JP3669090B2 - プリプレグの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、航空機、車両、船舶、建造物などの構造材料、スポーツ用具などに使用される、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維などの強化繊維と熱硬化性樹脂からなる繊維強化複合材料の製造に用いるプリプレグおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
強化繊維とマトリックス樹脂からなる繊維強化複合材料は、軽量で優れた機械特性を有するために、航空機、車両、船舶、建造物などの構造材料、ゴルフシャフト、釣竿、テニスラケットなどのスポーツ用具に広く用いられている。繊維強化複合材料の製造には、各種の方式が用いられるが、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸されたシート状、テープ状、あるいは紐状の中間基材であるプリプレグを用いる方法が広く用いられている。この方法ではプリプレグを複数枚積層した後、加熱することによって成形物が得られる。
【0003】
プリプレグに用いられるマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂ともに使用されるが、ほとんどの場合熱硬化性樹脂が用いられる。この場合、未硬化の熱硬化性樹脂を強化繊維に含浸したものがプリプレグとして用いられ、これを積層後加熱して繊維強化複合材料が製造される。
【0004】
繊維強化複合材料は、比強度や比弾性率を高めるためには強化繊維の体積含有率を高める必要がある。そのため、高性能の要求される分野では、体積含有率を高めるために有利な長繊維を強化繊維として用いたプリプレグ、なかんずく体積含有率を最も高めることのできる一方向に引き揃えた長繊維を強化繊維として用いたプリプレグが好んで用いられる。
【0005】
釣竿、ゴルフシャフトなどのスポーツ用品の分野では、軽量化のために、強化繊維の体積含有率の特に高いプリプレグや厚みの薄いプリプレグの需要が高まりつつある。
【0006】
一般的にプリプレグの製造においては、マトリックス樹脂の粘度が低いほうが有利な点が多い。
【0007】
特に、強化繊維の体積含有率の高いプリプレグや薄いプリプレグの製造にあたっては、未硬化のマトリックス樹脂の粘度はできるだけ低いことが望ましい。たとえば、シート状のプリプレグを製造する場合には強化繊維にマトリックス樹脂を含浸する方法としては、マトリックス樹脂を塗布した離型紙2枚、またはマトリックス樹脂を塗布した離型紙と塗布しない離型紙で強化繊維を上下からはさむという方法が一般的であるが、その際マトリックス樹脂粘度が高いと様々な問題が生じる。
【0008】
まず第1に、マトリックス樹脂の粘度が高いと、強化繊維束の内部まで十分にマトリックス樹脂を含浸させることが困難となる。したがって粘度の高いマトリックス樹脂を使用する場合に強化繊維への十分な含浸を行うためには、温度を高くして樹脂粘度を低くする必要があるが、熱硬化性樹脂にある程度以上の熱履歴を加えると、樹脂組成物の硬化反応が進行したり、樹脂組成物中の硬化剤が溶解ないし変質してプリプレグの可使時間を短くするという問題が生じる。これは特に硬化温度の低いマトリックス樹脂を使用する場合に大きな問題になる。マトリックス樹脂の粘度が低ければ、強化繊維への含浸が容易となるためにそのような問題が生じにくいし、製造ラインの速度を大きくすることができて、生産性も良くなる。
【0009】
第2に、マトリックス樹脂の粘度が高いと、含浸時に強化繊維のストランドが拡がりにくくなりプリプレグの表面平滑性が不十分となる。特に、薄いプリプレグを製造する場合にそのような問題が生じることが多い。そして、樹脂粘度が比較的高い状態でストランドを拡げてマトリックス樹脂を十分に含浸させるためには、ローラー圧力などの外圧を高くして含浸を行なう必要があるが、繊維を高い圧力で押さえつけると、特に仮撚りのような撚りがかかった強化繊維の場合には、繊維束が圧力により一旦は拡げられるものの、得られたプリプレグを放置しておくと、経時的に繊維束が元の形態に戻ろうとする現象、いわゆるスプリングバックが起きやすくなる。スプリングバックが生じるとプリプレグ表面の樹脂量が少なくなるため、経時的にプリプレグの粘着性が低下することになる。
【0010】
また、薄いものに限らずシート状のプリプレグを製造する場合、マトリックス樹脂の粘度が低いと含浸時に繊維束が拡がりやすいため単繊維数の多い繊維束を使用することが可能になる。そうなれば、一般に強化繊維は繊維束を構成する単繊維数の多いもののほうが安価に入手可能であるので経済的に有利であるばかりか、必要とする繊維束の本数が少なくて済むためにプリプレグの生産性も向上する。
【0011】
さらに、マトリックス樹脂の粘度が十分に低い場合には、離型紙を必ずしも必要としない方法、例えば、強化繊維を樹脂組成物で満たした浸漬槽に通過させる方法や、強化繊維を一定速度でマトリックス樹脂が供給される口金に通過させる方法などでもプリプレグを困難なく製造することができるようになる。そのような方法を用いれば、大半が最終的には廃棄物となるだけである離型紙を使用せずに済むために、経済的に有利なばかりか、離型紙を用いた方法では製造することが困難な、極めて厚いプリプレグを困難なく製造することもできるようになる。
【0012】
ところが、製造されたプリプレグ中のマトリックス樹脂の粘度が低いと、様々な問題が生じる。
【0013】
第1は、成形時の樹脂フローである。プリプレグを用いて繊維強化複合材料を製造する場合は、プリプレグを積層した後、加熱加圧してマトリックス樹脂を硬化する方法が用いられる。このとき、加熱により粘度が低下した樹脂が圧力により流出する現象、つまり樹脂フローが起こる。マトリックス樹脂の粘度が低いものは樹脂フローが大きくなる。樹脂フローは十分に小さければ問題はないが、大きすぎると、成形品の重量ばらつきが生じたり、成形品中に樹脂の不足する部分が生じたり、成形品中のボイドが多くなったりして好ましくない。
【0014】
第2はプリプレグの取扱性である。プリプレグのマトリックス樹脂があまりに低粘度であると、表面のべたつきが大きく、取扱いが困難になる。たとえば、プリプレグに触れた作業者の手や作業台などに樹脂が付着したりする。さらに、マトリックス樹脂が低粘度であると、積層したプリプレグを修正のために剥離する場合に樹脂が糸を引くような剥離になり、修正作業が困難になる。
【0015】
また、プリプレグを積層するときは、重ねたプリプレグ間に適度な粘着性が必要になるが、マトリックス樹脂の粘度が低いと粘着性が不足する。粘着性が不足すると重ねたプリプレグが簡単に剥がれてしまう。これは、特に釣竿やゴルフシャフトの製造のように曲率半径の小さいマンドレルにプリプレグを巻き付ける形で積層を行う場合に特に問題になる。べたつきがなく、しかも適度な粘着性を有するためには、マトリックス樹脂はある程度以上の高い粘度が必要になる。さらに、マトリックス樹脂の粘度が低いとプリプレグ表面の樹脂が繊維束中に沈み込んでいきやすくなり、プリプレグの粘着性が時間とともに次第に減少してしまうという問題も生じる。
【0016】
テープ状や紐状のプリプレグをボビンに巻き付けたものからプリプレグを巻き出しながら、プリプレグの積層を行う製造方法が用いられる場合には、プリプレグの解舒性が問題になる。マトリックス樹脂の粘度が低くなると、巻き付けられたプリプレグ同士が接着し、解舒性が悪くなる。
【0017】
プリプレグの製造においては、上記のトレードオフを考慮してマトリックス樹脂の粘度は適当な値に設定されるが、しばしば要求される条件をすべて満たす樹脂粘度の範囲が存在せず、なんらかの性能を犠牲にせざるを得ない、あるいは製造が不可能であるという場合が少なからず存在する。たとえば、プリプレグの強化繊維の体積含有率が大きい場合、マトリックス樹脂の硬化温度が低い場合、樹脂フローに対する要求が厳しい場合などにこのような問題が生じることが多い。
【0018】
マトリックス樹脂の粘度について存在する上記のようなトレードオフを解決するためには、低粘度のマトリックス樹脂を用いて含浸を行い、その後なんらかの処理でマトリックス樹脂の粘度を高める方法が有効であり、そのために適用できる方法もいくつか提案されている。
【0019】
特開昭52−100574号公報では、エポキシ樹脂と光重合可能な化合物を配合したマトリックス樹脂を強化繊維に含浸させた後、光照射による光重合を行いマトリックス樹脂の粘度を高める方法が開示されている。通常光重合には紫外線が用いられる。この方法は、強化繊維がガラス繊維のように紫外線をよく透過するものである場合は有効であるが、紫外線を透過しない強化繊維を用いる場合は、プリプレグ内部に紫外線が到達せず、内部での増粘反応が起こらないため有効ではない。ところが、ガラス繊維よりも比強度、比弾性率が優れ、構造材料等に用いるのに有用な炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維はいずれも紫外線を透過しないため、これらを強化繊維とするプリプレグの製造についてこの方法を用いることは困難である。
【0020】
特開昭58−19332号公報では、エポキシ樹脂とアクリレートモノマーを配合したマトリックス樹脂を強化繊維に含浸させた後、電子線照射によるアクリレートモノマー重合を行いマトリックス樹脂の粘度を高める方法が開示されている。この方法は、強化繊維の透明度には依存しないが、厚いプリプレグに適用しようとすると、加速電圧を大きくする必要がある。加速電圧の大きい電子線照射装置は、電子線照射に伴い発生する有害なX線を遮蔽するために大掛かりなものになり、通常の製造ラインに組み込むのが困難である。
【0021】
粘度増大のための処理として熱を用いる方法は、上記の光や放射線を用いる方法にみられる困難性はない。実際に、樹脂を含浸したプリプレグに、マトリックス樹脂の完全な硬化に至らない程度の熱を加えて粘度を増加させる、いわゆるBステージ化という処理が行われることもある。しかし、このような処理では、加熱後の粘度を再現性よく制御するのが困難であるし、プリプレグの粘着性が失われたり、可使時間が短くなるなどの弊害を避けることができない。
【0022】
また、粘度の高いマトリックス樹脂に溶剤を加えた溶液を強化繊維に含浸させ、その後、加熱により溶媒を除去してプリプレグを製造する方法も知られている。この方法では、プリプレグ中の残留溶媒が繊維強化複合材料中のボイドの原因になることがある。また、マトリックス樹脂に溶媒に不溶の成分が含まれる場合は適用が困難である。また、プリプレグの可使時間を長くするために、潜在性の硬化剤や硬化触媒を使用することが多く行われるが、潜在性の硬化剤や硬化触媒は溶剤に完全に、あるいは部分的に溶解すると潜在性を失うため、適用が困難である。さらに、この方法は、溶剤を除去するための熱風オーブンなどの設備が必要であり、溶剤除去のためにある程度の時間が必要になる。無溶剤型のプリプレグの製造方法では、毎分15m以上のライン速度での製造が実現可能であるが、溶剤を使う方法でこれと同等の生産性を実現しようとすると長大な加熱領域を設ける必要があり、実現が困難である。
【0023】
ヨーロッパ特許429395号公報には、エポキシ樹脂にアミン系硬化剤とチオール系硬化剤と潜在性硬化剤を配合した樹脂組成物をマトリックス樹脂として強化繊維に含浸させてプリプレグを作製した後、潜在性硬化剤を反応させないよう短時間加熱してマトリックス樹脂の粘度を増大させる方法が開示されている。この方法は、単一の硬化剤を用いてBステージ化を行う方法と比較すると、プリプレグの可使時間を損なうことが少なく優れているが、粘度増大に数分間を要し、含浸工程と粘度増大工程を同一ラインで行う場合は、ライン速度を高めることが困難である。また、含浸前のマトリックス樹脂の可使時間が短く、工程の自由度が低くなる点も問題である。
【0024】
特開平3−221535号公報、特開平5−262903号公報には、エポキシ樹脂に室温で反応する硬化剤と室温では安定で高温で反応する硬化剤を配合したマトリックス樹脂を強化繊維に含浸させてプリプレグを作製した後、室温で放置してマトリックス樹脂の粘度を増大させる方法が開示されている。この方法は、余分な熱履歴を受けない点で優れた方法であるが、室温放置の期間が1週間程度は必要であり、必然的に在庫が多くなる点、また、含浸前のマトリックス樹脂の可使時間が短く、工程の自由度が低くなる点も問題である。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、含浸時には低粘度が要求され、プリプレグ中では高粘度の要求されるマトリックス樹脂の粘度のトレードオフを解決し得樹脂組成物を用いたプリプレグの製造方法を提供することにある。特に、強化繊維に無溶媒で樹脂組成物を含浸できるとともに、紫外線に対し実質的に不透明な強化繊維にも適用し得る、含浸時には低粘度が要求され、プリプレグ中では高粘度の要求されるマトリックス樹脂の粘度のトレードオフを解決し得樹脂組成物を用いたプリプレグの製造方法を提供することにある。
【0026】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のプリプレグの製造方法は、次の構成を有する。すなわち、
実質的にラジカル重合性を持たない熱硬化性樹脂(A1)、ラジカル重合性不飽和化合物(A2)および加熱によりラジカルを発生する重合開始剤(A3)からなる樹脂組成物を、強化繊維に含浸する工程(工程1)、および強化繊維に含浸された樹脂組成物に対し熱処理を行う工程(工程2)を経てプリプレグを得るプリプレグの製造方法において、工程2においては、A3成分は分解反応してラジカルを発生するがA1成分は実質的に硬化反応しないこと、かつ、工程2における熱処理時間が1分以内であることを特徴とするプリプレグの製造方法である。
【0028】
これにより得られたプリプレグにおいて、マトリックス樹脂は、熱硬化性樹脂(A1)と、ラジカル重合性不飽和化合物(A2)が加熱によりラジカルを発生する重合開始剤(A3)により重合して得られる重合体とからなり、該重合体が前記熱硬化性樹脂と均一相を形成するか、または、前記熱硬化性樹脂と分離した連続相として存在したものとなっているため、そのプリプレグは、取扱性や成形時の樹脂フローの良好なものとなる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0030】
本発明に用いられる樹脂組成物には、
A1:実質的にラジカル重合性を持たない熱硬化性樹脂、
A2:ラジカル重合性不飽和化合物、
A3:加熱によりラジカルを発生する重合開始剤、
のそれぞれを必須成分として含む。この樹脂組成物を用いれば後述するような方法を採用することにより、プリプレグの製造に際して、樹脂組成物の強化繊維への含浸時には樹脂組成物は低粘度であるので、プリプレグの表面平滑性を優れたものとすることができ、かつ、含浸後に加熱すればA3成分から放出されるラジカルによりA3成分が重合して高分子量化して重合体となるので、樹脂組成物が増粘する。したがって、最終的に得られるプリプレグは取扱性や成形時の樹脂フローに優れたものとなるのである。
【0031】
本発明における熱硬化性樹脂(A1)には、実質的にラジカル重合性をもたないもの、すなわちイオン的機構のみで硬化反応を行うプレポリマーの混合物、あるいは、これに硬化剤または硬化触媒を配合した組成物が用いられる。具体的には、エポキシ樹脂組成物、イソシアネート樹脂組成物、フェノール樹脂組成物、キシレン樹脂組成物、フラン樹脂組成物、メラミン樹脂組成物、ベンゾグアナミン樹脂組成物、尿素樹脂組成物などを用いることができる。このなかでも繊維強化複合材料用途には、耐熱性と弾性率に優れるエポキシ樹脂組成物が特に好ましく用いられる。
【0032】
エポキシ樹脂組成物は、分子内にエポキシ基を有するプレポリマーであるエポキシ樹脂と硬化剤を配合したものである。
【0033】
エポキシ樹脂としては、分子内に複数のエポキシ基を有する化合物が用いられる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルキシレンジアミンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂等、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンやトリス(グリシジルオキシ)メタンのようなグリシジルエーテル型エポキシ樹脂あるいはこれらの組合わせが好適に用いられる。
【0034】
このようなビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型として、“エピコート”828、“エピコート”1001、“エピコート”1004(油化シェルエポキシ(株)製)や“エポトート”YD128(東都化成(株)製)、“エピクロン”840、“エピクロン”850、“エピクロン”855、“エピクロン”860、“エピクロン”1050(大日本インキ化学工業(株)製)、ELA128(住友化学(株)製)、DER331(ダウケミカル社製)等、市販されているものが使用できる。また、ビスフェノールF型として、“エピクロン”830(大日本インキ化学工業(株)製)、“エピコート”807(油化シェルエポキシ(株)製)等がある。フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、“エピコート”152、“エピコート”154(油化シェルエポキシ(株)製)、DER485(ダウケミカル社製)、EPN1138、1139(チバガイギー社製)等の商品名で市販されているものを用いることができる。
【0035】
硬化剤としては、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンのような芳香属アミン、脂肪族アミン、イミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物のようなカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ノボラック樹脂などのポリフェノール化合物、ポリメルカプタン、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体などを用いることができる。
【0036】
これらの硬化剤には、硬化活性を高めるために適当な硬化助剤を組合わせることができる。好ましい例としては、ジシアンジアミドに、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)を硬化助剤として組合わせる例、カルボン酸無水物やノボラック樹脂に第三アミンを硬化助剤として組合わせる例などが挙げられる。ほとんどの硬化助剤は、ここに挙げた例のように単独でもエポキシ樹脂を硬化させる能力を持ち、実際は、同時に硬化剤として作用する場合が多い。
【0037】
また、エポキシ樹脂と硬化剤との予備反応物を組成物中に配合することもできる。
【0038】
本発明に用いるこれらの硬化剤や硬化助剤は、強化繊維Bに含浸させた樹脂組成物Aに対し熱処理を行う工程(工程2)に対する安定性を実現するため、および得られたプリプレグに十分な保存安定性をもたせるために熱活性型の潜在性を有することが好ましい。
【0039】
ここで熱活性型の潜在性とは、そのままでは活性の低い状態であるが、一定の熱履歴を経ることにより、相変化あるいは化学変化を起こして、活性の高い状態に変わるという性質を意味する。なお、以下の記述においては潜在性という用語は、熱活性型の潜在性を示すものとする。
【0040】
硬化助剤を用いない場合は、硬化剤が潜在性を有することが好ましい。硬化助剤を用いる場合は、少なくとも硬化助剤が潜在性を有することが好ましい。潜在性硬化助剤とともに用いる硬化剤として、潜在性を有する硬化剤が当然好ましく用いられるが、単独での反応性が低いものであれば、特別に潜在性をもたない(すなわち熱履歴により相変化や化学変化を起こさない)硬化剤も好ましく用いられる。
【0041】
潜在性をもたせるための一つの方法として、粒子状の硬化剤や硬化助剤をエポキシ樹脂に溶解させずに分散させた状態で配合する方法が好ましく用いられる。これらは、一定の熱履歴を経ることによりエポキシ樹脂に溶解して均一相となり、活性の高い状態になる。
【0042】
粒子状の潜在性硬化剤としてはジシアンジアミドが好ましく用いられるが、単独では硬化温度が高いため、特にこれと粒子状の潜在性硬化助剤を組み合わせて用いることが好ましい。ジシアンジアミドと好適に組み合わせることができる粒子状の硬化助剤としては、アリール基で置換された尿素誘導体が好ましく用いられ、特に1位がアリール基で置換され3位が2個のアルキル基で置換された尿素誘導体が好ましく用いられる。好ましく用いられるアリール基で置換された尿素誘導体の具体例としては1−(3,4−ジクロロフェニル)−3,3−ジメチル尿素、1−(4−クロロフェニル)−3,3−ジメチル尿素、1,1−ジメチル−3−フェニル尿素、1−(3,4−ジメチルフェニル)−3,3−ジメチル尿素、1−(3,4−ジメチルフェニル)−3,3−ジメチル尿素、1−(2−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル尿素、2,4−ビス(N,N−ジメチルウレイド)−トルエンが挙げられる。
【0043】
また、粒子状の潜在性硬化剤としては、固体のイミダゾール誘導体、例えば、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾールなど、またはイミダゾール誘導体にグリシジル化合物を付加させたものや、イミダゾール誘導体とトリメリット酸、イソシアヌル酸などの有機酸との塩も用いることができる。
【0044】
さらに、これらイミダゾール誘導体は、潜在性硬化助剤として硬化剤としてのジシアンジアミドと組み合わせても好適に用いることができる。
【0045】
粒子状の潜在性硬化剤としては、固体の有機酸ヒドラジド類を好ましく用いることができる。好ましく用いられる固体の有機酸ヒドラジド類の例としては、アジピン酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド、エイコサン二酸ジヒドラジドなどを挙げることができる。
【0046】
粒子状の潜在性硬化剤としては、固体の芳香族ポリアミン類を好ましく用いることができる。好ましく用いられる固体の芳香族ポリアミン類としては3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなどが挙げられる。
【0047】
さらに、硬化剤や硬化助剤を樹脂と混合して粒子化したものや、別の物質で被覆してマイクロカプセル化したもの、粘度鉱物などの無機粒子に吸着させたものも、潜在性の硬化剤や硬化助剤として好適に用いることができる。
【0048】
また、熱活性型潜在性硬化剤もしくは硬化助剤としては、熱による化学反応で活性成分を発生させるタイプのものを用いることもできる。この場合は、エポキシ樹脂に溶解してもかまわない。このようなタイプの潜在性硬化剤、硬化助剤の例としては、イミダゾールと遷移金属の錯体や、アミンイミド類などを挙げることができる。
【0049】
潜在性硬化助剤と単独では反応性の低い硬化剤を組み合わせる場合は、硬化剤は粒子でも、エポキシ樹脂に均一に溶解したものでよい。そのような組合せの例としては、硬化剤として酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタンのいずれかと、硬化助剤として3級アミンの塩、例えばトリス(ジメチルアミノメチル)フェノールのトリス−エチルヘキシル酸塩を用いる場合が挙げられる。
【0050】
本発明において、ラジカル重合性不飽和化合物(A2)とは、ラジカル重合性の不飽和結合、すなわち2重結合あるいは3重結合を分子内に含む低分子化合物あるいは高分子化合物である。
【0051】
A2成分としては、1種の化合物を単独で用いても、複数種の化合物を混合して用いてもよい。単一化合物を用いる場合は、分子内に複数のラジカル重合性不飽和結合を有する化合物を用いるのが、また、複数の化合物の混合物を用いる場合には、分子内に1つのラジカル重合性不飽和結合を有する化合物と、分子内に複数のラジカル重合性不飽和結合を有する化合物の少なくとも1種を、分子内に複数のラジカル重合性不飽和結合を有する化合物がA2成分中に50重量%以上含むよう配合することが、ラジカル重合で生成する高分子量成分を架橋構造を有するものとし、大きな粘度増大効果を得るようにする上で好ましい。
【0052】
分子内に1つのラジカル重合性不飽和結合を有する低分子化合物の好ましい例としては、フェノキシエチルアクリレート(例えば大阪有機化学工業(株)製“ビスコート”#192)、エトキシジエチレングリコールアクリレート(例えば共栄社化学(株)製“ライトアクリレート”EC−A)、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(例えば共栄社化学(株)製“ライトアクリレート”MTG−A)、メトキシジプロピレングリコールアクリレート(例えば共栄社化学(株)製“ライトアクリレート”DPM−A)、イソボルニルアクリレート(例えば共栄社化学(株)製“ライトアクリレート”IB−XA)、フェニルグリシジルエーテルアクリル酸付加物(例えばナガセ化成工業(株)製“デナコールアクリレート”DA−141)などが挙げられる。
【0053】
分子内に複数のラジカル重合性不飽和結合を有する低分子化合物の好ましい例としては、2つのラジカル重合性不飽和結合を有する低分子化合物として、トリエチレングリコールジアクリレート(例えば共栄社化学(株)製“ライトエステル”3EG−A)、テトラエチレングリコールジアクリレート(例えば東亜合成化学工業(株)製“アロニックス”M−240)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(例えば共栄社化学(株)製“ライトエステル”NP−A)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(例えば共栄社化学(株)製“ライトエステル”1,6HX−A)、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物ジアクリレート(例えば共栄社化学(株)製“ライトエステル”BP−2PA)、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物ジアクリレート(例えば三洋化成(株)製“ネオマー”BA−641)、水素化ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物ジアクリレート(例えば三洋化成(株)製“ネオマー”HA−605)、水素化ビスフェノールAエチレンオキシド付加物ジアクリレート(例えば三洋化成(株)製“ネオマー”HA−601)、ビスフェノールSエチレンオキシド付加物ジアクリレート(例えば東亜合成化学工業(株)製“アロニックス”M−205)、ジメチロールプロパントリシクロデカンジアクリレート(例えば共栄社化学(株)製“ライトエステル”DCP−A)、エチレングリコールジメタクリレート(例えば共栄社化学(株)製“ライトエステル”EG)、ジエチレングリコールジメタクリレート(例えば共栄社化学(株)製“ライトエステル”2EG)、トリエチレングリコールジメタクリレート(例えば三洋化成(株)製“ネオマー”PM−201)、1,4−ブタンジオールジメタクリレート(例えば共栄社化学(株)製“ライトエステル”1・4BG)、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(例えば共栄社化学(株)製“ライトエステル”1・6HX)、グリセリンジメタクリレート(例えば共栄社化学(株)製“ライトエステル”G−101P)、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物ジメタクリレート(例えば共栄社化学(株)製ライトエステルBP−2EM)、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物ジメタクリレート、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)(2−ヒドロキシエチル)シアヌレート(例えば東亜合成化学工業(株)製“アロニックス”M−215)、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物(例えば共栄社化学(株)製エポキシエステル3000A)、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物ジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物ジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物ジグリシジルエーテルアクリル酸付加物(例えば共栄社化学(株)製エポキシエステル3002A)、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物ジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物(例えば共栄社化学(株)製エポキシエステル3002M)、グリセロールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物(例えば共栄社化学(株)製エポキシエステル80MFA)、ジグリシジルフタレートアクリル酸付加物(例えばナガセ化成工業(株)製“デナコールアクリレート”DA−721)、ジグリシジルテトラヒドロフタレートアクリル酸付加物(例えばナガセ化成工業(株)製“デナコールアクリレート”DA−722)、レゾルシノールジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物(例えばナガセ化成工業(株)製“デナコールアクリレート”DA−201)、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレートなど、3つのラジカル重合性不飽和結合を有する低分子化合物として、トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば東亜合成化学工業(株)製“アロニックス”M−309)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(例えば東亜合成化学工業(株)製“アロニックス”M−305)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(例えば共栄社化学(株)製“ライトエステル”TMP)、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)シアヌレート(例えば東亜合成化学工業(株)製“アロニックス”M−315)、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート(例えば大阪有機化学工業(株)製“ビスコート”3PA)、グリセロールトリグリシジルエーテルアクリル酸付加物(例えばナガセ化成工業(株)製“デナコールアクリレート”DA−314)、トリアリルシアヌレートなど、4つのラジカル重合性不飽和結合を有する低分子化合物として、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(例えば共栄社化学(株)製“ライトエステル”BP−4A)、グリセリンジメタクリレートイソホロンジイソシアネート付加物(例えば共栄社化学(株)製ウレタンアクリレートUA−101I)、グリセリンジメタクリレートヘキサメチレンジイソシアネート付加物(例えば共栄社化学(株)製ウレタンアクリレートUA−101H)、グリセリンジメタクリレートトリレンジイソシアネート付加物(例えば共栄社化学(株)製ウレタンアクリレートUA−101T)など、5つのラジカル重合性不飽和結合を有する低分子化合物として、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(例えば三洋化成(株)製“ネオマー”DA−600)など、6つのラジカル重合性不飽和結合を有する低分子化合物として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(例えば共栄社化学(株)製“ライトエステル”DPE−6A)、ペンタエリスリトールトリメタクリレートイソホロンジイソシアネート付加物(例えば共栄社化学(株)製ウレタンアクリレートUA−306I)、ペンタエリスリトールトリメタクリレートヘキサメチレンジイソシアネート付加物(例えば共栄社化学(株)製ウレタンアクリレートUA−306H)、ペンタエリスリトールトリメタクリレートトリレンジイソシアネート付加物(例えば共栄社化学(株)製ウレタンアクリレートUA−306T)などが挙げられる。
【0054】
また、末端、側鎖、主鎖にラジカル重合性の不飽和結合をもつ高分子化合物あるいはオリゴマーも用いることができる。例えば、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールの末端水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの、酸成分としてマレイン酸またはフマル酸を含むポリエステル、ナジック酸無水物あるいはエチニル無水フタル酸などのラジカル重合性不飽和結合を有する酸無水物でアミノ末端を封止したポリイミドなどを用いることができる。
【0055】
さらに、ラジカル重合性の不飽和結合とともに、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アルコキシメチル基、第1または第2アミン、アミド、1,2−ジカルボン酸無水物構造、窒素含有複素環などのA1成分と反応しうる部分構造を有する低分子または高分子化合物を用いることもできる。
【0056】
かかる化合物としては、例えば、1つのラジカル重合性不飽和結合を有するものとして、2−アクリロイルオキシエチル水素フタレート(例えば大阪有機化学工業(株)製“ビスコート”#2000)、2−アクリロイルオキシプロピル水素フタレート(例えば大阪有機化学工業(株)製“ビスコート”#2100)、2−メタクリロイルオキシエチル水素フタレート(例えば共栄社化学(株)製“ライトエステル”HO−MP)、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート(例えば大阪有機化学工業(株)製“ビスコート”#2311HP)、無水マレイン酸、無水ナジック酸などを挙げることができ、2つのラジカル重合性不飽和結合を有するものとして、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸部分付加物(例えば昭和高分子(株)製“リポキシ”SP−1509H1)、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)2−ヒドロキシエチルシアヌレート(例えば東亜合成化学工業(株)製“アロニックス”M−215)などを挙げることができる。これらの成分の配合は、樹脂組成物Aの最終的な硬化物中でA2成分の重合体とA1成分との間に化学結合を形成し、モルフォロジーや物性を改良する効果をもつ。
【0057】
A2成分は、目的とするプロセスで要求される粘度の増大効果に適するように配合されるが、通常、A2成分の配合量は、A1成分100重量部に対して1〜20重量部とするのがよい。
【0058】
本発明において、加熱によりラジカルを発生する重合開始剤(A3)としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物などを用いることができる。アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)などを用いることができる。
【0059】
有機過酸化物としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,2,5−トリメチルシクロヘキサン(例えば日本油脂(株)製“パーヘキサ”3M−95)、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロドデカン(例えば日本油脂(株)製“パーヘキサ”CD)、1,1,3,3−テトラメチルヒドロペルオキシド(例えば日本油脂(株)製“パーオクタ”H)、1,1−ジメチルブチルペルオキシド(例えば日本油脂(株)製“パーヘキシル”H)、ビス(1−t−ブチルペルオキシ−1−メチルエチル)ベンゼン(例えば日本油脂(株)製“パーブチル”P)、ジクミルペルオキシド(例えば日本油脂(株)製“パークミル”D)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン(例えば日本油脂(株)製“パーヘキサ”25B)、t−ブチルクミルペルオキシド(例えば日本油脂(株)製“パーブチル”C)、ジ−t−ブチルペルオキシド(例えば日本油脂(株)製“パーブチル”D)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン(例えば日本油脂製(株)パーヘキシン25B)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル(例えば日本油脂(株)製“パーロイル”L)、過酸化デカノイル(例えば三建化工(株)製“サンペロックス”−DPO)、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート(例えば三建化工(株)製“サンペロックス”−CD)、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート(例えば日本油脂(株)製“パーロイル”TCP)、t−ブチル2−エチルペルヘキサノエート(例えば日本油脂(株)製“パーブチル”O)、(1,1−ジメチルプロピル)2−エチルペルヘキサノエート(例えば化薬アクゾ(株)製“トリゴノックス”121)、(1,1−ジメチルブチル)2−エチルペルヘキサノエート(例えば化薬アクゾ(株)製“カヤエステル”HO)、t−ブチル3,5,5−トリメチルペルヘキサノエート(例えば日本油脂(株)製“パーブチル”355)、過炭酸O−イソプロピル−OO−(1,1−ジメチルブチル)(例えば日本油脂(株)製“パーヘキシル”I)、過炭酸OO−(t−ブチル)−O−イソプロピル(例えば日本油脂(株)製“パーブチル”I)、過炭酸OO−(t−ブチル)−O−(2−エチルヘキシル)(例えば日本油脂(株)製“パーブチル”E)、過マレイン酸OO−t−ブチル(例えば日本油脂(株)製“パーブチル”MA)、過ラウリン酸t−ブチル(例えば日本油脂(株)製“パーブチル”L)、過安息香酸t−ブチル(例えば日本油脂(株)製“パーブチル”Z)などを用いることができる。これらのラジカル重合開始剤は単独でも、複数混合して用いてもよい。
【0060】
本発明に用いられる樹脂組成物には、A1、A2、A3成分以外に以下に述べるような成分を配合することができる。
【0061】
加熱によりラジカルを発生する重合開始剤(A3成分)の反応性を制御するために、樹脂組成物に重合禁止剤や促進剤を加えることができる。
【0062】
重合禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、p−ベンゾキノン、2−エチルアントラキノン、ジラウリルチオジプロピオネート、クペロンなどを用いることができる。
【0063】
促進剤としては、たとえば、遷移金属の塩、例えばナフテン酸コバルトなどを用いることができる。
【0064】
本発明に用いられる樹脂組成物には、熱可塑性樹脂、エラストマー、熱可塑性エラストマーなどの高分子化合物を加えることができる。これらの高分子化合物の添加には、エポキシ樹脂組成物の粘度調整、プリプレグのタック性調整、硬化物の靱性向上、強化繊維との接着性向上などの効果がある。
【0065】
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、樹脂組成物の他の成分に溶解が容易なものが好ましく用いられる。また、樹脂組成物の他の成分に不溶の熱可塑性樹脂であっても、微粒子化したものであれば、好ましく配合することができる。具体的には、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール、フェノキシ樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリーレンオキシド、ポリスルホン、ポリアミド、ポリイミドが好ましく用いられる。
【0066】
アクリル樹脂はアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの重合体で、代表的なものは、ポリメタクリル酸メチルである。市販品としては、“デルペット”(旭化成工業(株)製)、“アクリペット”(三菱レイヨン(株)製)などがある。ポリビニルアセタールはポリビニルアルコールをホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどのカルボニル化合物でアセタール化した樹脂で、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタールが挙げられる。市販品には、“デンカブチラール”および“デンカホルマール”(電気化学工業(株)製)、“ビニレック”(チッソ(株)製)などがある。フェノキシ樹脂はビスフェノールAとエポクロロヒドリンを縮合させて得られる樹脂で、市販品には“UCAR”PKHP(ユニオンカーバイド社製)などがある。ポリエステルは、主鎖にカルボン酸エステル結合を有するポリマーである。市販品には“バイロン”(東洋紡績(株)製)などが挙げられる。ポリカーボネートは、主鎖に炭酸エステル結合を有するポリマーで、ビスフェノールAカーボネートが代表的である。市販品には、“パンライト”(帝人化成(株)製)などがある。ポリアリーレンオキシドは、芳香族二価基と酸素原子が交互に配列した主鎖構造を有する樹脂である。市販品には、“ノリル”(ジェネラル・エレクトリック社製)などがある。ポリスルホンは主鎖にスルホニル基を有する樹脂である。他にエーテル結合などを主鎖に有する場合が多い。市販品には“Victrex”(三井東圧化学(株)製)、“UDEL”(ユニオン・カーバイド社製)がある。ポリアミドは、主鎖にカルボン酸アミド構造を有する樹脂である。市販品には、“マクロメルト”(ヘンケル白水(株)製)、“アミラン”CM4000(東レ(株)製)がある。ポリイミドは、主鎖にジカルボン酸イミド構造を有する樹脂である。他にエーテル結合やアミド結合を有する場合もある。市販品には“ウルテム”(ジェネラル・エレクトリック社製)、“Matrimid”5218などがある。
【0067】
これらのうち、ポリスルホン、ポリアリーレンオキシド、ポリイミドは、耐熱性と靱性をともに要求される用途に適する。ポリスルホン、ポリビニルホルマールは炭素繊維との接着性を向上させる効果があり、層間剪断強度、圧縮強度、曲げ強度などの向上が得られる。
【0068】
エラストマーとしては、アクリロニトリルとブタジエンを原料とする共重合体が溶解性に優れるため好ましく用いられる。特に、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基など熱硬化性樹脂またはその硬化剤と反応しうる官能基を有するものを用いると、硬化物の靱性向上効果が大きいため、特に好ましい。
【0069】
また樹脂組成物Aの他の成分に不溶のエラストマー相を含有する粒子も好ましく用いることができる。架橋したエラストマー粒子そのものを用いることもできるが、特にエポキシ樹脂不溶のエラストマー粒子の表面を非エラストマー成分で被覆したコアシェル型エラストマー粒子を特に好ましく用いることができる。この場合被覆する成分はポリメタクリル酸メチルのように溶解、あるいは膨潤するものが、粒子のエポキシ樹脂中への分散が良好になるため好ましい。不溶性のエラストマー相を含有する粒子を用いた場合は、樹脂硬化物の耐熱性が通常のエラストマーより優れるという利点がある。
【0070】
これらのエラストマーの添加には、靱性の向上効果がある。特に粒径が0.1〜0.3μm程度の微細なコアシェル型エラストマー粒子を配合した場合、靱性の向上効果が著しい。
【0071】
熱可塑性エラストマーとしては、樹脂組成物Aの他の成分に溶解が容易なものが好ましく用いられる。具体的には、ソフトセグメントとしてポリエーテル構造、ハードセグメントとして、芳香族ポリエステルまたは、脂肪族ポリアミド構造をもつブロック共重合体が好ましい。市販のポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、東レ・デュポン社製“ハイトレル”、東洋紡績(株)製“ペルプレン”、アクゾ社製“ARNITEL”、ジェネラル・エレクトリックス社製“LOMOND”を、市販のポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、ヒュルス社製“VESTAMID”、ATOCHEM社製“PEBAX”、EMS社製“グリラックスA”、三菱化成(株)製“NOVAMID”などを挙げることができる。これらの熱可塑性エラストマーの添加には、硬化物の靱性向上などの効果がある。また、通常のエラストマーを添加した場合より、硬化物の耐熱性が優れる。
【0072】
本発明に用いられる樹脂組成物には、さらにシリカ、アルミナ、酸化チタン、ジルコニア、粘土鉱物、タルク、雲母、フェライトなどの無機粒子を配合することができる。これらの添加には、未硬化樹脂組成物に揺変性を付与する効果、樹脂硬化物の弾性率、耐熱性を向上させる効果、耐摩耗性を向上させる効果がある。また、金属、カーボンブラック、酸化銅、酸化スズなどの粒子を導電性向上のために配合することもできる。
【0073】
本発明では、上記樹脂組成物を、強化繊維に含浸する工程(工程1)、および強化繊維に含浸させた樹脂組成物Aに対し熱処理を行う工程(工程2)を経てプリプレグを得る。
【0074】
強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維など公知のものを使用することができる。特に、本発明の特徴は、紫外線を照射する従来技術と異なり、紫外線を透過しない強化繊維を用いることができる点にある。比強度や比弾性率が優れ、最終製品の優れた機械特性が得られるために好ましく用いられる炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維はいずれも紫外線を透過しない強化繊維であり、本発明がこれらに適用できる意義は大きい。
【0075】
強化繊維としては、その体積含有率を高めることができるため、長繊維であることが好ましい。強化繊維の長繊維は、1本のストランド、複数のストランドを束ねたもの、複数のストランドを平行に配列しシート状にしたもの、織物、ニット、組紐などの形態で用いられる。
【0076】
樹脂組成物を、強化繊維に含浸する工程(工程1)は、いくつかの方法で行うことが可能である。強化繊維に樹脂組成物で満たした浸漬槽を通過させる方法、ロールに付着させた樹脂組成物と強化繊維を接触させるリバースロール法やキスロール法、口金から一定速度で樹脂組成物を吐出し、強化繊維に付着させる方法、強化繊維に一定速度で樹脂組成物が供給される口金を通過させる方法、樹脂組成物を塗布した離型紙2枚、または樹脂組成物を塗布した離型紙と塗布しない離型紙で強化繊維を上下からはさみ、圧力を加えて含浸させる方法などを用いることができる。
【0077】
含浸工程の温度は、樹脂組成物の粘度が0.01〜100ポイズ程度と十分低ければ室温でも良いが、樹脂組成物の粘度を低下させるために、A1成分およびA3成分の反応が実質的に起こらない温度、例えば40〜180℃程度に加温しても良い。また、A3成分については逆に、含浸工程に要する温度、時間では安定であるような反応性のものを選択して使用することができる。
【0078】
強化繊維に含浸させた樹脂組成物に対し熱処理を行う工程(工程2)は、樹脂組成物の粘度を増大させるために行われる。この熱処理により、A3成分が分解し、ラジカルが発生する。発生したラジカルによりA2成分が重合反応を起こし、樹脂組成物の粘度が増大する。工程2において、一旦、A3成分が分解して、ラジカルが発生すれば、工程2を通過した後もA2成分の重合反応は進行するため、工程2は極めて短時間で行うことができる。また、A2成分およびA3成分は樹脂組成物の粘度が十分増大すれば、完全に反応して消費される必要はない。
【0079】
工程2の熱処理においては、A3成分を反応させるが、A1成分を実質的に反応させないことが、プリプレグの可使時間を長くすることができるため好ましい。
【0080】
A1成分を実質的に反応させない熱処理条件を見いだすためには、示差走査熱量分析(DSC)を用いることができる。工程2が一定温度の熱履歴を一定時間かける場合は、工程2で使用する温度でA1成分の等温分析を行い、A1成分の発熱開始の始まる時間より短い熱処理時間を用いればよい。工程2の熱処理が昇温過程を含むばあいは、DSCにおいて同様の昇温を行い発熱のないことを確認すればよい。そして、見いだされた熱処理条件によって分解し、ラジカルを十分に発生するような反応性のものをA3成分として使用することが好ましい。
【0081】
A3成分が反応することを確認するためにも、同様にDSCを用いることができる。工程2に相当する熱履歴で樹脂組成物のDSC測定を行い、A3成分の分解とA2成分の重合による発熱の開始が確認されればよい。発熱の開始が確認できれば、その熱履歴の範囲内で完全にA3成分の分解とA2成分の重合の反応が終了する必要はない。
【0082】
あるいは樹脂組成物の粘度の増大によりA3成分の反応の確認を行うこともできる。この方法は、樹脂組成物に加熱プレス機などを用いて工程2に相当する熱履歴を与え、しばらく放置した後の特定温度の粘度を測定し、熱処理なしの樹脂組成物の粘度と比較することにより行う。粘度の値としては、回転粘度計で求めた粘度もしくは動的粘弾性測定装置で求めた複素粘性率を用いることができる。粘度の増大効果は、使用目的に応じた特定温度で10倍以上であることが好ましい。いずれにしても、工程2における熱処理条件は上記手段により選定できるが、通常は60〜200℃で1秒〜1分、好ましくは80〜180℃で3秒〜30秒である。
【0083】
工程2の熱処理の手段としては、熱風オーブン、赤外線ヒーター、熱ロール、熱板などを用いることができる。これらの手段は複数組合わせて使用することができる。
【0084】
工程2は、工程1で作製したプリプレグを一旦巻き取って別の装置で行うこともできるが、工程1と同一ラインで行うことが生産性が高くなるため好ましい。工程1と工程2を同一ラインで行う場合、工程2の熱処理に要する時間、複数の加熱手段を用いる場合はそれらの時間の合計、は短い方が好ましい。熱処理に要する時間が長いと、工程1と工程2を同一ラインで行う場合、ライン速度を遅くするか、長大な加熱ゾーンを設置する必要が生じる。熱処理に要する時間は具体的には1分以内が好ましく、30秒以内であればさらに好ましい。
【0085】
そして、プリプレグの曲げ弾性率を測定することにより、工程2の熱処理によってプリプレグ中のマトリックス樹脂が増粘したことを確認することができる。プリプレグの曲げ弾性率は強化繊維中に含浸しているマトリックス樹脂の粘度をよく反映し、樹脂の粘度が増大するとプリプレグの曲げ弾性率も増大する。
【0086】
本発明において、工程1と工程2を経て製造されプリプレグは、通常の熱硬化性樹脂を用いたプリプレグと同様に使用して繊維強化複合材料を得ることができる。
【0087】
このようにして得られたプリプレグは、マトリックス樹脂が、ほぼ未反応の熱硬化性樹脂(A1成分)と、ラジカル重合性不飽和化合物(A2成分)が前記重合開始剤により重合した重合体からなり、かつ、該重合体が、熱硬化性樹脂と均一相を形成するか、熱硬化性樹脂と分離した連続相として存在したものとなる。
【0088】
プリプレグのマトリックス樹脂中に含まれる前記重合体には、使用した重合開始剤(A3成分)に由来する構造が含まれる。A3成分に由来する構造とは、例えばA3成分が過ラウリン酸t−ブチルである場合は、t−ブチルオキシ基とラウロイル基といったように、A3成分が分解して生じるラジカル成分がA2成分の不飽和結合と反応した結果、生成した重合体に組み込まれた構造のことである。
【0089】
A2成分としては、ラジカル重合性不飽和結合を分子内に複数有する化合物を50%〜100%含むものを用いることが好ましいことは前述したとおりであるが、このようなA2成分を用いた場合、前記重合体は架橋構造を有するものになり、プリプレグのマトリックス樹脂中で熱硬化性樹脂と均一相を形成するか、熱硬化性樹脂と分離した連続相として存在するようになる。ラジカル重合性不飽和結合を分子内に複数有する化合物の(共)重合により架橋した構造を有する重合体、例えば架橋ゴム粒子などを、プリプレグのマトリックス樹脂中に配合することは、従来より行われている。しかし、架橋した構造を有する重合体は熱硬化性樹脂に溶解することはできないため、粒子状の形態で添加することしかできない。したがって、このようなプリプレグは本発明により得られたプリプレグとは重合体の存在する形態により区別される。
【0090】
このような重合体がマトリックス樹脂中で熱硬化性樹脂と均一相を形成するか、熱硬化性樹脂と分離した連続相として存在することを確認するための簡単な方法の一例としては、プリプレグから適当な溶剤を用いて熱硬化性樹脂成分を抽出し、残った重合体が連続した形態を持つことを調べる方法が挙げられる。
【0091】
本発明により得られたプリプレグ中の熱硬化性樹脂成分は、含浸に用いた樹脂組成物のA1成分からほぼ変化しない。したがって、A1成分としてエポキシ樹脂組成物を用い、その成分として、粒子状の硬化剤や硬化助剤を用いた場合、これらはプリプレグ中においてもほぼそのままの状態で見出される。このことは、例えば、顕微鏡観察または、エポキシ樹脂のみを溶解する適当な溶媒にプリプレグを浸漬し、強化繊維とA2成分に由来する重合体を金網などで濾別し、その濾液をさらに濾紙やメンブランフィルターなどで濾過して硬化剤や硬化助剤の粒子を得ることにより確認することができる。
【0092】
繊維強化複合材料は、所定の形状に裁断したシート状プリプレグ、テープ状あるいは紐状のプリプレグを積層後、加熱加圧して得られる。特に管状物を成形する場合は積層はマンドレルにプリプレグを巻き付けることにより行われる。加熱加圧する方法は、オートクレーブを用いる方法、真空バッグとヒーターを用いる方法、ラッピングテープを巻き付けて圧力を付与しオーブン中で加熱する方法、樹脂チューブにプリプレグを巻き付けて金型に入れ、金型を加熱するとともに樹脂チューブに高圧空気を導入して内側から加圧する方法などが用いられる。
【0093】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の複素粘性率の測定は、測定装置としてレオメトリックス社製動的粘弾性測定装置RDA−IIを用い、温度35℃、周波数0.5s-1の条件で行った。DSC測定には測定装置としてメトラー社製DSC−30を用いた。
【0094】
また、プリプレグの剥離強度の測定は、インストロン社製万能試験機4201型を用い、50×50mmの大きさにカットした2枚のプリプレグを貼り合わせて300Nの荷重で5秒間圧着し、その直後に2枚のプリプレグを接触面に対して垂直方向に引き剥がすという方法で行った。そして、引き剥がすときの最大荷重をプリプレグの接触面積で割った値を、プリプレグの剥離強度とした。測定条件は次の通りである。
【0095】
環境 :23.2℃、50±5%RH
圧着速度:1mm/min
引き剥がし速度:10mm/min
プリプレグの曲げ弾性率は、次のようにして求めた。インストロン社製万能試験機4201型を用い、繊維方向に長さ85mm、繊維方向に対して直角に幅15mmの大きさにカットしたプリプレグについて次に示す条件で3点曲げ試験を行って荷重−たわみ曲線を得る。
【0096】
Figure 0003669090
ここで得られた荷重−たわみ曲線の初期勾配より、次式を用いて算出した弾性率をプリプレグの曲げ弾性率とした。
【0097】
E=L3×m/4b×h3
ここで、E:弾性率(N/mm2
L:支点間距離(mm)
m:荷重−たわみ曲線の初期勾配(N/mm)
b:試験片の幅(mm)
h:試験片の厚み(mm)
(実施例1)
下記原料を混合し、エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0098】
Figure 0003669090
この樹脂組成物のDSC測定を130℃の等温条件で行った。発熱開始時間は90秒であった。
【0099】
つづいて、下記原料を混合し、樹脂組成物を調製した。
【0100】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 100重量部
(東都化成(株)製“エポトート”YD−128)
ジシアンジアミド 3.5重量部
DCMU 4重量部
ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物 10重量部
(共栄社化学(株)製エポキシエステル3000M)、
t−ブチル2−エチルペルヘキサノエート 0.2重量部
(日本油脂(株)製“パーブチル”O)
この樹脂組成物の複素粘性率は、3.4Pa・sであった。
【0101】
この樹脂組成物と厚さ1mmのテフロンスペーサーを2枚のポリエステルフィルムにはさみ、130℃に加熱したプレス機で20秒間はさんで熱処理した。熱処理後の樹脂組成物の複素粘性率は1.0×103 Pa・sであった。
【0102】
(実施例2)
下記原料を混合し、樹脂組成物を調製した。
【0103】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 100重量部
(東都化成(株)製“エポトート”YD−128)
ジシアンジアミド 3.5重量部
DCMU 4重量部
ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物 15重量部
(共栄社化学(株)製エポキシエステル3000M)、
t−ブチル2−エチルペルヘキサノエート 0.2重量部
(日本油脂(株)製“パーブチル”O)
この樹脂組成物の複素粘性率を測定したところ、4.2Pa・sであった。
【0104】
この樹脂組成物と厚さ1mmのテフロンスペーサーを2枚のポリエステルフィルムにはさみ、130℃に加熱したプレス機で20秒間はさんで熱処理した。熱処理後の樹脂組成物の複素粘性率は1.3×104 Pa・sであった。
【0105】
(実施例3)
下記原料を混合し、樹脂組成物を調製した。
【0106】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 100重量部
(東都化成(株)製“エポトート”YD−128)
ジシアンジアミド 3.5重量部
DCMU 4重量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 5重量部
(共栄社化学(株)製ライトエステルDPE−6A)
t−ブチル2−エチルペルヘキサノエート 0.2重量部
(日本油脂(株)製“パーブチル”O)
この樹脂組成物の複素粘性率を測定したところ、3.4Pa・sであった。
【0107】
この樹脂組成物と厚さ1mmのテフロンスペーサーを2枚のポリエステルフィルムにはさみ、130℃に加熱したプレス機で20秒間はさんで熱処理した。熱処理後の樹脂組成物の複素粘性率は7.1×102 Pa・sであった。
【0108】
(実施例4)
下記原料を混合し、樹脂組成物を調製した。
【0109】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 100重量部
(東都化成(株)製“エポトート”YD−128)
ジシアンジアミド 3.5重量部
DCMU 4重量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 10重量部
(共栄社化学(株)製ライトエステルDPE−6A)
t−ブチル2−エチルペルヘキサノエート 0.2重量部
(日本油脂(株)製“パーブチル”O)
この樹脂組成物の複素粘性率を測定したところ、3.5Pa・sであった。
【0110】
この樹脂組成物と厚さ1mmのテフロンスペーサーを2枚のポリエステルフィルムにはさみ、130℃に加熱したプレス機で20秒間はさんで熱処理した。熱処理後の樹脂組成物の複素粘性率は1.1×104 Pa・sであった。
【0111】
(実施例5)
下記原料を混合し、樹脂組成物を調製した。
【0112】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 40重量部
(東都化成(株)製“エポトート”YD−128)
ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂 25重量部
(油化シェルエポキシ(株)製“エピコート”1001)
フェノールノボラック型エポキシ樹脂 35重量部
(油化シェルエポキシ(株)製“エピコート”154)
ジシアンジアミド 3.5重量部
DCMU 4重量部
ポリビニルホルマール 3重量部
(チッソ(株)製“ビニレック”K)
ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物 18重量部
(共栄社化学(株)製エポキシエステル3000M)
1,1,3,3,−テトラメチルブチル−2−エチルペルヘキサノエート 0.2重量部
(日本油脂(株)製“パーオクタ”O
この樹脂組成物の複素粘性率を測定したところ、6.1×10Pa・sであった。この樹脂組成物と厚さ1mmのテフロンスペーサーを2枚のポリエステルフィルムにはさみ、130℃に加熱したプレス機で20秒間はさんで熱処理した。熱処理後の樹脂組成物の複素粘性率は3.1×10Pa・sであった。
【0113】
(実施例6)
実施例5の樹脂組成物を離型紙上に目付34g/m2 になるよう塗布する。続いて、図1に示す装置を用いてプリプレグを製造する。クリール1からくり出され、コーム2を通して一方向に引き揃えられ、目付140g/m2 のシート状にした炭素繊維101(“トレカ”M46JB(東レ(株)製))を巻出しロール3、4から巻き出された離型紙102、および樹脂組成物を塗布した離型紙103で挟み、100℃の熱板で予熱して、100℃に加熱したニップロール6で加圧して含浸させ、160℃の4枚の熱板7〜10(合計長1.8m)をラインスピード10m/minで通過させて、離型紙102を巻取ロール11に巻き取った後、表面平滑性プリプレグ104を巻取ロール12として巻き取る。
【0114】
樹脂を含浸させただけで、熱板7〜10による熱処理を行なう前のプリプレグ(熱処理前プリプレグ)、および含浸後に熱処理を行って巻き取ったプリプレグ(熱処理後プリプレグ)のそれぞれについて曲げ弾性率を測定したところ、熱処理前プリプレグが3.93×104N/mm2であったのに対して、熱処理によりプリプレグ中のマトリックス樹脂の粘度が増大したために曲げ弾性率も増大して、9.26×104N/mm2となった。また、熱処理前プリプレグの剥離強度を測定したところ106kPaであり、タックがやや弱い状態であったのに対して、熱処理後プリプレグの剥離強度はマトリックス樹脂粘度の増大に伴って増大して126kPaとなり、良好なタック性を有していた。
【0115】
【発明の効果】
本発明のプリプレグの製造方法によると、低粘度のマトリックス樹脂を強化繊維に含浸するため、生産性が良く、また得られたプリプレグの表面平滑性もよい。含浸後の熱処理によりマトリックス樹脂の粘度を高めることができるため、得られたプリプレグの取扱性や成形時の樹脂フローも良好である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプリプレグの製造方法で使用する製造装置の一例の概略構成図である。
【符号の説明】
1 クリール
2 コーム
3 離型紙の巻出しロール
4 樹脂組成物Aを塗布した離型紙の巻出しロール
5 予熱用熱板
6 ニップロール
7、8、9、10 加熱用熱板
11 離型紙の巻取ロール
12 プリプレグの巻取ロール
101 炭素繊維(強化繊維)
102 離型紙
103 樹脂組成物Aを塗布した離型紙
104 プリプレグ

Claims (6)

  1. 実質的にラジカル重合性を持たない熱硬化性樹脂(A1)、ラジカル重合性不飽和化合物(A2)および加熱によりラジカルを発生する重合開始剤(A3)からなる樹脂組成物を、強化繊維に含浸する工程(工程1)、および強化繊維に含浸された樹脂組成物に対し熱処理を行う工程(工程2)を経てプリプレグを得るプリプレグの製造方法において、工程2においては、A3成分は分解反応してラジカルを発生するがA1成分は実質的に硬化反応しないこと、かつ、工程2における熱処理時間が1分以内であることを特徴とするプリプレグの製造方法。
  2. 工程1と工程2を同一製造ライン中で行うことを特徴とする請求項記載のプリプレグの製造方法。
  3. ラジカル重合性の不飽和結合を複数有する化合物を、A2成分中に50〜100重量%有することを特徴とする請求項1または2に記載のプリプレグの製造方法。
  4. A1成分がエポキシ樹脂と硬化剤からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
  5. 硬化剤が、イミダゾール誘導体、有機酸ヒドラジド類、芳香族ジアミン類から選ばれる少なくとも一種の粒子状硬化剤である請求項記載のプリプレグの製造方法。
  6. 硬化剤が、ジシアンジアミドからなる粒子状硬化剤を含み、A1成分には、さらに、アリール基で置換された尿素誘導体またはイミダゾール誘導体からなる粒子状の硬化助剤が含有される請求項記載のプリプレグの製造方法。
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