JP3669696B2 - エンジンのオートテンショナ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クランクシャフトと補機類と電動機との間で駆動力を伝達する無端伝動帯に張力を付与するエンジンのオートテンショナ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハイブリッド車両のエンジンは車両の停止時に自動的に停止(アイドル停止)し、車両の発進時に自動的に再始動するようになっており、クランクシャフトにベルトを介して接続したモータ・ジェネレータをスタータモータとして機能させてエンジンの再始動を行っている。モータ・ジェネレータをスタータモータとして使用するとき、その起動と同時にクランクシャフトとモータ・ジェネレータとを接続するベルトに瞬間的に強い張力が作用するため、オートテンショナがスプリングの弾発力に抗して大きく収縮し、それに続いてスプリングの弾発力で大きく伸長するため、ベルトが暴れて動力伝達がスムーズに行われなくなる可能性がある。
【0003】
そこで従来は、モータ・ジェネレータをスタータモータとして使用するとき、オートテンショナを収縮不能にロックして上記不具合を回避している。
【0004】
図8は上記従来のオートテンショナの縦断面図であって、そのテンショナ本体01はアッパーハウジング02とロアハウジング03とを摺動自在に嵌合させてなり、アッパーハウジング02およびロアハウジング03はスプリング04で相互に離反する方向に付勢され、このスプリング04の弾発力はベルトに張力を付与する方向に作用する。ロアハウジング03に一体に形成したシリンダ05にアッパーハウジング02に一体に形成したピストン06が摺動自在に嵌合する。シリンダ05およびピストン06によって区画された第1液室07と、シリンダ05の外側に区画された第2液室08とがロアハウジング03に形成した第1連通路09および第2連通路010を介して接続されており、第1液室07および第2液室08に液体が封入される。
【0005】
第1連通路09には第1チェック弁011が設けられており、この第1チェック弁011によって第1液室07から第2液室08への液体の移動が阻止され、その逆方向の液体の移動が許容される。第2連通路010には第2チェック弁012と絞り013とが設けられており、この第2チェック弁012によって第1液室07から第2液室08への液体の移動が阻止され、その逆方向の液体の移動が許容される。第2チェック弁012の弁体014を弁座015から離反させるべく、ソレノイド016により駆動される押圧ロッド017が弁体014に臨んでいる。
【0006】
通常時にはソレノイド016を消磁して押圧ロッド017を強制的に上昇させて弁体014を弁座015から離反させることで、第2チェック弁012は開弁状態に保持される。従って、テンショナ本体01が収縮して容積が縮小する第1液室07から押し出された液体は第2チェック弁012および絞り013を有する第2連通路010を通過して第2液室08に流入し、その際に絞り013を通る液体の流通抵抗で減衰力が発揮される。またテンショナ本体01が伸長すると、第2液室08の液体が第1チェック弁011を有する第1連通路09を介して第1液室07に戻される。
【0007】
エンジンのアイドル停止後の再始動時にモータ・ジェネレータをスタータモータとして使用するとき、ソレノイド016を励磁して押圧ロッド017を下降させることで第2チェック弁012を機能させる。モータ・ジェネレータの作動によってベルトの張力が急激に増加してテンショナ本体01が強く圧縮されたとき、第1チェック弁011および第2チェック弁012が共に閉弁して第1液室07からの液体の流出を阻止するため、テンショナ本体01は収縮不能にロックされてベルトの暴れが防止される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、エンジンをアイドル停止すべく燃料噴射をカットしてもクランクシャフトは即座に停止せずに慣性でしばらく回転し、またエンジンのアイドル停止に伴ってベルトが移動を停止してもベルトの張力が安定するまでオートテンショナの伸縮位置は変動する。従って、エンジンの再始動に備えてオートテンショナを収縮不能にロックするタイミングが重要であり、モータ・ジェネレータを駆動してエンジンを再始動する際のベルトの張力が過大であると該ベルトの耐久性に悪影響があり、逆にベルトの張力が過小であると該ベルトに滑りが発生する可能性がある。
【0009】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、エンジンのアイドル停止時にオートテンショナを収縮不能にロックするタイミングを適切に制御して電動機によるエンジンの再始動を確実に行えるようにすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、エンジンのクランクシャフトと補機類と電動機との間で駆動力を伝達する無端伝動帯に張力を付与すべく、無端伝動帯の張力に応じて伸縮自在なテンショナ本体と、テンショナ本体を伸長方向に付勢するスプリングと、テンショナ本体の収縮に伴って容積が縮小し、伸長に伴って容積が拡大する第1液室と、第1液室に連通する第2液室と、第1液室および第2液室間の連通を許容および阻止する制御弁と、制御弁の作動を制御する制御手段とを備えたエンジンのオートテンショナ装置において、前記制御手段は、エンジンのアイドル停止時に無端伝動帯が移動停止し、かつ無端伝動帯の張力が安定したときに、制御弁を閉弁して第1液室および第2液室間の連通を阻止することを特徴とするエンジンのオートテンショナ装置が提案される。
【0011】
上記構成によれば、エンジンの運転中に制御弁は開弁状態にあってテンショナ本体は伸縮自在であり、スプリングの弾発力によってベルトに所定の張力が与えられる。エンジンのアイドル停止後に電動機を駆動してエンジンを再始動するとき、無端伝動帯に瞬間的に強い張力が作用してテンショナ本体が急激に収縮し、その後の反動でテンショナ本体が急激に伸長するため、急激な張力の変動によって無端伝動帯が暴れる可能性がある。従って、電動機を駆動する際には、制御弁を閉弁してテンショナ本体を収縮不能にロックすることで張力の急激な変動による無端伝動帯の暴れを防止する。
【0012】
電動機の駆動に先立って、無端伝動帯が移動停止して張力が安定したときに制御弁を閉弁してテンショナ本体を収縮不能にロックするので、電動機を駆動する瞬間の無端伝動帯の張力を適切な初期張力に調整して、無端伝動帯に過剰な荷重が作用したり無端伝動帯がスリップしたりするのを防止することができる。
【0013】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記制御手段は、クランクシャフトの回転数がゼロになり、かつ電動機の回転数がゼロになったときに、無端伝動帯の移動停止を判定することを特徴とするエンジンのオートテンショナ装置が提案される。
【0014】
上記構成によれば、クランクシャフトの回転数および電動機の回転数がゼロになったときに無端伝動帯が移動停止したと判定するので、無端伝動帯の移動停止を確実に判定することができる。
【0015】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記制御手段は、テンショナ本体の伸縮位置に基づいて無端伝動帯の張力の安定を判定することを特徴とするエンジンのオートテンショナ装置が提案される。
【0016】
上記構成によれば、テンショナ本体の伸縮位置に基づいて無端伝動帯の張力が安定したことを判定するので、無端伝動帯の張力の安定を確実に判定することができる。
【0017】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記制御手段は、クランクシャフトの回転数がゼロになり、かつ電動機の回転数がゼロになってからテンショナ本体の伸縮位置がニュートラル位置になるまでの伸縮遅れ時間に基づいて無端伝動帯の張力の安定を判定することを特徴とするエンジンのオートテンショナ装置が提案される。
【0018】
上記構成によれば、クランクシャフトおよび電動機の回転数がゼロになってからテンショナ本体の伸縮位置がニュートラル位置になるまでの伸縮遅れ時間に基づいて無端伝動帯の張力が安定したことを判定するので、無端伝動帯の張力の安定を確実に判定することができる。
【0019】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項1〜請求項4の何れか1項の構成に加えて、電動機はモータ・ジェネレータであることを特徴とするエンジンのオートテンショナ装置が提案される。
【0020】
上記構成によれば、電動機がモータ・ジェネレータであるので、モータ・ジェネレータをジェネレータとして利用することで発電や回生制動を行わせることができ、モータ・ジェネレータをモータとして利用することでモータアシストを行わせることができる。
【0021】
尚、実施例の空調用コンプレッサ13およびウオータポンプ14は本発明の補機類に対応し、実施例のモータ・ジェネレータ15は本発明の電動機に対応し、実施例のベルト28は本発明の無端伝動帯に対応し、実施例の電子制御ユニットUは本発明の制御手段に対応する。
【0022】
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0024】
図1〜図5は本発明の第1実施例を示すもので、図1はハイブリッド車両用のエンジンの正面図、図2は図1の2部拡大断面図、図3はエンジンのアイドル停止時の作用を説明するフローチャート、図4はエンジンの再始動時の作用を説明するフローチャート、図5はエンジンのアイドル停止時および再始動時の作用を説明するタイムチャートである。
【0025】
図1に示すように、ハイブリッド車両用のエンジンEはエンジンブロック11の側面に取り付けた補機ブラケット12を備えており、補機ブラケット12に空調用コンプレッサ13、ウオータポンプ14、モータ・ジェネレータ15、アイドラプーリ16およびオートテンショナ17が支持される。エンジンEのクランクシャフト18に設けたクランクプーリ19と、空調用コンプレッサ13の回転軸20に設けた空調用コンプレッサプーリ21と、ウオータポンプ14の回転軸22に設けたウオータポンププーリ23と、モータ・ジェネレータ15の回転軸24に設けたモータ・ジェネレータプーリ25と、回転軸26に設けた前記アイドラプーリ16と、オートテンショナ17に設けたテンショナプーリ27とに無端伝動帯としてのベルト28が巻き掛けられる。クランクプーリ19、空調用コンプレッサプーリ21、ウオータポンププーリ23、モータ・ジェネレータプーリ25、アイドラプーリ16およびテンショナプーリ27の回転方法は矢印で示される。
【0026】
オートテンショナ17は伸縮自在なテンショナ本体29を備えており、その上端が支点ピン30を介して補機ブラケット12に枢支される。補機ブラケット12には支点ピン31を介してベルクランク32の中間部が枢支されており、ベルクランク32の一端部がピン33を介してテンショナ本体29の下端に枢支され、ベルクランク32の他端部に回転軸34を介して前記テンショナプーリ26が枢支される。
【0027】
エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ35と、モータ・ジェネレータ15の回転数を検出するモータ・ジェネレータ回転数センサ36と、オートテンショナ17のテンショナ本体29の伸縮位置を検出するストロークセンサ37とからの信号が入力される電子制御ユニットUは、燃料噴射弁38の燃料噴射量と、点火プラグ39の点火時期と、モータコントローラ40およびインバータ41を介してのモータ・ジェネレータ15の作動と、オートテンショナ17のテンショナ本体29の収縮のロックとを制御する。エンジンEの運転時にモータ・ジェネレータ15はジェネレータとして機能して発電あるいは回生制動を司り、エンジンEのアイドル停止後にモータ・ジェネレータ15はスタータモータとして機能してエンジンEを再始動する。
【0028】
図2に示すように、オートテンショナ17のテンショナ本体29は、補機ブラケット12に接続されるアッパーハウジング51の内周面に、ベルクランク32に接続されるロアハウジング52の外周面を摺動自在に嵌合させてなり、ロアハウジング52に一体に形成したシリンダ53にアッパーハウジング51に一体に形成したピストン54が摺動自在に嵌合する。シリンダ53およびピストン54によって区画された第1液室55と、シリンダ53の外側に区画された第2液室56とがロアハウジング52に形成した第1連通路57および第2連通路58を介して接続されており、第1液室55の全部および第2液室56の一部に液体が封入される。テンショナ本体29が収縮すると第1液室55の容積が縮小し、テンショナ本体29が伸長すると第1液室55の容積が拡大する。
【0029】
アッパーハウジング51およびロアハウジング52は第2液室56に収納したスプリング59で相互に離反する方向(つまりテンショナ本体29が伸長する方向)に付勢されており、このスプリング59の弾発力はテンショナプーリ27をベルト28に押し付けて張力を付与する方向に作用する。
【0030】
第1連通路57には円錐状の弁座60および球状の弁体61よりなるチェック弁62が設けられており、このチェック弁62によって第1液室55から第2液室56への液体の移動が阻止され、その逆方向の液体の移動が許容される。第2連通路58には、円錐状の弁座63に向けて球状の弁体64をスプリング65で付勢した制御弁66と、絞り67とが設けられる。制御弁66の開閉を制御するアクチュエータ68は、ソレノイド69と、ソレノイド69により作動するアマチュア70と、アマチュア70と一体に設けられた押圧ロッド71と、アマチュア70を付勢するスプリング72とからなる。
【0031】
アクチュエータ68のソレノイド69を消磁すると、スプリング72の弾発力でアマチュア70が左動して押圧ロッド71が弁体64を弁座63から離反させ、制御弁66は強制的に開弁状態に保持される。従って、ソレノイド69の消磁状態では、開弁状態にある制御弁66を介して第1液室55および第2液室56間の双方向への液体の移動が許容される。一方、ソレノイド69を励磁すると、アマチュア70と共に押圧ロッド71が右動して弁体64が弁座63に着座し、制御弁66はチェック弁として機能する。従って、ソレノイド69の励磁状態では、第1液室55から第2液室56への液体の移動が阻止されてテンショナ本体29が収縮不能にロックされ、第2液室56から第1液室55への液体の移動が許容されてテンショナ本体29が伸長可能となる。
【0032】
次に、上記構成を備えた本発明の第1実施例の作用を説明する。
【0033】
エンジンEの通常の運転時に制御弁66のアクチュエータ68のソレノイド69は消磁状態にあり、アマチュア70および押圧ロッド71がスプリング72の弾発力で左動して弁体64が弁座63から離反することで、制御弁66は強制的に開弁状態に保持される。
【0034】
オートテンショナ17の位置でのベルト28の張力は、エンジンEが加速すると減少し、エンジンEが減速すると増加する。また前記ベルト28の張力は、空調用コンプレッサ13、ウオータポンプ14あるいはモータ・ジェネレータ15の負荷が増加すると減少し、前記負荷が減少すると増加する。
【0035】
このようにしてベルト28の張力が増加しようとすると、ベルト28からテンショナプーリ27に作用する荷重がベルクランク32を介してオートテンショナ17のテンショナ本体29に伝達され、テンショナ本体29を収縮させようとする。その結果、スプリング59の弾発力に抗してアッパーハウジング51の内部にロアハウジング52が押し込まれて第1液室55の容積が減少し、チェック弁62が閉弁して第1連通路57が閉塞されることから、第1液室55内の液体は第2連通路58の開弁した制御弁66および絞り67を通過して第2液室56にゆっくりと流入し、ベルト28の張力の増加が抑制される。その際に液体が絞り67を通過することで減衰力が発生する。
【0036】
一方、ベルト28の張力が減少しようとすると、ベルト28からテンショナ本体29に伝達される荷重が減少するため、スプリング59の弾発力でアッパーハウジング51の内部からロアハウジング52が押し出されて第1油室55の容積が増加する。このとき、チェック弁62が開弁して第1連通路57が開放されるため、第2液室56内の液体が第1連通路57を経て第1液室55に流入し、テンショナ本体29が伸長してベルト28の張力の減少が抑制される。その際に、第2液室56内の液体の一部が第2連通路58の絞り67を経て第1液室55に流入するが、第2液室56内の液体の大部分は絞りが設けられていない第1連通路57を経て第1液室55に速やかに移動し、テンショナ本体29が伸長する応答性が高められる。
【0037】
このように、ベルト28の張力が増減しようとすると、それを補償するようにオートテンショナ17のテンショナ本体29が伸縮することにより、ベルト28の張力を略一定に保持して安定した動力伝達を可能にすることができる。
【0038】
ところで、ハイブリッド車両のエンジンEは車両の停止時に自動的にアイドル停止し、車両の発進時に自動的に再始動するようになっており、その再始動は通常はジェネレータとして機能するモータ・ジェネレータ15をスタータモータとして機能させることで行われる。
【0039】
エンジンEを再始動すべくモータ・ジェネレータ15を駆動してモータ・ジェネレータプーリ25を矢印方向に回転させると、オートテンショナ17の位置でベルト28の張力が急激に増加し、テンショナ本体29が一旦急激に収縮した後にスプリング59の弾発力で急激に伸長するため、ベルト28が暴れて動力伝達が不安定になる虞がある。そこで本実施例では、エンジンEの再始動時に予め制御弁66のアクチュエータ68のソレノイド69を励磁して押圧ロッド71を右動させ、弁体64を弁座63着座可能にして制御弁66をチェック弁として機能させる。その結果、チェック弁62および制御弁66の両方に阻止されて第1液室55内の液体が密封されるため、テンショナ本体29は収縮不能にロックされて前記ベルト28が暴れが防止される。
【0040】
次に、エンジンEの始動時の制御弁66の制御の詳細を、図3および図4のフローチャートと、図5のタイムチャートとに基づいて説明する。
【0041】
先ず、図3のフローチャートのステップS1でエンジンEのアイドル停止条件が成立したか否かを判断し、ステップS2でブレーキペダルが踏まれて車両が停止してから所定時間が経過してエンジンEのアイドル停止条件が成立すると、ステップS3で燃料噴射弁38からの燃料噴射をカットしてエンジンEをアイドル停止させる。続くステップS4で、エンジン回転数センサ35で検出したクランクプーリ19の回転数を読み込むとともに、ステップS5で、モータ・ジェネレータ回転数センサ36で検出したモータ・ジェネレータプーリ25回転数を読み込み、ステップS6,S7でクランクプーリ19およびモータ・ジェネレータプーリ25の回転数が共にゼロになると、ステップS8でオートテンショナ17のストロークセンサ37でテンショナ本体29の伸縮位置を検出する。そしてステップS9でテンショナ本体29の伸縮位置がニュートラル位置になり、ベルト28に適切な初期張力が安定して作用するようになると、ステップS10でアクチュエータ68のソレノイド69を励磁して制御弁66をチェック弁として機能可能にし、オートテンショナ17のテンショナ本体29を収縮不能にロックする。
【0042】
このように、クランクプーリ19およびモータ・ジェネレータプーリ25の回転数が共にゼロになってベルト28の移動が完全に停止したことを確認し、かつテンショナ本体29の伸縮位置がニュートラル位置に戻ったことを確認した後にテンショナ本体29を収縮不能にロックするので、そのロック状態でのベルト28の初期張力を適切な大きさに調整し、エンジンEを再始動すべくモータ・ジェネレータ15をスタータモータとして作動させたときに、ベルト28に過剰な負荷が作用したりベルト28が滑ったりするのを防止してエンジンEを確実に再始動することができる。
【0043】
以上のようにしてエンジンEがアイドル停止した後、図4のフローチャートのステップS11でエンジンEの再始動条件が成立したか否かを判断し、ステップS12でブレーキペダルが放されてエンジンEの再始動条件が成立し、かつステップS13でアクチュエータ68のソレノイド69の励磁後に応答遅れ時間T2が経過すると、ステップS14でモータ・ジェネレータ15がスタータモータとして駆動されてエンジンEがクランキングされる。続くステップS15でエンジンEが完爆したか否かを判断し、ステップS16でエンジンEが完爆すると、ステップS17でアクチュエータ68のソレノイド69を消磁して制御弁66をチェック弁として機能不能にし、オートテンショナ17のテンショナ本体29を伸縮可能にしてエンジンEの運転中におけるベルト28の張力調整機能を発揮させる。
【0044】
次に、図6および図7に基づいて本発明の第2実施例を説明する。
【0045】
先ず、ステップS21でエンジンEのアイドル停止条件が成立したか否かを判断し、ステップS22でブレーキペダルが踏まれて車両が停止してから所定時間が経過してエンジンEのアイドル停止条件が成立すると、ステップS23で燃料噴射弁38からの燃料噴射をカットしてエンジンEをアイドル停止させる。続くステップS24で、エンジン回転数センサ35で検出したクランクプーリ19の回転数を読み込むとともに、ステップS25で、モータ・ジェネレータ回転数センサ36で検出したモータ・ジェネレータプーリ25回転数を読み込み、ステップS26,S27でクランクプーリ19およびモータ・ジェネレータプーリ25の回転数が共にゼロになると、ステップS28で、その時点からオートテンショナ17のテンショナ本体29の伸縮位置がニュートラル位置になるまでの伸縮遅れ時間T1が経過するのを待ち、ベルト28に適切な初期張力が安定して作用するようになると、ステップS29でアクチュエータ68のソレノイド69を励磁して制御弁66をチェック弁として機能可能にし、オートテンショナ17のテンショナ本体29を収縮不能にロックする。
【0046】
このように、前述した第1実施例でストロークセンサ37により検出したテンショナ本体29の伸縮位置がニュートラル位置になったことを確認してアクチュエータ68のソレノイド69を励磁するのに対し、第2実施例はクランクプーリ19およびモータ・ジェネレータプーリ25の回転数が共にゼロになってから伸縮遅れ時間T1が経過したことを確認してアクチュエータ68のソレノイド69を励磁するようになっている。クランクプーリ19およびモータ・ジェネレータプーリ25の回転数が共にゼロになってから伸縮遅れ時間T1が経過すると、ベルト28に適切な初期張力が安定して作用するようになるため、第2実施例によっても第1実施例と同様の作用効果を達成することができる。
【0047】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0048】
例えば、本発明の無端伝動帯は実施例のベルト28に限定されず、チェーンであっても良い。
【0049】
また補機としてのジェネレータを別途設けることで、電動機を実施例のモータ・ジェネレータ15とせずに、エンジンEの始動専用に用いることができる。
【0050】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、エンジンの運転中に制御弁は開弁状態にあってテンショナ本体は伸縮自在であり、スプリングの弾発力によってベルトに所定の張力が与えられる。エンジンのアイドル停止後に電動機を駆動してエンジンを再始動するとき、無端伝動帯に瞬間的に強い張力が作用してテンショナ本体が急激に収縮し、その後の反動でテンショナ本体が急激に伸長するため、急激な張力の変動によって無端伝動帯が暴れる可能性がある。従って、電動機を駆動する際には、制御弁を閉弁してテンショナ本体を収縮不能にロックすることで張力の急激な変動による無端伝動帯の暴れを防止する。
【0051】
電動機の駆動に先立って、無端伝動帯が移動停止して張力が安定したときに制御弁を閉弁してテンショナ本体を収縮不能にロックするので、電動機を駆動する瞬間の無端伝動帯の張力を適切な初期張力に調整して、無端伝動帯に過剰な荷重が作用したり無端伝動帯がスリップしたりするのを防止することができる。
【0052】
また請求項2に記載された発明によれば、クランクシャフトの回転数および電動機の回転数がゼロになったときに無端伝動帯が移動停止したと判定するので、無端伝動帯の移動停止を確実に判定することができる。
【0053】
また請求項3に記載された発明によれば、テンショナ本体の伸縮位置に基づいて無端伝動帯の張力が安定したことを判定するので、無端伝動帯の張力の安定を確実に判定することができる。
【0054】
また請求項4に記載された発明によれば、クランクシャフトおよび電動機の回転数がゼロになってからテンショナ本体の伸縮位置がニュートラル位置になるまでの伸縮遅れ時間に基づいて無端伝動帯の張力が安定したことを判定するので、無端伝動帯の張力の安定を確実に判定することができる。
【0055】
また請求項5に記載された発明によれば、電動機がモータ・ジェネレータであるので、モータ・ジェネレータをジェネレータとして利用することで発電や回生制動を行わせることができ、モータ・ジェネレータをモータとして利用することでモータアシストを行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ハイブリッド車両用のエンジンの正面図
【図2】図1の2部拡大断面図
【図3】エンジンのアイドル停止時の作用を説明するフローチャート
【図4】エンジンの再始動時の作用を説明するフローチャート
【図5】エンジンのアイドル停止時および再始動時の作用を説明するタイムチャート
【図6】第2実施例のエンジンのアイドル停止時の作用を説明するフローチャート
【図7】第2実施例のエンジンのアイドル停止時および再始動時の作用を説明するタイムチャート
【図8】従来のオートテンショナの縦断面図
【符号の説明】
13 空調用コンプレッサ(補機類)
14 ウオータポンプ(補機類)
15 モータ・ジェネレータ(電動機)
18 クランクシャフト
28 ベルト(無端伝動帯)
29 テンショナ本体
55 第1液室
56 第2液室
59 スプリング
66 制御弁
E エンジン
T1 伸縮遅れ時間
U 電子制御ユニット(制御手段)
Claims (5)
- エンジン(E)のクランクシャフト(18)と補機類(13,14)と電動機(15)との間で駆動力を伝達する無端伝動帯(28)に張力を付与すべく、
無端伝動帯(28)の張力に応じて伸縮自在なテンショナ本体(29)と、
テンショナ本体(29)を伸長方向に付勢するスプリング(59)と、
テンショナ本体(29)の収縮に伴って容積が縮小し、伸長に伴って容積が拡大する第1液室(55)と、
第1液室(55)に連通する第2液室(56)と、
第1液室(55)および第2液室(56)間の連通を許容および阻止する制御弁(66)と、
制御弁(66)の作動を制御する制御手段(U)と、
を備えたエンジンのオートテンショナ装置において、
前記制御手段(U)は、エンジン(E)のアイドル停止時に無端伝動帯(28)が移動停止し、かつ無端伝動帯(28)の張力が安定したときに、制御弁(66)を閉弁して第1液室(55)および第2液室(56)間の連通を阻止することを特徴とするエンジンのオートテンショナ装置。 - 前記制御手段(U)は、クランクシャフト(18)の回転数がゼロになり、かつ電動機(15)の回転数がゼロになったときに、無端伝動帯(28)の移動停止を判定することを特徴とする、請求項1に記載のエンジンのオートテンショナ装置。
- 前記制御手段(U)は、テンショナ本体(29)の伸縮位置に基づいて無端伝動帯(28)の張力の安定を判定することを特徴とする、請求項1に記載のエンジンのオートテンショナ装置。
- 前記制御手段(U)は、クランクシャフト(18)の回転数がゼロになり、かつ電動機(15)の回転数がゼロになってからテンショナ本体(29)の伸縮位置がニュートラル位置になるまでの伸縮遅れ時間(T1)に基づいて無端伝動帯(28)の張力の安定を判定することを特徴とする、請求
項1に記載のエンジンのオートテンショナ装置。 - 電動機(15)はモータ・ジェネレータであることを特徴とする、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のエンジンのオートテンショナ装置。
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