JP3675132B2 - 両吸込式送風機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転軸の軸方向両側から空気を吸込み、送風する両吸込式送風機に関するもので、特に、空調用空気通路を2つの空気通路に仕切って、一方の通路に外気を取り入れて加熱した後にデフロスタ吹出口側に吹出し、他方の通路には内気を取り入れて加熱した後にフット吹出口側に吹出すことにより、暖房能力の向上と防曇性の確保とを両立させる内外気2層タイプの車両用空調装置に用いて好適である。
【0002】
【従来の技術】
従来、上記内外気2層タイプの車両用空調装置として、特開平8−318727号公報に記載されているものがある。
この従来装置における内外気吸込ユニット100は、図6に示すように外気用の第1通路101と内気用の第2通路102とを有する。そして、内外気吸込ユニット100には、これら両通路101、102に対応して、1つの送風用モータ10にて駆動される第1のファン110および第2のファン111が設けられている。
【0003】
内外気吸込ユニット100において、送風用モータ10の回転軸の軸方向一端側(図6の上側)には、第1内気導入口103および外気導入口104が形成されており、これら第1内気導入口103と外気導入口104は、第1内外気切換ドア106にて開閉される。
また、内外気吸込ユニット100において、送風用モータ10の回転軸の軸方向他端側(図6の下側)には、第2内気導入口105が形成されており、この第2内気導入口105は第2内外気切換ドア107にて開閉される。
【0004】
さらに、内外気吸込ユニット100には、第1のファン110と第2のファン111の各吸込口を連通させるように連通路108が形成されており、この連通路108は上記第2内外気切換ドア107にて開閉される。
内外気モードを内外気2層モードに切り換えるには、第1内外気切換ドア106にて第1内気導入口103を閉塞するとともに、上記外気導入口104を開口する。一方、第2内外気切換ドア107にて連通路108を閉塞するとともに、第2内気導入口105を開口する。これにより、第1通路101には外気導入口104より外気が取り入れられ、第2通路102には、第2内気導入口105より内気が取り入れられる。
【0005】
また、第1通路101および第2通路102の両方に外気を取り入れる場合は、第1内外気切換ドア106にて第1内気導入口103を閉塞するとともに、外気導入口104を開口する。さらに、第2内外気切換ドア107にて連通路108を開口するとともに、第2内気導入口105を閉じる。これにより、外気導入口104からの外気は、図中矢印Aで示すように第1のファン110に吸い込まれるとともに、図中矢印Bで示すように連通路108を通じて第2のファン111にも吸い込まれる。
【0006】
また、第1通路101および第2通路102の両方に内気を取り入れる場合は、第1内外気切換ドア106にて第1内気導入口103を開口するとともに、外気導入口104を閉塞する。さらに、第2内外気切換ドア107にて連通路108を閉塞するとともに、第2内気導入口105を開口する。これにより、第1内気導入口102からの内気が第1のファン110に吸い込まれるとともに、第2内気導入口105からの内気が第2のファン111にも吸い込まれる。
【0007】
このように、第1、第2のファン110、111およひ駆動用モータ10からなる送風機は、回転軸の軸方向両側から空気を吸込み、送風する両吸込式送風機として作用することになる。
本発明者らはこの種の両吸込式送風機として、図1に示すものを具体的に試作して検討してみた。図1において、11は駆動用モータ10のロータ(回転子)で、回転軸12が一体に設けられている。この回転軸12の一端部には断面D字状等の回り止め形状を持つ回り止め部12aが形成されている。この回り止め部12aに上記した第1、第2のファン110、111が一体に連結されるようになっている。
【0008】
13はモータ10のステータ(固定磁極部)であり、14は樹脂製のモータ保持部材であり、このモータ保持部材14は大別して円筒状のモータ保持部14aと、リング状の取付ステー部14bとからなる。モータ保持部14aはモータ10のステータ13部分を収容するとともにこのステータ13部分とネジ等の締結手段にて一体に連結されている。
【0009】
また、リング状の取付ステー部14bは、モータ保持部14aの外周部から等間隔で放射状に延びる3本の連結部14cにてモータ保持部14aと一体に連結されている。ここで、モータ保持部14aと取付ステー部14bと3本の連結部14cは樹脂にて一体成形できる。リング状の取付ステー部14bは、図6に示すファンケーシング109の底面部にネジ等の締結手段にて固定される。
【0010】
このモータ保持部材14において、モータ保持部14aの外周部とリング状の取付ステー部14bの内周部との間には3本の連結部14cにて区画された3つの空隙部14dが形成されるので、この空隙部14dを通過して空気が図1(b)の矢印Cのように流れる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記空隙部14dによる吸込面積確保(吸込抵抗の低減)のために、取付ステー部14bは比較的断面積の小さいリング状に形成する必要があり、一方、取付ステー部14bには、モータ保持および車両搭載時の振動に耐えるための強度が要求される。そのため、取付ステー部14bに断面係数を大きくする補強リブを形成することにより、取付ステー部14bの強度アップを図ることが考えられる。
【0012】
そこで、本発明者らは、取付ステー部14bに図2に示すように空気流れCに向かって凹凸形状をなす補強リブ14eを形成して、実験検討してみた。その結果、この試作品では、補強リブ14e付近において補強リブ14eの凹凸形状のために空気流れが乱されて、送風騒音増加の原因となることが判明した。
本発明は上記点に鑑みてなされたもので、モータ保持の必要強度の確保と送風騒音の低減とを両立させることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、モータ保持部材(14)のモータ保持部(14a)の外周部とリング状の取付ステー部(14b)の内周部との間に複数の空隙部(14d)を形成し、この空隙部(14d)を通して送風用ファン(110、111)に空気が吸い込まれるようにした両吸込式送風機において、
取付ステー部(14b)において、空隙部(14d)を通して流れる空気流れ(C)と反対側の面に凹凸形状を持つ補強用リブ(14f)を形成し、取付ステー部(14b)において、空気流れ(C)に面する表側面(14g)をこの空気流れ(C)に沿った円弧状の断面形状としたことを特徴としている。
【0014】
これによると、補強用リブ(14f)の凹凸形状による断面係数の増加により取付ステー部(14b)の必要強度を確保すると同時に、取付ステー部(14b)の空気流れ表側の面(14g)を空気流れに沿った円弧状の断面形状(ベルマウス形状)とすることにより、取付ステー部(14b)の付近を空気が乱れを生じることなく円滑に流れる。そのため、送風騒音を軽減でき、送風機使用空間の静粛化に貢献できる。
【0015】
特に、請求項2記載の発明では、請求項1に記載の両吸込式送風機を備える車両用空調装置であって、空気通路として2つに区画形成された第1通路(100)と第2通路(101)を備え、この第1通路(100)と第2通路(101)を通して外気と内気を区分して送風可能になっており、
送風用ファン(110、111)は、第1通路(100)に配置された第1ファン(110)と、第2通路(111)に配置された第2ファン(111)とを有し、これら第1、第2ファン(110、111)は、共に回転軸(12)に連結されてモータ(10)にて一体的に回転するようになっており、
第2ファン(111)はモータ保持部材(14)の空隙部(14d)を通して内気を第2通路(101)に吸い込むように構成されていることを特徴としている。
【0016】
このような車両用空調装置では、モータ保持部材(14)の空隙部(14d)が比較的短距離で車室内に連通する配置レイアウトになっているので、請求項1に記載の両吸込式送風機の使用により、車室内へ伝播する送風騒音を低減して、車室内の静粛化を効果的に達成できる。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下本発明を図に示す実施形態について説明すると、本実施形態における両吸込式送風機の全体構造は図1と同じでよいので、説明は省略する。図3は図1のB−B断面図であり、本実施形態ではモータ保持部材14のリング状の取付ステー部14bにおいて、空隙部14dを通して流れる空気流れCと反対側の面(裏側の面)に凹凸形状を持つ補強用リブ14fを形成している。そして、取付ステー部14bにおいて、空隙部14dを通して流れる空気の流れCに面する表側面14gをこの空気流れCに沿った滑らかな円弧状の断面形状(ベルマウス形状)としている。
【0018】
ここで、補強用リブ14fおよび断面円弧状の表側面14gは、取付ステー部14bのリング形状の円周方向の全周にわたって形成されている。従って、補強用リブ14fは同心状に配置された複数の円形凹凸形状からなる。
上記構成によると、前述の図6の車両用空調装置の内外気吸込ユニット100において、モータ10に通電され、回転軸12が回転すると、送風用ファン110、111が一体的に回転駆動され、送風用ファン111の作動により空隙部14dを通して空気(内気または外気)が送風用ファン111に吸い込まれる。その際、取付ステー部14bの表側面14gを空気流れCに沿った円弧状の断面形状(ベルマウス形状)としているから、取付ステー部14bの内周側を空気が流れるとき、表側面14gの滑らかな形状に空気が案内されて、取付ステー部14bの付近を空気が円滑に流れる。そのため、空気流れの乱れによる送風騒音を低減でき、静粛化を図ることができる。
【0019】
しかも、補強用リブ14fの凹凸形状による断面係数の増加により取付ステー部14bの必要強度を確保することができるので、送風騒音の静粛化と必要強度の確保とを両立できる。
次に、図4は上記の両吸込式送風機を用いた車両用空調装置における内外気吸込ユニット100の具体的構造を例示するもので、図4は右ハンドル車用空調装置の内外気吸込ユニット100を示している。
【0020】
内外気吸込ユニット100は車両用空調装置の空気上流端部を構成するものであって、車室112内のうち車両前方側の意匠面をなすインストルメントパネル113の車両前方側で、かつ、エンジンルーム114と車室112内とを区画する鉄板製の仕切り壁115の車両後方側に内外気吸込ユニット100は配置されている。
【0021】
内外気吸込ユニット100は、空気流路をなすケース部材116を有しており、そして、このケース部材116の下側に配置されるファンケーシング109の内部は水平方向に延びる仕切り板117にて上下方向に第1、第2の2つの通路101、102に仕切られている。モータ10の回転軸12は上下方向に向くように配置され、モータ保持部材14のリング状の取付ステー部14bは水平方向に配置され、取付ステー部14b内周の空隙部14dを空気は下方から上方へ向かって流れる。
【0022】
なお、第1、第2通路101、102の下流側には図示しない空調ユニットが接続され、この空調ユニットを通過して送風空気が車室内へ吹き出すようになっている。この空調ユニットには周知のごとく、空調風と熱交換する冷房用蒸発器、ヒータコア等の熱交換器、温度調整機構、吹出モード切り換え機構等が内蔵されている。
【0023】
図5は本実施形態による図3の取付ステー部14bを備えた両吸込式送風機と、図2の比較品との送風騒音を比較して示すもので、縦軸は比騒音(dB)であり、横軸は周波数である。図5の▲1▼は本実施形態の実験結果のデータであり、▲2▼は比較品の実験結果のデータである。▲1▼と▲2▼の比較から分かるように、本実施形態によると、比騒音のピークを1dB程度引き下げることができる。なお、図5の実験結果は、JIS−B−8330に準拠した実験方法により測定したものである。
【0024】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態では、本発明を車両用空調装置に適用した場合について説明したが、本発明は車両用空調装置以外の他の用途にも送風手段として広く適用できることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明を適用する両吸込式送風機の正面図、(b)は同送風機の側面図で、送風用ファンを取り外した状態を示す。
【図2】本発明者による試作品(比較例)の送風機における取付ステー部の断面図で、図1(a)のB−B断面を示す。
【図3】本発明の一実施形態の送風機における取付ステー部の断面図で、図1(a)のB−B断面を示す。
【図4】本発明による送風機を備えた車両用空調装置の内外気吸込ユニットの車両搭載状態を示す断面図である。
【図5】送風騒音の実験データを示すグラフである。
【図6】従来の車両用空調装置の内外気吸込ユニットを示す概略断面図である。
【符号の説明】
10…モータ、12…回転軸、14…モータ保持部材、
14a…モータ保持部、14b…取付ステー部、14c…連結部、
14d…空隙部、14e、14f…補強用リブ、14g…表側面。
Claims (2)
- 軸方向の両側から空気を吸込み、送風する送風用ファン(110、111)と、
この送風用ファン(110、111)を内蔵するファンケーシング(109)と、
前記送風用ファン(110、111)が連結される回転軸(12)を有するモータ(10)と、
このモータ(10)を前記ファンケーシング(109)に支持固定するモータ保持部材(14)とを備え、
このモータ保持部材(14)には、前記モータ(10)を保持するモータ保持部(14a)と、このモータ保持部(14a)の外周側に連結部(14c)を介して一体に連結されたリング状の取付ステー部(14b)とを設け、
前記モータ保持部(14a)の外周部と前記リング状の取付ステー部(14b)の内周部との間には前記連結部(14c)にて区画された複数の空隙部(14d)を形成し、この空隙部(14d)を通して前記送風用ファン(110、111)に空気が吸い込まれるようにし、
さらに、前記取付ステー部(14b)において、前記空隙部(14d)を通して流れる空気流れ(C)と反対側の面に凹凸形状を持つ補強用リブ(14f)を形成し、
前記取付ステー部(14b)において、前記空気流れ(C)に面する表側面(14g)をこの空気流れ(C)に沿った円弧状の断面形状としたことを特徴とする両吸込式送風機。 - 請求項1に記載の両吸込式送風機を備える車両用空調装置であって、空気通路として2つに区画形成された第1通路(101)と第2通路(102)を備え、この第1通路(101)と第2通路(102)を通して外気と内気を区分して送風可能になっており、
前記送風用ファン(110、111)は、前記第1通路(101)に配置された第1ファン(110)と、前記第2通路(102)に配置された第2ファン(111)とを有し、これら第1、第2ファン(110、111)は、共に前記回転軸(12)に連結されて前記モータ(10)にて一体的に回転するようになっており、
前記第2ファン(111)は前記モータ保持部材(14)の前記空隙部(14d)を通して前記内気を前記第2通路(102)に吸い込むように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
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