JP3771509B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動パワーステアリング装置に関し、特に、電流センサのヒステリシス分を補正してモータのフィードバック制御を行う電動パワーステアリング装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電動パワーステアリング装置は、ハンドル操舵トルクを検出する操舵トルク検出部および、車速を検出する車速検出部等の出力する信号に基づき、モータ制御部により、モータを駆動制御し操舵力の軽減を行っている。そのモータにブラシレスモータを用いた電動パワーステアリング装置は知られているところである。
【0003】
ブラシレスモータを用いた電動パワーステアリング装置は、ブラシとコミテータ間の電圧降下によるモータ出力の低下や変動がないため、安定した操舵補助力が得られる。また、モータの慣性モーメントが、ブラシ付きモータと比較して小さいため、高速直進時やハンドルの切り返し時に良好な操舵フィーリングが得られる。
【0004】
しかしながら、モータにブラシレスモータを用いた場合には、ブラシとコミテータに代わり、モータの回転角に応じてモータ電流の通電量を制御することが必要となるため、モータの回転角(電気角)を検出するモータ回転角検出部(電気角検出手段)および、モータ電流検出部(電流検出手段)を設け、モータ回転角検出部およびモータ電流検出部の出力信号に基づいて、ブラシレスモータをPWM駆動制御する。ここで電気角とは、ロータのマグネットの位置から得られる角度であり、ロータの周囲に回転方向に沿ってN極とS極が交互に配列されるように4対のマグネットがある場合には、ロータの機械角90°すなわちロータの1/4回転が電気角360°に対応する。
【0005】
図5は、ブラシレスモータの回転を制御するための従来のモータ制御部を示すブロック構成図である。ブラシレスモータ101には、ブラシレスモータ101の回転角を検出するためのレゾルバ102が取り付けられている。従来のモータ制御部100は、界磁電流指令部103とトルク電流指令部104とを備えた目標電流設定部105と、PI設定部106,107と、dq−3相変換部108と、PWM電圧発生部109と、インバータ回路110と、モータ電流検出部111,112と相電流A/D変換部113と、3相−dq変換部114とRD変換部115を備えている。
【0006】
目標電流設定部105は、界磁電流指令部103とトルク電流指令部104を備え、図示しない操舵トルク検出部からの操舵トルク信号と図示しない車速検出部からの車速信号に基づいて、目標界磁電流Idtgと目標トルク電流Iqtgを計算し出力する。目標界磁電流Idtgと目標トルク電流Iqtgは、ブラシレスモータ101の回転子上の永久磁石が作り出す回転磁束と同期した回転座標系において、永久磁石と同一方向のd軸およびこれに直交したq軸にそれぞれ対応するもので、これらの目標界磁電流Idtgと目標トルク電流Iqtgをそれぞれ「d軸目標電流」および「q軸目標電流」という。
【0007】
d軸目標電流Idtgとq軸目標電流Iqtgは偏差演算部116,117において、d軸目標電流Idtgとq軸目標電流Iqtgからd軸およびq軸の電流検出値Idact,Iqactをそれぞれ減算することにより偏差DId,DIqを計算して、PI設定部106,107に出力する。
【0008】
PI設定部106,107は偏差DId,DIqを用いた演算の実行により、d軸およびq軸の電流検出値Idact,Iqactがd軸目標電流およびq軸目標電流に追従するようにd軸およびq軸の目標電圧Vd,Vqをそれぞれ計算する。d軸およびq軸の目標電圧Vd,Vqは、dq−3相変換部108に出力される。
【0009】
dq−3相変換部108は、d軸およびq軸の目標電圧Vd,Vqを3相目標電圧Vu,Vv,Vwに変換して、3相目標電圧Vu,Vv,VwをPWM電圧発生部109に出力する。
【0010】
PWM電圧発生部109は、3相目標電圧Vu,Vv,Vwに対応したPWM制御電圧信号UH,UL,VH,VL,WH,WLを生成してインバータ回路110に出力する。インバータ回路110は、PWM制御電圧信号UH,UL,VH,VL,WH,WLに対応した3相の交流駆動電流Iu,Iv,Iwを発生し、これらを3相の駆動電流路118,119,120を介してブラシレスモータ101にそれぞれ供給する。3相の交流駆動電流Iu,Iv,IwはそれぞれブラシレスモータをPWM駆動するための正弦波電流である。
【0011】
3相の駆動電流路118,119,120のうちの2つにはモータ電流検出部111,112が設けられ、各モータ電流検出部111,112は、ブラシレスモータ101に対し供給される3相の交流駆動電流Iu,Iv,Iwのうちの2つの交流駆動電流Iu,Iwを検出して相電流A/D変換部113に出力する。この相電流A/D変換部113では、モータ電流検出部111,112で検出された2つの交流駆動電流Iu,Iwに対するアナログ信号を2つの交流駆動電流Iu,Iwに対するデジタル信号Iuad,Iwadに変換して、3相−dq変換部114に出力する。この3相−dq変換部114では、交流駆動電流Iu,Iwに対するデジタル信号Iuad,Iwadに基づいて残りの交流駆動電流Ivに対応するデジタル信号Ivadも計算される。3相−dq変換部114は、これらの3相の交流駆動電流Iu,Iv,Iwに対するデジタル信号Iuad,Ivad,Iwadを2相のd軸およびq軸の電流検出値Idact,Iqactに変換する。
【0012】
レゾルバ102からの信号は、RD(レゾルバデジタル)変換部115に連続的に供給されている。RD変換部115は、ブラシレスモータ101における回転子の固定子に対する角度(モータ回転角または電気角)θを計算して、計算された角度θをdq−3相変換部108と3相−dq変換部114に供給する。上記のレゾルバ102とRD変換部115によってモータ回転角検出部(電気角検出手段)が形成される。
【0013】
図6は、モータ電流検出部111,112に用いられる電流センサの構造を示す模式図である。電流センサ200は、孔201とギャップ202を有するC型形状の磁性体203と、ギャップ202内に設置されたホール素子204とホール素子204からのホール電圧を検出するための電極205,206とその検出されたホール電圧を増幅する増幅器207とホール素子に直流電流を流すための直流電源208から成っている。
【0014】
この電流センサ200を用いて電流路209に流れる電流を測定するためには、次のようにして行われる。電流センサ200は、孔201に電流路209を通すようにして設置される。電流路209に電流が流れると電流路209の周りにその電流に比例した大きさの磁界が発生する。その磁界により、磁性体203は磁化し、それにより、磁性体203のギャップ202に磁束が発生する。その磁束により、ギャップ202内に設置した直流電源208により直流電流を流したホール素子204には電極205と電極206の間にホール電圧が発生する。そのホール電圧を増幅器207により増幅して測定する。このようにして、電流路209に流れる電流を検出するわけである。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、電流センサ200に用いられる磁性体203は、ヒステリシス特性を持っているため、電流センサ200からの出力がヒステリシス特性の影響を受けるという問題点がある。図7は、電流センサ200に用いられる磁性体203の代表的な磁化特性を示す図である。横軸は、磁性体203に加える磁界Hを表し、縦軸は、磁性体203のギャップ202に発生する磁束密度Bを示す。磁性体203が磁化していない状態で磁界Hがゼロのときには、ギャップ202に発生する磁束密度Bはゼロであるが、その状態から磁界Hの大きさを増加していくと曲線aに従って磁束密度Bは増加する。さらに、磁界Hを増加させると磁化が飽和する(点b)。その後、磁界Hの大きさを減少すると曲線cに沿って磁束密度Bは変化し、さらに、磁界Hの大きさを減少させ、逆の方向に磁界Hの大きさを増加すると磁化が飽和し、それに従って、磁束密度も飽和する(点d)。次に、その状態から、正方向に磁界Hを増加すると曲線eに従って磁束密度Bは変化する。その後は、磁界Hの変化に伴って、磁束密度Bは、曲線c、点d、曲線e、点bに沿って変化する。このように、磁界Hの大きさを増加するときと減少するときとでは、ギャップ202に生じする磁束密度Bも異なる変化をする。
【0016】
一方、ギャップ202に設置されたホール素子204は、上記のようにヒステリシス特性を持つ磁性体203から生じる磁束密度Bにより、ホール電圧が発生するため、このホール素子204により検出する検出値も磁性体203のヒステリシス特性の影響を受ける。図8は、電流路209に実際に流れる電流IRに対する電流センサで測定される検出値IMの変化を示したグラフである。グラフは、モータの回転が0rpmと2000rpmのときを示す。0rpmのとき、すなわち、モータが回転していないときは、縦軸との切片の値IMC0と電流IRの最大値IRMとの割合が1.8%であり、2000rpmのときは、縦軸との切片の値IMC2と電流IRの最大値IRMとの割合が4.5%であり、モータの回転数でヒステリシス特性が異なっている。図8においては、モータの回転数での違いを分かりやすくするために、ヒステリシスの大きさを実際より大きく描いてある。
【0017】
このように、電流センサ200の出力にヒステリシス特性が現れてしまうため、ブラシレスモータ101に流れる正確な電流を検出することができず、その検出値をフィードバック制御に用いるため、正確なブラシレスモータの制御ができず、操舵フィーリングを良好なものにすることができないという問題点がある。
【0018】
本発明の目的は、上記問題を解決するため、電流センサの有するヒステリシス特性の影響を取り除き、正確なブラシレスモータの制御を行うことができ、良好な操舵フィーリングが得られる電動パワーステアリング装置を提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段および作用】
本発明に係る電動パワーステアリング装置は、上記の目的を達成するために、次のように構成される。
【0020】
第1の電動パワーステアリング装置(請求項1に対応)は、ブラシレスモータにより操舵力をアシストする電動パワーステアリング装置において、ブラシレスモータに流れる電流を検出する電流検出手段と、ブラシレスモータの電気角を検出する電気角検出手段と、電流検出手段のヒステリシス分を補正信号により補正するヒステリシス補正手段を設け、ヒステリシス補正手段によって電流検出手段のヒステリシス分を補正した信号によりブラシレスモータのフィードバック制御を行い、補正信号は前記ブラシレスモータの回転数が増加するにつれて振幅が増加することで特徴づけられる。
【0021】
第1の電動パワーステアリング装置によれば、ブラシレスモータに流れる電流を検出する電流検出手段と、ブラシレスモータの電気角を検出する電気角検出手段と、電流検出手段のヒステリシス分を補正した信号を出力するヒステリシス補正手段を設け、ヒステリシス補正手段によって電流検出手段の出力信号を電気角検出手段の出力信号を利用して電流検出手段のヒステリシス分を補正した信号によりブラシレスモータのフィードバック制御を行うため、ブラシレスモータに流れる正確な電流をフィードバック制御に用いることができるので、ブラシレスモータの制御を正確に行うことができ、それにより、操舵フィーリングも良好なものにすることができる。
また、補正信号はブラシレスモータの回転数が増加するにつれて振幅が増加するため、ブラシレスモータの種々の回転に応じて電流検出手段の検出電流の補正を正確に行うことができる。
【0022】
第2の電動パワーステアリング装置(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは電流検出手段のヒステリシス分を補正するために用いる補正信号は、ブラシレスモータに流れる電流が電気角に対して正弦波的に変化するときに、電気角に対して余弦波的に変化する信号であることで特徴づけられる。
【0023】
第2の電動パワーステアリング装置によれば、電流検出手段のヒステリシス分を補正するために用いる補正信号は、ブラシレスモータに流れる電流が電気角に対して正弦波的に変化するときに、電気角に対して余弦波的に変化する信号であるため、電流検出手段により検出した検出電流を正確に補正することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は電動パワーステアリング装置10の全体構成を示す。電動パワーステアリング装置10は例えば乗用車両に装備される。電動パワーステアリング装置10は、ステアリングホイール11に連結されるステアリング軸12等に対して補助用の操舵力(操舵トルク)を与えるように構成されている。ステアリング軸12の上端はステアリングホイール11に連結され、下端にはピニオンギヤ13が取り付けられている。ピニオンギヤ13に対して、これに噛み合うラックギヤ14aを設けたラック軸14が配置されている。ピニオンギヤ13とラックギヤ14aによってラック・ピニオン機構15が形成される。ラック軸14の両端にはタイロッド16が設けられ、各タイロッド16の外側端には前輪17が取り付けられる。上記ステアリング軸12に対し動力伝達機構18を介してブラスレスモータ19が設けられている。ブラシレスモータ19は、操舵トルクを補助する回転力(トルク)を出力し、この回転力を、動力伝達機構18を経由して、ステアリング軸12に与える。またステアリング軸12には操舵トルク検出部20が設けられている。操舵トルク検出部20は、運転者がステアリングホイール11を操作することによって生じる操舵トルクをステアリング軸12に加えたとき、ステアリング軸12に加わる当該操舵トルクを検出する。また21は車両の車速を検出する車速検出部であり、22はコンピュータで構成される制御装置である。制御装置22は、操舵トルク検出部20から出力される操舵トルク信号Tと車速検出部21から出力される車速信号Vを取り入れ、操舵トルクに係る情報と車速に係る情報に基づいて、ブラシレスモータ19の回転動作を制御する駆動制御信号SG1を出力する。またブラシモータ19には、レゾルバ等によって構成されるモータ回転角検出部23が付設されている。モータ回転角検出部23の回転角信号SG2は制御装置22にフィードバックされている。上記のラック・ピニオン機構15等は図1中で図示しないギヤボックス24に収納されている。
【0028】
上記において電動パワーステアリング装置10は、通常のステアリング系の装置構成に対し、操舵トルク検出部20、車速検出部21、制御装置22、ブラシレスモータ19、動力伝達機構18を付加することによって構成されている。
【0029】
上記構成において、運転者がステアリングホイール11を操作して自動車の走行運転中に走行方向の操舵を行うとき、ステアリング軸12に加えられた操舵トルクに基づく回転力はラック・ピニオン機構15を介してラック軸14の軸方向の直線運動に変換され、さらにタイロッド16を介して前輪17の走行方向を変化させようとする。このときにおいて、同時に、ステアリング軸12に付設された操舵トルク検出部20は、ステアリングホイール11での運転者による操舵に応じた操舵トルクを検出して電気的な操舵トルク信号Tに変換し、この操舵トルク信号Tを制御装置22へ出力する。また車速検出部21は、車両の車速を検出して車速信号Vに変換し、この車速信号Vを制御装置22へ出力する。制御装置22は、操舵トルク信号Tおよび車速信号Vに基づいてブラシレスモータ19を駆動するためのモータ電流(Iu,Iv,Iw)を発生させる。ブラシレスモータ19は3相ブラシレスモータであり、そのモータ電流はU相とV相とW相から成る3相交流Iu,Iv,Iwである。上記の駆動制御信号SG1は3相交流であるモータ電流Iu,Iv,Iwである。なお、交流とは電気角に対して交流であるとの意味である。かかるモータ電流によって駆動されるブラシレスモータ19は、動力伝達機構18を介して補助操舵力をステアリング軸12に作用させる。以上のごとくブラシレスモータ19を駆動することにより、ステアリングホイール11に加えられる運転者による操舵力が軽減される。
【0030】
図2は、本発明に係る電動パワーステアリング装置で用いられるブラシレスモータの回転を制御するためのモータ制御部22aを示すブロック構成図である。ブラシレスモータ19を制御する本発明に係るモータ制御部22は、図5で示した従来のモータ制御部100におけるものと同様の界磁電流指令部25とトルク電流指令部26を備えた目標電流設定部27と、PI設定部28,29と、dq−3相変換部30と、PWM電圧発生部31と、インバータ回路32と、モータ電流検出部33,34と相電流A/D変換部35と、3相−dq変換部36とRD変換部37に加えて、ヒステリシス補正部38が設けられている。
【0031】
目標電流設定部27は、界磁電流指令部25とトルク電流指令部26を備え、操舵トルク検出部20からの操舵トルク信号Tと車速検出部21からの車速信号Vに基づいて、目標界磁電流Idtgと目標トルク電流Iqtgを計算し出力する。目標界磁電流Idtgと目標トルク電流Iqtgは、ブラシレスモータ19の回転子上の永久磁石が作り出す回転磁束と同期した回転座標系において、永久磁石と同一方向のd軸およびこれに直交したq軸にそれぞれ対応するもので、これらの目標界磁電流Idtgと目標トルク電流Iqtgをそれぞれ「d軸目標電流」および「q軸目標電流」という。
【0032】
d軸目標電流Idtgとq軸目標電流Iqtgは偏差演算部39,40において、d軸目標電流Idtgとq軸目標電流Iqtgからd軸およびq軸の電流検出値Idact,Iqactをそれぞれ減算することにより偏差DId,DIqを計算して、PI設定部28,29に出力する。
【0033】
PI設定部28,29は偏差DId,DIqを用いた演算の実行により、d軸およびq軸の電流検出値Idact,Iqactがd軸目標電流およびq軸目標電流に追従するようにd軸およびq軸の目標電圧Vd,Vqをそれぞれ計算する。d軸およびq軸の目標電圧Vd,Vqは、dq−3相変換部30に出力される。
【0034】
dq−3相変換部30は、d軸およびq軸の目標電圧Vd,Vqを3相目標電圧Vu,Vv,Vwに変換して、3相目標電圧Vu,Vv,VwをPWM電圧発生部31に出力する。
【0035】
PWM電圧発生部31は、3相目標電圧Vu,Vv,Vwに対応したPWM制御電圧信号UH,UL,VH,VL,WH,WLを生成してインバータ回路32に出力する。インバータ回路32は、PWM制御電圧信号UH,UL,VH,VL,WH,WLに対応してFETをスイッチングすることにより3相の交流駆動電流(モータ電流)Iu,Iv,Iwを発生させる。
【0036】
3相の駆動電流路41,42,43のうちの2つにはモータ電流検出部33,34が設けられ、各モータ電流検出部33,34は、ブラシレスモータ19に対し供給される3相の交流駆動電流Iu,Iv,Iwのうちの2つの交流駆動電流Iu,Iwを検出して相電流A/D変換部35に出力する。この相電流A/D変換部35では、モータ電流検出部33,34で検出された2つの交流駆動電流Iu,Iwに対するアナログ信号を2つの駆動電流Iu,Iwに対するデジタル信号Iuad,Iwadに変換して、ヒステリシス補正部38に出力する。
【0037】
ヒステリシス補正部38はモータ電流検出部33,34の出力信号をレゾルバ44とRD変換部37によって形成されるモータ回転角検出部23の出力信号を利用してモータ電流検出部33,34における電流センサのヒステリシス分を補正した信号を出力することによりブラシレスモータのフィードバック制御を行うために設けられた装置である。ヒステリシス補正部38は、入力されたデジタル信号Iuad,Iwadをモータ回転角検出部23からの出力信号に基づいて後に詳細に説明する補正を行い、補正後信号Iu(real),Iw(real)を3相−dq変換部36に出力する。
【0038】
この3相−dq変換部36では、交流駆動電流Iu,Iwに対する補正後信号Iu(real),Iw(real)に基づいて残りの交流駆動電流Ivに対応する補正後信号Iv(real)も計算される。3相−dq変換部36は、これらの3相の交流駆動電流Iu,Iv,Iwに対する補正後信号Iu(real),Iv(real),Iw(real)を2相のd軸およびq軸の電流検出値Idact,Iqactに変換する。なお、Iu,Iwだけではなく、Ivも検出することによりIv(real)を求めることができるのはいうまでもない。
【0039】
レゾルバ44からの信号は、RD(レゾルバデジタル)変換部37に連続的に供給されている。RD変換部37は、ブラシレスモータ19における回転子の固定子に対する角度(電気角)θを計算して、計算された角度(電気角)θをヒステリシス補正部38とdq−3相変換部30と3相−dq変換部36に供給する。
【0040】
次に、本発明において従来のモータ制御部100に新たに加えられたヒステリシス補正部38について説明する。図3は、U相モータ電流の電気角に対する理想的な変化(曲線C1)と、実際の図6で示した電流センサ200を用いたときの電気角に対する電流検出値(曲線C2)と電流センサのヒステリシス特性による電流検出値への影響分(曲線C3)を示したグラフである。
【0041】
モータ電流の電気角に対する理想的な変化(曲線C1)は、360°の電気角を一周期とする正弦波的な変化であり、それに対して、電流センサのヒステリシス特性による電流検出値への影響分は図3の曲線C3で示すように、360°の電気角を一周期とする余弦波的な変化である。また、この電流センサのヒステリシス特性の影響分の余弦波の振幅は、モータの回転数に対して、増大することを実験的に見出した。
【0042】
そこで、測定された電流検出値Iuad,Iwadを電気角θを用いた次の式により、それぞれ補正することにより、実際に流れている電流Iu(real),Iw(real)を求めることができる。
【0043】
【数1】
【0044】
【数2】
【0045】
式(1)、(2)において、Iqは次のように表される。
【0046】
【数3】
【0047】
また、式(1)、(2)において、αは、Nをモータ回転数としたときに次のように表されることが実験的に求められた。
【0048】
【数4】
【0049】
上記の式(1)〜(4)を用いて、ヒステリシス補正部38においては、モータ電流検出部33,34のヒステリシス分を補正するために用いる補正信号として、ブラシレスモータに流れる電流が電気角θに対して正弦波的に変化するときに、式(1)の右辺第2項と式(2)の右辺第2項で示される電気角θに対して余弦波的に変化する信号を用いて電流検出値Iuad,Iwadを補正する。
【0050】
また、式(4)で示すように補正信号はブラシレスモータの回転数Nが増加するにつれて振幅が増加するような信号を用いる。ここで、回転数Nは、RD変換部37から出力される電気角θに基づいて得られる。なお、式(4)は、実験的に求められるものであり、用いる電流センサによって係数は異なってくるものである。
【0051】
図4は、ヒステリシス補正部38での処理フローチャートである。まず、相電流A/D変換部35からデジタル信号Iuad,Iwadが入力され(ステップS10)、RD変換部37から電気角θが入力される(ステップS11)。次に、入力されたデジタル信号Iuad,Iwadと電気角θから式(3)に基づいて電流値Iqを計算する(ステップS12)。また、入力された電気角θに基づいて回転数Nを求める(ステップS13)。求められた回転数Nから式(4)に基づいて係数αを計算する(ステップS14)。入力されたデジタル信号Iuad,Iwadと電気角θと計算された電流値Iqと係数αから式(1)、式(2)に基づいて実際に流れている電流Iu(real),Iw(real)を計算し(ステップS15)、出力する(ステップS16)。モータ制御部22が動作している間、これらのステップを繰り返し実行する。
【0052】
次にこのヒステリシス補正部を加えたモータ制御部の作用について説明する。モータ電流検出部33,34の電流センサにより検出される3相の交流駆動電流Iu,Iwに対するアナログ信号は、相電流A/D変換部において、デジタル信号Iuad,Iwadに変換され、出力される。このときのデジタル信号には、電流センサでのヒステリシス分を含んだ信号となっている。
【0053】
ヒステリシス補正部38において、図4で示したフローチャートに従った処理により、デジタル信号Iuad,Iwadは、RD変換部37から入力されたモータ回転角(電気角)θに基づいて、式(1)、(2)、(3)、(4)に従って、補正され、図3の曲線C1で示した変化をする補正後信号Iu(real)、同様にIw(real)を出力する。それらの信号は、3相−dq変換部36に入力され、2相のd軸およびq軸の電流検出値Idact,Iqactに変換され、フィードバック制御に用いられる。
【0054】
このようにヒステリシス補正部38を設け、検出信号Iuad,Iwadを補正することにより、電流検出手段のヒステリシス分を電気角検出手段の出力信号を利用して補正した信号によりブラシレスモータのフィードバック制御を行うため、ブラシレスモータに流れる正確な電流をフィードバック制御に用いることができるので、ブラシレスモータの制御を正確に行うことができ、それにより、操舵フィーリングも良好なものにすることができる。
【0055】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように本発明によれば、次の効果を奏する。
【0056】
ブラシレスモータに流れる電流を検出する電流検出手段と、ブラシレスモータの電気角を検出する電気角検出手段と、電流検出手段のヒステリシス分を補正した信号を出力するヒステリシス補正手段を設け、ヒステリシス補正手段によって電流検出手段の出力信号を電気角検出手段の出力信号を利用して電流検出手段のヒステリシス分を補正した信号によりブラシレスモータのフィードバック制御を行うため、ブラシレスモータに流れる正確な電流をフィードバック制御に用いることができるので、ブラシレスモータの制御を正確に行うことができ、それにより、操舵フィーリングも良好なものにすることができる。
【0057】
電流検出手段のヒステリシス分を補正するために用いる補正信号は、ブラシレスモータに流れる電流が電気角に対して正弦波的に変化するときに、電気角に対して余弦波的に変化する信号であるため、電流検出手段により検出した検出電流を正確に補正することができる。
【0058】
補正信号はブラシレスモータの回転数が増加するにつれて振幅が増加するため、ブラシレスモータの種々の回転に応じて電流検出手段の検出電流の補正を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電動パワーステアリング装置の全体構成図である。
【図2】本発明に係る電動パワーステアリング装置で用いられるブラシレスモータの回転を制御するためのモータ制御部を示すブロック構成図である。
【図3】モータ電流の電気角に対する理想的な変化と、電流センサを用いたときの電気角に対する電流検出値と電流センサのヒステリシス特性による電流検出値への影響分を示したグラフである。
【図4】ヒステリシス補正部での処理フローチャートである。
【図5】ブラシレスモータの回転を制御するための従来のモータ制御部を示すブロック構成図である。
【図6】モータ電流検出部に用いられる電流センサの構造を示す模式図である。
【図7】電流センサに用いられる磁性体の代表的な磁化特性を示す図である。
【図8】電流路に実際に流れる電流に対する電流センサで測定される電流値の変化を示したグラフである。
【符号の説明】
10 電動パワーステアリング装置
11 ステアリングホイール
12 ステアリング軸
18 動力伝達機構
19 ブラシレスモータ
20 操舵トルク検出部
22 制御装置
22a モータ制御部
23 モータ回転角検出部
25 界磁電流指令部
26 トルク電流指令部
27 目標電流設定部
28,29 PI設定部
30 dq−3相変換部
31 PWM電圧発生部
32 インバータ回路
33,34 モータ電流検出部
35 相電流A/D変換部
36 3相−dq変換部
37 RD変換部
38 ヒステリシス補正部
39,40 偏差演算部
41,42,43 駆動電流路
44 レゾルバ
Claims (2)
- ブラシレスモータにより操舵力をアシストする電動パワーステアリング装置において、
前記ブラシレスモータに流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記ブラシレスモータの電気角を検出する電気角検出手段と、
前記電流検出手段のヒステリシス分を補正信号により補正するヒステリシス補正手段を設け、
前記ヒステリシス補正手段によって前記電流検出手段のヒステリシス分を補正した信号により前記ブラシレスモータのフィードバック制御を行い、
前記補正信号は前記ブラシレスモータの回転数が増加するにつれて振幅が増加することを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 前記電流検出手段のヒステリシス分を補正するために用いる補正信号は、前記ブラシレスモータに流れる電流が電気角に対して正弦波的に変化するときに、電気角に対して余弦波的に変化する信号であることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
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