JP3687071B2 - クランク室掃気式2行程機関用気化器 - Google Patents

クランク室掃気式2行程機関用気化器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クランク室掃気式2行程機関、特に、チェーンソーや園芸用送風機などのような手持ち型製品での使用を目的とした小型機関用気化器に関する。
【0002】
【従来の技術】
クランク室掃気式2行程機関のシリンダは、吸入ポート、排出ポート、移送ポートを有し、排気ポートが移送ポートの前に開き、移送ポートの後に閉じるように構成されている。移送ポートは実質上シリンダとクランク室を接続する1以上の移送通路であり、ピストンとシリンダが機関サイクル中の移送通路の下流端の開閉を制御するように構成されている。この種の機関は、移送ポートを介してシリンダと連通し、吸入ダクトを介して大気と連通する1つの気密封止クランク室を有する。ピストンがそのシリンダ圧縮行程を行うと、空気あるいは空気・燃料混合気が大気から吸入ダクトを介してクランク室内に取り込まれる。後続の仕事行程において、この空気あるいは空気・燃料混合気はピストンによって圧縮される。ピストンが移動し続けると、移送ポートの下流端がピストンで塞がれなくなるので、空気あるいは空気・燃料混合気はシリンダ内に圧入される。
【0003】
シリンダ内への空気あるいは空気・燃料混合気の移送は、クランク室とシリンダの間に正の圧力差が存在するときにのみ起こる。シリンダの空気あるいは空気・燃料混合気が新たに給気されることによって、残留ガスがシリンダ室から排気ポートを経て排気される。このシリンダ掃気工程中、シリンダ内に侵入した空気あるいは空気・燃料混合気の一部が排気ポートを介してシリンダから流出してしまう。このような給気損は、普通、掃気損と呼ばれている。この給気損は、移送ポート閉鎖と排気ポート閉鎖の間の機関サイクル期間中にも生じ得る。この期間は、トラッピング期間として知られ、それに付随する損失は、普通、トラッピング損と呼ばれている。
【0004】
小型オートバイ、スクーターなどに取り付けるタイプの2行程機関は、典型的には、吸入ダクトの通気流量に関連した量の燃料を当該ダクト内に給気するように構成された気化器を備えている。これは、クランク室および後続のシリンダに入る空気・燃料混合気は全て本質的にほぼ空気と燃料の均質混合気であるということを意味する。これはまた、排気ポートから流出する掃気の一部にも燃料が含まれていることを意味する。この結果、こうした機関は、未燃焼炭化水素排出量が相対的に高くなる。
【0005】
小型2行程機関、特に、手持ち型製品と共に使用するためのそれは、より厳しい排出抑制立法および耐久性の要件に直面している。近い将来アメリカ合衆国では一層厳しい立法が予測されるし、その立法はこのような小型機関に特に厳しく、未燃焼炭化水素(HC)および一酸化炭素(CO)だけでなく微粒子排出に関する制限も含まれることになるだろう。現在利用可能な小型2行程機関には、酸化触媒のような排気抑制装置を用いないで、アメリカ合衆国に導入されるであろう要件を満たしうるものは何もない。また、この種の小型機関を使用した場合、公称上同一の2つの機関から排出されるHC排出物において最大25%の偏差が存在しうることにも注意すべきである。機関製造業者は、しかし、触媒および/または他の潜在的に高価な排出抑制装置を使用するのを嫌い、最小あるいはゼロコストと見なせる問題解決法を要求している。他の排出低減技術の実施後もなお触媒を必要とするならば、触媒の大きさとコストを減らし、排気ガス温度の上昇を最小にし、触媒の耐久性を高めるために、触媒に掛かる負荷を最小にしなければならない。
【0006】
高負荷時、すなわち、スロットルが大きく開いている時の2行程機関の排出性能は、こうした機関が排出抑制立法下で認可を得ることができるかどうかにとって、特に、手持ち型装置とともに使用する目的の機関にとっては、重要なことである。触媒・排気ガス温度が最大に達して、触媒の熱劣化が最大になるのも、高負荷時である。したがって、機関の排出物を低減させる試みは、高負荷時の排出物に焦点を合わせるべきであり、低負荷時の排出物は実質上重要性が低い。
【0007】
手持ち型装置と共に使用するための2行程機関に対して高負荷時の排出物により大きな重要性を与えると、実際問題として、高負荷時のHC排出物を許容レベルに現実に減少しうる技術には2つのタイプしかない。すなわち、触媒後処理と層状給気である。触媒後処理は、排気ガスを酸化触媒に晒すもので、上で言及したものである。触媒にはCO排出も低減させるように求めてもよいが、機関がより希薄な混合気で運転するように調整されている場合には、触媒なしに予測される合衆国立法の要件を満たすことが可能であると思われる。また、触媒を用いてHC排出物に関する予測立法要件を満たすことも可能であろうが、もし機関シリンダから出る排気ガスのHC含有量を減らすことによって触媒に掛かる負荷を減らせないならば、触媒の実用寿命が問題となりそうである。触媒に掛かるHC負荷を減少させることが触媒の大きさとコストを減らし、触媒反応によって排気ガスに付与される熱を最小化し、触媒の実用寿命を増加し、排気調整に対する触媒の影響を減少することに繋がることは分かるであろう。層状給気の構成では、公知のように、掃気およびトラッピング工程中は実質上純粋な空気と最小量の燃料だけがシリンダから直接排気ポートに侵入するのを許可するようにして、シリンダへの空気・燃料の給気が非均質となるように機関の給気システムを構成する。
【0008】
これは、直接燃料噴射、すなわち、シリンダと直接連通し、排気ポートが閉鎖した後で正確な量の燃料をシリンダ内に噴射することを確実にするように構成された電子制御システムによって制御される燃料噴射器を機関に備えることによって達成してもよい。この問題解決策は、効果的ではあるが、速度および負荷応答性電子制御システムと燃料噴射器を備える必要があるために高価になるので、小型で低価格な機関には容認しがたいものである。
【0009】
GB−A−2290349は、この問題を解決するための更なる試みを開示している。この明細書は、所謂移送ポート層状給気を用いたクランク室掃気式機関を開示する。この先行文献に開示された機関は2つ以上の移送通路によって構成された移送ポートを有し、移送通路の1つにだけ燃料が供給される。他の移送通路は、クランクシャフト軸からより離れた位置でシリンダの内部と連通する。使用に際して、燃料は、吸入通路からクランク室内への空気の質量流量の関数である割合でほぼ持続的にその1つの移送通路内に供給される。ピストンがその排気行程を行なうと、排気ポートがまず最初にピストンによって塞がれなくなり、その後、他の移送通路が塞がれなくなる。その後すぐに、燃料を供給される移送通路が塞がれなくなり、空気・燃料給気がシリンダ内に流れる。しかしながら、掃気は、主として、他の移送通路を経て流入した純粋空気を用いて行われるので、掃気工程中にシリンダを通して排気ポートに直接流入する未燃焼燃料の量は減少する。
【0010】
GB−A−2290349に開示されたタイプの機関では、高負荷条件下の未燃焼HC排出物は、従来の機関に比較して約50%減少することが試験によって示されている。しかし、機関負荷が減じるに連れて、未燃焼HC排出物の減少も低下して、約40%スロットル開放において全く正味の改善がなくなってしまう。さらにスロットルが閉じると、未燃焼HC排出物は、実に、均質給気2行程機関に比較して増加する。この理由は、低機関負荷において、空気・燃料給気の一部がピストンの上部を横切って直接排気ポートに短絡流入するためであると思われる。
【0011】
GB−A−2290349に開示された機関に伴うさらなる重要な問題は、従来の気化器とはかなり異なる燃料給気装置に関わる。従って、公知の気化器技術からの逸脱は、燃料給気装置が製造するのに著しく高価なものとなることを意味し、ともかく、全機関動作範囲に亘って正確な量の燃料を送出する燃料給気装置を構成することは非常に困難であるということが実際には判明している。
それゆえ、上述した排出物の問題に対する解決策は、高機関負荷時には層状給気を利用するが低機関負荷時には均質給気を利用することに依るだろうと考えられる。また、商業的成功のためには、機関がより従来的な気化器を用いることが必要であるとも考えられる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、高機関負荷時には層状給気を利用するが低高機関負荷時には均質給気を促進させる移送ポート層状給気を有する、 製造するのが簡単で安価であり、従来の気化器技術を利用し得る、クランク室掃気式2行程機関用気化器を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、機関吸入ダクトが、2つの分離した通路に分割されているタイプの2行程機関とともに使用され、使用するにあたり、前記機関の前記吸入ダクトの一部をなす円形側面ダクトと、燃料を前記吸入ダクトに導入するように配置構成された1つ以上の燃料噴射口と、前記吸入ダクトの部分を2つの通路に分割する隔壁と、それによって、前記吸入ダクトが実質的に閉鎖される閉鎖位置と、それが、前記吸入ダクトを通る気流の意図した方向にほぼ平行に延長し、前記吸入ダクトを実質的に、2つの通路に分割する開口位置とのあいだで移動可能であるように、直径軸に対して回転するために旋回可能に載置されたスロットル弁と、前記燃料噴射口に最も近接した第1通路と、前記燃料噴射口から最も遠い第2通路であって、前記燃料噴射口は、前記スロットル弁に対して燃料を直接噴射するように配置構成され、それによって、前記スロットル弁が実質的に開口しているときには、全燃料が前記第1通路に流入し、実質的に、空気だけが前記第2通路を流れ、また、前記スロットル弁が閉鎖されているときには、燃料が前記第1通路および前記第2通路の両方に流入する第1通路と第2通路とを含む気化器において、前記気化器は、単一のスロットル弁のみを含み、前記隔壁は、実質的に直径方向の平面に置かれ、前記隔壁は、前記スロットル弁が旋回可能に移動できる開口を形成し、前記スロットル弁は、それが開口位置にあるとき、前記開口を閉鎖することを特徴とする気化器が提供される。
【0014】
したがって、本発明による気化器は、濃厚通路と希薄通路に分割された吸入ダクトを有する機関とともに使用される。
気化器および/またはスロットル弁は、濃厚通路が高負荷条件および低負荷条件の両方において燃料・空気混合気を含むが、希薄通路は低負荷条件でのみ空気・燃料混合気を含み、高負荷条件では実質上純粋な空気を含むように構成動作されている。
機関が設置されると、第1のあるいは濃厚通路は、排気ポートとほぼ対向する前記機関の後部移送ポートに連通する一方、第2のあるいは希薄通路は、前記後部移送ポートと、前記排気ポートととのあいだに備えられた側面移送ポートに連通する。
【0015】
高負荷条件下では、排気ポートが閉じる前に側面移送ポートが開き、ほぼ純粋な空気がその側面移送ポートを介して流入し、シリンダをパージする。同時に、あるいは、その直後に、後部移送ポートが開いて濃厚な空気・燃料混合気が流入する。しかしながら、この濃厚な空気・燃料混合気は、側面ポートから吐出される、より大量で高速な流量のほぼ純粋な空気によって、凡そ排気ポートに対向するシリンダ壁付近に保持されるので、掃気工程中、燃料は、殆どあるいは全く、排気ポートから流出されることができない。シリンダ内の給気は、こうして層状にされる。
【0016】
低負荷あるいは無負荷条件下では、燃料は濃厚および希薄吸入通路の両方に導入される。
上述のように、後部および側面移送ポートからの空気流は非常に弱いため、低負荷条件下では後部移送ポートから吐出される空気・燃料混合気は排気ポートに向かって直接短絡して流れる傾向がある。しかし、低負荷条件下では燃料は後部移送ポートと側面移送ポートに分配されるため、後部移送ポートから流出する空気・燃料混合気は低負荷条件下では高負荷条件下よりもずっと希薄であり、掃気工程中に大気に失われる燃料の実際量は容認可能なほど小さい。
【0017】
機関負荷が最大レベルから下がるに連れて、気化器は希薄吸入通路へ供給する燃料の量を漸進的に増加するように構成してもよい。
しかし、負荷が最大値の約50%に下がるまでは、この漸進増加を開始しない方が好ましい。約40%負荷から無負荷までは、燃料は希薄および濃厚吸入通路に対して概して等しく供給してもよい。
【0018】
発明のさらなる特徴と詳細は、付属した極めて概略的な図面を参照して例示される具体的な一実施例の次の説明から明らかとなるであろう。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の気化器は、高負荷動作中には実質上全ての燃料を1つあるいは各々の濃厚吸入通路に供給し、低負荷動作中には全ての吸入通路に対してほぼ等しく燃料を供給するものである。このことは多くの方法で達成できるが、本発明の実施例では、気化器は、吸入ダクトが2つ以上の吸入通路に分割される位置の直ぐ上流の位置において燃料を吸入ダクトに導入するように構成された1つ以上の噴出口を有し、低負荷条件下では、噴出口から吐出された燃料が濃厚および希薄通路の両方に流入することを許し、高負荷条件下では、ほぼ全燃料を濃厚通路に流入させるようにスロットル弁が位置決めされる。
【0020】
本気化器は、濃厚通路を隣接する希薄通路から分割する壁のほぼ延長部分を形成する内部隔壁を有し、内部隔壁には開口が形成され、スロットル弁は前記開口内で移動するように枢動可能に搭載され、それによって、開口は低負荷条件下では開き、高負荷条件下では閉じる。この場合、気化器噴射口が濃厚通路の直ぐ上流の位置で吸入ダクト内に吐出するように、しかし内部隔壁の開口の方へ向いて位置決めされ、それによって、開口がスロットル弁によって閉鎖されると、全ての燃料が強制的に濃厚通路に流入し、スロットル弁が吸入ダクトを絞る位置に移動した結果開口が開くと、燃料は少なくとも一部が開口を通して流れ、濃厚および希薄通路の両方に流入する。
【0021】
即ち、本発明の気化器は、機関吸入ダクトが2つの独立した通路に分割されている形式の2行程機関と共に使用するための気化器であり、使用に際して、機関の吸入ダクトの一部を形成するダクトと、ダクト内に燃料を導入するように構成された1つ以上の燃料噴射口と、閉位置と開位置の間を枢動移動可能なスロットル弁とを有する。
スロットル弁は、閉位置ではダクトをほぼ閉鎖し、開位置ではダクトからの空気流の予定方向とほぼ平行に延びて、実質上ダクトを2つの通路、すなわち、燃料噴射口に最接近する第1通路と、燃料噴射口から離れた第2通路とに分割する。この気化器は、燃料噴射口が燃料をスロットル弁に向けるように構成され、それによって、弁が開くと、ほぼ全燃料が第1通路に流入し、第2通路には実質上空気のみが流入し、弁が閉鎖すると、燃料は第1および第2通路の両方に流入するという特徴を持つ。隔壁によって2つの独立した通路、すなわち、濃厚通路と希薄通路に分割された機関吸入ダクトに接続され、閉位置にあるときにスロットル弁がほぼ隔壁の延長部分を形成する。
【0022】
本発明の気化器を使用する機関は1つあるいはそれ以上のシリンダを有してもよいが、1つのシリンダのみを図示して説明する。シリンダ2は、点火プラグ(図示せず)が通常の方法で突出するシリンダヘッド4によって塞がれている。シリンダ内部にはピストン8が往復運動可能に収容されていて、クランク室14内に配置されているクランク軸12に接続ロッド(図示せず)によって接続されている。
【0023】
吸入ダクト16がクランク室14の内部に連通しており、その下流端には、多数のリード弁などが存在する。それらリード弁などは、より詳細に後述するが、1方向にだけ、すなわち、クランク室内にだけ空気流を流入させるように構成されている。
【0024】
気化器18がリード弁の上流に配置されており、機関の加速器またはスロットルに連結された従来形式のスロットル弁20がさらにその上流に存在し、あるいは、その一部を形成している。
【0025】
排気ポート22と、僅かにクランク軸12寄りの位置にあって排気ポート22と正反対の位置にある後部移送ポート24とはシリンダ2内部に連通している。排気ポートと後部移送ポートのほぼ中間に位置する2つの側面移送ポート26も互いに反対側にあってシリンダと連通している。これらの各ポートは、単一の開口であっても多数の開口であってもよい。
【0026】
クランク軸12には、2つの軸方向に離間したクランクウェブ28、換言すれば、外縁側が相対的にクランク室の内面に接近した円形断面を持つ相対的に大きな一体型のディスクが設けられている。これらディスクは、通常クランク軸にバランスを与えるために設けられる。各クランクウェブ28の外面は、嵌め合い環状さねはぎからなる各ラビリンスシール30によってクランク室の隣接する内面に対して実質上封止される。クランク室内部は、こうして、軸方向に3つの独立した室あるいは容積、すなわち、両端の濃厚容積V1およびV2と、中間の希薄容積V3とに分割される。これらの容積は互いに完全に封止されることが必須ではなく、単に実質上そうであるというに過ぎない。
【0027】
ピストンが下死点にあるときに、図1のV4で示すクランク室とピストンの底面の間の容積は、常時クランク室内部の容積の四分の一より小さく、常時大きな穴を通してクランク室内部と連通する。しかし、本例の場合、この穴はウェブ32によって大きさが減じられており、ウェブ32には、容積V4がクランク室の中央希薄容積V3とだけ連通する中央穴34がある。2つの濃厚容積V1とV2は、それぞれの連通穴36を介して容積V4と連通する。
【0028】
後部移送ポート24は、通路37から分岐した2つの連通通路38を介して2つの濃厚容積V1とV2にそれぞれ連通する。側面移送ポート26は、それぞれ移送通路40を介して、希薄容積V3に直接に、あるいは、容積V4を介して間接に連通する。前者の場合、移送通路40は比較的長くなるし、後者の場合は、図3に示すように、比較的短くなる。後者の場合、容積V4との接続は、ピストンが下死点にあるときには、ピストンの下側の位置になる。
【0029】
吸入ダクト16は、この場合、一体の金属鋳造物であるが、これは2つの吸入通路、すなわち、希薄通路44と濃厚通路42に分割される。希薄通路44は、リード弁46を介して希薄容積V3に連通する。濃厚通路42は2つの通路48に分岐し、それら各通路48は各リード弁50を介して各濃厚容積V1とV2に連通する。図示しない小穴を通路壁に設けて、全通路間の圧力均衡を確保してもよい。これらの小穴を設けた結果、極く少量の燃料が希薄通路に侵入する場合もあるが、これは、ラビリンスシール30の周りに発生する少量の漏れと同様、ほとんど取るに足らないものである。
【0030】
気化器18および/またはスロットル弁20は、高負荷条件下では、実質上純粋な空気のみを希薄通路44に導入し、燃料・空気混合気を濃厚通路42に導入する一方、低負荷あるいは無負荷条件下では、燃料・空気混合気を全ての通路に導入するように構成され動作する。
【0031】
使用に際して、高負荷で動作しているときには、ピストンがその圧縮行程で移動するに連れて、減圧が容積V4に生じ、それが穴34と36を通して容積V1、V2およびV3に印加される。こうして、ほぼ純粋な空気がリード弁46を通して希薄容積V3に導入され、燃料・空気混合気がリード弁50を通して2つの濃厚容積V1とV2に導入される。V3への質量の流れはV1およびV2へのものより実質的に大きい。V3へ侵入する空気の容積がより大きく、しかも、穴34が穴36よりも大きいということは、V4が実質的に純粋な空気のみに満たされるということを意味する。ピストンが爆発あるいは仕事行程になると、排気ポート22がまずピストンによって塞がれなくなり、排気ガスの大部分がそこから流出して大気に出ていく。その後、側面移送ポート26が塞がれなくなり、純粋空気がそれらのポートを経て移送通路40を介して容積V4および希薄容積V3から流出する。排気ポートはなお開いており、少なくとも空気の一部はそこから流出して、それによって残留排気ガスをシリンダから掃気する。同時に、あるいは、より好適には、その直後に、後部移送ポート24が覆われなくなり、燃料・空気混合気がそこを介し通路37と38を介して濃厚容積V1とV2から流出する。後部移送ポート24は側面移送ポート26より排気ポート22から離れており、また、そこを通る流れを上方に、すなわち、シリンダヘッドの方に向けるように傾斜しているので、燃料・空気混合気は排気ポートからは殆どあるいは全く流出しない。この効果は、全空気入力の大部分が側面移送ポートから流入し、凡そ四分の一だけが後部移送ポートから流入するという事実によって強化される。後部移送ポートからの空気・燃料混合気の相対的に弱い流れは、それゆえ、側面移送ポートのより活発な流れによって排気ポートとは反対側のシリンダ壁に対して「押しつぶされ」、その結果、排気ポートに流出するのが防止される。シリンダ内の給気は、こうして、層状になり、つまり、非均質になり、排気ポートに近い側の給気部分は後部移送ポートに近い側の給気部分よりも薄くなる。その後、通常の方法で点火が起こり、サイクルが繰り返される。
【0032】
しかし、低負荷あるいは無負荷条件下で動作するときには、燃料・空気混合気は、3つの吸入通路の全て、つまり3つの容積V1、V2およびV3の全てに供給される。その後、燃料・空気混合気を用いて掃気が行われるが、シリンダに導入される全空気が燃料を運ぶので、後部移送ポートだけを介して導入される時の燃料・空気混合気よりもかなり薄い。掃気時に少量の燃料が大気に失われるが、この掃気損は容認可能な程度に小さい。
【0033】
気化器とスロットル弁は図4から図6により詳細に示されている。
気化器は、主あるいは無負荷燃料噴射口60と、中負荷燃料噴射口61と、全負荷燃料噴射口62とを有する。
バタフライ型のスロットル弁20は、無負荷噴射口60の上方に配置されている。吸入ダクトは、無負荷噴射口の直ぐ下流で隔壁64によって2つの通路44と42に分割される。気化器本体は、隔壁64の延長部分を形成する隔壁66を有する。隔壁66には、バタフライ弁20を収容しそれによって閉鎖されうる開口68が形成されている。機関が無負荷のときには、バタフライ弁は、図4に示すように、吸入ダクトを実質上封鎖する。無負荷噴射口から吐出した燃料は、隔壁64の上流で吸入ダクトに侵入し、そうして、空気流によって概して均等に通路44および42内に運ばれる。
【0034】
通路42は、ある地点において2つの濃厚通路48に分かれ、その結果、クランク室の3つの容積は全てほぼ等しく濃厚な燃料・空気混合気を受けるので、機関は均質給気される。ある量の燃料が掃気工程中に排気に直に流れるが、その量は容認可能なほど小さい。というのも、まず、無負荷動作時にはともかく少量の燃料だけが必要だからであり、2番目には、燃料・空気混合気は、機関が無負荷のときには全負荷時よりもずっと希薄であるからである。何故なら、後者の状態では、燃料は後部移送ポートのみを介してシリンダに導入されるのに対して、無負荷動作時には後部および側面移送ポートを介して導入されるからである。
【0035】
高負荷動作では、図6に示すように、バタフライ弁は吸入ダクトを実質上全く封鎖せずに、開口68を閉鎖し、それによって、無負荷、中負荷および全負荷噴射口60、61および62から噴射された燃料が全て濃厚通路42に流入することを確実にする。実質上純粋な空気が希薄通路44を流れるが、少量の燃料が希薄通路に接近しても問題ではない。クランク室容積V1とV2は、こうして、空気・燃料混合気で給気され、容積V3はほぼ燃料を含まない空気で給気される。それゆえ、シリンダは上述のように層状給気を受けて、掃気損が非常に低い。
【0036】
中負荷では、バタフライ弁20は図5に示す位置を占め、そこでは吸入ダクトと開口68の両方が部分的に開く。燃料は無負荷および中負荷噴射口から噴射され、その殆どが濃厚通路42に流入する一方、その一部は希薄通路44にも流入する。機関給気は、こうして、部分層状と呼べるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による気化器が用いられる2行程機関を示し、図2のB−Bによる側面断面図である。
【図2】 図1のA−Aによる断面図である。
【図3】 幾つかの特徴を省略した機関の部分拡大斜視図である。
【図4】 低負荷条件下における、本発明による気化器と吸入ダクトの上流側の実施例の側面断面図である。
【図5】 中負荷条件下における、本発明による気化器と吸入ダクトの上流側の実施例の側面断面図である。
【図6】 高負荷条件下における、本発明による気化器と吸入ダクトの上流側の実施例の側面断面図である。

Claims (2)

  1. 機関の吸入ダクトが2つの分離した通路に分割されているタイプのクランク室掃気式2行程機関とともに使用され、使用するにあたり、前記機関の前記吸入ダクトの一部をなす円形断面ダクトと、
    燃料を前記吸入ダクトに導入するように配置構成された1つ以上の燃料噴射口(60、61、62)と、
    前記吸入ダクトの部分を2つの通路に分割する隔壁(66)と、
    それによって、前記吸入ダクトが実質的に閉鎖される閉位置と、前記吸入ダクトを通る空気流の予定方向にほぼ平行に延びて、実質的に前記吸入ダクトを2つの通路に分割する開位置との間で、直径軸に対して回転するために枢動移動可能に載置されたスロットル弁(20)と、
    前記燃料噴射口が、前記燃料噴射口に最接近した第1通路と、前記燃料噴射口から離れた第2通路とに分割する前記スロットル弁(20)に向けるように燃料を直接噴射するように配置構成され、それによって、前記スロットル弁(20)が実質的に開口しているときには、ほぼ全燃料が前記第1通路に流入し、実質的に、前記第2通路には空気のみが流入し、また、前記スロットル弁(20)が閉鎖すると、燃料は前記第1通路および前記第2通路の両方に流入する、第1通路と第2通路とを含む気化器において、
    前記気化器は、単一のスロットル弁(20)のみを含み、前記隔壁(66)は、実質的に直径方向の平面に置かれ、前記隔壁(66)は、前記スロットル弁(20)が枢動移動可能な開口(68)を形成し、前記スロットル弁(20)は、それが開口位置にあるとき、前記開口(68)を閉鎖することを特徴とするクランク室掃気式2行程機関用気化器。
  2. 前記スロットル弁(20)が閉位置にあるときには、該スロットル弁(20)の下流側、上流側のそれぞれの位置で、前記ダクトと連通する無負荷燃料噴射口(60)と全燃料噴射口(62)を含む、請求項1に記載のクランク室掃気式2行程機関用気化器。
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