JP3682127B2 - ポリエステル樹脂および樹脂組成物 - Google Patents

ポリエステル樹脂および樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐ドローダウン性に優れ、かつ機械的特性、耐熱性、光線透過性、表面光沢、耐薬品性等の優れた特性を有するポリエステル成形品を与えるポリエステル樹脂及び樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
ポリエステル樹脂の押出ブロー成形は、中空構造ができる低圧成形加工法である、という特徴があり容器類に多く使用されている。
しかし射出成形では金型内に直接溶融樹脂を高速、高圧で注入するのに対し、押出ブロー成形では溶融樹脂を外気中に数十秒さらさなくてはならない。このため、パリソンは外的要因を受け易く、大型の成形品では肉厚分布のバラツキ等成形安定性に問題があった。
【0003】
一方、ポリエステル樹脂は機械的特性、ガスバリヤー性、耐薬品性に優れ、各種飲料ボトルや化粧品容器に使用されているが、パリソンを安定して成形できる溶融樹脂の粘度まで重合度を上げるために、固相重縮合法が採用されている。しかし、この方法は生産効率が低く、コストの増大を免れることができず、工業的、経済的に有効な方法であるとはいいがたく、固相重縮合法によらない耐ドローダウン性に優れたポリエステル樹脂が望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、このような状況に鑑み、ポリエステル樹脂の耐ドローダウン性について鋭意検討した結果ポリエステル樹脂に弾性を付与し、かつ屈折率の近い樹脂同士のブレンドによってドローダウン性、透明性の向上された樹脂が得られることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0005】
すなわち本発明は、芳香族ジカルボン酸およびそのエステル形成誘導体を80〜100モル%含む酸成分と、エチレングリコールを50〜100モル%含むグリコール成分からなるポリエステルに、炭素数30〜120、平均分子量500〜3000の末端に水酸基を有する化合物をポリマーに対し5〜40重量%および3価以上の多価カルボン酸および/または多価アルコール成分を0.01〜1モル%を共重合させてなり、25℃のフェノール/テトラクロロエタン等量混合溶媒中で測定される極限粘度[η]が0.5〜1.5dl/gであることを特徴とするポリエステル樹脂を極限粘度[η]が0.5〜0.8dl/g(測定法は上記と同じ)のポリエステル樹脂100重量部に対して3〜15重量部を溶融混合してなり、270℃、せん断速度600(l/秒)で測定した粘度が2000〜20000ポイズであることを特徴とするポリエステル樹脂組成物にある。
【0007】
本発明において芳香族ジカルボン酸を主成分とする酸成分と、エチレングリコールを主成分とするグリコール成分からなるポリエステルに共重合する炭素数30〜120、平均分子量500〜3000の末端に水酸基を有する化合物(以下ソフト成分ともいう。)の使用割合は、生成するポリエステルに対し5〜40重量%である。この化合物の炭素数が30未満では架橋間距離の延長に効果が無く、衝撃強度が低くなり好ましくない。また、120を超えるとポリエステル樹脂の耐熱性が低下し、ポリエステル樹脂中への相溶性が乏しくなるばかりか光線透過率が低下するため好ましくない。また、この化合物の添加量が5〜40重量%(対ポリマー)の範囲よりも少ないと、耐ドローダウン性の向上に効果がなく、この範囲以上に含有しても耐ドローダウン性向上効果は飽和している上、成形品の耐熱性が低下するため好ましくない。
【0008】
ソフト成分としての末端に水酸基を有する化合物の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ダイマージオール、下記一般式(1)、(2)および(3)で表されるアルコール成分、およびこれらの誘導体のエチレンオキサイド付加物を挙げることができる。
中でも次の一般式(3)で表わされる構造を有するビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物が好ましい。
【0009】
【化1】
Figure 0003682127
【0010】
【化2】
Figure 0003682127
【0011】
【化3】
Figure 0003682127
【0012】
さらに、本発明のポリエステル樹脂においては、3価以上の多価カルボン酸および/または多価アルコールを、酸成分またはグリコール成分の各々に対して0.01〜1モル%の範囲で共重合成分として使用する。これら成分はポリエステル樹脂に弾性を付与するために架橋剤として使用するものであり、使用量がこの範囲より少ないと効果が不十分であり、この範囲を超えると重合途中でゲル化が起こる恐れがあるため好ましくない。
【0013】
3価以上の多価カルボン酸および多価アルコールの例としてはトリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物等の多価カルボン酸、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等の多価アルコールが挙げられる。
【0014】
本発明のポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸およびそのエステル形成誘導体を主たる酸成分とするものである。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸等が挙げられ、これらのエステル形成誘導体としてはアルキルエステルやアリールエステルが挙げられる。
【0015】
本発明のポリエステル樹脂は、芳香族カルボン酸成分が全酸成分中80モル%以上含有されていることが好ましく、さらに好ましくは85モル%以上含有されていることである。芳香族ジカルボン酸成分が80モル%未満であると成形品とした場合機械的強度が低下する恐れがあり、また生産性も低下するので好ましくない。
【0016】
本発明のポリエステル樹脂は、上記芳香族ジカルボン酸以外の酸成分として脂肪族カルボン酸またはそのエステル形成誘導体を全酸成分中に20モル%未満、好ましくは15モル%未満の範囲で含有させることができる。20モル%以上含有させると成形品の機械的強度の低下を招く恐れがある。使用される脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、1,3−もしくは1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
【0017】
本発明のポリエステル樹脂は、色調、透明性、耐熱性、耐衝撃性等の付与のためエチレングリコール以外のグリコール成分を共重合することができる。エチレングリコールは全グリコール成分中に50モル%以上含有されることが必要で、好ましくは70モル%以上である。エチレングリコールの含有量が50モル%未満であると樹脂の製造段階での重合反応性の低下等が発生し、目的とする重合度を有する重合体を得ることが困難になる等の問題が生じ好ましくないためである。
【0018】
本発明で共重合に使用されるエチレングリコール以外のグリコール成分として、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ダイマージオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0019】
本発明のポリエステル樹脂は、25℃のフェノール/テトラクロロエタンの等量混合溶媒中で測定した極限粘度[η]が0.5〜1.5dl/gの範囲であることが好ましい。極限粘度[η]がこの範囲より低いと、耐ドローダウン性はなく、耐衝撃性も劣る傾向がある。また、この範囲より高い場合は反応が急激に進みゲル化する恐れがある。
【0020】
以上説明した本発明によって得られたポリエステル樹脂は、成形用ポリエステル樹脂に配合することによって耐ドローダウン性に優れた樹脂組成物とすることができる。配合される成形用ポリエステル樹脂としては上記の測定法による極限粘度[η]が0.5〜0.8dl/gの範囲にあるものが好ましい。また、その配合量は配合される成形用ポリエステル樹脂100重量部に対して3〜15重量部、好ましくは5〜10重量部である。配合量がこの範囲より少ないと、その効果が得られず、多いと得られた樹脂の耐熱性や光線透過性、色調等の低下が見られ好ましくない。
【0021】
本発明のポリエステル樹脂を、極限粘度[η]が0.5〜0.8dl/gの成形用ポリエステル樹脂100重量部に対して3〜15重量部の範囲で配合溶融した樹脂組成物は、270℃、せん断速度600(1/秒)で測定した溶融混合物の粘度が2000〜20000ポイズの範囲にあることが好ましい。溶融混合物の粘度がこの範囲より低いと耐ドローダウン性がなく、また、成形品の外観が良好であることから、この範囲内であることが好ましい。
【0022】
本発明のポリエステル樹脂は、公知の直接重合法やエステル交換法等により製造することができる。
【0023】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、必要に応じて各種樹脂、添加物を添加できる。その例としては、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート等の樹脂、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、紫外線吸収剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤等が挙げられる。
【0024】
本発明のポリエステル樹脂組成物より得られる成形品に、さらに特定の性能を付与するために公知の各種加工処理を施すことができる。その例としては、紫外線、α線、β線、γ線あるいは電子線等の照射、コロナ処理、プラズマ照射処理、火炎処理等の処理、塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリオレフィン等の樹脂の塗布、ラミネート、あるいは金属の蒸着等が挙げられる。
【0025】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ボトル等の中空容器や、パイプ、チューブ等部品類のダイレクトブロー成形品、押出しシート、板、インフレーションフィルム、ラミネートコーティング等の押出し成形法による成形品等の用途に用いることができる。
【0026】
【実施例】
以下に実施例および比較例を掲げて本発明を更に説明する。
実施例で用いた配合される成形用のポリエステル樹脂は、三菱レイヨン(株)製「ダイヤナイト」(登録商標)MA−580([η]=0.57)および同社製「ダイヤナイト」(登録商標)MA−521H([η]=0.78)である。
また、表1、表2に記載した各種評価項目の評価方法は次の通りである。
【0027】
[溶融粘度]
キャピログラフを使用して270℃、せん断速度600(1/秒)で押出した際の粘度を測定した。
【0028】
[耐ドローダウン性]
キャピログラフを使用し270℃、せん断速度60(1/秒)で押出した際のストランド長が400mmに達する時間(秒数)を測定した。
【0029】
[ヘイズ]
ヘイズメーターで厚さ200μmシートを測定した。
【0030】
[耐衝撃性]
23℃で厚さ200μmシートに300gの荷重を落下させ、試験片数の80%が破損されない高さと、試験片数の80%が破壊される高さを10cm間隔で測定した。
【0031】
[耐薬品性]
23℃で厚さ200μmシート表面をアセトンでラビングし、外観の変化を目視で評価し、変化を生じないものを○、白濁したものを×とした。
【0032】
[実施例1〜9]、[比較例2,3,9]
テレフタル酸100モル部、エチレングリコール140モル部、トリメチロールプロパンを表1および表2に示す割合(モル部)、およびソフト成分(平均分子量(Mw)=1000)をそれぞれ表に示す割合(重量部/ポリマー)で反応容器に仕込み、直接重合法により重合し、ポリエステル樹脂を得た。
この樹脂とポリエステル樹脂「ダイヤナイト」MA−521H(以下、単にMA521Hと記す。)を表1および表2に示す割合で配合し、2軸押出機で溶融混合した後、T−ダイ法により200μm厚さのシートを得た。
【0033】
[実施例10]
テレフタル酸99.5モル部、トリメリット酸0.5モル部、エチレングリコール140モル部、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物を(Mw=600)35重量部を反応容器に仕込み、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
この樹脂をMA−521Hに10重量%配合し、実施例1と同様にしてポリエステルシートを得た。
【0034】
[実施例11]
テレフタル酸100モル部、1,4−シクロヘキサンジメタノール10モル%、エチレングリコール130モル部、トリメチロールプロパン0.15モル%、ポリエチレングリコール(Mw=2500)20重量部/ポリマーを反応容器に仕込み、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
この樹脂をMA−521Hに10重量%配合し、実施例1と同様にしてポリエステルシートを得た。
【0035】
[実施例12]
テレフタル酸100モル部、エチレングリコール140モル部、トリメチロールプロパン0.5モル%、ポリオキシテトラメチレングリコール(Mw=1000)10重量部/ポリマーを反応容器に仕込み、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
この樹脂をポリエステル樹脂「ダイヤナイト」MA−580に10重量%配合し、実施例1と同様にしてポリエステルシートを得た。
【0036】
[比較例1]
ポリエステル樹脂「ダイヤナイト」MA−521Hを単独評価しその結果を表2に示した。
【0037】
[比較例4]
テレフタル酸100モル部、エチレングリコール140モル部、トリメチロールプロパン0.5モル%、ポリエチレングリコール(Mw=300)10重量部/ポリマーを反応容器に仕込み、実施例1と同様にしてポリステル樹脂を得た。
この樹脂をMA−521Hに10重量%配合し、実施例1と同様にしてポリエステルシートを得た。
【0038】
[比較例5]
テレフタル酸100モル部、エチレングリコール140部、トリメチロールプロパン0.5モル%、ポリエチレングリコール(Mw=4000)10重量部/ポリマーを反応容器に仕込み、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得た。
この樹脂をMA−521Hに10重量%配合し、実施例1と同様にしてポリエステルシートを得た。
【0039】
[比較例6]
テレフタル酸100モル部、エチレングリコール140モル部を反応容器に仕込み、実施例1と同様にしてポリステル樹脂を得た。
この樹脂をMA−521Hに10重量%配合し、実施例1と同様にしてポリエステルシートを得た。
【0040】
[比較例7]
テレフタル酸100モル部、エチレングリコール140モル部、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(Mw=1000)10重量部/ポリマーを反応容器に仕込み、実施例1と同様にしてポリステル樹脂を得た。
この樹脂をMA−521Hに10重量%配合し、実施例1と同様にしてポリエステルシートを得た。
【0041】
[比較例8]
テレフタル酸100モル部、エチレングリコール140モル部、トリメチロールプロパン0.8モル%を反応容器に仕込み、実施例1と同様にしてポリステル樹脂を得た。
この樹脂をMA−521Hに10重量%配合し、実施例1と同様にしてポリエステルシートを得た。
【0042】
[比較例10]
テレフタル酸98.5モル部、トリメリット酸1.5モル部、1,4−シクロヘキサンジメタノール20モル%、エチレングリコール120モル部、ポリオキシテトラメチレングリコール(Mw=1000)20重量部/ポリマーを反応容器に仕込み、実施例1と同様にして重合したところ、ゲル化が起こった。
【0043】
以上の各実施例、比較例で得たポリエステル樹脂および混合に供したポリエステル樹脂について評価した。その結果を表1、表2に一括して示す。表1、表2において用いたポリエステルを形成する成分の略号はそれぞれ以下の通りである。なお、表において酸成分、アルコール成分の数値は「モル%」、ソフト成分の数値は「重量部/ポリマー」を示す。
TPA;テレフタル酸
TMA;トリメリット酸
EG;エチレングリコール
CHDM;1,4−シクロヘキサンジメタノール
TMP;トリメチロールプロパン
PEG;ポリエチレングリコール(Mw=1000)
PTMG;ポリオキシテトラメチレングリコール(Mw=1000)
BPE;ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物
【0044】
【表1】
Figure 0003682127
【0045】
【表2】
Figure 0003682127
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によって得られるポリエステル樹脂およびその組成物は、従来の固相重合法より生産効率が高く得られ、ポリエステル樹脂が有する機械的特性、耐熱性、光線透過性、表面光沢、耐薬品性等を損なうことがなく、しかも押出し成形法による成形品を安定して成形し得る耐ドローダウン性に優れた性質を有するものである。

Claims (1)

  1. 下記(a)に記載のポリエステル樹脂100重量部に対して(b)に記載のポリエステル樹脂3〜15重量部を溶融混合し、270℃、せん断速度600(l/秒)で測定した粘度が2000〜20000ポイズであるポリエステル樹脂組成物。
    (a)25℃のフェノール/テトラクロロエタン等量混合溶媒中で測定される極限粘度[η]が0.5〜0.8dl/gであるポリエステル樹脂。
    (b)芳香族ジカルボン酸およびそのエステル形成誘導体を80〜100モル%含む酸成分と、エチレングリコールを50〜100モル%含むグリコール成分からなるポリエステルに、炭素数30〜120、平均分子量500〜3000の末端に水酸基を有する化合物をポリマーに対し5〜40重量%および3価以上の多価カルボン酸および/または多価アルコール成分を0.01〜1モル%を共重合させてなり、25℃のフェノール/テトラクロロエタン等量混合溶媒中で測定される極限粘度[η]が0.5〜1.5dl/gであるポリエステル樹脂。
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