JP4478002B2 - 下水処理方法および下水処理制御装置 - Google Patents
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Description
汚水中の窒素を生物学的に除去する場合、好気条件下で活性汚泥中の硝化菌がアンモニア態窒素を亜硝酸・硝酸態窒素に酸化する。そして、この硝酸態窒素を嫌気条件下で脱窒菌が還元し、窒素ガスにして大気中に放出する(硝化・脱窒プロセス)。
また、汚水中のりんを生物学的に除去する場合は、嫌気条件下で活性汚泥がりんをいったん放出し、その後、活性汚泥を好気条件にすると放出量以上にりんを摂取する過剰摂取現象を利用して、りんを除去する。
ここで、窒素除去の場合は、脱窒菌により硝酸態窒素を還元する際に有機物を必要とする。また、りん除去の場合は、活性汚泥がりんを放出する際に有機物を必要とする。
したがって、汚水中の窒素・りんの除去を安定して行うには、必要に応じて生物反応層に有機物を添加する必要がある。このとき、生物反応槽に有機物を過剰に投入してしまうと、処理水の有機物を増加させ、処理水水質が悪化するので、有機物は必要量を過不足なく添加する必要がある。
従来、この生物反応槽に添加する有機物として、最初沈殿池より引き抜かれた初沈汚泥を利用する方法がある。
また、特許文献2には、脱窒槽のORP(酸化還元電位)が0mV以上のときに、有機物が不足していると判断し、初沈汚泥の添加を行う方法が開示されている。
初沈汚泥は、固形分を5000〜20000mg/l程度含むため、投入量によっては、生物反応槽内ですべて分解できず、初沈汚泥が返送汚泥として各生物反応槽へ循環する。この未分解の初沈汚泥は、生物反応槽における平均汚泥滞留時間に相当する時間、生物反応槽に蓄積する。このため、汚水の処理施設において生物反応槽のMLSS(活性汚泥濃度、Mixed liquor suspended solids)一定制御で処理を行う場合、生物反応槽への初沈汚泥の投入量が増加すると、活性汚泥量の割合が減少する。
ちなみに、生物反応において一度菌体量が減少すると、回復に数日かかる。このため、菌体量の維持は、汚水処理を安定して行うために重要な問題である。
(1)初沈汚泥の投入量(実測値)を計測する。
(2)活性汚泥量に対する初沈汚泥量の比率を算出する。なお、このときの初沈汚泥の比率は、生物反応槽における初沈汚泥の固形分投入量、初沈汚泥の分解率、MLSS(活性汚泥濃度、Mixed liquor suspended solids)および生物反応槽への流入量から算出する。
(3)算出した初沈汚泥量の比率に基づいて、窒素またはりんの除去速度を算出する。
(4)前記算出した除去速度が、管理者等が目標とする窒素またはりんの除去速度に満たない場合は、初沈汚泥の投入量を増加させる。一方、算出した除去速度が、管理者等が目標とする窒素またはりんの除去速度を超える場合は、初沈汚泥の投入量を減少させる。
その他の手段については、後記する実施の形態で述べる。
図1は、本発明の第1の実施の形態の下水処理施設の構成図である。図1に示すように本実施の形態の下水処理施設は、生物反応槽1、最初沈殿池2、最終沈殿池3およびこれらの制御を行う下水処理制御装置(制御装置)15を備える。
この最初沈殿池2では、原水の夾雑物を沈殿させ、沈後水を生物反応槽1へ供給する。最終沈殿地3は、生物反応槽1から供給された処理水を沈降分離させる施設である。最終沈殿地3で沈降分離された上澄み液は、処理水として放流される。
なお、最終沈殿地3の沈殿物(活性汚泥)の一部は、生物反応槽1へ返送され、再度生物学的処理が行われる。残りは余剰汚泥として外部に排出される。
制御装置15は、下水処理施設の全体の制御を司り、ここでは主として初沈汚泥の生物反応槽1への投入量を制御する。
なお、本実施の形態では、MLSS測定手段11は、生物反応反応槽100aに設置されるものとするが、他の反応槽100b〜100dに設置するようにしてもよい。また、生物反応槽1は、2段嫌気−好気法を用いるものとし、反応槽100a,cは、嫌気槽であり、反応槽100b,dは、好気槽であるものとする。
なお、MLSS測定手段11による測定値は制御装置15(制御手段7)に送られる。
なお、このSS(Suspended Solids)とは、水中に懸濁している浮遊物質のことである。そして、初沈汚泥測定手段8が測定したSS濃度は、制御装置15に送る。弁14は、制御装置15の制御に基づき開閉される弁である。
また、最初沈殿池2には沈後水測定手段9が設置され、この沈後水測定手段9は、生物反応槽1への流量、有機物濃度、窒素濃度、りん濃度等を測定する。沈後水測定手段9の測定値は制御装置15(制御手段7)へ送られる。
余剰汚泥測定手段10および返送汚泥測定手段12の測定値は、制御装置15(制御手段7)へ送られる。
制御手段7は、所定のプログラムを記憶するメモリおよびこのプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)により構成される。CPUは、メモリに記憶されたプログラムに、初沈汚泥測定手段8、沈後水測定手段9、余剰汚泥測定手段10、MLSS測定手段11および返送汚泥測定手段12の測定値と、目標値入力手段5および機器仕様入力手段6から入力されたパラメータを代入して、生物反応槽1に投入する初沈汚泥量等を算出する。そして、制御手段7は、初沈汚泥移送手段4および弁14を制御して、算出した初沈汚泥量を生物反応槽1へ投入するようにする。
なお、この制御装置15は、入出力インタフェース、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等を備えるコンピュータにより実現されるものとする。また、この制御装置15には、液晶モニタ等の表示装置、キーボードやマウス等の入力装置が接続されていてもよい。この制御装置15の動作の詳細は、後記する。
前記したとおり、下水処理施設の外部から供給された流入原水は、まず、最初沈殿池2に供給され、最初沈殿池2では、流入原水を沈降分離させて、粗大な夾雑物を除去する。このとき、沈降分離された汚泥(初沈汚泥)の一部は、初沈汚泥移送手段4が生物反応槽1(反応槽100c)に供給する。
ちなみに、生物反応槽1に供給される初沈汚泥以外の初沈汚泥は、ポンプ等(図示せず)により外部に排出される。
生物反応槽1の反応槽100aでは、最初沈殿池2から流入した沈後水、汚泥返送手段12から返送された返送汚泥および反応液を攪拌する。
ここで、返送汚泥測定手段12は、汚泥返送手段16により返送される汚泥の流量を測定し、この測定値を制御装置15(制御手段7)へ送る。また、最終沈殿地3で沈降分離した活性汚泥の一部は、余剰汚泥として余剰汚泥排出手段17により外部に排出される(引き抜かれる)。このとき、余剰汚泥測定手段10は、排出される余剰汚泥の流量とMLSSとを測定し、測定値を制御装置15(制御手段7)へ送る。
このときの分解率qは、例えば、生物反応槽1に初沈汚泥が投入された後、ある程度初沈汚泥が生物反応槽1を循環して定常状態に至ったときに、生物反応槽1から流出する初沈汚泥量から決定する。
ちなみに、発明者らの実験の結果、SRT(汚泥滞留時間、Sludge Retention Time)が5.5〜19日のとき、分解率qは60〜80%であった。このように分解率qの設定は、SRTを指標にするようにしてもよい。また、分解率qは、国際水協会から出ている活性汚泥モデルを用いたシミュレーションに基づき設定するようにしてもよい。
なお、本実施の形態におけるSRTとは、活性汚泥が生物反応槽1から余剰汚泥として引き抜かれるまでの時間をいう。
なお、初沈汚泥投入量は数日間の平均値を用いるとよい。
まず、制御手段7は、目標値入力手段5から入力された処理水の窒素濃度の目標値と、沈後水測定手段9が測定した流入水の窒素濃度と、好気槽の滞留時間あるいは流量とから窒素の除去速度の目標値ΔN目標[g/h]を設定する。
次に、菌体重量あたり窒素除去速度の最大値ΔNmax [g/ g-MLSS・h]を設定する。このΔNmaxの値は、生物反応槽1の槽容量、水温、DO値(溶存酸素)等に基づき設定し、状況に応じて変更する。例えば、ΔNmax=1.0 [g/g-MLSS・h]として設定する。
続いて、制御手段7は、以下の式(2)に基づき、窒素除去速度の目標値ΔN目標と現在の窒素の除去速度との差分ΔNを算出する。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図3は、本発明の第2の実施の形態の下水処理施設の構成図である。前記した実施の形態と同様の構成要素は同じ符号を付して、説明を省略する。
本実施の形態の制御方法の基本的手順は、第1の実施の形態の処理手順(図2参照)と同様であるので、図2を用いて説明する。本実施の形態の処理手順では、初沈汚泥の比率rpを算出する式(1)における返送汚泥量Qrが異なる。
次に、ステップS202のrp算出工程で、制御手段7は、生物反応槽1a,bの初沈汚泥の比率rp1,rp2を、以下の式(4)のように算出する。ここで、添え字iは生物反応槽1の序数であり、本実施の形態では生物反応槽1a,bの2個であるので、1と2である。
本実施の形態では、初沈汚泥が生物反応槽1bにも蓄積するため,各生物反応槽1a,bへの流入水流量Qini、返送汚泥流量Qriおよび初沈汚泥投入流量Qpiから式(4)を用いて生物反応槽1a,bの初沈汚泥の比率rp1,rp2を算出する。
生物反応槽1a,bの反応液は最終沈殿池3で合流し、上澄みが処理水となるため、この生物反応槽1a,bの窒素・りん除去量を考慮してもよい。この場合、ΔN1およびΔN2、またはΔP1およびΔP2が0以上であれば、投入量を増加し、いずれか1つでも0よりも小さい値であれば、初沈汚泥の投入を停止する。この制御により、初沈汚泥の蓄積による初沈汚泥を投入しない生物反応槽1bにおける除去量の低下を避けることができる。
なお、下水処理施設が3つ以上の生物反応槽1を含む場合も、本実施の形態と同様に運転制御を行えばよい。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図4は、本発明の第3の実施の形態の下水処理施設の構成図である。前記した実施の形態と同様の構成要素は同じ符号を付して、説明を省略する。
本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、2つの系列(生物反応槽1および最終沈殿池3)が同じ流入水を並列で処理している点である。つまり、第1の実施の形態に、生物反応槽1bおよびこの生物反応槽1bからの処理水を受ける最終沈殿地3bを含む系(図3の領域B)が追加されている。
本発明は前記した実施の形態に限定されず、変形可能である。
図5は、本発明のその他の形態の下水処理施設の構成図である。本発明は、前記した第2の実施の形態の下水処理装置に初沈汚泥を投入しない系(領域C)を付加した構成としてもよい。このときの分解率qは前記した実施の形態のように式(5)を用いて算出し、rpは式(4)を用いて算出する。
なお、余剰汚泥量Lexは、各最終沈殿池3(3`)ごとの余剰汚泥量を用いるようにすればよい。
2 最初沈殿池(前段の沈殿池)
15 制御装置(下水処理制御装置)
5 目標値入力手段(入力手段)
6 機器仕様入力手段(入力手段)
Claims (4)
- 前段に配置された沈殿池と後段に配置され前記沈殿池における沈後水が供給される生物反応槽とを含む下水処理施設について、前記沈殿池で沈降分離された初沈汚泥を前記生物反応槽に投入して生物学的処理を行う下水処理方法であって、
前記生物反応槽への初沈汚泥の投入量の制御を行う制御装置は、
前記初沈汚泥の投入量を、前記生物反応槽における活性汚泥量に対する初沈汚泥量の比率に基づき決定することを特徴とする下水処理方法。 - 前記制御装置が、
前記生物反応槽における活性汚泥に対する初沈汚泥の比率を、前記生物反応槽に投入した初沈汚泥の分解率を用いて算出することを特徴とする請求項1に記載の下水処理方法。 - 前記下水処理施設の生物反応槽は、前記沈殿池における沈後水が供給され、前記初沈汚泥が投入される第1の生物反応槽および前記初沈汚泥が投入されない第2の生物反応槽を含み、
前記制御装置が、
前記第1の生物反応槽および前記第2の生物反応槽における余剰汚泥量を用いて、前記初沈汚泥の分解率を算出することを特徴とする請求項2に記載の下水処理方法。 - 前段に配置された沈殿池と後段に配置された前記沈殿池における沈後水が供給される生物反応槽とを含む下水処理施設について、前記前段に配置された沈殿池で沈降分離された初沈汚泥の前記生物反応槽への投入量を制御する下水処理制御装置であって、
前記初沈汚泥の投入量の算出に用いる各種データの入力を受け付ける入力手段と、
前記入力手段から入力された処理水水質目標値および前記生物反応槽に投入した初沈汚泥の分解率である初沈汚泥分解率と、
前記生物反応槽への流入水流量、過去の初沈汚泥投入量、活性汚泥量および余剰汚泥排出量の測定値に基づいて前記生物反応槽の活性汚泥と初沈汚泥との比率を算出し、前記算出した前記生物反応槽の活性汚泥と初沈汚泥との比率を用いて初沈汚泥の投入量を算出する制御手段と、
を備えたことを特徴とする下水処理制御装置。
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