JP3661174B2 - フィルムの裁断方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はフィルムの裁断方法に係り、特に写真感光材料用支持体に使用されているセルローストリアセテートフィルムの裁断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
写真感光材料用支持体として使用されているフィルム、例えばセルローストリアセテートフィルムのようなフィルムは、溶液製膜法により流延ダイからバンド或いはドラム上にフィルム状に流延された後、その薄膜をバンド或いはドラムから剥ぎ取ることにより製膜される。製膜されたフィルムは、溶剤を乾燥させてから巻取リールに巻き取られる。また、巻取リールに巻き取られる前のフィルムに、帯電性改善、耐傷性向上、染色、或いは後工程で塗布する写真感光性乳剤層との密着性改良のために種々の機能を持たせた有機溶剤層を塗布することもある。
【0003】
上記したフィルムの製造において、フィルムの耳部(フィルムの幅方向両端部)は乾燥時の乾燥むら、或いは流延時のネックインにより厚みが大きく変動しやすいためにフィルムの耳部にカールや弛みが発生する。この結果、搬送時にフィルムの耳部から皺が発生して安定したフィルムの製造ができなくなる。
この対策として、通常はフィルムの製膜から巻き取りまでの途中にフィルムの耳部をフィルムの搬送方向に沿って連続して裁断して除去する裁断工程が設けられる。また、巻取リールに巻き取る直前においても、製品としてのフィルムの幅を正確に管理・維持するために、フィルムの耳部を再度裁断除去する裁断工程を設ける。これらの裁断工程において、フィルムの裁断部分の切れ具合が悪いと、フィルム粉や繊維状フィルム等の裁断屑が発生し、裁断屑が裁断刃や裁断されたフィルムの端面に付着する。そして、この裁断屑はフィルム搬送時の振動、静電気、風等によりフィルムの表面に付着する。裁断屑が付着したフィルム表面に写真感光乳剤を塗布すると感光性乳剤層にむらが生じ、製品として使用できなくなり製品ロスとなる。また、フィルムの裁断部の切れ具合が更に低下すると、裁断時にフィルムにクラックが発生し、このクラックが原因になってフィルムの全幅方向に渡って破断することがある。
【0004】
これらのトラブルを防止するためには、フィルムの裁断部分の切れ具合を常に最良の状態にすることが重要であるが、現実には裁断刃を頻繁に新しいものに交換することで対応している。
しかし、裁断刃を頻繁に交換することは多大な費用を必要とし、且つ交換に要する時間による生産効率の低下を招くという欠点がある。更には、切断刃を頻繁に交換する対策は、必ずしも充分な効果が得られるわけではなくフィルムの裁断方法の根本的な改善にはなっていないのが事実である。
【0005】
特開平1─281896号公報には、対策として、フィルムの裁断部分をTG(ポリマーのガラス転移温度)〜TG+100°Cの温度に加熱してカッター等で裁断することが開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平1─281896号公報のように、フィルムの裁断部分の温度をTG温度以上に加熱すると裁断部分の切れ具合は改良されるが、裁断部分の周辺がワカメのように波形になりフィルムの平面性が低下するという弊害が発生する。その結果、その後の搬送工程においてフィルムに皺が生じたり、巻取ローラにフィルムを巻き取る際に巻きずれ(ウエブロールの側面が凸凹になる状態)が生じたりする等の不具合が発生するという問題がある。
【0007】
また、裁断されたフィルムの裁断部分近傍(裁断されたフィルムの両端部分)は、平面性が低下したことにより製品としては不適格部分となりその部分を再度裁断しなくてはならず、多大な製品ロスを生じる。
更には、前述した有機溶剤層を塗布したセルローストリアセテートフィルムを裁断する場合には、TG以上に加熱すると塗布液中の成分がセルローストリアセテートと強く結合し、分離不能となる。この結果、裁断したフィルムの耳部の再使用が不可能となり廃棄物が増大するという問題がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、裁断部分の平面性が低下する等の不具合が発生しないようにフィルムの裁断部分の切れ具合を改良し、フィルムの生産性を高めることのできるフィルムの裁断方法を提案することを目的とする。
【0009】
【課題を解決する為の手段】
本発明は、前記目的を達成する為に、溶液製膜法により流延ダイからバンド或いはドラム上にフィムル状に流延して該フィルムを前記バンド或いはドラムから剥ぎ取ることにより製膜し、剥ぎ取ったフィルムを乾燥してセルローストリアセテートフィルムを製造する途中において前記剥ぎ取ったフィルムを裁断刃で裁断する裁断方法であって、前記乾燥では裁断時における前記フィルム中の残留揮発分が1%〜15%になるように乾燥すると共に、加熱手段により裁断時における前記フィルムの裁断部分の温度が60°C〜前記フィルムのガラス転移温度になるように加熱して裁断することを特徴とする
【0010】
【発明の実施の形態】
以下添付図面に従って本発明に係るフィルムの裁断方法の好ましい実施の形態について詳説する。
図1は本発明に係るフィルムの裁断方法を適用するフィルム裁断装置の一例を示した概略図である。
【0011】
図1に示すように、フィルム裁断装置10は主として、フィルム12を搬送する搬送装置14と、フィルム12の幅方向の耳部12Aの裁断位置にそれぞれ配置された一対のロータリ式裁断刃16、16と、フィルム12の裁断部分を加熱する一対の加熱器18、18とで構成される。
前記搬送装置14は、フィルム12を上下から挟持して回転する一対のピンチローラ14A、14Aと、フィルム12の搬送をガイドする複数のガイドローラ14Bとで構成され、フィルム12を図中矢印13方向に搬送する。
【0012】
前記ロータリ式裁断刃16は、上側ロータリ式裁断刃16Aと下側ロータリ式裁断刃16Aとで構成され、2個のロータリ式裁断刃16A、16Aがフィルム12を上下から挟持した状態でフィルムの搬送方向に回転することによりフィルムの裁断部分を連続的に裁断する。
前記加熱器18は、フィルム12の幅方向の耳部12Aの裁断位置にそれぞれ配置されると共に、フィルム12の裁断部分に高温熱風を吹きつけて裁断部分を加熱する。
【0013】
そして、上記構成のフィルムの裁断装置10を用いて本発明のフィルムの裁断方法を行うには、裁断前の乾燥工程(図示せず)で乾燥条件・調湿条件を調整して、予め残留揮発分が1%〜15%に調整されたフィルム12を搬送装置14でロータリ式裁断刃16に搬送する。ロータリ式裁断刃16に搬送する直前で、該フィルム12の裁断部分である耳部の温度を加熱器18で60°C〜TG(ポリマーのガラス転移温度)に昇温し、この状態でフィルム耳部12Aをロータリ式裁断刃で裁断する。
【0014】
ところで、フィルム12の裁断部分の切れ具合を良くする裁断性改良という見地だけからは、裁断時におけるフィルムの切断部分の温度はTG(ポリマーのガラス転移温度)以上にしたほうが良い。しかし、フィルム12の裁断部分の温度をTG以上にする加熱を行うと、裁断部分が熱変形を生じて裁断部分近傍の平面性が低下するので、フィルム12の品質或いは製品歩留り等の点から好ましくない。従って、フィルム12の裁断部分の温度はTG未満に抑えることが重要となるが、TG未満の場合には裁断性の低下を避けることができない。
【0015】
そこで、本発明に係るフィルムの裁断方法は、裁断時におけるフィルム12の残留揮発分と該フィルム12の裁断部分の温度を適切に維持して裁断することにより、フィルム12の裁断部分における「裁断性改良」と「平面性確保」の両方を満足できるようにしたものである。
即ち、本発明者はフィルム12の裁断部分における「裁断性改良」と「平面性確保」について実験等により鋭意検討した結果、裁断時におけるフィルムに含まれる残留揮発分(水+溶剤)を一定以上にすることで、フィルム12の裁断部分の温度がTG未満でも切れ具合の良好な裁断端面を得ることができ、裁断屑の極めて少ない裁断を行うことができるという知見を得た。TG未満でも切れ具合の良好な裁断端面が得られた理由としては、フィルム12に含まれる残留揮発分を一定以上にすることで、TG未満での加熱でも裁断部分を適度に軟化させることができ、裁断時における裁断部分の脆性破壊を抑制するためと考えられる。
【0016】
また、残留揮発分と裁断部分の温度との関係を調べたところ、裁断部分の温度は残留揮発分が多いほどフィルム12の裁断部分の温度が低くても裁断部分を軟化させる傾向にあるが、「裁断性改良」のための適度な軟化を確保するためには60°C以上が必要である。一方、裁断部分の温度をTGに近づけた場合には残留揮発分は1%以上あれば良い。
【0017】
一般に残留揮発分が30%以上と多いフィルム製造工程の上流側での裁断は、フィルム12が柔らかく、裁断屑、切れ具合の問題は残留揮発分が少ない下流側での裁断ほど深刻ではない。しかし、例えば、残留揮発分としてメチレンクロライドのような低沸点の溶剤を多量に含んでいる場合には、裁断部分の温度がメチレンクロライドの沸点に達した時に裁断部分で発泡が生じ易く、安定した裁断ができなくなる。従って、裁断部分の温度を「裁断性改良」のための適度な軟化を確保する60°C以上に設定した時に、フィルム12の発泡が生じないようにするためには残留揮発分を15%以下に抑える必要がある。
【0018】
このように、フィルム12の残留揮発分とフィルム12の裁断部分の温度は互いに独立したものではなく相互に関連させて条件設定を行うことが必要である。そして、本発明のフィルムの裁断方法によれば、裁断時におけるフィルム12の残留揮発分を1%〜15%にすると共に、該フィルム12の裁断部分の温度を60°C〜TG(ポリマーのガラス転移温度)にして裁断するようにした。これにより、切れ具合の良好な裁断端面を得ることができるので裁断屑の問題もなく、しかもTG温度未満なので裁断部分の平面性も確保できる。従って、安定した切れ具合の良好な裁断を行うことができる。
【0019】
また、厳密に規定されたフィルム幅を得るためにフィルム12を巻き取り直前に行うフィルム耳部の裁断においては、残留揮発分が多すぎると、フィルム巻き取り後の経時変化としてフィルム12の平面性が悪化したり、写真感光材料素材とする場合の写真性が変化し易くなる。従って、このような場合にはフィルム12の残留揮発分を1〜5%、フィルムの裁断部分の温度を80°C〜TGに維持することがより好ましい。
【0020】
本発明において熱風による加熱は両面から実施でき、風の向きを内側から外側へ向けることもフィルム変形防止と言う観点で好ましい。
尚、本発明の実施の形態では、フィルムの裁断部分を加熱器で加熱する例で説明したが、遠赤外線などによる加熱もあり得るし、裁断刃自体を加熱することでも可能である。この場合にはフィルム12と裁断刃の接触時間が短いので、フィルムと裁断刃の接触時間を長くしてフィルムの裁断部分を所定の温度まで昇温できるようにする必要がある。
【0021】
【実施例】
以下に、本実施の形態で説明したフィルムの裁断装置10を用いて行った実施例を説明する。
本実施例でのフィルムの種類、フィルムの残留揮発分条件、裁断部分の温度条件等は次の通りである。
(1)フィルムの種類…ゼラチン、メチレンクロライド、メタノール、アセトンから成る有機溶剤層を塗布した厚さ200μのセルローストリアセテートフィルム
(2)フィルムの搬送速度…10m/分
(3)裁断時におけるフィルムの残留揮発分…1.9%(成分組成…水分0.9%、ブタノール0.8%、アセトン0.1%、メチレンクロライド0.1%)
(4)裁断時におけるフィルムの裁断部分の温度…70°C(放射温度計で測定)
比較例1は、裁断時のフィルムの温度のみを26°C(室温)とし、他の条件は実施例と同様とした。
【0022】
比較例2は、フィルムの残留揮発分を0.9とし、他の条件は実施例と同様とした。
比較例3は、裁断時のフィルムの温度のみをセルローストリアセテートフィルムのTG温度である105°Cより10°C高い115°Cとし、他の条件は実施例と同様とした。
【0023】
そして、判定は「裁断性改良」と「平面性確保」の2点で行い、裁断性の良否の判定は裁断端面の切断領域と破断領域の割合を顕微鏡で観察することにより行った。即ち、切断領域とは裁断刃により実際に切られた部分であり、破断領域とは裁断時にフィルムの割れにより見かけ上切られた部分である。従って、破断領域が多いことは裁断屑の発生が多いことを意味する。
【0024】
その結果、本実施例では、裁断刃を交換しないで48時間の連続裁断を行ったが、図2(a)に示すように、切断領域が破断領域よりも多く切れ具合の良好な裁断端面を得ることができ裁断屑の発生も極めて少なかった。また、裁断部分の平面性も確保でき、フィルム耳部の再度の裁断が必要ないことから製品歩留りを向上させることができた。また、裁断したフィルムの耳部も再使用が充分可能であり生産コストの低下を図ることができた。
【0025】
一方、比較例1は、平面性は確保できたものの、図2(b)に示すように、切断領域が破断領域よりもかなり少なく切れ具合が悪かった。この結果、裁断開始直後から裁断端面に裁断屑が付着し、更に裁断部分近傍のフィルム表面にも裁断屑の付着が認められ、多大な製品ロスが発生した。また、切れ具合が悪いことから裁断刃の頻繁な清掃を強いられ、裁断開始から12時間後に裁断刃の交換を必要とした。
【0026】
比較例2は、図2(c)に示すように、比較例1に比べると切れ具合は多少良かったが本実施例に比べると劣った。この結果、裁断開始12時間後に裁断刃の清掃を実施し、24時間後に裁断刃の交換を必要とした。また、切断屑の発生は比較例1よりは少なかったものの、裁断端面には裁断屑がかなり付着していた。比較例3は、裁断部分の温度をTG温度より高くしたことで、切れ具合は図2(a)に示した本実施例と同程度であったが、裁断部分近傍のフィルム面がワカメ状の波形になり平面性が低下した。この結果、裁断部分近傍が製品とならなくなり再度の裁断を必要としたので、大幅な製品ロスが発生した。
【0027】
以上の結果から本発明のフィルムの裁断方法による効果をまとめると、
▲1▼裁断時の裁断屑の発生が減少し、裁断屑に起因して製品として使用できなくなることが殆どなくなった。
▲2▼フィルムの裁断部分の平面性を確保することができたので、平面性に起因するフィルム全体の裁断トラブルや搬送トラブル等がなくなった。
▲3▼フィルムの裁断部分の切れ具合が改良され安定した裁断を行うことができるので、裁断刃の寿命が伸び裁断刃の交換頻度が大幅に減少した。また、裁断屑の発生が大幅に減少したので、裁断刃や裁断装置周囲の清掃頻度も大幅に減少した。ちなみに、裁断刃の交換頻度や清掃頻度は、前記した比較例1及び2の場合に比べて略1/5になった。
【0028】
尚、本実施例ではセルローストリアセテートフィルムの例で説明したが、これに限定されるものではない。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のフィルムの裁断方法によれば、裁断時におけるフィルムの残留揮発分と該フィルムの裁断部分の温度を所定範囲(例えば、残留揮発分は1%〜15%、裁断部分の温度は60°C〜TGにする)に維持した状態で裁断するようにしたので、切れ具合の良好な裁断端面を得ることができ裁断屑の問題もなく、安定した切れ具合の良好な裁断を行うことができる。しかもTG温度未満なので裁断部分の平面性も確保でき、製品ロスが減少する。
【0030】
従って、本発明の裁断方法を採用することにより、フィルム製造における生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係るフィルムの裁断方法を適用する装置の一例を示した概略図
【図2】図2は、フィルムの裁断端面の切れ具合を説明する説明図で、図2(a)は本実施例の場合、図2(b)は比較例1の場合、図2(c)は比較例2の場合である。
【符号の説明】
10…フィルムの裁断装置
12…フィルム
12A…フィルムの耳部
14…搬送装置
16…ロータリ式裁断刃
18…加熱器

Claims (1)

  1. 溶液製膜法により流延ダイからバンド或いはドラム上にフィムル状に流延して該フィルムを前記バンド或いはドラムから剥ぎ取ることにより製膜し、剥ぎ取ったフィルムを乾燥してセルローストリアセテートフィルムを製造する途中において前記剥ぎ取ったフィルムを裁断刃で裁断する裁断方法であって、
    前記乾燥では裁断時における前記フィルム中の残留揮発分が1%〜15%になるように乾燥すると共に、加熱手段により裁断時における前記フィルムの裁断部分の温度が60°C〜前記フィルムのガラス転移温度になるように加熱して裁断することを特徴とするフィルムの裁断方法。
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