JP4882181B2 - 脱窒方法および装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は硝酸および/または亜硝酸を含有する原水(以下、NOx−N含有水という場合がある)を複数の脱窒工程で脱窒する方法、特に汚泥を減容化することができる脱窒方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アンモニア性または有機性窒素化合物を含む排水を処理する方法として、生物学的硝化脱窒処理法がある。この方法は活性汚泥により排水中のCOD,BOD成分を分解するとともに、有機性窒素化合物をアンモニア性窒素とし、アンモニア性窒素を硝化細菌により硝酸性または亜硝酸性窒素に硝化(酸化)した後、脱窒細菌により窒素ガスに還元して脱窒する方法である。この処理法では、脱窒槽を前段に設け、硝化液と分離汚泥を脱窒槽に返送して原水と混合し、脱窒を行うと同時にBOD成分を分解する方法も行われている。
【0003】
このような生物学的硝化脱窒法では、脱窒工程において脱窒細菌の作用により還元して窒素ガスに転換する際、脱窒細菌の硝酸呼吸に必要な電子供与体を添加する必要がある。この電子供与体としてメタノールのような基質を添加すると、処理コストが高くなるとともに、余剰汚泥が増加する。
【0004】
このような点を解決する方法として、脱窒処理にオゾン処理を組み込むことにより、余剰汚泥の発生量を削減できるとともに、メタノールなどのBOD源の使用量を低減できる排水の生物学的窒素除去方法が知られている。
【0005】
図2は脱窒工程とオゾン処理とを組み合せた従来の脱窒方法の系統図である。図2において、1は脱窒槽、2は曝気槽、3は沈殿槽等の固液分離装置、4はオゾン処理装置等の改質装置、31は原水注入路である。
図2において、硝酸および/または亜硝酸を含有する原水を原水注入路31から脱窒槽1に注入して槽内の活性汚泥と混合し、嫌気状態を維持しながら脱窒する。生成するガスは排ガス路15から排出する。
【0006】
脱窒槽1の混合液12は移送路13から曝気槽2に移送し、給気路18から空気を供給し、曝気装置17から曝気し、残留する有機物を分解する。曝気槽2の混合液26を移送路19から固液分離装置3に送って固液分離する。そして分離液を処理水として処理水取出路21から取り出し、分離汚泥の一部を汚泥返送路22から返送汚泥として脱窒槽1に返送し、他の一部を引抜汚泥として引抜路23から改質装置4に引き抜いて易生物分解性に改質処理を行い、改質汚泥を改質汚泥供給路25から脱窒槽1に供給する。改質汚泥を供給するだけでは脱窒細菌の硝酸呼吸に必要な電子供与体が不足する場合は、電子供与体供給路14からメタノールなどの電子供与体を脱窒槽1に供給する。余剰汚泥が発生する場合は余剰汚泥排出路24から系外に排出する。
【0007】
上記従来の方法では、改質処理した改質汚泥は生分解性がよいため、改質汚泥を改質汚泥供給路25から脱窒槽1に導入して脱窒工程に用いると、脱窒細菌の硝酸呼吸に必要な電子供与体として利用される。このためメタノール等の有機物を系外から添加することなく脱窒工程を行うことも可能であり、不足する場合にのみ系外から添加すればよい。これにより処理コストが低下するとともに、活性汚泥を減容化することができ、場合によっては余剰汚泥を実質的にゼロにすることもできる。
【0008】
しかしながら上記従来の方法では、減容化率を大きくするために多量の活性汚泥を改質処理する場合、脱窒槽1の汚泥滞留時間(SRT)が短くなり、処理水質が低下する場合がある。
SRTを長くする方法としては、脱窒槽1の容量を増加させることが簡単であるが、敷地面積や建設費の増加を招き現実的でない。脱窒槽1の容量を増加させずにSRTを長くするには、槽内の汚泥濃度を高くできればよい。しかし、汚泥濃度を高めるほど固液分離装置3での固液分離が難しくなり、汚泥性状によっては汚泥のキャリーオーバーが生じ、かえって処理水質を悪くする場合がある。従って、経済的に大きな負担を強いることなく、また固液分離装置3における安定性を犠牲にすることなく、脱窒槽SRTを長くする方法が求められている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、活性汚泥を減容化することができ、かつ脱窒槽の容量を増加させることなく汚泥滞留時間を長くすることができ、これにより高水質の処理水を低コストで安定して得ることができるとともに、汚泥の分離障害も生じない脱窒方法および装置を提案することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は次の脱窒方法および装置である。
(1) 硝酸および/または亜硝酸を含有する原水を、脱窒細菌を含む活性汚泥で生物処理する脱窒方法であって、
原水を電子供与体の存在下に活性汚泥と混合して脱窒を行いながら、順次通過するように設けられた複数の脱窒工程と、
原水を複数の脱窒工程に分割注入する原水分割注入工程と、
後段の脱窒工程の混合液を分離汚泥と分離液とに固液分離する固液分離工程と、
分離汚泥の一部を第1段の脱窒工程に返送する汚泥返送工程と、
脱窒工程の混合液または固液分離工程で固液分離した分離汚泥の一部を易生物分解性に改質し、改質汚泥を第1段の脱窒工程に供給する改質工程とを含み、
各脱窒工程の活性汚泥を分割注入される原水により順次希釈して、前段から後段にかけて汚泥濃度に勾配を形成することにより、希釈された混合液を固液分離工程に導入して固液分離し、脱窒工程全体として汚泥保持量を増加させSRTを長くして脱窒することを特徴とする脱窒方法。
(2) 硝酸および/または亜硝酸を含有する原水を、脱窒細菌を含む活性汚泥で生物処理する脱窒方法であって、
原水を電子供与体の存在下に活性汚泥と混合して脱窒を行いながら、順次通過するように設けられた複数の脱窒工程と、
原水を複数の脱窒工程に分割注入する原水分割注入工程と、
最終の脱窒工程の混合液を曝気する曝気工程と、
曝気工程の混合液を分離汚泥と分離液とに固液分離する固液分離工程と、
分離汚泥の一部を第1段の脱窒工程に返送する汚泥返送工程と、
脱窒工程もしくは曝気工程の混合液、または固液分離工程で固液分離した分離汚泥の一部を易生物分解性に改質し、改質汚泥を第1段の脱窒工程に供給する改質工程とを含み、
各脱窒工程の活性汚泥を分割注入される原水により順次希釈して、前段から後段にかけて汚泥濃度に勾配を形成することにより、希釈された混合液を曝気工程および固液分離工程に導入して曝気および固液分離し、脱窒工程全体として汚泥保持量を増加させSRTを長くして脱窒することを特徴とする脱窒方法。
(3) 硝酸および/または亜硝酸を含有する原水を、脱窒細菌を含む活性汚泥で生物処理する脱窒装置であって、
原水を電子供与体の存在下に活性汚泥と混合して脱窒を行いながら、順次通過するように設けられた複数の脱窒槽と、
原水を複数の脱窒槽に分割注入する原水分割注入路と、
後段の脱窒槽の混合液を分離汚泥と分離液とに固液分離する固液分離装置と、
分離汚泥の一部を第1段の脱窒槽に返送する汚泥返送路と、
脱窒槽の混合液または固液分離装置で固液分離した分離汚泥の一部を易生物分解性に改質し、改質汚泥を第1段の脱窒槽に供給する改質装置とを含み、
各脱窒槽の活性汚泥が分割注入される原水により順次希釈されて、前段から後段にかけて汚泥濃度に勾配を形成することにより、希釈された混合液が固液分離装置に導入されて固液分離され、脱窒槽全体として汚泥保持量が増加しSRTを長くして脱窒されるように構成されていることを特徴とする脱窒装置。
(4) 硝酸および/または亜硝酸を含有する原水を、脱窒細菌を含む活性汚泥で生物処理する脱窒装置であって、
原水を電子供与体の存在下に活性汚泥と混合して脱窒を行いながら、順次通過するように設けられた複数の脱窒槽と、
原水を複数の脱窒槽に分割注入する原水分割注入路と、
最終の脱窒槽の混合液を曝気する曝気槽と、
曝気槽の混合液を分離汚泥と分離液とに固液分離する固液分離装置と、
分離汚泥の一部を第1段の脱窒槽に返送する汚泥返送路と、
脱窒槽もしくは曝気槽の混合液、または固液分離装置で固液分離した分離汚泥の一部を易生物分解性に改質し、改質汚泥を第1段の脱窒槽に供給する改質装置とを含み、
各脱窒槽の活性汚泥が分割注入される原水により順次希釈されて、前段から後段にかけて汚泥濃度に勾配を形成することにより、希釈された混合液が曝気装置および固液分離装置に導入されて曝気および固液分離され、脱窒槽全体として汚泥保持量が増加しSRTを長くして脱窒されるように構成されていることを特徴とする脱窒装置。
【0011】
本発明の処理対象とする原水は硝酸および/または亜硝酸を含有する原水(NOx−N含有水)であり、このほか有機物、その他の不純物を含んでいてもよい。原水中に有機性窒素化合物またはアンモニア性窒素化合物が含まれている場合は、有機物分解工程を設けて好気性または嫌気性下に処理し、活性汚泥により原水中のCOD、BOD成分を分解するとともに、有機性窒素化合物をアンモニア性窒素とし、硝化工程を設けてアンモニア性窒素を硝化細菌により好気性下に硝酸性または亜硝酸性窒素に硝化(酸化)して、本発明に供することができる。有機物分解工程および硝化工程は従来のものと同様の方法を採用することができる。
【0012】
本発明における脱窒工程では、上記のようなNOx−N含有水および電子供与体を脱窒槽に導入して活性汚泥と接触させ、嫌気状態を維持して緩速攪拌を行う処理により、脱窒細菌の作用により硝酸性または亜硝酸性窒素を窒素ガスに変換して脱窒する。電子供与体としては、改質工程で改質した改質汚泥中の有機物を利用することができるが、不足する場合はメタノールなどの有機物を添加することができる。
【0013】
本発明における脱窒槽は、NOx−N含有水を活性汚泥と混合して脱窒を行いながら順次通過するように、複数の脱窒槽が直列に連結して設けられる。各脱窒槽は独立したものでもよいが、1つの槽を隔壁で区画して形成することができる。この場合は槽内の混合液は隔壁の上部を通過するようにするのが好ましいが、他の部分を通過するようにしてもよい。
【0014】
本発明における原水分割注入路は複数の脱窒槽にNOx−N含有水を分割注入するように設けられる。この場合第1段から最終段の脱窒槽のそれぞれに分割注入するように各脱窒槽に設けるのが好ましいが、一部の脱窒槽への注入を省略するようにしてもよい。
脱窒槽の後段には曝気槽を設け、残留する有機物を除去するのが好ましいが、省略することもできる。
【0015】
本発明における固液分離装置は脱窒槽の混合液または曝気槽の混合液を固液分離し、分離液を処理水として排出し、分離汚泥の少なくとも一部を第1段の脱窒槽へ返送するように構成する。固液分離装置としては通常沈殿槽を採用するが、浸漬膜分離装置、遠心分離装置などを使用することもできる。浸漬膜分離装置としては、具体的には脱窒槽または曝気槽に分離膜を浸漬して分離膜の透過水を処理水として取り出す装置があげられる。
【0016】
本発明では、このような脱窒処理における処理系からの活性汚泥(生物汚泥)の一部を引き抜き、この引抜汚泥を易生物分解性に改質して改質汚泥を第1段の脱窒工程に供給する改質処理を行う。活性汚泥を引き抜く場合、固液分離装置で分離された分離汚泥の一部を引き抜くのが好ましいが、脱窒槽または曝気槽から混合液を引き抜いてもよい。分離汚泥から引き抜く場合、余剰汚泥として排出される部分の一部または全部を引抜汚泥として引き抜くことができるが、余剰汚泥に加えて、返送汚泥として脱窒槽に返送される返送汚泥の一部をさらに引き抜いて改質処理することもできる。この場合系外に排出する余剰汚泥の発生量をより少なくし、場合によってはゼロにすることもできる。脱窒槽から混合液を引き抜く場合、後段の脱窒槽から引き抜くのが好ましい。
【0017】
引抜汚泥を生物が分解し易い性状に改質する改質処理方法としては、引抜汚泥に薬剤および/またはエネルギーを加えて易生物分解性に改質する方法であれば任意の方法を採用することができる。例えば、オゾン処理による改質処理、過酸化水素処理による改質処理、酸処理による改質処理、アルカリ処理による改質処理、加熱処理による改質処理、高圧パルス放電処理、ボールミル、コロイドミル等のミルによる磨砕処理、これらを組合せた改質処理等を採用することができる。これらの中ではオゾン処理による改質処理が、処理操作が簡単かつ処理効率が高いため好ましい。
【0018】
改質処理としてのオゾン処理は、脱窒処理系から引き抜いた引抜汚泥をオゾンと接触させればよく、オゾンの酸化作用により汚泥は易生物分解性に改質される。オゾン処理はpH5以下の酸性領域で行うと酸化分解効率が高くなる。このときのpHの調整は、硫酸、塩酸または硝酸などの無機酸をpH調整剤として活性汚泥に添加するか、活性汚泥を酸発酵処理して調整するか、あるいはこれらを組合せて行うのが好ましい。pH調整剤を添加する場合、pHは3〜4に調整するのが好ましく、酸発酵処理を行う場合、pHは4〜5となるように行うのが好ましい。
【0019】
オゾン処理は、引抜汚泥または酸発酵処理液をそのまま、または必要により遠心分離機などで濃縮した後pH5以下に調整し、オゾンと接触させることにより行うことができる。接触方法としては、オゾン処理槽に汚泥を導入してオゾンを吹込む方法、機械攪拌による方法、充填層を利用する方法などが採用できる。オゾンガスとしてはオゾン化酸素、オゾン化空気などのオゾン含有ガスが使用できる。オゾンの使用量は処理汚泥あたり0.002〜0.1g−O3/g−SS、好ましくは0.03〜0.08g−O3/g−SSとするのが望ましい。オゾン処理により活性汚泥は酸化分解されて、BOD成分に変換される。
【0020】
改質処理としての過酸化水素処理は脱窒処理系から引き抜いた引抜汚泥を改質槽に導き、過酸化水素を混合する。過酸化水素の使用量は0.001〜0.2g−H22/g−SSとする。このとき引抜汚泥に塩酸などの酸を添加してpH3〜5とすることが好ましく、この場合、過酸化水素の使用量は0.001〜0.07g−H22/g−SSとするのが好ましい。反応を促進するために、加温したり、第1鉄イオンなどの触媒を添加してもよい。
【0021】
改質方法としての酸処理では、脱窒処理系から引き抜いた引抜汚泥を改質槽に導き、塩酸、硫酸などの鉱酸を加え、pH2.5以下、好ましくはpH1〜2の酸性条件下で所定時間滞留させればよい。滞留時間としては、例えば5〜24時間とする。この際、汚泥を加熱、例えば50〜100℃に加熱すると改質が促進されるので好ましい。このような酸による処理により汚泥は易生物分解性となり、脱窒槽に戻すことにより容易に分解除去できるようになる。
【0022】
また、汚泥の改質方法としてのアルカリ処理では、脱窒処理系から引き抜いた引抜汚泥を改質槽に導き、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを汚泥に対して0.1〜1重量%加え、所定時間滞留させればよい。滞留時間は0.5〜2時間程度で汚泥は易生物分解性に改質される。この際、汚泥を加熱し、例えば50〜100℃に加熱すると改質が促進されるので好ましい。
【0023】
改質方法としての加熱処理は、加熱処理単独で行うこともできるが、酸処理またはアルカリ処理と組合せて行うのが好ましい。加熱処理単独で行う場合は、例えば温度70〜100℃、滞留時間2〜3時間とすることができる。
【0024】
高電圧のパルス放電処理は、電極間隔3〜10mm、好ましくは4〜8mmのタングステン/トリウム合金等の+極と、ステンレス鋼等の−極間に汚泥を存在させ、印加電圧10〜50kV、好ましくは20〜40kV、パルス間隔20〜80Hz、好ましくは40〜60Hzでパルス放電を行い、汚泥は順次循環させながら処理を行うことができる。
【0025】
このようにして易生物分解性に改質した改質汚泥は、第1段の脱窒槽に導入し、脱窒細菌の硝酸呼吸に必要な電子供与体として利用する。
【0026】
本発明では、原水分割注入路からNOx−N含有水を複数の脱窒槽に分割注入し、活性汚泥と混合して脱窒を行いながら、混合液を順次前段の脱窒槽から後段の脱窒槽に通過させ、後段の混合液を固液分離装置で固液分離する。そして分離液を処理水として取り出し、分離汚泥の一部を汚泥返送路から返送汚泥として第1段の脱窒槽に返送し、他の一部を引抜汚泥として改質装置に引き抜いて易生物分解性に改質処理を行い、改質汚泥を前段の脱窒槽に供給する。
【0027】
上記の処理では前段の脱窒槽に供給された改質汚泥が第1段から後段の脱窒槽を通過する過程で、改質汚泥中の有機物が電子供与体として利用され、各脱窒槽に分注される原水中のNOx−Nが効率よく脱窒される。このように改質汚泥中の有機物が電子供与体として利用されて分解されるので、改質汚泥が減容化する。改質汚泥の分解により活性汚泥は減容し、引抜汚泥量を増殖量より多くすることにより減容化率は高くなり、余剰汚泥として排出する量を実質的にゼロとすることもできる。
【0028】
また第1段の脱窒槽に改質汚泥および返送汚泥が導入され、かつ各脱窒槽の活性汚泥は分注される原水により順次希釈されるので、前段から後段にかけて汚泥濃度に勾配が形成される。この場合、脱窒槽全体として汚泥保持量を高くしても、後工程の曝気工程や固液分離工程には希釈された混合液が導入されることになるので、固液分離障害は抑制される。従って、脱窒槽全体としては汚泥保持量を増加させてSRTを長くすることができるので、高水質の処理水を得ることができるとともに、固液分離障害なども生じない。
【0029】
このように本発明では脱窒槽を複数段に分割し、NOx−N含有水を各脱窒槽に分注して脱窒しているので、脱窒槽容量を増やさずかつ固液分離装置の固形物負荷を増やさずに脱窒槽SRTを長くすることができる。また返送汚泥および改質汚泥を第1段の脱窒槽に戻しているので、従来の方法と比較して、最終脱窒槽以外のMLSS濃度は増加し、かつ最終脱窒槽のMLSS濃度は同程度とすることができる。従って、脱窒槽全体での汚泥保持量を増加させることができ、SRTを長くして高水質の処理水を得ることができるとともに、固液分離装置への固形物負荷は増加せず、固液分離障害なども生じない。
【0030】
分割段数が多いほど脱窒槽全体での活性汚泥保持量は増加するが、装置の煩雑さなどを考慮して、通常2〜5段程度がよい。処理するNOx−N含有水量が少ない場合などでは、前段の一部の脱窒槽への分割注入を省略することもできる。
【0031】
本発明の処理において、改質処理汚泥は直列に連結された複数の脱窒槽において、その第1段の脱窒槽に全量注入する。
本発明ではNOx−N含有水と返送汚泥によって脱窒槽内の汚泥濃度に勾配を形成して槽内の保有汚泥量を高めることを意図しているので、脱窒処理の方式に浮遊法を採用する方が好ましく、これに微生物が付着増殖できる担体を添加すれば、さらに保有汚泥量を高めることができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、改質汚泥および返送汚泥を第1段の脱窒槽に供給するとともに、原水を複数の脱窒槽に分注し、各脱窒工程の活性汚泥を分割注入される原水により順次希釈して、前段から後段にかけて汚泥濃度に勾配を形成することにより、希釈された混合液を固液分離工程に導入して固液分離し、脱窒工程全体として汚泥保持量を増加させ汚泥滞留時間を長くして脱窒するようにしたので、活性汚泥を減容化することができ、かつ脱窒槽の容量を増加させることなく汚泥滞留時間を長くすることができ、これにより高水質の処理水を低コストで安定して得ることができるとともに、汚泥の分離障害も生じない。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は実施形態の脱窒装置を示すフロー図であり、図2と同符号は同一または相当部分を示す。
【0034】
図1において、1a、1b…は脱窒槽、2は曝気槽、3は沈殿槽等の固液分離装置、4はオゾン処理装置等の改質装置、5は原水分割注入路である。
図1において、複数の脱窒槽1a、1b、1c、1dが隔壁11a、11b、11cによって区画され、混合液12が隔壁11a、11b、11cの上部を越えて流れるように直列に連結して設けられており、最終段の脱窒槽1dから移送路13が曝気槽2に連絡している。原水分割注入路5は各脱窒槽1a、1b…に連絡し、それぞれに同一の原水を分注するようにされている 。また各脱窒槽1a、1b…には電子供与体供給路14a、14b…が連絡している。また各脱窒槽1a、1b…には攪拌機が設けられているが、図示は省略されている。15は排ガス路である。
【0035】
曝気槽2には曝気装置17が設けられ、給気路18から空気を供給するように連絡している。曝気槽2から移送路19が固液分離装置3に連絡している。固液分離装置3には上部に分離液を処理水として取り出す処理水取出路21が連絡し、下部から分離汚泥を返送汚泥として第1段の脱窒槽1aに返送する汚泥返送路22および引抜汚泥として改質装置4に引き抜く引抜路23が連絡し、さらに必要により余剰汚泥として系外に排出する余剰汚泥排出路24が連絡する。改質装置4は引抜汚泥をオゾン処理により易生物分解性に改質し、改質汚泥を改質汚泥供給路25から第1段の脱窒槽1aに供給するように連絡している。
【0036】
上記の装置による脱窒方法は、硝酸および/または亜硝酸を含有する原水を原水分割注入路5からそれぞれの脱窒槽1a、1b…に分割注入し、槽内の活性汚泥と混合し、嫌気状態を維持しながら脱窒する。生成するガスは排ガス路15から排出する。
原水は脱窒槽1a、1b…容量に応じて均等に分割注入するのが好ましいが、分注量に差を設けることもできる。このようにして脱窒を行いながら、槽内の混合液12を順次前段の脱窒槽1a側から後段の脱窒槽1d側に通過させ、最終段の脱窒槽1dの混合液12を曝気槽2に導入する。
【0037】
曝気槽2では給気路18から空気を供給し、曝気装置17から曝気し、残留する有機物を分解する。曝気槽2の混合液26を移送路19から固液分離装置3に送って固液分離する。そして分離液を処理水として処理水取出路21から取り出し、分離汚泥の一部を汚泥返送路22から返送汚泥として第1段の脱窒槽1aに返送し、他の一部を引抜汚泥として引抜路23から改質装置4に引き抜いて易生物分解性に改質処理を行い、改質汚泥を改質汚泥供給路25から第1段の脱窒槽1aに供給する。
【0038】
改質汚泥が、脱窒細菌の硝酸呼吸に必要な電子供与体として利用されるが、電子供与体が不足する場合には電子供与体供給路14a、14b…からメタノールなどの電子供与体を供給することができる。余剰汚泥が発生したり、生物学的に不活性な汚泥、たとえば無機汚泥が蓄積する場合は余剰汚泥排出路24から系外に排出する。
【0039】
上記の処理では、第1段の脱窒槽1aに供給された改質汚泥が第1段から最終段の脱窒槽1a〜1dを通過する過程で、改質汚泥中の有機物が脱窒反応に必要な電子供与体として利用され、各脱窒槽1a、1b…に分注される原水中のNOx−Nが効率よく脱窒される。このように改質汚泥中の有機物が電子供与体として利用されて分解されるので、改質汚泥が減容化する。改質汚泥の分解により活性汚泥は減容し、引抜汚泥量を増殖量より多くすることにより減容化率は高くなり、余剰汚泥排出路24から余剰汚泥として排出する量を実質的にゼロとすることもできる。
【0040】
また第1段の脱窒槽1aに改質汚泥および返送汚泥が導入され、かつ各脱窒槽1a、1b…の活性汚泥は分注される原水により順次希釈されるので、前段から後段にかけて汚泥濃度に勾配が形成される。この場合、脱窒槽全体として汚泥保持量を高くしても、後工程の曝気槽2や固液分離装置3には希釈された混合液が導入されることになるので、固液分離障害は抑制される。従って、脱窒槽全体としては汚泥保持量を増加させてSRTを長くすることができるので、高水質の処理水を得ることができるとともに、固液分離障害なども生じない。
【0041】
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
【0042】
実施例1
図1の装置により、次の条件で硝酸含有排水を原水として脱窒処理した。なお、脱窒槽としては2段に区画された脱窒槽を用いた。また改質処理としてはオゾン処理を行った。
【0043】
原水硝酸濃度:Nとして300mg/L
原水処理量:2470L/day
第一脱窒槽容積:240L(初期種汚泥濃度;VSS=5000mg/L)
第二脱窒槽容積:330L(初期種汚泥濃度;VSS=4000mg/L)
第一脱窒槽への原水導入量:1235L/day
第二脱窒槽への原水導入量:1235L/day
第一脱窒槽への電子供与体の添加量:電子供与体が不足する場合、メタノールをNの3倍となるように添加
曝気槽:170L(初期種汚泥濃度;VSS=4000mg/L)
沈殿槽:分離面積;0.17m2(上昇速度;14m/day)
汚泥返送率:100%(2470L/day)
オゾン処理汚泥量:111L/day
オゾン使用量:185NL/day、濃度100mg/L(0.03g−O3/g−SS)
【0044】
運転開始後30日目には、第一脱窒槽、第二脱窒槽および曝気槽の汚泥濃度はそれぞれVSSで6000mg/L、4500mg/L、4500mg/Lに達し、その後60日目までそのまま安定して推移し、その間処理水の水質はSS10mg/L以下、硝酸はNとして0〜1.2mg/Lと良好な結果であった。運転期間中余剰汚泥を排出することはなかった。
【0045】
比較例1
実施例1と同時期に図2の装置により脱窒処理を行った。すなわち、実施例1と同じ硝酸含有排水を用い、区画しない1つの脱窒槽(容量は570L、初期種汚泥濃度;VSS=4000mg/L)に原水を供給する以外は実施例1と同じ条件で処理した。
【0046】
その結果、運転開始後20日目には脱窒槽および曝気槽の汚泥濃度はともにVSSで6200mg/Lに達し、処理水のSSが当初の10mg/Lから280mg/Lとなり、正常な処理が不可能となった。なお処理水の硝酸はNとして0〜1.5mg/Lであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の脱窒装置を示すフロー図である。
【図2】従来の脱窒装置を示すフロー図である。
【符号の説明】
1、1a、1b… 脱窒槽
2 曝気槽
3 固液分離装置
4 改質装置
5 原水分割注入路
11a、11b、11c 隔壁
12、26 混合液
13、19 移送路
14、14a、14b… 電子供与体供給路
15 排ガス路
17 曝気装置
18 給気路
21 処理水取出路
22 汚泥返送路
23 引抜路
24 余剰汚泥排出路
25 改質汚泥供給路
31 原水注入路

Claims (4)

  1. 硝酸および/または亜硝酸を含有する原水を、脱窒細菌を含む活性汚泥で生物処理する脱窒方法であって、
    原水を電子供与体の存在下に活性汚泥と混合して脱窒を行いながら、順次通過するように設けられた複数の脱窒工程と、
    原水を複数の脱窒工程に分割注入する原水分割注入工程と、
    後段の脱窒工程の混合液を分離汚泥と分離液とに固液分離する固液分離工程と、
    分離汚泥の一部を第1段の脱窒工程に返送する汚泥返送工程と、
    脱窒工程の混合液または固液分離工程で固液分離した分離汚泥の一部を易生物分解性に改質し、改質汚泥を第1段の脱窒工程に供給する改質工程とを含み、
    各脱窒工程の活性汚泥を分割注入される原水により順次希釈して、前段から後段にかけて汚泥濃度に勾配を形成することにより、希釈された混合液を固液分離工程に導入して固液分離し、脱窒工程全体として汚泥保持量を増加させSRTを長くして脱窒することを特徴とする脱窒方法。
  2. 硝酸および/または亜硝酸を含有する原水を、脱窒細菌を含む活性汚泥で生物処理する脱窒方法であって、
    原水を電子供与体の存在下に活性汚泥と混合して脱窒を行いながら、順次通過するように設けられた複数の脱窒工程と、
    原水を複数の脱窒工程に分割注入する原水分割注入工程と、
    最終の脱窒工程の混合液を曝気する曝気工程と、
    曝気工程の混合液を分離汚泥と分離液とに固液分離する固液分離工程と、
    分離汚泥の一部を第1段の脱窒工程に返送する汚泥返送工程と、
    脱窒工程もしくは曝気工程の混合液、または固液分離工程で固液分離した分離汚泥の一部を易生物分解性に改質し、改質汚泥を第1段の脱窒工程に供給する改質工程とを含み、
    各脱窒工程の活性汚泥を分割注入される原水により順次希釈して、前段から後段にかけて汚泥濃度に勾配を形成することにより、希釈された混合液を曝気工程および固液分離工程に導入して曝気および固液分離し、脱窒工程全体として汚泥保持量を増加させSRTを長くして脱窒することを特徴とする脱窒方法。
  3. 硝酸および/または亜硝酸を含有する原水を、脱窒細菌を含む活性汚泥で生物処理する脱窒装置であって、
    原水を電子供与体の存在下に活性汚泥と混合して脱窒を行いながら、順次通過するように設けられた複数の脱窒槽と、
    原水を複数の脱窒槽に分割注入する原水分割注入路と、
    後段の脱窒槽の混合液を分離汚泥と分離液とに固液分離する固液分離装置と、
    分離汚泥の一部を第1段の脱窒槽に返送する汚泥返送路と、
    脱窒槽の混合液または固液分離装置で固液分離した分離汚泥の一部を易生物分解性に改質し、改質汚泥を第1段の脱窒槽に供給する改質装置とを含み、
    各脱窒槽の活性汚泥が分割注入される原水により順次希釈されて、前段から後段にかけて汚泥濃度に勾配を形成することにより、希釈された混合液が固液分離装置に導入されて固液分離され、脱窒槽全体として汚泥保持量が増加しSRTを長くして脱窒されるように構成されていることを特徴とする脱窒装置。
  4. 硝酸および/または亜硝酸を含有する原水を、脱窒細菌を含む活性汚泥で生物処理する脱窒装置であって、
    原水を電子供与体の存在下に活性汚泥と混合して脱窒を行いながら、順次通過するように設けられた複数の脱窒槽と、
    原水を複数の脱窒槽に分割注入する原水分割注入路と、
    最終の脱窒槽の混合液を曝気する曝気槽と、
    曝気槽の混合液を分離汚泥と分離液とに固液分離する固液分離装置と、
    分離汚泥の一部を第1段の脱窒槽に返送する汚泥返送路と、
    脱窒槽もしくは曝気槽の混合液、または固液分離装置で固液分離した分離汚泥の一部を易生物分解性に改質し、改質汚泥を第1段の脱窒槽に供給する改質装置とを含み、
    各脱窒槽の活性汚泥が分割注入される原水により順次希釈されて、前段から後段にかけて汚泥濃度に勾配を形成することにより、希釈された混合液が曝気装置および固液分離装置に導入されて曝気および固液分離され、脱窒槽全体として汚泥保持量が増加しSRTを長くして脱窒されるように構成されていることを特徴とする脱窒装置。
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