JP3512437B2 - 新規スルホニウム塩化合物および重合開始剤 - Google Patents

新規スルホニウム塩化合物および重合開始剤

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、新規スルホニウム塩化
合物およびそれを含有するカチオン重合開始剤にに関す
るものである。該重合開始剤を含有するカチオン重合性
組成物は、加熱により短時間で硬化することができ、得
られた硬化物は、優れた物性を有しているため成型樹
脂、注型樹脂、塗料、接着剤、インキ等の材料として好
適に用いられる。 【0002】 【従来の技術】従来、エポキシ樹脂の硬化剤として、二
液系で広く利用されている活性なアミン含有化合物、カ
ルボン酸無水物やメルカプト化合物がある。一方、エポ
キシ樹脂を一液系として硬化するのには、フッ化ホウ素
−モノエチルアミンがある。また、熱潜在性カチオン重
合開始剤及びその組成物が記載されているものとして、
特開昭58−37003号公報、特開昭63−2230
02号公報、特開昭56−152833号公報、特開平
2−178319号公報、特開平3−17119号公報
などが知られている。 【0003】活性なアミン含有化合物やカルボン酸無水
物により、エポキシ樹脂を硬化する所謂二液系では、完
全に各成分を混合する必要があり、硬化時間も数時間要
する。また、反応が室温でも逐次的に起こるので、ポッ
トライフが数時間から数日と短く、取り扱い上問題があ
る。 【0004】一方、エポキシ樹脂を一液系として硬化す
ることができるフッ化ホウ素−モノエチルアミン系で
は、取り扱い上が便利ではあるが、硬化温度が160℃
以上と高く、しかも完全硬化するのに1〜8時間要する
という問題がある。また、特開昭58−37003号公
報に記載されているスルホニウム塩系の熱潜在性カチオ
ン重合開始剤および、特開平2−178319号公報に
記載されているピリジニウム塩系の熱潜在性カチオン重
合開始剤では、一液系とすることができ、硬化時間も短
いという特徴を有しているが、硬化温度が高いという問
題点がある。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、前に述べた
事情からみてなされたもので、カチオン重合性化合物を
加熱により、低温かつ短時間に硬化させることができる
新規なカチオン重合開始剤を提供し、更に該開始剤を含
む貯蔵安定性のある一液型カチオン重合組成物を得ると
共に優れた物性を有する硬化物を提供することを目的と
している。 【0006】 【問題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するため鋭意検討したところ、特定のスルホニウ
ム塩化合物からなる重合開始剤を用いることで、低温か
つ短時間にてカチオン重合性化合物を硬化することがで
き、更にその硬化物特性に優れた性能を与える新規重合
開始剤を見出して本発明を完成するに至った。 【0007】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
スルホニウム塩化合物は、下記の化2で表されるが、 【0008】 【化2】 【0009】上記一般式(I)において、R.、R
2 は、それぞれ水素原子、メチル基、エチル基、プロピ
ル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキ
シル基、c−ヘキシル基等のアルキル基、F,Cl,B
r,I等のハロゲン原子、ニトロ基、メトキシ基,エト
キシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基の群より選
ばれた基であり、R3 、R4 は、それぞれメチル基、エ
チル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−
ブチル基、ヘキシル基、c−ヘキシル基等のアルキル基
の群より選ばれた基であり、また、R3 とR4 は一体と
なって結合して、4〜7員環を形成していてもよく、X
は、SbF6 ,AsF6 ,PF6 又はBF4を表す。X
は、SbF6 ,AsF6 ,PF6 又はBF4 であり、こ
の内、SbF6 が好んで用いられる。 【0010】該スルホニウム塩化合物は、例えば、次の
方法で得ることができる。9−ブロモフルオレン等の9
−ハロフルオレンとジメチルスルフェド等のジアルキル
スルフェドまたはテトラヒドロチオフェン等の環状スル
フィドとを等モルづつ、必要に応じてメタノール、アセ
トン、アセトニトリル等の不活性溶媒存在下にて室温〜
80℃で数時間〜60日間反応させ、次いで、得られた
固形物を水もしくは水−メタノール系等の水−有機溶媒
系に溶解せしめ、六フッ化アンチモン酸ナトリウム等を
加え激しく攪拌し、析出した液状液状または固形物の生
成物を分離後、乾燥して得られる。 【0011】本発明の代表的なスルホニウム塩化合物と
して、下記表1に記載の化合物が例示される。但し、式
中のXはSbF6 ,AsF6 ,PF6 又はBF4 であ
る。 【0012】 【表1】【0013】本発明において、重合開始剤である前記四
級アンモニウム塩化合物は、カチオン重合性化合物と配
合してカチオン重合組成物として用いられる。カチオン
重合性化合物としては、次のような化合物が挙げられ
る。 (a)エポキシ基を有する化合物として、1,1,3−
テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイ
ド、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、(3,4
−エポキシシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシ
シクロヘキシルカルボキシレート、ジ(3,4−エポキ
シシクロヘキシル)アジペート、フェニルグリシジルエ
ーテル、ビスフェノールA型エポシキ樹脂、ハロゲン化
ビスフェノールA型エポシキ樹脂、o−,m−,p−ク
レゾールノボラック型エポシキ樹脂、フェノールノボラ
ック型エポシキ樹脂、多価アルコールのポリグリシジル
エーテル等のエポシキ化合物 【0014】(b)ビニル化合物として、スチレン、α
−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン等のスチ
レン類;n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニル
エーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシ
ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;
アリルビニルエーテル、1−オクタヒドロナフチルビニ
ルエーテル等のアルケニルビニルエーテル類;エチニル
ビニルエーテル、1−メチル−2−プロペニルビニルエ
ーテル等のアルキニルビニルエーテル類;フェニルビニ
ルエーテル、p−メトキシフェニルビニルエーテル等の
アリールビニルエーテル類;ブタンジオールジビニルエ
ーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル、シク
ロヘキサンジオールジビニルエーテル等のアルキルジビ
ニルエーテル類;1,4−ベンゼンジメタノールジビニ
ルエーテル、N−m−クロロフェニルジエタノールアミ
ンジビニルエーテル、m−フェニレンビス(エチレング
リコール)ジビニルエーテル等のアラルキルジビニルエ
ーテル類;ハイドロキノンジビニルエーテル、レゾルシ
ノールジビニルエーテル等のアリールジビニルエーテル
類;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等
のカチオン重合性窒素含有化合物等 【0015】(c)ビシクロオルソエステル化合物とし
て、1−フェニル−4−エチル−2,6,7−トリオキ
サビシクロ〔2,2,2〕オクタン,1−エチル−4−
ヒドロキシメチル−2,6,7−トリオキサビシクロ
〔2,2,2〕オクタン等 【0016】(d)スピロオルソカーボネート化合物と
して、1,5,7,11−テトラオキサスピロ〔5,
5〕ウンデカン、3,9−ジベンジル−1,5,7,1
1−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等や1,
4,6−トリオキサスピロ〔4,4〕ノナン,2−メチ
ル−1,4,6−トリオキサスピロ〔4,4〕ノナン,
1,4,6−トリオキサスピロ〔4,5〕デカン等のス
ピロオルソエステル化合物等である。 これらは、単独若しくは2種以上を併用して用いても差
し支えない。(a)〜(d)の内で、殊に(a)のエポ
キシ基を有する化合物が好んで使用される。 【0017】本発明において、前記スルホニウム塩化合
物とカチオン重合性化合物との配合割合は、カチオン重
合性化合物100部に対し、スルホニウム塩化合物0.
01〜20部、好ましくは0.1〜10部の割合で配合
する。このスルホニウム塩化合物量が少いとカチオン重
合性化合物の硬化性が低下し、過剰であると硬化物の特
性が低下する。 【0018】本発明のスルホニウム塩化合物を含有する
カチオン重合組成物は、加熱により容易に硬化できる。
熱硬化する場合は、30〜200℃、好ましくは、50
〜180℃の範囲で使用される。 【0019】本発明のスルホニウム塩化合物を含有する
カチオン重合組成物は、α線、β線、γ線、中性子線、
X線、加速電子線のような電離性放射線によっても容易
に短時間で硬化することができる。電離性放射線による
硬化の場合は、通常0.5〜60Mradの線量の範囲
が使用でき、1〜50Mradの範囲が好ましい。ま
た、電離性放射線および熱を併用して硬化させることも
可能である。 【0020】本発明のスルホニウム塩化合物を含有する
カチオン重合組成物は、光によっても容易に短時間で硬
化することができる。また、本発明のスルホニウム塩化
合物を含有するカチオン重合組成物にメトキシフェノー
ルやフェノチアジン等の増感剤を併用すると、光硬化を
より加速することができる。 【0021】本発明のスルホニウム塩化合物は一般に単
独で使用されるが、他のカチオン重合開始剤と併用して
用いることもできる。また、前記(a)のエポキシ基を
有する化合物を用いる場合は、エポキシ樹脂の硬化剤と
して通常用いられている、フェノール系硬化剤、酸無水
物類硬化剤等の硬化剤を性能が損なわない範囲内で併用
して用いてもよい。 【0022】前記のカチオン重合性化合物に本発明の開
始剤を配合して使用する際に、必要に応じて反応性希釈
剤、硬化促進剤、溶剤、顔料、染料、カップリング剤、
無機充填剤、炭素繊維ガラス繊維、界面活性剤等を添加
して使用される。 【0023】 【実施例】以下、本発明を実施例、比較例により更に具
体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何
等限定されるものではない。 <スルホニウム塩化合物の合成> 実施例1:9−フルオレニルジメチルスルホニウムヘキ
サフロロアンチモネートの合成 9−ブロモフルオレン6.13gとジメチルスルフィド
6.21gを混合し、室温で17時間反応させた。得ら
れた化合物をエーテルで洗浄し、40℃で減圧乾燥し、
前駆体の9−フルオレニルジメチルスルホニウムブロマ
イドを得た。収率:57% 9−フルオレニルジメチルスルホニウムブロマイド3.
07gを蒸留水10gとメチルエチルケトン(以下、M
EKと言う)5gの混合溶液に溶解させ、六フッ化アン
チモン酸カリウム3.30gを加え、よく攪拌した。こ
の溶液に蒸留水40gを加え、よく攪拌して冷却した。
析出した化合物を濾別し、40℃で減圧乾燥させた。収
率:99% このもののIRスペクトルデータは以下のとおりであっ
た。 IR(KBr,cm-1):1606,1478,145
4,1429,1336,1043,999,790,
740,656 【0024】実施例2:9−フルオレニルテトラメチレ
ンスルホニウムヘキサフロロアンチモネートの合成 9−ブロモフルオレン7.35gとテトラヒドロチオフ
ェン4.41gを混合し、50℃で10日間反応させ
た。得られた化合物をエーテルで洗浄し、40℃で減圧
乾燥し、前駆体の9−フルオレニルテトラメチレンスル
ホニウムブロマイドを得た。収率:64% 9−フルオレニルテトラメチレンスルホニウムブロマイ
ド3.33gを蒸留水15gとに溶解させ、六フッ化ア
ンチモン酸カリウム3.30gを加え、よく攪拌し、冷
却した。析出した化合物を濾別し、40℃で減圧乾燥さ
せた。収率:97% このもののIRスペクトルデータは以下のとおりであっ
た。 IR(KBr,cm-1):2948,1607,145
5,1422,784,741,660 【0025】<硬化性テスト> (実施例3〜実施例7)実施例1と2で合成した化合物
をプロピレンカーボネートに溶解させ、ERL−422
1(UCC社製脂環型エポキシ)に純分として2.5部
になるように添加し、表2、表3に記載の配合物を調整
した。この配合物についてDSC及びUV−DSC測定
を行い、DSC測定では、発熱ピークのトップ温度、U
V−DSC測定では、光照射から発熱のトップピークま
での時間を求めた。なお、DSC測定条件及びUV−D
SC測定条件は下記の通りであり、その測定結果を表2
及び表3に示した。 【0026】 【表2】 【0027】 【表3】 【0028】DSC測定条件 DSC測定機器 : DSC220C(セイコー電子工
業社製) 雰囲気 : 窒素ガス気流中 30ml/分 昇温速度 : 10℃/分 サンプル量 : 0.3〜0.8mg UV−DSC測定条件 DSC測定機器 : DSC220C(セイコー電子工
業社製) UV照射器 : 超高圧水銀灯 雰囲気 : 窒素ガス気流中 30ml/分 測定温度 : 50℃ サンプル量 : 0.1〜0.3mg 膜 厚 : 2〜10μm 照射時間 : 15分 照 度 : 10mW/cm2 (365n
m) 【0029】(比較試料1)本発明の対比として、ベン
ジルジメチルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート
を重合開始剤として用い、実施例と同様にしてERL−
4221(UCC社製脂環型エポキシ)に添加し、配合
物を調整し(比較例1、2、比較例3、4)、DDSC
及びUV−DSC測定を行い、DSC測定では発熱ピー
クのトップ温度、UV−DSC測定では光照射から発熱
のトップピークまでの時間を求めた。これらの結果を前
記の表2及び表3に示した。 【0030】 【発明の効果】以上説明したように、本発明の新規スル
ホニウム塩化合物は、カチオン重合製化合物の重合開始
剤として有効であり、表2及び表3に見られるように、
加熱処理または光照射することにより、極めて迅速に重
合、硬化させることができる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−308563(JP,A) J.Am.Chem.Soc., 1988,Vol.110,No.22,P7561 −7563 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 381/12 C07D 333/46 C08F 4/00 CA(STN) CAOLD(STN) REGISTRY(STN)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】下記化1で表されるスルホニウム塩化合物
    の少なくとも一種を含有することを特徴とするカチオン
    重合開始剤 【化1】 〔式中、R1 、R2 は、それぞれ水素原子、アルキル
    基、ハロゲン原子、ニトロ基又はアルコキシ基を表し、
    3 、R4 は、それぞれアルキル基を表し、R3 とR4
    は一体となって結合してもよく、Xは、SbF6,As
    6 ,PF6 又はBF4 を表す。〕
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