JP4417506B2 - ポリエステル樹脂およびポリエステルシート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は柔軟性を示し、表面の耐擦傷性に優れ、さらに良好な透明性、機械特性を有し、かつ経時変化のないポリエステルシート及びその為の樹脂に関するものであり、例えば建材、内装部品等広く利用されるポリエステルシートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、軟質材料用途に使用されてきた塩化ビニル樹脂は柔軟剤等の添加剤の配合により物性のコントロールに適しているが、可塑剤や金属系安定剤等の添加物により衛生面で問題があり、しかも焼却すると有害ガスを生成するという問題点があり、他の材料への変更が強く要望されつつある。
一方、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールのポリエステルをハードセグメントとし、ポリアルキレングリコールをソフトセグメントとするポリエステル−ポリエーテル型のブロック共重合体は、耐寒性、耐熱性、耐油性、機械特性など種々の性質に優れ、しかも成形した際にも残留モノマーや有害添加剤の心配が少なく、衛生性、安全性に優れていることから、シート、フィルムなどの産業資材に拡大してきた。例えば、特開平11−106496号公報では脂肪族ポリエステルを混練し、柔軟性を付与する方法が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなポリエステルにおいては、混練によるエステル交換のため、熱履歴が異なると物性の発現も異なるという欠点があった。
さらに、ポリエステルへの添加剤のコンパウンドによる柔軟性改質では、柔軟性分としてゴム材料を添加するが、相溶性が極めて低いため、分散粒子径のコントロールが難しく、また、柔軟性を発現させるために過剰のゴム材料を添加する必要がある。そのため、成形後のブリードアウト等が起こり外観を損なっていた。
また、特開平11−166045号公報では高分子量ポリアルキレングリコールを共重合する方法が提案されているが、短鎖エステル単位を50重量%以上含有しているため柔軟性を確保することが難しく、ポリアルキレングリコール単位の結晶性によってシートの白化が起こり外観を損なうため、透明性、柔軟性を有するポリエステルシートが望まれていた。
本発明者は、先に透明性、および柔軟性に優れるポリエステルシートを提供するため、1分子中に2個以上のヒドロキシル基を有する炭素数36の飽和炭化水素化合物を共重合させる方法を提案していたが、シートの耐擦傷性については必ずしも満足のいくものではなかった。
【0004】
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、ポリエステル樹脂のもつ耐寒性、耐熱性、耐油性、機械特性、衛生性、安全性等の諸性能を損なうことなく、品質の安定化、透明性、柔軟性、耐擦傷性が高く、成形後のブリードアウトや白化等による外観低下を防止したポリエステルシート及びそれを可能ならしめる樹脂を目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のポリエステル樹脂は、(A)芳香族ジカルボン酸を64.9〜89.9[モル%]と、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する炭素数32〜72の不飽和炭化水素化合物を10〜35[モル%]とからなる成分と、(B)エチレングリコールを主体とするグリコール成分と、(C)マレイン酸及び/又はフマル酸を0.1〜10[モル%]とを有し、25℃のフェノール/テトラクロロエタン等量混合溶媒中で測定される極限粘度[η]が0.88〜1.10[dl/g]であることを特徴とするものである。また、芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸を5〜30[モル%]含有していることが望ましい。また、(A)成分中の前記2個以上のカルボキシル基を有する不飽和炭化水素化合物としては、炭素数が36のものが望ましい。本発明のポリエステルシートは、上述したポリエステル樹脂からなるものである。特に、2mm厚のポリエステルシートを50℃、95[%RH]、5時間の条件で処理した後のヘイズ値が2以下とすることができ、かつ、望ましい。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエステル樹脂は、少なくとも(A)〜(C)成分を有する。(A)成分は、芳香族ジカルボン酸を64.9〜89.9[モル%]と、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する炭素数32〜72の不飽和炭化水素化合物を10〜35[モル%](なお、(A)+(C)=100モル%)とからなるものである。(A)成分の芳香族ジカルボン酸としては特に制限されないが、耐熱性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−1,4もしくは2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウム等が挙げられ、これらのエステル形成誘導体としては低級アルキルエステルやアリールエステル、炭酸エステル、酸ハロゲン化物等が挙げられる。中でも、コスト面から、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましく使用される。特に、本発明のポリエステル樹脂をシート状に成形した場合の、透明性を向上させるためには、テレフタル酸34.9〜84.9[モル%]と、イソフタル酸5〜30[モル%]を共重合することが好ましい。上記芳香族ジカルボン酸以外の酸成分として脂肪族ジカルボン酸、またはこれらのエステル形成誘導体を全酸成分中に20[モル%]未満、好ましくは15[モル%]未満の範囲で含有させることもできる。これは20[モル%]以上含有させると成形品の機械的強度の低下を招く恐れがあるためである。本発明で使用される脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、1,3もしくは1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、4,4'−ジシクロヘキシルジカルボン酸等が挙げられる。
【0007】
本発明の(A)成分には、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する炭素数32〜72の不飽和炭化水素化合物が含まれる。炭素数が32〜72であることにより、得られるポリエステル樹脂中での自由体積が増加し柔軟性が向上する。中でも、該不飽和炭化水素化合物の製造における原料の入手、およびコストから炭素数は36を主成分とするものであることが好ましい。そのような炭素数36の不飽和炭化水素化合物としては、9−ノニリデン−10−オクチル−ノナデカンジカルボン酸、11−へプチル−12−オクチル−10−ヘニコセンジカルボン酸、11−[2−(8−カルボキシオクチル)−5−ヘキシル−6−ペンチル−3−シクロヘキセニル]−9−ウンデセンカルボン酸、8−[2−(8−カルボキシオクチル)−5−ヘキシル−6−(2−オクテニル)−3−シクロヘキセニル]−オクタンカルボン酸、8−[3−(8−カルボキシオクチル)−6−ヘキシル−2−(2−オクテニル)−4−シクロヘキセニル]−オクタンカルボン酸、11−[3−(8−カルボキシオクチル)−6−ヘキシル−2−ペンチル−4−シクロヘキセニル]−9−ウンデセンカルボン酸、10−[2−(8−カルボキシオクチル)−5,6−ジヘキシル−3−シクロヘキセニル]−9−デセンカルボン酸、10−[3−(8−カルボキシオクチル)−2,6−ジヘキシル−4−シクロヘキセニル]−9−デセンカルボン酸、8−[2−(8−カルボキシオクチル)−5−ヘキシル−6−(1−オクテニル)−3−シクロヘキセニル]−オクタンカルボン酸、8−[3−(8−カルボキシオクチル)−6−ヘキシル−2−(1−オクテニル)−4−シクロヘキセニル]−オクタンカルボン酸、8−[2−(8−カルボキシオクチル)−5−ヘキシル−6−オクチル−3−シクロヘキセニル]−オクタンカルボン酸、8−[3−(8−カルボキシオクチル)−5−ヘキシル−2−オクチル−4−シクロヘキセニル]−オクタンカルボン酸およびこれら化合物の水添物等が挙げられる。これらの化合物は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸から選ばれる一種または二種の組み合わせによるディールスアルダー反応によって得られ、上記の化合物の混合体である。カルボキシル基が2個以上あることにより、本発明のポリエステル樹脂中に共重合することができる。2〜3個であることが好ましい。上記1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する炭素数32〜72の不飽和炭化水素化合物の好ましい使用範囲は10〜35[モル%]である。10[モル%]未満であると柔軟性付与に効果が無く、35[モル%]を超えると熱安定性が低下し、重合反応が停滞したり、成形品の機械物性が低下する傾向にある。
【0008】
本発明の(B)成分は、エチレングリコールを主体とするグリコール成分である。(B)成分としては、色調、透明性、耐熱性、耐衝撃性等の付与のため以下のグリコール成分を共重合することができる。ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ダイマージオール等が挙げられ、単独あるいは混合物として用いることができ、また、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、1,1−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)シクロヘキサン、4,4'−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、さらに下記一般式(1)、(2)、および(3)で表されるアルコール成分、及びこれらの誘導体のエチレンオキサイド付加物等が含有されることができる。
【0009】
【化1】
(式中、XはCH2、C(CH3)2、C(CF3)2、O、S、及びSO2を示し、n及びmは、1≦n+m≦4を満足する。)
【0010】
【化2】
(式中、XはCH2、C(CH3)2、C(CF3)2、O、S、及びSO2を示し、RはC1〜C5のアルキル基を示し、n及びmは、1≦n+m≦4を満足する。)
【0011】
中でも次の一般式(3)に示される構造を有するビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物が好ましい。
【化3】
(式中、n及びmは、1≦n+m≦4を満足する。)
【0012】
上記(1)〜(3)に示される化合物において、m+nが4よりも大きくなると、耐熱性が低下する傾向がある。
【0013】
また本発明の(C)として使用される、不飽和ジカルボン酸の具体例としてはマレイン酸、フマル酸である。本発明において、(C)の配合量としては、0.1〜10[モル%]の範囲が好ましい。この範囲よりも低いと配合の効果がなく、高い場合はゲル化により反応の制御が難しい傾向にある。より好ましくは、0.5〜7[モル%]の範囲である。さらに、本発明には3価以上の多価カルボン酸及び多価アルコールを共重合することができ、その具体例としてはトリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの無水物等の多価カルボン酸、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等の多価アルコールが挙げられる。本発明において、3価以上の多価カルボン酸及び多価アルコールの配合量としては、5[モル%]を超えるとゲル化により反応の制御が難しい傾向にある。
【0014】
次に本発明のポリエステル樹脂を得る方法としては、公知の直接重合法やエステル交換法等により製造することができ、重合度としては、25℃のフェノール/テトラクロロエタン等量混合溶媒中で測定される極限粘度[η]が0.88〜1.10[dl/g]の重合度であることが好ましい。0.88[dl/g]よりも小さいと粘度が低く、成形時のロスが大きい傾向にある。また、1.10[dl/g]を超えると押出時の負荷が大きく十分な吐出量が得られず、成形品の外観を損なう可能性がある。本発明のポリエステル樹脂は、様々な成形方法に適用でき、射出成形、カレンダー成形、ブロー成形、押出成形、熱成形、発泡成形、溶融紡糸などを挙げることができ、成形体としても、射出成型品、シート、フィルム、中空成形体、パイプ、角棒、異形品、熱成形体、発泡体、繊維などを挙げることができるが、特に軟質なシート(フィルム)状成形体において、その得られる利点が顕著である。また、その成形方法は従来一般に知られている方法を適宜利用すればよい。本発明のポリエステル樹脂を使用した成形品に、さらに特定の性能を付与するために従来公知の各種加工処理を施したり、適当な添加剤を配合することができる。加工処理の例としては、紫外線、α線、β線、γ線あるいは電子線等の照射、コロナ処理、プラズマ照射処理、火炎処理等の処理、塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリオレフィン等の樹脂の塗布、ラミネート、あるいは金属の蒸着等が挙げられる。添加剤の例としては、ポリエーテル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート等の樹脂、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、紫外線吸収剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤等が挙げられる。本発明のポリエステル樹脂を用いれば、2mm厚のポリエステルシートを50℃、95[%RH]、5時間の条件で処理した後のヘイズ値が2以下となるシートを得ることができ、特に透明性の耐久性にも優れている。
【0015】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。
極限粘度は、25℃のフェノール/テトラクロロエタン等量混合溶媒中で測定した。
柔軟性は、ASTM−K7215に準じてショアD表面硬度を測定した。ショアD硬度は単位はない。
透明性は、40mmφ単軸押出機を使用して得た2mmシートをヘイズメーター(日本電色)により、製膜直後と、50℃、95[%RH]、5時間の条件で処理した後について測定した。但し、2mmシートが成形できなかった実験例については、500μmシートでの測定結果を2mm厚に換算した。
引張強度は、ASTM−D638に準拠して測定した。
表面擦傷性は、JIS−R−3212の磨耗試験機を使用し、摩耗輪CS−10F、500g荷重にて100回転摩耗した後、拡散透過率(ヘイズ値)を測定し、判定を行った。判定基準は次ぎの通りである。
○…増加ヘイズ値=5未満
△…増加ヘイズ値=6以上10未満
×…増加ヘイズ値=10以上
成形性の指標としては、キャピログラフ(東洋精機製作所)を使用して、270℃、剪断速度60[sec.-1]、L/D=10で押出されたストランドが400mmに到達する時間[sec.]を測定した。
【0016】
[実施例1]
テレフタル酸を546.6gと、アジピン酸を65.9gと、エチレングリコールを419.9gと、無水マレイン酸を65.9gと、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する炭素数36の不飽和炭化水素化合物として、8−[2−(8−カルボキシオクチル)−5−ヘキシル−6−(2−オクテニル)−3−シクロヘキセニル]−オクタンカルボン酸と9−ノニリデン−10−オクチル−ノナデカンジカルボン酸の77:23混合物を238.9gとを反応容器に入れ、190〜225℃で3時間加熱攪拌してエステル化反応を行った。ついで260℃に昇温し、重合触媒として三酸化アンチモン0.44gを添加して重合反応を進行させた。得られたポリエステル樹脂は極限粘度[η]=0.90であった。
この樹脂、および室温で減圧下24時間乾燥したペレットを230℃でASTM−D638試験片を射出成形したものを用いた評価結果を表1に示した。
[実施例2]
テレフタル酸を329.3gと、エチレングリコールを278.9gと、1,4−シクロヘキサンジメタノールを22.3gと、無水マレイン酸を3.04gと、1分子中に2個以上のヒドロキシル基を有する炭素数36の飽和炭化水素化合物として、8−[2−(8−カルボキシオクチル)−5−ヘキシル−6−(2−オクテニル)−3−シクロヘキセニル]−オクタンカルボン酸と9−ノニリデン−10−オクチル−ノナデカンジカルボン酸の77:23混合物を574.6gと、三酸化アンチモン0.45gとを用い実施例1と同様にして得られたポリエステル樹脂は極限粘度[η]=0.88であった。
この樹脂を実施例1と同様に評価した結果を表1に示した。
【0017】
[実施例3]
テレフタル酸を420.8gと、イソフタル酸を135.7gと、エチレングリコール380.6gと、無水マレイン酸を12.0gと、1分子中に2個以上のヒドロキシル基を有する炭素数36の飽和炭化水素化合物として、8−[2−(8−カルボキシオクチル)−5−ヘキシル−6−(2−オクテニル)−3−シクロヘキセニル]−オクタンカルボン酸と9−ノニリデン−10−オクチル−ノナデカンジカルボン酸の77:23混合物を324.8gと、三酸化アンチモンを0.45gとを用い実施例1と同様にして得られたポリエステル樹脂は極限粘度[η]=0.95であった。
この樹脂を実施例1と同様に評価した結果を表1に示した。
[実施例4]
テレフタル酸を496.7gと、イソフタル酸を31.2gと、エチレングリコールを338.0gと、トリメチロールプロパンを1.51gと、無水マレイン酸を1.84gと、1分子中に2個以上のヒドロキシル基を有する炭素数36の飽和炭化水素化合物として、8−[2−(8−カルボキシオクチル)−5−ヘキシル−6−(2−オクテニル)−3−シクロヘキセニル]−オクタンカルボン酸と9−ノニリデン−10−オクチル−ノナデカンジカルボン酸の77:23混合物を199.4gと、平均分子量1000のポリテトラメチレングリコールを188.1gと、三酸化アンチモンを0.36gとを用い実施例1と同様にして得られたポリエステル樹脂は極限粘度[η]=1.10であった。
この樹脂を実施例1と同様に評価した結果を表1に示した。
【0018】
[比較例1]
テレフタル酸を554.3gと、イソフタル酸を138.6gと、エチレングリコールを375.6gと、無水マレイン酸を2.05gと、平均分子量1000のポリテトラメチレングリコールを208.6gと、三酸化アンチモン0.34gとを用い実施例1と同様にして得られたポリエステル樹脂は極限粘度[η]=0.85であった。この樹脂を実施例1と同様に評価したが、50℃、95[%RH]、5時間の条件で処理した後、白化した。その他の評価結果を表1に示した。
[比較例2]
テレフタル酸を473.3gと、イソフタル酸を34.8gと、エチレングリコールを390.4gと、無水マレイン酸を49.3gと、1分子中に2個以上のヒドロキシル基を有する炭素数36の飽和炭化水素化合物として、8−[2−(8−カルボキシオクチル)−5−ヘキシル−6−(2−オクテニル)−3−シクロヘキセニル]−オクタンカルボン酸と9−ノニリデン−10−オクチル−ノナデカンジカルボン酸の77:23混合物を333.2gと、三酸化アンチモンを0.45gとを用い実施例1と同様にして得られたポリエステル樹脂はゲル状であり極限粘度は測定不可であった。この樹脂を実施例1と同様に評価したが、射出成形、40mmφ押出成形ともに成形不可であった。
【0019】
[比較例3]
テレフタル酸を674.6gと、アジピン酸を70.2gと、エチレングリコールを447.7gと、無水マレイン酸を2.36gと、1分子中に2個以上のヒドロキシル基を有する炭素数36の飽和炭化水素化合物として、8−[2−(8−カルボキシオクチル)−5−ヘキシル−6−(2−オクテニル)−3−シクロヘキセニル]−オクタンカルボン酸と9−ノニリデン−10−オクチル−ノナデカンジカルボン酸の77:23混合物を127.3gと、三酸化アンチモンを0.44gとを用い実施例1と同様にして得られたポリエステル樹脂は極限粘度[η]=0.56であった。
この樹脂を実施例1と同様に評価したが、40mmφ押出成形は流動性が良すぎ2mm厚のシートが成形不可であった。その他の評価結果を表1に示した。
[比較例4]
テレフタル酸を209.8gと、エチレングリコールを250.3gと、無水マレイン酸を7.91gと、8−[2−(8−カルボキシオクチル)−5−ヘキシル−6−(2−オクテニル)−3−シクロヘキセニル]−オクタンカルボン酸と9−ノニリデン−10−オクチル−ノナデカンジカルボン酸の77:23混合物を712.2gと、三酸化アンチモンを0.47gとを用い実施例1と同様にして得られたポリエステル樹脂は極限粘度[η]=1.00であった。
この樹脂を実施例1と同様に評価したが、実用上、引張強度が十分でなかった。その他の評価結果を表1に示した。
[比較例5]
テレフタル酸を617.6gと、イソフタル酸を36.3gと、エチレングリコールを407.5gと、1分子中に2個以上のヒドロキシル基を有する炭素数36の飽和炭化水素化合物として、8−[2−(8−カルボキシオクチル)−5−ヘキシル−6−(2−オクテニル)−3−シクロヘキセニル]−オクタンカルボン酸と9−ノニリデン−10−オクチル−ノナデカンジカルボン酸の77:23混合物を231.9gと、三酸化アンチモン0.44gとを用い実施例1と同様にして得られたポリエステル樹脂は極限粘度[η]=0.78であった。
この樹脂を実施例1と同様に評価したが、40mmφ押出成形は流動性が良すぎ2mm厚のシートが成形不可であった。その他の評価結果を表1に示した。
【0020】
【表1】
【0021】
なお、表中に示した化合物は、それぞれ以下の通りである。
TPA;テレフタル酸
IPA;イソフタル酸
NDC;ナフタレンジカルボン酸
ADA;アジピン酸
C36不飽和ジカルボン酸;8−[2−(8−カルボキシオクチル)−5−ヘキシル−6−(2−オクテニル)−3−シクロヘキセニル]−オクタンカルボン酸/9−ノニリデン−10−オクチル−ノナデカンジカルボン酸=77/23混合物
EG;エチレングリコール
CHDM;1,4−シクロヘキサンジメタノール
PTMG;ポリテトラメチレングリコール
TMP;トリメチロールプロパン
MA;無水マレイン酸
【0022】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によるポリエステル樹脂はシート状とした場合、従来のポリエステル樹脂の持つ優れた物性、成形加工性を維持し、実用上十分な成形性を示し、表面光沢に優れた特性を有する材料であることがわかる。従って本発明は、例えば軟質透明シート、表面保護材、建材、内装部品等広く利用することが可能である。
Claims (5)
- (A)芳香族ジカルボン酸を64.9〜89.9[モル%]と、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する炭素数32〜72の不飽和炭化水素化合物を10〜35[モル%]とからなる成分と、(B)エチレングリコールを主体とするグリコール成分と、(C)マレイン酸及び/又はフマル酸を0.1〜10[モル%]とを有し、25℃のフェノール/テトラクロロエタン等量混合溶媒中で測定される極限粘度[η]が0.88〜1.10[dl/g]であることを特徴とするポリエステル樹脂。
- 前記芳香族ジカルボン酸としてイソフタル酸を5〜30[モル%]含有することを特徴とする請求項1記載のポリエステル樹脂。
- (A)成分中の前記2個以上のカルボキシル基を有する不飽和炭化水素化合物の炭素数が36であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル樹脂。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂からなることを特徴とするポリエステルシート。
- 2mm厚のポリエステルシートを50℃、95[%RH]、5時間の条件で処理した後のヘイズ値が2以下であることを特徴とする請求項4記載のポリエステルシート。
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