JP3708752B2 - 硝酸態窒素生物処理方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、排水中に含まれる窒素を処理する方法および装置に関し、さらに詳しくは排水中に含まれる硝酸態窒素を微生物を用いて処理する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、海洋におけるプランクトンの繁殖による赤潮、湖沼における藻類の繁殖による水の華など、富栄養化問題が頻発している。その原因としては、窒素などの栄養塩類の蓄積が挙げられる。
【0003】
このような河川、湖沼、沿岸海域などの公共用水域への排水を規制して公共用水の汚濁を防止するための法規制として、水質汚濁防止法がある。この水質汚濁防止法では、排水中に含まれる窒素の1リットル当りの日間平均値が60mg/l以下、日間最大値が120mg/l以下の濃度であるように規制される。このため前記公共用水域への排水を処理する排水処理設備では、排水中に含まれる窒素の日間平均値および日間最大値が、上述した濃度以下となるように排水中からの窒素の除去を行っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したような排水処理設備が、複数の系統からの排水が流入する排水処理槽を有し、かつ前記排水処理槽に流入する排水が窒素を含まない系統の排水をも含むような場合、前記排水処理槽に流入する排水全体の流量は時々刻々変動する。このように排水処理槽に流入する排水全体の流量が変動すると、排水処理槽内の排水の混ざり具合が変動し、排水処理槽内の窒素濃度が変動するので、法規制を達成するために排水中から除去すべき窒素量も時々刻々変動する。
【0005】
このような排水処理設備においては、排水中から除去すべき窒素量が定まらないので、常時法規制を達成するために、排水中から過剰に窒素を除去してしまう傾向があった。このような排水中の窒素の過剰な除去は、ランニングコストの増大につながる。また上述した法規制による窒素濃度は、日間最大値を越えなければ1日の平均値として達成されればよい。
【0006】
本発明の目的は、排水中に含まれる硝酸態窒素の発生量の変動に応じて排水中から適切な量の窒素を除去することができる方法および装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、排水中に含まれる硝酸態窒素を、嫌気状態で栄養源溶液を餌に硝酸内の酸素を用いて呼吸する微生物を利用して、窒素ガスに還元して除去し、予め定める目標濃度以下に低減させるための処理方法であって、
排水および硝酸態窒素の発生量をそれぞれ求め、
排水中に含まれる硝酸態窒素を、該目標濃度に対応する量とするために必要な、該発生量からの減少量を算出し、
算出された減少量に対応する量の栄養源溶液を微生物に餌として与えるとともに、
前記硝酸態窒素を含む排水を、そのまま排出する系統と、前記微生物を利用して硝酸態窒素量を低減させてから排出する系統とに分け、
前記減少量は、排水全体中の硝酸態窒素量を前記目標濃度以下に低減可能なように定められることを特徴とする硝酸態窒素生物処理方法である。
【0008】
本発明に従えば、排水中に含まれる硝酸態窒素を予め定める目標濃度以下とするために必要な、硝酸態窒素の発生量からの減少量が求められ、この減少量に対応する量の栄養源溶液が微生物に与えられる。微生物は、嫌気状態で前記栄養源溶液を餌に硝酸内の酸素を用いて呼吸し、前記減少量に見合う量の硝酸態窒素を還元して除去する。これによって、前記排水中の硝酸態窒素の濃度を予め定める目標濃度以下に低減することができる。したがって排水中に含まれる硝酸態窒素の発生量に関係なく前記排水中の硝酸態窒素が常時前記目標濃度以下となるように栄養源溶液を微生物に与えるような従来の処理方法と比較して、微生物に与える栄養源溶液の量を低減することができ、ランニングコストを低減することができる。
また、前記硝酸態窒素を含む排水を、そのまま排出する系統と前記微生物を利用して硝酸態窒素量を低減させてから排出する系統とに分け、排水全体中の硝酸態窒素量が前記目標濃度以下に低減可能なように前記減少量が定められる。これによって、2系統に分けないで1系統で前記微生物を利用して硝酸態窒素量を低減させる場合に比べて、処理装置を小型化することができる。また複数の系統に分けられる排水を系統毎に微生物を利用して硝酸態窒素量を低減させてから排出して排水全体中の硝酸態窒素量を前記目標濃度以下に低減するような処理方法と比較して、硝酸態窒素生物処理方法を実施する装置を複数設ける必要がなく、前記処理方法をより簡単に実現することができ、コストを低減することができる。
【0009】
請求項2記載の本発明で、前記微生物を利用して硝酸態窒素量を低減させてから排出する系統では、
前記栄養源溶液を餌として与えられる微生物を含む汚泥を沈殿させて排出する排水から分離した後、汚泥にオゾンを作用させて殺菌し、栄養源溶液の一部として供給することを特徴とする。
【0010】
本発明に従えば、栄養源溶液を餌として与えられる微生物による脱窒後に沈殿する汚泥に、オゾンを作用させて、汚泥に過剰に含まれる微生物を分解し、脱窒のための栄養源として、余剰に繁殖した微生物を含む汚泥を、廃棄することなく、再利用することができる。
【0011】
請求項3記載の本発明は、前記目標濃度を、予め設定される期間毎に基準濃度以下に保つ条件を満たすように、
該期間内で、実際に排出された排水中の硝酸態窒素量に応じて変更することを特徴とする。
【0012】
本発明に従えば、前記目標濃度は予め設定される期間毎に基準濃度以下となるように該期間内で実際に排出された排水中の硝酸態窒素量に応じて変更される。これによって、たとえば1時間毎に排水中の硝酸態窒素濃度を求め、前記求めた硝酸態窒素濃度に応じて目標濃度を変更することができるので、適切な量の栄養源溶液を微生物に与えることができ、かつ日間平均濃度を基準濃度以下になるように制御することができる。したがって前記目標濃度が全く変更されないような処理方法と比較して、前記予め設定される期間内に微生物に与える栄養源溶液の量を低減することができ、ランニングコストをさらに低減することができる。
【0013】
請求項4記載の本発明は、排水中に含まれる硝酸態窒素を、嫌気状態で栄養源溶液を餌に硝酸内の酸素を用いて呼吸する微生物を利用して、窒素ガスに還元して除去し、予め定める目標濃度以下に低減させるための処理装置であって、
発生される硝酸態窒素を含む排水の一部を、原水として受入れる原水槽と、
原水槽から原水が供給され、該微生物による窒素の還元処理が行われる脱窒槽と、
脱窒槽で還元処理された原水が供給され、空気が吹込まれる曝気槽と、
曝気槽で処理された原水が供給され、汚泥を沈殿させた上澄みを処理水として排出する沈殿槽と、
原水槽に原水として受入れられ、脱窒槽で還元処理されて沈殿槽から排出される上澄み処理水、および原水槽には原水として受入れられない硝酸態窒素を含む排水の残部が流入する排水処理槽と、
排水処理槽から排出される排水中に含まれる硝酸態窒素の濃度を、該目標濃度以下に低減させる還元処理に必要な栄養源溶液を脱窒槽に供給するように制御する制御装置とを、含むことを特徴とする硝酸態窒素生物処理装置である。
【0014】
本発明に従えば、硝酸態窒素生物処理装置は、硝酸態窒素を含む排水の一部を原水として受入れる原水槽と、原水槽から原水が供給され嫌気状態で栄養源溶液を餌に硝酸内の酸素を用いて呼吸する微生物を利用して前記排水中に含まれる硝酸態窒素の還元処理が行われる脱窒槽と、脱窒槽で還元された原水が供給され空気が吹込まれる曝気槽と、曝気槽で処理された原水が供給され汚泥を沈殿させた上澄みを処理水として排出する沈殿槽と排水処理槽とを含む。排水処理槽には、沈殿槽から排出される上澄み処理水と、硝酸態窒素を含む排水の残部とが流入する。これによって、排水処理槽からの排水中に含まれる硝酸態窒素を予め定める目標濃度以下となるように前記微生物を利用して窒素ガスに還元して除去するような処理を行うことができる。
【0015】
さらに前記硝酸態窒素生物処理装置は、全排水中に含まれる硝酸態窒素の濃度を前記目標濃度にまで減少させる還元処理に必要な量の栄養源溶液を脱窒槽に供給するような制御を行う制御装置を含むので、全排水中に含まれる硝酸態窒素の濃度を前記目標濃度以下まで減少させるために適切な量の栄養源溶液を脱窒槽内の微生物に与えることができる。これによって硝酸態窒素生物処理装置が前記制御装置を含まないような構成と比較して、硝酸態窒素を含む排水の量に関係なく排水中の硝酸態窒素の濃度を常時前記目標濃度まで減少させるために与える栄養源溶液の量を低減することができる。したがってランニングコストを低減することができる。
【0016】
またさらに前記制御装置によって原水中に含まれる硝酸態窒素の濃度を前記目標濃度にまで減少させる還元処理に必要な量の栄養源溶液の供給を自動的に行うことができるので、無人での硝酸態窒素生物処理を実現することができる。
【0017】
請求項5記載の本発明は、前記沈殿槽で沈殿する汚泥を、オゾンによって分解し、前記脱窒槽に栄養源溶液の一部として供給する汚泥返送装置をさらに含むことを特徴とする。
【0018】
本発明に従えば、前記硝酸態窒素生物処理装置は沈殿槽で沈殿する汚泥をオゾンによって分解し、分解された汚泥を前記脱窒槽内の微生物に栄養源溶液の一部として供給する汚泥返送装置をさらに含むので、前記沈殿槽で沈殿する汚泥を廃棄せずに再利用することができる。したがって硝酸態窒素生物処理装置が前記汚泥返送装置を含まないような構成と比較して、産業廃棄物の発生を防止することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の一形態の硝酸態窒素生物処理方法を実施する硝酸態窒素生物処理装置1の概略的構成を示す系統図であり、図2は図1の硝酸態窒素生物処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。硝酸態窒素生物処理装置1は、排水中の硝酸態窒素を微生物によって還元して除去するための装置であり、河川、湖沼、沿岸海域などを含む公共用水域に放流される排水を処理する排水処理設備などにおいて、好適に用いられる。このような硝酸態窒素生物処理装置1は、基本的には、第1〜第3系統排水供給源2〜4と、脱窒装置5と、排水処理槽6と、制御装置7とを備える。
【0020】
硝酸態窒素生物処理装置1には、複数の系統に分けられて排出される排水が流入する。前記排水は、たとえば第1〜第3系統排水に分けられ、それぞれ第1〜第3系統排水供給源2〜4に流入する。
【0021】
第1および第2系統排水供給源2,3に流入する第1および第2系統排水は、たとえば焼鈍酸洗設備からの廃酸であり、硝酸態窒素(NO3 -)を主として含む。このような主として硝酸態窒素を含む排水のうち、第1系統排水は脱窒装置5を通過してから排水処理槽6に排出され、第2系統排水は脱窒装置5を通過せずに直接排水処理槽6に排出される。
【0022】
第1系統排水供給源2は、本実施の形態では、第1および第2排水供給装置11,12を備える。前記第1および第2排水供給装置11,12は、それぞれ第1および第2排水供給槽13,14と、第1および第2ポンプ15,16とを有する。硝酸態窒素生物処理装置1に流入する第1系統排水は、まず前記第1および第2排水供給槽13,14内に集められる。また第1および第2排水供給槽13,14にはそれぞれ第1および第2pHメータ93,94が備えられる。この第1および第2pHメータ93,94によって、第1および第2排水供給槽13,14内のそれぞれの第1系統排水のpHが測定される。前記第1および第2ポンプ15,16は、それぞれ第1および第2排水供給槽13,14と、脱窒装置5の後述する原水槽26とを結ぶ第1および第2排水供給通路17,18に介在される。第1および第2排水供給槽13,14内の第1系統排水は、第1および第2ポンプ15,16によってそれぞれ第1および第2排水供給槽13,14から汲上げられて、第1および第2排水供給通路17,18を介して前記原水槽26に供給される。脱窒装置5を通過した後の第1系統排水は、第1排出路21を介して排水処理槽6に排出される。
【0023】
前記第1系統排水が通過する脱窒装置5は、基本的には、原水槽26と、脱窒槽27と、曝気槽28と、沈殿槽29と、BOD源溶液供給装置31とを有する。原水槽26は、第1および第2排水供給通路17,18を介して供給される第1系統排水を、原水として受入れる。前記原水とは、脱窒装置5を通過して排水処理槽6に排出される第1系統排水のうち、原水槽26内に供給されてから、後述する処理水として沈殿槽29から排出される前までの段階の排水をいう。このような原水槽26には、原水槽26内の原水の窒素濃度を測定するための第1窒素濃度計37が備えられる。前記第1窒素濃度計37は、原水槽26内の原水中に含まれる硝酸態窒素の1リットル当りの窒素濃度n1(mg/l)を測定し、制御装置7の処理回路71に測定された窒素濃度n1を表す信号出力を与える。上述した窒素濃度は、たとえば16分に1回の周期で、JIS K0102に定められる熱分解法を自動的に行うことによって測定される。
【0024】
原水槽26と脱窒槽27との間には、第1原水供給通路38が介在される。第1原水供給通路38には第3ポンプ39が介され、この第3ポンプ39によって原水槽26から原水が汲上げられ、脱窒槽27に供給される。また第1原水供給通路38の第3ポンプ39よりも脱窒槽27側には、パネル取付けの第1流量計40が介在される。第1流量計40は、第1原水供給通路38を通過する原水の1時間当りの体積流量Q1(m3/H)を測定し、前記流量を指示するとともに、制御装置7の処理回路71に測定された流量Q1を表す信号出力を与える。
【0025】
また第1原水供給通路38は、前記第1流量計40よりも脱窒槽27側でバイパス通路41に分岐する。バイパス通路41は、上述した第1排出路21に通じる。第1原水供給通路38の、バイパス通路41との間の分岐点42よりも脱窒槽27側には、第1弁43が介在される。同様にバイパス通路41には第2弁44が介在される。第1弁43および第2弁44は、制御装置7から与えられる制御指令69,70にそれぞれ応じて開閉の度合を変動させる。これによって第1弁43の開閉の度合に対応する流量の原水を脱窒槽27に供給させるとともに、第2弁44の開閉の度合に対応する流量の原水をバイパス通路41に通過させて、第1排出路21を介して排水処理槽6に排出する。
【0026】
上述のように原水槽26からの原水が供給される脱窒槽27内は、概ね嫌気状態とされる。このような脱窒槽27には、嫌気状態で硝酸態窒素を窒素ガスに還元する性質を有する微生物である脱窒菌を含む汚泥を利用して、前記原水中に含まれる硝酸態窒素の還元処理を行う。前記概ね嫌気状態とは、脱窒菌が硝酸態窒素の還元を行うことができ、かつ後述する好気性菌が活動を休止する程度の嫌気状態をいう。
【0027】
脱窒菌は、たとえばバチルス SP(Bacillus SP.)、ハイポミクロビウム SP(Hyphomicrobium SP.)、シュードモナス SP(Pseudomonas SP.)などが用いられ、嫌気状態で栄養源溶液であるBOD(Biochemical Oxygen Demand)源溶液が餌として与えられるときに、酸素の代わりに硝酸を用いる、いわゆる硝酸呼吸を行う性質を有する。脱窒の経路は、硝酸態窒素(NO3 -)が硝酸レダクターゼによって亜硝酸態窒素(NO2 -)に還元され、その後順に、亜硝酸態窒素が亜硝酸レダクターゼによって酸化窒素(NO)に還元され、酸化窒素が酸化窒素レダクターゼによって亜酸化窒素(N2O)に還元され、亜酸化窒素が亜酸化窒素レダクターゼによって窒素ガス(N2)にまで還元される。このような硝酸呼吸は、言い換えれば異化的硝化還元であり、餌として与えられるBOD源溶液は、厳密には水素供与体として働く。本実施の形態では、BOD源溶液供給装置31からのBOD源溶液の投与によって、硝酸呼吸による硝酸態窒素から窒素ガスへの還元反応の反応速度を律速する。すなわち脱窒槽27内には前記微生物を含む汚泥が常時還元反応に充分な量供給されており、前記原水中に含まれる硝酸態窒素は、供給されるBOD源溶液の量に応じて窒素ガスに還元される。
【0028】
また上述のように、本実施の形態では、BOD源溶液としてメタノールを用いる。このとき脱窒菌の体内で行われている脱窒反応化学式は、次のように考えられている。
5CH3OH+6NO3 - → 5HCO3 -+OH-+7H2O+3N2↑
【0029】
また前記汚泥は、好気状態で前記BOD源溶液内の酸素を呼吸に用いる好気性菌を含むが、上述したように、脱窒槽27内においては概ね嫌気状態に保たれ、脱窒菌のみが活動を行っており、好気性菌は活動を休止している。
【0030】
また図1に示されるように、脱窒槽27は温度調節器71および酸化還元電位計72を備える。温度調節器71は、脱窒槽27内の原水の温度が脱窒菌による脱窒素反応に適した温度範囲20〜38℃に保持されるように温度の調節を行う。また酸化還元電位計72は、脱窒槽27内での脱窒菌による脱窒素反応に起因する酸化還元電位(ORP:Oxidation-reduction potential)(−mA)を測定する。
【0031】
脱窒槽27内の原水は、好ましくは機械による撹拌、本実施の形態では曝気槽28の曝気と比較して軽度に脱窒槽27内が概ね嫌気状態に保たれる程度に曝気を行うことによって、脱窒菌による脱窒素反応の反応性を向上させる。
【0032】
脱窒槽27内の原水は、常時脱窒槽27の容量一杯に満たされる。脱窒槽27で還元処理された原水は、原水槽26から脱窒槽27に新たに流入する原水の流量に応じ、オーバーフローして第2原水供給通路46を介し曝気槽28に流入する。曝気槽28は、モータによって駆動されるブロア(図示せず)によって空気が吹込まれ、好気状態とされる。これによって曝気槽28内に供給される汚泥を含む還元処理後の原水は、脱窒槽27内では休止状態であった好気性菌が活動を始め、逆に脱窒槽27内で活動していた脱窒菌は休止状態となる。好気状態で活動する好気性菌は、曝気槽28内の還元処理後の原水に含まれる余剰のBOD源溶液を酸化消費し、二酸化炭素ガスおよび水などに分解する。
【0033】
また曝気槽28には、上述のように空気が吹込まれることによって、脱窒槽27から原水とともに供給される汚泥に付着した窒素ガス(N2)を除去する役割も果たす。すなわち脱窒槽27で脱窒菌によって原水中に含まれる硝酸態窒素の還元処理を行った時点では、硝酸態窒素が還元されることによって発生した窒素ガスは汚泥に付着する。このように窒素ガスを付着した汚泥が、曝気槽28を通過せず直接脱窒槽27から沈殿槽29に供給されると、沈殿槽29で汚泥が沈殿しないという不具合を生じる。このような不具合を解消するために、曝気槽28で窒素ガスを付着した汚泥に空気を吹込むことによって、前記汚泥から窒素ガスを除去する。
【0034】
曝気槽28で処理された原水は、曝気槽28に新たに流入する原水の量に応じてオーバーフローして第3原水供給通路47を経て、沈殿槽29に供給される。沈殿槽29では、曝気槽28での処理後の原水に含まれる汚泥が沈殿され、前記汚泥を除く上澄みが同様に沈殿槽29に新たに流入した原水の量に応じ、オーバーフローして排出される。すなわち第2弁44が完全に閉じられているとき、沈殿槽29から排出される前記上澄みである処理水の流量は、原水槽26から脱窒槽27に新たに流入した原水の量に等しい。前記処理水は、処理水排出路48および第1排出路21を介して、排水処理槽6に排出される。また沈殿槽29で沈殿した汚泥は、定期的に廃棄される。
【0035】
沈殿槽29には、沈殿槽29内の原水の窒素濃度を測定するための第2窒素濃度計49が備えられる。前記第2窒素濃度計49は、上述した第1窒素濃度計37と同様に沈殿槽29内の原水中に含まれる硝酸態窒素の1リットル当りの窒素濃度n2(mg/l)を測定し、制御装置7の処理回路71に測定された窒素濃度n2を表す信号出力を与える。また処理水排出路48には、パネル取付けの第2流量計50が介在される。第2流量計50は、処理水排出路48を通過する処理水の1時間当りの体積流量Q2(m3/H)を測定し、前記流量を指示するとともに、制御装置7の処理回路71に測定された流量Q2を表す信号出力を与える。
【0036】
BOD源溶液供給装置31は、BOD源溶液タンク51とBOD源溶液供給ポンプ52とを有する。BOD源溶液タンク51内のBOD源溶液は、BOD源溶液供給ポンプ52によってBOD源溶液タンク51から汲上げられて、BOD源溶液供給通路53を介して前記脱窒槽27に供給される。本実施の形態では、BOD源溶液としてたとえば50%メタノールが用いられる。前記BOD源溶液供給通路53には、パネル取付けの第5流量計54が介在される。第5流量計54は、BOD源溶液供給通路53を通過するBOD源溶液の1時間当りの体積流量(m3/H)を測定し、前記流量を指示する。
【0037】
BOD源溶液供給ポンプ52は、一次周波数制御(インバータ制御)される誘導モータ55によって駆動されるポンプであって、制御装置7からの指令65をもとに脱窒槽27に供給するBOD源溶液の流量を調節する。前記一次周波数制御とは、可変電圧、可変周波数電源によって一次入力の電圧、周波数を変化させる制御方法をさす。
【0038】
また脱窒装置5は、原水槽26、脱窒槽27、曝気槽28にそれぞれ備えられる第3〜第5pHメータ95〜97によって、それぞれの段階の原水のpHが測定される。脱窒槽27では、上述した還元処理によって、脱窒槽27内の原水のpHが上昇する傾向がある。
【0039】
これを防ぐために脱窒装置5は、pH調整装置101を有する。前記pH調整装置101は、タンク102とポンプ103とを備える。タンク102には、塩酸(HCl)などの酸が溜められる。タンク102内の酸は、第4pHメータ96によって測定される脱窒槽27内の原水のpHの上昇に応じて、脱窒槽27内の原水のpHが微生物による還元処理に適したpH=6〜9となるように、必要に応じて図示しないポンプ103を駆動するモータが制御装置7によって自動的に制御され、対応する量の酸がポンプ103によってタンク102から汲上げられ、脱窒槽27内の原水に供給される。
【0040】
主として硝酸態窒素を含む排水のうち、第2系統排水は、脱窒装置5を通過しない。第2系統排水供給源3は、第3排水供給装置56を備える。前記第3排水供給装置56は、第3排水供給槽57を有する。硝酸態窒素生物処理装置1に流入する第2系統排水は、まず前記第3排水供給槽57内に集められ、その後に第2排出路58を介して排水処理槽6に排出される。
【0041】
上述のような第3排水供給槽57には、第3排水供給槽57内の第2系統排水の窒素濃度を測定するための第3窒素濃度計59が備えられる。前記第3窒素濃度計59は、上述した第1および第2窒素濃度計37,49と同様に、第3排水供給槽57内の第2系統排水中に含まれる硝酸態窒素の1リットル当りの窒素濃度n3(mg/l)を測定し、制御装置7の処理回路71に測定された窒素濃度n3を表す信号出力を与える。また前記第2排出路58には、パネル取付けの第3流量計60が介在される。第3流量計60は、第2排出路58を通過する第2系統排水の1時間当りの体積流量Q3(m3/H)を測定し、前記流量を指示するとともに、制御装置7の処理回路71に測定された流量Q3を表す信号出力を与える。また第3排水供給槽57には第6pHメータ98が備えられ、この第6pHメータ98によって第3排水供給槽57内の第2系統排水のpHが測定される。
【0042】
第3系統排水供給源4に流入する第3系統排水は、たとえば廃酸を含まない工業用水および雨水である。このような第3系統排水は主として硝酸態窒素を含まない。第3系統排水供給源4は、第4排水供給槽61を有する。硝酸態窒素生物処理装置1に流入する第3系統排水は、まず第4排水供給槽61に集められ、その後に第3排出路62を介して排水処理槽6に排出される。
【0043】
このように排水処理槽6には、第1〜第3排出路21,58,62を経て、脱窒素された第1系統排水、ならびに第2および第3系統排水が流入する。排水処理槽6内の排水は、新たに排水処理槽6に流入した排水の量に応じて放流路66を経て、放流排水として公共用水域に放流される。前記公共用水域とは、河川、湖沼、沿岸海域および終末処理場を設置していない公共下水道などを言う。
【0044】
このような公共用水域への排水は、公共用水の汚濁を防止するための法規制である水質汚濁防止法(平成10年10月1日より施行)によって規制される。このような水質汚濁防止法では、公共用水域への排水中に含まれる窒素の日間平均値が60mg/l以下の濃度であり、かつ日間最大値が120mg/l以下の濃度であるように規制される。したがって本実施の形態の硝酸態窒素生物処理装置1では、排水処理槽6内の排水中に含まれる硝酸態窒素の日間平均窒素濃度および日間最大窒素濃度が上述した法規制によって定められる濃度以下となるように、脱窒装置5によって第1系統排水中に含まれる硝酸態窒素の除去を行う。
【0045】
排水処理槽6には、窒素濃度測定器67が備えられる。窒素濃度測定器67は、上述した第1〜第3窒素濃度計37,49,59とは異なり、本実施の形態では、排水基準を定める総理府令の規定に基づく環境庁長官が定める排水基準に係る検定方法の1つである、JIS KO102に定められる紫外線吸光光度法によって、排水処理槽6内の排水中に含まれる硝酸態窒素の1リットル当りの窒素濃度n4(mg/l)を測定する。前記窒素濃度測定器67はたとえば手分析に近い分析性能を有する測定器で実現され、1時間に1回の周期で測定を行い、制御装置7の処理回路71に測定された窒素濃度n4を表す信号出力を与える。また放流路66には、パネル取付けの第4流量計68が介在される。第4流量計68は、放流路66を通過する放流排水の1時間当りの体積流量Q4(m3/H)を測定し、前記流量を指示するとともに、制御装置7の処理回路71に測定された流量Q4を表す信号出力を与える。また排水処理槽6には第7pHメータ99が備えられ、この第7pHメータ99によって排水処理槽6内の排水のpHが測定される。
【0046】
制御装置7は、たとえばCPU(Central Processing Unit)で実現される処理回路71を有する。図2に示されるように前記処理回路71には、前述のように第1〜第3窒素濃度計37,49,59からのそれぞれ窒素濃度n1〜n3を表す信号出力、および窒素濃度測定器67からの窒素濃度n4を表す信号出力、ならびに第1〜第4流量計40,50,60,68からのそれぞれ流量Q1〜Q4を表す信号出力がそれぞれ入力される。
【0047】
処理回路71は、目標濃度n6を予め定め、上述した各信号入力からまず各値を取得し、排水および排水中に含まれる硝酸態窒素の発生量をそれぞれ求め、前記硝酸態窒素を上述した予め定める目標濃度に対応する量とするために必要な、前記硝酸態窒素の発生量からの減少量を算出する。さらに処理回路71は、算出された前記減少量に対応して脱窒槽27内の汚泥に含まれる脱窒菌に与えるべきBOD源溶液の量を算出し、この量のBOD源溶液を汲上げるようにBOD源溶液供給ポンプ52が駆動されるときの誘導モータ55の周波数を算出する。このようにして算出された周波数は、制御指令65として前記誘導モータ55に与えられる。これによって上述のように算出された量のBOD源溶液がBOD源溶液供給ポンプ52によって汲上げられ、脱窒槽27に与えられる。
【0048】
またさらに処理回路71は、前記減少量に対応して、原水槽26から脱窒槽27に新たに流入させて脱窒すべき原水の量を算出する。この算出された原水の流量に応じて制御指令69,70がそれぞれ第1弁43および第2弁44に与えられる。第1弁43および第2弁44は、制御指令69,70に応じてそれぞれの開閉の度合が変動され、第1原水供給通路38を通過する原水のうち、どれだけの量を脱窒槽27に流し、どれだけの量をバイパス通路41に流すかを制御される。このような処理回路71による演算および制御動作は連続的に行われ、1時間ごとに窒素濃度測定器67によって測定される排水処理槽6内の排水の窒素濃度n4の値の更新に応じて繰返される。
【0049】
図3は、処理回路71の演算および制御動作を説明するためのフローチャートである。ここで、処理回路71は、i回目(iは自然数)の演算および制御動作を行っているものとする。処理回路71は、窒素濃度測定器67のi回目の測定によって、(i−1)回目の窒素濃度n4の値n4(i−1)から更新される、i回目の窒素濃度n4の値n4iを取得すると、i回目の演算および制御動作を開始する。
【0050】
ステップs0からステップs1に移り、処理回路71は、上述の入力信号からi回目の各窒素濃度の値n1i〜n3iおよび流量の値Q1i〜Q4iをそれぞれ取得する。詳しく述べると、第1窒素濃度計37によって測定された原水槽26内の原水すなわち窒素が除去される前の第1系統排水中に含まれる硝酸態窒素の窒素濃度の値n1i、第2窒素濃度計49によって測定された沈殿槽29内の原水すなわち窒素を除去した後の第1系統排水中に含まれる硝酸態窒素の窒素濃度の値n2i、第3窒素濃度計59によって測定された第3排水供給槽57内の第2系統排水中に含まれる硝酸態窒素の窒素濃度の値n3i、および窒素濃度測定器67によって測定された排水処理槽6内の排水中に含まれる硝酸態窒素の窒素濃度の値n4iがそれぞれ取得される。同時に第1流量計40によって測定された第1原水供給通路38を通過する原水すなわち窒素が除去される前の第1系統排水の流量の値Q1i、第2流量計50によって測定された処理水排出路48を通過する処理水すなわち窒素を除去された後の第1系統排水の流量の値Q2i、第3流量計60によって測定された第2排出路58を通過する第2系統排水の流量の値Q3i、および第4流量計68によって検出された放流路66を通過する放流排水すなわち排水全体の発生量である排水処理槽6に流入する第1〜第3系統排水の総流量の値Q4iがそれぞれ取得される。
【0051】
なお、窒素濃度の各値n1i〜n3iおよび流量の各値Q1i〜Q3iは、互いにタイムラグを生じることがないように取得される。すなわち前記各値は、それぞれの窒素濃度計および流量計の設置される場所によっては、i回目の窒素濃度の値n4iが更新された時点における各値を取得するとタイムラグを生じてしまう。たとえば第2系統排水が第3排水供給槽57から排出されてから排水処理槽6に流入するまでに30分かかるとすると、前記値n4iが更新された時点に対応して取得されるべき窒素濃度の値n3iは、現時点より30分前に最も近い時点で測定された窒素濃度n3である。このように、上述した各値は、それぞれの窒素濃度計および流量計が設置される場所に起因するタイムラグを考慮して取得される。
【0052】
続くステップs2では、上述した各値n1i〜n4i、Q1i〜Q4iをもとに、排水中に含まれる硝酸態窒素の発生量である排水処理槽6内の排水の窒素負荷の値N4iを算出する。
【0053】
図4は、図3のステップs2の具体的な動作を説明するためのフローチャートである。ステップs2a1では、第3排出路62を通過する第3系統排水の流量Q5のi回目の流量の値Q5iが算出される。上述のように本実施の形態では、第3系統排水が通過する第3排出路62には流量計が介在されていないので、前記流量Q5iは演算によって求められる。排水処理槽6に流入する第3系統排水の流量Q5は、排水処理槽6内の排水の窒素濃度n4を変動させる要因となる。すなわち排水処理槽6に流入する第1および第2系統排水の流量Q2,Q3が一定であるとき、第3系統排水の流量Q5が大きくなると、排水処理槽6内の排水の窒素濃度n4は小さくなり、逆に前記流量Q5が小さくなると前記窒素濃度n4は大きくなる。このような第3系統排水の流量Q5のi回目の流量の値Q5iは、下記の式で算出される。
Q5i = Q4i−Q1i−Q3i
【0054】
すなわち第4流量計68で測定された放流路66を通過する放流排水の流量の値Q4iから、排水処理槽6内に流入する第1および第2系統排水の流量の各値Q1i,Q3iを減算することによって算出される。
【0055】
ステップs2a2では、第1系統排水の窒素除去前および窒素除去後の各窒素負荷の値N1i,N2i、ならびに第2および第3系統排水の窒素負荷の値N3i,N5iをそれぞれ算出する。前記窒素負荷の値は、排水中の窒素濃度の値とその排水の流量の値との積算によって算出される。すなわち、窒素負荷の各値N1i〜N3i,N5iは、下記の式でそれぞれ求められる。
N1i = n1i×Q1i
N2i = n2i×Q2i
N3i = n3i×Q3i
N5i = n5i×Q5i
【0056】
続くステップs2a3では、排水処理槽6内の排水の窒素負荷の値N4iを求める。前記窒素負荷の値N4iは、窒素除去後の第1系統排水の窒素負荷の値N2i、ならびに第2および第3系統排水の窒素負荷の値N3i,N5iの和として求まる。すなわち下記の式で算出される。
N4i=N2i+N3i+N5i
【0057】
図3に戻って、ステップs3では、排水処理槽6内の排水の窒素濃度の値が前記予め定められるi回目の目標濃度n6の値n6iに等しいと仮定し、この場合の排水処理槽6内の排水の窒素負荷の値N6iを算出する。前記窒素負荷の値N6iは、下記の式で求められる。
N6i = n6i×Q4i
【0058】
続くステップs4では、排水処理槽6内の排水の中に含まれる硝酸態窒素の発生量である窒素負荷の値N4iを、前記予め定める目標濃度n6の値n6iに対応する量である窒素負荷の値N6iとするために必要な減少量である脱窒装置5によって除去すべき窒素負荷の値N7iを算出する。前記除去すべき窒素負荷の値N7iは下記の式で表される。
【0059】
続くステップs5では、上述のステップs4で求めた除去すべき窒素負荷の値N7iおよび第1窒素濃度計37で測定された原水槽26内の原水中に含まれる硝酸態窒素の窒素濃度の値n1iから、原水槽26から脱窒槽27に新たに供給すべき原水の流量の値Q8iを算出する。前記流量の値Q8iは、下記の式で求められる。
Q8i=(N7i/n1i)+Q9i
【0060】
前記流量の値Q9iは、フィードバック補正のために余分に加えられる流量の値である。この補正の値Q9iは、この値Q9iに相当する流量Q9だけ多く原水槽26から脱窒槽27に新たに原水を供給することによって、処理回路71が(i+1)回目に取得する排水処理槽6内の排水の窒素濃度n4の値n4(i+1)が、上述のように予め定める目標濃度の値n6iよりも小さい値となるように加えられる。この流量の値Q9iは、下記の式で表される。
【0061】
すなわち上述の脱窒槽27に新たに供給すべき原水の流量の値Q8iは、次のように書換えることが可能である。
【0062】
すなわち、上述のように除去すべき窒素負荷の値N7iに応じて脱窒槽27に新たに供給されるべき原水の流量の値Q8iは、前記窒素負荷の値N4iを窒素負荷の値N6iとするために必要な原水の供給量の2.2倍の値として算出される。
【0063】
続くステップs6では、上述のようにして求められた流量の値Q8iから、脱窒槽27に与えるべきBOD源溶液の流量の値Q10iを算出する。上述のように本実施の形態では、前記BOD源溶液として50%メタノールが用いられるので、BOD源溶液の投与量の値Q10iは、下記の式で求められる。
【0064】
【数1】
【0065】
メタノールの投与量の値Q10iは、その単位がl/Hとなるように求められる。式中の値Mは、メタノールの係数であって、脱窒菌がメタノールを餌として硝酸内の酸素を用いて呼吸するために必要な、脱窒菌のメタノール消費量と脱窒菌に投与するメタノールの量との比を表す数値である。このメタノール係数は、脱窒槽27の原水の窒素負荷に応じて変動し、2.4〜3.0の範囲の数値で与えられる。また数値0.92は、50%メタノールの20℃における密度(g/cm3)とする。
【0066】
図5は、図1の誘導モータ55に制御指令65として与えられる周波数の値fiと、誘導モータ55によってBOD源溶液供給ポンプ52を介して汲上げられるBOD源溶液の流量との関係を示すグラフである。グラフの縦軸は前記周波数の値fiを示し、横軸はBOD源溶液供給ポンプ52によって汲上げられるBOD源溶液の流量(l/H)を示す。図3をも参照して、ステップs7では、上述のステップs6で算出された脱窒槽27に投与すべきBOD源溶液の量の値Q10iに対応する流量のBOD源溶液を流すようにBOD源溶液供給ポンプ52を駆動するときの、誘導モータ55の周波数の値fiが算出される。前記周波数の値fiは、図5のグラフに示される関係から求められる。このような周波数の値fiは、たとえば下限値が6であり、上限値が60である。本実施の形態では、図5に示されるように、誘導モータ55に与えられる周波数が60Hzであるとき、BOD源溶液供給ポンプ52の吐出量は、720l/Hである。
【0067】
続くステップs8では、ステップs7で求められた周波数の値fiが、制御指令65として誘導モータ55に与えられる。これによって誘導モータ55は、与えられた周波数の値fiに対応する回転速度でBOD源溶液供給ポンプ52を駆動する。このようにして排水処理槽6内の排水の窒素濃度を、前記予め定める目標濃度以下とするための硝酸態窒素の減少量に対応する量のBOD源溶液が、脱窒菌に与えられる。
【0068】
また同時にステップs8では、上述したように新たに脱窒槽27に供給すべき原水の流量の値Q8iに応じた制御指令69が、第1弁43に与えられる。なお上述したi回目の目標濃度の値n6iが充分に低く、第3ポンプ39によって原水槽26から汲上げられる原水全てについて脱窒素処理を行う必要のないときには、脱窒素処理を行う必要のない原水の量に応じた制御指令70を第2弁44に与え、第2弁44の弁開度を設定する。これによって第3ポンプ39によって原水槽26から汲上げられる原水は、一部がバイパス通路41を通り脱窒素処理が行われることなく、排水処理槽6に直接流入される。
【0069】
ステップs8からステップs9に移り、処理回路71によるi回目の演算および制御動作は終了する。上述したように処理回路71による一連の演算および制御動作は、窒素濃度測定器67によって測定される排水処理槽6内の排水の窒素濃度n4の値が更新される毎に開始され、繰返される。すなわち図3のフローチャートに示される処理回路71による一連の演算および制御動作は、本実施の形態では窒素濃度測定器67の測定周期に合わせて1時間毎に繰返される。
【0070】
上述したように、図3のフローチャートのステップs4では、排水処理槽6内の排水から除去すべき窒素負荷N7iは、排水処理槽6内の排水中に含まれる硝酸態窒素の発生量である窒素負荷の値N4iを、予め定める目標濃度n6iに対応する量である窒素負荷の値N6iとするための減少量として算出される。前記目標濃度としては、法規制による日間平均値60mg/lが想定される。しかしながらこの法規制による日間平均値は、日間最大値が120mg/lより大きくなければ、排水処理槽6に備えられる窒素濃度測定器67の測定周期毎に測定される排水処理槽6内の排水の窒素濃度の1日の平均値が60mg/l以下となれば達成される。
【0071】
本実施の形態では、上述のように窒素濃度測定器67は、1時間毎に排水処理槽6内の排水の窒素濃度n4を測定するので、時刻1時から時刻0時までの24時間で1日24個の排水処理槽6内の排水の窒素濃度n4の値を測定し、これらの24個の値の平均値が上述した法規制による日間平均値以下となるような補正である日間平均補正が行われる。すなわち前記目標濃度は、この日間平均補正によって、予め設定される期間毎に基準濃度以下に保つ条件を満たすように、該期間内で実際に排出された排水中の硝酸態窒素量に応じて1時間毎に変更される。本実施の形態では、予め設定される期間は24時間であり、基準濃度は60mg/lである。
【0072】
図6は、図1の処理回路71の目標濃度n6の日間平均補正の動作を説明するためのフローチャートである。処理回路71は、上述した演算および制御動作に伴って目標濃度n6の値の補正を行い、目標濃度n6の値を更新する。この日間平均補正によって更新された目標濃度n6の値は、次に繰返される演算および制御動作の中の目標濃度n6の値として投入される。すなわち、24時間内に1時間毎に24回繰返されるうちの(j+1)回目(jは1〜23のうちのいずれかの自然数)の処理回路71の演算および制御動作において、ステップs3で用いられる(j+1)回目の目標濃度の値n6(j+1)は、処理回路71のj回目の演算および制御動作に伴う、図6のフローチャートに示される日間平均補正の動作によって算出され、予め定められる。
【0073】
1日24回、1時間毎に繰返される図3のフローチャートに示される処理回路71の、1回目の演算および制御動作の開始に伴って、図6に示される処理回路71の補正動作がステップr0からステップr1に移る。このとき上述した1日24回、1時間毎に繰返される処理回路71の演算および制御動作が、何回目の動作であるかを示す値j(jは1〜23のうちのいずれかの自然数)に、j=1の初期値が与えられる。
【0074】
ステップr2では、窒素濃度測定器67によって測定される排水処理槽6内の排水の窒素濃度n4のj回目の値n4jを取得する。ここで、上述のようにステップr1で、j=1の初期値が与えられているので、ステップr2では、処理回路71は1日の中の1回目の窒素濃度測定器67の測定による排水処理槽6内の排水の窒素濃度の値n41を取得する。
【0075】
ステップr3では、検出されたj回目までの窒素濃度の各値n41〜n4jをもとに、(j+1)回目の処理回路の演算および制御動作に用いられる(j+1)回目の目標濃度の値n6(j+1)が算出される。この(j+1)回目の目標濃度の値n6(j+1)の算出は、下記の式で行われる。
【0076】
【数2】
【0077】
ここでj回目すなわち1回目の排水処理槽6内の排水の窒素濃度n41が、40mg/lであったとすると、(j+1)回目すなわち2回目の処理回路71の演算および制御動作で用いられる目標濃度n62は、次のように算出される。
【0078】
【数3】
【0079】
このように算出された値が次回の目標濃度n62となる。すなわち2回目の目標濃度は、60.87mg/lとされる。
【0080】
ステップr4に移り、値jが23であるか否かが判定される。ここでj=1であるので、j=23でないと判定され、ステップr5へ移る。
【0081】
ステップr5では、値jが値(j+1)に更新され、ステップr2へ戻る。ここでj=1から、j=2に更新される。このようにステップr2〜r5は、ステップr4でj=23であると判定されるまで値jがステップr5で更新され、繰返される。
【0082】
たとえばj=5であるとき、ステップr2で繰返し取得されたj=1〜5のそれぞれの排水処理槽6内の排水の窒素濃度の値n41〜n45が、それぞれn41=40、n42=45、n43=50、n44=55、n45=55であったとすると、(j+1)回目すなわち6回目の処理回路71の演算および制御動作に用いられる目標濃度n66は、下記の式で算出される。
【0083】
【数4】
【0084】
このように算出された値が、次回の目標濃度となる。すなわち6回目の目標濃度は、62.89mg/lとされる。
【0085】
ステップr4でj=23であると判定されると、ステップr6に移り、処理回路71の日間平均補正動作は終了される。また次の日も、同様に日間平均補正の動作が繰返される。
【0086】
このように(j+1)回目の目標濃度の値n6(j+1)は、j回目までの実際の排水処理槽6内の排水の窒素濃度の各値n41〜n4jの和に応じて、予め定める期間である24時間内に基準濃度である60mg/l以下に保たれる条件を満たすように補正される。ただしこのように算出される目標濃度の値n6(j+1)には、上限が設けられる。本実施の形態では、たとえば前記上限値は100である。
【0087】
図7は、図1の排水処理槽6内の排水中の窒素濃度の経時的な変化の一例を示すグラフである。図7の縦軸は、排水処理槽6内の排水中に含まれる硝酸態窒素の窒素濃度(mg/l)を示し、横軸は1日の時刻1時から時刻0時までの時間を示す。窒素濃度測定器67による排水処理槽6内の排水の前記窒素濃度の測定は1時間毎に行われるので、前記窒素濃度は、図7中の実線73で示されるように階段状の経時的な変化を示す。また実線73から予測される排水処理槽6内における排水の実際の窒素濃度は、前記窒素濃度の階段状の経時的な変化に滑らかに沿った曲線74で示される。図7中の2点鎖線75は、基準濃度を示し、本実施の形態では、60mg/lである。前記実線73で示す窒素濃度は、たとえば時刻2時の測定で基準濃度を越える。しかしながら、上述したような処理回路71による一連の演算および制御動作が行われるので、原水槽26から脱窒槽27への第1系統排水の流量およびBOD源溶液の供給量が増加されて、時刻3時の測定値は時刻2時の測定よりも低減し、時間4時の測定ではさらに低減する。その後、1日の各窒素濃度の測定値の平均値を前記基準濃度以下に保つように前記日間平均補正が行われ、たとえば第3ポンプ39によって汲上げられる原水の一部がバイパス通路41を通るなどして、時刻5時以降の測定では徐々に排水処理槽6内の排水の窒素濃度が上昇するように制御される。
【0088】
本実施の形態の硝酸態窒素生物処理方法を実施する硝酸態窒素生物処理装置1は、排水中に含まれる硝酸態窒素を予め定める目標濃度以下とするために必要な、硝酸態窒素の発生量からの減少量が求められ、この減少量に対応する量のBOD源溶液を、脱窒菌に与える。これによって、前記排水中の硝酸態窒素の濃度を予め定める目標濃度以下に低減することができる。したがって排水中に含まれる硝酸態窒素の発生量に関係なく前記排水中の硝酸態窒素が常時前記目標濃度以下となるようにBOD源溶液を脱窒菌に与えるような処理方法を行う従来の処理装置と比較して、脱窒菌に与えるBOD源溶液の量を低減することができ、ランニングコストを低減することができる。またBOD源溶液の過剰な投与は、排水中の浮遊物質量(SS)の上昇につながるけれども、本硝酸態窒素生物処理装置1は、適切な量のBOD源溶液を脱窒菌に与えることができるので、排水中の浮遊物質量の上昇を抑えることができる。
【0089】
また硝酸態窒素生物処理装置1は、前記硝酸態窒素を含む排水を、脱窒菌を利用して硝酸態窒素量である窒素負荷を低減させてから排出する系統の第1系統排水とそのまま排出する系統の第2系統排水とに分け、排水全体中の窒素負荷が前記目標濃度以下に低減可能なように前記減少量が定められる。これによって、2系統に分けないで1系統で第1系統排水中に含まれる硝酸態窒素の低減によって、排水全体中の硝酸態窒素の量を前記目標濃度以下に低減することができる。したがって硝酸態窒素を含む排水全体に脱窒菌を利用して、前記排水全体の硝酸態窒素の量を目標濃度以下に低減させるような処理方法を行う処理装置と比較して、処理装置を小型化することができる。また複数の系統に分けられる排水を系統毎に脱窒菌を利用して硝酸態窒素量を低減させてから排出して排水全体中の硝酸態窒素量を前記目標濃度以下に低減するような処理方法を行う処理装置と比較して、脱窒装置5を複数設ける必要がなく、前記処理方法をより簡単に実現することができ、コストを低減することができる。
【0090】
さらに硝酸態窒素生物処理装置1では、前記目標濃度が予め設定される期間毎に基準濃度以下となるように該期間内で実際に排出された排水中の硝酸態窒素量に応じて変更される。これによって、本実施の形態のように、1時間毎に排水処理槽6内の排水中の硝酸態窒素濃度を求め、前記求めた硝酸態窒素濃度に応じて目標濃度を変更することができるので、適切な量のBOD源溶液を脱窒菌に与えることができ、かつ日間平均濃度を基準濃度以下になるように制御することができる。したがって前記目標濃度が全く変更されないような処理方法と比較して、前記予め設定される期間内に脱窒菌に与えるBOD源溶液の量を低減することができ、ランニングコストをさらに低減することができる。
【0091】
さらに前記硝酸態窒素生物処理装置1は、原水中に含まれる硝酸態窒素の濃度を前記目標濃度にまで減少させる還元処理に必要な量のBOD源溶液を脱窒槽27に供給するような制御を行う制御装置7を含むので、原水中に含まれる硝酸態窒素の濃度を前記目標濃度まで減少させるために適切な量のBOD源溶液を脱窒槽27内の脱窒菌に与えることができる。これによって硝酸態窒素生物処理装置が前記制御装置を含まないような構成と比較して、硝酸態窒素を含む排水の量に関係なく排水中の硝酸態窒素の濃度を常時前記目標濃度まで減少させるために与えるBOD源溶液の量を低減することができる。したがってランニングコストを低減することができる。
【0092】
さらに前記制御装置7によって、原水中に含まれる硝酸態窒素の濃度を前記目標濃度以下にまで減少させる還元処理に必要な量のBOD源溶液の供給を自動的に行うことができるので、無人での硝酸態窒素生物処理を実現することができる。
【0093】
上述したような硝酸態窒素生物処理方法は、硝酸態窒素を含む排水を、そのまま排出する系統と脱窒装置5を通過させる系統とに分け、脱窒装置5での脱窒処理によって排水全体の硝酸態窒素の減少量を達成させるけれども、硝酸態窒素を含む排水を系統に分けずに、1系統で、排水中に含まれる硝酸態窒素を予め定める目標濃度以下とするために必要な、硝酸態窒素の発生量からの減少量を求め、この減少量に対応する量のBOD源溶液を脱窒菌に与えるように実現されてもよい。
【0094】
また上述の硝酸態窒素生物処理方法は、目標濃度を、予め定める期間毎に基準濃度以下に保ちつつ実際の排水中の硝酸態窒素量に応じて変更するけれども、目標濃度を基準濃度以下の一定の濃度に定め、排水中に含まれる硝酸態窒素を前記目標濃度に対応する量とするために必要な前記減少量を求めて、この減少量に対応する量のBOD源溶液を脱窒菌に与えるように実現されてもよい。
【0095】
図8は本発明の実施の他の形態の硝酸態窒素生物処理方法を実施する硝酸態窒素生物処理装置111の脱窒装置112の概略的な構成を示す系統図であり、図9は図8の脱窒装置112の汚泥返送装置13で行われる汚泥に含まれる微生物のオゾン(O3)による分解のメカニズムを模式的に示す図である。本実施の形態は、上述した実施の一形態の硝酸態窒素生物処理方法を実施する硝酸態窒素生物処理装置1に類似し、対応する部分には同一の参照符を付して説明は省略する。
【0096】
本実施の形態の硝酸態窒素生物処理装置111が上述した硝酸態窒素生物処理装置1と異なるのは、脱窒装置112である。本実施の形態の脱窒装置112は、さらに汚泥返送装置113を有する。汚泥に含まれる脱窒菌および好気性菌などの微生物122は、脱窒槽27から曝気槽28を通過して沈殿槽29に運ばれる間に繁殖する。沈殿槽29に供給された時点の汚泥は、上述した微生物122を過剰に含み、そのままでは再び脱窒槽27での還元処理に利用することができない。
【0097】
上述したように沈殿槽29では、曝気槽28で処理された原水が供給され、汚泥を沈殿させた上澄みを処理水として排出する。このとき沈殿槽29で沈殿した汚泥は、汚泥返送装置113に供給される。汚泥返送装置113は、基本的には、汚泥減容装置114と、オゾン発生機115と、オゾンモニタ116とを有する。
【0098】
前記沈殿槽29で沈殿する汚泥は、沈殿槽29と汚泥減容装置114との間に介在される第1汚泥返送通路117を通過して汚泥減容装置114に供給される。第1汚泥返送通路117は、沈殿槽29と汚泥返送装置113との間で分岐しており、この第1汚泥返送通路117から分岐する第2汚泥返送通路118は、脱窒槽27に通じる。すなわち沈殿槽29で沈殿する汚泥の一部は、汚泥返送装置113を通過せず、第2汚泥返送通路118を通過して脱窒槽27内の還元反応に充分な量となるように直接脱窒槽27に返送される。
【0099】
汚泥返送装置113は、沈殿槽29で沈殿する汚泥に含まれる脱窒菌および好気性菌などの微生物122をオゾンによって分解し、分解された汚泥を脱窒槽27にBOD源溶液の一部として供給するための装置である。すなわち脱窒槽27から曝気槽28を経て沈殿槽29に運ばれた汚泥にオゾンを作用させることによって前記汚泥に含まれる過剰に繁殖した微生物122を分解し、分解された微生物122を脱窒槽27の汚泥に含まれる脱窒菌に餌として供給する。
【0100】
汚泥減容装置114では、まず第1汚泥返送通路117を介して供給される沈殿された汚泥に塩酸(HCl)を加えることによって、pH=3となるように調節を行う。上述のpH調節後、前記汚泥にオゾン発生器115から供給されるオゾンを作用させる。汚泥にオゾンを作用させると、図9に示されるように前記汚泥に含まれる微生物122の細胞壁123がオゾンの酸化力によって破壊される。これによって微生物122は死滅し、細胞質124が破壊された細胞壁123外に飛出す。このように殺菌された微生物122を含む汚泥は、生分解性が向上される。
【0101】
このようなオゾンによる殺菌後の汚泥は、汚泥減容装置114および脱窒槽27の間に介在される第3汚泥返送通路119を通過して、脱窒槽27に供給される。このように脱窒槽27に供給された前記汚泥は、BOD源として再利用され、脱窒槽27内の汚泥に含まれる脱窒菌によって食され、二酸化炭素ガスなどに分解される。その結果、余剰に繁殖した微生物を含む汚泥を廃棄することなく、再利用することができる。
【0102】
上述したような微生物のオゾン処理は、沈殿槽29から汚泥返送装置113に供給される沈殿された汚泥全てについて行う必要はない。すなわち汚泥全体の一部についてオゾンを作用させれば、汚泥減容装置114内の汚泥全体にオゾン酸化を連鎖的に起こすことができるので、汚泥全体に含まれる微生物を死滅させることができる。本実施の形態では、オゾン処理は上述のように汚泥返送装置113に供給される汚泥全体の約1.1%について行われる。すなわちたとえば沈殿槽29から第1汚泥返送通路117を介して汚泥減容装置114に供給される汚泥の量が約390m3/Hであるとすると、約4.5m3/Hの量の汚泥についてオゾン処理が行われる。
【0103】
また第1汚泥返送通路117の第2汚泥返送通路118の分岐点と汚泥減容装置114との間には、第6流量計120が介在される。また前記第2汚泥返送通路118には、第7流量計121が介在される。これらの第6および第7流量計120,121は、それぞれ第1汚泥返送通路117の前記分岐点より汚泥減容装置114側、および第2汚泥返送通路118を通過する沈殿槽29で沈殿された汚泥の流量を測定し、前記流量を指示するとともに、制御装置7に前記流量を表す出力信号を与える。
【0104】
汚泥減容装置114に供給されるオゾンは、汚泥返送装置113に流入する汚泥の量に応じてオゾン発生機115によって発生される。すなわちオゾン発生機115によるオゾンの発生量は、上述した第6流量計120からの出力をもとに、制御装置7によって自動的に制御される。なお、オゾン発生機115でどれだけのオゾンを発生したかは、監視者がいる場合はオゾンモニタ116で監視することができ、この場合は監視者がオゾンモニタ116を監視しながらオゾン発生機115によって発生されるオゾンの発生量を調節することも可能である。
【0105】
このように沈殿槽29で沈殿した汚泥に含まれる微生物をオゾン処理して脱窒槽27に返送し餌として利用することによって、前記沈殿槽29で沈殿する汚泥を廃棄せずに再利用することができる。したがって硝酸態窒素生物処理装置が前記汚泥返送装置を含まないような構成と比較して、沈殿槽29で沈殿する汚泥を無駄にすることなく利用することができ、産業廃棄物の発生を防止することができる。たとえばBOD源溶液がメタノールである場合には、BOD源溶液供給装置31からの脱窒槽27へのBOD源溶液の供給を約10%節約することが可能である。
【0106】
【実施例】
図1に示す硝酸態窒素生物処理装置1を用いて、図3、図4および図6に示す硝酸態窒素生物処理方法で排水処理を実施した。その結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
表1には通常排水時および渇水時のそれぞれにおける第1原水供給通路38を通過する脱窒素される前の第1系統排水、処理水排出路48を通過する脱窒素された後の第1系統排水、第2および第3排出路58,62をそれぞれ通過する第2および第3系統排水の合計、および放流路66を通過する排水である放流排水のそれぞれの流量(m3/H)、窒素濃度(mg/l)、および窒素負荷(kg/H)が示されている。前記通常排水時とは、第3系統排水に含まれる雨水などの流量が平均的な量であるときを指す。また渇水時とは、第3系統排水に含まれる雨水などの流量が平均的な量よりも著しく低いときを指す。
【0109】
表1に示されるように通常排水時には、第1系統排水の流量は320m3/Hであり、第2および第3系統排水の流量の合計は858m3/Hである。第1系統排水中に含まれる硝酸態窒素の窒素濃度は、脱窒槽27を通過して還元処理されることによって215.6mg/lから162.2mg/lに低減される。すなわち第1系統排水に含まれる硝酸態窒素の量を表す窒素負荷は、脱窒槽27での還元処理によって69.0kg/Hから51.9kg/Hに低減する。これによって第1〜第3系統排水が流入する排水処理槽6から排出される放流排水中に含まれる硝酸態窒素の窒素濃度は、60mg/lとなり、前記基準濃度を達成する。
【0110】
第1系統排水を脱窒槽27によって還元処理を行わなかったと仮定した場合の放流排水中に含まれる硝酸態窒素の窒素濃度を算出すると、74.5mg/lとなる。また同様にこの場合の放流排水の窒素負荷を算出すると87.8kg/Hであり、したがって通常排水時における脱窒槽27の処理能力を表す窒素削減量は、次のように算出される。
(87.8−70.7)×24≒400(kg/day)
【0111】
すなわち脱窒槽27は、通常排水時には1日で約400kgの窒素を除去する能力を有する。
【0112】
また渇水時には、第3系統排水の流量が低減する。これによって第2および第3系統排水の流量の合計は、通常排水時には858m3/Hであったのに対して、渇水時には160m3/Hにまで低減する。逆に硝酸態窒素を含まない排水である第3系統排水の流量が低減するので、第2および第3系統排水を合せた排水中の硝酸態窒素の窒素濃度は増大する。すなわち通常排水時には21.9mg/lであったのに対して、渇水時には118mg/lとなる。また渇水時の第2および第3系統排水を合せた排水の窒素負荷は、通常排水時と同じ18.8kg/Hであった。このとき排水処理槽6に流入する排水全体の流量は、通常排水時と比較して1178m3/Hから480m3 /Hにまで低減している。
【0113】
通常排水時と同様に、第1系統排水が脱窒槽27によって還元処理されずに排水処理槽6に流入したと仮定したときの放流排水中に含まれる硝酸態窒素の窒素濃度を算出すると、182.9mg/lとなる。またこの場合の放流排水の窒素負荷は、通常排水時と同様に87.8kg/Hとなる。上述の算出された放流排水の窒素濃度を通常排水時と同様に60mg/lにまで低減するためには、通常排水時と比較して、より多くの量の硝酸態窒素を除去しなければならない。このため表1に示される渇水時の脱窒槽では、通常排水時に比較してBOD源溶液をより多く供給し、脱窒菌による還元処理能力をより高めている。すなわち、渇水時には脱窒槽27の還元処理によって、第1系統排水中に含まれる硝酸態窒素の窒素濃度が、215.6mg/lから、31.3mg/lにまで低減される。これによって渇水時においても、基準濃度が達成される。
【0114】
この渇水時における脱窒槽27の処理能力を表す窒素削減量は、下記のように求められる。
(87.8−28.8)×24≒1416(kg/day)
【0115】
すなわち脱窒槽27は、渇水時には、1日で約1416kgの窒素を除去する能力を有する。
【0116】
表1に示される渇水時の脱窒槽27の処理能力は、脱窒槽27の最大処理能力であり、このとき第1系統排水中に含まれる硝酸態窒素のうちどれだけを除去することができたかは、下記の式で算出される。
(215.6−31.3)/215.6×100≒85(%)
【0117】
すなわち脱窒槽27は、最大の処理能力を発揮する渇水時には、第1系統排水中に含まれる硝酸態窒素の約85%を除去することができる。
【0118】
本発明は、上述した実施の各形態に限定されることなく、特許請求の範囲を逸脱することのない限り、変更は可能である。本発明の硝酸態窒素生物処理方法および装置は、硝酸態窒素生物処理装置に流入する排水中に含まれる窒素を予め硝酸態窒素とするような装置と組合せて実現することも可能である。これによって排水中に含まれる窒素が、たとえばアンモニウムイオン(NH4 + )である場合など、硝酸態窒素以外の形態であるような排水についても、本発明の硝酸態窒素生物処理方法および装置を好適に実施することができる。
【0119】
また原水槽26を一旦空にする必要があるときには、バイパス通路41を利用して、第1弁43を完全に閉じ、かつ第2弁44を開くことによって、原水槽26内の全ての原水を第3ポンプ39によって汲上げてバイパス通路41および第1排出路21を通過させて、排水処理槽6へ排出することも可能である。
【0120】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明によれば、排水中に含まれる硝酸態窒素の発生量に応じて排水中から適切な量の窒素を除去して、排水の窒素濃度を予め定める目標濃度以下に低減することができる。したがって排水中に含まれる硝酸態窒素の発生量に関係なく前記排水中の硝酸態窒素が常時前記目標濃度以下となるように栄養源溶液を微生物に与えるような従来の処理方法と比較して、微生物に与える栄養源溶液の量を低減することができ、ランニングコストを低減することができる。
また、硝酸態窒素を含む排水を2系統に分けないで1系統で前記微生物を利用して硝酸態窒素量を低減させる場合に比べて、処理装置を小型化することができる。また複数の系統に分けられる排水を系統毎に微生物を利用して硝酸態窒素量を低減させてから排出して排水全体中の硝酸態窒素量を前記目標濃度以下に低減するような処理方法と比較して、硝酸態窒素生物処理方法を実施する装置を複数設ける必要がなく、前記処理方法をより簡単に実現することができ、コストを低減することができる。
【0121】
請求項2記載の発明によれば、脱窒処理後に排水から分離される余剰に繁殖した微生物を含む汚泥を、オゾンで分解して脱窒に必要な栄養源溶液の一部として再利用することができる。
【0122】
請求項3記載の本発明によれば、適切な量の栄養源溶液を微生物に与えることができ、かつ日間平均濃度を基準濃度以下になるように制御することができる。したがって前記目標濃度が全く変更されないような処理方法と比較して、前記予め設定される期間内に微生物に与える栄養源溶液の量を低減することができ、ランニングコストをさらに低減することができる。
【0123】
請求項4記載の本発明によれば、排水中に含まれる硝酸態窒素を予め定める目標濃度以下となるように前記微生物を利用して窒素ガスに還元して除去するような処理を行うことができるとともに排水中に含まれる硝酸態窒素の濃度を前記目標濃度まで減少させるために適切な量の栄養源溶液を脱窒槽内の微生物に与えることができる。これによって、硝酸態窒素を含む排水の量に関係なく排水中の硝酸態窒素の濃度を常時前記目標濃度まで減少させるために与える栄養源溶液の量を低減することができる。したがってランニングコストを低減することができる。またさらに無人での硝酸態窒素生物処理を実現することができる。
【0124】
請求項5記載の本発明によれば、前記沈殿槽で沈殿する汚泥を廃棄せずに再利用することができる。したがって硝酸態窒素生物処理装置が前記汚泥返送装置を含まないような構成と比較して、産業廃棄物の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態の硝酸態窒素生物処理方法を実施する硝酸態窒素生物処理装置1の概略的な構成を示す系統図である。
【図2】図1の硝酸態窒素生物処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図1の処理回路71の演算および制御動作を示すフローチャートである。
【図4】図3のステップs2の具体的な動作を示すフローチャートである。
【図5】図1の誘導モータ55に制御指令65として与えられる周波数の値fiと、誘導モータ55によってBOD源溶液供給ポンプ52を介して汲上げられるBOD源溶液の流量との関係を示すグラフである。
【図6】図1の処理回路71の日間平均補正の動作を示すフローチャートである。
【図7】図1の排水処理槽6内の排水中の窒素濃度の経時的な変化の一例を示すグラフである。
【図8】本発明の実施の他の形態の硝酸態窒素生物処理方法を実施する硝酸態窒素生物処理装置111の脱窒装置112の概略的な構成を示す系統図である。
【図9】図8の汚泥返送装置113における微生物122の分解のメカニズムを模式的に示す図である。
【符号の説明】
1,111 硝酸態窒素生物処理装置
5,112 脱窒装置
6 排水処理槽
7 制御装置
21 第1排出路
26 原水槽
27 脱窒槽
28 曝気槽
29 沈殿槽
31 BOD源溶液供給装置
67 窒素濃度測定器
113 汚泥返送装置
Claims (5)
- 排水中に含まれる硝酸態窒素を、嫌気状態で栄養源溶液を餌に硝酸内の酸素を用いて呼吸する微生物を利用して、窒素ガスに還元して除去し、予め定める目標濃度以下に低減させるための処理方法であって、
排水および硝酸態窒素の発生量をそれぞれ求め、
排水中に含まれる硝酸態窒素を、該目標濃度に対応する量とするために必要な、該発生量からの減少量を算出し、
算出された減少量に対応する量の栄養源溶液を微生物に餌として与えるとともに、
前記硝酸態窒素を含む排水を、そのまま排出する系統と、前記微生物を利用して硝酸態窒素量を低減させてから排出する系統とに分け、
前記減少量は、排水全体中の硝酸態窒素量を前記目標濃度以下に低減可能なように定められることを特徴とする硝酸態窒素生物処理方法。 - 前記微生物を利用して硝酸態窒素量を低減させてから排出する系統では、
前記栄養源溶液を餌として与えられる微生物を含む汚泥を沈殿させて排出する排水から分離した後、汚泥にオゾンを作用させて殺菌し、栄養源溶液の一部として供給することを特徴とする請求項1記載の硝酸態窒素生物処理方法。 - 前記目標濃度を、予め設定される期間毎に基準濃度以下に保つ条件を満たすように、該期間内で、実際に排出された排水中の硝酸態窒素量に応じて変更することを特徴とする請求項1または2記載の硝酸態窒素生物処理方法。
- 排水中に含まれる硝酸態窒素を、嫌気状態で栄養源溶液を餌に硝酸内の酸素を用いて呼吸する微生物を利用して、窒素ガスに還元して除去し、予め定める目標濃度以下に低減させるための処理装置であって、
発生される硝酸態窒素を含む排水の一部を、原水として受入れる原水槽と、
原水槽から原水が供給され、該微生物による窒素の還元処理が行われる脱窒槽と、
脱窒槽で還元処理された原水が供給され、空気が吹込まれる曝気槽と、
曝気槽で処理された原水が供給され、汚泥を沈殿させた上澄みを処理水として排出する沈殿槽と、
原水槽に原水として受入れられ、脱窒槽で還元処理されて沈殿槽から排出される上澄み処理水、および原水槽には原水として受入れられない硝酸態窒素を含む排水の残部が流入する排水処理槽と、
排水処理槽から排出される排水中に含まれる硝酸態窒素の濃度を、該目標濃度以下に低減させる還元処理に必要な栄養源溶液を脱窒槽に供給するように制御する制御装置とを、含むことを特徴とする硝酸態窒素生物処理装置。 - 前記沈殿槽で沈殿する汚泥を、オゾンによって分解し、前記脱窒槽に栄養源溶液の一部として供給する汚泥返送装置をさらに含むことを特徴とする請求項4記載の硝酸態窒素生物処理装置。
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