JP3674919B2 - 電動パワーステアリング装置とその制御方法 - Google Patents

電動パワーステアリング装置とその制御方法 Download PDF

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  • Steering Control In Accordance With Driving Conditions (AREA)
  • Control Of Ac Motors In General (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電動パワーステアリング装置とその制御方法に関し、特に、乗用自動車等の車両のステアリング装置でモータの回転力をステアリング系に付与して運転者の操舵力の負担を軽減し操舵フィーリングを高めた電動パワーステアリング装置とその制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電動パワーステアリング装置は、自動車を運転中、運転者がステアリングホイール(操舵ハンドル)を操作するとき、モータを連動させて操舵力を補助する支援装置である。電動パワーステアリング装置では、運転者のハンドル操舵によりステアリング軸に生じる操舵トルクを検出する操舵トルク検出部からの操舵トルク信号、および、車速を検出する車速検出部からの車速信号を利用し、モータ制御部の制御動作に基づいて補助操舵力を出力する支援用のモータを駆動制御し、運転者の操舵力を軽減している。モータ制御部の制御動作では、上記の操舵トルク信号と車速信号に基づきモータに通電するモータ電流の目標電流値を設定し、この目標電流値に係る信号(目標電流信号)と、モータに実際に流れるモータ電流を検出するモータ電流検出部からフィードバックされるモータ電流信号との差を求め、この偏差信号に対して比例・積分の補償処理(PI制御)を行い、モータを駆動制御する信号を発生させている。
【0003】
上記電動パワーステアリング装置で、そのモータとしてブラシレスモータを用いた装置は知られている。ブラシレスモータを用いた電動パワーステアリング装置は、ブラシとコミテータの間の電圧降下によるモータ出力の低下や変動がないため、安定した操舵補助力を得られる。またモータの慣性モーメントが、ブラシ付きモータに比較して小さいため、高速直進時の操舵ハンドルの切り返し時に良好な操舵フィーリングを得られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ブラシレスモータを用いた電動パワーステアリング装置では、モータの回転角に応じてモータ電流の通電量を制御することが必要となるため、フィードバック制御用検出部として、モータ電流を検出するモータ電流検出部に加えて、モータ回転角(電気角)を検出するモータ回転角検出部を設け、これらの出力信号をモータ制御部へフィードバックさせる。モータ制御部では、モータ電流とモータ回転角を考慮に入れてブラシレスモータをPWM駆動するためのモータ制御信号を生成する。ここでモータ回転角すなわち「電気角」とは、ロータに設けられたマグネットとその近傍に配置される磁気検出素子とによって、マグネットの位置に基づいて得られるロータの角度である。ロータの端部には、例えば、4個のマグネット(一対のN極とS極から成る)が円周方向に配列されている。ロータの端部の所定箇所の円周方向には、8個のN極とS極が交互に等間隔で配置されている。ロータが回転すると、N極とS極による磁気が交互に磁気検出素子に作用しする。上記の構成では、ロータの1回転(機械角360°)で4周期分の電気角が生じる。ロータの1/4回転が1周期分の電気角360°に対応している。ロータの回転位置は電気角によって求められ、この電気角を参照してブラシレスモータに供給されるモータ電流の位相が制御される。
【0005】
ブラシレスモータを用いた電動パワーステアリング装置でのモータ制御部によるフィードバック制御に基づくモータ制御プロセスは、大きく分けると、(1)電気角を検出して読み込む、(2)モータ電流を検出して3相2相変換(3相−dq)を行う、(3)PI制御を行う、(4)2相3相変換(dq−3相)を行う、という4つのステップに分けられる。さらに、これらの4つのステップは、モータ電流のフィードバック制御に係る部分(ステップ(2),(3))と、電気角を利用してモータ制御信号を生成する制御に係る部分(ステップ(1),(4))とに分けることができる。モータ制御部はマイクロコンピュータで構成されるので、上記の4つのステップはソフトウェア構成に基づいて実現される。
【0006】
モータ制御部に使用されるマイクロコンピュータ(CPU)が動作速度の速い高性能のものであるならば、たとえモータが高速回転状態になったとしても、CPUの動作性能上、上記の4つのステップを常に行っても問題は生じない。しかしながら、製作コストの観点から使用されるマイクロコンピュータが比較的に動作速度の遅い性能を有する場合には、モータが高速回転状態になると、3相正弦波が崩れ、制御性能が悪化するという問題が起きる。
【0007】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、ブラシレスモータを用いた電動パワーステアリング装置においてモータ制御部に動作速度の遅いマイクロコンピュータを使用したとしても制御性能の悪化を防止する電動パワーステアリング装置とその制御方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段および作用】
本発明に係る電動パワーステアリング装置とその制御方法は、上記目的を達成するために、次の通り構成される。
【0009】
本発明に係る電動パワーステアリング装置(請求項1に対応):この電動パワーステアリング装置では、操舵トルクを補助するモータとしてブラシレスモータを備えている。ブラシレスモータは、少なくとも3相のモータ電流でPWM駆動され、ステアリング系に操舵トルクを与える。電動パワーステアリング装置は、さらに、ステアリングホイールの操作に応じた操舵トルクを検出し操舵トルク信号を出力する操舵トルク検出部と、少なくとも操舵トルク信号に基づいて決まる目標電流を設定する目標電流設定部と、ブラシレスモータへ供給される上記モータ電流を検出してモータ電流信号を出力するモータ電流検出部と、ブラシレスモータの電気角信号を検出する電気角検出部(モータ回転角検出部)と、目標電流とモータ電流の偏差信号を演算する偏差演算部と、ブラシレスモータの動作を制御するモータ制御部とを備えている。モータ制御部は、モータ電流検出部から出力されるモータ電流信号を読み込み、3相−2相変換を行い、読み込んだモータ電流信号を用いて偏差演算部で偏差信号を演算し、偏差信号をPI制御する第1制御要素(モータ電流信号のフィードバックによるPI制御)と、電気角検出部から出力される電気角信号を読み込み、読み込んだ電気角信号を用いて2相−3相変換を行い、モータ制御信号を生成し、このモータ制御信号によってブラシレスモータを駆動するモータ電流を生成する第2制御要素(電気角に基づくモータの駆動制御)を有し、かつ第1制御要素による制御の実行周期を第2制御要素による制御の実行周期よりも長くしている。
【0010】
本発明に係る電動パワーステアリング装置の制御方法(請求項2に対応):この制御方法は、ステアリングホイールの操作に応じた操舵トルクを検出し、操舵トルクに応じて決まる目標電流を設定し、この目標電流に対してブラシレスモータへ供給されるモータ電流を検出しフィードバックしてモータ制御信号を生成し、このモータ制御信号を利用してブラシレスモータを少なくとも3相のモータ電流でPWM駆動する方法であり、ブラシレスモータへ供給されるモータ電流を検出してモータ電流信号を出力するモータ電流検出部と、ブラシレスモータの電気角信号を検出する電気角検出部と、目標電流とモータ電流の偏差信号を演算する偏差演算部を備える電動パワーステアリング装置に適用される制御方法である。この制御方法は、電気角検出部からの電気角信号を読み込む第1ステップと、モータ電流検出部からのモータ電流信号を読み込み、3相−2相変換を行う第2ステップと、読み込んだモータ電流信号を用いて偏差演算部で偏差信号を演算し、偏差信号をPI制御する第3ステップと、読み込んだ電気角信号を用いて2相−3相変換を行い、モータ制御信号を生成し、モータ電流を生成する第4ステップとを有し、第1ステップから第4ステップまでの制御プロセスをモータ制御に問題が起きない程度の比較的に長い周期で実行し、その合間の期間では第1ステップと前記第4ステップのみを繰返して実行する方法である。
【0011】
上記の電動パワーステアリング装置またはその制御方法では、モータ制御部によるモータ電流信号のフィードバックによるPI制御(第1制御要素、または第2ステップおよび第3ステップ)と、電気角に基づくモータの駆動制御(第2制御要素、または第1ステップおよび第4ステップ)について、前者の処理を適当に省略することにより、モータ制御部を構成するマイクロコンピュータでの電流フィードバック制御部分の処理負担を軽減し、高回転時にブラシレスモータに供給される正弦波状の3相モータ電流の崩れを防止することが可能となる。電動パワーステアリング装置の制御全体において、マイクロコンピュータにとって処理負担が重い電流フィードバック制御部分の周期を実質的に延長することによって、負担を軽減する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
実施形態で説明される構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成要素の組成(材質)については例示にすぎない。従って本発明は、以下に説明される実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0014】
図1を参照して本発明に係る電動パワーステアリング装置の全体的構成を説明する。電動パワーステアリング装置10は例えば乗用車両に装備される。電動パワーステアリング装置10は、ステアリングホイール11に連結されるステアリング軸12等に対して補助用の操舵トルクを与えるように構成されている。ステアリング軸12の上端はステアリングホイール11に連結され、下端にはピニオンギヤ13が取り付けられている。ピニオンギヤ13に対して、これに噛み合うラックギヤ14aを設けたラック軸14が配置されている。ピニオンギヤ13とラックギヤ14aによってラック・ピニオン機構15が形成される。ラック軸14の両端にはタイロッド16が設けられ、各タイロッド16の外側端には前輪17が取り付けられる。上記ステアリング軸12に対し動力伝達機構18を介してブラスレスモータ19が設けられている。ブラシレスモータ19は、操舵トルクを補助する回転力(トルク)を出力し、この回転力を、動力伝達機構18を経由して、ステアリング軸12に与える。またステアリング軸12には操舵トルク検出部20が設けられている。操舵トルク検出部20は、運転者がステアリングホイール11を操作することによって生じる操舵トルクをステアリング軸12に加えたとき、ステアリング軸12に加わる当該操舵トルクを検出する。また21は車両の車速を検出する車速検出部であり、22はコンピュータ(マイクロコンピュータ等)で構成される制御装置である。制御装置22は、操舵トルク検出部20から出力される操舵トルク信号Tと車速検出部21から出力される車速信号Vを取り入れ、操舵トルクに係る情報と車速に係る情報に基づいて、ブラシレスモータ19の回転動作を制御する駆動制御信号SG1を出力する。またブラシモータ19には、レゾルバ等によって構成されるモータ回転角検出部23が付設されている。モータ回転角検出部23の回転角(電気角)に係る信号SG2は制御装置22に入力されている。上記のラック・ピニオン機構15等は図1中で図示しないギヤボックス24に収納されている。
【0015】
上記において電動パワーステアリング装置10は、通常のステアリング系の装置構成に対し、操舵トルク検出部20、車速検出部21、制御装置22、ブラシレスモータ19、動力伝達機構18を付加することによって構成されている。
【0016】
上記構成において、運転者がステアリングホイール11を操作して自動車の走行運転中に走行方向の操舵を行うとき、ステアリング軸12に加えられた操舵トルクに基づく回転力はラック・ピニオン機構15を介してラック軸14の軸方向の直線運動に変換され、さらにタイロッド16を介して前輪17の走行方向を変化させようとする。このときにおいて、同時に、ステアリング軸12に付設された操舵トルク検出部20は、ステアリングホイール11での運転者による操舵に応じた操舵トルクを検出して電気的な操舵トルク信号Tに変換し、この操舵トルク信号Tを制御装置22へ出力する。また車速検出部21は、車両の車速を検出して車速信号Vに変換し、この車速信号Vを制御装置22へ出力する。制御装置22は、操舵トルク信号Tおよび車速信号Vに基づいてブラシレスモータ19を駆動するためのモータ電流(Iu,Iv,Iw)を発生する。ブラシレスモータ19は3相ブラシレスモータであり、そのモータ電流はU相とV相とW相から成る3相電流Iu,Iv,Iwである。上記の駆動制御信号SG1は3相であるモータ電流Iu,Iv,Iwである。このようなモータ電流によって駆動されるブラシレスモータ19は、動力伝達機構18を介して補助の操舵トルクをステアリング軸12に作用させる。以上のごとくブラシレスモータ19を駆動することにより、ステアリングホイール11に加えられる運転者による操舵力が軽減される。
【0017】
次に図2を参照して制御装置22の構成を説明する。図2は、制御装置22の内部構成であって3相のブラシレスモータ19のトルクを制御するための回路構成を示す。
【0018】
制御装置22の内部には、目標電流設定部31と、モータ制御部32と、モータ電流に係る検出信号のフィードバック部33と、モータ回転角(または電気角という)を検出するモータ回転角検出部23とが設けられている。本実施形態に係る電動パワーステアリング装置10では、補助操舵トルクを出力するモータとして、前述の通り、3相ブラシレスモータ19を用いている。このブラシレスモータ19では、ブラシレスモータ19の回転子(回転軸)の電気角に応じてモータ電流の通電量を制御することが必要となるので、3相であるモータ電流Iu,Iv,Iwのうちの例えば2相にモータ電流検出部35,36を設けてモータ電流の通電量を検出すると共に、上記のモータ回転角検出部23を設けて電気角を検出している。ブラシレスモータ19は、制御装置22の内部に設けられた上記の目標電流設定部31とモータ制御部32に基づいて、かつモータ回転角検出部23と2つのモータ電流検出部35,36のそれぞれから出力される検出信号を利用することによって、PWM駆動される。
【0019】
ブラシレスモータ19のモータ回転角検出部23は、ブラシレスモータ19に付設されたレゾルバ23cとRD(Resolver-Digital)変換部23dから構成されている。RD変換部23dは励磁電流をレゾルバ23cへ送り、レゾルバ23cからの出力信号はRD変換部23dへ送られる。RD変換部23dは、レゾルバ23cからの出力信号に基づいてブラシレスモータ19の回転子の回転位置に係る電気角信号(θ)を取り出して出力する。
【0020】
制御装置22において、操舵トルク検出部20から出力される操舵トルク信号Tと車速検出部21から出力される車速信号Vは目標電流設定部31に入力されている。目標電流設定部31はトルク電流指令部31aと界磁電流指令部31bを備える。目標電流設定部31では、操舵トルク信号Tと車速信号Vに基づいて、トルク電流(q軸電流)指令部31aと界磁電流(d軸電流)指令部31bのそれぞれからブラシレスモータ19のq軸目標電流(Iq*)とd軸目標電流(Id*)が設定され、出力される。
【0021】
本実施形態によれば、モータ制御部32による3相ブラシレスモータ19のトルク制御は、高速かつ正確なトルク応答を得るため、ベクトル制御に基づいている。ここでベクトル制御について説明する。3相ブラシレスモータ19のトルクは、3相であるモータ電流(Iu,Iv,Iw)の大きさ(トルク)と位相によって決定される。ベクトル制御によれば、ブラシレスモータ19の固定子巻線に供給されるモータ電流を、ブラシレスモータ19の内部で確立された主磁束方向に磁束を作る電流成分(磁束電流)と、これに対して位相的に90°進んだ、トルクを直接制御する電流成分(トルク電流)とに分けて、独立に制御する。ベクトル制御でトルク制御されるブラシレスモータ19ではその内部でdq軸座標系が定義される。dq軸座標系は、回転軸と回転子から成る部分の横断面で中心点から磁石のN極に向かう主磁束方向をd軸(磁束軸)とし、このd軸に対して位相的に90°進む方向をq軸(トルク軸)として定義される。上記の磁束電流はd軸方向に磁界を作る電流成分すなわちd軸電流であり、上記のトルク電流はq軸方向に磁界を作る電流成分すなわちq軸電流として定義される。d軸電流(Id)とq軸電流(Iq)は、3相であるモータ電流(U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iw)との間で、主磁束の固定子に対する回転角度を用いてよく知られた所定変換式によって関係づけられている。d軸電流とq軸電流はdq軸座標系上の2軸直流電流である。従って上記ベクトル制御ではブラシレスモータ19のモータ電流である3相の瞬時電流Iu,Iv,Iwをdq軸座標系上の2軸直流電流Id,Iqに変換し、モータ制御部32では直流電流であるd軸電流Idとq軸電流Iqの状態で制御処理が行われる。
【0022】
目標電流設定部31から出力された上記のq軸目標電流Iq*とd軸目標電流Id*は、ブラシレスモータ19の供給されるモータ電流Iu,Iv,Iwの目標値を与えるものである。q軸目標電流Iq*とd軸目標電流Id*はモータ制御部32に入力される。モータ制御部32で、q軸目標電流Iq*は偏差演算部41でフィードバック電流信号(モータ電流に係るq軸検出電流信号)Iqactが減算されて偏差信号が算出され、偏差信号はPI制御部42に入力される。PI制御部42は、偏差信号にPI補償処理を施し、q軸目標電流に追従するq軸目標電圧Vqを出力する。d軸目標電流Id*は偏差演算部43でフィードバック電流信号(モータ電流に係るd軸検出電流信号)Idactが減算されて偏差信号が算出され、偏差信号はPI制御部44に入力される。PI制御部44は、偏差信号にPI補償処理を施し、d軸目標電流に追従するd軸目標電圧Vdを出力する。q軸およびd軸の目標電圧Vq,Vdは、それぞれ、dq−3相変換部45に出力される。
【0023】
なお、PI制御部42,44とdq−3相変換部45の間には非干渉化制御部などが設けられ、非干渉化制御補正が行われるが、この実施形態では説明の便宜上図示が省略されている。
【0024】
dq−3相変換部(直流・交流変換部)45は、d軸およびq軸の補正目標電圧Vd,Vqを下記の(数1)に示した変換式に基づく変換処理によって、かつRD変換部23Dから与えられる電気角信号θを用いて、3相目標電圧Vu,Vv,Vwに変換して出力する。計算の実際では(数1)で明らかなように、2相の目標電圧Vu,Vwを算出し、その後で目標電圧Vu,Vwを用いて目標電圧Vvを算出している。これらの3相目標電圧Vu,Vv,Vwはモータ駆動部46に入力される。
【0025】
【数1】
Figure 0003674919
【0026】
モータ駆動部46はPWM電圧発生部47とFETスイッチング回路(インバータ回路)48を含んで構成されている。PWM電圧発生部47は、3相目標電圧Vu,Vv,Vwに対応したPWM制御の電圧信号UH,UL,VH,VL,WH,WLを生成してFETスイッチング回路48に対して出力する。FETスイッチング回路48は、PWM制御電圧信号に対応してFETをスイッチングすることにより3相のモータ電流Iu,Iv,Iwが流れるようにする。
【0027】
3相のモータ電流の伝送路のうちの2つの伝送路には上記のごとくモータ電流検出部35,36が設けられている。モータ電流検出部35,36は、ブラシレスモータ19に対して供給される3相のモータ電流Iu,Iv,Iwのうちの2つのモータ電流Iu,Iwを検出してフィードバック部33の相電流A/D変換部49に供給する。相電流A/D変換部49はアナログ値のモータ電流Iu,Iwをディジタル値に変換する。ディジタル値にされたモータ電流Iu,Iwは3相−dq変換部(交流・直流変換部)50に入力される。3相−dq変換部50では、モータ電流Iu,Iwに基づいて残りのモータ電流Ivが算出され、下記の(数2)に示した変換式とRD変換部23dから与えられる電気角信号θとを用いて、2相のd軸直流電流Idactとq軸直流電流Iqactに変換する。d軸とq軸の直流電流Idact,Iqactは、それぞれ、前述したモータ電流に係るd軸検出電流信号とq軸検出電流信号のことである。
【0028】
【数2】
Figure 0003674919
【0029】
3相−dq変換部50から出力されたd軸検出電流信号Idactはフィードバック伝送路を経由して偏差演算部43にフィードバックされる。3相−dq変換部50から出力されたq軸検出電流信号Iqactは、フィードバック伝送路を経由して偏差演算部41にフィードバックされる。
【0030】
次に、上記の構成を有する制御装置22において、ブラシレスモータ19のトルクを制御するモータ制御部32の制御機能について説明する。
【0031】
前述の通り制御装置22はコンピュータで構成され、モータ制御部32の主要部(前半部分)はソフト的構成で実現される。すなわち、電動パワーステアリング装置の制御全体は、制御装置22によるソフト的構成を利用して実現される。ここでモータ制御部32の主要な制御機能を制御工程(制御ステップ)として大きく分けると、次の通りである。
【0032】
制御工程(1):
モータ回転角検出部23による電気角信号θの読込み処理
制御工程(2):
モータ電流検出部35,36および相電流A/D変換部49によるモータ電流の検出、および3相−dq変換部50による3相−2相変換処理
制御工程(3):
偏差演算部41,43による偏差演算処理、およびPI制御部42,44による制御処理(フィードバック制御)
制御工程(4):
電気角信号θを利用するdq−3相変換部45による2相−3相変換処理
【0033】
図2に示したモータ制御部32においては、上記の各制御工程(1)〜(4)のそれぞれを実行する箇所に対応させて数字(1),(2),(3),(4)が表記されている。本実施形態によるモータ制御部32では上記の制御工程(1)〜(4)を次のように実行する。
【0034】
図3にモータ制御部32で実行される2種類の基本的な制御プロセス(制御方法)(A),(B)を示す。制御プロセス(A)は、通常の制御プロセスであり、上記の4つの制御工程(1)〜(4)のすべてが(1)から(4)の順序で実行される制御プロセスである。制御プロセス(B)は、簡略化した制御プロセスであり、上記の4つの制御工程(1)〜(4)のうち(2)と(3)が省略され、(1)と(4)のみが図示順序で実効される制御プロセスである。本来的には制御プロセス(A)が繰返し実行されることが望ましいが、コンピュータの性能と負担を考慮して、本実施形態では簡略した制御プロセス(B)を用意し、制御プロセス(A)と制御プロセス(B)を適宜に組み合せて全体の制御を行うように構成している。
【0035】
図3に示した制御プロセス(A),(B)では、横軸は時間軸を示し、矢印のごとく左から右に向かってプロセスは進行している。図3では、制御工程(1)〜(4)の各々の工程に要する時間は同じであるように示されているが、実際には制御工程ごとで時間は異なる。通常、制御工程(2),(3)はモータ制御部32にとって処理負担は重くなっており、処理時間は長くなっている。
【0036】
そこでモータ制御部32による制御方法では、一例として、図4に示すごとく制御プロセス(A)を実行する間に3回の制御プロセス(B)を実行するようにしている。すなわち、常に通常の制御プロセス(A)を実行せず、通常の制御プロセス(A)の実行回数を少なくし、簡略した制御プロセス(B)の実行回数を多くするように全体の制御を組み立てている。この制御方法によれば、制御工程(2),(3)を適宜に間引くことにより、制御工程(2)(モータ電流の検出と3相2相変換処理)と制御工程(3)(フィードバックによるPI制御処理)の実行周期T1を、実質的に延長化し、制御工程(1),(4)の実行周期よりも長くしている。
【0037】
上記の制御方法をU相のモータ電流の関係で示すと、図5に示すごとくなる。図5において、51は正弦波であるU相モータ電流Iuであり、折れ線52は通常の制御プロセス(A)のみで制御が実行された場合の例であり、折れ線53は簡略した制御プロセス(B)を加えたプロセスで制御された場合の例である。折れ線53の方が、実行周期が小さくなっている分、モータ電流Iuへの追従性が高くなっている。折れ線52は追従性が悪く、正弦波であるモータ電流Iuに対して崩れた形になっている。従って、折れ線52の特性が生じやすくなるように、制御プロセスの(A)と(B)を組み合せ、かつ制御プロセス(A)の実行周期を長くして、電動パワーステアリング装置10の全体制御を行うように制御ソフトが設定される。
【0038】
上記の電動パワーステアリング装置10における制御装置22のモータ制御部32による制御方法では、モータ電流信号のフィードバックによるPI制御と、電気角信号に基づくモータの駆動制御とについて、前者の処理を適当に省略することにより、モータ制御部32におけるモータ電流フィードバック制御部分の処理負担が軽減される。
【0039】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように本発明によれば、電動パワーステアリング装置の制御装置において、モータ電流の検出および3相2相変換処理とフィードバックによるPI制御処理に関する制御の実行周期を延長化したので、モータ電流フィードバック制御部分の処理負担を軽減し、高回転時にブラシレスモータに供給される正弦波状の3相モータ電流の崩れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電動パワーステアリング装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る制御装置内の電気回路構成を示すブロック構成図である。
【図3】制御装置内のモータ制御部で実行される基本的な制御プロセスを説明する図である。
【図4】本発明に係る制御プロセスを説明する図である。
【図5】U相のモータ電流と本発明に係る制御プロセスの関係を説明する図である。
【符号の説明】
10 電動パワーステアリング装置
11 ステアリングホイール
12 ステアリング軸
17 前輪
19 ブラシレスモータ
20 操舵トルク検出部
21 車速検出部
22 制御装置
31 目標電流設定部
32 モータ制御部

Claims (2)

  1. ステアリングホイールの操作に応じた操舵トルクを検出し操舵トルク信号を出力する操舵トルク検出手段と、
    少なくとも3相のモータ電流でPWM駆動され、ステアリング系に操舵トルクを与えるブラシレスモータと、
    少なくとも前記操舵トルク信号に基づいて決まる目標電流を設定する目標電流設定手段と、
    前記ブラシレスモータへ供給される前記モータ電流を検出してモータ電流信号を出力するモータ電流検出手段と、
    前記ブラシレスモータの電気角信号を検出する電気角検出手段と、
    前記目標電流と前記モータ電流の偏差信号を演算する偏差演算手段と、
    前記モータ電流検出手段から出力される前記モータ電流信号を読み込み、3相−2相変換を行い、読み込んだ前記モータ電流信号を用いて前記偏差演算手段で前記偏差信号を演算し、前記偏差信号をPI制御する第1制御要素と、前記電気角検出手段から出力される前記電気角信号を読み込み、読み込んだ前記電気角信号を用いて2相−3相変換を行い、モータ制御信号を生成し、このモータ制御信号によって前記ブラシレスモータを駆動する前記モータ電流を生成する第2制御要素を有し、前記第1制御要素による制御の実行周期を前記第2制御要素による制御の実行周期よりも長くしたモータ制御手段と、
    を備えたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. ステアリングホイールの操作に応じた操舵トルクを検出し、前記操舵トルクに応じて決まる目標電流を設定し、この目標電流に対してブラシレスモータへ供給されるモータ電流を検出しフィードバックしてモータ制御信号を生成し、このモータ制御信号を利用して前記ブラシレスモータを少なくとも3相のモータ電流でPWM駆動する電動パワーステアリング装置であり、
    前記ブラシレスモータへ供給される前記モータ電流を検出してモータ電流信号を出力するモータ電流検出手段と、前記ブラシレスモータの電気角信号を検出する電気角検出手段と、前記目標電流と前記モータ電流の偏差信号を演算する偏差演算手段を備える電動パワーステアリング装置に適用される制御方法であり、
    前記電気角検出手段からの前記電気角信号を読み込む第1ステップと、
    前記モータ電流検出手段からの前記モータ電流信号を読み込み、3相−2相変換を行う第2ステップと、
    読み込んだ前記モータ電流信号を用いて前記偏差演算手段で前記偏差信号を演算し、前記偏差信号をPI制御する第3ステップと、
    読み込んだ前記電気角信号を用いて2相−3相変換を行い、前記モータ制御信号を生成し、前記モータ電流を生成する第4ステップとを有し、
    前記第1ステップから前記第4ステップまでの制御プロセスを所定周期で実行し、その合間の期間では前記第1ステップと前記第4ステップのみを繰返し実行することを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御方法。
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