本発明は、高分子量、高融点を有し、かつ熱安定性の高いポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成するポリ乳酸ブロック共重合体を効率的に製造する方法に関するものである。
近年、環境保全の観点から、植物由来のカーボンニュートラルな素材としてポリ乳酸が注目されている。ポリ乳酸は、融点がおよそ170℃と耐熱性を有しており、溶融成形加工が可能な素材であって、さらに近年モノマーである乳酸が微生物を利用した発酵法によって安価に製造されるようになったため、汎用ポリマーとしての利用も検討されるようになっている。
また、ポリ−L−乳酸(以下、PLLAと称する)とポリ−D−乳酸(以下、PDLAと称する)を混合することにより、ポリ乳酸ステレオコンプレックスが得られることが知られており、これが高融点および高結晶性を示し、繊維やフィルム、樹脂成形品として有用な成形品を与えることが知られている。
そこで、特許文献1では、PLLAおよびPDLAを製造する第1工程、PLLAとPDLAを混合する第2工程、混合物を固相重合する第3工程を経て、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを製造する方法が記載されており、高分子量、高融点を有するポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成するポリ乳酸ブロック共重合体を製造する方法が開示されている。
しかし、特許文献1に記載された方法では、第1工程でラクチド開環重合を行っており、原料として乳酸よりも高価なラクチドを用いなければならないという問題点がある。さらに、第1工程として、塩化第一錫を触媒とする直接重縮合による製造方法も記載されているが、残存触媒によりPLLAおよびPDLAの熱安定性が低下するという問題があった。
特開2003−238672号公報(第1−11頁)
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果、達成されたものであり、その目的とするところは、直接重縮合法によって製造されたポリ乳酸を用いて、高分子量かつ高融点を有するポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成するポリ乳酸ブロック共重合体を容易に製造する方法を提供することにある。
本発明は、上述した問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものであり、その目的とするところは、高分子量、高融点を有し、かつ熱安定性の高いポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成するポリ乳酸ブロック共重合体を効率的に製造する方法を提供するところにある。
すなわち、本発明のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法は、以下のとおりである。
1.(1)L−乳酸を主原料とし、触媒存在下、直接重縮合によって、L−乳酸単位を主成分とする重量平均分子量が2万〜5万のポリ−L−乳酸を製造する工程(1−1)およびD−乳酸を主原料とし、触媒存在下、直接重縮合によって、D−乳酸単位を主成分とする重量平均分子量が2万〜5万のポリ−D−乳酸を製造する工程(1−2)からなる第1工程、
(2)前記第1工程で得たポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程、および
(3)前記第2工程で得たポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を、混合物の融点よりも低い温度で固相重合する第3工程を含むポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法であって、前記第2工程で触媒失活剤を添加することを特徴とするポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
2.触媒失活剤を第1工程および第2工程で添加する1に記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
3.触媒失活剤が、ジオクタデシルホスフェート、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、およびサイクリックネオペンタテトライルビス(2,6−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする1または2に記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
4.前記第1工程において、温度150〜200℃、および圧力13Pa以下の条件下で直接重縮合を行うことを特徴とする1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
5.前記第1工程で使用する触媒が、塩化第一錫以外の錫化合物、チタン化合物、鉛化合物、亜鉛化合物、コバルト化合物、鉄化合物、リチウム化合物、希土類化合物、およびスルホン酸化合物から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
6.前記第1工程で使用する触媒が、塩化第一錫以外の錫化合物から選択される1種以上および/またはスルホン酸化合物から選択される1種以上を用いることを特徴とする1〜5のいずれかに記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
7.塩化第一錫以外の錫化合物が、酢酸錫(II)、オクチル酸錫(II)および塩化錫(IV)から選ばれる少なくとも一種であり、スルホン酸化合物がメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンジスルホン酸、およびナフタレンジスルホン酸から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする6に記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
8.前記第3工程において、固相重合時の温度を段階的に昇温することを特徴とする1〜7のいずれかに記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
9.得られるポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量が10万以上であることを特徴とする1〜8のいずれかに記載のポリ乳酸ブロック共重合体の製造方法。
高分子量、高融点を有し、かつ熱安定性の高いポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成するポリ乳酸ブロック共重合体を効率的に得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、ポリ乳酸ブロック共重合体とは、L−乳酸単位からなるセグメントとD−乳酸単位からなるセグメントにより構成されるポリ乳酸ブロック共重合体である。
ここで、L−乳酸単位からなるセグメントとは、L−乳酸を主成分とする重合体であり、L−乳酸単位を70モル%以上含有していることが好ましく、90モル%以上含有していることがより好ましく、95モル%以上含有していることがさらに好ましく、98モル%以上含有していることが特に好ましい。
また、D−乳酸単位からなるセグメントとは、D−乳酸を主成分とする重合体であり、D−乳酸単位を70モル%以上含有していることが好ましく、90モル%以上含有していることがより好ましく、95モル%以上含有していることがさらに好ましく、98モル%以上含有していることが特に好ましい。
本発明において、L−乳酸またはD−乳酸単位からなるセグメントは、得られるポリ乳酸ブロック共重合体の性能を損なわない範囲で、他の成分単位を含んでいてもよい。L−乳酸またはD−乳酸単位以外の他の成分単位としては、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類またはそれらの誘導体、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトールにエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを付加した多価アルコール、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類またはそれらの誘導体、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類、およびグリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などが挙げられる。
本発明の方法により得られるポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、10万以上であることが、機械物性の点で好ましい。特に、10万以上120万以下であることが、成形性および機械物性の点でより好ましい。なお、重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量の値である。
さらに、本発明においては、ポリ乳酸ブロック共重合体一分子あたりに含まれるL−乳酸単位からなるセグメントおよびD−乳酸単位からなるセグメントの合計数が3以上であることが、高融点のポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成しやすいポリ乳酸ブロック共重合体が得られる点で好ましい。
本発明において、L−乳酸単位からなるセグメントとD−乳酸単位からなるセグメントのそれぞれの合計の重量比は、90:10〜10:90であることが好ましく、さらに75:25〜25:75であることがより好ましく、特に60:40〜40:60であることが最も好ましい。L−乳酸単位からなるセグメントの重量比がそれぞれ10重量部未満であるか、あるいは90重量部を越えると、得られるポリ乳酸ブロック共重合体の融点の上昇が小さくなり、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成しにくくなる傾向を生じる。
本発明において、ポリ乳酸ブロック共重合体を製造するための方法は、
(1)L−乳酸を主原料とし、触媒存在下、直接重縮合によって、L−乳酸単位を主成分とする重量平均分子量が2万〜5万のポリ−L−乳酸を製造する工程(1−1)およびD−乳酸を主原料とし、触媒存在下、直接重縮合によって、D−乳酸単位を主成分とする重量平均分子量が2万〜5万のポリ−D−乳酸を製造する工程(1−2)からなる第1工程、
(2)前記第1工程で得たポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程、
(3)前記第2工程で得たポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を、混合物の融点よりも低い温度で固相重合する第3工程を含む。
(第1工程)
この第1工程を実施する方法としては、乳酸を触媒存在下で直接脱水縮合する一段階の直接重合法による製法を利用する。また、L−乳酸およびD−乳酸の等量混合物であるラセミ体を原料として、立体選択的重合を行う方法においては、上記第2工程を省略することができるため好ましい。
また、重合触媒としては、金属触媒と酸触媒が挙げられる。金属触媒としては、塩化第一錫以外の錫化合物、チタン化合物、鉛化合物、亜鉛化合物、コバルト化合物、鉄化合物、リチウム化合物、希土類化合物が挙げられ、化合物の種類としては、金属アルコキシド、金属ハロゲン化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酸化物などが好ましい。具体的には、錫粉末、塩化錫(II)、塩化錫(IV)、臭化錫(II)、臭化錫(IV)、エトキシ錫(II)、t−ブトキシ錫(IV)、イソプロポキシ錫(IV)、酢酸錫(II)、酢酸錫(IV)、オクチル酸錫(II)、ラウリン酸錫(II)、ミリスチン酸錫(II)、パルミチン酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)、オレイン酸錫(II)、リノール酸錫(II)、アセチルアセトン錫(II)、シュウ酸錫(II)、乳酸錫(II)、酒石酸錫(II)、ピロリン酸錫(II)、p‐フェノールスルホン酸錫(II)、ビス(メタンスルホン酸)錫(II)、硫酸錫(II)、酸化錫(II)、酸化錫(IV)、硫化錫(II)、硫化錫(IV)、酸化ジメチル錫(IV)、酸化メチルフェニル錫(IV)、酸化ジブチル錫(IV)、酸化ジオクチル錫(IV)、酸化ジフェニル錫(IV) 、酸化トリブチル錫、水酸化トリエチル錫(IV)、水酸化トリフェニル錫(IV)、水素化トリブチル錫、モノブチル錫(IV)オキシド、テトラメチル錫(IV)、テトラエチル錫(IV)、テトラブチル錫(IV)、ジブチルジフェニル錫(IV)、テトラフェニル錫(IV)、 酢酸トリブチル錫(IV)、酢酸トリイソブチル錫(IV)、酢酸トリフェニル錫(IV)、二酢酸ジブチル錫、ジオクタン酸ジブチル錫、ジラウリン酸ジブチル錫(IV)、マレイン酸ジブチル錫(IV)、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、塩化トリブチル錫(IV)、二塩化ジブチル錫、三塩化モノブチル錫、二塩化ジオクチル錫、塩化トリフェニル錫(IV)、硫化トリブチル錫、硫酸トリブチル錫、トリフルオロメタンスルホン酸錫(II)、ヘキサクロロ錫(IV)酸アンモニウム、ジブチル錫スルフィド、ジフェニル錫スルフィドおよび硫酸トリエチル錫、フタロシアニン錫(II)等の錫化合物が挙げられ、中でも、塩化第一錫以外の錫化合物が好ましい。また、チタニウムメトキシド、チタニウムプロポキシド、チタニウムイソプロポキシド、チタニウムブトキシド、チタニウムイソブトキシド、チタニウムシクロヘキシド、チタニウムフェノキシド、塩化チタン、二酢酸チタン、三酢酸チタン、四酢酸チタン、酸化チタン(IV)等のチタン化合物、ジイソプロポキシ鉛(II)、一塩化鉛、酢酸鉛、オクチル酸鉛(II)、イソオクタン酸鉛(II)、イソノナン酸鉛(II)、ラウリン酸鉛(II)、オレイン酸鉛(II)、リノール酸鉛(II)、ナフテン酸鉛、ネオデカン酸鉛(II)、酸化鉛、硫酸鉛(II)等の鉛化合物、亜鉛粉末、メチルプロポキシ亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、オクチル酸亜鉛(II)、ナフテン酸亜鉛、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫酸亜鉛等の亜鉛化合物、塩化コバルト、酢酸コバルト、オクチル酸コバルト(II)、イソオクタン酸コバルト(II)、イソノナン酸コバルト(II)、ラウリン酸コバルト(II)、オレイン酸コバルト(II)、リノール酸コバルト(II)、ナフテン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト(II)、炭酸第一コバルト、硫酸第一コバルト、酸化コバルト(II)等のコバルト化合物、塩化鉄(II)、酢酸鉄(II)、オクチル酸鉄(II)、ナフテン酸鉄、炭酸鉄(II)、硫酸鉄(II)、酸化鉄(II)等の鉄化合物、プロポキシリチウム、塩化リチウム、酢酸リチウム、オクチル酸リチウム、ナフテン酸リチウム、炭酸リチウム、硫酸ジリチウム、酸化リチウム等のリチウム化合物、トリイソプロポキシユウロピウム(III)、トリイソプロポキシネオジム(III)、トリイソプロポキシランタン、トリイソプロポキシサマリウム(III)、トリイソプロポキシイットリウム、イソプロポキシイットリウム、塩化ジスプロシウム、塩化ユウロピウム、塩化ランタン、塩化ネオジム、塩化サマリウム、塩化イットリウム、三酢酸ジスプロシウム(III)、三酢酸ユウロピウム(III)、酢酸ランタン、三酢酸ネオジム、酢酸サマリウム、三酢酸イットリウム、炭酸ジスプロシウム(III)、炭酸ジスプロシウム(IV)、炭酸ユウロピウム(II)、炭酸ランタン、炭酸ネオジム、炭酸サマリウム(II)、炭酸サマリウム(III)、炭酸イットリウム、硫酸ジスプロシウム、硫酸ユウロピウム(II)、硫酸ランタン、硫酸ネオジム、硫酸サマリウム、硫酸イットリウム、二酸化ユウロピウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化サマリウム(III)、酸化イットリウム等の希土類化合物が挙げられる。その他にも、カリウムイソプロポキシド 、塩化カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、ナフテン酸カリウム、炭酸tert−ブチルカリウム、硫酸カリウム、酸化カリウム等のカリウム化合物、銅(II)ジイソプロポキシド、塩化銅(II)、酢酸銅(II)、オクチル酸銅、ナフテン酸銅、硫酸銅(II)、炭酸二銅等の銅化合物、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、オクチル酸ニッケル、炭酸ニッケル、硫酸ニッケル(II)、酸化ニッケル等のニッケル化合物、テトライソプロポキシジルコニウム(IV)、三塩化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム(II)、炭酸ジルコニウム(IV)、硫酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム(II)等のジルコニウム化合物、トリイソプロポキシアンチモン、フッ化アンチモン(III)、フッ化アンチモン(V)、酢酸アンチモン、酸化アンチモン(III)等のアンチモン化合物、マグネシウム、マグネシウムジイソプロポキシド 、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム等のマグネシウム化合物、ジイソプロポキシカルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸カルシウム、乳酸カルシウム、硫酸カルシウム等のカルシウム化合物、アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、オクチル酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物、ゲルマニウム、テトライソプロポキシゲルマン、酸化ゲルマニウム(IV)等のゲルマニウム化合物、トリイソプロポキシマンガン(III)、三塩化マンガン、酢酸マンガン、オクチル酸マンガン(II)、ナフテン酸マンガン(II)、硫酸第一マンガン等のマンガン化合物、塩化ビスマス(III)、ビスマス粉末、酸化ビスマス(III)、酢酸ビスマス、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス等のビスマス化合物なども挙げることができる。また、錫酸ナトリウム、錫酸マグネシウム、錫酸カリウム、錫酸カルシウム、錫酸マンガン、錫酸ビスマス、錫酸バリウム、錫酸ストロンチウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸コバルト、チタン酸亜鉛、チタン酸マンガン、チタン酸ジルコニウム、チタン酸ビスマス、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムなどの2種以上の金属元素からなる化合物なども好ましい。また、酸触媒としては、プロトン供与体のブレンステッド酸でもよく、電子対受容体であるルイス酸でもよく、有機酸および無機酸のいずれでもよい。具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、オクチル酸、ノナン酸、イソノナン酸、トリフルオロ酢酸およびトリクロロ酢酸などのモノカルボン酸化合物、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸およびマロン酸などのジカルボン酸化合物、クエン酸およびトリカリバリル酸などのトリカルボン酸化合物、ベンゼンスルホン酸、n−ブチルベンゼンスルホン酸、n−オクチルベンゼンスルホン酸、n−ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,5−ジブチルベンゼンスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、p−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノ−4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、5−アミノ−2−メチルベンゼンスルホン酸、3,5−ジアミノ−2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2,4−ジニトロベンゼンスルホン酸、p−クロルベンゼンスルホン酸、 2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、クメンスルホン酸、キシレンスルホン酸、o−クレゾールスルホン酸、m−クレゾールスルホン酸、p−クレゾールスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、イソプロピルナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、2,7−ナフタレンジスルホン酸、4,4−ビフェニルジスルホン酸、アントラキノン−2−スルホン酸、m−ベンゼンジスルホン酸、2,5−ジアミノ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、 アニリン−2,4−ジスルホン酸、アントラキノン−1,5−ジスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸などの芳香族スルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、n−オクチルスルホン酸、ペンタデシルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、 1,2−エタンジスルホン酸、1,3−プロパンジスルホン酸などの脂肪族スルホン酸、シクロペンタンスルホン酸、シクロヘキサンスルホン酸およびカンファースルホン酸などの脂環式スルホン酸などのスルホン酸化合物、アスパラギン酸やグルタミン酸などの酸性アミノ酸、アスコルビン酸、レチノイン酸、リン酸、メタリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、リン酸モノドデシルおよびリン酸モノオクタデシルなどのリン酸モノエステル、リン酸ジドデシルおよびリン酸ジオクタデシルなどのリン酸ジエステル、亜リン酸モノエステルおよび亜リン酸ジエステルなどのリン酸化合物、ホウ酸、塩酸、硫酸なども挙げられる。また、酸触媒としては、形状は特に限定されず、固体酸触媒および液体酸触媒のいずれでもよく、例えば、固体酸触媒としては、酸性白土、カオリナイト、ベントナイト、モンモリロナイト、タルク、ケイ酸ジルコニウムおよびゼオライトなどの天然鉱物、シリカ、アルミナ、チタニアおよびジルコニアなどの酸化物またはシリカアルミナ、シリカマグネシア、シリカボリア、アルミナボリア、シリカチタニアおよびシリカジルコニアなどの酸化物複合体、塩素化アルミナ、フッ素化アルミナ、陽イオン交換樹脂などが挙げられる。
本発明において、生成されるポリ乳酸の分子量を考慮した場合、塩化第一錫以外の錫化合物、チタン化合物、アンチモン化合物、希土類化合物、および酸触媒が好ましく、生成されるポリ乳酸の融点を考慮した場合に、塩化第一錫以外の錫化合物、チタン化合物、およびスルホン酸化合物がより好ましい。さらに、生成されるポリ乳酸の熱安定性を考慮した場合、金属触媒の場合は、配位子が2個である錫系の有機カルボン酸塩あるいは配位子が4個である錫系のハロゲン化合物が好ましく、特に酢酸錫(II)、オクチル酸錫(II)、および塩化錫(IV)がより好ましく、酸触媒の場合は、モノおよびジスルホン酸化合物が好ましく、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンジスルホン酸、およびナフタレンジスルホン酸がより好ましい。また、触媒は1種類でもよく、2種類以上併用してもよいが、重合活性を高める点から考えて、2種類以上を併用することが好ましく、着色も抑制することが可能となるという点で、塩化第一錫以外の錫化合物から選択される1種類以上および/またはスルホン酸化合物から選択される1種類以上を用いることが好ましく、さらに生産性に優れるという点で、酢酸錫(II)および/またはオクチル酸錫(II)と、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンジスルホン酸、およびナフタレンジスルホン酸のいずれか1種類以上との併用がより好ましく、酢酸錫(II)および/またはオクチル酸錫(II)とメタンスルホン酸および/またはプロパンジスルホン酸の併用がさらに好ましい。
重合触媒の添加量については特に限定されるものではなく、使用する原料(L−乳酸、D−乳酸など)100重量部に対して0.001重量部以上、2重量部以下が好ましく、とくに0.001重量部以上、1重量部以下がより好ましい。触媒量が0.001重量部未満では重合時間の短縮効果が低下し、2重量部を越えると最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の分子量が大きくなりにくい傾向を生じる。また、触媒を2種類以上併用する場合は、合計添加量が上記の範囲内であることが好ましく、塩化第一錫以外の錫化合物から選択される1種類以上および/またはスルホン酸化合物から選択される1種類以上を併用する場合は、高い重合活性を維持し、かつ着色を抑制することが可能であるという点で、錫化合物とスルホン酸化合物の重量比が1:1〜1:30であることが好ましく、生産性に優れるという点で、1:2〜1:15であることがより好ましい。
重合触媒の添加時期については特に限定されるものではないが、酸触媒については原料または原料を脱水した後に添加することが生産性に優れるという点で好ましく、金属触媒については原料を脱水した後に添加することが重合活性を高める点から考えて好ましい。
本発明では、第1工程において、重量平均分子量が2万〜5万のPLLAおよびPDLAを得ることが重要である。ここで重量平均分子量は、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量の値である。第1工程で得られるPLLAおよびPDLAの重量平均分子量が2万未満では、あとの第3工程で十分な機械物性をもつポリ乳酸ブロック共重合体を得るために非常に長い時間を要し、ポリマの分解が発生するなどの問題がある。さらに、得られたポリ乳酸ブロック共重合体の熱安定性に劣る。また第1工程で重量平均分子量が5万を越えるものとすると、得られるポリ乳酸ブロック共重合体のセグメント分子量が多きすぎ、ステレオコンプレックスとしての特性が得られないなどの問題点がある。
この第1工程を実施する方法としては、回分法でも連続法でもよく、また、反応容器は特に限定されるものではなく、例えば、撹拌槽型反応器、ミキサー型反応器、塔型反応器および押出機型反応器などを用いることができ、これらの反応器は2種以上組み合わせて使用することができる。
また、この第1工程を実施する際の温度条件について、重合時間を短縮でき、PLLAおよびPDLAを高分子量化できるという点で、120〜230℃の範囲が好ましく、150〜200℃の範囲がより好ましく、180℃で行うことがさらに好ましい。
一方、溶媒中で反応を行う場合には、ポリマーおよびモノマーが溶解する溶媒を用いる。溶媒としては、たとえば、クロロホルム、塩化メチレンおよびアセトニトリルなどを用いることができる。反応後に溶媒を除去する必要がある場合に溶媒を除去する方法としては、特に限定されるものではなく、たとえば室温で溶媒を揮発させる方法、および減圧下で溶媒の沸点以上の温度で溶媒を揮発させる方法などを用いることができる。
また、この第1工程を実施する際の圧力条件について、重合時間を短縮でき、PLLAおよびPDLAを高分子量化できるという点で、1Pa〜750Paの範囲が好ましく、1Pa〜300Paの範囲がより好ましく、1Pa〜13Paの範囲がさらに好ましい。
なお、反応系内をできる限り乾燥状態にすることが好ましく、原料であるL−乳酸類などを乾燥することや、乾燥窒素などの不活性気体雰囲気下で反応を行うことなどが、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の高分子量化にとって有効である。
反応終了後に、L−乳酸単位からなるポリ−L−乳酸およびD−乳酸単位からなるポリ−D−乳酸を、それぞれ反応容器から取り出す方法については特に限定されるものではなく、低粘度の場合には、窒素などの不活性気体による押出により取り出す方法が、高粘度の場合には、ギヤポンプなどで取り出す方法などが、それぞれ代表例として挙げられる。
(第2工程)
次に、(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程について説明する。
この第2工程を実施する方法については特に限定されるものではなく、例えば、融点以上で溶融混練する方法、および溶媒中で混合した後に溶媒を除く方法などが挙げられるが、効率的に混合できるという観点においては、融点以上で溶融混練する方法が好ましい。
融点以上で溶融混練する方法としては、回分法でも連続法でもよく、また、装置としては、特に限定されるものではなく、例えば一軸押出機、二軸押出機、プラストミル、ニーダーおよび減圧装置付き撹拌槽型反応器などが挙げられ、均一かつ十分に混練できるという観点においては、一軸押出機または二軸押出機を用いることが好ましい。
溶融混練する温度条件としては、140℃以上、250℃以下が好ましく、180℃以上、230℃以下がより好ましい。
溶融混練する圧力条件については特に限定されるものではなく、減圧、常圧または加圧のいずれの条件でもよいが、溶融混練時に発生するガスを除去できるという観点においては、減圧で行うことが好ましい。
溶融混練する雰囲気条件としては、特に限定されるものではなく、大気雰囲気下または窒素などの不活性気体雰囲気下のいずれの条件でもよいが、溶融混練時に発生するガスを抑制できるという観点においては、不活性気体雰囲気下で行うことが好ましい。
溶媒中で混合する場合には、ポリマーおよびモノマーが溶解する溶媒を用いる。溶媒としては、たとえば、クロロホルム、塩化メチレンおよびアセトニトリルなどを用いることができる。混合後に溶媒を除去する必要がある場合に溶媒を除去する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、室温で溶媒を揮発させる方法および減圧下で溶媒の沸点以上の温度で溶媒を揮発させる方法などを用いることができる。
この第2工程において、L−乳酸単位からなるポリ−L−乳酸とD−乳酸単位からなるポリ−D−乳酸の混合重量比は、90:10〜10:90であることが好ましく、さらに75:25〜25:75であることがより好ましく、特に60:40〜40:60であることが最も好ましい。L−乳酸単位からなるポリ−L−乳酸の重量比がそれぞれ10重量部未満であるか、あるいは90重量部を越えると、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の融点の上昇が小さくなり、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成しにくくなる傾向を生じる。
この第2工程において、第1工程に用いる触媒を添加することは、次の第3工程で行う固相重合を効率的に進めるために好ましい。
触媒の添加量は、特に限定されるものではなく、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物100重量部に対して0.001重量部以上、2重量部以下が好ましく、とくに0.001重量部以上、1重量部以下がより好ましい。触媒量が0.001重量部未満では、次の第3工程で行う固相重合の反応時間短縮効果が低下し、2重量部を越えると最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の分子量が大きくなりにくい傾向を生じる。
また、この第2工程においては、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体のL−乳酸単位からなるポリ−L−乳酸(L−乳酸単位からなるセグメント)と、D−乳酸単位からなるポリ−D−乳酸(D−乳酸単位からなるセグメント)との交互性を高めるために、多官能性化合物を混合してもよい。
ここで使用する多官能性化合物としては、特に限定されるものではなく、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸ハロゲン化物、多価カルボン酸、多価イソシアネート、多価アミン、多価アルコールおよび多価エポキシ化合物などが挙げられ、具体的には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、コハク酸無水物、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、ピロメリット酸無水物などの多価カルボン酸無水物、イソフタル酸クロリド、テレフタル酸クロリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロリドなどの多価カルボン酸ハロゲン化物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの多価カルボン酸、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネートなどの多価イソシアネート、エチレンジアミン、ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミンなどの多価アミン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール、およびテレフタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどの多価エポキシ化合物などが挙げられる。好ましくは、多価カルボン酸無水物、多価イソシアネート、多価アルコールおよび多価エポキシ化合物であり、特に多価カルボン酸無水物、多価イソシアネートおよび多価エポキシ化合物がより好ましい。また、これらは1種または2種以上を併用して使用することができる。
多官能性化合物の混合量については特に限定されるものではなく、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の合計100重量部に対して、0.01重量部以上、20重量部以下が好ましく、さらに0.1重量部以上、10重量部以下であることがより好ましい。多官能性化合物の添加量が多すぎても、あるいは少なすぎても、多官能性化合物を使用する効果が小さくなる傾向となる。
さらに、多官能性化合物を用いる際には、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸と多官能性化合物の反応を促進させるために、触媒を添加してもよい。触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、水素化ほう素ナトリウム、水素化ほう素リチウム、フェニル化ほう素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、りん酸水素二ナトリウム、りん酸水素二カリウム、りん酸水素二リチウム、ビスフェノールAの二ナトリウム塩、同二カリウム塩、同二リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、同カリウム塩、同リチウム塩、同セシウム塩などのアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウムなどのアルカリ土類金属化合物、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリアミルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエチレンジアミン、ジメチルフェニルアミン、ジメチルベンジルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルアニリン、ピリジン、ピコリン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などの3級アミン、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−フェニル−2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリプロピルベンジルアンモニウムクロライド、N−メチルピリジニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィンなどのホスフィン化合物、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリ(p−ヒドロキシ)フェニルホスフェート、トリ(p−メトキシ)フェニルホスフェートなどのリン酸エステル、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などの有機酸、および三フッ化ホウ素、四塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズなどのルイス酸などが挙げられ、これらは1種または2種以上を併用して使用することができる。
触媒の添加量は特に限定されるものではなく、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の合計100重量部に対して、0.001重量部以上、1重量部以下が好ましい。触媒量が0.001重量部未満では、触媒を添加する効果が不充分であり、逆に1重量部を越えると、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の分子量が大きくなりにくい傾向を生じる。
(第3工程)
次に、(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物をその融点より低い温度で固相重合する第3工程について説明する。
この第3工程を実施する際には、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物の形状は、特に限定されるものではなく、塊状、フィルム、ペレットおよび粉末などいずれでもよいが、固相重合を効率的に進めるという観点においては、ペレットまたは粉末を用いることが好ましい。ペレットにする方法としては、混合物を溶融状態にした後、ストランド状に押出し、ストランドカッターでペレタイズする方法が挙げられる。また、粉末にする方法としては、ミキサー、ブレンダー、ボールミルおよびハンマーミルなどの粉砕機を用いて粉砕する方法が挙げられる。 この第3工程を実施する方法については特に限定されるものではなく、回分法でも連続法でもよく、また、反応容器は、撹拌槽型反応器、ミキサー型反応器および塔型反応器などを用いることができ、これらの反応器は2種以上組み合わせて使用することができる。
この第3工程を実施する際には、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物が結晶化していることが好ましい。
結晶化させる方法については特に限定されるものではなく、公知の方法を利用することができる。例えば、気相中または液相中において結晶化温度で保持する方法、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の溶液混合物から溶媒を揮発させる方法およびポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の溶融混合物を延伸または剪断の操作を行いながら冷却固化させる方法などが挙げられ、操作が簡便であるという観点においては、気相中または液相中において結晶化温度で保持する方法が好ましい。
ここでいう結晶化温度とは、ガラス転移温度より高く、融点よりも低い温度範囲であれば特に限定されるものではないが、予め示差走査型熱量計(DSC)により測定した昇温結晶化温度および降温結晶化温度の範囲内であることがより好ましい。
結晶化させる際には、減圧、常圧または加圧のいずれの条件でもよい。
また、結晶化させる際の時間については特に限定されるものではないが、3時間以内であれば十分に結晶化されており、2時間以内でも好ましい。
この第3工程を実施する際の温度条件としては、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物の融点以下の温度であり、具体的には、100℃以上、220℃以下が好ましく、さらに固相重合を効率的に進めるという観点においては、110℃以上、210℃以下であることがより好ましく、さらには、120℃以上、200℃以下であることが最も好ましい。
また、固相重合の反応時間を短縮するために、反応の進行とともに温度を段階的に上げることが好ましい。固相重合時の昇温は、具体的には第一段階として130〜155℃で1〜15時間、第二段階として160〜175℃で1〜15時間、第三段階として180〜200℃で10〜30時間と昇温するのが好ましく、さらには第一段階として140〜155℃で2〜12時間、第二段階として165〜175℃で2〜12時間、第三段階として185〜195℃で15〜25時間と昇温するのがより好ましい。
また、この第3工程を実施する際には、真空下または乾燥窒素などの不活性気体気流下で行うことが好ましい。
上述した(1)〜(3)までの工程は、連続的に行ってもよく、またそれぞれの工程を回分的に行ってもよい。
本発明においては、触媒失活剤を添加することが必須である。重合触媒が残存している場合、その残存触媒により溶融混練時および溶融成形時にポリ乳酸ブロック共重合体が、熱分解することがあり、触媒失活剤を添加することにより、熱分解を抑制でき、熱安定性を向上することができる。
本発明でいう触媒失活剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、チオエーテル系化合物、ビタミン系化合物、トリアゾール系化合物、多価アミン系化合物、ヒドラジン誘導体系化合物、リン系化合物などが挙げられ、これらを併用して用いてもよい。中でもリン系化合物を少なくとも1種含むことが好ましく、ホスフェート系化合物、ホスファイト系化合物であることがさらに好ましい。具体例のさらなる好ましい例としてはADEKA製“アデカスタブ”AX−71(ジオクタデシルホスフェート)、PEP−8(ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト)、PEP−36(サイクリックネオペンタテトライルビス(2,6―t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト)である。
ヒンダードフェノール系化合物の具体例としては、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレン−ビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル]ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]オキシアミド、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド等をあげることができる。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイドである。ヒンダードフェノール系化合物の具体的な商品名としては、ADEKA製“アデカスタブ”AO−20,AO−30,AO−40,AO−50,AO−60,AO−70,AO−80,AO−330、チバスペシャリティケミカル製“イルガノックス”245,259,565,1010,1035,1076,1098,1222,1330,1425,1520,3114,5057、住友化学工業製“スミライザー”BHT−R、MDP−S、BBM−S、WX−R、NW、BP−76、BP−101、GA−80、GM、GS、サイアナミド製“サイアノックス”CY−1790などが挙げられる。
チオエーテル系化合物の具体例としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)などが挙げられる。チオエーテル系化合物の具体的な商品名としては、ADEKA製“アデカスタブ”A0−23、AO−412S、AO−503A、チバスペシャリティケミカル製“イルガノックス”PS802、住友化学工業製“スミライザー”TPL−R、TPM、TPS、TP−D、エーピーアイコーポレーション製DSTP、DLTP、DLTOIB、DMTP、シプロ化成製“シーノックス”412S、サイアミド製“サイアノックス”1212などが挙げられる。
ビタミン系化合物の具体例としては、酢酸d−α−トコフェロール、コハク酸d−α−トコフェロール、d−α−トコフェロール、d−β−トコフェロール、d−γ−トコフェロール、d−δ−トコフェロール、d−α−トコトリエノール、d−β−トコフェトリエノール、d−γ−トコフェトリエノール、d−δ−トコフェトリエノールなどの天然品、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム、ニコチン酸dl−α−トコフェロールなどの合成品を挙げることができる。ビタミン系化合物の具体的な商品名としては、エイザイ製“トコフェロール”、チバスペシャリティケミカル製“イルガノックス”E201などが挙げられる。
トリアゾール系化合物の具体例としては、ベンゾトリアゾール、3−(N−サリシロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾールなどが挙げられる。
多価アミン系化合物の具体例としては、3,9−ビス[2−(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアザフェニル)エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、エチレンジアミン−テトラアセチックアシッド、エチレンジアミン−テトラアセチックアシッドのアルカリ金属塩(Li,Na,K)塩、N,N’−ジサリシリデン−エチレンジアミン、N,N’−ジサリシリデン−1,2−プロピレンジアミン、N,N’’−ジサリシリデン−N’−メチル−ジプロピレントリアミン、3−サリシロイルアミノ−1,2,4−トリアゾールなどが挙げられる。
ヒドラジン誘導体系化合物の具体例としては、デカメチレンジカルボキシリックアシッド−ビス(N’−サリシロイルヒドラジド)、イソフタル酸ビス(2−フェノキシプロピオニルヒドラジド)、N−ホルミル−N’−サリシロイルヒドラジン、2,2−オキザミドビス−[エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロオキシフェニル)プロピオネート]、オギザリル−ビス−ベンジリデン−ヒドラジド、ニッケル−ビス(1−フェニル−3−メチル−4−デカノイル−5−ピラゾレート)、2−エトキシ−2’−エチルオキサニリド、5−t−ブチル−2−エトキシ−2’−エチルオキサニリド、N,N−ジエチル−N’,N’−ジフェニルオキサミド、N,N’−ジエチル−N,N’−ジフェニルオキサミド、オキサリックアシッド−ビス(ベンジリデンヒドラジド)、チオジプロピオニックアシッド−ビス(ベンジリデンヒドラジド)、ビス(サリシロイルヒドラジン)、N−サリシリデン−N’−サリシロイルヒドラゾン、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N’−ビス[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]オキサミドなどが挙げられる。
リン系化合物としては、例えば、ホスファイト系化合物、ホスフェート系化合物が挙げられる。かかるホスファイト系化合物の具体例としては、テトラキス[2−t−ブチル−4−チオ(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル]−1,6−ヘキサメチレン−ビス(N−ヒドロキシエチル−N−メチルセミカルバジド)−ジホスファイト、テトラキス[2−t−ブチル−4−チオ(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル]−1,10−デカメチレン−ジ−カルボキシリックアシッド−ジ−ヒドロキシエチルカルボニルヒドラジド−ジホスファイト、テトラキス[2−t−ブチル−4−チオ(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル]−1,10−デカメチレン−ジ−カルボキシリックアシッド−ジ−サリシロイルヒドラジド−ジホスファイト、テトラキス[2−t−ブチル−4−チオ(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル]−ジ(ヒドロキシエチルカルボニル)ヒドラジド−ジホスァイト、テトラキス[2−t−ブチル−4−チオ(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル]−N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド−ジホスファイトなどが挙げられるが、少なくとも1つのP−O結合が芳香族基に結合しているものがより好ましく、具体例としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−t−ブチル−フェニル)ブタン、トリス(ミックスドモノおよびジ−ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(フェニル−ジアルキルホスファイト)などが挙げられ、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスホナイトなどが好ましく使用できる。ホスファイト系化合物の具体的な商品名としては、ADEKA製“アデカスタブ” C、PEP−4C、PEP−8、PEP−11C、PEP−24G、PEP−36、HP−10、2112、260、522A、329A、1178、1500、C、135A、3010、TPP、チバスペシャリティケミカル製“イルガフォス”168、住友化学工業製“スミライザー”P−16、クラリアント製“サンドスタブ”P−EPQ、GE製“ウエストン”618、619G、624などが挙げられる。
ホスフェート系化合物の具体例としては、モノステアリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、メチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェートなどが挙げられ、中でも、モノステアリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェートが好ましい。ホスフェート系化合物の具体的な商品名としては、チバスペシャリティケミカル製“イルガノックス”MD1024、イーストマン・コダック製“インヒビター”OABH、ADEKA製“アデカスタブ”CDA−1、CDA−6、AX−71などを挙げることができる。
触媒失活剤の添加量は、特に限定されないが、熱安定性に優れるという点で、ポリ乳酸ブロック共重合体100重量部に対して、0.001〜2重量部であることが好ましく、0.01〜1重量部であることがより好ましく、0.05〜0.5重量部であることがさらに好ましく、0.08〜0.3重量部であることが最も好ましい。触媒失活剤の添加時期は、特に限定されず、第1工程、第2工程および第3工程のいずれでもよいが、高融点、高分子量のポリ乳酸ブロック共重合体を得ることができるという点で、第1工程、第2工程の段階において、添加することが好ましく、生産性に優れるという点で、第1工程の終了直前または、第2工程の開始時に添加することがより好ましく、第1工程の終了直前および第2工程の開始時にそれぞれ添加することがさらに好ましい。なお、第2工程の開始時に添加する場合は、触媒失活剤を添加した後に、固相重合用の触媒を添加することが好ましい。熱安定性に優れるという点で、第1工程、または、第2工程のそれぞれの段階において、ポリ乳酸ブロック共重合体100重量部に対して、0.001〜1重量部ずつ添加することが好ましく、生産性に優れるという点で、0.01〜0.5重量部ずつ添加することがより好ましく、0.01〜0.1重量部ずつ添加することがさらに好ましい。また、特に熱安定性に優れるという点で、第3工程終了後に添加することも好ましい。
本発明の製造方法により得られるポリ乳酸ブロック共重合体には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常の添加剤、例えば、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、天然繊維、有機繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、セラミックスファイバー、セラミックビーズ、アスベスト、ワラステナイト、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、合成マイカ、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトまたは白土など)、紫外線吸収剤(レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、熱安定剤(ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、滑剤、離形剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料(ニグロシンなど)および顔料(硫化カドミウム、フタロシアニンなど)を含む着色剤、着色防止剤(亜リン酸塩、次亜リン酸塩など)、難燃剤(赤燐、燐酸エステル、ブロム化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、水酸化マグネシウム、メラミンおよびシアヌール酸またはその塩など)、導電剤あるいは着色剤(カーボンブラックなど)、摺動性改良剤(グラファイト、フッ素樹脂など)、結晶核剤(タルクなどの無機系核剤、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビス−12−ジヒドロキシステアリン酸アミドおよびトリメシン酸トリシクロヘキシルアミドなどの有機アミド系化合物、銅フタロシアニンおよびピグメントイエロー110などの顔料系核剤、有機カルボン酸金属塩、フェニルホスホン酸亜鉛など)、帯電防止剤などの1種または2種以上を添加することができる。
また、本発明の製造方法により得られるポリ乳酸ブロック共重合体には、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミドなど)または熱硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)または軟質熱可塑性樹脂(例えば、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体など)などの少なくとも1種以上をさらに含有することができる。
本発明の製造方法により得られるポリ乳酸ブロック共重合体は、成形品などに加工する際に、一旦熱溶融させて固化した後も、高融点のポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成しやすい。
本発明の製造方法により得られるポリ乳酸ブロック共重合体は、成形品として広く用いることができる。成形品としては、例えば、フィルム(無延伸、一軸延伸、二軸延伸)、シート、繊維・布、不織布、射出成形品、押出し成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、および他の材料との複合体などが挙げられ、これらの成形品は、農業用資材、園芸用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品、自動車用部品、電気・電子部品、光学フィルムまたはその他の用途として有用である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ここで、実施例中の部数は、重量部を示す。
重量平均分子量の測定方法
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量の値である。GPCの測定は、検出器にWATERS社示差屈折計WATERS410を用い、ポンプにMODEL510高速液体クロマトグラフィーを用い、カラムにShodex GPC HFIP−806MとShodex GPC HFIP−LGを直列に接続したものを用いて行った。測定条件は、流速0.5mL/minとし、溶媒にヘキサフルオロイソプロパノールを用い、試料濃度1mg/mLの溶液を0.1mL注入した。
融点の測定方法
融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した値であり、測定条件は、試料10mg、窒素雰囲気下中、昇温速度20℃/分である。得られた結果において、融点の上昇(高融点化)が見られたものは、ポリ乳酸ステレオコンプレックスが形成されたものと判断し、融点が変わらないものについては、ポリ乳酸ステレオコンプレックスが形成されなかったものと判断した。
[比較例1]
(1)ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸をそれぞれ製造する第1工程
撹拌装置のついた反応容器中に、L−乳酸50部を入れ、温度を180℃にした後、減圧して水を除去した。その後、窒素雰囲気下で常圧にし、酢酸錫(II)0.05部を加え、13Paになるまで徐々に減圧しながら、5時間重合反応させることにより、L−乳酸単位からなるポリ−L−乳酸(PL01)を得た。撹拌装置のついた反応容器中に、D−乳酸50部を入れ、温度を180℃にした後、減圧して水を除去した。その後、窒素雰囲気下で常圧にし、酢酸錫(II)0.05部を加え、13Paになるまで徐々に減圧しながら、5時間重合反応させることにより、D−乳酸単位からなるポリ−D−乳酸(PD01)を得た。
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程
PL01:25部、PD01:25部および酢酸錫(II):0.05部を、ベント付き二軸押出機を用いて、減圧下、220℃で溶融混練し、ストランドカッターでペレタイズすることにより、PL01とPD01の混合物からなるペレット(PLD01)を得た。
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する第3工程
PLD01を真空乾燥機に入れ、圧力条件を13.3Paとし、150℃で10時間、170℃で10時間、190℃で20時間反応させたポリマー(PLDs01)を得た。PLDs01を250℃で5分間プレスすることにより、厚み約0.1mmのフィルム(PLDsF01)を得た。
上記で得られたそれぞれのポリマー、固相重合後のペレットおよびフィルムについて、GPCおよびDSCを測定した結果を表1に示す。
[比較例2]
(1)ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸をそれぞれ製造する第1工程
触媒をオクチル酸錫(II)0.05部に変更する以外は比較例1(1)と同様に行い、ポリ−L−乳酸(PL02)ポリ−D−乳酸(PD02)を得た。
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程
触媒をオクチル酸錫(II):0.05部に変更する以外は実施例1(2)と同様に行い、PL02とPD02の混合物からなるペレット(PLD02)を得た。
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する第3工程
比較例1(3)と同様に行い、ポリマー(PLDs02)、厚み約0.1mmのフィルム(PLDsF02)を得た。
上記で得られたそれぞれのポリマー、固相重合後のペレットおよびフィルムについて、GPCおよびDSCを測定した結果を表1に示す。
[比較例3]
(1)ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸をそれぞれ製造する第1工程
触媒を塩化錫(IV)0.05部に変更する以外は比較例1(1)と同様に行い、ポリ−L−乳酸(PL03)ポリ−D−乳酸(PD03)を得た。
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程
触媒を塩化錫(IV)0.05部に変更する以外は比較例1(2)と同様に行い、PL03とPD03の混合物からなるペレット(PLD03)を得た。
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する第3工程
比較例1(3)と同様に行い、ポリマー(PLDs03)、厚み約0.1mmのフィルム(PLDsF03)を得た。
上記で得られたそれぞれのポリマー、固相重合後のペレットおよびフィルムについて、GPCおよびDSCを測定した結果を表1に示す。
[比較例4]
(1)ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸をそれぞれ製造する第1工程
触媒を酢酸サマリウム0.05部に変更する以外は比較例1(1)と同様に行い、ポリ−L−乳酸(PL04)ポリ−D−乳酸(PD04)を得た。
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程
触媒を酢酸サマリウム0.05部に変更する以外は比較例1(2)と同様に行い、PL04とPD04の混合物からなるペレット(PLD04)を得た。
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する第3工程
比較例1(3)と同様に行い、ポリマー(PLDs04)、厚み約0.1mmのフィルム(PLDsF04)を得た。
上記で得られたそれぞれのポリマー、固相重合後のペレットおよびフィルムについて、GPCおよびDSCを測定した結果を表1に示す。
[比較例5]
(1)ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸をそれぞれ製造する第1工程
触媒をシュウ酸チタンカリウム0.05部に変更する以外は比較例1(1)と同様に行い、ポリ−L−乳酸(PL05)ポリ−D−乳酸(PD05)を得た。
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程
触媒をシュウ酸チタンカリウム0.05部に変更する以外は比較例1(2)と同様に行い、PL05とPD05の混合物からなるペレット(PLD05)を得た。
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する第3工程
比較例1(3)と同様に行い、ポリマー(PLDs05)、厚み約0.1mmのフィルム(PLDsF05)を得た。
上記で得られたそれぞれのポリマー、固相重合後のペレットおよびフィルムについて、GPCおよびDSCを測定した結果を表1に示す。
[比較例6]
(1)ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸をそれぞれ製造する第1工程
触媒をメタンスルホン酸0.15部に変更する以外は比較例1(1)と同様に行い、ポリ−L−乳酸(PL06)ポリ−D−乳酸(PD06)を得た。
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程
無触媒に変更する以外は比較例1(2)と同様に行い、PL06とPD06の混合物からなるペレット(PLD06)を得た。
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する第3工程
比較例1(3)と同様に行い、ポリマー(PLDs06)、厚み約0.1mmのフィルム(PLDsF06)を得た。
上記で得られたそれぞれのポリマー、固相重合後のペレットおよびフィルムについて、GPCおよびDSCを測定した結果を表1に示す。
[比較例7]
(1)ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸をそれぞれ製造する第1工程
触媒をプロパンジスルホン酸0.15部に変更する以外は比較例1(1)と同様に行い、ポリ−L−乳酸(PL07)ポリ−D−乳酸(PD07)を得た。
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程
無触媒に変更する以外は比較例1(2)と同様に行い、PL07とPD07の混合物からなるペレット(PLD07)を得た。
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する第3工程
比較例1(3)と同様に行い、ポリマー(PLDs07)、厚み約0.1mmのフィルム(PLDsF07)を得た。
上記で得られたそれぞれのポリマー、固相重合後のペレットおよびフィルムについて、GPCおよびDSCを測定した結果を表1に示す。
[比較例8]
(1)ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸をそれぞれ製造する第1工程
触媒をナフタレンジスルホン酸0.15部に変更する以外は比較例1(1)と同様に行い、ポリ−L−乳酸(PL08)ポリ−D−乳酸(PD08)を得た。
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程
無触媒に変更する以外は比較例1(2)と同様に行い、PL08とPD08の混合物からなるペレット(PLD08)を得た。
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する第3工程
比較例1(3)と同様に行い、ポリマー(PLDs08)、厚み約0.1mmのフィルム(PLDsF08)を得た。
上記で得られたそれぞれのポリマー、固相重合後のペレットおよびフィルムについて、GPCおよびDSCを測定した結果を表2に示す。
[比較例9]
(1)ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸をそれぞれ製造する第1工程
触媒を酢酸錫(II)0.05部とメタンスルホン酸0.15部に変更する以外は比較例1(1)と同様に行い、ポリ−L−乳酸(PL09)ポリ−D−乳酸(PD09)を得た。
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程
無触媒に変更する以外は比較例1(2)と同様に行い、PL09とPD09の混合物からなるペレット(PLD09)を得た。
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する第3工程
比較例1(3)と同様に行い、ポリマー(PLDs09)、厚み約0.1mmのフィルム(PLDsF09)を得た。
上記で得られたそれぞれのポリマー、固相重合後のペレットおよびフィルムについて、GPCおよびDSCを測定した結果を表2に示す。
[比較例10]
(1)ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸をそれぞれ製造する第1工程
触媒をオクチル酸錫(II)0.05部とプロパンジスルホン酸0.15部に変更する以外は比較例1(1)と同様に行い、ポリ−L−乳酸(PL10)ポリ−D−乳酸(PD10)を得た。
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程
無触媒に変更する以外は比較例1(2)と同様に行い、PL10とPD10の混合物からなるペレット(PLD10)を得た。
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する第3工程
比較例1(3)と同様に行い、ポリマー(PLDs10)、厚み約0.1mmのフィルム(PLDsF10)を得た。
上記で得られたそれぞれのポリマー、固相重合後のペレットおよびフィルムについて、GPCおよびDSCを測定した結果を表2に示す。
[比較例11]
(1)ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸をそれぞれ製造する第1工程
比較例1(1)と同様に行い、ポリ−L−乳酸(PL11)ポリ−D−乳酸(PD11)を得た。
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程
触媒をオクチル酸錫(II)0.10部に変更する以外は比較例1(2)と同様に行い、PL11とPD11の混合物からなるペレット(PLD11)を得た。
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する第3工程
比較例1(3)と同様に行い、ポリマー(PLDs11)、厚み約0.1mmのフィルム(PLDsF11)を得た。
上記で得られたそれぞれのポリマー、固相重合後のペレットおよびフィルムについて、GPCおよびDSCを測定した結果を表2に示す。
[比較例12]
(1)ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸をそれぞれ製造する第1工程
比較例4(1)と同様に行い、ポリ−L−乳酸(PL12)ポリ−D−乳酸(PD12)を得た。
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程
比較例11(2)と同様に行い、PL12とPD12の混合物からなるペレット(PLD12)を得た。
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する第3工程
比較例1(3)と同様に行い、ポリマー(PLDs12)、厚み約0.1mmのフィルム(PLDsF12)を得た。
上記で得られたそれぞれのポリマー、固相重合後のペレットおよびフィルムについて、GPCおよびDSCを測定した結果を表2に示す。
[実施例1]
(1)ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸をそれぞれ製造する第1工程
比較例1(1)と同様に行い、ポリ−L−乳酸(PL13)ポリ−D−乳酸(PD13)を得た。
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程
AX−71を0.05部添加する以外は比較例11(2)と同様に行い、PL13とPD13の混合物からなるペレット(PLD13)を得た。
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する第3工程
比較例1(3)と同様に行い、ポリマー(PLDs13)、厚み約0.1mmのフィルム(PLDsF13)を得た。
上記で得られたそれぞれのポリマー、固相重合後のペレットおよびフィルムについて、GPCおよびDSCを測定した結果を表3に示す。
[実施例2]
(1)ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸をそれぞれ製造する第1工程
反応終了直前にAX―71を0.05部添加する以外は比較例1(1)と同様に行い、ポリ−L−乳酸(PL14)ポリ−D−乳酸(PD14)を得た。
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程
実施例1(2)と同様に行い、PL14とPD14の混合物からなるペレット(PLD14)を得た。
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する第3工程
比較例1(3)と同様に行い、ポリマー(PLDs14)、厚み約0.1mmのフィルム(PLDsF14)を得た。
上記で得られたそれぞれのポリマー、固相重合後のペレットおよびフィルムについて、GPCおよびDSCを測定した結果を表3に示す。
[実施例3]
(1)ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸をそれぞれ製造する第1工程
触媒を酢酸錫(II)0.05部とメタンスルホン酸0.15部に変更する以外は実施例2(1)と同様に行い、ポリ−L−乳酸(PL15)ポリ−D−乳酸(PD15)を得た。
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程
実施例1(2)と同様に行い、PL15とPD15の混合物からなるペレット(PLD15)を得た。
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する第3工程
比較例1(3)と同様に行い、ポリマー(PLDs15)、厚み約0.1mmのフィルム(PLDsF15)を得た。
上記で得られたそれぞれのポリマー、固相重合後のペレットおよびフィルムについて、GPCおよびDSCを測定した結果を表3に示す。
[比較例13]
(1)ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸をそれぞれ製造する第1工程
反応温度を150℃に変更する以外は比較例1(1)と同様に行い、ポリ−L−乳酸(PL16)ポリ−D−乳酸(PD16)を得た。
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程
比較例1(2)と同様に行い、PL16とPD16の混合物からなるペレット(PLD16)を得た。
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する第3工程
比較例1(3)と同様に行い、ポリマー(PLDs16)、厚み約0.1mmのフィルム(PLDsF16)を得た。
上記で得られたそれぞれのポリマー、固相重合後のペレットおよびフィルムについて、GPCおよびDSCを測定した結果を表3に示す。
[比較例14]
(1)ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸をそれぞれ製造する第1工程
反応温度を210℃に変更する以外は比較例1(1)と同様に行い、ポリ−L−乳酸(PL17)ポリ−D−乳酸(PD17)を得た。
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程
比較例1(2)と同様に行い、PL17とPD17の混合物からなるペレット(PLD17)を得た。
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する第3工程
比較例1(3)と同様に行い、ポリマー(PLDs17)、厚み約0.1mmのフィルム(PLDsF17)を得た。
上記で得られたそれぞれのポリマー、固相重合後のペレットおよびフィルムについて、GPCおよびDSCを測定した結果を表3に示す。
[比較例15]
(1)ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸をそれぞれ製造する第1工程
反応圧力を750Paに変更する以外は比較例1(1)と同様に行い、ポリ−L−乳酸(PL18)ポリ−D−乳酸(PD18)を得た。
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程
比較例1(2)と同様に行い、PL18とPD18の混合物からなるペレット(PLD18)を得た。
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する第3工程
比較例1(3)と同様に行い、ポリマー(PLDs18)、厚み約0.1mmのフィルム(PLDsF18)を得た。
上記で得られたそれぞれのポリマー、固相重合後のペレットおよびフィルムについて、GPCおよびDSCを測定した結果を表3に示す。
[比較例16]
(1)ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸をそれぞれ製造する第1工程
無触媒に変更する以外は比較例1(1)と同様に行い、ポリ−L−乳酸(CPL01)ポリ−D−乳酸(CPD01)を得た。
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程
比較例11(2)と同様に行い、CPL01とCPD01の混合物からなるペレット(CPLD01)を得た。
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する第3工程
比較例1(3)と同様に行い、ポリマー(CPLDs01)、厚み約0.1mmのフィルム(CPLDsF01)を得た。
上記で得られたそれぞれのポリマー、固相重合後のペレットおよびフィルムについて、GPCおよびDSCを測定した結果を表3に示す。
[比較例17]
(1)ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸をそれぞれ製造する第1工程
触媒を塩化第一錫0.05部に変更する以外は比較例1(1)と同様に行い、ポリ−L−乳酸(CPL02)ポリ−D−乳酸(CPD02)を得た。
(2)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する第2工程
比較例11(2)と同様に行い、CPL02とCPD02の混合物からなるペレット(CPLD02)を得た。
(3)ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物を固相重合する第3工程
比較例1(3)と同様に行い、ポリマー(CPLDs02)、厚み約0.1mmのフィルム(CPLDsF02)を得た。
上記で得られたそれぞれのポリマー、固相重合後のペレットおよびフィルムについて、GPCおよびDSCを測定した結果を表3に示す。
表1、表2および表3に記載の実施例および比較例から、第1工程で触媒存在下、直接重縮合によって得られるポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸の重量平均分子量が2〜5万であり、第2工程でポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合し、第3工程で混合物の融点よりも低い温度で固相重合することにより、高分子量、高融点を有し、かつ熱安定性が高く、良好な機械物性を有するポリ乳酸ブロック共重合体を得ることができた。さらに、第1工程で、150〜200℃、13Pa以下の条件下で、触媒として、塩化第一錫以外の錫化合物、チタン化合物、鉛化合物、亜鉛化合物、コバルト化合物、鉄化合物、リチウム化合物、希土類化合物およびスルホン酸化合物から選ばれる少なくとも一種を使用することが好ましく、塩化第一錫以外の錫化合物から選択される1種以上および/またはスルホン酸化合物から選択される1種以上を用いることがより好ましく、塩化第一錫以外の錫化合物が、酢酸錫(II)、オクチル酸錫(II)および塩化錫(IV)から選ばれる少なくとも一種であり、スルホン酸化合物がメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンジスルホン酸、およびナフタレンジスルホン酸から撰ばれる少なくとも一種であることが特に好ましい。また、第3工程において、固相重合時の温度を段階的に昇温すること、もしくは触媒失活剤を添加することが、さらに熱安定性を向上させるためにより好ましい。
一方、比較例16と17では、第1工程で得られるポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸の重量平均分子量が低いために、高分子量、高融点を有し、かつ熱安定性が高く、良好な機械物性を有するポリ乳酸ブロック共重合体を得ることができなかった。比較例1では、第3工程後に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量が低いために、機械物性が不十分であり、比較例2では、第3工程後に十分な重量平均分子量、融点をもつポリ乳酸ブロック共重合体が得られたが、熱安定性が不十分であるため、フィルムにしたときに融点の低下が発生した。
本発明の組成物は、繊維、フィルム、成形品の原料として有用である。