JP3778470B2 - 新規脂環式エポキシビニルエーテル、重合性組成物およびその硬化物 - Google Patents
新規脂環式エポキシビニルエーテル、重合性組成物およびその硬化物 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な脂環式エポキシビニルエーテル、該脂環式エポキシビニルエーテルを含有する重合性組成物およびその硬化物に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂などの重合性組成物は主に、インキ、塗料、接着剤、レジスト、製版材などの多くの分野で用いられている。この重合性組成物の主剤としては、アクリル系モノマーや多官能アクリレートが最も一般的である。
【0003】
ところが、アクリル系モノマーには皮膚刺激性や臭気性、酸素による重合抑制作用に付随する諸問題がある。そこで最近、皮膚低刺激性で低臭気性、かつ酸素の影響が少ない脂環式エポキシ化合物やビニルエーテル化合物を用いた、カチオン重合系が注目されるようになった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低臭気性、低皮膚刺激性であり、カチオン重合系において硬化速度が速く、酸素の影響が少ない化合物、重合性組成物を提供し得るものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、種々の分野において極めて有用である化合物を見いだし、本発明を完成した。すなわち本発明は、
(1)式(A)で表される脂環式エポキシビニルエーテル、
【0006】
【化4】
【0007】
(式(A)中X1 はその骨格に置換基として式(1)で表される官能基を有する硬化性基、およびその骨格に置換基として式(2)で表される官能基を有する硬化性基から選ばれる1つ以上を表すが、2個あるX1 のうち1個以上は、式(1)で表される官能基を有する硬化性基である。)
【0008】
【化5】
【0009】
【化6】
【0010】
(式(2)中R1 は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
(2)上記(1)記載の脂環式エポキシビニルエーテルを含有する重合性組成物、
(3)上記(2)記載の重合性組成物を硬化して得られる硬化物
に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
前記式(A)中X1 が式(1)で表される官能基を有する硬化性基および式(2)で表される官能基を有する硬化性基の場合は、その骨格に式(1)および式(2)で表される構造を置換基として有する官能基であれば、同一構造でも互いに異なる構造でもよく、特に制限はないが、例えば式(1)で表される官能基を有する硬化性基は、一般式(3)
【0012】
【化7】
【0013】
(式(3)中aは0〜3の整数を、bは0〜4の整数を、R2 およびR3 は直接結合、カルボニル基および炭素数1〜4のアルキレン基より選ばれる1つ以上を、R4 は炭素数2〜12のアルキレン基またはハロゲン化アルキレン基を、R5 は炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン化アルキル基をそれぞれ表す。)で表される構造が好ましく、式(2)で表される官能基を有する硬化性基は、一般式(4)
【0014】
【化8】
【0015】
(式(4)中a、b、R3 、R4 、およびR5 は式(3)におけるのと同じ意味を、R1 は式(2)におけるのと同じ意味をそれぞれ表す。)で表される構造が好ましい。
【0016】
また、前記において、aおよびbとしては0が好ましく、R1 としては水素原子が、R2 としてはカルボニル基が、R3 としてはメチレン基が、それぞれ好ましい基として挙げられる。
【0017】
前記式(A)で表される脂環式エポキシビニルエーテルの合成自体は、アルコールとハロゲン化合物との反応や、エステルとアルコールとのエステル交換反応等、公知の方法に従って合成でき、例えば一般式(5)
【0018】
【化9】
【0019】
(式(5)中a、b、R3 、R4 およびR5 は式(3)におけるのと同じ意味を、R1 は式(1)におけるのと同じ意味をそれぞれ表す。)で表される化合物と、式(6)
【0020】
【化10】
【0021】
(式(6)中R6 は直接結合および炭素数1〜4のアルキレン基より選ばれる1つ以上を、Y1 はハロゲン原子、トシル基、ベンゼンスルホニル基およびメタンスルホニル基から選ばれる1つ以上をそれぞれ表す。)で表される化合物、或いは式(7)
【0022】
【化11】
【0023】
で表される官能基を有するエステル化合物とを、塩基性化合物の存在下で反応させることによって得られる。また一般式(8)
【0024】
【化12】
【0025】
(式(8)中a、b、R3 、R4 およびR5 は式(3)におけるのと同じ意味を、R1 は式(1)におけるのと同じ意味を、Y2 はハロゲン原子、トシル基、ベンゼンスルホニル基、およびメタンスルホニル基から選ばれる1つ以上をそれぞれ表す。)で表される化合物と、式(9)
【0026】
【化13】
【0027】
(式(9)中R6 は式(6)におけるのと同じ意味を表す。)で表される化合物とを、塩基性化合物の存在下で反応させることによっても得られる。
【0028】
また、前記において、Y1 およびY2 としては塩素原子が、R6 としてはメチレン基がそれぞれ好ましい基として挙げられる。
【0029】
前記の方法において用い得る式(5)の化合物の具体例としては、シクロヘキサンジメチロールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメチロールモノ1−プロペニルエーテル、2−ヒドロキシエトキシメチル−2’−ビニロキシエトキシメチルヘキサン、p−ヒドロキシフェノキシメチル−p−ビニロキシフェノキシメチルヘキサン等が挙げられる。
【0030】
用いる式(6)の化合物の具体例としては、1−クロロ−3,4−エポキシシクロヘキサン、1−クロロメチル−3,4−エポキシシクロヘキサン、1−ブロモメチル−3,4−エポキシシクロヘキサン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルトシレート、1−(2’−クロロエチル)−3,4−エポキシシクロヘキサン等が挙げられる。式(6)の化合物の使用量は、式(5)の化合物1モルに対して通常1モル以上、好ましくは、1.2〜3.0モルである。反応温度は通常20〜120℃、好ましくは40〜100℃で、60℃以上では加圧下で反応させることができる。反応時間は通常30分〜24時間、好ましくは1〜10時間である。
【0031】
式(7)で表される官能基を有するエステル化合物については、単官能でも多官能でもよく、特に制限はないが、例えばメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、トリエチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)等が挙げられる。式(7)で表される官能基を有するエステル化合物は、式(5)の化合物1モルに対して式(7)で表される官能基が通常1モル当量以上、好ましくは、1.2〜3.0モル当量となる量で使用する。反応温度は通常20〜120℃、好ましくは40〜100℃で、反応時間は通常1〜48時間、好ましくは5〜24時間である。
【0032】
用い得る式(8)の化合物の具体例としては、(4−クロロメチルシクロヘキシル)メチルビニルエーテル、(4−ブロモメチルシクロヘキシル)メチルビニルエーテル、2−クロロエトキシメチル−2’−ビニロキシエトキシメチルヘキサン、p−クロロフェノキシメチル−p−ビニロキシフェノキシメチルヘキサン等が挙げられる。
【0033】
用い得る式(9)の化合物の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキサノール、3,4−エポキシシクロヘキシルメタノール、2−(3’,4’−エポキシシクロヘキシル)エタノール、3−(3’,4’−エポキシシクロヘキシル)プロパノール等が挙げられる。式(9)の化合物の使用量は、式(8)の化合物1モルに対して通常1モル以上、好ましくは、1.2〜3.0モルである。反応温度は通常20〜120℃、好ましくは40〜100℃で、反応時間は通常30分〜24時間、好ましくは1〜10時間である。
【0034】
式(5)の化合物と式(6)の化合物との反応、および、式(8)の化合物と式(9)の化合物との反応は、塩基性化合物の存在下で行い、不活性溶媒、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルイミダゾリドンのような非プロトン性極性溶媒、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の無極性溶媒、テトラヒドロフラン、ジグライム、ジオキサン、トリオキサン等、またはこれらの混合溶媒中で行ってもよい。これら溶媒の使用量は、式(5)または式(8)の化合物0.1モルに対して、通常0〜500ml、好ましくは50〜300mlである。
【0035】
用い得る塩基性化合物の具体例としては、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属化合物、金属ナトリウム、金属カリウムなどのアルカリ金属、および、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドなどが挙げられ、その使用量は、式(5)又は式(9)の化合物1.0モルに対して通常1.0モル以上、好ましくは1.5〜10モルである。
【0036】
反応終了後、反応混合液を室温まで冷却した後、水と、ジエチルエーテルまたはヘキサンなどで抽出を行い、次いで有機層に無水硫酸ナトリウム、合成ゼオライトなどの乾燥剤を加えて乾燥させる。このときに、活性炭などの脱色剤を加えてもよい。この後、濾過し、減圧蒸留等により式(A)で表される本発明の脂環式エポキシビニルエーテルを得ることができる。
【0037】
式(5)の化合物と式(7)で表される官能基を有するエステル化合物との反応は、塩基性化合物の存在下で行い、副生するアルコールを減圧下で除去しながら行うのが好ましい。用い得る塩基性化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、および、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドなどが挙げられ、その使用量は、式(5)の化合物1.0モルに対して通常1.0ミリモル以上、好ましくは0.01〜0.1モルである。
【0038】
反応終了後、反応混合液を室温まで冷却した後、水洗や、減圧蒸留等により式(A)で表される本発明の脂環式エポキシビニルエーテルを得ることができる。
【0039】
次に本発明の重合性組成物につき説明する。
本発明の脂環式エポキシビニルエーテルと重合開始剤、及びその他必要に応じて種々の重合性化合物、硬化促進剤、染料、顔料、可塑剤、無機充填剤、溶剤などを混合して本発明の重合性組成物を得ることができる。重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤などのラジカル重合やイオン(カチオン)重合を起こしうるものであれば特に制限はない。
【0040】
用いうる熱重合開始剤の具体例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等のラジカル開始剤の他、三フッ化ホウ素、二塩化亜鉛、三塩化アルミニウムなどのルイス酸類等の、カチオン重合開始剤等が挙げられる。
【0041】
用いうる光ラジカル重合開始剤の具体例としては、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、4−ジメチルアミノイソアミルベンゾエート、4−ジメチルアミノエチルベンゾエート等が挙げられる。
【0042】
用いうる光カチオン重合開始剤の具体例としては、特公昭53−32831号、特公昭52−14277号、特公昭52−14278号、特公昭52−14279号、特公昭52−25686号、特公昭61−34752号、特開昭54−53181号、特開昭54−95686号、特公昭61−36530号、特公昭59−19581号、特公昭63−65688号、特開昭55−164204号、特公昭60−30690号、特公昭63−36332号、特公平1−39423号、特公平2−10171号、特公平5−15721号、特公平4−62310号、特公昭62−57653号、特公平3−12081号、特公平3−12082号、特公平3−16361号、特公昭63−12092号、特公昭63−12093号、特公昭63−12095号、特公昭63−12094号、特公平2−37924号、特公平2−35764号、特公平4−13374号、特公平4−75908号、特公平4−73428号、特公昭53−32831号、特開平2−150848号、特開平2−296514号、米国特許第4,069,055号、米国特許第4,069,056号、米国特許第3,703,296号等に記載されているスルホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、アルソニウム塩、鉄・アレーン錯体などが挙げられる。
【0043】
これらの重合開始剤は式(A)の化合物に対して、通常0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜20重量%使用され、本発明の硬化物を得る際に式(A)の化合物と混合してもよいし、本発明の重合性組成物中に混合してもよい。
【0044】
本発明の硬化物は、本発明の脂環式エポキシビニルエーテルをそのまま、好ましくは本発明の重合性組成物として、紫外線、電子線、または放射線の照射、或いは加熱して得ることができる。
【0045】
【実施例】
以下に実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
実施例1
温度計、攪拌装置、および分留管のついた1000mlの反応器に、シクロヘキサンジメチロールモノビニルエーテル85.2g、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート126.0gと、水酸化カリウム1gを仕込み、撹拌しながら反応器内が60℃になるまで徐々に加熱した。その後、反応器内温度を60℃に保ち、撹拌しながら15時間反応させた。
【0047】
次に、反応器内を80℃まで加熱し、0.2〜0.25mmHgに減圧して、副生した3,4−エポキシシクロヘキシルメタノールを分留管より除去しながら、さらに12時間反応させた。その後、3,4−エポキシシクロヘキシルメタノールが発生しなくなったのを確認し、室温まで冷却した後、水200mlを加え、ヘキサン300mlで3回抽出した。次いで、抽出した有機層を500mlに濃縮し、無水硫酸ナトリウム50gを加え、一晩乾燥させた。その後、濾過し、ヘキサンを減圧除去した後、蒸留して式(10)で表される本発明の脂環式エポキシビニルエーテルを得た(収量100g、収率68%)。IRスペクトルより、1620cm-1にビニルエーテル基特有の吸収と、1720cm-1にカルボニルの吸収があり、3400cm-1付近に水酸基の吸収がないことを確認した。
【0048】
【化14】
【0049】
【発明の効果】
本発明のプロペニルエーテルは、低皮膚刺激性の重合性組成物として、コーティング剤、インキ、塗料、接着剤、レジスト、製版材、絶縁材、光学材料などの種々の分野で極めて有用である。特に光カチオン重合開始剤を含有する本発明の重合性組成物は硬化速度が速く、酸素による重合阻害がほとんど無いという特徴を示す。また、低粘度であるため、希釈性、加工性にも優れる。
Claims (3)
- 式(A)で表される脂環式エポキシビニルエーテル。
- 請求項1記載の脂環式エポキシビニルエーテルを含有する重合性組成物。
- 請求項2記載の重合性組成物を硬化して得られる硬化物。
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