JP3685577B2 - ポリ乳酸の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療用材料や汎用樹脂代替の生分解性ポリマーとして有用なポリ乳酸の脱水重縮合による製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリ乳酸の製造方法としては、乳酸を一度脱水重縮合した後に、環状2量体(ラクチド)を生成させ、触媒存在下で開環重合し、高分子量重合体を得る方法が知られている。しかし、この方法では、ラクチドを製造する工程及び精製工程に多大な費用と人力がかかり、製造コストを上昇させる要因となっている。
【0003】
これに対し、乳酸を直接脱水重縮合する方法は、工程数が少なく、経済的ではあるが、該重縮合様式は、基本的には加熱条件下における水の脱離反応であるために、反応の進行に伴って系内の粘度が上昇した場合、反応液の熱伝導性が低下し、内部まで熱供給を十分に行うことができないことから、攪拌力不足等によって表面更新作用が低下してしまうこととあいまって、ポリ乳酸内部に副生水等が閉じ込められて除去することが困難になるという問題があった。その結果、反応速度が非常に遅くなり、十分な機械物性を有したポリ乳酸高分子量体が得られなかった。
【0004】
例えば、特開平5−43665号公報では通常の攪拌翼を備えた槽型反応装置を用い、濃縮した乳酸水溶液に触媒を添加して200℃の高温で反応後、1mmHgの減圧にして還元粘度0.74のポリ乳酸を得ている。このように、攪拌機を備えた槽型の重合器を用いる方法は、シンプルであり、容積効率が高いという利点を有するが、小スケールでは効率的に重合を進めることができるものの、工業的規模では上述したように粘度の上昇と共に反応系内部への熱伝導性が大きく低下するため、副生水を効率的に系外へ流出させることが困難となり、重合速度が極めて小さくなる。このため、反応条件を高温且つ低圧にする必要があるという問題を有していた。
【0005】
しかしながら、ポリ乳酸高分子量体においては、該ポリマーの融点と熱分解温度が近接しているため、重合温度を高めると該高分子量体の分解及び着色を促進するという問題が生じてしまう。
これらの問題を解決するために、これまでに種々の工夫がなされている。攪拌翼の形状、攪拌能力、並びに攪拌形態に工夫を凝らし、蒸発表面及び表面更新性を増加させた竪型の高粘度反応装置を用いて、触媒存在下あるいは非存在下、有機溶媒存在下あるいは非存在下で、副生水の留出を促進し、高分子量ポリ乳酸を重合する方法が、特開平7−228678号公報に開示されている。更には、特開平8−143649号公報には重合時にスクリュウ式押出し機を用いて重合する方法が開示されている。
【0006】
これら竪型の高粘度反応装置を用いる方法およびスクリュウ式押出し機を用いる方法は、蒸発表面積及び表面更新性に優れ、比較的高分子量のポリ乳酸が得られるが、常に攪拌による剪断発熱が起こり、重合系内の緻密な温度制御が行えないために、得られたポリ乳酸高分子量体は着色又は分解してしまうという問題がおきる恐れがあった。また、重合器本体に回転駆動部分があるために高真空下で重合が実施される場合には、この駆動部分を完全にシールすることができず、微量の酸素等の系内への混入を防止することができない。このため、反応条件として高温を強いられることと相まって、更に製品の着色が進行する傾向があった。この対策として、酸素等の系内への混入を防止するためにシール液を用いる場合には、シール液の混入が生じ、製品品質の低下が避けられなかった。また、運転開始当初のシール性が高い場合でも、長期間の運転により、シール性が低下する等、メンテナンス上の問題も深刻であった。
【0007】
このように、ポリ乳酸の直接脱水重縮合反応において、従来提案されている重合様式では、重合系内の温度制御の問題点や、スケールアップの難しさ等の問題、並びに高真空下における回転駆動部分のシール性の問題等を有していた。
また、通常の発酵法により製造される乳酸中には、メタノール、エタノール、酢酸、ピルビン酸、フマル酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等が微量存在することが知られており、乳酸を直接脱水重縮合する際には、これらの不純物がポリ乳酸高分子量体生成の妨げとなっている。この問題点を解決するために、特開平7−133344号公報では原料となる少なくとも乳酸を含むヒドロキシカルボン酸モノマー中の不純物量を0.3モル%以下として、触媒の存在下、溶媒中で重合を行う、高分子量の乳酸共重合体の製造方法を提案している。しかし、この方法では、別途、モノマー中の不純物を低減させるための精製工程が必要となり、製造工程が多段化するという問題があった。このため、乳酸を直接脱水重縮合する方法において、原料中の不純物量に影響されずに安定してポリ乳酸高分子量体を製造することができるプロセスが望まれていた。
【0008】
一方、ポリエステルの製造法に関して、多孔板の孔から低重合体を流下させながら重合する、重合器本体に回転駆動部分を有しない重合器を用いる重合方法がいくつか開示されている。例えば、特公昭48−8355号公報では、ポリエステルとポリアミドの製法として、反応器内に垂直に配置した多孔質物体の表面にポリマーを流下させて重縮合を行う方法が好ましいと記載されている。また、特開昭53−17569号公報では、中空体内に、縦方向の多数本の線状支持体、各線状支持体の上部に高粘度物を供給する多孔板及び各線状支持体の下部に処理物の取出機構を設けてなる高粘度物の処理装置に関して開示されている。更に、特公平4−58806号公報では、ポリエステルであるビス−(β−ヒドロキシアルキル)テレフタレートの連続重合法において、不活性ガス雰囲気中で重合初期物を口金より垂直に垂らした線状物に沿わせて流下させつつ重合する処理装置が記載されている。
【0009】
しかしながら、これらポリエステルの製造法にはポリ乳酸については全く記載されていない。ポリ乳酸の製造においては、上記したように、一般的に発酵法により製造される乳酸中には、メタノール、エタノール、酢酸、ピルビン酸、フマル酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等が微量存在することが知られており、乳酸を直接脱水重縮合する際には、これらの不純物が高分子量体生成の妨げとなる、という問題があることから、上記の一般的なポリエステルのように多孔板の孔から低重合体を支持体に沿わせて流下させながら重合する方法によってポリ乳酸高重合体の製造が可能であるとはこれまで考えられていなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリ乳酸の脱水重縮合において、表面更新性を増加させることを目的として提案されている竪型の攪拌槽型重合器、横型重合器等を用いた重合方式が有する、高真空下における回転駆動部分のシール性の問題や、スケールアップの難しさ等の問題を解決すると同時に、副生水や乳酸モノマー中の微量不純物の存在に影響されることなく、高品質のポリ乳酸、即ち、着色のない高分子量ポリ乳酸を大きな重合速度で工業的に製造する方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、多孔板の孔から低重合体を支持体に沿わせて流下させながら重合する方法によって、その目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1) 乳酸又はその線状重合中間体から脱水重縮合によりポリ乳酸を製造する方法において、乳酸又はその線状重合中間体を支持体に沿わせて落下させながら重縮合を進行させる工程を有することを特徴とするポリ乳酸の製造方法、
(2) 乳酸又はその線状重合中間体から脱水重縮合によりポリ乳酸を製造する方法において、乳酸又はその線状重合中間体を支持体に沿わせて落下させながら重縮合を進行させ、落下させた重合体の一部又は全部を循環させて、再び上記支持体に沿わせて落下させながら重縮合することを特徴とするポリ乳酸の製造方法、
(3) 乳酸又はその線状重合中間体から脱水重縮合によりポリ乳酸を製造する方法において、乳酸又はその線状重合中間体を溶融状態で連続的に供給し、支持体に沿わせて落下させながら脱水重縮合により重合させ、落下させた重合体の一部を循環させて、再び該支持体に沿わせて落下させながら重合させ、ポリ乳酸を連続的に抜き出すことを特徴とするポリ乳酸の製造方法、
(4) 支持体が円柱状ワイヤーであることを特徴とする上記(1)、(2)又は(3)のポリ乳酸の製造方法、
(5) 上記(1)、(2)又は(3)のポリ乳酸の製造方法において、支持体に沿わせて落下させながら重合させる工程の他に、撹拌槽で重合させる工程、横型混練り機で重合させる工程、薄膜式重合器で重合させる工程、及び自由落下で重合させる工程の内の少なくとも一つ以上の工程を行うことを特徴とするポリ乳酸の製造方法、
を提供するものである。
【0012】
従来、ポリ乳酸を脱水重縮合により製造する場合、前述の高粘度反応装置、スクリュウ式押出し機のように、攪拌又は混練等の回転駆動力により蒸発表面積及び表面更新性を向上させる試みがなされてきた。しかし、驚くべきことに、支持体に沿ってポリマーを流下させて重合を進行させる本発明の方法によれば、副生水の蒸発速度が増加することのみならず、系内に存在する原料モノマーである乳酸中に含まれていた不純物も同時に効率的に系外へ留去され、大きな重合速度で、着色のない高分子量ポリ乳酸が製造できることが明らかになった。更に、驚くべきことに、支持体に沿ってポリマーを流下させて重合を進行させる本発明の方法においては、重合系内の緻密な温度制御が可能となることから、融点と分解温度が近接するポリ乳酸においても、高品質の着色のないポリ乳酸高分子量体を製造することができることを見出した。
【0013】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明において使用される原料モノマー及び重合中間体としては、それぞれ乳酸及びその線状重合中間体が挙げられる。乳酸及びその線状重合中間体の中には、光学活性炭素を有し、D体、L体又はD/L混合体の場合があるが、本発明においては、それらの混合割合に何ら制限はない。
【0014】
また、本発明において、乳酸又はその線状重合中間体の脱水重縮合反応を触媒を加えずに実施することもできるが、重合速度を高める為に、必要に応じて触媒を用いることができる。触媒としては、乳酸の脱水重縮合反応に用いられる公知の触媒を用いることができる。例えば、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タングステン、亜鉛、ゲルマニウム、錫、アンチモン等の金属、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化錫、酸化アンチモン等の金属酸化物、弗化錫、弗化アンチモン、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化第一錫、塩化第二錫、臭化第一錫、臭化第二錫、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸錫、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の金属塩、炭酸亜鉛、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、水酸化鉄、水酸化コバルト、水酸化ニッケル、水酸化銅、水酸化亜鉛等の金属水酸化物、酢酸アルミニウム、酢酸亜鉛、酢酸錫、オクタン錫、ステアリン酸錫、乳酸鉄、乳酸錫、テトラエトキシチタン、テトラブチルチタン、テオライソプロピルチタン、アセチルアセトンチタン、テトラエトキシゲルマニウム、テトラブトキシゲルマニウム、ジブチルスズオキサイド等の有機金属、アンバーライト、ダウエックス等のイオン交換樹脂等が挙げられる。
【0015】
触媒を用いる場合、これらの触媒は一種だけ用いても良いし、二種以上の組み合わせで用いても良い。また、これらの触媒の使用量は、原料の乳酸又はその線状重合中間体に対して、通常10-8〜10重量%の範囲である。
本発明において、乳酸又はその線状重合中間体の重縮合によりポリ乳酸を製造するに当たり、反応の温度は150〜250℃、好ましくは160〜230℃、更に好ましくは170〜210℃である。150℃未満の温度では、反応速度が小さくなりすぎ、250℃を越える場合にはポリマーの熱分解による着色が著しくなる傾向にある。
【0016】
本発明において、重縮合反応は不活性ガス気流下で行っても、減圧下で行ってもよい。重縮合反応の進行に伴い、副生水が生成するが、これを反応系外へ除去することにより、反応速度の低下を抑制することができる。従って、不活性ガスを導入して、生成する副生水をこれらのガスに同伴させて除去する方法や、減圧下で反応を行う方法が好ましく用いられる。減圧下で重縮合反応を行う場合、減圧レベルは0.1〜100mmHgが好ましく、3〜50mmHgが更に好ましい。
【0017】
本発明において、反応槽又はベントラインに還流管等の還流装置を設置して、気化した物質の内、乳酸の低分子量体を回収し、再び反応系内に戻す還流操作を行うことは好ましい方法である。還流管の温度は50〜150℃、好ましくは60〜130℃に設定する。このとき、還流管内の減圧度は、前記の通り0.1〜100mmHgに調節する。
【0018】
本発明において、重合中の熱劣化による着色を抑えるために、熱安定化剤を添加して重縮合反応を行っても良い。使用される熱安定化剤としては、リン酸、ピロリン酸、亜リン酸等のリン酸系化合物が好ましい。熱安定化剤の使用量は、原料である乳酸モノマー又はその線状重合中間体に対して、通常0.05〜6重量%、好ましくは0.1〜3重量%である。熱安定化剤の添加量が6重量%を越えて添加しても着色を防止する効果が増加せず、その添加量が0.05重量%以下では着色を防止する効果が充分に現れない。
【0019】
本発明により製造されるポリ乳酸の分子量範囲は、5000から50万の重量平均分子量を有するポリ乳酸が得られる。好ましくは2万から30万程度である。
本発明では、重合反応の工程において、有機溶媒を用いる方法、用いない方法のどちらの方法も採用できる。ただし、用いる溶媒は、反応系から容易に留去できることが望ましい。
【0020】
本発明の方法を達成する重合器及び支持体の材質には特に制限はなく、通常ステンレススチール、カーボンスチール、ニッケル、ハステロイ、チタン、クロム、その他合金等から選ばれる。また、支持体の表面はメッキ、ライニング、不動態処理等必要に応じて種々の処理がなされてもかまわない。
本発明において、支持体に沿わせて乳酸又はその線状重合中間体を流下させる場合、多孔板の孔から支持体に沿わせて流下させる方法を用いることができる。この場合、多孔板の孔の形状には特に制限はなく、通常、円状、長円状、三角状、多角形状、スリット状、星形状等の形状から選ばれる。孔の断面積は、通常0.01〜100cm2 である。多孔板の孔の数には特に制限はなく、反応温度、反応圧力、触媒量、重合させる分子量の範囲等によって異なるが、通常5〜106 個の孔が必要である。この多孔板を通じて乳酸又はその線状重合中間体を、支持体に沿わせて落下させる方法としては、自重で落下させる方法、ポンプ等により加圧にして多孔板の孔から押し出す方法等が挙げられる。
【0021】
本発明において、分散板における孔の設置様式については特に制限はないが、正六角形の各頂点及び該正六角形の重心に孔を設置することは、分散板に孔が密に充填されるため、特に好ましい孔の設置様式である。以下、本発明において該六角形の各頂点間距離をピッチと称する。
本発明において、支持体に沿わせて落下させるのに要する時間に特に制限はないが、通常1秒〜100時間の範囲である。
【0022】
本発明において、支持体に沿わせて落下させた後の重合物はそのまま抜き出されても構わないが、循環させて再び支持体に沿わせて落下させながら重合させるのも好ましい方法である。この場合、支持体に沿わせて落下させた後の液留部や循環ライン等で、重縮合反応に必要な反応時間に応じて、滞留時間を長くすることが出来る。また、支持体に沿わせて落下させながら循環を行うことにより、単位時間に形成し得る新規な溶融体の表面積を大きく取れる為、所望の分子量まで充分重合を進行させることが容易となる。
【0023】
本発明は、上述したように、工業的規模でポリ乳酸を製造する際に好ましい方法を提供するものである。本発明で製造するポリ乳酸の生産量に特に制限はないが、通常1kg/hr以上である。
本発明は支持体に沿って乳酸又はその線状重合中間体を溶融流下せしめて重合を進行させる重合器であれば、その形式について特に制限はないが、その支持体が複数支持体である場合には、更に好ましい。支持体としては、平面状、円柱状、円錐状、三角錐状、四角錐状、鎖状等のものが可能である。これらの内、円柱状のワイヤーが特に好ましく用いられる。その他に、支持体が中空となっており、支持体の外側にポリマーを落下させながら重合し、中空部に加熱媒体を入れる方法や、その逆に、支持体の中空部にポリマーを落下させながら重合し、支持体の外側に加熱媒体を接触させる方法等も可能である。支持体の材質は、前記したように、通常ステンレススチール、カーボンスチール、ニッケル、ハステロイ、チタン、クロム、その他合金等から選ばれる。また、支持体の表面はメッキ、ライニング、不動態処理等必要に応じて種々の処理がなされてもかまわない。
【0024】
本発明のポリ乳酸の製造方法において、上記支持体に沿って乳酸又はその線状重合中間体を溶融流下せしめて重合を進行させる重合器を一基用いても良いし、二基以上用いても構わない。また、該重合器と、竪型撹拌槽、横型混練り機、薄膜式重合器及び自由落下で重合させる重合器等の他の重合器とを組み合わせてポリ乳酸を製造することも可能である。例えば、重合の初期にポリ乳酸を竪型攪拌槽を用いて重合を行うことにより線状重合中間体を製造し、その線状重合中間体を、本発明の支持体に沿って溶融流下せしめて重合を進行させる重合器を用いて重合する方法等は、本発明の好ましい様態の一つである。
【0025】
図1、図2、図3、図4に基づいて本発明で用いることのできる重合器の具体例を説明する。
図1は、複数の平面状支持体4を備え、この平面状支持体4に沿って図示されていないポリマーを落下させながら重合させるタイプの重合器であり、図1(a)はそれを正面から見た断面模式図、図1(b)はそれを上から見た断面模式図である。平面状支持体は分散板上に設置された保持具13により鉛直に保持されている。保持具の材質については特に制限はないが、通常ステンレススチール、カーボンスチール、ニッケル、ハステロイ、チタン、クロム、その他合金等から選ばれる。また、該保持具の表面はメッキ、ライニング、不動態処理等、必要に応じて種々の処理がなされてもかまわない。原料供給口2から導入された線状重合中間体は分散板3で複数の平面状支持体4に分散される。平面状支持体4に沿って落下するポリマーからは、蒸発面より副生水等が蒸発する。重合器内部は減圧下にコントロールされており、副生水等や、必要に応じてガス供給口5から供給される不活性ガス等は、ベント口6より排出される。落下する間に重合度の高められたポリマーは、排出口7より排出される。排出されたポリマーを再び原料供給口2に供給して更に重合度を高めることも可能である。回分方式で重合を行う場合には、排出されたポリマーを繰り返し原料供給口2に供給しつつ重合することも可能である。連続方式としては、原料供給口2に連続的にポリマーを供給し、排出口7より重合度の高められたポリマーを連続的に抜き出す方式や、排出されたポリマーを繰り返し原料供給口2に供給すると共に、新たな線状重合中間体を連続的に原料供給口2に供給し、排出されたポリマーの一部を連続的に抜き出し、残りのポリマーを再び原料供給口2に供給する方式等が挙げられる。なお、重合器は、図示されていないジャケット又はヒーター等により加熱され、且つ、保温されている。
【0026】
この方式の重合器は、平面状支持体の面積を大きくしたり、平面状支持体の数を増やすことで、容易にポリ乳酸の生産量を高め、スケールアップすることが可能であり、工業的に実施する際、有利である。
図2は、複数の円柱状支持体8を備え、この円柱状支持体8に沿ってポリマーを落下させつつ重合させるタイプの重合器であり、図2(a)はその正面から見た断面模式図、図2(b)はその上から見た断面模式図である。円柱状支持体は分散板上に設置された保持具13により鉛直に保持されている。保持具の材質については特に制限はないが、通常ステンレススチール、カーボンスチール、ニッケル、ハステロイ、チタン、クロム、その他合金等から選ばれる。また、該保持具の表面はメッキ、ライニング、不動態処理等必要に応じて種々の処理がなされてもかまわない。原料供給口2から導入された線状重合中間体は、分散板3で複数の円柱状支持体8に分散される。円柱状支持体に沿って落下する図示されていないポリマーからは、蒸発面より副生水等が蒸発する。重合器内部は減圧下にコントロールされており、副生水等や、必要に応じてガス供給口5から供給される不活性ガス等は、ベント口6より排出される。落下する間に重合度の高められたポリマーは、排出口7より排出される。排出されたポリマーを再び原料供給口2に供給し、更に重合度を高めることも可能である。重合は回分方式でも連続方式でも可能である。回分方式で行う場合には、排出されたポリマーを繰り返し原料供給口2に供給しながら重合することも可能である。連続方式としては、原料供給口2に連続的にポリマーを供給し、排出口7より重合度の高められたポリマーを連続的に抜き出す方式や、排出されたポリマーを繰り返し原料供給口4に供給し、排出されたポリマーの一部を連続的に抜き出し、残りのポリマーを再び原料供給口2から供給する方式等が挙げられる。なお、重合器は図示されていないジャケット又はヒーター等により加熱され、且つ、保温されている。
【0027】
この方式の重合器は、円柱状支持体の数を増やすことで、容易にポリ乳酸の生産量を高め、スケールアップすることが可能であり、工業的に実施する際、有利である。
図3は、複数の円錐状支持体9を備え、この円錐状支持体9に沿ってポリマーを落下させながら重合させるタイプの重合器の正面から見た断面図である。円錐状支持体9は分散板上に設置された保持具13により鉛直に保持されている。保持具の材質については特に制限はないが、通常ステンレススチール、カーボンスチール、ニッケル、ハステロイ、チタン、クロム、その他合金等から選ばれる。また、該保持具の表面はメッキ、ライニング、不動態処理等必要に応じて種々の処理がなされてもかまわない。原料供給口2から導入された線状重合中間体は、まず最上部の円錐状支持体に沿って落下し、次いで2段目の円錐状支持体に沿って落下し、次第に下方の円錐状支持体移行することにより重合器ボトムに達する。落下する図示されていないポリマーからは、蒸発面より副生水等が蒸発する。重合器内部は減圧下にコントロールされており、副生水等や、必要に応じてガス供給口5から供給される不活性ガス等はベント口6より排出される。落下する間に重合度の高められたポリマーは、排出口7より排出される。排出されたポリマーを再び原料供給口2に供給して、更に重合度を高めることも可能である。重合は回分方式でも連続方式でも可能である。回分方式で行う場合には、排出されたポリマーを繰り返し原料供給口2に供給しながら重合することも可能である。連続方式としては、原料供給口2に連続的にポリマーを供給し、排出口7より重合度の高められたポリマーを連続的に抜き出す方式や、排出されたポリマーを繰り返し原料供給口2に供給し、排出されたポリマーの一部を連続的に抜き出し、残りのポリマーを再び原料供給口2から供給する方式等が挙げられる。なお、重合器は図示されていないジャケット又はヒーター等により加熱され、且つ、保温されている。
【0028】
この方式の重合器は、円錐状支持体の面積を大きくすることで容易にポリ乳酸の生産量を高め、スケールアップすることが可能であり、工業的に実施する際、有利である。
図4は複数の円筒状チューブ10を備え、この円筒状チューブ10の内壁に沿ってポリマーを落下させながら重合させるタイプの重合器であり、図4(a)はその正面から見た断面模式図、図4(b)はその上から見た断面模式図である。原料供給口2から導入された線状重合中間体は、オーバーフローにより複数の円筒状チューブ10に分散される。円筒状チューブ10の内壁に沿って落下する図示されていないポリマーからは、蒸発面より副生水等が蒸発する。重合器内部は減圧下にコントロールされており、副生水等や、必要に応じてガス供給口5から供給される不活性ガス等はベント口6より排出される。落下する間に重合度の高められたポリマーは、排出口7より排出される。排出されたポリマーを再び原料供給口2に供給して、更に重合度を高めることも可能である。重合は回分方式でも連続方式でも可能である。回分方式で行う場合には、排出されたポリマーを繰り返し原料供給口2に供給しながら重合することも可能である。連続方式としては、原料供給口2に連続的にポリマーを供給し、排出口7より重合度の高められたポリマーを連続的に抜き出す方式や、排出されたポリマーを繰り返し原料供給口4に供給し、排出されたポリマーの一部を連続的に抜き出し、残りのポリマーを再び原料供給口2から供給する方式等が挙げられる。なお、円筒状チューブの外側のシェル部は熱媒により加熱されており、熱媒供給口11より供給された熱媒は、熱媒排出口12より排出される。
【0029】
この方式の重合器は、円筒状チューブの数を増やすことで容易にポリ乳酸の生産量を高めスケールアップすることが容易であり、工業的に実施する際、有利である。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明における実施例を記載する。本明細書記載のポリマーの分子量は、溶媒としてクロロホルムを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(カラム温度40℃、ポリスチレン標準試料による校正)により測定した。
【0031】
【実施例1】
通常の攪拌翼を有する槽型重合器及び支持体に沿わせて落下させる重合器を直列に連結してポリ乳酸の重合を行った。支持体に沿わせて落下させる重合器として、図2に示すような複数の円柱状支持体を有する円筒状の重合器に対して、気化した物質の内、乳酸の低分子量体を回収し反応系に戻すことが可能な還流管をベントラインに備え付けた装置を用いて反応を行った。この重合器は、内容積0.5m3 であり、孔径3mmの孔をピッチ4.5mmの六方最密配置で55個有する多孔板を、更に、孔の中心から鉛直に重合器下部の液溜まで垂らした直径1mm、長さ4mのSUS316製円柱状ワイヤーを55本備えている。重合器に供給されたポリマーは、分散板により各支持体に均一に分配される。また、排出口と原料供給口を循環ラインでつなぎ、重合器ボトムに落下したポリマーを循環ラインを通じて再び原料供給口に供給するようにした。重合器にポリマーを攪拌するための装置は備え付けられていない。以下、該重合器をワイヤー付多孔板型重合器1と称する。
【0032】
通常の撹拌翼を有する槽型重合器に、発酵法により合成された90%L−乳酸35kg及び該乳酸に対して0.2重量%の錫粉末を仕込み、3回窒素置換した後、25℃から5℃/minで180℃まで昇温し、1時間攪拌した。続いて、30分かけて徐々に10mmHgまで減圧した後、窒素流量2リットル/hrの条件で8時間脱水重縮合し、プレポリマーを製造した。得られた該プレポリマーの一部を抜き出して分子量を測定した結果、重量平均分子量は5000であった。窒素置換を3回行ったワイヤー付多孔板型重合器1に、該プレポリマー30kgを窒素雰囲気下で180℃にて保温したまま仕込み、反応温度180℃、反応圧力10mmHg、また、ベントラインに備え付けた還流管の温度及び圧力をそれぞれ115℃、10mmHgに調節し、ポリマー循環流量を重合開始後から4時間後までは60kg/hr、4時間から8時間後までは40kg/hr、8時間から12時間後までは25kg/hrの条件で12時間バッチ重合を行った。12時間後に得られたポリ乳酸は、着色がなく、重量平均分子量は13万以上であった。ワイヤー付多孔板型重合器1のベントラインに備え付けた還流管を通過したガスをトラップした結果、乳酸モノマー中に存在していた微量不純物の大部分が回収された。
【0033】
【実施例2】
通常の攪拌翼を有する槽型重合器及び支持体に沿わせて落下させる重合器を直列に連結してポリ乳酸の重合を行った。図2に示すような複数の円柱状支持体を有する円筒状の重合器に対して、気化した物質の内、乳酸の低分子化合物を回収し反応系に戻すことが可能な還流管をベントラインに備え付けた装置を用いて反応を行った。この重合器は、内容積0.5m3 であり、孔径3mmの孔をピッチ4mmの六方最密配置で61個有する多孔板を、更に、孔の中心から鉛直に重合器下部の液溜まで垂らした直径0.8mm、長さ4mのSUS316製円柱状ワイヤー61本備えている。重合器に供給されたポリマーは、分散板により各支持体に均一に分配される。ただし、排出口と原料供給口を循環ラインでつなぎ、重合器ボトムに落下したポリマーは循環ラインを通じて再び原料供給口に供給した。該重合器にポリマーを攪拌するための装置は備え付けられていない。以下、該重合器をワイヤー付多孔板型重合器2と称する。
【0034】
通常の撹拌翼を有する槽型重合器に、発酵法により合成された90%L−乳酸及び90%D−乳酸を最終的にD体とL体の比がモル比で25対75となるように35kg仕込み、更に乳酸に対して0.2重量%の錫粉末を仕込んで、3回窒素置換した後、25℃から5℃/minで180℃まで昇温し、1時間攪拌した。続いて、30分かけて徐々に10mmHgまで減圧した後、窒素流量2リットル/hrの条件で8時間脱水重縮合し、プレポリマーを製造した。得られた該プレポリマーの一部を抜き出して分子量を測定した結果、重量平均分子量は5000であった。窒素置換を3回行ったワイヤー付多孔板型重合器2に、該プレポリマー30kgを窒素雰囲気下で180℃にて保温したまま仕込み、反応温度180℃、反応圧力10mmHg、また、ベントラインに備え付けた還流管の温度及び圧力をそれぞれ115℃、10mmHgに調節し、ポリマー循環流量を重合開始後から4時間後までは50kg/hr、4時間から8時間後までは30kg/hr、8時間から12時間後までは20kg/hr、窒素ガス流量2リットル/hrの条件で12時間バッチ重合を行った。12時間後に得られたポリ乳酸は、着色がなく、重量平均分子量は12万以上であった。ワイヤー付多孔板型重合器2のベントラインに備え付けた還流管を通過したガスをトラップした結果、乳酸モノマー中に存在していた微量不純物の大部分が回収された。
【0035】
【比較例1】
通常の攪拌翼及び実施例1と同様な還流管を、ベントラインに備え付けた5リットルのグラスライニング製槽型重合器を用いて反応を行った。この重合器の外側はジャケットになっており、熱媒で加温されている。この重合器を3回窒素置換し、実施例1と同様の窒素雰囲気下にて製造したプレポリマー4kgを窒素雰囲気下で180℃にて保温したまま仕込み、反応温度180℃、反応圧力10mmHg、また、ベントラインに備え付けた還流管の温度及び圧力をそれぞれ115℃、10mmHgに調節し、12時間バッチ重合を行った。12時間後に得られたポリ乳酸は着色しており、重量平均分子量は8万未満であった。ベントラインに備え付けた還流管を通過したガスをトラップした結果、乳酸モノマー中に存在していた微量不純物の回収率は低かった。
【0036】
【比較例2】
長さ3m、回転直径0.25m、スクリュー総ピッチ数100、スクリューの間隔0.1mmの噛み合い型2軸スクリュウ攪拌軸及び実施例1と同様な還流管をベントラインに備え付けた内容積0.6m3 、長さ3mの横型混練り機を3回窒素置換し、実施例1と同様のプレポリマー600kgを、窒素雰囲気下で180℃にて保温したまま仕込み、攪拌軸の回転数15rpm、反応温度180℃、反応圧力10mmHg、また、ベントラインに備え付けた還流管の温度及び圧力をそれぞれ115℃、10mmHgに調節し、12時間バッチ重合を行った。12時間後に得られたポリ乳酸は着色しており、重量平均分子量は8万未満であった。ベントラインに備え付けた還流管を通過したガスをトラップした結果、乳酸モノマー中に存在していた微量不純物の回収率は極めて低かった。
【0037】
【実施例3】
通常の攪拌翼を有する槽型重合器、横型混練り機、支持体に沿わせて落下させる重合器を直列に連結してポリ乳酸の重合を行った。長さ3m、回転直径0.25m、スクリュー総ピッチ数100、スクリューの間隔0.1mmの噛み合い型2軸スクリュウ攪拌軸及び実施例1と同様な還流管をベントラインに備え付けた内容積0.6m3 、長さ3mの横型混練り機を3回窒素置換し、実施例1と同様の、窒素雰囲気下にて製造したプレポリマー600kgを窒素雰囲気下で180℃にて保温したまま仕込み、攪拌軸の回転数15rpm、反応温度180℃、反応圧力10mmHg、また、ベントラインに備え付けた還流管の温度及び圧力をそれぞれ115℃、10mmHgに調節し、6時間バッチ重合を行った。得られたポリマーの一部を抜き出し、その分子量を測定した結果、重量平均分子量は55000であった。得られた該ポリマーの内、30kgを窒素雰囲気下で180℃にて保温したまま、実施例2と同様のワイヤー付多孔板型重合器2に仕込み、反応温度180℃、反応圧力10mmHg、また、ベントラインに備え付けた還流管の温度及び圧力をそれぞれ115℃、10mmHgに調節し、ポリマー循環流量45kg/hr、窒素ガス流量2リットル/hrの条件で2時間バッチ重合を行った。2時間後に得られたポリ乳酸は、着色がなく、重量平均分子量は70000であった。ワイヤー付多孔板型重合器2のベントラインに備え付けた還流管を通過したガスをトラップした結果、乳酸モノマー中に存在していた微量不純物の大部分が回収された。
【0038】
【実施例4】
通常の攪拌翼を有する槽型重合器、自由落下型重合器、支持体に沿わせて落下させる重合器を直列に連結してポリ乳酸の重合を行った。図2に示す複数の円柱状支持体を有する円筒状の重合器から円柱状支持体及び支持体保持具を取り除いた様式の自由落下重合器は、内容積0.5m3 であり、孔径3mmの孔をピッチ4mmの六方最密配置で61個有する多孔板を備えている。重合器に供給されたポリマーは、分散板により各孔に均一に分配される。ただし、排出口と原料供給口を循環ラインでつなぎ、重合器ボトムに落下したポリマーは循環ラインを通じて再び原料供給口に供給した。該重合器を自由落下多孔板型重合器1と称する。自由落下多孔板型重合器1に実施例1と同様のプレポリマーを30kgを、窒素雰囲気下で180℃にて保温したまま仕込み、反応温度180℃、反応圧力10mmHg、また、ベントラインに備え付けた還流管の温度及び圧力をそれぞれ115℃、10mmHg、ポリマー循環流量50kg/hr、窒素流量2リットル/hrの条件で6時間バッチ重合を行った。得られたポリマーの重量平均分子量は45000であった。得られた該ポリマーの内、20kgを窒素雰囲気下にて180℃にて保温したまま、実施例2と同様のワイヤー付多孔板型重合器2に仕込み、反応温度180℃、反応圧力10mmHg、また、ベントラインに備え付けた還流管の温度及び圧力をそれぞれ115℃、10mmHgに調節し、ポリマー循環流量45kg/hr、窒素ガス流量2リットル/hrの条件で2時間バッチ重合を行った。2時間後に得られたポリ乳酸は、着色がなく、重量平均分子量は69000であった。ワイヤー付多孔板型重合器2のベントラインに備え付けた還流管を通過したガスをトラップした結果、乳酸モノマー中に存在していた微量不純物の大部分が回収された。
【0039】
【実施例5】
通常の攪拌翼を有する内容積100リットルの槽型重合器(以下、槽型重合器1と称する。)、通常の攪拌翼を有する内容積50リットルの槽型重合器(以下、槽型重合器2と称する。)、支持体に沿わせて落下させる重合器を2器、直列に連結して、連続的にポリ乳酸の重合を行った。ここで、槽型重合器1は2基のグラスライニング製槽型重合器よりなる(以下、それぞれ(A)、(B)と称する。)。2基直列につないだ支持体に沿わせて落下させる重合器を、ポリマーの供給順にそれぞれワイヤー付多孔板型重合器3、ワイヤー付多孔板型重合器4と称する。支持体に沿わせて落下させる重合器は、いずれも図2に示すような複数の円柱状支持体を有する円筒状の重合器に、気化した物質の内、乳酸の低分子化合物を回収し反応系に戻すことが可能な還流管をベントラインに備え付けた装置を備えている。この支持体に沿わせて落下させる重合器は、いずれも内容積0.5m3 であり、孔径3mmの孔をピッチ4mmの六方最密配置で61個有する多孔板を、更に、孔の中心から鉛直に重合器下部の液溜まで垂らした直径0.8mm、長さ4mのSUS316製円柱状ワイヤーを61本備えている。重合器に供給されたポリマーは、分散板により各支持体に均一に分配される。該重合器には、排出口と原料供給口をつなぐための循環ラインを設置した。該循環ラインは、そのポリマー循環流量は25kg/hrで、重合器ボトムのポリマー量を一定とするように、重合器ボトムからポリマーを連続的に抜き出すことが可能な装置である。槽型重合器2、ワイヤー付多孔板型重合器3、ワイヤー付多孔板型重合器4、並びに各重合器をつなぐラインは予め3回窒素置換されている。運転は、槽型重合器1に関しては(A)と(B)を切り替えながらバッチ的に、その他の重合器は連続的に行った。
【0040】
槽型重合器1(A)に発酵法により合成された90%−L乳酸を80kg、該乳酸に対して0.2重量%の錫粉末を仕込んで、3回窒素置換した後、25℃から5℃/minで180℃まで昇温し、1時間攪拌した。続いて、30分かけて徐々に10mmHgまで減圧した後、窒素流量2リットル/hrの条件で8時間脱水重縮合し、4kg/hrで連続的に槽型重合器2に供給した。槽型重合器1(A)から槽型重合器2に供給している間に、槽型重合器1(B)に、槽型重合器1(A)と同様に、発酵法により合成された90%−L乳酸を80kg、該乳酸に対して0.2重量%の錫粉末を仕込んで、3回窒素置換した後、脱水重縮合させ、槽型重合器1(A)が空になった時点で槽型重合器1(B)に切り替えた。この後、同様にして槽型重合器1(A)、(B)はバッチ的に切り替えながら槽型重合器2にプレポリマーを連続的に4kg/hrで供給し続けた。槽型重合器2は、反応温度180℃、反応圧力4mmHg、窒素ガス流量2リットル/hrの条件である。槽型重合器2は内容量が20kgに達したら、内容量20kgを一定に保つように重合器3にプレポリマーを連続に供給した。重合器3は、反応温度180℃、反応圧力4mmHg、また、ベントラインに備え付けた還流管の温度及び圧力をそれぞれ70℃、4mmHg、窒素ガス流量2リットル/hrの条件で運転を行った。重合器3は、重合器ボトムに落下したポリマー量を一定に保つように重合器4にポリマーを連続に供給した。重合器4は、反応温度180℃、反応圧力3mmHg、また、ベントラインに備え付けた還流管の温度及び圧力をそれぞれ60℃、3mmHg、窒素ガス流量3リットル/hrの条件で運転を行った。この運転条件で600時間連続で脱水重縮合反応を行った結果、200時間後、400時間後、600時間後に重合器4から排出されたポリマーは着色がなく、分子量はそれぞれ50000、51000、50000であった。重合器3、4のベントラインに備え付けた還流管を通過したガスをトラップした結果、乳酸モノマー中に存在していた微量不純物の大部分が回収された。
【0041】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、原料乳酸中に存在する不純物の影響を受けずに、大きな重合速度で、着色のないポリ乳酸高分子量体を製造することができ、産業上、大いに有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を達成する重合器の一例を示す、(a)正面からの断面模式図と、(b)上からの断面模式図である。
【図2】本発明の方法を達成する重合器の一例を示す、(a)正面からの断面模式図と、(b)上からの断面模式図である。
【図3】本発明の方法を達成する重合器の一例を示す正面からの断面模式図である。
【図4】本発明の方法を達成する重合器の一例を示す、(a)正面からの断面模式図と、(b)上からの断面模式図である。
【符号の説明】
1. 重合器
2. 原料供給口
3. 分散板
4. 平板支持体
5. ガス供給口
6. ベント
7. 排出口
8. 円柱状支持体
9. 円錐状支持体
10.円筒状チューブ
11.熱媒供給口
12.熱媒排出口
13.支持体の保持具
Claims (5)
- 乳酸又はその線状重合中間体の脱水重縮合によりポリ乳酸を製造する工程において、重縮合の全工程又は重縮合の一部の工程にて、支持体に沿わせて落下させながら重合を進行させることを特徴とするポリ乳酸の製造方法。
- 乳酸又はその線状重合中間体の脱水重縮合によりポリ乳酸を製造する工程において、重縮合の全工程又は重縮合の一部の工程にて、支持体に沿わせて落下させながら重合を進行させ、落下させた重合体の一部又は全部を循環させて、再び該支持体に沿わせて落下させながら重合することを特徴とするポリ乳酸の製造方法。
- 乳酸又はその線状重合中間体を溶融状態で連続的に供給し、支持体に沿わせて落下させながら脱水重縮合により重合させ、落下させた重合体の一部を循環させて、再び該支持体に沿わせて落下させながら重合させ、ポリ乳酸を連続的に抜き出すことを特徴とするポリ乳酸の製造方法。
- 支持体が円柱状ワイヤーであることを特徴とする請求項1、2又は3記載のポリ乳酸の製造方法。
- 請求項1、2又は3記載のポリ乳酸の製造方法において、支持体に沿わせて落下させながら重合させる工程の他に、撹拌槽で重合させる工程、横型混練り機で重合させる工程、薄膜式重合器で重合させる工程及び自由落下で重合させる工程の内の少なくとも一つの重合させる工程を行うことを特徴とするポリ乳酸の製造方法。
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