JP3699221B2 - 感熱記録材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は感熱記録材料に関し、さらに詳しくは、熱応答性、記録画像の保存安定性(耐湿性、耐可塑剤性等)に優れるとともに、地肌のかぶりや、記録画像の白化を抑えることができる感熱記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報の多用化に伴って情報量が増大し、これらの情報を記録するための情報記録の分野においても、種々の記録方式及び記録材料が研究され実用に供されている。
【0003】
なかでも、感熱記録方式は、▲1▼感熱記録材料を単に加熱するだけで記録画像を得ることができ、繁雑な現像工程を必要としない、▲2▼感熱記録材料の製造や保存管理は他の記録材料に比較して容易かつ安価である、▲3▼感熱記録材料の支持体として多くの場合に安価な紙が使用されるが、この場合には、得られた記録材料が普通紙に近い感触になる等の利点があり、コンピューターのアウトプット、電卓等のプリンター、各種計測機器のレコーダー、ファクシミリ、自動発券機、感熱複写機、ラベル等の多くの分野で採用されている。
【0004】
しかし、これらのOA機器の普及に伴い、最近では感熱紙の販売競争が激化し、感熱紙メ−カ−はコスト切下を強いられるようになった。また、OA機器メ−カ−にとっては、一般家庭へのワ−ドプロセッサの普及がほぼ一段落し、複数台数を普及させるために、従来の機能と差別化した高機能が求められるようになった。また、従来の感熱記録材料を、例えば、POSシステム用のラベル等に利用する場合、特にス−パ−マ−ケット等で使用されるラベルは、水、ラップフィルム類、油類に接触することが多く、これらのものとの接触により記録画像が著しく褐色してしまうというように、従来品には記録画像の保存安定性に劣るという欠陥があった。このため、従来どおりに熱応答性が良く、しかも安価で記録画像の安定化を図ることのできる感熱記録材料が望まれるようになった。
【0005】
そこで、このような従来の感熱記録材料における問題点を解決するための試みとして、感熱記録材料の感熱発色層中に種々の物質を添加して記録画像の保存安定性の向上を図ることが提案されている。
【0006】
例えば、特公昭63−46067号公報では顕色剤としてフェノ−ル骨格を持つジフェニルスルホン誘導体と増感剤としてフタル酸類のジベンジルエステルを含有せしめる方法が、特開昭59−73990号公報、特開昭61−160292号公報、特開昭60−176794号公報、特開平1−209184号公報、特開平4−37589号公報では増感剤としてスルホン酸エステルを含有せしめる方法が、それぞれ提案されている。
【0007】
しかしながら、上記いずれの方法においても記録画像の保存安定性は僅かに向上するだけで、とても満足のゆくものではなく、上記各薬剤の性能を充分引き出しているとは言えなかった。
【0008】
また、特開平5−147357号公報、特開平5−148220号公報、特開平5−169836号公報では、顕色剤としてスルホニルウレア化合物を含有させる方法が提案されている。しかしながら、このような方法においては、記録画像の保存安定性は向上するものの、発色感度が充分でなく、さらに印字部分に白化が生じるなど記録画像の保存安定性以外の性能面で満足のゆくものではなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる観点に鑑みて創案されたもので、その目的とするところは、優れた熱応答性、記録画像の保存安定性(耐湿性、耐可塑剤性等)を有すると同時に、地肌のかぶりや、記録画像の白化を抑えることができる安価な感熱記録材料を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、常温で無色又は淡色のロイコ染料と、加熱により該ロイコ染料と反応してロイコ染料を発色させる有機酸性物質とを含有する感熱発色層を支持体上に設けてなる感熱記録材料において、上記感熱発色層に、有機酸性物質として、下記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物を含み、かつ、増感剤として、4−アセチルビフェニルを含むことを特徴とする感熱記録材料である。
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、Zは無置換の芳香族基、又は低級アルキル基若しくはハロゲン原子で置換された芳香族基を表し、Aは2価以上の価数の基を表し、nは2以上の整数を表す)
【0013】
本発明において発色剤として使用されるロイコ染料は、常温において無色又は淡色であり、加熱下に酸性物質と反応して発色する物質であり、例えば3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド等のトリアリルメタン系染料、4,4’−ビスジメチルアミノベンズヒドリドベンジルエーテル等のジフェニルメタン系染料、ベンゾイルロイコメチレンブル−等のチアジン系染料、3−メチルスピロジナフトピラン等のスピロ系染料、7’−アニリノ−3’−(ジブチルアミノ)−6’−メチルフルオラン等のフルオラン系染料、又はその他のロイコオーラミン系、インドリン系、インジゴ系等の各染料等を挙げることができる。これらの発色剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
本発明は、有機酸性物質として、前記一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物を感熱発色層に配合する。一般式(1)のX、Z及びAは前記のとおりであるが、好ましくは、Xが酸素原子であり、Zがフェニル基又は低級アルキル置換フェニル基であり、低級アルキル置換フェニル基の場合、炭素数3以下のアルキル置換フェニル基が好ましい。また、Zがハロゲン原子の場合、ハロゲン原子としてフッ素、塩素、臭素等が挙げられる。また、Aで表される2価以上の価数を有する基は2価の基が好ましく、nは2が好ましい。
【0015】
Aで表される基の好ましい具体例としては、Cn H2n(nは1〜8の整数)で表される脂肪族炭化水素基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルホニル基等の有機官能基や、下記のような両末端が芳香族環である2価の芳香族基を挙げることができる。
【0016】
【化3】
【0017】
好ましい有機酸性物質としては、下記一般式(2)で表される少なくとも1種の化合物がある。
【0018】
【化4】
(式中、Rは水素原子、低級アルキル基又はハロゲン原子を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、Aは2価の基を表す。)
【0019】
一般式(2)のRは、好ましくは水素原子又は低級アルキル基であり、低級アルキル基の場合、炭素数3以下のアルキル基が好ましい。また、Rがハロゲン原子の場合、ハロゲン原子としてフッ素、塩素、臭素等が挙げられる。また、Aで表される基の好ましい具体例としては、前記と同様なものが挙げられる。
【0020】
最も好ましい有機酸性物質の一例としては、下記の化合物1が挙げられる。
【0021】
化合物1(融点160〜164℃)
【化5】
【0022】
有機酸性物質の配合量は、ロイコ染料や有機酸性物質の種類等によって異なるが、ロイコ染料1重量部に対して通常1〜6重量部、好ましくは1.5〜2.5重量部であるのがよい。
【0023】
さらに、本発明は、増感剤として、3−メトキシジフェニルアミン、3−ベンザルフタリド、N−フェニルマレイミド、1,2,4−トリアセトキシベンゼン、1,4−ジアセトキシベンゼン、1,4−ジアセチルベンゼン、ベンジル又は4−アセチルビフェニルから選ばれた少なくとも1種の化合物を感熱発色層に配合する。増感剤の配合量は、ロイコ染料や有機酸性物質の種類等によって異なるが、ロイコ染料1重量部に対して通常1〜6重量部、好ましくは1.5〜2.5重量部がよい。
【0024】
また、これらの他、熱応答性はやや劣るが、エポキシ樹脂、ステアリン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛等の有機酸性物質の金属塩を、発色部(記録画像)の保存安定性を向上するために添加してもよい。
【0025】
さらに、本発明の感熱記録材料には、その用途などに応じて種々の添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、微粒子状に分散したロイコ染料と有機酸性物質とを互いに隔離した状態で固着させる結着剤、例えばポリビニルアルコ−ル(PVA)、ラテックス、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸カゼイン、ゼラチン、デンプン又はこれらの誘導体などや、感熱発色層の白色度、筆記具の滑り性、スティッキングなどを改善する白色顔料、例えば炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、酸化チタンなどがある。これらの添加剤は、混合されて又は別個に、紙フィルムなどの支持体上に塗布されて感熱発色層を形成する。また、この感熱発色層は、保護層などの他の層を有していてもよい。
【0026】
本発明の感熱記録材料においては、この感熱発色層を構成するロイコ染料、有機酸性物質、増感剤の相互作用が、優れた熱応答性、記録画像の堅牢性を生じさせ、また地肌のかぶりや、記録画像の白化を抑えているものと考えられる。
【0027】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明を具体的に説明する。
【0028】
参考例1
(1)A液の調製
有機酸性物質として化合物1を11.5重量部、増感剤として3−メトキシジフェニルアミン11.5重量部、10重量%−PVA水溶液46重量部とをサンドミルを用いて粉砕混合し、平均粒径1.0μmのA液を調製した。
【0029】
(2)B液の調製
7’−アニリノ−3’−(ジブチルアミノ)−6’−メチルフルオラン5.5重量部及び10重量%−PVA水溶液49.5重量部をペイントシェーカーを用いて粉砕混合し、平均粒径1.0μmのB液を調製した。
【0030】
(3)感熱記録紙の調製
A液20重量部、B液10重量部、パラフィンワックスエマルジョン(中京油脂製:ハイドリンZ−7)1重量部、パラフィンワックスエマルジョン(中京油脂製:ハイドリンP−7)4重量部、50%炭酸カルシウム分散液10重量部及び10重量%−PVA水溶液11.5重量部を混合して塗液を調製し、この塗液を基紙上に塗布して乾燥し、乾燥後の塗布量6g/m2 の感熱記録紙を得た。
【0031】
(4)発色試験
このようにして得られた感熱記録紙について、動的発色試験を行った。動的発色試験は、印字試験機(大倉電気製)を使用し、耐湿性試験用に24V、1.0msで、耐可塑剤性試験用に27V、1.9msでそれぞれ印字を行い、発色濃度をマクベス反射濃度計RD−914を使用して測定する方法で行い、地肌の発色濃度と動的濃度を測定して感度評価をした。結果を表1及び表2に示す。
【0032】
(5)耐湿性試験方法
動的発色試験を行った感熱記録紙(24V、1.0ms)を恒温恒湿器(40℃、相対湿度90%)に10時間保存し、その後、地肌の濃度と印字部の発色濃度をマクベス反射濃度計RD−914を使用して測定する方法で行った。結果を表1に示す。
【0033】
残存率は下記数式(1)により算出した。
残存率=(A−B)/C (1)
(式中、Aは耐湿性試験後の動的発色濃度を示し、Bは耐湿性試験後の地肌の発色濃度から耐湿性試験前の地肌の発色濃度を差し引いた値を示し、Cは耐湿性試験前の動的発色濃度を示す。)
【0034】
(6)耐可塑剤性試験方法
動的発色試験を行った感熱記録紙(27V、1.9ms)に塩化ビニルラップを印字面全面に密着させる。この試験用感熱記録紙を乾燥器(50℃)に10時間保存した後、地肌の濃度と印字部の発色濃度をマクベス反射濃度計RD−914を使用して測定する方法で行った。
【0035】
残存率は下記数式(2)により算出した。
残存率=(D−E)/F (2)
(式中、Dは耐可塑剤試験後の動的発色濃度を示し、Eは耐可塑剤性試験後の地肌の発色濃度から耐可塑剤性試験前の地肌の発色濃度を差し引いた値を示し、Fは耐可塑剤性試験前の動的発色濃度を示す。)
【0036】
(7)白化性試験方法
得られた感熱記録紙を200℃にて発色させた後、室温で3日間放置し、印字部分(記録画像)の白化の程度を観察した。観察結果を表3に示す。印字は大栄科学精器製アイロンテスタ−を用いて行った。
【0037】
参考例2
参考例1のA液の調製の際に、3−メトキシジフェニルアミンに代えて3−ベンザルフタリドを使用する以外は、参考例1と全く同様にして感熱記録紙を調製し、参考例1の場合と同様に発色試験を行った。耐湿性試験の結果を表1に、耐可塑剤性試験の結果を表2に、白化性試験の結果を表3に示す。
【0038】
参考例3
参考例1のA液の調製の際に、3−メトキシジフェニルアミンに代えてN−フェニルマレイミドを使用する以外は、参考例1と全く同様にして感熱記録紙を調製し、参考例1の場合と同様に発色試験を行った。耐湿性試験の結果を表1に、耐可塑剤性試験の結果を表2に、白化性試験の結果を表3に示す。
【0039】
参考例4
参考例1のA液の調製の際に、3−メトキシジフェニルアミンに代えて1,2,4−トリアセトキシベンゼンを使用する以外は、参考例1と全く同様にして感熱記録紙を調製し、参考例1の場合と同様に発色試験を行った。耐湿性試験の結果を表1に、耐可塑剤性試験の結果を表2に、白化性試験の結果を表3に示す。
【0040】
参考例5
参考例1のA液の調製の際に、3−メトキシジフェニルアミンに代えて1,4−ジアセトキシベンゼンを使用する以外は、参考例1と全く同様にして感熱記録紙を調製し、参考例1の場合と同様に発色試験を行った。耐湿性試験の結果を表1に、耐可塑剤性試験の結果を表2に、白化性試験の結果を表3に示す。
【0041】
参考例6
参考例1のA液の調製の際に、3−メトキシジフェニルアミンに代えて1,4−ジアセチルベンゼンを使用する以外は、参考例1と全く同様にして感熱記録紙を調製し、参考例1の場合と同様に発色試験を行った。耐湿性試験の結果を表1に、耐可塑剤性試験の結果を表2に、白化性試験の結果を表3に示す。
【0042】
参考例7
参考例1のA液の調製の際に、3−メトキシジフェニルアミンに代えてベンジルを使用する以外は、参考例1と全く同様にして感熱記録紙を調製し、参考例1の場合と同様に発色試験を行った。耐湿性試験の結果を表1に、耐可塑剤性試験の結果を表2に、白化性試験の結果を表3に示す。
【0043】
実施例1
参考例1のA液の調製の際に、3−メトキシジフェニルアミンに代えて4−アセチルビフェニルを使用する以外は、参考例1と全く同様にして感熱記録紙を調製し、参考例1の場合と同様に発色試験を行った。耐湿性試験の結果を表1に、耐可塑剤性試験の結果を表2に、白化性試験の結果を表3に示す。
【0044】
比較例1
参考例1のA液の調製の際に、化合物1に代えてビスフェノ−ル Aを使用する以外は、参考例1と全く同様にして感熱記録紙を調製し、参考例1の場合と同様様に発色試験を行った。耐湿性試験の結果を表1に、耐可塑剤性試 験の結果を表2に、白化性試験の結果を表3に示す。
【0045】
比較例2
参考例1のA液の調製の際に、3−メトキシジフェニルアミンに代えてパラベンジルビフェニルを使用する以外は、参考例1と全く同様にして感熱記録紙を調製し、参考例1の場合と同様に発色試験を行った。耐湿性試験の結果を表1に、耐可塑剤性試験の結果を表2に、白化性試験の結果を表3に示す。
【0046】
比較例3
参考例1のA液の調製の際に、3−メトキシジフェニルアミンに代えてp−トルエンスルホン酸フェニルエステルを使用する以外は、参考例1と全く同様にして感熱記録紙を調製し、参考例1の場合と同様に発色試験を行った。耐湿性試験の結果を表1に、耐可塑剤性試験の結果を表2に、白化性試験の結果を表3に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【発明の効果】
本発明における有機酸性物質と増感剤の組み合わせは、感熱記録材料として優れた熱応答性を有し、画像の保存安定性、白化を著しく改善できる。
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