JP3679411B2 - p−ニトロ芳香族アミド及び該アミド由来の生成物の製造方法 - Google Patents

p−ニトロ芳香族アミド及び該アミド由来の生成物の製造方法 Download PDF

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Description

発明の背景
本発明は、p−ニトロ芳香族アミドの製造に係わる。一形態において、本発明はp−アミノ芳香族アミドの製造に係わる。別の形態では、本発明はp−ニトロ芳香族アミンの製造に係わる。更に別の形態では、本発明はp−アミノ芳香族アミンの製造に係わる。なお別の形態において、本発明はアルキル化p−アミノ芳香族アミンの製造に係わる。
芳香族アミド結合は現在、アミンを酸塩化物と反応させることによって形成される。特に、ニトロ芳香族アミンを酸塩化物と反応させることによってp−ニトロ芳香族アミドを製造することが知られている。この方法は、排出されるハロゲン化物が反応容器に対して腐食性であり、かつ廃液流中に出現し、従ってハロゲン化物を甚だしい費用を掛けて処理しなければならないという点で不利である。また、ニトロ芳香族アミンはハロニトロ芳香族物質、例えばクロロニトロベンゼンとアンモニアとの反応によって製造されているが、付加的な腐食及び廃液処理問題を惹起する同じハロゲン化物排出をもたらす。従って、置換芳香族アミド、特にニトロ芳香族アミド及び該アミド由来の生成物がハロゲン化物を用いない経路で得られれば、現行の技術に比べ著しい利点であり、かつ商業的プロセスがより有効かつ経済的となる。
本発明の方法は上記のような、ハロゲン化物を用いずにニトロ芳香族アミド及び該アミド由来の生成物を得る経路から成り、従って経費の掛かる廃液流からのハロゲン化物除去及びハロゲン化物が惹起する腐食の問題が無い。
発明の概要
本発明は、p−ニトロ芳香族アミン、p−アミノ芳香族アミン、p−アミノ芳香族アミド及びアルキル化p−アミノ芳香族アミンの製造に用いるp−ニトロ芳香族アミドを製造する方法を提供することを目的とする。本発明は、p−ニトロ芳香族アミド及び該アミド由来の生成物を製造する、商業的に実施可能な効率的かつ経済的方法を提供することも目的とする。更に本発明は、ポリアミドの製造または他のポリマー用途でモノマーとして用いられるp−アミノ芳香族アミンの製造方法を提供することも目的とする。酸化防止剤またはオゾン化防止剤として用いられるアルキル化p−アミノ芳香族アミンの製造方法を提供することも本発明の目的である。本発明はまた、酸化防止剤に至る中間体として用いられるp−ニトロ芳香族アミンを製造する方法の提供も目的とする。
本発明は、適当な溶媒系の存在下にニトリル、ニトロベンゼン、適当な塩基、及び水を接触させて混合物を得、この混合物を制御された量のプロトン性物質の存在下に限られた反応ゾーン(閉鎖反応ゾーン)内で適当な温度で反応させることを含むp−ニトロ芳香族アミド製造方法を提供する。
更に本発明は、本発明により製造したp−ニトロ芳香族アミドの還元を含むp−アミノ芳香族アミド製造方法も提供する。一例ではp−アミノ芳香族アミドを更に、対応するp−アミノ芳香族アミン、及びニトリル出発物質に対応するアミドが生成する条件下にアンモニアと反応させる。別の例ではp−アミノ芳香族アミドを更に、対応するp−アミノ芳香族アミン、及びニトリル出発物質に対応する酸またはその塩が生成する条件下に適当な塩基性または酸性触媒を存在させて水と反応させる。更に別の例では、p−アミノ芳香族アミンを還元的にアルキル化してアルキル化p−アミノ芳香族アミンを製造する。
本発明はまた、本発明により製造したp−ニトロ芳香族アミドを、対応するp−ニトロ芳香族アミン、及びニトリル出発物質に対応するアミドが生成する条件下にアンモニアと反応させるか、または対応するp−ニトロ芳香族アミン、及びニトリル出発物質に対応する酸またはその塩が生成する条件下に適当な塩基性または酸性触媒を存在させて水と反応させることを含むp−ニトロ芳香族アミン製造方法も提供する。一例では、p−ニトロ芳香族アミンを還元してp−アミノ芳香族アミンを製造する。別の例では、p−ニトロ芳香族アミンを還元的にアルキル化してアルキル化p−アミノ芳香族アミンを製造する。別の例では、p−アミノ芳香族アミンを還元的にアルキル化してアルキル化p−アミノ芳香族アミンを製造する。
発明の詳細な説明
本発明は、p−ニトロ芳香族アミドを製造する方法に係わり、この方法は
(a)適当な溶媒系の存在下にニトリル、ニトロベンゼン、適当な塩基、及び水を接触させて混合物を得、
(b)前記混合物を制御された量のプロトン性物質の存在下に限られた反応ゾーン(閉鎖反応ゾーン)内で適当な温度で反応させることを含む。
p−アミノ芳香族アミド製造のためには、本発明の方法は
(c)(b)の反応生成物をp−アミノ芳香族アミドが生成する条件下に還元することも含む。
p−アミノ芳香族アミドからp−アミノ芳香族アミンを製造するためには、本発明の方法は
(d)p−アミノ芳香族アミドを、対応するp−アミノ芳香族アミン、及び(a)のニトリルに対応するアミドが生成する条件下にアンモニアと反応させることも含む。
あるいは他の場合には、本発明の方法はp−アミノ芳香族アミドからp−アミノ芳香族アミンを製造するべく、
(d)p−アミノ芳香族アミドを、対応するp−アミノ芳香族アミン、及び(a)のニトリルに対応する酸またはその塩が生成する条件下に適当な塩基性または酸性触媒を存在させて水と反応させることも含む。
アルキル化p−アミノ芳香族アミン製造のためには、本発明の方法は
(e)p−アミノ芳香族アミンを還元的にアルキル化することも含む。
p−ニトロ芳香族アミン製造のためには、本発明の方法は
(c′)(b)の反応生成物を、対応するp−ニトロ芳香族アミン、及び(a)のニトリルに対応するアミドかまたは(a)にニトリルに対応する酸もしくはその塩が生成する条件下に適当な塩基性または酸性触媒を存在させて(i)アンモニアまたは(ii)水と反応させることも含む。
アルキル化p−アミノ芳香族アミン製造のために、本発明の方法は
(d′)p−ニトロ芳香族アミンを還元的にアルキル化することも含む。
本発明の方法はp−アミノ芳香族アミン製造のために、
(d″)p−ニトロ芳香族アミンを対応するp−アミノ芳香族アミンが生成する条件下に還元することも含む。
本発明の方法はアルキル化p−アミノ芳香族アミン製造のために、
(e″)p−アミノ芳香族アミンを還元的にアルキル化することも含む。
本発明の方法によって製造されたp−ニトロ芳香族アミドは中性化合物の形態を取ること、即ち塩の形態を取らないこと、及び/または前記p−ニトロ芳香族アミドの塩の形態を取ることが可能である。塩は、p−ニトロ芳香族アミドと塩基との反応から反応混合物中に生成する。即ち、本発明の方法で製造した反応混合物は、選択された特定の反応条件に応じてp−ニトロ芳香族アミド化合物もしくはその塩、またはこれらの混合物を含有し得る。
ニトリル対ニトロベンゼンのモル比は、ニトリル大過剰からニトロベンゼン大過剰まで様々とし得る。反応に適した溶媒としてもニトロベンゼンを用いる場合、好ましくはニトロベンゼンをニトリルに対して大過剰な量で存在させる。反応に適した溶媒として該ニトリルを用いる場合は、好ましくはニトリルをニトロベンゼンに対して大過剰な量で存在させる。反応用溶媒としてニトロベンゼンやニトリルを用いない場合のニトリル対ニトロベンゼンのモル比は、広範囲に変わり得るが、好ましくは約1:1とする。
本発明により用い得るニトリルには、芳香族ニトリル、脂肪族ニトリル、置換芳香族ニトリル誘導体、置換脂肪族ニトリル誘導体、及び式
N≡C−R1−A−R2−C≡N
〔式中R1及びR2は互いに独立に芳香族基、脂肪族基及び直接結合の中から選択され、Aは−C(CF32−、−SO2−、−O−、−S−及び直接結合の中から選択される〕を有するジニトリルが含まれる。
本発明により用い得る脂肪族ニトリル及び置換脂肪族ニトリル誘導体は、式
X−(R3n−C≡N
〔式中nは0または1であり、R3はアルキル、アリールアルキル、アルケニル、アリールアルケニル、シクロアルキル及びシクロアルケニル基の中から選択され、Xは水素、−NO2、−NH2、アリール基、アルコキシ基、スルホネート基、−SO3H、−OH、−CHO、−COOH、及び少なくとも1個の−NH2基を有するアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基の中から選択される〕によって表わされる。本明細書中に用いた“スルホネート基”という語はスルホン酸のエステルを意味する。スルホネートの例には、アルキルスルホネート、アラルキルスルホネート、アリールスルホネート等が非限定的に含まれる。好ましいアルキル及びアルコキシ基は1個から約6個の炭素原子を有する。好ましいアリール、アリールアルキル及びアルキルアリール基は約6〜約18個の炭素原子を有する。
脂肪族ニトリル及び置換脂肪族ニトリル誘導体の例には、アセトニトリル、n−バレロニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、シアナミド、及びこれらの混合物が非限定的に含まれる。
本明細書中に用いた“置換芳香族ニトリル誘導体”という語は、芳香環上に1個以上の電子求引性または電子放出性置換基を有する芳香族ニトリルを意味する。適用可能な置換基には、ハロゲン化物、−NO2、−NH2、アルキル基、アルコキシ基、スルホネート基、−SO3H、−OH、−CHO、−COOH、及び少なくとも1個の−NH2基を有するアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基が非限定的に含まれる。ハロゲン化物は塩化物、臭化物及びフッ化物の中から選択される。好ましいアルキル及びアルコキシ基は1個から約6個の炭素原子を有する。好ましいアリール、アリールアルキル及びアルキルアリール基は約6〜約18個の炭素原子を有する。
芳香族ニトリル及び置換芳香族ニトリル誘導体の例には、ベンゾニトリル、4−メトキシベンゾニトリル、4−クロロベンゾニトリル、4−ニトロベンゾニトリル、4−アミノベンゾニトリル、o−トルニトリル、p−トルニトリル、及びこれらの混合物が非限定的に含まれる。
本発明の方法により用い得るジニトリルには、1,4−ジシアノベンゼン、1,4−ジシアノブタン、1,6−ジシアノヘキサン、2,6−ジシアノトルエン、1,2−ジシアノシクロブタン、1,2−ジシアノ−3,4,5,6−テトラフルオロベンゼン、4,4′−ジシアノフェニル、及びこれらの混合物が非限定的に含まれる。
p−ニトロ芳香族アミドが生成する反応は適当な溶媒系中で生起させる。本明細書中に用いた“適当な溶媒系”という語は極性非プロトン性溶媒を意味する。
適当な溶媒系には、例えばニトロベンゼン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、N−メチルアニリン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、反応温度より低い融点を有するテトラアルキルアンモニウム水酸化物やニトリル類、例えば溶融テトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びベンゾニトリル、並びにこれらの混合物などの溶媒が非限定的に含まれる。現時点で好ましい適当な溶媒はニトロベンゼン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド及びN−メチル−2−ピロリドンである。最も好ましくは、上記反応でニトロベンゼンを過剰量で用いれば、ニトリルのモル量を超過する分のニトロベンゼンが溶媒として機能する。後段に詳述するように、1種以上の適当な溶媒と制御された量のプロトン性溶媒など、適当な溶媒以外の溶媒とを組み合わせた溶媒混合物を用いることも可能である。プロトン性溶媒の例には、メタノール、水及びこれらの混合物が非限定的に含まれる。
適当な塩基には、ナトリウム金属などのアルカリ金属、水素化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、水酸化カリウム、カリウムt−ブトキシド等といったアルカリ金属水素化物、水酸化物及びアルコキシド、並びにこれらの混合物などの有機及び無機塩基が非限定的に含まれる。その他の許容可能な塩基物質には、テトラアルキルアンモニウム水酸化物、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、例えばテトラブチルアンモニウムクロリド、アリールトリアルキルアンモニウム水酸化物、例えばフェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、アリールアルキルトリアルキルアンモニウム水酸化物、例えばベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、アルキル置換ジアンモニウム水酸化物、例えばビス−ジブチルエチルヘキサメチレンジアンモニウムヒドロキシドを含めた、各置換基が互いに独立にアルキル、アリールまたはアリールアルキル基の中から選択され、その際アルキル、アリール及びアリールアルキル基は好ましくは1個から約18個の炭素原子を有する四置換アンモニウム水酸化物またはハロゲン化物などの、適当な塩基源が内在する相間移動触媒、及び相間移動触媒と適当な塩基との他の組み合わせ、例えばアリールアンモニウム塩、クラウンエーテル等と併用した適当な塩基、及びリチウムビス(トリメチルシリル)アミド等といったアミン塩基がその混合物と共に非限定的に含まれる。塩基として好ましく用いられる物質は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドやテトラブチルアンモニウムヒドロキシドといったテトラアルキルアンモニウム水酸化物である。
好ましくは、塩基及び水をニトリルに添加して混合物を製造し、この混合物をニトロベンゼンと配合する。あるいは別法として、ニトリルとニトロベンゼンとを配合した後に塩基及び水を添加することも可能である。物質の添加は液面上または液面下添加とし得る。
本発明により用いる塩基の量は、適当な塩基の当量対ニトリルの当量の比によって好ましく表わし得る。大体において、塩基の当量対ニトリルの当量の比は約1:1から約10:1であり、好ましくは約1:1から約4:1、最も好ましくは約1:1から約2:1である。
反応は、広範囲に変わり得る適当な温度において生起させる。例えば、温度は約5〜約150℃、即ち約15〜約100℃などとし得、好ましくは約25〜約90℃とし得る。本発明の反応の生起にきわめて好ましい温度は約60〜約80℃である。
反応混合物中に存在させるプロトン性物質の量の制御は重要である。本発明により用いるプロトン性物質の量は、p−ニトロ芳香族アミドを生成させる反応の開始時に存在する塩基の量に基づくモル比によって好ましく表わし得る。大体において、プロトン性物質対塩基のモル比は約5:1より小さく、好ましくは約3:1未満、更に好ましくは約2:1未満、最も好ましくは約1:1未満である。即ち、本発明の反応は無水条件下に生起させ得る。本明細書中でプロトン性物質の量に関して用いた“制御された量”という語は、p−ニトロ芳香族アミドの生成を抑制する量以下の量を意味する。反応混合物中に存在させるプロトン性物質の量の上限は溶媒次第で様々となる。加えて、許容されるプロトン性物質の量は様々な溶媒系中で用いる塩基の種類、塩基の量、及び塩基カチオンに応じても変動する。しかし、特定の溶媒、塩基の種類及び量、塩基カチオン等に応じてプロトン性物質の量の特定の上限を決定することは、本発明の教示を用いれば当業者の技術の範囲内である。所望生成物の選択性の維持に必要なプロトン性物質の最少量も、用いる溶媒、塩基の種類及び量、塩基カチオン等に依存し、やはり当業者によって決定可能である。
反応混合物中に存在させるプロトン性物質の量が重要であるので、存在するプロトン性物質の量をできるかぎり減らし、後に所望量を反応混合物に添加し戻すことが可能となる。反応混合物への再添加に用い得るプロトン性物質は当業者に公知であり、このような物質には水、メタノール等、及びこれらの混合物が非限定的に含まれる。プロトン性物質の量を測定する方法、及びプロトン性物質の量をできるかぎり減らす方法は当業者に良く知られている。例えば、或る種の試薬中に存在する水の量はKarl−Fischer装置を用いることによって測定し得、また蒸留及び/または減圧下での脱水、P25その他の物質の存在下での脱水、例えばキシレンを用いる共沸蒸留等、並びにこれらの組み合わせなどによって水の量を減少させ得る。
p−ニトロ芳香族アミドを生成させる反応の間プロトン性物質の量を制御する方法の一例では脱水剤を、該脱水剤が反応の間存在するように添加する。例えばプロトン性物質が水である場合、脱水剤は反応の間存在する水を除去し、ニトロベンゼンの変換率及びp−ニトロ芳香族アミドの収率を高める。本明細書中に用いた“脱水剤”という語は、用いる適当な塩基に加えて反応の間存在する化合物を意味する。適当な脱水剤の例には、無水硫酸ナトリウム、Union Carbide Corporationから入手可能な4A型、5A型及び13X型などのモレキュラーシーブ、塩化カルシウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド二水和物、KOH及びNaOHなどの無水塩基、並びに活性アルミナが非限定的に含まれる。ニトリルを、適当な溶媒として機能させる時など、ニトロベンゼンに対して過剰に用いた場合は該ニトリルが脱水剤として機能し得る。
p−ニトロ芳香族アミドを生成させる反応の間プロトン性物質の量を制御する方法の別の例では、反応混合物からプロトン性物質を蒸留によって連続的に除去する。存在するプロトン性物質が反応混合物中の化合物の一つと共沸混合物を形成している場合は、共沸現象を利用するプロトン性物質の連続共沸蒸留によってプロトン性物質を除去することができる。
反応は好気的または嫌気的条件下に生起させ得る。好気的条件下では反応は、普通空気を通じて酸素に曝露された反応ゾーンにおいて実質的に先に述べたように生起させる。好気的条件下では反応を生起させる圧力を様々にし得るが、最適圧力、及び圧力と温度との最適の組み合わせは当業者に容易に決定される。例えば、反応は室温で、かつ約0psig(0kg/cm2)から約250psig(17.6kg/cm2)、即ち約14psig(1kg/cm2)から約150psig(10.5kg/cm2)などの圧力で生起させ得る。嫌気的条件下では反応は、例えば窒素またはアルゴンといった不活性ガスを存在させつつ大気圧でか、または減圧もしくは加圧下に生起させ得る。温度、塩基、溶媒等といった特定の一組の反応パラメーターに最適の条件は、本発明の教示を用いる当業者によって容易に決定される。目下のところ、反応は好気的条件下で生起させることが好ましく、なぜなら副産物のアゾキシベンゼンの生成が排除できるからである。
p−ニトロ芳香族アミド及び/またはその塩は、還元してp−アミノ芳香族アミドとすることができる。水及び/または酸を用いて、塩から中性化合物を生成させ得る。あるいは別法として、塩自体の還元も加能である。本発明の別の一例では、p−ニトロ芳香族アミンを還元してp−アミノ芳香族アミンとすることができる。これらの還元は、水素化物源、例えばパラジウム−炭または白金−炭触媒と併用したホウ水素化ナトリウムを用いるものなど、多くの公知還元法のうちのいずれかによって行ない得る。好ましくは上記還元は、白金−炭またはパラジウム−炭、ニッケル等を存在させつつ水素圧下に水素化する接触還元によって行なう。この水素化法は、本明細書に参考として含まれるP.N.Rylander,“Catalytic Hydrogenation in Organic Synthesis,”p.299,Academic Press,N.Y.,1979に詳述されている。水素化は、トルエン、キシレン、アニリン、エタノール、ジメチルスルホキシド、水、及びこれらの混合物を非限定的に含めた様々な溶媒中で行ない得る。好ましくは水素化は、例えばエタノール、アニリンもしくはジメチルスルホキシドといった適当な溶媒、その混合物、または水を含有する混合物を溶媒として、白金−炭またはパラジウム−炭触媒と、温度約80℃で100psig(7kg/cm2)H2から約340psig(23.9kg/cm2)H2の水素圧とを用いて行なう。
p−ニトロ芳香族アミド及びp−アミノ芳香族アミドのアミノリシスは、p−ニトロ芳香族アミドまたはp−アミノ芳香族アミドをアンモニアと反応させてそれぞれに対応するp−ニトロ芳香族アミンまたはp−アミノ芳香族アミンと、ニトリル出発物質に対応するアミドとを生成させることによって行ない得る。例えばW.P.Jencks,J.Am.Chem.Soc.,Vol.92,pp.3201ー3202,1970参照。アンモニアはアミノリシス反応にアンモニアそのものとして、またはアンモニアと水酸化アンモニウムとの混合物として用い得る。水酸化アンモニウムが存在すると、反応はニトリル出発物質に対応するアミドに加えて、ニトリル出発物質に対応する酸も生成させる。好ましくは、p−ニトロ芳香族アミドまたはp−アミノ芳香族アミドを溶媒、例えばメタノールの存在下にアンモニアと反応させる。
p−ニトロ芳香族アミド及びp−アミノ芳香族アミドの加水分解は、p−ニトロ芳香族アミドまたはp−アミノ芳香族アミドを適当な塩基性または酸性触媒の存在下に水と反応させてそれぞれに対応するp−ニトロ芳香族アミンまたはp−アミノ芳香族アミンと、ニトリル出発物質に対応する酸またはその塩とを生成させることによって行ない得る。適当な塩基性触媒の例には、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、テトラアルキルアンモニウム水酸化物、水酸化アンモニウム等、及びこれらの混合物が非限定的に含まれる。適当な酸性触媒の例には、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等、及びこれらの混合物が非限定的に含まれる。目下のところ塩基性触媒を用いることが好ましく、なぜならp−ニトロ芳香族アミドの製造に用いるべく選択した適当な塩基は、加水分解反応の塩基性触媒としても用い得るからである。加水分解反応の温度は通常約60〜約120℃とする。
p−アミノ芳香族アミンを還元的にアルキル化して酸化防止剤またはオゾン化防止剤を製造することは、良く知られた幾つかの方法のうちのいずれか一つによって実行可能である。例えば米国特許第4,900,868号を参照されたい。好ましくは、p−アミノ芳香族アミンと適当なケトンまたはアルデヒドとを触媒としての水素及び白金−炭の存在下に反応させる。適当なケトンには、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン、メチルイソアミルケトン及び2−オクタノンが非限定的に含まれる。p−ニトロ芳香族アミンの還元と、還元した物質のアルキル化とは溶媒としてケトンを用いて同じ反応容器内で行ない得ることに留意するべきである。例えば米国特許第3,414,616号、同第4,463,191号、及びBannerjee等,J.Chem.Soc.Chem.Comm.18,pp.1275−1276,1988を参照されたい。
上記反応物及び試薬の等価物として考えられるのは、様々な基、例えば−NO2の1個以上が単純な変化部分を構成する以外は当該物質に対応する、同じ一般特性を有する反応物及び試薬である。加えて、置換基を水素とするか、または水素とし得る場合、当該位置が水素以外であっても、その置換基の正確な化学特性は、全体の活性及び/または合成操作に悪影響を及ぼさないかぎり重要でない。
上述の化学反応は、本発明の方法を最も広義に適用できるよう、一般化して開示してある。場合によっては、これら反応条件が開示範囲内の反応物及び試薬であっても、個別に述べるように適用し得ないことがあり得る。例えば、適当な塩基のうちの幾つかは溶媒次第では、他の溶媒の時ほど溶解しないことが有る。この事態をもたらす反応物及び試薬は当業者には容易に認識される。どのような事態にせよ、当業者に知られた通常の改変、例えば温度、圧力等の適当な調節、他の溶媒または他の塩基といった替わりの通常試薬への変更、反応条件の常套的改変等によって反応を好ましく生起させることができ、または本明細書に開示した他の反応か、もしくは他の通常反応を本発明の方法に適用し得る。いずれの製造方法においても、出発物質は総て公知であるか、または公知の出発物質から容易に製造可能である。
実施例
材料及び方法
ニトリル類及びニトロベンゼンは試薬等級のものをそれ以上精製せずに用いた。溶媒はAldrich Chemicalから購入した無水品とした。テトラメチルアンモニウムヒドロキシドは五水和物を購入し、これを使用前に数日間真空下にデシケーター内でP25上で脱水した。得られた固体の滴定は、脱水物質が二水和物であることを示した。特に断らないかぎり、収率は総て次の方法によるHPLCで測定した。
HPLC分析法:
Vydac 201HS54(4.6×250mm)カラムと、254nmでの紫外検出器とを具備したWaters 600シリーズHPLCを用いて総ての反応を監視した。いずれの分析でも外部基準法を用いた。基準として用いるべき標品の生成物試料は、公知文献に既述の方法で製造した。
Figure 0003679411
実施例1
この実施例では、ベンゾニトリルとニトロベンゼンとを空気の存在下に反応させることによるN−(4−ニトロフェニル)−ベンズアミドの製造を説明する。
10gのニトロベンゼンと、1.27gのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド二水和物と、1gのベンゾニトリルとを含有する溶液を、該溶液中に注射針を介して空気を通気しながら60℃で1時間攪拌した。HPLCによる反応生成物の試料の分析から、N−(4−ニトロフェニル)−ベンズアミドがテトラメチルアンモニウムヒドロキシドに基づき収率45%で生成したことが判明した。反応生成物中にアゾキシベンゼンは検出されなかった。
実施例2
この実施例では、ベンゾニトリルとニトロベンゼンとを嫌気的条件下に反応させることによるN−(4−ニトロフェニル)−ベンズアミドの製造を説明する。
10gのニトロベンゼンと、1.27gのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド二水和物と、1gのベンゾニトリルとを含有する溶液を、該溶液中に注射針を介して窒素を通気しながら60℃で1時間攪拌した。HPLCによる反応生成物の試料の分析から、N−(4−ニトロフェニル)−ベンズアミドがテトラメチルアンモニウムヒドロキシドに基づき収率45%で生成し、かつアゾキシベンゼンが同じく収率22%で発生したことが判明した。
実施例3
この実施例では、ベンゾニトリルとニトロベンゼンとの反応におけるN−(4−ニトロフェニル)−ベンズアミドの生成に水が及ぼす影響を説明する。
A) 1.27gのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド二水和物と、156mgのビフェニル(内部基準として)と、10mlのニトロベンゼンとを含有する溶液を、乾燥管を具備した100ml容の三首丸底フラスコに入れて攪拌した。ベンゾニトリル(1ml)を添加し、空気中で60℃において攪拌した。溶液を3時間攪拌後、一部を採取してRP−HPLC分析用の試料とした。N−(4−ニトロフェニル)−ベンズアミドの収率は、用いたテトラメチルアンモニウムヒドロキシドに基づき17%であった。
B) 1.8gのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド五水和物と、160mgのビフェニル(内部基準として)と、10mlのニトロベンゼンとを含有する溶液を、乾燥管を具備した100ml容の三首丸底フラスコに入れて攪拌した。ベンゾニトリル(1ml)を添加し、空気中で60℃において攪拌した。溶液を3時間攪拌後、一部を採取してRP−HPLC分析用の試料とした。N−(4−ニトロフェニル)−ベンズアミドの収率を、用いたテトラメチルアンモニウムヒドロキシドに基づき0.91%と算出した。

Claims (28)

  1. (a)適当な溶媒系の存在下にニトリル、ニトロベンゼン、適当な塩基、及び水を接触させて混合物を得、
    (b)前記混合物をプロトン性溶媒対適当な塩基のモル比が5:1より小さい量のプロトン性溶媒の存在下に閉鎖反応ゾーン内で適当な温度で反応させる
    ことを含むp−ニトロ芳香族アミド製造方法。
  2. ニトリルが芳香族ニトリル、脂肪族ニトリル、置換芳香族ニトリル誘導体、置換脂肪族ニトリル誘導体、及び式
    N≡C−R1−A−R2−C≡N
    〔式中R1及びR2は互いに独立に芳香族基、脂肪族基及び直接結合の中から選択され、Aは−C(CF32−、−SO2−、−O−、−S−及び直接結合の中から選択される〕を有するジニトリルの中から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 脂肪族ニトリル及び置換脂肪族ニトリル誘導体が式
    X−(R3n−C≡N
    〔式中nは0または1であり、R3はアルキル、アリールアルキル、アルケニル、アリールアルケニル、シクロアルキル及びシクロアルケニル基の中から選択され、Xは水素、−NO2、−NH2、アリール基、アルコキシ基、スルホネート基、−SO3H、−OH、−CHO、−COOH、及び少なくとも1個の−NH2基を有するアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基の中から選択される〕によって表わされることを特徴とする請求項2に記載の方法。
  4. 置換芳香族ニトリル誘導体の置換基がハロゲン化物、−NO2、−NH2、アルキル基、アルコキシ基、スルホネート基、−SO3H、−OH、−COOH、−CHO、及び少なくとも1個の−NH2を有するアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基の中から選択され、前記ハロゲン化物は塩化物、臭化物及びフッ化物の中から選択されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
  5. 適当な溶媒系がニトロベンゼン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、N−メチルアニリン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、テトラアルキルアンモニウム水酸化物及び反応温度より低い融点を有するニトリル類並びにこれらの混合物の中から選択された溶媒を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  6. 適当な溶媒系がプロトン性溶媒を含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. 当な塩基の当量対ニトリルの当量の比は1:1から10:1であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  8. 適当な温度が5〜150℃であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  9. 適当な塩基が有機塩基及び無機塩基の中から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  10. 有機及び無機塩基がアルカリ金属、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、塩基源が内在する相間移動触媒、アミン、塩基源と併用したクラウンエーテル、アルキルマグネシウムハロゲン化物、及びこれらの混合物の中から選択されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
  11. 適当な塩基が塩基源が内在するアリールアンモニウム、アルキルアンモニウム、アリール/アルキルアンモニウム及びアルキルジアンモニウム塩の中から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  12. ステップ(b)の反応を好気的条件下に生起させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  13. ステップ(b)の反応を嫌気的条件下に生起させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  14. ステップ(b)において反応の間存在するプロトン性溶媒の量を制御する脱水剤を存在させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  15. ステップ(b)のプロトン性溶媒の量を該プロトン性物質の連続蒸留によって制御することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  16. (c)(b)の反応生成物をp−アミノ芳香族アミドが生成する条件下に還元する
    ことも含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  17. (d)p−アミノ芳香族アミドを、対応するp−アミノ芳香族アミン、及び(a)のニトリルに対応するアミドが生成する条件下にアンモニアと反応させる
    ことも含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
  18. (e)p−アミノ芳香族アミンを還元的にアルキル化してアルキル化p−アミノ芳香族アミンを製造する
    ことも含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
  19. p−アミノ芳香族アミンを、ケトン及びアルデヒドの中から選択した化合物を用いて還元的にアルキル化することを特徴とする請求項18に記載の方法。
  20. (d)p−アミノ芳香族アミドを、対応するp−アミノ芳香族アミン、及び(a)のニトリルに対応する酸またはその塩が生成する条件下に適当な塩基性または酸性触媒を存在させて水と反応させる
    ことも含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
  21. (e)p−アミノ芳香族アミンを還元的にアルキル化してアルキル化p−アミノ芳香族アミンを製造する
    ことも含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
  22. p−アミノ芳香族アミンを、ケトン及びアルデヒドの中から選択した化合物を用いて還元的にアルキル化することを特徴とする請求項21に記載の方法。
  23. (c)(b)の反応生成物を、対応するp−ニトロ芳香族アミン、及び(a)のニトリルに対応するアミドかまたは(a)のニトリルに対応する酸もしくはその塩が生成する条件下に適当な塩基性または酸性触媒を存在させて
    (i)アンモニアまたは(ii)水と反応させる
    ことも含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  24. (d)p−ニトロ芳香族アミンを対応するp−アミノ芳香族アミンが生成する条件下に還元する
    ことも含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
  25. (e)p−アミノ芳香族アミンを還元的にアルキル化してアルキル化p−アミノ芳香族アミンを製造する
    ことも含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
  26. p−アミノ芳香族アミンを、ケトン及びアルデヒドの中から選択した化合物を用いて還元的にアルキル化することを特徴とする請求項25に記載の方法。
  27. (d)p−ニトロ芳香族アミンを還元的にアルキル化してアルキル化p−アミノ芳香族アミンを製造する
    ことも含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
  28. p−ニトロ芳香族アミンを、ケトン及びアルデヒドの中から選択した化合物を用いて還元的にアルキル化することを特徴とする請求項27に記載の方法。
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