JP3656864B2 - 炭素繊維およびその製造方法ならびにその炭素繊維を使用したプリプレグ - Google Patents

炭素繊維およびその製造方法ならびにその炭素繊維を使用したプリプレグ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素繊維およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、複合材料の成形性に優れ、さらには高次加工性の優れた炭素繊維およびその製造方法ならびにその炭素繊維を使用したプリプレグに関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維は各種マトリックス樹脂との複合材料として利用されているが、炭素繊維の特性を複合材料に活かすために、炭素繊維に様々な表面処理が施されてきた。また、炭素繊維あるいは黒鉛繊維は本質的に剛直で脆いため、耐屈曲性や耐擦過性の不足により毛羽を発生しやすく、炭素繊維の製造工程あるいはその高次加工工程において糸切れを発生しやすい。そこで炭素繊維に集束性を付与し、耐屈曲性や耐擦過性を改善するため、通常炭素繊維には各種サイジング剤が付与される。サイジング剤には毛羽発生防止などの上記目的に加えて、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性を改善できる場合もある。
【0003】
また、炭素繊維は、一方向に引き揃えられてマトリックス樹脂を含浸させたプリプレグとして用いられている。さらに、このプリプレグを数枚程度積層し、高温加圧下で成形し、複合材料を得ている。この成形工程においては、マトリックス樹脂の粘度低下によって樹脂が成形物の外に流れ易くなり、このため単繊維のアライメント乱れの防止や、積層プリプレグ間での滑りを抑制し、かつ成形品のボイドを無くすことが重要になっている。しかし、この成形性の改善は、主に成形技術でカバーされているが、まだ充分に解決されていない。
【0004】
特に円形断面の炭素繊維がアライメント良く拡幅された状態のプリプレグにおいては、クロス積層体でプリプレグ/プリプレグ層間で滑りが生じる場合があり、最終的に目的の成形物が得られない場合がある。
【0005】
そこで、本発明者らは、かかる現状に鑑み、炭素繊維表面状態と複合材料の成形性に与える影響について鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記のような問題点を解決すること、すなわち、微粒子およびサイジング剤が付着した炭素繊維であって、複合材料の成形性に優れ、さらには高次加工性の優れた炭素繊維および該炭素繊維を使用したプリプレグを製造し、結果として得られる複合材料の機械的特性を良好なものとし得る炭素繊維を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために、本発明の炭素繊維は以下の構成を有する。すなわち、X線光電子分光法により測定される炭素繊維の表面比酸素濃度がO/Cが0.02以上0.2以下、表面比窒素濃度N/Cが0.02以上0.3以下であって、粒子径0.01μm以上5.0μm以下の微粒子とサイジング剤が付着してなり、かつ該サイジング剤の付着量が0.1重量%以上5重量%以下であることを特徴とする炭素繊維である。
【0008】
また、本発明に係るプリプレグは、上記のような炭素繊維を使用したものからなり、該炭素繊維とマトリックス樹脂とを含むものからなる。
【0009】
さらに、上記する課題を解決するために、本発明の炭素繊維の製造方法は以下の構成を有する。すなわち、X線光電子分光法により測定される表面比酸素濃度がO/Cが0.02以上0.2以下、表面比窒素濃度N/Cが0.02以上0.3以下である炭素繊維を、粒径が0.01μm以上5μm以下の水分散可能な微粒子を含有した水溶性または水分散性サイジング剤で含浸処理することを特徴とする炭素繊維の製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の炭素繊維について詳細に説明する。
プリプレグの成形過程で樹脂流れについて詳細に検討したところ、炭素繊維の横断面が円形なほど、繊維表面が平滑なほど繊維束の撚り数が少ないほど、単繊維のアライメントが良いほど、またマトリックス樹脂の粘度が低いほど成形時の樹脂流れが多くなることがわかった。
【0011】
すなわち、プリプレグ内の炭素繊維単繊維のアライメントが特に良い部分では、樹脂流れが周辺より比較的多くなる。また、特に円形断面の炭素繊維がアライメント良く拡幅された状態のプリプレグでは、樹脂流れがさらに多く、成形物から流れ出るマトリックス樹脂量が過多になる。またクロス積層体ではプリプレグ/プリプレグ層間で滑りが生じる場合があり、最終的に目的の成形物が得られないのである。
【0012】
炭素単繊維のアライメントが良く、かつマトリックス樹脂の粘度が低いプリプレグの成形性を向上させるために、成形時の樹脂粘度低下を抑制させる検討を行い、炭素繊維の表面状態を特定し、微粒子及びサイジング剤を付着させることによって成形性と高次加工性を同時に向上できることがわかった。
【0013】
本発明に用いる微粒子は、成形工程において粘度低下したマトリックス樹脂が成形物外に流れ出すことを抑制し、かつ、成形物のボイド生成を防ぎ、樹脂流れを制御する役割を果たさせるため、微粒子は特定の大きさで、かつ特定量でもって、炭素繊維束を覆い、かつ炭素繊維束内に均一に入ることが重要である。
【0014】
微粒子としては、無機微粒子、有機微粒子等を用いることができる。
本発明において無機微粒子とは、例えば珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、グラファイト、シリカ、マイカ、アルミナ、ステンレス、セラミック等の微粒子をいう。また、本発明において有機微粒子とは、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、シリコンゴム、ゴム等の微粒子をいう。これらの微粒子は単一成分で使用してもよく、また2種以上併用し混合物として用いてもよい。
【0015】
本発明に用いる微粒子の粒径は5μm以下、好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1μm以下とするものである。微粒子の粒径が5μmを超えると、成形時の樹脂流れは減少するものの、微粒子の存在によって炭素繊維が屈曲、切断し、その結果として得られる繊維強化複合材料(コンポジット)の引張特性として所望の物性が得られない可能性がある。
【0016】
微粒子の粒径の下限としては、0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.1μm以上が望ましい。微粒子の粒径が0.01μmに満たないと、微粒子による成形時の樹脂流れの向上が不十分になる。
【0017】
本発明に用いる微粒子の付着量は炭素繊維単位重量あたり5重量%以下、好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下とするものである。微粒子の付着量が5重量%を超えると、成形時の樹脂流れが減少するものの、成形後にマトリックス樹脂の熱的特性等が劣化する恐れがあり、さらに微粒子の存在が異物となり、得られるコンポジット引張特性は所望の物性が得られない可能性がある。
【0018】
微粒子の付着量の下限としては、0.05重量%以上、好ましくは0.07重量%以上、更に好ましくは0.1重量%以上が望ましい。微粒子の付着量が0.05重量%に満たないと、微粒子による成形性の向上が不十分になる。
【0019】
本発明に用いるサイジング剤は、微粒子と炭素繊維との接着剤の役割および炭素繊維の集束性、耐擦過性向上の役割を果たさせるため、サイジング剤は微粒子を炭素繊維表面上に付着・保持させ、かつ微粒子の表面も同時に覆うことが重要である。炭素繊維と微粒子が直接付着した場合、表面処理工程、製造工程およびプリプレグ化工程で脱落する可能性があり、かつ、接着性が乏しいため成形後剥離し、横方向特性が低くなる可能性がある。また、微粒子の表面がサイジング剤で覆われていない場合、炭素繊維束の集束性が低くなり、擦過による糸切れ、毛羽発生の可能性がある。また、サイジング剤に使用する溶媒は、取扱が容易で防災の観点から特に水が望ましい。
【0020】
本発明においては、サイジング剤は特に限定されるものではないが、通常の場合は、成形材料に使用される樹脂と同じ種類の樹脂、例えばポリアルキレングリコール、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン、ビニルエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂は単一成分で使用してもよく、また2種以上併用し混合物としてもよく、さらに水分散させるため界面活性剤等を添加して用いてもよい。
【0021】
具体的には、ポリアルキレングリコールでは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0022】
エポキシ樹脂ではグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールジグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、ヒドロキシアルキル化ビスフェノールAジグリシジルエーテル等の親水性グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、N,N,N',N'-テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等の公知のグリシジルエーテル型、ポリエポキシ化合物、グリシジルエステル型ポリエポキシ化合物、直鎖状脂肪族ポリエポキシ化合物および脂環式ポリエポキシ化合物を界面活性剤による乳化分散物が挙げられる。
【0023】
不飽和ポリエステル樹脂では、公知の不飽和二塩基酸を含む二塩基酸と公知の二価アルコールの重縮合反応によって得られてものであればよく、具体的には不飽和二塩基酸では、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が、二価アルコールではエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールジヒドロキシプロピルエーテル等が挙げられ、また不飽和基濃度調節、可撓性、耐熱性、耐薬品性などの性質を付与するため二塩基酸では無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸無水物、アジピン酸、アゼライン酸、セパシン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ヘット酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸などが縮合反応物として加えてもよい。
【0024】
ポリウレタン樹脂では、公知のポリイソシアネートと公知の活性水素化合物(ポリオール等)を主成分とした組成物の反応生成物であればよく、具体的にはポリイソシアネートでは、トリレンジイソシアネート、ジフェノルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が、活性水素化合物では、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールとこれらの変性体のポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類が挙げられる。
【0025】
本発明に用いるサイジング剤の付着量は炭素繊維単位重量当たり5重量%以下、好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下とするものである。サイジング剤の付着量が5重量%を超えると、微粒子の接着剤としての役割は果たせるものの粘着によって繊維束の解舒特性が不十分になる可能性がある。
【0026】
サイジング剤の付着量の下限としては、0.05重量%以上、好ましくは0.07重量%以上、更に好ましくは0.1重量%以上が望ましい。サイジング剤の付着量が0.05重量%に満たないと、微粒子の接着剤としての役割が果たせず微粒子の繊維表面からの脱落が多くなり、製造およびプリプレグ化過程で接触するローラ等が汚れる可能性がある。
【0027】
本発明の炭素繊維は上記の特定の微粒子とサイジング剤が付着され、かつ、下記表面特性を有するものである。
【0028】
炭素繊維表面の表面比酸素濃度O/Cおよび表面比窒素濃度N/Cを特定することによって成形性が向上する。この理由、特に樹脂流れが抑制される理由は明確でないものの次の様に考えている。すなわち、炭素繊維の表面に特定の官能基が特定量存在することによって、マトリックス樹脂との親和性、特に濡れ性が向上すると考えられる。これによって、プリプレグ成形過程でのマトリックス樹脂の粘度変化が小さくなり、特にマトリックス樹脂の最低粘度が高くなることによって、樹脂流れが小さくなるものと考えられる。特に表面比窒素濃度N/Cの特定により、マトリックス樹脂の親和性が高く、マトリックス樹脂の粘度低下が抑制され、成形性に効果がある。しかし、この粘度低下だけでは樹脂流れの防止は不十分であり、上記微粒子およびサイジング剤の付着を組み合わせることによって初めて成形性が大幅に向上するのである。
【0029】
本発明の炭素繊維は、X線光電子分光により測定される表面比酸素濃度O/Cは0.2以下であり、好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.1以下とするのが望ましい。O/Cが0.2を超えると、樹脂の官能基と炭素繊維最表面との化学結合は強固になるものの、本来炭素繊維基質自身が有する強度よりもかなり低い酸化物層が炭素繊維表層を覆うことになるため、結果として得られるコンポジットの横方向特性は低いものとなってしまう場合がある。
【0030】
O/Cの下限としては、0.02以上であり、好ましくは0.04以上、更に好ましくは0.06以上が望ましい。O/Cが0.02に満たないと、上述したマトリックス樹脂およびサイジング剤との濡れ性が低くなるために、微粒子を保持することができず、結果として成形性およびコンポジット特性の向上効果を発現できない場合がある。
【0031】
また、X線光電子分光法により測定される表面比窒素濃度N/Cは0.02以上であり、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.04以上とするのが望ましい。該N/Cが0.02未満の炭素繊維は、上述マトリックス樹脂と濡れ性が低くなるために樹脂粘度低下を抑制できず、結果として成形性およびコンポジット特性の向上効果を発現できない場合がある。
【0032】
N/Cの上限としては、0.3以下であり、好ましくは0.25以下、さらに好ましくは0.2以下が望ましい。すなわちN/Cが0.3を超えると、マトリックス樹脂との親和性が過剰になるだけで、マトリックス樹脂の樹脂流れや接着力特性のさらなる向上は望めず、かつ、引張強度が低下する場合がある。
【0033】
ここで、表面比酸素濃度O/Cとは、次の手順に従ってX線光電子分光法により求めた値をいう。先ず、溶媒でサイジング剤などを除去した炭素繊維束をカットしてステンレス製の試料支持台上に拡げて並べた後、光電子脱出角度を90°とし、X線源としてMgKα1,2 を用い、試料チャンバー内を1×10-8Torrの真空度に保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギー値を284.6 eVに合わせる。C1Sピーク面積は、 282〜296 eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、O1Sピーク面積は、 528〜540 eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。表面比酸素濃度O/Cは、上記O1Sピーク面積とC1Sピーク面積の比を、装置固有の感度補正値で割ることにより算出した原子数比で表す。なお、本発明の実施例では島津製作所(株)製ESCA−750を用い、上記装置固有の感度補正値は2.85であった。
【0034】
また、表面比窒素濃度N/Cとは、次の手順に従ってX線光電子分光法により求めた値をいう。先ず、溶媒でサイジング剤などを除去した炭素繊維束をカットしてステンレス製の試料支持台上に拡げて並べた後、光電子脱出角度を90°とし、X線源としてMgKα1,2 を用い、試料チャンバー内を1×10-8Torrの真空度に保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギー値を284.6 eVに合わせる。C1Sピーク面積は、 282〜296 eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、N1Sピーク面積は、 398〜410 eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。表面比窒素濃度N/Cは、上記N1Sピーク面積とC1Sピーク面積の比を、装置固有の感度補正値で割ることにより算出した原子数比で表す。なお、本発明の実施例では島津製作所(株)製ESCA−750を用い、上記装置固有の感度補正値は1.7であった。
【0035】
本発明の炭素繊維の機械的物性としては(尚、これはJIS−R7601で測定することができるが)、ストランド強度が3,400MPa以上、より好ましくは3,900MPa以上、さらに好ましくは4,400MPa以上が望ましい。また、炭素繊維の弾性率は210GPa以上が好ましく、230GPa以上がより好ましく、270GPa以上がさらに好ましい。ストランド強度あるいは弾性率がそれぞれ3,400MPa未満あるいは210GPa未満の炭素繊維の場合には、コンポジットとしたときに、構造材として所望の特性が得られない場合がある。
【0036】
さらに本発明の炭素繊維は、12,000本以上、好ましくは24,000本以上の単繊維が束になった繊維束が望ましい。単繊維が12,000本未満の場合には、プリプレグ製造時に導入する繊維束の本数が多くなり、炭素繊維束の重なる箇所も多くなるために、炭素単繊維のアライメントが乱れて、結果としてマトリックス樹脂の樹脂流れの向上効果が不十分になる場合がある。さらに、製造装置が巨大になる場合がある。
【0037】
さらに本発明の炭素繊維は、繊維束の撚り数が実質的に0以上1ターン/m(炭素繊維束1m当たりの撚り数)以下、より好ましくは0以上0.1ターン/m以下、さらに好ましくは0以上0.05ターン/mが望ましい。撚り数が1ターン/mを超える場合には、微粒子による成形時の樹脂流れの向上が不十分になる。また、炭素繊維の横断面が円形であるのが望ましい。円形でない場合、微粒子による成形時の樹脂流れの向上が不十分になる。さらに、炭素繊維表面が平滑であるのが好ましい。表面が平滑でない場合、微粒子による成形時の樹脂流れの向上が不十分になる。
【0038】
本発明の炭素繊維は、短繊維、長繊維、不織布、織物などの種々な形態で使用できる。また、特に該炭素繊維に未硬化のマトリックス樹脂が含浸されたシート状中間基材であるプリプレグとして用いる場合に、樹脂流れの抑制の効果が大きく好ましい。さらには一方向シート状プリプレグが好ましい。また使用するマトリックス樹脂は、好ましくは最低粘度が200cps以下、より好ましくは100cps以下、さらに好ましくは50cps以下が望ましい。最低粘度が200cpsを超える場合は、プリプレグの成形時に起こる樹脂流れ量が少ないため、本発明の炭素繊維の樹脂流れ抑制効果が小さくなる。ここで、マトリックス樹脂の最低粘度とは、動的粘弾性測定装置を用い、半径25mmの平行円盤を用い、室温より樹脂の硬化温度まで、昇温速度1.5℃/min、周波数3.14rad/sの条件で、動的粘弾性の温度依存性を測定し求める。なお、本発明ではレオメトリックス社製RDA−IIを用いた。
【0039】
次に本発明の炭素繊維を得るための好ましい方法について説明する。
本発明の方法に供せられる原料炭素繊維としては、アクリル系、ピッチ系、レーヨン系等の炭素繊維を適用できる。好ましくは高強度の炭素長繊維が得られやすいアクリル系炭素繊維がよい。アクリル系炭素繊維の場合を例にとって以下詳細に説明する。
【0040】
紡糸方法としては湿式、乾式、乾湿式等を採用できるが、高強度糸が得られ易い湿式あるいは乾湿式が好ましく、特に乾湿式が好ましい。紡糸原液にはポリアクリロニトリルのホモポリマーあるいは共重合成分の溶液あるいは懸濁液等を用いることができるが、ろ過を強化して不純物をポリマーから除去することが、高性能炭素繊維を得るために重要である。
【0041】
該紡糸原液を凝固、水洗、延伸、油剤付与して前駆体原糸とし、さらに耐炎化、炭化、さらには必要に応じて黒鉛化処理を行って炭素繊維とする。製糸、焼成工程を通して、溶液あるいは雰囲気から塵埃、異物といった不純物を最小限に抑えて、繊維への欠陥導入を防ぐこと、張力をかけて配向を高くすることが高性能炭素繊維を得るために重要である。炭化あるいは黒鉛化条件として、本発明炭素繊維を得るには最高熱処理温度は1,100℃以上、好ましくは1,400℃以上がよい。
【0042】
強度および弾性率の高い炭素繊維を得るためには細繊度の炭素繊維が好ましく、炭素繊維の単糸径で7.5μm以下、好ましくは6μm以下、さらに好ましくは5.5μm以下がよい。得られた炭素繊維はさらに表面処理及びサイジング処理がなされて炭素繊維となる。
【0043】
表面処理としては、電解処理が好ましい。電解処理に用いられる電解液としては、硫酸、硝酸、塩酸などの酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム等の水酸化物、アンモニア、または、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩類、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等の有機塩類の水溶液、さらにはこれらのカリウム塩、バリウム塩あるいは他の金属塩、およびアンモニウム塩、またヒドラジン等の有機化合物が挙げられる。
【0044】
特に、X線光電子分光法により測定される表面比酸素濃度O/Cおよび表面比窒素濃度N/Cを前記した特定の範囲とする炭素繊維は、アンモニウム塩水溶液中で電解することにより得ることができる。
【0045】
この場合の電解液としては、アンモニウムイオンを含む水溶液であればよく、具体的には、電解液として、例えば硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、過硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、燐酸二水素アンモニウム、燐酸水素二アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム等あるいはそれらの混合物などを用いることができるが、なかでも硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムが好ましく、特に炭酸水素アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムは、水洗後および乾燥後の炭素繊維表面に残査が少なく好ましい。
【0046】
電解液の濃度しては、0.01〜5モル/リットル、好ましくは0.1〜1モル/リットルがよい。すなわち、濃度が濃いほど電解処理電圧が下がるが、臭気が強くなり環境が悪化するので、最適化することが好ましい。
【0047】
電解液温度としては0〜100℃、好ましくは10〜40℃がよい。すなわち温度が高いと臭気が強くなるため低温が好ましいので、運転コストとの兼ね合いで最適化することが好ましい。
【0048】
電気量は被処理炭素繊維の炭化度に合わせて最適化することが好ましく、高弾性率糸はより大きな電気量が必要である。表層の結晶性の低下を進ませ、生産性を向上させる一方、炭素繊維基質の強度低下を防ぐ観点から、電解処理は小さい電気量で複数回処理を繰り返すのが好ましい。具体的には、電解槽1槽当たりの通電電気量は5クーロン/g・槽(炭素繊維1g当たりのクーロン数)以上、100クーロン/g・槽以下、より好ましくは10クーロン/g・槽以上、80クーロン/g・槽以下、さらに好ましくは20クーロン/g・槽以上、60クーロン/g・槽以下がよい。また、表層の結晶性の低下を適度な範囲とする観点からは通電電気量の総電気量は5〜1,000クーロン/g、さらには10〜500クーロン/gの範囲とすることが好ましい。
【0049】
槽数としては2以上が好ましく、4以上がより好ましい。設備コストの面から10槽以下が好ましく、電気量、電圧、電流密度等から最適化することが好ましい。
【0050】
電流密度としては、炭素繊維表面を有効的に酸化し、かつ安全性を損なわない観点から、電解処理液中の炭素繊維の表面積1m2 当たり1.5アンペア/m2 以上1,000アンペア/m2 以下、好ましくは3アンペア/m2 以上500アンペア/m2 以下が良い。処理時間は、数秒から十数分が好ましく、さらには10秒から2分程度が好ましい。
【0051】
電解電圧は安全性の観点から25V以下、さらには0.5〜20Vの範囲が好ましい。電解処理時間は電気量、電解質濃度により最適化すべきであるが、生産性の面から数秒〜10分、好ましくは10秒〜2分程度がよい。電解処理方式としては、バッチ式、連続式いずれでもよいが、生産性が良くバラツキが小さくできる連続式が好ましい。通電方法としては、炭素繊維を電極ローラに直接接触させて通電させる直接通電、あるいは炭素繊維と電極の間に電解液等を介して通電させる間接通電のいずれも採用することができるが、電解処理時の毛羽立ち、電気スパーク等が抑えられる間接通電が好ましい。
【0052】
また電解処理方法は、電解槽を必要槽数並べて1度通糸しても、1槽の電解槽に必要回数通糸してもよい。
【0053】
電解処理を行った後、水洗及び乾燥することが好ましい。この場合、乾燥温度が高すぎると炭素繊維の最表面に存在する官能基は熱分解により消失し易いため、できる限り低い温度で乾燥することが望ましく、具体的には乾燥温度が250℃以下、さらには好ましくは210℃以下で乾燥することが望ましい。
【0054】
このようにして得られた炭素繊維に微粒子およびサイジング剤を付与する。
本発明の炭素繊維を得るためには、微粒子およびサイジング剤を付与するに際して、繊維束が充分に拡幅されていることが重要であるため、繊維束は実質的に撚りのないことが好ましい。最も好ましくは、繊維束の厚み方向における単繊維の重なりがほとんどないほどに繊維束を拡幅することである。微粒子およびサイジング剤を付与するに際して、繊維束が充分に拡幅されていないと、微粒子およびサイジング剤の大部分が繊維束の外周にのみ付着してしまい、単繊維一本一本の周りに付着されなくなってしまうことになる。
【0055】
微粒子およびサイジング剤の繊維束への付与は、微粒子とサイジング剤が混合された含浸液が望ましい。微粒子を先に付与した場合、微粒子が炭素繊維に直接付着し、付与後の乾燥工程で微粒子が飛散し、かつローラ等の接触により微粒子が脱落する可能性がある。また、微粒子を後に付与した場合、微粒子がサイジング剤上に付着し、微粒子の表面が露出しているために擦過による糸切れ、毛羽発生が発生する可能性がある。また、微粒子を均一に分散させるため含浸液を機械的に撹拌させてもよく、さらに均一に分散させるため新たに分散剤に添加してもよい。
【0056】
微粒子およびサイジング剤の繊維束への含浸は、拡幅した状態で含浸液に繊維束を浸漬するのが好ましく、さらに曲面体で振動を与えた後、ローラ等を介さずに直ちに含浸液に浸漬するのが好ましい。また、含浸液浸漬時に、繊維束に振動、超音波を付与することもできる。さらに含浸液を繊維束に吹き付けるスプレー法、繊維束の上方から含浸液を滴下する適下法などを採用してもよい。また、含浸液を槽内で循環し濃度を均一に保つことが望ましい。また、バッチ式、連続式いずれでもよいが、生産性が良くバラツキが小さくできる連続式が好ましい。この際、炭素繊維に対する微粒子濃度、サイジング剤濃度、温度、糸条張力などをコントロールすることが好ましい。また、含浸液に使用する溶媒は、取扱が容易で防災の観点から特に水が望ましい。
【0057】
また、サイジング剤付与処理を行った後の乾燥工程における乾燥温度は150℃以上350℃以下が好ましく、180℃以上250℃以下がより好ましい。乾燥温度が150℃未満であるとサイジング剤の溶媒が完全に除去できず複合材料の接着特性が所望の物性に至らない場合があり、また350℃を超えるとサイジング剤の硬化が進み過ぎ、炭素繊維束が固くなって繊維束の拡がり性が不十分となるなる可能性がある。
【0058】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
まず、本発明に用いた個々の特性値の測定法を説明する。
(1)微粒子付着量、サイジング付着量
微粒子およびサイジング剤の付着量は以下のように求めた。まず、サイジング剤および微粒子が付着した炭素繊維約5gを採取し、炭素繊維表面から有機溶剤(例えばアセトン、NMPなど)で微粒子およびサイジング剤を溶解させた。続けて、微粒子をろ過によって溶解液から回収し、乾燥させたあと重量測定を行った。微粒子の付着量は、該重量を溶解前の炭素繊維重量で除することによって求めた。さらに、溶解処理した後の炭素繊維は、洗浄、乾燥したあと重量測定し、溶解による溶解前後の重量差を求めた。サイジング剤付着量は、溶解前後の重量差から微粒子の重量を減じた重量を、溶解前の炭素繊維重量で除することによって求めた。
【0059】
(2)擦過毛羽数
擦過毛羽数は、次の手順によって求めた。まず、直径10mmのステンレス棒(クロムめっき、表面粗さ1〜1.5s)5本を50mm間隔で各々平行に、かつそれらの表面を炭素繊維糸条が120°の接触角で接触しながら通過し得るように棒をジグザグに配置した擦過装置を用いた。この装置により入り側の炭素繊維糸条に1デニール当たり0.09gの張力をかけ、3m/分の糸速で通過させ、側面から繊維糸条に対して直角にレーザー光線を照射し、毛羽数を毛羽検出装置で検出カウントし、個/mで表示する。
【0060】
(3)ストランド引張強度、弾性率
次の手順によって求めた。JIS−R−7601の樹脂含浸ストランド試験法に準じ測定した。樹脂処方としてユニオンカーバイド社製ベークライト(登録商標)ERL4221/3フッ化ホウ素モノエチルアミン/アセトン=100/3/4(重量部)を用い、硬化条件としては常圧、130℃、30分を用いた。ストランド10本を測定し、その平均値を求めた。
【0061】
(4)コンポジット特性評価用樹脂
次の樹脂を用いた。特公平4−80054号公報開示の実施例1に従って次のように調製した。すなわち、油化シェルエポキシ社製エピコート1001を 3.5kg(35重量部)、油化シェルエポキシ社製エピコート828 を 2.5kg(25重量部)と大日本インキ化学工業(株)製エピクロンN740 を 3.0kg(30重量部)、油化シェルエポキシ社製エピコート152 を 1.5kg(15重量部)および電気化学工業(株)製デンカホルマール#20を 0.8kg(8重量部)とジクロロフェニルジメチルウレア 0.5kg(5重量部)を添加し、30分間撹拌して樹脂組成物を得た。該樹脂の最低粘度は20cpsであった。これを離型紙にコーティングして樹脂フィルムとしたものを用いた。硬化は3kgf/cm2・G の加圧下、135℃、2時間で行った。
【0062】
(5)コンポジット試験片
以下のようにして作成した。まず、円周約2.7mの鋼製ドラムに炭素繊維と組み合わせる樹脂をシリコン塗布ペーパー上にコーティングした樹脂フィルムを巻き、次に該樹脂フィルム上にクリールから引き出した炭素繊維をトラバースを介して巻き取り、配列して、さらにその繊維の上から前記樹脂フィルムを再度かぶせた後、加圧ロールで回転加圧して樹脂を繊維内に含浸せしめ、巾300mm、長さ2.7mの一方向プリプレグを作製する。
このとき、繊維間への樹脂含浸を良くするためにドラムは60〜70℃に加熱し、またプリプレグの繊維目付はドラムの回転数とトラバースの送り速度を調節することによって繊維目付約200g/m2、樹脂量約35重量%のプリプレグを作製した。
このように作製したプリプレグ裁断し、層間剪断強度(ILSS)および引張強度用にはプリプレグを一方向に積層し、オートクレーブを用いて所定の硬化条件で加熱硬化して、それぞれ厚み約2mmおよび1mmの一方向積層板を作製した。
ILSS用試験片は巾6.5mm、長さ14mmとし、測定は通常の3点曲げ試験治具を用いて支持スパンを試験片肉厚の4倍に設定し、クロスヘッド速度1.0mm/minで測定した。8本測定しその平均値を求めた。
引張強度用試験片は巾12.7mm、長さ227mmとし、該試験片の両端に厚さ約1.2mm、長さ50mmのGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)製のタブを接着し(必要に応じて試験片中央には弾性率および破壊歪を測定するための歪ゲージを貼り付け)、クロスヘッド速度1.0mm/minで測定した。5本測定しその平均値を求めた。
【0063】
(6)樹脂フロー量
次の手順により求めた。上記の一方向プリプレグ(100mm×100mm)を(0°/90°)S の構成で積層し、積層プリプレグの両側を穴あき離型フィルム(穴径1mm,穴密度1個/cm2 )、さらにガラスクロスを積層した。該積層物を油圧プレス機でプレスし、加圧硬化を行った。プレス条件は、プレス温度は樹脂の硬化温度に設定し、面圧8.5kg/cm2、20分で行った。樹脂フロー量は、プレス前後の積層プリプレグの重量差をフロー前の積層プリプレグ重量で除することにより求めた。5回測定しその平均値を求めた。
【0064】
実施例1
アクリロニトリル(AN)99.4モル%とメタクリル酸0.6モル%からなる共重合体を用いて、乾湿式紡糸方法により単繊維デニール1.0d,フィラメント数12,000本のアクリル系繊維を得た。得られた繊維束を240〜280℃の空気中で、延伸比1.05で加熱し、耐炎化繊維に転換し、ついで窒素雰囲気中300〜900℃の温度領域での昇温速度を200℃/分とし10%の延伸を行なった後、1400℃まで焼成した。得られた炭素繊維の横断面は円形で、かつ繊維表面は平滑であった。
【0065】
濃度0.25モル/リットルの炭酸水素アンモニウム水溶液を電解液として、1槽当たりの通電電気量を1クーロン/g・槽とし、5槽繰り返すことにより該炭素繊維を総電気量5クーロン/gで処理した。この電解処理を施された炭素繊維を続いて水洗し、180℃の加熱空気中で乾燥した。得られた炭素繊維は、引張強度4,800MPa、引張弾性率230GPa、O/C=0.12、N/C=0.04であった。
【0066】
サイジング剤(A)は特公昭57−49675号公報開示の実施例1に従って次のように調製した。
Figure 0003656864
(a)、(b)、(c)を高粘度乳化装置に仕込み50〜60℃に加熱して均一としたものに(d)の10重量%を加え、40℃以下で充分撹拌し、乳化転相させる。転相後徐々に残りの(d)を添加し均一なエマルジョンとする。濃度55%、粘度200cpsの均一な白色エマルジョンを得た。さらに、平均粒径0.85μmのジビニルベンゼン高架橋粒子(日本合成ゴム(株)製;PF082)の水分散液を加え、微粒子濃度2.0重量%、サイジング剤濃度2.0重量%の混合水溶液を調整した。該炭素繊維を含浸液に含浸させ、210℃、60秒乾燥させた。微粒子の付着量は1.1重量%、サイジング剤付着量は1.0重量%であった。ローラへの微粒子付着は認められなかった。また、毛羽発生数は5個/m、樹脂フロー量は9.5%、引張強度は2500MPa、ILSSは130MPaであった。
【0067】
実施例2
濃度3.0モル/リットルの炭酸アンモニウム水溶液を電解液として、1槽当たりの通電電気量を2クーロン/g・槽とし、10槽繰り返すことにより該炭素繊維を総電気量20クーロン/gで処理した以外は実施例1と同様に処理した。得られた炭素繊維は、引張強度4,750MPa、引張弾性率230GPa、O/C=0.15、N/C=0.10であった。
【0068】
実施例3、4、5
微粒子濃度を0.2重量%(実施例3)、1.0重量%(実施例4)、5.0重量%(実施例5)にした以外は実施例1と同様にして処理した。結果を表1に示した。
【0069】
実施例6
微粒子に平均粒子径0.01μmの酸化珪素粒子(日本アエロジル社製;アエロジルK315)を用い、微粒子濃度を1.0重量%にした以外は実施例1と同様にして処理した。結果を表1に示した。
【0070】
実施例7
微粒子濃度を0.4重量%、サイジング剤濃度0.5重量%にした以外は実施例5と同様にして処理した
【0071】
実施例8
微粒子に平均粒径0.35μmのジビニルベンゼン高架橋粒子(日本合成ゴム(株)製;PF032)を用い、微粒子濃度を1.0重量%にした以外は実施例1と同様にして処理した。結果を表1に示した。
【0072】
実施例9
微粒子濃度を1.0重量%,サイジング剤(B)を次のように調製した以外は実施例1と同様に処理した。
(a)エピコート 828(油化シェルエポキシ社製):40重量部
(b)エピコート1001(油化シェルエポキシ社製):35重量部
(c)ペンタエリスリトールテトラオレート : 5重量部
(d)トリベンジル化フェニルエーテルノニオン :20重量部
(a)、(b)を高粘度乳化装置に仕込み80〜90℃に加熱して均一としたものに、(c)、(d)を添加し均一なエマルジョンを調製した。
【0073】
実施例10
微粒子濃度を1.0重量%、サイジング剤(C)にポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(16モル)を用いた以外は実施例1と同様にして処理した。結果を表1に示した。
【0074】
比較例1
濃度0.1モル/リットルの硫酸水溶液を電解液として、1槽当たりの通電電気量を1クーロン/g・槽とし、5槽繰り返すことにより該炭素繊維を総電気量5クーロン/gで処理した以外は実施例1と同様に処理した。得られた炭素繊維は、引張強度4,800MPa、引張弾性率230GPa、O/C=0.14、N/C=0.01であった。微粒子の付着量は1.1重量%、サイジング剤付着量は1.0重量%であった。ローラへの微粒子付着は認められなかった。また、毛羽発生数は5個/m、樹脂フロー量は11.0%、引張強度は2480MPa、ILSSは125MPaであった。
【0075】
比較例2
微粒子を含有しない以外は実施例1と同様に処理した。サイジング剤付着量は1.0重量%、毛羽発生数は5個/m、樹脂フロー量は12.2%であった。結果を表1に示した。
【0076】
比較例3
サイジング剤を付着させない以外は実施例1と同様に処理した。微粒子の付着量は1.1重量%、また毛羽発生数は30個/m、ローラへの微粒子付着は多量に見られた。結果を表1に示した。
【0077】
比較例4
濃度0.1モル/リットルの硫酸水溶液を電解液として、1槽当たりの通電電気量を10クーロン/g・槽とし、5槽繰り返すことにより該炭素繊維を総電気量50クーロン/gで処理した以外は実施例1と同様に処理した。得られた炭素繊維は、引張強度4,700MPa、引張弾性率230GPa、O/C=0.21、N/C=0.01、微粒子の付着量は1.1重量%、サイジング剤付着量は1.0重量%であった。ローラへの微粒子付着は認められなかった。また、毛羽発生数は15個/m、樹脂フロー量は10.8%、引張強度は2,160MPa、ILSSは126MPaであった。
【0078】
【表1】
Figure 0003656864
【0079】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の炭素繊維およびその製造方法によれば、O/CおよびN/Cを特定の範囲とし、特定粒径の微粒子およびサイジング剤が付着した炭素繊維としたので、複合材料への成形性、さらには高次加工性の優れた炭素繊維とすることができ、それを使用したプリプレグを用いて得られる炭素繊維強化複合材料としても、優れた機械的特性のものを得ることができる。

Claims (10)

  1. X線光電子分光法により測定される炭素繊維の表面比酸素濃度O/Cが0.02以上0.2以下、表面比窒素濃度N/Cが0.02以上0.3以下であって、粒子径0.01μm以上5μm以下の微粒子とサイジング剤が付着してなり、かつ該サイジング剤の付着量が0.1重量%以上5重量%以下であることを特徴とする炭素繊維。
  2. 微粒子の付着量が炭素繊維単位重量当たり0.05重量%以上5重量%以下である請求項1の炭素繊維。
  3. 微粒子が珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、グラファイト、シリカ、マイカ、アルミナ、ステンレス、セラミック等の無機微粒子、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、シリコンゴム、ゴム等の有機微粒子の単体または混合物である、請求項1または2の炭素繊維。
  4. サイジング剤がポリアルキレングリコール、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン、ビニルエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂の単体または混合物である、請求項1ないし3のいずれかに記載の炭素繊維。
  5. 炭素繊維が12,000本以上の単繊維の繊維束からなる、請求項1ないし4のいずれかに記載の炭素繊維。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の炭素繊維を使用したプリプレグ。
  7. X線光電子分光法により測定される表面比酸素濃度O/Cが0.02以上0.2以下、表面比窒素濃度N/Cが0.02以上0.3以下である炭素繊維を、粒径が0.01μm以上5μm以下の微粒子とサイジング剤を水分散させた水溶液で含浸処理することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
  8. 微粒子が珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、グラファイト、シリカ、マイカ、アルミナ、ステンレス、セラミック等の無機微粒子、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、シリコンゴム、ゴム等の有機微粒子の単体または混合物であり、該微粒子を界面活性剤で水分散させる、請求項7の炭素繊維の製造方法。
  9. サイジング剤がポリアルキレングリコール、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン、ビニルエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂の単体または混合物の水溶性樹脂または界面活性剤で水分散させた樹脂である、請求項7または8の炭素繊維の製造方法。
  10. 炭素繊維が12,000本以上の単繊維の繊維束からなる、請求項7ないし9のいずれかに記載の炭素繊維の製造方法。
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