補充される有機物量の不足から生じる窒素除去の低下、若しくは過多による有機物,窒素,りん等の増大を回避できるため、下水処理における処理水の水質悪化を抑制することができる。また、計測時間がかからないSS濃度を用いることで、水質の把握が簡単になり、水質維持を容易にすることが可能である。
【0032】
(第二の実施例)
本発明の下水処理装置及びその制御システムにおいて、他の実施例の構成図を図2に示す。本実施例では、初沈汚泥の生物反応槽1への供給口を2つ設け、電磁弁等を備える嫌気槽供給弁13と無酸素槽供給弁14を設置した。これらは制御手段12によって制御され、嫌気槽30a,30bへの初沈汚泥の供給比率を変更することが可能である。最初沈殿池2の上流には流入原水測定手段19が設置され、流入原水の流量や、有機物,窒素,りんの濃度などが計測される。流入原水測定手段19の計測情報は制御手段12に送信される。
【0033】
本実施例の制御方法を図6のフローチャートで説明する。まず、初沈汚泥総供給量算出工程100では、制御手段12が、最初沈殿地2での初沈汚泥の生成量,初沈汚泥の酸化分解に必要な酸素量,好気槽31a,31bへ空気を供給する酸素含有気体供給手段5の最大供給量と散気・攪拌手段7の溶解効率、及び、反応槽の水理学的滞留時間とに基づいて、初沈汚泥総供給量を算出する。なお、初沈汚泥の酸化分解に必要な酸素量は、初沈汚泥の有機物濃度から算出する。また、初沈汚泥の有機物濃度算出には(1)式を用いるため、第一の実施例と同様に、SS濃度とBOD濃度との対応関係を設定し、記録したデータベースに基づいて有機物濃度を算出している。
【0034】
次に、嫌気槽30a供給量算出工程101では、制御手段12が沈後水測定手段15から得られる有機物濃度,流入原水測定手段19から得られる有機物濃度,流入原水測定手段19の降水量情報から(2)式によって算出した有機物濃度の中から、少なくとも一つ以上の値と、予め運転条件入力手段6で設定した有機物濃度設定値を元に有機物補充濃度を算出する。そして、制御手段12は図5の初沈汚泥BOD濃度算出工程83と同様の工程で初沈汚泥の有機物濃度を算出し、沈後水測定手段15から流量の計測値を得る。制御手段12は、以上で得た有機物補充濃度,初沈汚泥の有機物濃度及び流量の計測値から嫌気槽30aへ供給する初沈汚泥の供給量を算出し、嫌気槽供給弁13で制御する。なお、制御手段12には図4で示した前日降水量とBOD濃度との対応関係を設定し、記録したデータベースを参照できるようにしている。そのため、流入原水測定手段19から得られる前日降水量に基づいて、制御手段12はデータベースを参照し、対応したBOD濃度を算出することが可能である。
【0035】
なお、有機物補充濃度の他の算出方法として以下がある。制御手段12はりん濃度当たりの有機物濃度比率eを算出する。りん濃度は、沈後水測定手段15または流入原水測定手段19のりん濃度情報を用いる。有機物濃度は、制御手段12が沈後水測定手段15から得られる有機物濃度,流入原水測定手段19から得られる有機物濃度,流入原水測定手段19の降雨情報から(2)式によって算出した有機物濃度の中から、少なくとも一つ以上の値を用いる。そして、制御手段12はeと運転条件入力手段6から入手したりん濃度当りの有機物濃度比率の設定値fとを比較する。両者を比較した結果、e≧fの場合は有機物を補充しない。e<fの場合はeとfとを等しくするために必要なeの有機物濃度増加分を有機物補充濃度とする。なお、fの値は15から30程度に設定すると良い。
【0036】
最後に、嫌気槽30b供給量算出工程102では、図5に示したフローチャートに従い、窒素除去に必要な初沈汚泥供給量を算出する。嫌気槽30bへ供給できる初沈汚泥量は、初沈汚泥総供給量算出工程100で算出した初沈汚泥総供給量と嫌気槽30a供給量算出工程101で算出した嫌気槽30aに供給する供給量との差が上限値となる。制御手段12は窒素除去に必要な初沈汚泥供給量と上限値より嫌気槽30bへの初沈汚泥供給量を決定し、無酸素槽供給弁14で制御する。
【0037】
なお、りん濃度のみを測定し、得られたりん濃度の所定倍率で算出した有機物濃度を、初沈汚泥を供給して補充する有機物濃度としても良い。この場合、りん濃度は沈後水測定手段15の測定値に加え、処理水の値を用いても良い。
【0038】
本実施例では初沈汚泥の供給が、脱窒反応に比べ、りん放出反応に優先して使用される。これは、りんの放出・摂取のサイクルは一旦乱れると回復に時間を要するためである。一般に降雨後にりん除去が悪化するが、本実施例によってりん除去の悪化を防止できる。また、変動する初沈汚泥のBOD濃度を把握でき、窒素とりん除去に必要な初沈汚泥量を制御でき、下水処理における処理水の水質悪化を抑制できる。
【0039】
次に、既存の下水処理場に本発明の下水処理装置及びその制御システムを増設する方法について、以下に説明する。図1に示した構成図の中で、既存の下水処理場には、流入原水を供給する最初沈殿池2,最初沈殿池2で沈降分離された後の沈後水を測定する沈後水測定手段15,最初沈殿池2で沈降分離された後の沈後水が流入する生物反応槽1,生物反応槽1で処理された処理水が供給される最終沈殿池3が設置されている。また、最終沈殿池3には生成された初沈汚泥を下水処理施設の系外へ排出する初沈汚泥排出手段10,生物反応槽1内の好気槽31a,31bに設置された散気・攪拌手段7に空気を供給する酸素含有気体供給手段5,最終沈殿池3で沈降分離した活性汚泥を嫌気槽に返送するための汚泥返送手段8と余剰汚泥を系外に排出する余剰汚泥排出手段9を備えている。このような下水処理場に、嫌気槽30bに初沈汚泥を供給するための初沈汚泥移送手段11と初沈汚泥測定手段16とを設置し、初沈汚泥に懸濁している浮遊物質の濃度に基づいて、供給される初沈汚泥の量を設定する本発明の制御手段12を増設することで、既存の設備を利用したままで、最小限の増設機器で下水処理における処理水の水質を向上させることが可能である。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、下水処理における処理水の水質悪化を抑制し、かつ、水質の維持を容易にすることが可能となる。また、時間的に変動する初沈汚泥のBOD濃度をSS濃度より把握でき、必要な有機物量を過不足なく供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一の実施例における下水処理装置及びその制御システムの構成図である。
【図2】第二の実施例における下水処理装置及びその制御システムの構成図である。
【図3】下水処理場における、初沈汚泥のSS濃度とBOD濃度との分布の例である。
【図4】下水処理場における、降水量と流入原水の有機物濃度との関係の例である。
【図5】第一の実施例における下水処理装置及びその制御システムの運転制御方法を示したフローチャートである。
【図6】第二の実施例における下水処理装置及びその制御システムの運転制御方法を示したフローチャートである。
【符号の説明】
1…生物反応槽、2…最初沈殿池、3…最終沈殿池、4…攪拌手段、5…酸素含有気体供給手段、6…運転条件入力手段、7…散気・攪拌手段、8…汚泥返送手段、9…余剰汚泥排出手段、10…初沈汚泥排出手段、11…初沈汚泥移送手段、12…制御手段、13…嫌気槽供給弁、14…無酸素槽供給弁、15…沈後水測定手段、16…初沈汚泥測定手段、17…好気槽測定手段、18…嫌気槽測定手段、19…流入原水測定手段、30a,30b…嫌気槽、31a,31b…好気槽、81…水質把握工程、82…初沈汚泥補充濃度算出工程、83…初沈汚泥BOD濃度算出工程、84…初沈汚泥供給量算出工程、100…初沈汚泥総供給量算出工程、101…嫌気槽30a供給量算出工程、102…嫌気槽30b供給量算出工程。
Claims (3)
- 流入原水を初沈汚泥と最初沈殿池上澄み液とに沈降分離する工程と、該最初沈殿池上澄み液を活性汚泥により生物学的に処理する処理工程とを含む下水処理方法であって、初沈汚泥測定手段により測定された前記最初沈殿池より引抜かれた初沈汚泥のSS濃度からBOD濃度を算出し、沈後水の有機物濃度と窒素濃度を得る水質把握工程と、窒素濃度当たりの有機物濃度に基づいて、初沈汚泥により補充する有機物濃度を算出する初沈汚泥補充濃度算出工程と、流入原水の流量と前記補充する有機物濃度と前記算出された初沈汚泥のBOD濃度とに基づいて、初沈汚泥の供給量を算出する初沈汚泥供給量算出工程とにより、前記生物学的に処理する処理工程に供給する前記初沈汚泥の供給量を算出して下水処理することを特徴とする、下水処理方法。
- 前記BOD濃度は、前記SS濃度とBOD濃度との対応関係を記載したデータベースを参照して求めることを特徴とする、請求項1に記載の下水処理方法。
- 流入原水を初沈汚泥と最初沈殿池上澄み液とに沈降分離して、該最初沈殿池上澄み液を活性汚泥により生物学的に処理する下水処理制御システムであって、初沈汚泥測定手段により測定された前記最初沈殿池より引抜かれた初沈汚泥のSS濃度からBOD濃度を算出し、沈後水の有機物濃度と窒素濃度を得る水質把握工程と、窒素濃度当たりの有機物濃度に基づいて、初沈汚泥により補充する有機物濃度を算出する初沈汚泥補充濃度算出工程と、流入原水の流量と前記補充する有機物濃度と前記算出された初沈汚泥のBOD濃度とに基づいて、初沈汚泥の供給量を算出する初沈汚泥供給量算出工程とにより、前記生物学的に処理する処理工程に供給する前記初沈汚泥の供給量を算出して制御する制御手段を有する、下水処理制御システム。
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