JP3654521B2 - 加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、めっき皮膜中のAl含有量が20〜95mass%の溶融Al−Zn系めっき鋼板を下地鋼板とする塗装鋼板であって、折り曲げ等の加工部においても塗膜クラックの発生が極めて少なく加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
めっき皮膜中にAlを20〜95mass%含有する溶融Al−Zn系めっき鋼板は、特公昭46−7161号に示されるように溶融亜鉛めっき鋼板に比べて優れた耐食性を示すことから、近年、建材分野を中心に需要が伸びている。
このめっき鋼板は、酸洗脱スケールした熱延鋼板又はこれをさらに冷間圧延して得られた冷延鋼板を下地鋼板とし、連続式溶融めっき設備において以下のようにして製造される。
【0003】
連続式溶融めっき設備では、下地鋼板は還元性雰囲気に保持された焼鈍炉内で所定温度に加熱され、焼鈍と同時に鋼板表面に付着する圧延油等の除去、酸化膜の還元除去が行われた後、下端がめっき浴に浸漬されたスナウト内を通って所定濃度のAlを含有した溶融亜鉛めっき浴中に浸漬される。めっき浴に浸漬された鋼板はシンクロールを経由してめっき浴の上方に引き上げられた後、めっき浴上に配置されたガスワイピングノズルから鋼板の表面に向けて加圧した気体を噴射することによりめっき付着量が調整され、次いで冷却装置により冷却され、所定のめっき皮膜が形成された溶融Al−Zn系めっき鋼板が得られる。
【0004】
連続式溶融めっき設備における焼鈍炉の熱処理条件及び雰囲気条件、めっき浴組成やめっき後の冷却速度等の操業条件は、所望のめっき品質や材質を確保するために所定の管理範囲で精度よく管理される。
上記のようにして製造されためっき鋼板のめっき皮膜は、主としてZnを過飽和に含有したAlがデンドライト凝固した部分と、残りのデンドライト間隙の部分からなっており、デンドライトはめっき皮膜の膜厚方向に積層している。このような特徴的な皮膜構造により、溶融Al−Zn系めっき鋼板は優れた耐食性を示す。
【0005】
また、めっき浴には通常1.5mass%程度のSiが添加されているが、このSiの働きにより、溶融Al−Zn系めっき鋼板はめっき皮膜/下地鋼板界面の合金相成長が抑えられ、合金相厚さは約1〜2μm程度である。この合金相が薄ければ薄いほど優れた耐食性を示す特徴的な皮膜構造の部分が多くなるので、合金相の成長抑制は耐食性の向上に寄与する。また、合金相はめっき皮膜よりも固く加工時にクラックの起点として作用するので、合金相の成長抑制はクラックの発生を減少させ、加工性の向上効果をもたらす。また、クラック部は下地鋼板が露出していて耐食性に劣るので、クラックの発生を減じることは加工部耐食性をも向上させる。
【0006】
通常、めっき浴には不可避的不純物、鋼板やめっき浴中の機器等から溶出するFe、合金相抑制のためのSiが含まれるが、それら以外にも何らかの元素が添加されている場合もあり、合金相やめっき皮膜中にはそれら元素が合金或いは単体の形で存在している。
【0007】
ところで、殆どの塗装鋼板は塗装後に成形加工して用いられるため、加工時のクラック(塗膜の割れ)の発生を防止することが非常に重要であるが、上述しためっき皮膜中にAlを20〜95mass%含有する溶融A1−Zn系めっき鋼板を下地とした塗装鋼板は、優れた耐食性を有する反面、めっき皮膜の加工性の影響を大きく受け、他のめっき鋼板、例えばめっき皮膜中にAlを5mass%程度含有する溶融A1−Zn系めっき鋼板を下地とした塗装鋼板(以下、「5%Al−Znめっき下地塗装鋼板」という)に較べて加工の際に塗膜にクラックが発生しやすく、加工強度が制限される場合が多い。
【0008】
このような塗膜のクラックは、めっき皮膜/下地鋼板界面に存在する約1〜2μm厚の合金相を起点として発生するめっき皮膜のクラックに起因するものであるが、めっき皮膜に生じるクラックはめっき皮膜のデンドライト間隙部を伝播経路とするため、同一加工条件であっても同一めっき皮膜厚の5%Al−Zn系めっき下地塗装鋼板に較べて開口部が大きく、肉眼でも視認されるような大きなクラックとなり、塗装鋼板の外観不良とされやすい傾向がある。
塗膜やめっき皮膜のクラック発生を防止するために、塗膜の柔軟化による加工性の改善や、特公昭61−28748号公報に開示されているような、めっき鋼板に所定の熱処理を施し、めっき鋼板自体の延性を改善することが提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前者の場合には塗膜に表面疵が発生しやすくなるなど、他の特性が低下してしまうため、そのような塗装鋼板は厳しい加工を伴う用途には適用できなくなる。また、後者のような熱処理によりめっき皮膜の延性がある程度改善されたとしても、塗装を行った塗装鋼板としての加工性やクラックが発生することにより低下する加工部の耐食性が直接改善されるものではない。
【0010】
したがって本発明の目的は、めっき皮膜中のAl含有量が20〜95mass%の溶融Al−Zn系めっき鋼板を下地鋼板とする塗装鋼板であって、折り曲げ等の加工部においても塗膜クラックの発生が極めて少なく、5%Al−Zn系めっき下地塗装鋼板をしのぐ優れた加工性を有するとともに、加工部耐食性にも優れた塗装鋼板及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため、めっき皮膜中のAl含有量が20〜95mass%の溶融Al−Zn系めっき鋼板を下地鋼板とする塗装鋼板の加工性及び加工部耐食性を向上させる手段について鋭意検討を行い、その結果、溶融Al−Zn系めっき鋼板のめっき皮膜を特定の熱履歴を経たものとし、且つこのめっき皮膜面に特定の構成の塗膜を形成することにより、従来では達成できなかった極めて優れた加工性と加工部耐食性が得られることを見い出した。
【0012】
本発明はこのような知見に基づいてなされたもので、その特徴は以下のとおりである。
[1] めっき皮膜中のAl含有量が20〜95mass%の溶融Al−Zn系めっき鋼板を下地鋼板とする塗装鋼板であって、
前記めっき皮膜が少なくとも下記(a)の熱履歴を経て得られためっき皮膜であり、
(a) 溶融めっきされためっき金属が凝固した後、130〜300℃の範囲の温度T(℃)に昇温加熱され、その後、温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴、
又は/及び、溶融めっきされためっき金属が凝固した後の130〜300℃の範囲の温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴
C=(T−100)/2 …… (1)
前記めっき皮膜の表面に、下層側から化成処理皮膜、塗膜厚が2〜15μmの下塗り塗膜、及び塗膜厚が5〜30μmであって且つガラス転移温度が30〜90℃の上塗り塗膜を有することを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板。
【0013】
[2] 上記[1]の塗装鋼板において、(a)の熱履歴の温度T(℃)が130〜200℃の範囲であることを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板。
[3] 上記[1]又は[2]の塗装鋼板において、めっき皮膜がMg、V、Mnの中から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.01〜10mass%含有することを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板。
[4] 上記[1]〜[3]のいずれかの塗装鋼板において、下塗り塗膜の主剤樹脂がポリエステル系樹脂及び/又はエポキシ系樹脂からなることを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板。
[5] 上記[1]〜[4]のいずれかの塗装鋼板において、上塗り塗膜の主剤樹脂がポリエステル系樹脂、又はポリフッ化ビニリデン樹脂とアクリル樹脂の混合樹脂からなることを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板。
[6] 上記[1]〜[5]のいずれかの塗装鋼板において、下塗り塗膜がクロム酸塩を塗膜固形分中の割合で1〜50mass%含むことを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板。
【0014】
[7] めっき皮膜中のAl含有量が20〜95mass%の溶融Al−Zn系めっき鋼板を下地鋼板とする塗装鋼板の製造方法であって、下記1)〜4)の工程を有することを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板の製造方法。
1) 溶融めっき浴を出た鋼板のめっき皮膜に対して、少なくとも下記(a)の熱履歴を付与する工程
(a) 溶融めっきされためっき金属が凝固した後、130〜300℃の範囲の温度T(℃)に昇温加熱され、その後、温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴、
又は/及び、溶融めっきされためっき金属が凝固した後の130〜300℃の範囲の温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴
C=(T−100)/2 …… (1)
2) めっき皮膜面に化成処理を施して化成処理皮膜を形成する工程
3) 前記化成処理皮膜面に下塗り塗料を塗布して焼付けし、塗膜厚が2〜15μmの下塗り塗膜を形成する工程
4) 前記下塗り塗膜面に上塗り塗料を塗布して焼付けし、塗膜厚が5〜30μm、ガラス転移温度が30〜90℃の上塗り塗膜を形成する工程
【0015】
[8] 上記[7]の製造方法において、(a)の熱履歴の温度T(℃)が130〜200℃の範囲であることを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板の製造方法。
[9] 上記[7]又は[8]の製造方法において、めっき皮膜がMg、V、Mnの中から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.01〜10mass含有することを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板の製造方法。
[10] 上記[7]〜[9]のいずれかの製造方法において、3)の工程において、ポリエステル系樹脂及び/又はエポキシ系樹脂を主剤樹脂とする塗料を塗布した後、最高到達板温150〜270℃で焼付処理して下塗り塗膜を形成することを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板の製造方法。
[11] 上記[7]〜[10]のいずれかの製造方法において、4)の工程において、ポリエステル系樹脂、又はポリフッ化ビニリデン樹脂とアクリル樹脂の混合樹脂を主剤樹脂とする塗料を塗布した後、最高到達板温150〜280℃で焼付処理して上塗り塗膜を形成することを特徴とする塗装鋼板の製造方法。
【0016】
[12] 上記[7]〜[11]のいずれかの製造方法において、下塗り塗装用の塗料がクロム酸塩を塗料固形分中の割合で1〜50mass%含むことを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板の製造方法。
[13] 上記[7]〜[12]のいずれかの製造方法において、めっき皮膜に対する(a)の熱履歴の付与を、下記(1)〜(8)のうちの少なくとも1つの段階で行うことを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板の製造方法。
(1) 化成処理前
(2) 化成処理の乾燥工程中
(3) 化成処理終了後、下塗り塗装前
(4) 下塗り塗装の乾燥工程中
(5) 下塗り塗装終了後、上塗り塗装前
(6) 上塗り塗装の乾燥工程中
(7) 上塗り塗装終了後
(8) 溶融めっきされためっき金属が凝固した後の冷却過程
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の塗装鋼板は、めっき皮膜中にAlを20〜95mass%含有する溶融Al−Zn系めっき鋼板を下地鋼板とし、そのめっき皮膜面に、下層側から化成処理皮膜、下塗り塗膜及び上塗り塗膜を順次形成したものである。以下、これらの構成の詳細を順に説明する。
【0018】
(1) 溶融Al−Zn系めっき鋼板
めっき皮膜中にAlを20〜95mass%含有する溶融Al−Zn系めっき鋼板は優れた耐食性を有するが、この耐食性等の観点から、めっき皮膜中のAl量のより好ましい範囲は45〜65mass%である。また、めっき皮膜の特に好ましい成分組成は、Al:45〜65mass%、Si:0.7〜2.0mass%、Fe:10mass%未満、残部が不可避的不純物を含む実質的なZnであり、このような組成の場合に特に優れた耐食性を発揮する。
【0019】
さらに、めっき皮膜中にMg、V、Mnの中から選ばれる1種または2種以上を合計で0.01〜10mass%含有させることによって、耐食性や加工性をより向上させることができる。これら元素の含有量の合計が0.01mass%未満では十分な効果が得られず、一方、10mass%を超えると耐食性向上効果が飽和するとともに、皮膜が硬くなるので加工性が低下する。
【0020】
但し、この溶融Al−Zn系めっき鋼板は、そのめっき組成だけで高い加工部耐食性を得ることは難しく、後述する熱履歴を経ることと上層の化成処理皮膜及び塗膜との組み合せによってはじめて優れた加工部耐食性が得られる。
また、この溶融Al−Zn系めっき鋼板のめっき付着量に特に制限はないが、一般には片面当たり30〜200g/m程度とすることが適当である。
【0021】
さらに、この溶融Al−Zn系めっき鋼板のめっき皮膜は、少なくとも下記(a)の熱履歴を経て得られためっき皮膜であることが必要である。
(a) 溶融めっきされためっき金属が凝固した後、130〜300℃の範囲の温度T(℃)に昇温加熱され、その後、温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴、
又は/及び、溶融めっきされためっき金属が凝固した後の130〜300℃の範囲の温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴
C=(T−100)/2 …… (1)
また、上記(a)の熱履歴において、温度T(℃)のより好ましい範囲は130〜200℃である。
ここで、上記(1)式は本発明者らがめっき皮膜の昇温加熱及びその後の冷却条件や溶融めっきされためっき金属凝固後の冷却条件がめっき皮膜に与える影響を実験に基づき詳細に検討し、その結果導かれた実験式である。
【0022】
めっき皮膜を上記(a)の熱履歴を経たものとすることにより、溶融Al−Zn系めっき皮膜でありながら、その加工性(耐クラック性など)が大きく向上する。このように加工性が改善されるのは、めっき皮膜が130〜300℃(好ましくは130〜200℃)の温度範囲に昇温加熱された後に特定の条件で徐冷される熱履歴、又は/及びめっき皮膜凝固後の130〜300℃(好ましくは130〜200℃)の温度範囲から特定の条件で徐冷される熱履歴を経ることにより、凝固時点でめっき皮膜に蓄積された歪が開放されるとともに、めっき皮膜中で固体拡散が生じ、めっき皮膜中のAlとZnの二相分離が効果的に促進される結果、めっき皮膜が軟質化するためであると考えられる。
【0023】
上記(a)の熱履歴では、めっき皮膜(溶融めっきされためっき金属が凝固した後のめっき皮膜)を130〜300℃、好ましくは130〜200℃の範囲の温度T(℃)に昇温加熱し、その後、温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が上記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足するように冷却するか、或いは溶融めっきされためっき金属が凝固した後のめっき皮膜をその冷却過程である130〜300℃の範囲の温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が上記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足するように冷却する。
【0024】
この(a)の熱履歴において、めっき皮膜の昇温加熱温度Tが130℃未満では上記のような作用が十分に得られず、一方、昇温加熱温度Tが300℃超では下地鋼板とめっき皮膜との界面での合金相の成長を促進させるため、却って加工性に悪影響を及ぼす。またこのような観点から、加工性の改善にとってより好ましい昇温加熱温度Tの上限は200℃である。
また、溶融めっきされためっき金属が凝固した後の冷却過程である130〜300℃の範囲の温度T(℃)から上記(a)の熱履歴が付与される条件で冷却を行う場合についても、温度Tが130℃未満では上記のような作用が十分に得られない。
【0025】
図1(a)は、溶融めっきされためっき金属が凝固した後のめっき鋼板を熱処理した際の、めっき皮膜の昇温加熱温度が塗装鋼板の加工性に及ぼす影響を調べたもので、この結果が得られた供試材は、いずれも昇温加熱温度から100℃までのめっき皮膜の平均冷却速度が上記(a)の熱履歴の条件内であるめっき鋼板に、本発明条件を満足する化成処理皮膜−下塗り塗膜−上塗り塗膜を形成した塗装鋼板である。なお、この試験における加工性の評価は、後述する実施例の加工性の評価に準じて行った。
【0026】
また図1(b)は、溶融めっきされためっき金属が凝固した後のめっき鋼板を熱処理した際の、めっき皮膜の平均冷却速度(昇温加熱温度から100℃までの平均冷却速度)が塗装鋼板の加工性に及ぼす影響を調べたもので、この結果が得られた供試材は、いずれもめっき皮膜の昇温加熱温度が上記(a)の熱履歴の条件内であるめっき鋼板に、本発明条件を満足する化成処理皮膜−下塗り塗膜−上塗り塗膜を形成した塗装鋼板である。なお、この試験における加工性の評価は、後述する実施例の加工性の評価に準じて行った。
【0027】
図1(a),(b)に示されるように、めっき皮膜の昇温加熱温度が130〜300℃の範囲では180°折り曲げ加工での加工性の評価は“○”以上であり、また好ましい条件である130〜200℃の範囲では加工性の評価は“◎”となっている。これに対して昇温加熱温度が130〜300℃の範囲外では加工性の評価は“△”しか得られていない。また、昇温加熱温度から100℃までの平均冷却速度と上記(1)式の“C”との差が零〜マイナス(本発明範囲内)の場合の180°折り曲げ加工での加工性の評価は、めっき皮膜の昇温加熱温度が130〜300℃の範囲では“○”以上であり、また、好ましい条件である130〜200℃の範囲では“◎”である。これに対して、その差がプラス(本発明範囲外)の場合には加工性の評価は“△”しか得られていない。
【0028】
めっき皮膜を上記(a)の熱履歴を経たものとするには、連続式溶融めっき設備内に或いは同設備外にめっき皮膜を熱処理又は保熱するための加熱又は保熱装置を設け、所定の熱処理又は保熱を行う。例えば、連続式溶融めっき設備内に加熱機構(例えば、インダクションヒーター、ガス加熱炉、熱風炉など)を設けてインラインで連続加熱して行ってもよいし、また、コイルに巻取った後にオフラインでバッチ加熱して行ってもよい。また、めっきライン外の連続処理設備において加熱機構(例えば、インダクションヒーター、ガス加熱炉、熱風炉など)により連続加熱して行ってもよい。さらには、めっきライン内や上記連続処理設備で連続加熱されためっき鋼板をコイルに巻き取った後に適当な保熱又は加熱保持を行ってもよい。また、溶融めっきされためっき金属が凝固した後の冷却過程においてめっき皮膜を保熱して徐冷できるような保熱装置を設けてもよい。
但し、加熱又は保熱装置の方式、形状、規模等については特別な制限はなく、要はめっき皮膜に上記(a)の熱履歴を与え得るものであればよい。
以上のような(a)の熱履歴を経ためっき皮膜の表面に特定の塗膜を形成することにより、この塗装鋼板は極めて加工性と加工部耐食性を示す。
【0029】
(2) 化成処理皮膜
この塗装下地となる化成処理皮膜の種類に特に制約はなく、化成処理としてはクロメート処理、リン酸亜鉛処理、有機樹脂を主成分とする処理などを実施することができる。一般には、環境を重視する場合には有機樹脂を主成分とする処理、耐食性を重視する場合にはクロメート処理が用いられる。但し、リン酸亜鉛処理は工程が煩雑であり、まためっき皮膜中に20〜70mass%のAlを含む溶融Al−Zn系めっき鋼板の場合にはリン酸の反応性が十分でない場合もあり得るので、使用する場合にはその点を考慮する必要がある。
【0030】
(3) 下塗り塗膜
下塗り塗膜は、その塗膜厚を2〜15μmとする。塗膜厚が2μm未満では十分な防錆性が得られず、一方、15μmを超えると耐傷付き性が低下し、また製造コストも上昇するため好ましくない。
下塗り塗膜の主剤樹脂としては、加工性及び加工部耐食性の点からポリエステル系樹脂及び/又はエポキシ系樹脂を用いることが好ましい。
【0031】
前記ポリエステル系樹脂としては、ビスフェノールA付加ポリエステル樹脂などを用いることもでき、また、前記エポキシ系樹脂としては、一部をウレタン樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂などで変性したものを用いることもできる。
前記ポリエステル系樹脂は、数平均分子量が1000〜30000、より好ましくは3000〜20000のものが望ましい。数平均分子量が1000未満では塗膜の伸びが不十分であるため十分な加工性が得られず、塗膜性能が不十分となる場合がある。一方、数平均分子量が30000を超えると主剤樹脂が高粘度となるため過剰の希釈溶剤が必要となり、塗料中に占める樹脂の比率が低下して適正な塗膜が得られなくなり、他の配合成分との相溶性も低下する場合がある。
【0032】
また、主剤樹脂としてビスフェノールA付加ポリエステル樹脂を使用する場合には、ビスフェノールA付加ポリエステル樹脂中でのビスフェノールAの含有量は、樹脂固形分中の割合で1〜70mass%、より好ましくは3〜60mass%、特に好ましくは5〜50mass%とするのが適当である。この含有量の範囲の下限は塗膜強度を確保する観点から、上限は塗膜の伸びを確保する観点から、それぞれ好ましいものである。
【0033】
前記ポリエステル樹脂を得るための多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。また、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリカプロラクトンポリオール、グリセリン、ソルビトール、アンニトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等を用いてもよい。また、これらの多価アルコールを2種類以上の組合わせて用いることもできる。
【0034】
また、ポリエステル樹脂を得るための多価塩基としては、フタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、トリメリット酸等が挙げられる。さらに、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、無水コハク酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を用いてもよい。これらの多価塩基酸成分を2種類以上組合わせて用いることもできる。
【0035】
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類とエピハロヒドリン或いはβメチルエピハロヒドリンとからなるエポキシ化合物、又はこれらの共重合物等が挙げられる。
さらに、これらのエポキシ化合物のモノカルボン酸或いはジカルボン酸変性物、モノ、ジ若しくはポリアルコール変性物、モノ若しくはジアミン変性物、モノ、ジ若しくはポリフェノール変性物もエポキシ樹脂として使用できる。
【0036】
また、以上のような主剤樹脂の硬化剤としては、ポリイソシアネート化合物及び/又はアミノ樹脂を用いることができる。
前記ポリイソシアネート化合物としては、一般的製法で得られるイソシアネート化合物を用いることができるが、特に1液型塗料としての使用が可能である、フェノール、クレゾール、芳香族第二アミン、第三級アルコール、ラクタム、オキシム等のブロック剤でブロック化されたポリイソシアネート化合物が好ましい。このブロック化ポリイソシアネート化合物を用いることにより1液での保存が可能となり、塗料としての使用が容易となる。
【0037】
また、さらに好ましいポリイソシアネート化合物としては、非黄変性のヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDI)及びその誘導体、トリレンジイソシアネート(以下、TDI)及びその誘導体、4、4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDI)及びその誘導体、キシリレンジイソシアネート(以下、XDI)及びその誘導体、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDI)及びその誘導体、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(以下、TMDI)及びその誘導体、水添TDI及びその誘導体、水添MDI及びその誘導体、水添XDI及びその誘導体等が挙げられる。
【0038】
硬化剤としてポリイソシアネート化合物を用いる場合、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と主剤樹脂中の水酸基との配合比[NCO/OH]はモル比で0.8〜1.2、より好ましくは0.90〜1.10の範囲とすることが望ましい。[NCO/OH]のモル比が0.8未満では塗膜の硬化が不十分であり、所望の塗膜硬度及び強度が得られない。一方、[NCO/OH]のモル比が1.2を超えると、過剰のイソシアネート基同士の或いはイソシアネート基とウレタン配合との副反応が生じて、塗膜の加工性が低下する。
【0039】
硬化剤である前記アミノ樹脂としては、尿素、ベンゾグアナミン、メラミン等とホルムアルデヒドとの反応で得られる樹脂、及びこれらをメタノール、ブタノール等のアルコールによりアルキルエーテル化したものが使用できる。
具体的には、メチル化尿素樹脂、n−ブチル化ベンゾグアナミン樹脂、メチル化メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂、iso−ブチル化メラミン樹脂等を挙げることができる。
【0040】
硬化剤としてアミノ樹脂を用いる場合、アミノ樹脂と主剤樹脂との配合比(固形分の重量比)は、主剤樹脂:アミノ樹脂=95:5〜60:40、望ましくは85:15〜75:25とすることが好ましい。
硬化剤の配合量は、樹脂固形分中での割合で9〜50mass%とするのが好ましい。硬化剤の配合量が9mass%未満では塗膜硬度が十分でなく、一方、50mass%を超えると加工性が不十分となる。
【0041】
また、下塗り塗膜用の樹脂組成物には、目的、用途に応じてp‐トルエンスルホン酸、オクトエ酸錫、ジブチル錫ジラウレートなどの硬化触媒、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、酸化チタン、弁柄、マイカ、カーボンブラック、アルミニウム粉などの顔料、クロム酸塩、トリポリリン酸アルミなどの防錆顔料、その他消泡剤、流れ止め剤などの各種添加剤を添加することができる。
【0042】
前記防錆顔料としては、耐食性の観点からクロム酸塩が最も好ましい。このクロム酸塩としては、クロム酸ストロンチウム、クロム酸カリウム、クロム酸亜鉛、クロム酸カルシウム、クロム酸バリウム等が挙げられ、なかでもクロム酸ストロンチウムが最も好ましい。
クロム酸塩の含有量は塗膜固形分中の割合で1〜50mass%、好ましくは10〜45mass%とするのが望ましい。クロム酸塩の含有量が1mass%未満では十分な防錆効果が得られず、一方、50mass%を超えると上塗り塗膜との密着性が低下する。
【0043】
(4) 上塗り塗膜
上塗り塗膜は、その塗膜厚を5〜30μmとする。塗膜厚が5μm未満では十分な加工性及び加工部耐食性が得られず、一方、30μmを超えると加工性が低下するとともに、製造コストが上昇するため好ましくない。
また、上塗り塗膜はそのガラス転移温度を30〜90℃とする。上塗り塗膜のガラス転移温度が30℃未満では耐傷付き性が低下し、一方、90℃を超えると塗膜の加工性が低下し、先に述べたようにめっき鋼板自体の加工性が向上しても、塗装鋼板全体としての加工性は低いものとなる。
【0044】
上塗り塗膜の主剤樹脂としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂(ポリフッ化ビニリデン樹脂とアクリル樹脂の混合樹脂)等を用いることができ、前記ポリエステル系樹脂としては、ポリエステル樹脂のほかに、シリコン変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂等を用いることができる。
また、これら主剤樹脂のうち、加工性の観点からは特にポリエステル系樹脂とポリフッ化ビニリデン系樹脂が好ましく、さらにコストを考慮するとポリエステル系樹脂が最も好ましい。
【0045】
前記ポリエステル樹脂は、1分子中に少なくとも2個の水酸基を有し、且つ数平均分子量が1000〜20000の化合物であれば特に限定されるものではないが、数平均分子量が2000〜20000のものが特に好ましい。
ポリエステル樹脂の数平均分子量が2000未満では加工性が著しく低下する場合がある。一方、数平均分子量が20000を超えると耐候性が低下し、高粘度になるため過剰の希釈溶剤が必要となり、塗料中の樹脂の比率が低下するために適切な塗膜が得られなくなり、また他の配合成分との相溶性も低下する場合がある。ここで、ポリエステル樹脂の数平均分子量はGPCにより測定したポリスチレン換算分子量とする。
なお、ポリエステル樹脂の分子中の水酸基は、分子中の末端または側鎖のいずれにあってもよい。
【0046】
前記ポリエステル樹脂は、多塩基と多価アルコールを常法で加熱反応させて得られる共重合体である。
多塩基酸成分としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水トリメリット酸、マレイン酸、アジピン酸、フマル酸等を用いることができる。
【0047】
また、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等を用いることができる。
【0048】
前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、上塗り塗膜成分として配合する場合、ポリフッ化ビニリデン樹脂に対してアクリル樹脂を混合した混合樹脂として使用する。
ポリフッ化ビニリデン樹脂としては重量平均分子量が300000〜700000、融点150〜180℃のものが好ましい。例えば、日本ペンウォルト(株)製の商品名「カイナー500(重量平均分子量:350000、融点:160〜165℃)」等が例示できる。
【0049】
ポリフッ化ビニリデン樹脂と混合するアクリル樹脂としては、数平均分子量が1000〜2000のものが好ましい。また、アクリル樹脂は以下のようなモノマーの少なくとも1種(但し、少なくとも1種のアクリルモノマーを含む)を通常の方法により重合(または共重合)させることにより得ることができる。
【0050】
▲1▼(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等のヒドロキシル基を有するエチレン性モノマー
▲2▼(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等のカルボキシル基を有するエチレン性モノマー
▲3▼(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の、上述のモノマー▲1▼及び▲2▼と共重合可能なエチレン性モノマー
▲4▼ スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン等のスチレン誘導体
【0051】
これらのモノマーのうち、水酸基やカルボキシル基などの官能基を有するモノマーを使用することにより、他の反応可能な成分との架橋反応が可能である。
本発明に用いるアクリル樹脂は自己架橋性である必要はないが、自己架橋性とする場合には、分子中に2個以上のラジカル重合性不飽和結合を有する所謂架橋性モノマーを含有させる。ラジカル重合可能なモノマーとしては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリエスリトールテトラメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等の重合性不飽和化合物が挙げられる。架橋性モノマーはアクリル樹脂の20mass%まで添加することができる。
【0052】
ポリフッ化ビニリデン樹脂とアクリル樹脂との配合比(樹脂固形分の重量比)は[ポリフッ化ビニリデン樹脂]:[アクリル樹脂]=90:10〜50:50とすることが好ましい。アクリル樹脂に対するポリフッ化ビニリデン樹脂の重量比が90:10を超えるとチクソトロピー性が高まり、ロールコーターでの塗装が困難になるため仕上がりが不均一な塗膜となり、塗膜外観が劣る。一方、50:50を下回ると塗膜密着性の経時劣化が著しく、また耐候性も大きく低下するので好ましくない。
ポリフッ化ビニリデン樹脂とアクリル樹脂の混合樹脂の配合量は、塗膜固形分中の割合で40mass%以上とすることが好ましく、配合量が40mass%未満では目的とする塗膜性能が十分に得られない。
【0053】
また、主剤樹脂としてポリエステル系樹脂やアクリル系樹脂を用いる場合には、硬化剤を配合することができ、この硬化剤としては、ポリイソシアネート化合物及び/又はアミノ樹脂を用いることができる。
前記ポリイソシアネート化合物としては、一般的製法で得られるイソシアネート化合物を用いることができるが、特に1液型塗料としての使用が可能である、フェノール、クレゾール、芳香族第二アミン、第三級アルコール、ラクタム、オキシム等のブロック剤でブロック化されたポリイソシアネート化合物が好ましい。このブロック化ポリイソシアネート化合物を用いることにより1液での保存が可能となり、塗料としての使用が容易となる。
【0054】
また、さらに好ましいポリイソシアネート化合物としては、HDI及びその誘導体、TDI及びその誘導体、MDI及びその誘導体、XDI及びその誘導体、IPDI及びその誘導体、TMDI及びその誘導体、水添TDI及びその誘導体、水添MDI及びその誘導体、水添XDI及びその誘導体等が挙げられる。
【0055】
硬化剤としてポリイソシアネート化合物を用いる場合、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と主剤樹脂中の水酸基との配合比[NCO/OH]はモル比で0.8〜1.2、より好ましくは0.90〜1.10の範囲とすることが望ましい。[NCO/OH]のモル比が0.8未満では塗膜の硬化が不十分であり、所望の塗膜硬度及び強度が得られない。一方、[NCO/OH]のモル比が1.2を超えると、過剰のイソシアネート基同士の或いはイソシアネート基とウレタン配合との副反応が生じて、塗膜の加工性が低下する。
【0056】
硬化剤である前記アミノ樹脂としては、尿素、ベンゾグアナミン、メラミン等とホルムアルデヒドとの反応で得られる樹脂、及びこれらをメタノール、ブタノール等のアルコールによりアルキルエーテル化したものが使用できる。
具体的には、メチル化尿素樹脂、n−ブチル化ベンゾグアナミン樹脂、メチル化メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂、iso−ブチル化メラミン樹脂等を挙げることができる。
【0057】
硬化剤としてアミノ樹脂を用いる場合、アミノ樹脂と主剤樹脂との配合比(固形分の重量比)は、主剤樹脂:アミノ樹脂=95:5〜60:40、望ましくは85:15〜75:25とすることが好ましい。
硬化剤の配合量は、樹脂固形分中での割合で9〜50mass%とするのが好ましい。硬化剤の配合量が9mass%未満では塗膜硬度が十分でなく、一方、50mass%を超えると加工性が不十分となる。
【0058】
また下塗り塗膜用の樹脂組成物と同様に、上塗り塗膜用の樹脂組成物にも、目的、用途に応じてp‐トルエンスルホン酸、オクトエ酸錫、ジブチル錫ジラウレートなどの硬化触媒、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、酸化チタン、弁柄、マイカ、カーボンブラック、アルミニウム粉などの顔料、その他消泡剤、流れ止め剤などの各種添加剤を添加することができる。
【0059】
次に、本発明による上記塗装鋼板の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、連続式溶融めっき設備などで製造されるめっき皮膜中のAl含有量が20〜95mass%の溶融Al−Zn系めっき鋼板を下地鋼板とする塗装鋼板の製造方法であり、溶融めっき浴を出た鋼板のめっき皮膜に対して、少なくとも下記(a)の熱履歴を付与する工程と、めっき鋼板の表面に化成処理皮膜、下塗り塗膜及び上塗り塗膜を順次形成させる工程とを有する。
(a) 溶融めっきされためっき金属が凝固した後、130〜300℃の範囲の温度T(℃)に昇温加熱され、その後、温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴、
又は/及び、溶融めっきされためっき金属が凝固した後の130〜300℃の範囲の温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴
C=(T−100)/2 …… (1)
【0060】
上記(a)の熱履歴の付与は、溶融めっきされためっき金属が凝固した後のめっき鋼板に対して特定の熱処理を施すか、或いは溶融めっきされためっき金属が凝固した後のめっき皮膜の冷却を保熱などによって制御することによりなされる。本発明の製造方法ではめっき鋼板のめっき皮膜面に化成処理皮膜、下塗り塗膜及び上塗り塗膜を順次形成させるが、めっき皮膜に上記(a)の熱履歴を付与するための熱処理は、▲1▼化成処理前、▲2▼化成処理の乾燥工程中、▲3▼化成処理終了後(処理液の塗布及び乾燥後)、下塗り塗装前、▲4▼下塗り塗装の乾燥工程中、▲5▼下塗り塗装終了後(塗料の塗布及び乾燥後)、上塗り塗装前、▲6▼上塗り塗装の乾燥工程中、▲7▼上塗り塗装終了後(塗料の塗布及び乾燥後)、のいずれの段階で行ってもよい。また、これらのうちの2つ以上の段階で行ってもよい。
【0061】
したがって、めっき皮膜に対する(a)の熱履歴の付与は、下記(1)〜(8)のうちの少なくとも1つの段階で行うことができる。
(1) 化成処理前
(2) 化成処理の乾燥工程中
(3) 化成処理終了後、下塗り塗装前
(4) 下塗り塗装の乾燥工程中
(5) 下塗り塗装終了後、上塗り塗装前
(6) 上塗り塗装の乾燥工程中
(7) 上塗り塗装終了後
(8) 溶融めっきされためっき金属が凝固した後の冷却過程
なお、熱処理を行う上記方式のうち、▲2▼、▲4▼及び▲6▼の方式は化成処理、下塗り塗装及び上塗り塗装の乾燥工程における加熱を利用して熱処理を行うので、特に経済性に優れている。
【0062】
上記(a)の熱履歴を付与するための熱処理又は保熱は、連続式溶融めっき設備内に或いは同設備外に設けられた加熱又は保熱装置などにより行う。連続式溶融めっき設備内に加熱機構(例えば、インダクションヒーター、熱風炉など)を設けてインラインで連続加熱して行ってもよいし、また、コイルに巻取った後にオフラインでバッチ加熱して行ってもよい。また、めっきライン外の連続処理設備において加熱機構(例えば、インダクションヒーター、熱風炉など)により連続加熱して行ってもよい。さらには、めっきライン内や上記連続処理設備で連続加熱されためっき鋼板をコイルに巻き取った後に適当な保熱又は加熱保持を行ってもよい。また、溶融めっきされためっき金属が凝固した後の冷却過程においてめっき皮膜を保熱して徐冷できるような保熱装置を設けてもよい。但し、加熱又は保熱装置の方式、形状、規模等については特別な制限はなく、要はめっき皮膜に上記(a)の熱履歴を与え得るものであればよい。
なお、製造される溶融Al−Zn系めっき鋼板の好ましいめっき組成、めっき付着量、上記(a)の熱履歴の限定理由及び得られる作用効果などは先に述べた通りである。
【0063】
先に述べたように、塗装下地としてめっき鋼板面に施される化成処理の種類に特に制約はなく、クロメート処理、リン酸亜鉛処理、有機樹脂を主成分とする処理等を実施できる。なお、一般にこの化成処理の乾燥工程では、熱風炉、インダクションヒータなどによる処理皮膜の加熱乾燥が行われるため、先に述べたようにこの加熱乾燥を利用してめっき皮膜に(a)の熱履歴を付与してもよい。
【0064】
この化成処理皮膜の上層に下塗り塗料、好ましくは先に述べたような樹脂を主剤樹脂とし、必要に応じてこれに硬化剤を配合した下塗り塗料を塗布して焼付けし、さらにその上層に上塗り塗料、好ましくは先に述べたような樹脂を主剤樹脂とし、必要に応じてこれに硬化剤を配合した上塗り塗料を塗布して焼付けすることにより、下塗り塗膜及び上塗り塗膜を形成する。これら下塗り塗膜及び上塗り塗膜の構成は先に述べた通りである。
塗膜(下塗り塗膜及び上塗り塗膜)を形成するための塗料の塗装方法に特に規定しないが、ロールコーター塗装、カーテンフロー塗装などが好ましい。塗料を塗装後、熱風加熱、赤外線加熱、誘導加熱などにより、塗膜を焼き付けて塗膜を形成する。
【0065】
塗膜を加熱硬化させる焼付処理は、下塗り塗装では焼付温度(最高到達板温)を150〜270℃、好ましくは180〜250℃とするのが適当である。焼付温度が150℃未満では塗膜の硬化反応が不十分となり、塗装鋼板の耐食性が低下しやすい。一方、270℃を超えると反応が過剰となり、上塗り塗膜との密着性が低下する場合がある。
【0066】
また、上塗り塗装では焼付温度(最高到達板温)を150〜280℃、好ましくは180〜260℃とするのが適当である。焼付温度が150℃未満では樹脂の重合反応が不十分で、塗装鋼板の耐食性や耐傷つき性が低下しやすい。一方、280℃を超えると反応が過剰となり、加工性が低下する場合がある。
また、下塗り塗装、上塗り塗装の焼付時間については特に限定しないが、通常は20〜120秒程度が適当である。
なお、先に述べたようにこれら塗膜の焼付処理を利用してめっき皮膜に(a)の熱履歴を付与してもよい。
【0067】
【実施例】
○実施例1
常法で製造した冷延鋼板(板厚0.35mm)を連続式溶融めっき設備に通板し、55%Al−1.5%Si−Znめっき浴(本発明例No.1〜No.6、No.9〜No.18、比較例No.1〜No.12)、40%Al−1.0%Si−Znめっき浴(本発明例No.7)及び70%Al−1.8%Si−Znめっき浴(本発明例No.8)を用いて溶融めっきを行った。ラインスピードは160m/分とし、片面めっき付着量は鋼板間のバラツキが75〜90g/mの範囲に収まるようにした。なお、比較例No.13として溶融5%Al−Zn系めっきによる溶融めっき鋼板(片面めっき付着量:130g/m)も製造した。
これらのめっき鋼板の製造工程においてめっき皮膜に表1、表3、表5に示す熱履歴を付与するとともに、下塗り塗膜及び上塗り塗膜の条件を種々変化させて、以下のような塗装鋼板を製造した。なお、下塗り塗膜用の塗料としては表7に示すものを、また、上塗り塗膜用の塗料としては表8に示すものをそれぞれ用いた。
【0068】
[発明例1]
本発明条件を満足する熱履歴を経ためっき皮膜を有する溶融55%Al−Zn系めっき鋼板に通常のクロメート処理(金属クロム換算のクロム付着量40mg/m)を施した後、下記の下塗り及び上塗り塗装を施した塗装鋼板である。
下塗り塗装は、固形分換算で主剤樹脂であるブロックウレタン変性エポキシ樹脂(商品名「エポキー830」、三井化学(株)製)125重量部、防錆顔料であるクロム酸ストロンチウム75重量部、顔料である酸化チタン25重量部及びクレー25重量部を配合し、サンドミルで1時間攪拌して塗料組成物に調整したものを、乾燥塗膜厚が4μmになるようにバーコーターで塗布し、到達板温220℃、焼付時間38秒の条件で焼付処理した。
【0069】
上塗り塗装は、固形分換算で主樹脂であるポリエステル樹脂(商品名「アルマテックスP645」、三井化学(株)製)100重量部、硬化剤であるメチル化メラミン(商品名「サイメル303」、三井化学(株)製)25重量部、硬化触媒であるp-トルエンスルホン酸0.2重量部、顔料である酸化チタン100重量部を配合し、サンドミルで1時間攪拌して塗料組成物に調整したものを、乾燥塗膜厚が13μmになるようにバーコーターで塗布し、到達板温230℃、焼付時間53秒の条件で焼付処理した。
また、めっき鋼板の裏面にはポリエステル樹脂系裏面塗料を乾燥塗膜厚が6μmになるようにバーコーターで塗布し、到達板温220℃、焼付時間38秒の条件で焼付処理した。
【0070】
[発明例2〜10]
発明例2〜4は、めっき皮膜に付与される熱履歴の条件を発明例1に対して変化させたものであり、他の条件は発明例1と同様とした。
発明例5〜6は、めっき皮膜に所定の熱履歴を付与する段階(時期)を発明例1に対して変化させたものであり、他の条件は発明例1と同様とした。
発明例7〜8は、めっき皮膜の組成を発明例1に対して変化させたものであり、他の条件は発明例1と同様とした。
発明例9,10は、下塗り塗膜の塗膜厚を発明例1に対して変化させたものであり、他の条件は発明例1と同様とした。
【0071】
[発明例11,12]
発明例1とは異なる下塗り塗料を用いたものであり、他の条件は発明例1と同様とした。
発明例11の下塗り塗料は、主剤樹脂であるポリエステル樹脂(商品名「アルマテックスHMP27」、三井化学(株)製)100重量部、硬化剤であるメチル化メラミン(商品名「サイメル303」、三井化学(株)製)25重量部、硬化触媒であるp-トルエンスルホン酸0.2重量部を配合し、他の成分及び配合量は発明例1と同様とした。
発明例12の下塗り塗料は、主剤樹脂としてウレタン変性エポキシ樹脂(商品名「エポキー802−30CX」、三井化学(株)製)を用い、他の成分及び配合量は発明例1と同様とした。
【0072】
[発明例13,14]
上塗り塗膜の塗膜厚を発明例1に対して変化させたものであり、他の条件は発明例1と同様とした。
[発明例15〜17]
発明例1とは異なる上塗り塗料を用いたものであり、他の条件は発明例1と同様とした。
発明例15の上塗り塗料は、主剤樹脂としてアクリル樹脂(商品名「アルマテックス745−5M」、三井化学(株)製)を用い、他の成分及び配合量は発明例1と同様とした。
発明例16の上塗り塗料は、主剤樹脂としてポリフッ化ビニリデン樹脂(商品名「カイナー500」、日本ペンウォルト(株)製)とアクリル樹脂(商品名「パロライト」、ロームアンドハース社製)とを固形分質量比でポリフッ化ビニリデン樹脂:アクリル樹脂=70:30の比率で混合したものを用い、他の成分及び配合量は発明例1と同様とした。
発明例17の上塗り塗料は、主剤樹脂としてポリエステル樹脂(商品名「アルマテックスP647BC」、三井化学(株)製)を用い、他の成分及び配合量は発明例1と同様とした。
【0073】
[発明例18]
発明例1に対して上塗り塗料中の硬化剤の配合量を変え、硬化剤の配合量を主剤樹脂100重量部に対して40重量部配合したものであり、他の条件は発明例1と同様とした。
[比較例1〜11]
比較例1〜4はめっきの熱処理条件が、比較例5,6は下塗り塗膜の塗膜厚が、比較例7,8は上塗り塗膜の塗膜厚が、比較例9,10は上塗り塗膜のガラス転移温度が、それぞれ本発明条件を満足しない比較例であり、その他の条件は発明例1と同様である。
比較例11はめっき皮膜が本発明が規定する熱履歴を付与されていない比較例であり、比較例12は下塗り塗装が省略された比較例であり、比較例13は下地めっき鋼板が溶融5%Al−Znめっき鋼板(本発明が規定する熱履歴も付与されていない)である比較例であり、その他の条件は発明例1と同様である。
【0074】
以上の各塗装鋼板について、以下の方法により加工性、加工部密着性、加工部耐食性及び塗膜硬度を評価するとともに、上塗り塗膜のガラス転移温度を測定した。その結果を、塗装鋼板の構成とともに表1〜表6に示す。
▲1▼ 加工性
20℃の室内にて試料に対して180°の折り曲げ加工を行い、目視でクラック発生の有無を確認し、クラック発生のない最小板はさみ枚数(T)で下記の通り評価した。
◎:6T曲げでクラックの発生なし
○:6T曲げでクラックが発生するが、7T曲げでクラックの発生なし
△:7T曲げでクラックが発生するが、8T曲げでクラックの発生なし
×:8T曲げでクラックが発生
【0075】
▲2▼ 加工部密着性
20℃の室内にて試料に対して180°の6T折り曲げ加工を行った後、折り曲げ部に対して粘着テープを粘着・剥離し、折り曲げ部における塗膜の剥離率(面積率%)を測定して下記により評価した。
◎:塗膜剥離率0%
○:塗膜剥離率0%超、10%未満
×:塗膜剥離率10%以上
【0076】
▲3▼ 加工部耐食性
塗装鋼板を160mm×70mmサイズに切断し、これに対して20℃の室内にて180°の3T折り曲げ加工を行った後、4辺の端部をタールエポキシ塗料でシールした試験片を用いて、JIS K 5621に規定される乾湿繰り返し条件を導入した促進試験(以下、CCT試験)を250サイクル実施した後、塗膜の膨れ率(面積率)を測定した。この膨れ率は、試験片の両端10mmを除いた50mm幅の曲げ加工部において、塗膜の膨れが生じている部分の幅方向における長さの合計を%で表わした(例えば、50mm中に5mm幅の膨れが2箇所あった場合、膨れ率は20%とする)。
JIS K 5621によるCCT試験の条件は、「5%塩水噴霧,30℃,0.5時間→湿潤95%RH,30℃,1.5時間→乾燥20%RH,50℃,2時間→乾燥20%RH,30℃,2時間」を1サイクル(6時間)とし、これを所定の回数になるまで繰り返すというものである。
測定された膨れ率を、下記により評価した。
◎:膨れ率10%未満
○:膨れ率10%以上、30%未満
△:膨れ率30%以上、50%未満
×:膨れ率50%以上
【0077】
▲4▼塗膜硬度
JIS K 5400の8.4に基づいて、鉛筆硬度Hの鉛筆を用い、上塗り塗膜に疵が生じるか否かで下記により評価した。
○:疵発生
×:疵発生なし
▲5▼塗膜のガラス転移温度の測定
TMA(セイコーインスツルメンツ製「SS6100」)にて0℃から150℃まで昇温スピード10℃/min、荷重10gで上塗り塗膜のガラス転移温度を測定した。
【0078】
表1〜表6によれば、本発明例の塗装鋼板は加工性、加工部密着性、加工部耐食性、塗膜硬度のいずれについても良好な特性が得られている。これに対して、比較例は何れかの特性が本発明例に比較して劣っている。
【0079】
【表1】
Figure 0003654521
【0080】
【表2】
Figure 0003654521
【0081】
【表3】
Figure 0003654521
【0082】
【表4】
Figure 0003654521
【0083】
【表5】
Figure 0003654521
【0084】
【表6】
Figure 0003654521
【0085】
【表7】
Figure 0003654521
【0086】
【表8】
Figure 0003654521
【0087】
○実施例2
常法で製造した冷延鋼板(板厚0.35mm)を連続式溶融めっき設備に通板し、55%Al−1.5%Si−Znめっき浴に対してMg、V、Mnのうちの1種又は2種以上を添加しためっき浴を用い、めっき皮膜中のMg、V、Mnの1種又は2種以上の含有量が合計で0.01〜10mass%となるように溶融めっきを行った。ラインスピードは160m/分とし、片面めっき付着量は鋼板間のバラツキが75〜90g/mの範囲に収まるようにした。
これらのめっき鋼板の製造工程においてめっき皮膜に表9に示す熱履歴を付与するとともに、めっき皮膜面にクロメート処理皮膜、下塗り塗膜及び上塗り塗膜を発明例1と同じ条件で順次形成した。
以上の各塗装鋼板について、実施例1と同様の方法で加工性、加工部密着性、加工部耐食性及び塗膜硬度を評価した。その結果を、塗装鋼板の構成とともに表9及び表10に示す。
【0088】
【表9】
Figure 0003654521
【0089】
【表10】
Figure 0003654521
【0090】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の塗装鋼板は、めっき皮膜中のAl含有量が20〜95mass%の溶融Al−Zn系めっき鋼板を下地鋼板とする塗装鋼板でありながら極めて優れた加工性と加工部耐食性を有する。また、本発明の製造方法によれば、このような塗装鋼板を安定して且つ高い生産性で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は、溶融めっきされためっき金属が凝固した後のめっき鋼板を熱処理した場合において、めっき皮膜の昇温加熱温度が塗装鋼板の加工性に及ぼす影響を示すグラフ、図1(b)は、溶融めっきされためっき金属が凝固した後のめっき鋼板を熱処理した場合において、めっき皮膜の平均冷却速度(昇温加熱温度から100℃までの平均冷却速度)が塗装鋼板の加工性に及ぼす影響を示すグラフ

Claims (13)

  1. めっき皮膜中のAl含有量が20〜95mass%の溶融Al−Zn系めっき鋼板を下地鋼板とする塗装鋼板であって、
    前記めっき皮膜が少なくとも下記(a)の熱履歴を経て得られためっき皮膜であり、
    (a)溶融めっきされためっき金属が凝固した後、130〜300℃の範囲の温度T(℃)に昇温加熱され、その後、温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴、
    又は/及び、溶融めっきされためっき金属が凝固した後の130〜300℃の範囲の温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴
    C=(T−100)/2 …… (1)
    前記めっき皮膜の表面に、下層側から化成処理皮膜、塗膜厚が2〜15μmの下塗り塗膜、及び塗膜厚が5〜30μmであって且つガラス転移温度が30〜90℃の上塗り塗膜を有することを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板。
  2. (a)の熱履歴の温度T(℃)が130〜200℃の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板。
  3. めっき皮膜がMg、V、Mnの中から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.01〜10mass%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板。
  4. 下塗り塗膜の主剤樹脂がポリエステル系樹脂及び/又はエポキシ系樹脂からなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板。
  5. 上塗り塗膜の主剤樹脂がポリエステル系樹脂、又はポリフッ化ビニリデン樹脂とアクリル樹脂の混合樹脂からなることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板。
  6. 下塗り塗膜がクロム酸塩を塗膜固形分中の割合で1〜50mass%含むことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板。
  7. めっき皮膜中のAl含有量が20〜95mass%の溶融Al−Zn系めっき鋼板を下地鋼板とする塗装鋼板の製造方法であって、下記1)〜4)の工程を有することを特徴とする加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板の製造方法。 1) 溶融めっき浴を出た鋼板のめっき皮膜に対して、少なくとも下記(a)の熱履歴を付与する工程
    (a) 溶融めっきされためっき金属が凝固した後、130〜300℃の範囲の温度T(℃)に昇温加熱され、その後、温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴、
    又は/及び、溶融めっきされためっき金属が凝固した後の130〜300℃の範囲の温度T(℃)から100℃までの平均冷却速度が下記(1)式に示すC(℃/hr)以下を満足する熱履歴
    C=(T−100)/2 …… (1)
    2) めっき皮膜面に化成処理を施して化成処理皮膜を形成する工程
    3) 前記化成処理皮膜面に下塗り塗料を塗布して焼付けし、塗膜厚が2〜15μmの下塗り塗膜を形成する工程
    4) 前記下塗り塗膜面に上塗り塗料を塗布して焼付けし、塗膜厚が5〜30μm、ガラス転移温度が30〜90℃の上塗り塗膜を形成する工程
  8. (a)の熱履歴の温度T(℃)が130〜200℃の範囲であることを特徴とする請求項7に記載の加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板の製造方法。
  9. めっき皮膜がMg、V、Mnの中から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.01〜10mass含有することを特徴とする請求項7又は8に記載の加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板の製造方法。
  10. 3)の工程において、ポリエステル系樹脂及び/又はエポキシ系樹脂を主剤樹脂とする塗料を塗布した後、最高到達板温150〜270℃で焼付処理して下塗り塗膜を形成することを特徴とする請求項7、8又は9に記載の加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板の製造方法。
  11. 4)の工程において、ポリエステル系樹脂、又はポリフッ化ビニリデン樹脂とアクリル樹脂の混合樹脂を主剤樹脂とする塗料を塗布した後、最高到達板温150〜280℃で焼付処理して上塗り塗膜を形成することを特徴とする請求項7、8、9又は10に記載の塗装鋼板の製造方法。
  12. 下塗り塗装用の塗料がクロム酸塩を塗料固形分中の割合で1〜50mass%含むことを特徴とする請求項7、8、9、10又は11に記載の加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板の製造方法。
  13. めっき皮膜に対する(a)の熱履歴の付与を、下記(1)〜(8)のうちの少なくとも1つの段階で行うことを特徴とする請求項7、8、9、10、11又は12に記載の加工性と加工部耐食性に優れた塗装鋼板の製造方法。
    (1) 化成処理前
    (2) 化成処理の乾燥工程中
    (3) 化成処理終了後、下塗り塗装前
    (4) 下塗り塗装の乾燥工程中
    (5) 下塗り塗装終了後、上塗り塗装前
    (6) 上塗り塗装の乾燥工程中
    (7) 上塗り塗装終了後
    (8) 溶融めっきされためっき金属が凝固した後の冷却過程
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