JP3691651B2 - 水処理施設の水処理方法および制御装置 - Google Patents

水処理施設の水処理方法および制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、都市下水や産業排水あるいは水道原水を生物学的に処理する水処理プロセスに係わり、特に、流入水中のリンを安定に除去する制御方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、湖沼やダム湖、湾などでは富栄養化が進行しており、この原因となる窒素、りんの流入を低減し、水質を保全する必要がある。下水処理場では、生活排水や工場排水などを活性汚泥法と呼ばれる微生物処理で主に有機物を除去している。下水中には有機物の他に窒素やりんが含まれており、りんはオルトりん酸(PO4-P)、窒素はアンモニア性窒素として下水処理場に流入する。これらのりんや窒素を除去せずに放流すると、放流水域では富栄養が進み、藻類の異常繁殖によりさらに水質が悪化する。したがって、下水処理場では有機物に加えてりんや窒素の除去も要求されている。
【0003】
下水処理場においては流入する下水中のりんや窒素を除去するために、活性汚泥プロセスの一施設である曝気槽を好気領域と嫌気領域に分けた微生物反応槽を使用している。微生物反応槽の方式には嫌気‐無酸素‐好気法(A2O法)、嫌気‐好気法(AO法)、活性汚泥循環変法などがあり、少なくとも嫌気槽を前段に、好気槽を後段に配置している。これらの方式のうち、A2O法は窒素とりん、AO法はりん、活性汚泥循環変法は窒素の除去率の向上が期待できる。
【0004】
A2O法やAO法は嫌気槽を前段に、好気槽を後段に配置することによって活性汚泥(複合微生物の総称)のりん過剰摂取機能を利用し、活性汚泥は嫌気槽でりんを放出し、好気槽で放出した以上にりんを摂取することで、流入水中のりんを生物学的に除去する。しかし、活性汚泥のりん過剰摂取機能は流入水の水質状態やプラント操作条件、あるいは活性汚泥の管理状態によって変化し、放出不良や摂取不良などを生じて処理水中のりん濃度を増加させることがある。
【0005】
このため、下水処理場では金属塩などの凝集剤を注入し、物理化学的に除去する方法を併用している。凝集剤は注入量が不足するとりん除去が不十分となり、処理水中のりん濃度を高める。一方、過剰注入は運転コストや汚泥発生量の増加、さらに微生物の活性にも影響を与える。したがって、凝集剤の注入量は必要最小限にする必要がある。
【0006】
下水処理場において、りんを物理化学凝集によって除去する場合、アルミニウム系や鉄系の金属塩、あるいは消石灰が凝集剤として用いられる。液中でのりんはオルトりん酸や縮合りん酸の形態で存在し、凝集剤の注入により難溶性の塩を形成する。また、凝集剤は重炭酸塩と反応し、水酸化物のフロックを形成してさらにりんを吸着除去する。アルミニウム系の凝集剤を用いた場合の反応式は、化1により表される。
【0007】
【化1】
Figure 0003691651
【0008】
液中のりんを難溶性塩にするには、理論的には(カ1)式から1モル比のアルミニウムを注入すればよい。しかし、(カ2)式のように他の物質にも消費されるので、モル比を1より大きくする必要がある(引用例1:村田恒雄編著;「下水の高度処理技術」、理工図書、平成4年5月)。
【0009】
りん除去を目的とした公知の凝集剤注入量制御方法として、現在の処理水のりん濃度Piと一定時間b前の処理水のりん濃度Poから変化率d(=(PiーPo)/b)を求め、この変化率で将来も推移するとしてc時間後の処理水のりん濃度変化ΔPc(=d・c)予測し、目標値との偏差で注入量を設定する提案がある(引用例2:特開平3-89993号)。あるいは、好気槽から採水した活性汚泥混合水を固液分離した液部分のりん濃度と好気槽から流出する処理水流量からりん成分物量を求め、化学的当量関係を利用してりん成分物量から凝集剤所要量を算出して凝集剤量を制御する方式(引用例3:特開平9-174086号)、処理水のりん濃度に対して凝集剤をモル比換算で一定に制御し、りん含有フロックを砂ろ過で分離する方式(引用例4:特開昭63-242392号)、脱水ろ液のりん濃度に当量換算係数を乗じて凝集剤注入量を設定する方式(引用例5:特開平7-88497号)などの提案がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記した引用例2〜5の凝集剤注入量制御は、(カ1)式及び(カ2)式に基づいて、モル比あるいはアルミニウムとりんの濃度比を予め設定し、凝集剤を制御する比率一定制御方式を採用している。
【0011】
例えば、引用例2でその試験結果(第1表)によれば、流入水のりん濃度に対してアルミニウム注入率がほぼ比例関係にあり、モル比換算で約1.3と推算できる。しかし、引用例2の第2図からも明らかなように、下水処理場などの流入水中のりん濃度は人間の生活周期によって大きく変化する。したがって、将来の処理水のりん濃度が過去と同じ変化率で推移するとした予測法では、凝集剤の適正な制御は困難となる。
【0012】
さらに、流入水りん濃度に比例して凝集剤注入量を制御しているが、嫌気槽と好気槽からなる微生物反応槽のように、流入水のりん濃度より反応槽のりん濃度が高くなる場合もある処理プロセスに、モル比を一定とした制御方式を適用することには問題がある。引用例2〜5では、凝集剤注入位置に近い上流部のりん濃度を計測し、このりん濃度あるいは凝集剤注入後のりん濃度目標値との偏差に一定値を乗算して凝集剤注入量を設定している。しかし、本発明者らの試験結果によれば、アルミニウムとりんの濃度比を一定とする引用例のような凝集剤制御方式では、処理水のりん濃度を目標値以下に維持することができなかった。
【0013】
また、生物反応槽は活性汚泥の生物状態が正常なときりん過剰摂取機能により、流入水の通常範囲のりん濃度を目標値以下に維持することは可能である。しかし、活性汚泥のりん過剰摂取機能は流入水の水質状態やプラント操作条件等によって大きく変化するので、りん濃度を目標値以下に管理しようとすると、結果的に凝集剤の過剰注入を招き、ランニングコストの上昇のみならず、活性汚泥にも悪影響を及ぼす。したがって、生物反応層のりん過剰摂取機能、すなわちりん除去能力を定量的に評価し、目標値を維持できない程度にりん除去能力が低下した場合に凝集剤を注入する必要がある。
【0014】
本発明の目的は、上記した従来技術の状況に鑑み、生物反応槽でのりん除去能力を予測し、その能力の低下時に適正量の凝集剤を注入して、処理水のりん濃度を目標値以下に維持する、水処理プロセスの制御方法及び装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の水処理プロセスの制御方法は、嫌気槽を前段に、好気槽を後段に位置させた生物反応槽と沈殿池を有し、前記好気槽にりん除去用の凝集剤注入設備を具備する水処理プロセスにおいて、前記生物反応槽のりん除去能力を予め設定している判定指標に基づいて判定し、前記沈殿池の処理水のりん濃度がその目標値以下に維持できないと予測されるとき、前記好気槽の前記凝集剤の注入前の被処理水(以下、被処理水)または前記処理水中のりん濃度計測値と前記目標値との対数比率に基づいて凝集剤注入量を求め、前記凝集剤注入設備を制御するすることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の制御方法は、前記水処理プロセスにおいて、前記生物反応槽に流入する流入水の環境下における所定期間内の総降雨量(SR1)が一定量を越える場合に、前記生物反応槽のりん除去能力を判定指標に基づいて判定し、予め設定されている処理水のりん濃度目標値(Pm)を維持できないと予測されるとき、前記好気槽の前記凝集剤の注入前の被処理水中のりん濃度(Pi)及び/又は前記処理水中のりん濃度(Po)と、前記りん濃度目標値(Pm)から前記処理水への凝集剤注入濃度を演算し、該注入濃度と被処理水流量の積により、前記目標値を維持するのに必要な凝集剤注入量を求め、前記凝集剤注入設備を制御することを特徴とする。
【0017】
上記の本発明において、前記生物反応槽への流入水の溶存酸素濃度(DOI)、酸化還元電位(ORPI)及び前記好気槽の溶存酸素濃度(DOK)の少なくとも1つに予め設定されている判定指標とその計測値を比較し、該計測値がその判定指標を越える場合に前記りん濃度目標値を維持できないと予測する。
【0018】
また、前記計測値が前記判定指標を継続して越えている時間が第1の基準時間以上となる場合に、前記凝集剤の注入制御を開始することを特徴とする。
【0019】
さらに、前記生物反応槽への流入水の溶存酸素濃度または酸化還元電位の一方または両方の計測値と各々に予め設定されている第2判定指標を比較し、該計測値が前記第2定指標を下回る場合に、前記注入制御を開始して以後の総降雨量(SRt)に基づいた第2の基準時間の経過後に、前記凝集剤の注入制御を停止することを特徴とする。
【0020】
本発明の水処理プロセスの制御装置は、少なくとも嫌気槽と好気槽、及び沈殿池を有し、好気槽の流出部(出口または近傍)に凝集剤を注入する設備を具備する水処理設備において、前記生物反応槽のりん除去能力の良否を所定の判定指標に従って判定する判定手段と、前記好気槽の前記凝集剤の注入前の被処理水(以下、被処理水)または前記処理水中のりん濃度計測値と前記目標値との対数比率に基づいて凝集剤注入量を求める演算手段を設け、前記判定手段でりん除去能力が不良と判定されたときに、前記演算手段からの出力信号に対応して前記凝集剤注入設備を稼動させることを特徴とする。
【0021】
前記水処理プロセスの制御装置は、前記生物反応槽への流入水の環境下の降雨量を測定する計測手段と、流入水溶存酸素濃度、流入水酸化還元電位及び好気槽溶存酸素濃度の少なくとも1つを測定する計測手段を設け、前記判定手段は前記りん除去能力の良否を判定し、前記凝集剤の注入制御を指示するために、前記降雨量の判定指標と、前記流入水溶存酸素濃度、前記流入水酸化還元電位及び前記好気槽溶存酸素濃度の少なくとも1つに設定された判定指標を有している。
【0022】
前記判定手段による前記りん除去能力の判定結果(良/否)と、前記演算手段による前記対数比率の演算結果(0より大/0以下)が相反する場合に、前記生物反応槽の運転操作を支援するメッセージを出力する表示手段を設けていることを特徴とする。前記メッセージは「返送汚泥流量の変更」および/または「好気槽溶存酸素濃度の設定値(判定指標)の変更」である。
【0023】
上記した本発明の作用を説明する。本発明は、(1)生物反応槽のりん放出と摂取によるりん除去能力は流入下水の水質に影響され、流入水質あるいはこの水質に影響を与える降雨量、さらには流入水質に対応して変化する生物反応槽の好気度などから判定でき、また、(2)凝集剤の注入前/後の被処理水または処理水のりん濃度は、凝集剤注入濃度(初期値は注入濃度=0)に応じて所定時間後に対数関係に減少するという、二つの実験的知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の生物処理によるりん除去特性と、凝集剤注入による反応特性を説明する。
【0024】
図2は、生物処理による処理水の溶解性りん濃度と降雨量の変化である。流入水のりん濃度は2〜5mg/Lで1日を周期として変動するが、処理水のりん濃度は特定量以上の降雨がある場合に上昇する。
【0025】
前段に嫌気槽、後段に好気槽を配置する生物反応槽では嫌気槽で活性汚泥の体内からオルトりん酸を放出し、好気槽で放出量以上に摂取して体内に蓄積する。りん摂取は前段の嫌気槽で十分にりんを放出させることが不可欠で、この放出が不十分なときは好気槽での摂取も不十分となり、結果的に処理水のりん濃度が高まる。この現象をりん除去不良と呼ぶ。
【0026】
図3は、嫌気槽のりん放出量と流入水DO、ORPの関係を示したものである。いづれも特定値以上になると放出量が悪化し、摂取量の低下も認められた。図4は、図2の経過日数90〜120日の間で、処理水のりん濃度が上昇したケースの流入水DO,ORPと好気槽DOの変化である。この試験で、好気槽に供給する空気量は、好気槽の流出部に設置したDO計の計測値と予め設定している目標値KO*との偏差で調節した。
【0027】
処理水りん濃度は流入水DOやORPの上昇に伴い高くなり、これらが回復した数日後Aに目標値(0.5mg/L)以下を示した。好気槽DOは目標値1.5mg/Lで運転したが、滞留時間の影響により流入水DOに遅れて上昇し、同様に回復時も遅れている。好気槽DOが制御目標値を越えたのは、雨により流入水の有機物や窒素が希釈されて低濃度となり、酸素要求の少ない被処理水であったが、空気吹込み用散気管の目詰りを防止するために予め設定している空気量下限値で運転されたことによる。
【0028】
これらの結果から、生物反応槽でのりん除去不良は降雨量、流入水DO値やORP値に基づいて判定できる。また、好気槽の空気量をDO値で制御するときは、好気槽DO値を判定指標に適用できる。なお、りん除去不良を予測し、凝集剤の注入・停止を判定する指標は、上記した総降雨量、流入水DO値、流入水ORP値、及び好気槽DO値の全てを用いる必要はなく、基本的には降雨量を前提条件とし、流入水DO値または流入水ORP値の1指標があればよい。
【0029】
凝集剤注入期間における凝集剤注入濃度は、以下の実験的知見に基づいて求めることができる。
【0030】
図5は、処理水中の溶解性りん濃度とアルミニウム注入濃度の関係を示したものである。活性汚泥の存在する好気槽の混合液にアルミニウム系凝集剤(PAC:ポリ塩化アルミニウム)を注入し、30分後における処理水中の溶解性りん濃度とアルミニウム注入濃度の測定値を表わし、縦軸のりん濃度は対数値である。
【0031】
注入濃度が0におけるりん濃度Pをパラメータとすれば、図6に示すように、注入濃度Rに対する対数値表示のりん濃度Pは比例関係で減少している。したがって、被処理水のりん濃度計測値Pi及び処理水のりん濃度目標値Pmを基に、必要凝集剤注入濃度Rmは(1)式によって求めることができる。
【0032】
【数1】
Rm=k1・(LogPiーLogPm)=k1・Log(Pi/Pm) …(1)
ただし、k1:係数(勾配tanθの逆数)である。(1)式で、対数比率が0以下のときは、被処理水のりん濃度計測値が目標値Pm以下となっているので凝集剤の注入は不要となる。
【0033】
ところで、(1)式は図6のA点とB点の加算値と見ることができるので、処理水のりん濃度計測値Poを用いて変換すると、凝集剤注入濃度不足分(補正値)ΔRmを求める(2)式を誘導できる。
【0034】
【数2】
Figure 0003691651
すなわち、処理水のりん濃度計測値と目標値の対数比率に応じて凝集剤注入濃度の補正値ΔRmを決定できる。
【0035】
りん濃度の計測精度は反応槽の混合液より処理水の方が高いので、(1)式による場合に比べて応答性は劣るが制御精度を向上できる。なお、(2)式で対数比率が0以下のときは補正不要であり、凝集剤注入量は現在値に維持される。
【0036】
さらに、被処理水のりん濃度計測値Piと処理水のりん濃度計測値Poを用いると、精度と応答性を共に向上できる制御が可能となる。図7に示すように、被処理水のりん濃度計測値Piで目標値Pmとなるように係数k1の直線関係によって凝集剤注入濃度をC点(Rm’)に設定する。一方、この時の処理水のりん濃度計測値PoがA点であれば、目標値Pmは係数k2に従うB点となるので、ΔRm分の補正が必要になる。従って、必要凝集剤注入濃度Rmは両計測値Pi、Poから(3)式によって表される。
【0037】
【数3】
Figure 0003691651
なお、(1)〜(3)式で、対数値からの偏差と比率からの対数値とは同値であり、本発明で述べる対数比率の定義には両者を含む。
【0038】
本発明によれば、生物反応槽におけるりん除去不良を活性汚泥に直接影響されず、信頼性の高い計測器である雨量計やDO計、ORP計で判定し、りん除去不良と判定した場合に、被処理水または処理水中のりん濃度計測値と処理水の目標値との対数比率に基づいて凝集剤注入量を制御することで、必要最小限の凝集剤量で処理水中のりん濃度を目標値以下に維持することができ、凝集剤過剰注入による活性汚泥への悪影響も防止できる低コストの運転管理を実現できる。
【0039】
また、りん除去が正常との判定結果にも係わらず、(1)〜(3)式の対数比率が0以上となる場合は、計測器に異常があるか、または活性汚泥の微生物相変化や反応槽の操作条件が不適切などと判断でき、警報を発することもできる。この警報により、計測器の維持管理や微生物の適正な管理をタイミングよく支援できる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の複数の実施例を図面に沿って詳細に説明する。なお、各図を通して同等の構成要素には同一の符号を付してある。
【0041】
〔実施例1〕
図1は、嫌気‐好気法(AO法)による下水処理設備の構成図で、処理水のりん濃度を目標値以下に管理する凝集剤制御装置を設けている。実施例1の下水処理設備は嫌気槽1Aと好気槽1Cから成る生物反応槽1、最終沈殿池2、水中撹拌機3、送風機5、汚泥返送設備6、汚泥排出設備7、凝集剤タンク8、凝集剤注入設備9から構成されている。
【0042】
家庭や工場から排出された流入下水は最初沈殿池(図示せず)で粗大な狭雑物が沈殿除去され、生物反応槽1に流入する。流入下水11の導かれる嫌気槽1Aには最終沈殿池2から汚泥返送設備6を介して活性汚泥と呼ばれる微生物群である返送汚泥12が供給され、流入下水11と返送汚泥12が水中撹拌機3で撹拌混合される。嫌気状態下の嫌気槽1Aにおいて、活性汚泥は細胞内に蓄積していたポリりん酸を加水分解してオルトりん酸(PO4-P)として液中に放出する。また、活性汚泥はリン放出時に有機物を吸着し、細胞内に蓄積する。このため、嫌気槽1Aではりん濃度が増加し、有機物が減少する。
【0043】
嫌気槽1Aの混合液は隔壁19を介して好気槽1Cに導かれる。好気槽1Cの底部には散気管4が設置されており、送風機5からの空気16を散気し、混合液を撹拌するとともに活性汚泥の酸素源を供給する。好気槽1Cにおいて、活性汚泥は吸着した有機物を酸素存在下のもと水と炭酸ガスに分解する。また、アンモニア性窒素を硝酸性あるいは亜硝酸性窒素に酸化する。さらに、液中のオルトりん酸をポリりん酸として細胞内に摂取する。この摂取量は、通常、嫌気槽1Aで放出した以上の過剰摂取となるため、プロセス全体ではりんが減少し、除去されたことになる。
【0044】
好気槽1Cの流出水13は最終沈殿池2に導かれ、混合液中の活性汚泥が重力沈降する。上澄み液は処理水14として塩素殺菌後河川や海洋に放流される。一方、沈殿した高濃度の活性汚泥は、その大部分が汚泥返送設備6により返送汚泥12として生物反応槽1に返送され、増殖分に相当する一部を余剰汚泥15として汚泥排出設備7を介して系外に排出する。余剰汚泥15には生物反応槽1で除去されたりんも含まれている。
【0045】
このように生物学的にりんを除去するプロセスでは、嫌気槽1Aでの嫌気状態を維持してりんを良好に放出させる必要がある。りん放出が不十分である場合、好気槽1Cでのりんの摂取も悪く、過剰摂取をしなくなる。りん除去能力の悪化は、プロセス全体でのりん除去率の低下を招き、さらに処理水14のりん濃度が流入下水11より高くなることもある。
【0046】
本発明では、りん除去能力が悪化した場合、生物処理による急激な回復は困難なので、その悪化状態を速やかに検知し、処理水14のりん濃度を目標値以下に維持するために金属塩などの凝集剤を注入する化学凝集処理を併用する。
【0047】
このため、本実施例の水処理設備は凝集剤タンク8と凝集剤注入設備9を配設し、撹拌混合の必要がない好気槽1Cの流出部に、計算機30により演算制御される必要量の凝集剤17を注入する。以下、計算機30によって実現される凝集剤注入制御装置の構成と動作について説明する。
【0048】
好気槽1Cに採水設備20を設置し、りん濃度計21に送水する。りん濃度計21では、送水された好気槽1Cの混合液の活性汚泥を分離し、液中の溶解性りん濃度を計測し、計算機30に入力する。採水設備20の設置位置は少なくとも凝集剤17の注入位置より上流側とし、凝集剤注入前(本例では好気槽の混合液)の被処理水のりん濃度を測定する。好気槽1C混合液の活性汚泥分離は平膜や中空膜などの膜ろ過方式が適用でき、採水設備20に設置してもよい。
【0049】
雨量計29で計測された降雨量SR、流量計22及び23で計測された流入下水流量Qiと返送汚泥流量Qr、溶存酸素濃度計(DO計)25,27で計測された流入水DO値(DOI)と好気槽DO(DOK)、酸化還元電位計(ORP計)26で計測された流入水ORP値(ORPI)も計算機30に取り込まれる。
【0050】
これらの入力値に基づいて、計算機30のリン除去判定部37が生物反応槽1のりん除去能力の良否を判定する。りん除去能力が正常な場合は、沈殿池2の処理水のりん濃度が予め計算機30に記憶されているりん濃度目標値Po以下に維持できる。一方、りん除去能力が不良な場合は、処理水のりん濃度が目標値Poを越えるので、必要な凝集剤注入量を演算し、凝集剤注入設備9を制御する。
【0051】
図8及び図9に、りん除去判定部の判定処理のフロー図を示す。図8は、注入開始時の判定処理で、りん除去判定部37は雨量計29の計測値SRによる降雨時に本処理を開始する。まず、予め設定した期間(5日間以内)の総降雨量SRが設定量SR1を越え(s101)、さらに、流入水DO値やORP値及び好気槽DO値がそれぞれ設定値ID1、IO1、及びKO*を越えたとき(s102)、りん除去能力が不良と判定し、その状態が設定されている持続時間T1nに達したとき(s103)、凝集剤の注入を開始する。
【0052】
ここで、総降雨量の設定量SR1は10mm以上、流入水DO設定値ID1は1.0mg/L以上、流入水ORP設定値IO1はー300mV以上とする。また、好気槽DO設定値KO*は空気量制御を実施する時のDO目標値を用いる。それぞれの設定値を連続して越える持続時間TInは、生物反応槽1の凝集剤注入位置までの滞留時間を考慮して、24時間以内の範囲で設定する。なお、判定に用いる各設定値は目標値入力部32に予め入力されている。
【0053】
図9は、注入停止時の判定処理で、雨が止んだ時に開始される。まず、流入水DO値やORP値がそれぞれ設定値ID2、IO2以下になったか、及び好気槽DO値が約KO*になったかチエックする(s201)。設定値ID2、IO2は、注入開始前でかつ降雨前のDO値やORP値を記憶するか、注入開始判定処理時の設定値ID1、IO1に所定オフセット値を減算した値を用いる。計測値が設定値以下となったとき、その時点を基準として、凝集剤注入期間の総降雨量SRtを算出する(s202)。総降雨量SRt<SR2の場合は(s203)、継続時間T2nに到達した時に凝集剤の注入を停止する(s204)。総降雨量SRt≧SR2の場合は(s205)、継続時間T3nに到達した時に凝集剤の注入を停止する(s206)。総降雨量判定値SR2は20〜80mm、継続時間T2n及びT3nは5日以内に設定する。
【0054】
なお、上記したりん除去判定部37でのりん除去能力の悪化及び回復の判定に、複数の判定指標をAND条件で用いているが、これに限られるものではない。たとえば、上記のように総降雨量SRの判定を前提とする場合は、流入水DO値とORP値及び好気槽DO値のOR条件でもよい。あるいは、総降雨量SRを判定指標に含めず、流入水DO値、ORP値及び好気槽DO値のいずれか2つのAND条件、または全てのOR条件としてもよい。
【0055】
また、判定指標の1つとして嫌気槽のORP値も考慮できる。本発明者等の実験によれば、嫌気槽のORPは指示値が不安定であり、これをりん除去能力の単独の判定指標とすることは難しい。しかし、嫌気槽ORPは流入水DOや流入水ORPにある程度連動した変化を示すので、上記判定指標の1つ以上とのAND条件として判定指標に加えることは可能である。また、嫌気槽に複数のORP計を設置し、それらの間で連動性が確認できるときは、その指示値が安定していると見れるので、上記判定指標と同列に用いることもできる。
【0056】
リン除去判定部37から凝集剤注入開始の指示を受けた注入濃度演算部37は、目標値入力部32から入力された処理水のりん濃度目標値Pmと好気槽1Cの被処理水から計測したりん濃度Piを比較し、Pi>Pmの場合、上記した(1)式より金属塩注入濃度Rmを演算する。係数k1は、金属塩がPACの場合、5〜20の範囲で設定される。
【0057】
注入量演算部33は注入濃度Rmと流入下水流量Qiと返送汚泥流量Qrから、金属塩注入量Mを(4)式より演算する。
【0058】
【数4】
M=Rm・(Qi+Qr) …(4)
凝集剤に含有する金属塩濃度Cmは使用する凝集剤や溶解条件により異なる。凝集剤量演算部34は必要とする金属塩注入量Mが含まれる凝集剤量Gを(6)式より演算する。
【0059】
【数5】
G=M/Cm …(5)
凝集剤量制御部36は凝集剤注入設備9を調節し、好気槽1Cへ注入する凝集剤量Gとなるように制御する。この例の注入設備9はポンプであり、制御部36は流量計24Aの計測値が凝集剤量Gの流量値となるようにポンプ回転数、あるいはストローク長を設定する。
【0060】
なお、(1)式の対数項で、比率Pi/Pm≦1あるいはPi/(Pm+ΔP)≦1となれば、処理水のりん濃度は目標値を満たしていると判定し、その期間は凝集剤の注入を停止する。この間欠操作により、余分な凝集剤の注入を抑制して運転コストを低減し、かつ、活性汚泥への悪影響を回避する。ここで、ΔPはりん除去能力が正常時に、採水設備20から処理水14の間で低下する溶解性りん濃度で、プロセスの固有値として設定でき、予め目標値に含んでもよい。また、間欠制御の停止または再開時のりん濃度には通常、目標値に対する許容誤差が含まれる。
【0061】
計算機30の機能として、空気量制御部39A及び返送量制御部39Bを設け、送風機5及び汚泥返送設備6を制御する。空気量制御部39AはDO計28で計測された好気槽1CのDO計測値KOと目標値入力部32からのDO目標値KO*との偏差に対応して送風機5を調節し、空気16の流量を制御する。返送量制御部39Bは、目標値入力部32に設定された操作比率η1と流入下水流量Qiの乗算により求められた流量となるように汚泥返送設備6を調節し、返送汚泥12の流量を制御する。
【0062】
この操作により、生物反応槽1の活性汚泥濃度が安定し、りん放出・摂取に対する活性汚泥濃度の影響をなくし、りん除去能力の良否を正確に判定できる。また、りん除去能力の悪化した場合、操作比率ηを増加させて嫌気槽の還元度を強め、回復を促進させることができるので、凝集剤の注入時間の短縮や注入量の低減にもなる。
【0063】
さらに、計算機30の機能として表示部38を設け、必要に応じてプロセス状態や計測値あるいは警報などを出力する。たとえば、りん除去判定部37でりん除去能力が正常と判定されているときにPi>Pmになるなどの相反する結果が得られた場合、りん除去悪化の原因は流入水質よりも生物反応槽の運転条件による影響と考えられるので、返送汚泥流量の変更操作や、DO設定値の変更を行なった後、再びりん除去能力の判定や凝集剤量の演算による制御が行なわれる。
【0064】
そこで、相反する結果が得られた場合に表示部38は、「返送汚泥流量を変更する」、「DO目標値=KO*を高める」などのメッセージを表示する。このとき、関連するプロセス量として、返送汚泥流量Qrの計測値や設定値、空気16の流量が空気量下限設定値(目標値入力部)に維持されているのに、目標値KO*を越えているDO計測値などの状態も出力できる。
【0065】
〔実施例2〕
図10は、嫌気‐好気法による下水処理設備の構成図で、処理水りん濃度の計測値を用いる凝集剤制御装置を設けている。図1の構成との相違は、処理水14を対象に採水設備20とりん濃度計21を設置し、計算機30に処理水のりん濃度計測値Poを入力する点と、凝集剤量の演算方式にある。
【0066】
注入濃度演算部31では処理水のりん濃度計測値Poと目標値Pmから金属塩注入濃度補正値ΔRmを上記の(2)式により演算する。注入量演算部33は金属塩注入補正量ΔMを(6)式より演算し、凝集剤補正量演算部35は凝集剤補正量ΔGを(7)式より演算する。
【0067】
【数6】
ΔM=ΔRm・(Qi+Qr) …(6)
ΔG=ΔM/Cm …(7)
凝集剤量演算部34は現在の凝集剤量Gと補正量ΔGから操作量G’を演算し、現在の凝集剤量Gに対応する流量計25の信号値との偏差で凝集剤注入設備9を調節して好気槽1Cへの凝集剤17を制御する。
【0068】
実施例2の方式は実施例1に比べて最終沈殿池2の滞留時間に相当する制御遅れを生じる。しかし、採水設備20で送水される処理水は活性汚泥が非常に低濃度で、前処理分離装置の保守頻度が向上し、より正確な計測情報に基づいた凝集剤制御が可能である。
【0069】
〔実施例3〕
図11は、嫌気‐好気法による下水処理設備の構成図で、被処理水と処理水のりん濃度を用いる凝集剤制御装置を設けている。実施例3は図1と図10を合わせた構成で、採水設備20及び20Aを好気槽1Cと処理水14を対象に設置し、りん濃度計21及び21Aでそれぞれのりん濃度を計測する。好気槽1Cのりん濃度Piと処理水のりん濃度Po及び目標値Pmに基づき、注入濃度演算回路31で金属塩注入濃度Rmを上記の(3)式により演算する。その後は実施例1の場合と同様にして、凝集剤注入量Gを決定し、凝集剤制御部36より凝集剤注入設備9を調節して好気槽1Cへの凝集剤を制御する。
【0070】
本実施例によれば、好気槽1Cのりん濃度の誤差を処理水の計測値で補正でき、かつ最終沈殿池2による制御遅れを伴わないので制御精度が向上する。
【0071】
〔実施例4〕
図12は、嫌気‐無酸素‐好気法(A2O法)による下水処理設備の構成図で、好気槽1Cの被処理水のりん濃度を用いる凝集剤制御装置を設けている。本下水処理設備は生物反応槽1を嫌気槽1A、無酸素槽1B、好気槽1Cの3室に分け、好気槽1Cに設置した送水設備10で好気槽混合液を第2室目の無酸素槽1Bに循環液18として環流する。無酸素槽1Bでは、好気槽1Cで生成された硝酸性あるいは亜硝酸性窒素を窒素ガスに還元する脱窒機能を有する。
【0072】
実施例4における凝集剤注入制御方式は、注入量演算部33の演算を除いて図1と同じである。注入量演算部33では、流量計24からの循環液流量Qjも加算した(8)式で金属塩注入量Mを演算する。
【0073】
【数7】
M=Rm・(Qi+Qr+Qj) …(8)
本下水処理設備において、被処理水に変えて処理水のりん濃度を用いる場合は金属塩注入濃度補正値ΔMを求める(6)式に循環液流量Qjを加える以外は実施例2と同じである。また、被処理水と処理水のりん濃度を用いる場合は、(3)式で求めた金属塩注入濃度Rmに基づき、(4)式で金属塩注入量Mを演算する以外は実施例3と同じである。
【0074】
なお、計算機30の機能として空気量制御部39A、返送量制御部39Bの他に循環量制御部39Cを設け、送水設備10を制御する。循環量制御部39Cは目標値入力部32に設定された操作比率η2と流入下水流量Qiの乗算により求められた流量となるように送水設備10を調節し、循環液18の流量を制御する。これら空気量、返送汚泥量、及び循環液量を操作することにより、有機物と窒素の除去効率が安定し、さらに上記した凝集剤注入量制御の実施によりりん濃度も含めて所定値以下とする処理水を維持できる。
【0075】
以上のように、本発明の実勢例1〜4では嫌気‐好気法と嫌気‐無酸素‐好気法を対象としたが、嫌気‐好気‐嫌気‐好気法(AOAO法)にも適用可能である。AOAO法では、後段の好気槽流出部に凝集剤を注入し、流入下水量と返送汚泥量で金属塩注入量Mを演算する。
【0076】
【発明の効果】
本発明によれば、生物反応槽のりん放出・摂取状態の変化を早期に予測し、リン除去能力が処理水のりん目標値を維持できない場合に、凝集剤の注入を速やかに開始して水質の悪化を防止できる効果がある。
【0077】
また、凝集剤注入量は被処理水及び/または処理水中のりん濃度と凝集剤注入濃度の対数比率特性に基づいて必要最小量に限定でき、かつりん除去能力の悪化時期に限られるので、運転コストの低減及び凝集剤による活性汚泥への悪影響を抑制できる。
【0078】
さらに、りん除去能力の予測結果とりん濃度の計測値に基く対数比率との間で、凝集剤注入の必要に対し相反する結果が得られる場合に、その原因となるプロセス状態等を表示して適切な運転支援を行なうので、生物処理プラントの適正な運転状態への速やかな回復が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1による凝集剤制御装置を含む下水処理設備の構成図。
【図2】下水処理設備での処理水りん濃度の試験結果の一例を示すグラフ。
【図3】嫌気槽のりん放出特性の試験結果の一例を示すグラフ。
【図4】りん放出・摂取悪化時期の詳細な試験結果の一例を示すグラフ。
【図5】アルミニウム注入濃度と溶解性りん濃度の変化特性を示す説明図。
【図6】凝集剤注入濃度の演算方式を解説する説明図。
【図7】凝集剤注入濃度の他の演算方式を解説する説明図。
【図8】実施例1〜4における凝集剤注入判定方式の処理フロー図。
【図9】実施例1〜4における凝集剤停止判定方式の処理フロー図。
【図10】実施例2による凝集剤制御装置を含む下水処理設備の構成図。
【図11】実施例3による凝集剤制御装置を含む下水処理設備の構成図。
【図12】実施例4による凝集剤制御装置を含む下水処理設備の構成図。
【符号の説明】
1…生物反応槽、1A…嫌気槽、1B…無酸素槽、1C…好気槽、2…沈殿池、5…送風機、6…汚泥返送設備、7…汚泥排出設備、8…凝集剤タンク、9…凝集剤注入設備、10…循環設備、20…採水設備、21…リン濃度計、22,23,24…流量計、25,27…溶存酸素濃度計、26…酸化還元電位計、29…雨量計、30…計算機、31…注入濃度演算部、32…目標値入力部、33…注入量演算部、34…凝集剤量演算部、65…凝集剤補正量演算部、36…凝集剤量制御部、37…りん除去判定部、38…表示部、39A…空気量制御部、39B…返送量制御部、39C…循環量制御部。

Claims (9)

  1. 嫌気槽を前段に、好気槽を後段に位置させた生物反応槽と沈殿池を有し、前記好気槽にりん除去用のアルミニウム系の凝集剤注入設備を具備する水処理施設の水処理方法おいて、
    前記生物反応槽のりん除去能力を予め設定している判定指標に基づいて判定し、前記沈殿池の処理水(以下、処理水)のりん濃度がその目標値以下に維持できないと予測されるとき、前記好気槽の前記凝集剤の注入前の被処理水(以下、被処理水)または前記処理水中のりん濃度計測値と前記目標値との対数比率に基づいて凝集剤注入量を求め、前記凝集剤注入設備を制御することを特徴とする水処理施設の水処理方法
  2. 嫌気槽を前段に、好気槽を後段に位置させた生物反応槽と沈殿池を有し、前記好気槽にりん除去用のアルミニウム系の凝集剤注入設備を具備する水処理施設の水処理方法において、
    前記生物反応槽に流入する流入水の環境下における所定期間内の総降雨量(SR1)が一定量を越える場合に、前記生物反応槽のりん除去能力を判定指標に基づいて判定し、予め設定されている、前記沈殿地の処理水のりん濃度目標値(Pm)を維持できないと予測されるとき、前記好気槽の前記凝集剤の注入前の被処理水(以下、被処理水)中のりん濃度(Pi)及び/または前記処理水中のりん濃度(Po)と前記りん濃度目標値(Pm)との対数比率に基いて前記処理水への凝集剤注入濃度を演算し、該注入濃度と被処理水流量の積により、前記目標値を維持するのに必要な凝集剤注入量を求め、前記凝集剤注入設備を制御することを特徴とする水処理施設の水処理方法。
  3. 請求項1または2において、前記生物反応槽への流入水の溶存酸素濃度(DOI)及び酸化還元電位(ORPI)並びに前記好気槽の溶存酸素濃度(DOK)の少なくとも1つに予め設定されている判定指標とその計測値を比較し、該計測値がその判定指標を越える場合に前記りん濃度目標値を維持できないと予測することを特徴とする水処理施設の水処理方法
  4. 請求項3において、前記計測値が前記判定指標を継続して越えている時間が第1の基準時間以上となる場合に、前記凝集剤の注入制御を開始することを特徴とする水処理施設の水処理方法
  5. 請求項4において、前記生物反応槽への流入水の溶存酸素濃度または酸化還元電位の一方または両方の計測値と各々に予め設定されている第2判定指標を比較し、該計測値が前記第2判定指標を下回る場合に、前記注入制御を開始して以後の総降雨量(SRt)に基づいた第2の基準時間の経過後に、前記凝集剤の注入制御を停止することを特徴とする水処理施設の水処理方法
  6. 嫌気槽を前段に、好気槽を後段に位置させた生物反応槽と沈殿池を有し、前記好気槽にりん除去用のアルミニウム系の凝集剤注入設備を具備する水処理施設の制御装置において、
    前記生物反応槽のりん除去能力の良否を所定の判定指標に従って判定する判定手段と、前記好気槽の前記凝集剤の注入前の被処理水(以下、被処理水)または前記沈殿地の処理水(以下、処理水)中のりん濃度計測値と前記処理水のりん濃度の目標値との対数比率に基づいて凝集剤注入量を求める演算手段を設け、
    前記判定手段でりん除去能力が不良と判定されたときに、前記演算手段からの出力信号に対応して前記凝集剤注入設備を稼動させることを特徴とする水処理施設の制御装置。
  7. 請求項6において、前記生物反応槽への流入水の環境下の降雨量を測定する計測手段と、流入水溶存酸素濃度、流入水酸化還元電位及び好気槽溶存酸素濃度の少なくとも1つを測定する計測手段を設け、
    前記判定手段は前記りん除去能力の良否を判定し、前記凝集剤の注入制御を指示するために、前記降雨量の判定指標と、前記流入水溶存酸素濃度、前記流入水酸化還元電位及び前記好気槽溶存酸素濃度の少なくとも1つに設定された判定指標を有していることを特徴とする水処理施設の制御装置。
  8. 請求項6または7において、前記判定手段による前記りん除去能力の判定結果(良/否)と、前記演算手段による前記対数比率の演算結果(0より大/0以下)が相反する場合に、前記生物反応槽の運転操作を支援するメッセージを出力する表示手段を設けていることを特徴とする水処理施設の制御装置。
  9. 請求項8において、前記メッセージが「返送汚泥流量の変更」および/または「好気槽溶存酸素濃度の設定値の変更」であることを特徴とする水処理施設の制御装置。
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