JP3690763B2 - 芳香族多官能ビニルエーテル、重合性組成物及びその硬化物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な多官能ビニルエーテル、及び該多官能ビニルエーテルを含む重合性性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂などの重合性組成物は主に、インキ、塗料、接着剤、レジスト、製版材などの多くの分野で用いられている。その主剤としてはアクリル系モノマーや多官能アクリル化合物が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、アクリル系モノマーには皮膚刺激性や臭気性が強く、作業性に問題がある。そこで、最近、低臭気性で皮膚刺激性が少ないビニルエーテル化合物に注目されるようになった。また、ビニルエーテル化合物はカチオン重合性でその硬化速度が速いということなどからアクリル系化合物の欠点を改善できる。しかしながら、市場ではアクリル系化合物に比べてその種類が少なく、価格的にも高価なため十分ニーズに対応できていない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究の結果本発明を完成した。すなわち本発明は、
(1)下記一般式(A)
【0005】
【化2】
【0006】
(式中Rは、炭素数1〜4のアルキル基、アルケニル基またはハロゲン原子を表し、互いに同一であっても、異なっていても良い。nは、平均値を示し0〜4の正数を表す。Vは、水素原子または、一般式−{R1 −O−}q −CH=CH2 (R1 は炭素数1〜10の直鎖または枝分かれ状のアルキレン基を、qは0〜10の整数をそれぞれ表す。)で表されるビニルエーテル基を示す。また水素原子/ビニル基の比は式(A)の分子全体の平均値として0/100〜70/30(モル比)である。)で表される芳香族多官能ビニルエーテル、
(2)重合開始剤及び上記(1)記載の芳香族多官能ビニルエーテルを含む重合性組成物、
(3)上記(2)記載の重合性組成物を硬化して得られる硬化物
を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
一般式(A)で表される化合物の一般的な合成法としては、一般式(B)
【0008】
【化3】
【0009】
(式中R、m及びnはそれぞれ式(A)におけるのと同じ意味を表す。)
で表される芳香族多価フェノール性化合物と、アセチレン、または一般式(C)
Z−{R1 −O−}r −CH=CH2 (C)
(式中Zはハロゲン原子、R1 は炭素数1〜10の直鎖または枝分かれ状のアルキレン基を、rは1〜10の整数をそれぞれ表す。)
で表されるハロアルキレンオキシビニル化合物を塩基性化合物の存在下で反応させることによって得られる。
【0010】
用いうる式(C)の化合物の具体例としては、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、ブロムエチルビニルエーテルなどがある。式(C)の化合物の使用量は、式(B)の化合物のOH基1モル当量に対して通常0.1モル以上、好ましくは、0.3モル以上、特に好ましくは1〜3モルである。
【0011】
一般式(B)で表される化合物は、例えばシクロペンタジエンのディールス・アルダー反応物であるジシクロペンタジエンにフェノール、オルソクレゾール、パラクレゾール、キシレノール、テトラメチルフェノール、オルソブロムフェノール、パラブロムフェノール、1ーナフトール、2ーナフトール、2ーメチルー1ーナフトール、4ーブロムー1ーナフトール、2ーブロムー1ーナフトールなどを付加させて得られる。これらの化合物は単独のみならず二種類以上混合して使用してもよい。
【0012】
式(B)の化合物にアセチレンを付加させる反応は水酸化カリウム、カリウムアルコラート、水酸化ナトリウム、ナトリウムアルコラートなどを触媒にして公知の方法で行われる。反応圧力は通常、常圧〜100kg/cm2 、好ましくは常圧〜50kg/cm2 で行われ、反応温度は通常30〜250℃、好ましくは60〜200℃で、反応時間は4〜15時間、好ましくは6〜12時間であるがこれらに限定されるものではない。反応終了後反応物を蒸留などで精製して目的化合物を得ることができる。
【0013】
また、式(B)の芳香族多価フェノール性化合物と式(C)のハロアルキレンオキシビニル化合物を塩基性化合物の存在下で反応させる場合、使用しうる塩基性化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウムなどのアルカリ金属化合物、ナトリウムメチラートなどのアルカリ金属アルコラート及び、金属ナトリウムなどのアルカリ金属などが挙げられ、その使用量は、式(B)の化合物のOH基1.0モル当量に対して通常0.5〜10モル、好ましくは1.0〜3.0モルである。またこの時、テトラブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウム・クロライド、トリオクチルメチルアンモニウム・クロライド、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩、ジシクロヘキシルー18ークラウンー6、ジベンゾー18ークラウンー6、18ークラウンー6、ポリエチレングリコール400などの相間移動触媒を併用すれば反応はより促進される。相間移動触媒の使用量は、式(B)の化合物のOH基1.0モル当量に対して通常0.1〜20モル%、好ましくは0.5〜10モル%である。
【0014】
前記反応は、不活性溶媒、例えばジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,Nージメチルイミダゾリドンのような非プロトン性極性溶媒等の溶媒中で行なってもよい。反応温度は通常30〜150℃、好ましくは60〜110℃、反応時間は通常5〜12時間、好ましくは7〜10時間である。また反応で生成した水を反応系外に除去しながら反応を進行させることもできる。
反応終了後、反応混合液を室温まで冷却し、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどで有機層を抽出し有機層を数回水洗することで、未反応の式(B)の化合物、副生した無機塩を除去し、有機層を無水硫酸ナトリウムなどの乾燥剤で乾燥後、減圧下で溶剤を除去することにより目的物を得ることができる。
【0015】
本発明の芳香族多官能ビニルエーテル、重合開始剤、及びその他必要に応じて種々の重合性化合物、染料、顔料、可塑剤、無機充填剤、溶剤などを混合して本発明の重合性組成物を得ることができる。
重合開始剤としては、熱重合開始剤、光ラジカル又は光カチオン重合開始剤などのラジカル重合やイオン(カチオン)重合を起こしうるものであれば特に制限はない。用いうる熱重合開始剤の具体例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスー2ー4ージメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。用いうる光ラジカル重合開始剤の具体例としては、2,4ージエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、4ージメチルアミノイソアミルベンゾエート、4ージメチルアミノエチルベンゾエート等が挙げられる。用いうる光カチオン重合開始剤の具体例としては、特公昭53ー32831号、特公昭52ー14277号、特公昭52ー14278号、特公昭52ー14279号、特公昭52ー25686号、特公昭61ー34752号、特開昭54ー53181号、特開昭54ー95686号、特公昭61ー36530号、特公昭59ー19581号、特公昭63ー65688号、特開昭55ー164204号、特公昭60ー30690号、特公昭63ー36332号、特公平1ー39423号、特公平2ー10171号、特公平5ー15721号、特公平4ー62310号、特公昭62ー57653号、特公平3ー12081号、特公平3ー12082号、特公平3ー16361号、特公昭63ー12092号、特公昭63ー12093号、特公昭63ー12095号、特公昭63ー12094号、特公平2ー37924号、特公平2ー35764号、特公平4ー13374号、特公平4ー75908号、特公平4ー73428号、特公昭53ー32831号、特開平2ー150848号、特開平2ー296514号、米国特許第4,069,055号、米国特許第4,069,056号、米国特許第3,703,296号等に記載されているスルホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、アルソニウム塩、鉄・アレーン錯体などが挙げられる。これらの重合開始剤は式(A)の化合物に対して通常0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜20重量%使用され、本発明の硬化物を得る際に式(A)の化合物と混合してもよいし、本発明の重合性組成物中に混合してもよい。
【0016】
本発明の硬化物は、本発明の芳香族多官能ビニルエーテルをそのまま、好ましくは本発明の重合性組成物として、電子線または放射線の照射或いは加熱して得ることができる。
【0017】
【発明の効果】
本発明の芳香族多官能ビニルエーテルは低皮膚刺激性の重合性化合物としてコーティング剤、インキ、塗料、接着剤、レジスト、製版材などの種々の分野で極めて有用である。特に光カチオン重合開始剤を含有する本発明の重合性組成物は硬化速度が速く、酸素による重合阻害がほとんど無いという特徴を示す。
【0018】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0019】
実施例1
温度計、環流冷却器、滴下ロート、窒素導入装置、攪拌装置のついた反応器にジシクロペンタジエンーフェノール重合体(n=1.4(平均値))64g、ジメチルスルホキシド70mlを仕込み溶解させた後、粉末状水酸化カリウム23gを加え、60℃で30分攪拌する。次いで2ークロルエチルビニルエーテル84.8gを反応器内の温度を70℃に保ちながら60〜90分間かけて滴下する。さらに75〜80℃で5時間反応を続けて完結させる。
反応液を室温に冷却し、メチルエチルケトン200g、水300gを加え、有機層へ目的化合物を抽出し、水層へ無機塩、未反応原料を溶解させる。分液ロートで水層を分別し、有機層の水洗を5回繰り返し、有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて一夜放置する。これを濾過後、メチルエチルケトン、過剰のクロルエチルビニルエーテルを減圧留去して生成物78gを得た。この生成物の赤外線吸収スペクトルには1610cm-1、975cm-1にビニル基による吸収、1200cm-1にエーテル結合による吸収が認められ、3400cm-1付近の水酸基による吸収が完全に消失していることより目的とする本発明の芳香族多官能ビニルエーテルであることを確認した。(化合物A)
【0020】
実施例2
温度計、環流冷却器、滴下ロート、窒素導入装置、攪拌装置のついた反応器にジシクロペンタジエンーナフトール重合体(n=1.2(平均値))84g、ジメチルスルホキシド90mlを仕込み溶解させた後、粉末状水酸化カリウム24gを加え、60℃で30分攪拌する。次いで2ークロルエチルビニルエーテル84gを反応器内温度を70℃に保ちながら60〜90分間かけて滴下する。さらに75〜80℃で5時間反応を続けて完結させる。
反応液を室温に冷却し、メチルエチルケトン200g、水300gを加え、有機層へ目的化合物を抽出し、水層へ無機塩、未反応原料を溶解させる。分液ロートで水層を分別し、有機層の水洗を5回繰り返し、有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて一夜放置する。これを濾過後、メチルエチルケトン、過剰のクロルエチルビニルエーテルを減圧留去して生成物95gを得た。この生成物の赤外線吸収スペクトルには1610cm-1、975cm-1にビニル基による吸収、1200cm-1にエーテル結合による吸収が認められ、3400cm-1付近の水酸基による吸収が完全に消失していることより目的とする本発明の芳香族多官能ビニルエーテルであることを確認した。(化合物B)
【0021】
実施例3
温度計、環流冷却器、滴下ロート、窒素導入装置、攪拌装置のついた反応器にジシクロペンタジエンーブロモフェノール(n=1.4(平均値))47.8g、ジメチルスルホキシド60mlを仕込み溶解させた後、粉末状水酸化ナトリウム10gを加え、60℃で30分攪拌する。次いで2ークロルエチルビニルエーテル42gを反応器内温度を70℃に保ちながら60〜90分間かけて滴下する。さらに75〜80℃で5時間反応を続けて完結させる。
反応液を室温に冷却し、メチルエチルケトン200g、水300gを加え、有機層へ目的化合物を抽出し、水層へ無機塩、未反応原料を溶解させる。分液ロートで水層を分別し、有機層の水洗を5回繰り返し、有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて一夜放置する。これを濾過後、メチルエチルケトン、過剰のクロルエチルビニルエーテルを減圧留去して生成物43gを得た。この生成物の赤外線吸収スペクトルには1610cm-1、975cm-1にビニル基による吸収、1200cm-1にエーテル結合による吸収が認められ、3400cm-1付近の水酸基による吸収が完全に消失していることより目的とする本発明の芳香族多官能ビニルエーテルであることを確認した。(化合物C)
【0022】
実施例4
温度計、ガス導入管を備えたオートクレーブ反応器にジシクロペンタジエンーフェノール重合体(n=1.3(平均値))32g、ジメチルスルホキシド50mlを仕込み溶解させた後、粉末状水酸化カリウム8gを加え、110℃に加熱した。反応器内に窒素ガスを加えて圧力を10kg/cm2 にし、更に、アセチレンを加えて圧力を15kg/cm2 にする。アセチレンの取り込みが終了したところでアセチレンの導入を止め、冷却し、ガスを放出させ常圧にして反応生成物を取り出す。反応生成物にメチルエチルケトン200g、水300gを加え、有機層へ目的化合物を抽出し、水層へ未反応原料を溶解させる。分液ロートで水層を分別し、有機層の水洗を5回繰り返し、有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて一夜放置する。これを濾過後、メチルエチルケトンを減圧留去して18gの生成物を得た。この生成物の赤外線吸収スペクトルには1610cm-1、975cm-1にビニル基による吸収、1250cm-1にエーテル結合による吸収が認められ、3400cm-1付近の水酸基による吸収が完全に消失していることより目的とする本発明の芳香族多官能ビニルエーテルであることを確認した。(化合物D)
【0023】
試験例
実施例1〜4で得られて本発明の芳香族多官能ビニルエーテルをそれぞれ下記の重合性組成物とし硬化試験を行った。
重合性組成物の組成
化合物A〜D 10部
重合開始剤(種類は表1に示す) 0.1部
溶剤(メチルエチルケトン) 3部
硬化方法
光硬化; RIテスターでPETフィルムに重合性組成物を塗布(膜厚10μm)し、乾燥後高圧水銀灯80W/cm 1灯、ランプ下10cm、コンベアスピード10、20、50m/min.での照射をそれぞれ数回繰り返し下記硬化判定試験に供した。
硬化判定;MEK(メチルエチルケトン)ラビングテスト50回で樹脂膜が剥離しなかったパス回数(照射の繰り返し数)を硬化と判定した。結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表1において
SP−170;アデカオプトマー(光カチオン重合開始剤、旭電化(株)製)
比較例A;セロキサイド2021(脂環式エポキシ樹脂、(株)ダイセル製)
比較例B;エピコート828(芳香族系エポキシ樹脂、油化シェルエポキシ(株)製)
【0026】
表1より明らかなとおり、本発明のビニルエーテルを含む重合性組成物は、硬化速度に優れるため、照射回数が少ない。
Claims (3)
- 重合開始剤及び請求項1記載の芳香族多官能ビニルエーテルを含む重合性組成物。
- 請求項2記載の重合性組成物を硬化して得られる硬化物。
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