JP3665507B2 - 固形状油中水型乳化化粧料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固形状油中水型乳化化粧料に関し、さらに詳しくは、シャーベット様の感触を有し、使用時に肌の上で溶解し清涼感がある、使用感に優れ、かつ、経時安定性に優れた高内水相の固形状油中水型乳化化粧料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、シリコーン油、特に揮発性のシリコーン油を用いた比較的さっぱりとした感触の油中水型乳化化粧料がさかんに開発されてきている。しかし、この揮発性シリコーン油を多量に用いた油中水型乳化化粧料は、経時安定性の確保が困難であった。この欠点を改善し、携帯性を向上させるため、固形状の油中水型乳化化粧料が開発されてきている。例えば、特開平1−79104号公報に記載されているように、特定のポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンと固形油により、固形状油中水型乳化化粧料を調製する技術がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この特定のポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンは、固化するための必須成分である固形油との相溶性が必ずしも良くないため、油分が不均一になりやすく、これによる品質の劣化や経時安定性に問題を生じる場合があった。また、形状保持のため高融点の固形油を比較的多量に配合すると、系全体の融点が高くなり、指でのとれが悪くなったり、使用中の油感の増大、使用後の肌のべたつきなど、感触を悪くする場合があった。このため、これらの問題点を解決した固形状油中水型乳化化粧料の開発が望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記実状に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、(A)長鎖アルキル含有ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、(B)特定の範囲の融点を有する固形油、(C)揮発性シリコーン油を含む液体油及び/またはペースト油、(D)特定量の水性成分の各成分を含有し、かつ、成分(A)〜(C)の重量比((A)+(B)+(C))/(B)が特定の範囲にある固形状油中水型乳化化粧料は、油分の不均一化が抑制されて経時安定性に優れ、さらには、使用時にシャーベット様の独特の感触を有すると同時に、使用中清涼感とさっぱり感が良好で、肌上での溶けなじみが早く、べたつきが少ないという優れた官能特性を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
すなわち本発明は、次の成分(A)〜(D);
(A)長鎖アルキル含有ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン
(B)融点が80℃以下である固形油
(C)揮発性シリコーン油を含む液体油及び/またはペースト油
(D)水性成分
を含有し、成分(D)の含有量が55〜90重量%、かつ、成分(A)〜(C)の含有重量比が、((A)+(B)+(C)):(B)=5:1〜20:1であることを特徴とする固形状油中水型乳化化粧料を提供するものである。
さらには、成分(E)として、清涼剤を含有することを特徴とする固形状油中水型乳化化粧料を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明で述べる固形状油中水型乳化化粧料とは、通常化粧料として使用する温度範囲(0℃〜40℃)で流動性がなく、固化しているもの(ペースト状を含む)を示す。
以下、本発明の構成について述べる。
【0007】
本発明に用いられる(A)成分の長鎖アルキル含有ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンは、長鎖アルキル基を含有する基とポリオキシアルキレン基とで共変性されたオルガノポリシロキサンであれば特に限定されないが、固形油との相溶性の観点から、次の一般式(1)で表されるものが好ましいものとして挙げられる。
【0008】
【化2】
Figure 0003665507
【0009】
[式中,Rは炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基を示す。Rは、−Q−O−(CO)−(CO)−Rで示され、Qは炭素数1〜5の2価の炭化水素基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はアセチル基を示す。aは1〜50の整数、bは0〜50の整数である。Rは−(CO)−Rで示され、cは0〜5の整数、Rは6〜18のアルキル基である。lは5〜150の整数、mは5〜40の整数、nは2〜40の整数である。]
【0010】
本発明の(A)成分の長鎖アルキル含有ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンは、例えば、一般式(1)で表されるABIL EM−90、ABIL B9806(共にゴールドシュミット社製)など市販されているものや、特開平4−36324号公報、特開平9−59388号公報に記載されているシリコーン化合物を挙げることができ、これらを必要に応じて一種又は二種以上用いることができる。
【0011】
本発明の固形状油中水型乳化化粧料における(A)成分の含有量は、べたつき感や経時安定性の観点から、全組成中0.05〜10重量%(以下、単に「%」で示す)が好ましく、より好ましくは0.1〜7%である。
【0012】
本発明に用いられる(B)成分の固形油は、融点が80℃以下の通常化粧料として用いられる固形油であれば特に限定されない。融点が80℃以下の固形油としては、例えば、キャンデリラロウ、モクロウ等の植物性ワックス、ミツロウ、ゲイロウ等の動物性ワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス、トリベヘン酸グリセリル等のエステル類、ステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸類、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類等が挙げられ、必要に応じて、これらの一種又は二種以上を用いることができる。これらの中で、特にキャンデリラロウが好ましく、就中、樹脂分をカットした脱樹脂キャンデリラロウが好ましい。
融点が80℃より高い固形油の使用は、本発明の固形状油中水型乳化化粧料の系全体の融点を上昇させ、肌上での溶けなじみが悪くなるので好ましくないが、本発明の効果を損なわない範囲であれば使用しても良い。
【0013】
本発明における(B)成分の含有量は、固形状の保持やサクッとしたシャーベットのような感触、経時安定性の観点から、全組成中1〜9%が好ましい。
【0014】
本発明に用いられる(C)成分を構成する揮発性シリコーン油としては、通常化粧料として用いられるものであれば特に限定されず、例えば、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状シリコーン類、25℃での粘度が5cs以下のジメチルポリシロキサンを挙げることができ、これらを必要に応じて一種又は二種以上用いることができる。
【0015】
また、本発明に用いられる(C)成分を構成する他の成分である、揮発性シリコーン油以外の液体油またはペースト油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、フッ素変性シリコーン等の不揮発性シリコーン油、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油等の油脂類、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素類、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、トリオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル等のエステル類、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のアミノ酸誘導体油類、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類等が挙げられ、これらを必要に応じて一種又は二種以上用いることができる。
【0016】
本発明の(C)成分のうち、揮発性シリコーン油の含有量は、全組成中1〜30%、より好ましくは3〜20%である。また、揮発性シリコーン油を含む液体油およびまたはペースト油の配合量は、全組成中5〜40%が好ましい。また、使用時のシャーベット様の独特の感触の付与や、油感の増大、使用後の肌のべたつき等の感触の悪さの抑制の観点から、上記(A)、(B)及び(C)成分の含有重量比は、((A)+(B)+(C)):(B)=5:1〜20:1の範囲である。
【0017】
本発明に用いられる(D)成分の水性成分は、水及び水に可溶な成分であり、通常化粧料に用いられるものであれば何れでも良く、例えば、水、エタノール等の低級アルコール類、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、マルチトール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル等の保湿剤、乳酸、クエン酸、ピロリドンカルボン酸及びそれらの塩、アロエベラ、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液、水溶性ビタミンC及びその誘導体、プラセンタエキス、コラーゲン等のタンパク質やそれらの塩等の美容成分、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸及びそのナトリウム塩等の水溶性紫外線吸収剤等を挙げることができ、これらを必要に応じて一種又は二種以上を用いることができる。
【0018】
本発明における成分(D)成分の含有量は、全組成中55〜90%である。
【0019】
本発明には、さらに(E)成分として清涼剤を配合することにより、使用感がさらに向上する。本発明に用られる(E)成分の清涼剤は、通常化粧料に清涼剤として用いられるものであれば特に限定されず、例えば、メントール、カンファー、ミント、ユーカリ油及びこれらの誘導体等を挙げることができ、これらを必要に応じて一種又は二種以上用いることができる。
【0020】
本発明における(E)成分の含有量は、全組成中0.001〜10%が好ましく、より好ましくは0.005〜5%である。
【0021】
本発明の固形状油中水型乳化化粧料には、上記の必須成分の他に、通常の化粧料に使用される成分、例えば、粉体、界面活性剤、上記(B)成分以外の固形油、油ゲル化剤、油溶性紫外線吸収剤、水溶性高分子、ビタミンA、E及びその誘導体等の美容成分、防腐剤、酸化防止剤、香料等を本発明の効果を損なわない範囲で加えることができる。
【0022】
上記(B)成分以外の固形油、すなわち、融点が80℃を超える固形油としては、例えば、カルナウバロウ等の植物性ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素系ワックス等が挙げられ、これらを必要に応じて一種または二種以上用いることができる。
【0023】
本発明の固形状油中水型乳化化粧料の用途は特には限定されないが、本発明の効果を良く発現するものとして、クリーム、マッサージ、クレンジング、パック等の基礎化粧料、ファンデーション、サンスクリーン料等のメーキャップ化粧料等が挙げられる。
【0024】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0025】
実施例1〜6及び比較例1〜5:固形状油中水型クリーム
表1及び表2に示す組成の固形状油中水型クリームを調製し、このクリームを使用したときの使用感、刺激感の有無について、また経時安定性について下記の方法及び判断基準により評価し、それらの結果を表1及び表2に併せて示した。
【0026】
【表1】
Figure 0003665507
【0027】
【表2】
Figure 0003665507
【0028】
注1:ABIL EM−90(ゴールドシュミット社製)
注2:前記一般式(1)において、R=CH、l=8〜20、m=5〜15、n=2〜8、Q=C、a=5〜15、b=0、R=H、c=4、R=C1835のものである。
注3:シリコーン KF−6017(信越化学工業社製)
【0029】
(製造方法)
A.成分1〜10を75〜90℃で混合する。
B.成分12〜15を70℃で混合する。
C.AにBを徐々に注入して乳化し、成分11を添加後60℃まで冷却して容器に流し込み、室温まで冷却して、固形状油中水型クリームを得た。
【0030】
(評価方法)
(1)女性専門評価パネル15名を用いて、使用感、刺激の有無について評価した。上記実施例、比較例の試料を適量顔面に塗布し、サクッとしたシャーベット様の感触、清涼感、溶けなじみ、べたつきのなさ、肌への刺激のなさについて5段階評価をし、さらにそれらを平均して下記の基準で判定した。
Figure 0003665507
【0031】
(判定基準)
◎ : 4.5点以上
○ : 3.5点以上4.5点未満
△ : 2.5点以上3.5点未満
× : 2.5点未満
【0032】
(2)上記実施例、比較例の試料を40℃及び5℃下で1ヶ月間放置したものの状態を観察して、安定性評価を行った。
(判定基準)
◎ : 非常に良好
○ : 良好
△ : やや不良
× : 不良
【0033】
表1及び表2の結果から明かなように、本発明の実施例のクリームは、比較例のクリームと比較して、使用時にシャーベット様の独特の感触と、使用中良好な清涼感を有し、溶けなじみが早くべたつきの少ない、経時安定性に優れた、全ての評価項目において満足するものであった。
【0034】
Figure 0003665507
【0035】
(製造方法)
A.成分1〜7を75℃で混合する。
B.成分8〜11を70℃で混合する。
C.AにBを徐々に注入して乳化し、成分12を添加後60℃まで冷却して容器に流し込み、室温まで冷却して、固形状油中水型クレンジング料を得た。
以上のようにして得られた実施例7の固形状油中水型クレンジング料は、使用時にシャーベット様の独特の感触と使用中良好な清涼感を有し、溶けなじみ及び汚れとのなじみが早く、クレンジング後もべたつきが残らない経時安定性にも優れたものであった。
【0036】
Figure 0003665507
【0037】
(製造方法)
A.成分1〜8を75℃で混合する。
B.成分9〜13を70℃で混合する。
C.AにBを徐々に注入して乳化し、成分14を添加後60℃まで冷却して容器に流し込み、室温まで冷却して、固形状油中水型マッサージ料を得た。
以上のようにして得られた実施例8の固形状油中水型マッサージ料は、使用時にシャーベット様の独特の感触と、使用中良好な清涼感を有し、溶けなじみが早くマッサージの後もべたつきの残らない、経時安定性にも優れたものであった。
【0038】
Figure 0003665507
【0039】
(製造方法)
A.成分1〜9を75℃で混合する。
B.成分10〜15を70℃で混合する。
C.AにBを徐々に注入して乳化し、成分16を添加後60℃まで冷却して容器に流し込み、室温まで冷却して、固形状油中水型保湿パックを得た。
以上のようにして得られた実施例9の固形状油中水型保湿パックは、使用時にシャーベット様の独特の感触と使用中良好な清涼感を有し、溶けなじみが早くべたつきが少ない、経時安定性にも優れたものであった。
【0040】
Figure 0003665507
【0041】
(製造方法)
A.成分1〜13を75℃で混合する。
B.成分14〜17を70℃で混合する。
C.AにBを徐々に注入して乳化し、成分18を添加後60℃まで冷却して容器に流し込み、室温まで冷却して、固形状油中水型ファンデーションを得た。
以上のようにして得られた実施例10の固形状油中水型ファンデーションは、使用時にシャーベット様の独特の感触と、使用中良好な清涼感を有し、溶けなじみが早く、塗布後の化粧持続性に優れ、かつ、経時安定性も良いものであった。
【0042】
Figure 0003665507
【0043】
(製造方法)
A.成分1〜10を75℃で混合する。
B.成分11〜15を60℃で混合する。
C.AにBを徐々に注入して乳化し、成分16を添加後60℃まで冷却して容器に流し込み、室温まで冷却して、固形状油中水型サンスクリーン料を得た。
以上のようにして得られた実施例11の固形状油中水型サンスクリーン料は、使用時にシャーベット様の独特の感触と使用中良好な清涼感を有し、溶けなじみが早くべたつきが残らず、サンカット効果に優れ、かつ、経時安定性の良いものであった。
【0044】
【発明の効果】
本発明の固形状油中水型乳化化粧料は、経時安定性に優れ、さらには使用時にシャーベット様の独特の感触と良好な清涼感を有し、肌上での溶けなじみが早くべたつきの少ないという優れた官能特性を有するものであり、各種の形態の固形状油中水型乳化化粧料として有用なものである。

Claims (4)

  1. 次の成分(A)〜(D);
    (A)長鎖アルキル含有ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン
    0.1〜7重量%
    (B)融点が80℃以下である固形油 1〜9重量%
    (C)揮発性シリコーン油と揮発性シリコーン油以外の液体油及び/またはペースト油
    からなる液体油またはペースト油 5〜40重量%
    (D)水性成分 55〜90重量%
    を含有し、アルキル基を有するHLB値12以上のポリオキシアルキレン付加型非イオン界面活性剤を含まず、成分(A)、(B)及び(C)の含有重量比が、((A)+(B)+(C)):(B)=5:1〜20:1であり、かつ、シャーベット様の感触を有することを特徴とする固形状油中水型乳化化粧料。
  2. 前記成分(c)に含まれる揮発性シリコーン油の含有量が、全組成中3〜20重量%であることを特徴とする請求項1記載の固形状油中水型乳化化粧料。
  3. 前記成分(A)の長鎖アルキル含有ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンが下記一般式(1)で表されるシリコーン化合物であることを特徴とする請求項1または2記載の固形状油中水型乳化化粧料。
    Figure 0003665507
    [式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基を示す。Rは、−Q−O−(CO)−(CO)−Rで示され、Qは炭素数1〜5の2価の炭化水素基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はアセチル基を示す。aは1〜50の整数、bは0〜50の整数である。Rは−(CO)c−Rで示され、cは0〜5の整数、Rは6〜18のアルキル基である。lは5〜150の整数、mは5〜40の整数、nは2〜40の整数である。]
  4. さらに、成分(E)として、清涼剤を含有することを特徴とする請求項1ないし3の何れかの項に記載の固形状油中水型乳化化粧料。
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