JP3324506B2 - 耐クラック性に優れた溶融Al−Zn系合金めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
耐クラック性に優れた溶融Al−Zn系合金めっき鋼板の製造方法Info
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Description
Alを20〜95重量%含有する溶融Al−Zn系合金
めっき鋼板の製造方法に関するものである。
含有する溶融Al−Zn系合金めっき鋼板は、特公昭4
6−7161号に示されているように通常の溶融亜鉛め
っき鋼板に比べて優れた耐食性を示すことから、近年そ
の需要が増大しつつある。一般に、この溶融Al−Zn
系合金めっき鋼板は化成処理或いは塗装を施された後、
プレス成形、ロール成形、曲げなどの加工を施され、建
材、家電などの分野で使用されている。この溶融Al−
Zn系合金めっき鋼板は、連続式溶融めっき設備におい
て鋼板を焼鈍し、引き続きAlを20〜95重量%含む
溶融Al−Zn系めっき浴中でめっきを施すことにより
製造される。
き鋼板は、厳しい曲げ加工を施した場合に加工部にクラ
ックが発生しやすく、このクラックにより外観が損なわ
れるという欠点がある。従来、このような加工部でのク
ラックの発生を防止するために、めっき付着量を低減さ
せる方法(特開平5−271895号)や、めっき後の
製品に対して93℃〜427℃の温度範囲で熱処理を施
し、次いで少なくとも205℃まで徐冷することにより
時効硬化のないめっき皮膜とする方法(特公昭61−2
8748号)などが提案されている。
でも厳しい曲げ加工を施した場合の耐クラック性の改善
は十分でなく、加えて、前者では加工部における耐食性
の低下が、後者では製造工程が増加することによる製造
コストの増加が問題となる。また、めっき付着量の低減
化による耐食性の劣化を防止するために浴中にミッシュ
メタル、Mg、Mnなどを添加する方法(特公昭64−
10593号)も提案されているが、上述したようにめ
っき付着量を低減させても耐クラック性の改善は十分で
ないことから、上記の方法は却って素材コストの上昇を
招くだけである。
来技術の課題を解決し、製造工程を増加させたり、めっ
き浴中に特別な元素を添加することなく、耐クラック性
に優れた溶融Al−Zn系合金めっき鋼板を安定して製
造することができる溶融Al−Zn系合金めっき鋼板の
製造方法を提供することにある。
課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下のような
事実を知見した。 (1) Alを20〜95重量%含有する溶融Al−Zn系
合金めっき鋼板のめっき皮膜は、主にデンドライト部、
インターデンドライト部(デンドライト間隙部)及び鋼
板との界面に生成した界面合金層(金属間化合物層)と
からなるが、このような鋼板に厳しい曲げ加工(例え
ば、0T曲げ)を施すと界面合金層でクラックが発生
し、このクラックがデンドライト/インターデンドライ
ト界面を伝播することによってめっき皮膜にクラックが
入る。
の形態は、デンドライト部とインターデンドライト部と
の硬度差に大きく依存しており、従来の溶融Al−Zn
系合金めっき鋼板はデンドライト部とインターデンドラ
イト部との硬度差が大きいために個々のクラックの開口
幅が大きくなり、このような開口幅の大きいクラックの
形成によりめっき皮膜の外観が損なわれる結果となる。
これは、デンドライト部とインターデンドライト部との
硬度差が大きい場合には、界面合金層を起点として発生
したクラックの伝播経路がデンドライト/インターデン
ドライト界面という限られた場所に集中してしまうた
め、曲げ加工による鋼板の変形に追従するために導入さ
れる個々のクラックの開口幅が大きくなるためである。
イト部との硬度差が小さい場合には、クラックの伝播経
路が上記のように特に限定されないため、めっき皮膜中
に多数のクラックがランダムに入り、このため個々のク
ラックの開口幅は小さく、外観上視認されない程度の大
きさにしかならない。したがって、デンドライト部とイ
ンターデンドライト部との硬度差を小さくすれば、個々
のクラックの開口幅を小さくし、クラックによるめっき
皮膜外観の悪化を抑制できる。
ト部との硬度差を小さくするには、溶融めっき後、めっ
き皮膜が凝固した後のめっき鋼板をめっき金属の固液共
存温度域以上の温度域まで再加熱した後、固液共存温度
域内において所定の条件で保熱処理または徐冷処理を施
すことが有効であり、これにより耐クラック性を効果的
に改善することができる。
っき鋼板はインターデンドライト部自体も凝固後の析出
硬化によって非常に硬質となっているため、上記クラッ
クの伝播が促進されやすいという問題があるが、上記の
保熱処理または徐冷処理を施すことにより、インターデ
ンドライト部自体の硬度が低下し、これにより界面合金
層を起点とするクラックの伝播を抑制することができ
る。
もので、以下のような特徴を有する。 [1] 連続式溶融めっき設備において鋼板を焼鈍し、引き
続きAlを20〜95重量%含む溶融Al−Zn系めっ
き浴中で溶融めっきを施す溶融Al−Zn系合金めっき
鋼板の製造方法において、溶融めっき後、めっき皮膜が
凝固した後のめっき鋼板をめっき金属の固液共存温度域
以上の温度域まで再加熱した後、該固液共存温度域内に
おいて1〜120秒間の保熱処理を施すことを特徴とす
る耐クラック性に優れた溶融Al−Zn系合金めっき鋼
板の製造方法。
焼鈍し、引き続きAlを20〜95重量%含む溶融Al
−Zn系めっき浴中で溶融めっきを施す溶融Al−Zn
系合金めっき鋼板の製造方法において、溶融めっき後、
めっき皮膜が凝固した後のめっき鋼板をめっき金属の固
液共存温度域以上の温度域まで再加熱した後、該固液共
存温度域内において冷却速度10℃/sec以下で且つ
5〜120秒間の徐冷処理を施すことを特徴とする耐ク
ラック性に優れた溶融Al−Zn系合金めっき鋼板の製
造方法。
て、製造された溶融Al−Zn系合金めっき鋼板の表面
に化成処理を施すことを特徴とする耐クラック性に優れ
た溶融Al−Zn系合金めっき鋼板の製造方法。 [4] 上記[1]または[2]の製造方法において、製造された
溶融Al−Zn系合金めっき鋼板の表面に塗装を施すこ
とを特徴とする請求項1または2に記載の耐クラック性
に優れた溶融Al−Zn系合金めっき鋼板の製造方法。 [5] 上記[1]または[2]の製造方法において、製造された
溶融Al−Zn系合金めっき鋼板の表面に化成処理を施
した後、その上層に塗装を施すことを特徴とする耐クラ
ック性に優れた溶融Al−Zn系合金めっき鋼板の製造
方法。
図1は溶融Al−Zn系合金めっき鋼板(Al含有量:
20〜95重量%)のめっき皮膜の断面構造を模式的に
示しており、めっき皮膜は主にデンドライト部、インタ
ーデンドライト部(デンドライト間隙部)及び鋼板との
界面に形成された界面合金層(金属間化合物層)からな
っている。図2は従来の溶融Al−Zn系合金めっき鋼
板におけるめっき皮膜でのクラック発生機構を模式的に
示しており、めっき鋼板に厳しい曲げ加工(例えば、0
T曲げ)を施すと、界面合金層でクラックが発生し、こ
のクラックがめっき皮膜中で伝播することによってめっ
き皮膜にクラックが入る。
めっき鋼板はデンドライト部とインターデンドライト部
との硬度差が大きいため、界面合金層で発生したクラッ
クの伝播経路がデンドライト/インターデンドライト界
面に限定されてしまい、この結果、曲げ加工による鋼板
の変形に追従するために導入される個々のクラックの開
口幅が大きくなり、めっき皮膜表面の外観が損なわれて
しまう。
めっき後、めっき皮膜が凝固した後のめっき鋼板をめっ
き金属の固液共存温度域(図8に示す固液共存温度領
域)以上の温度域まで再加熱した後、固液共存温度域内
で保熱処理または徐冷処理を施す。ここで、めっき鋼板
を再加熱する温度域は固液共存温度域以上の任意の温度
域でよいが、界面合金層の発達防止という観点からは、
固液共存温度域内に再加熱することが特に好ましい。保
熱処理はめっき金属の固液共存温度域で1〜120秒間
実施する。保熱処理時間が1秒未満ではその効果が十分
に現れず、一方、120秒を超えて実施しても効果が飽
和するため、120秒を超える保熱処理は経済性を損な
う。
鋼板の製造において、溶融めっき後、めっき皮膜が凝固
した後のめっき鋼板を再加熱し、その温度で保熱処理し
た場合(保熱処理時間:30秒)について、保熱処理温
度が耐クラック性(めっき鋼板を0T曲げした際の加工
部におけるクラック開口幅の平均値)に及ぼす影響を示
したもので、めっき鋼板をめっき金属の固液共存温度域
である500〜580℃の温度に再加熱し、この温度で
所定時間保熱処理することにより、良好な耐クラック性
が得られることが判る。
鋼板の製造において、溶融めっき後、めっき皮膜が凝固
した後のめっき鋼板を再加熱し、その温度で保熱処理し
た場合(保熱処理温度:450℃〜580℃)につい
て、保熱処理時間が耐クラック性(めっき鋼板を0T曲
げした際の加工部におけるクラック開口幅の平均値)に
及ぼす影響を示したもので、めっき鋼板をめっき金属の
固液共存温度域(500〜580℃)に再加熱し、この
温度で1秒以上保熱することにより、良好な耐クラック
性が得られることが判る。
度域内において冷却速度:10℃/sec以下で5〜1
20秒間実施する。徐冷処理時間が5秒未満ではその効
果が十分に現れず、一方、120秒を超えて実施しても
効果が飽和するため、120秒を超える徐冷処理は経済
性を損なう。また、冷却速度が10℃/secを超える
と徐冷による効果が得られない。
鋼板の製造において、溶融めっき後、めっき皮膜が凝固
した後のめっき鋼板を再加熱し、その温度から徐冷処理
を行った場合(徐冷処理時間:15秒、冷却速度:1℃
/sec)について、徐冷処理温度が耐クラック性(め
っき鋼板を0T曲げした際の加工部におけるクラック開
口幅の平均値)に及ぼす影響を示したもので、めっき鋼
板をめっき金属の固液共存温度域である460〜550
℃に再加熱し、この温度範囲内で所定時間徐冷処理する
ことにより、良好な耐クラック性が得られることが判
る。
鋼板の製造において、溶融めっき後、めっき皮膜が凝固
した後のめっき鋼板を再加熱し、その温度から徐冷処理
を行った場合(冷却速度:0.1℃/sec)につい
て、徐冷処理時間が耐クラック性(めっき鋼板を0T曲
げした際の加工部におけるクラック開口幅の平均値)に
及ぼす影響を示したもので、めっき鋼板をめっき金属の
固液共存温度域に再加熱し、この温度域で5秒以上徐冷
処理することにより、良好な耐クラック性が得られるこ
とが判る。
鋼板の製造において、溶融めっき後、めっき皮膜が凝固
した後のめっき鋼板をめっき金属の固液共存温度域内に
再加熱し、その温度から徐冷処理を行った場合(徐冷処
理開始温度を550℃とし、550℃から460℃まで
を所定の冷却速度で冷却した後、20℃/secのガス
冷却を行った。但し、徐冷処理を1℃/sec、0.1
℃/secで行ったものについては、徐冷開始30秒後
から上記20℃/secのガス冷却を行った。)につい
て、徐冷処理の冷却速度が耐クラック性(めっき鋼板を
0T曲げした際の加工部におけるクラック開口幅の平均
値)に及ぼす影響を調べたもので、冷却速度を10℃/
sec以下とすることにより、良好な耐クラック性が得
られることが判る。上記の保熱処理または徐冷処理は、
一般に、ライン下流側に設けられる加熱装置等を用いて
行なわれる。また、図3、図6に示されるように保熱処
理または徐冷処理による効果が最も有効に得られるのは
固液共存温度の中でも高温側であり、したがって、本発
明の保熱処理または徐冷処理は固液共存温度域の上限温
度X(℃)〜[上限温度X−50](℃)の範囲の温度
域で行われることが特に好ましい。
耐クラック性が改善される理由は、非平衡凝固後のめっ
き皮膜を再加熱して固液共存温度域で一定時間滞留させ
ることにより、既凝固デンドライトおよびインターデン
ドライト内部での亜鉛の析出が加速され、さらに、再凝
固時のアルミニウムと亜鉛の2相分離が促進されること
により、デンドライト部とインターデンドライト部との
硬度差が小さくなるためであると考えられる。このよう
にデンドライト部とインターデンドライト部との硬度差
を小さくすることにより、従来のめっき鋼板のようにク
ラックの伝播経路がデンドライト/インターデンドライ
ト界面に限定されることがなく、めっき皮膜中に多数の
クラックがランダムに入るため、個々のクラックの開口
幅を外観上視認されない程度に小さくすることができ
る。
ではなく、めっき皮膜全体が溶解するような高温域まで
再加熱し、その温度域で保熱処理や徐冷処理を行った場
合には、上述した作用が得られないだけでなく、界面合
金層が厚く成長してしまうため加工性が著しく劣化す
る。一方、めっき皮膜全体が固体であるような低温側で
の処理では、析出状態を短時間で変化させることは不可
能である。また、上記の保熱処理または徐冷処理を施す
ことにより、インターデンドライト部自体の硬度が低下
し、これにより界面合金層を起点とするクラックの伝播
が抑制されるため、この面からも耐クラック性が改善さ
れる。
ては特別な制約はなく、一般には、常法で鋳造されたス
ラブを熱間圧延した後、酸洗脱スケールした熱延鋼板、
或いはこれをさらに冷間圧延して得られた冷延鋼板を連
続式溶融めっき設備に装入し、この連続式溶融めっき設
備において鋼板を焼鈍し、引き続きAlを20〜95重
量%含む溶融Al−Zn系めっき浴中で溶融めっきを施
し、めっき付着量の調整後、常法によりめっき鋼板を冷
却してめっき皮膜を凝固させ、次いで、加熱装置(例え
ば、誘導加熱方式の加熱炉等)により再加熱して上記保
熱処理また徐冷処理を施し、引き続き冷却してめっき皮
膜を再凝固させる。
合金めっき鋼板は、めっき皮膜中にAlを20〜95重
量%含有するもので、所謂溶融55%Al−Zn系合金
めっき鋼板に代表されるめっき鋼板である。この溶融A
l−Zn系合金めっき鋼板のめっき皮膜中には、通常、
Al及びZn以外にSi:0.3〜3.0重量%程度
(Siは脆い界面合金層の成長を抑制するために浴中に
添加される)が含有され、また、これ以外に適量のF
e、Ti、Sr、V、Cr、Mg、Mn等の1種以上、
その他不可避的不純物が含有される場合がある。なお、
本発明法により製造される溶融Al−Zn系合金めっき
鋼板は、板厚に拘りなく優れた耐クラック性を有する
が、切断端部の耐食性の観点からは板厚を1.2mm以
下(より好ましくは0.7mm)とした方が好ましい。
系合金めっき鋼板には、そのめっき面にリン酸塩処理や
クロメート処理等の化成処理を施すか、若しくはめっき
面または前記化成処理皮膜面に塗装を施すことができ
る。溶融Al−Zn系合金めっき鋼板は、例えば屋外で
放置され、結露や雨により鋼板表面が濡れた状態に長期
間置かれると、表面が黒く変色(黒変現象)する場合が
ある。これを防止するためには、めっき鋼板をクロメー
ト処理することによりめっき皮膜表面にクロメート皮膜
を形成することが好ましい。
とを含み、Cr付着量(金属クロム換算の付着量)を3
〜80mg/m2、より望ましくは10〜50mg/m2
とすることが好ましい。このようなクロメート皮膜を形
成することにより黒変が効果的に防止できる。Cr付着
量が3mg/m2未満では黒変防止効果が十分に得られ
ず、一方、Cr付着量が80mg/m2を超えても付着
量に見合う効果が得られず、却ってCrが溶解しやすく
なるため好ましくない。
にクロム酸を含むクロメート処理液を塗布し乾燥するこ
とにより形成されるが、クロメート処理液中に含まれる
クロム酸は6価Cr/全Crの重量比が0.3〜1.0
であることが好ましく、6価Cr/全Crの重量比が
0.3未満では耐黒変性が低下する恐れがある。これ
は、めっき皮膜表面のクロメート皮膜による不働態化作
用が低下することによるものと考えられる。また、以上
の観点からクロム酸中の6価Cr/全Crの重量比は
0.4〜1.0、特に0.5〜1.0の範囲が好まし
い。なお、クロメート処理を施す前に、湯洗、水洗、或
いはアルカリ系溶液によるめっき面の洗浄を行うことも
可能である。
膜中には、例えば、水に分散可能な有機樹脂、シリカ、
鉱酸等のアニオン、フッ化物等を添加することができ
る。これらのうち、有機樹脂の添加により加工時等にお
ける耐傷付き性を付与することが可能であり、また、シ
リカの添加により耐食性の向上を図ることができる。ま
た、アニオンやフッ化物を添加することにより、クロメ
ート皮膜の着色を抑制したり、或いはめっき皮膜との反
応性を調整することができる。但し、これらの添加剤
は、その種類や添加量によっては耐黒変性を低下させる
場合があるため、その種類や添加量は適宜選択する必要
がある。
漬、ロールコーター等によりめっき皮膜表面に処理液を
塗布し、板温60〜250℃程度の範囲で乾燥すること
により形成される。このとき処理液中の一部の6価Cr
がめっき表面で反応し、3価Crが生成されるため、仮
に3価Crを含まない処理液を用いても皮膜中には3価
Crが含まれる。また、クロメート皮膜の上層には0.
1〜5μm程度の膜厚の有機樹脂皮膜を形成することも
可能である。
−Zn系合金めっき鋼板は塗装材の下地鋼板としても使
用することができる。塗装材を加工する際、厳しい加工
部で塗膜にクラックが発生することがあり、このような
クラックも前述したと同様に外観を害する。このような
クラックの発生原因の1つに下地めっき皮膜のクラック
があり、本発明法により製造される耐クラック性に優れ
た溶融Al−Zn系合金めっき鋼板を下地鋼板として利
用すれば、塗装鋼板自体の加工性(耐クラック性)も改
善される。また、加工部の耐食性も塗装を施すことによ
り格段に向上する。
系合金めっき鋼板を塗装鋼板として利用する場合、通
常、塗装を施す前に脱脂処理を施し、必要に応じてさら
に酸洗を施した後、クロメート処理やリン酸塩処理等の
化成処理を施すことが好ましい。クロメート処理につい
ては上述した通りであり、特にクロメート皮膜中に水性
樹脂を添加することにより加工性(耐クラック性)を向
上させることができる。
ることも可能であるが、加工性と耐白錆性をさらに向上
させるためには、塗装鋼板に通常用いられている下塗り
塗料(所謂プライマー)を塗装して焼き付けた上に塗装
すること、すなわち、下塗り塗膜とその上層の上塗り塗
膜とからなる塗膜構成とすることが望ましい。下塗り塗
料用樹脂としては、加工性と耐白錆性の点からエポキシ
樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシで変性したポリエス
テル樹脂、ポリエステルで変性したエポキシ樹脂等を主
剤とするものが好ましい。また、硬化剤としては、メラ
ミン、イソシアネート等の1種以上を使用することがで
きる。
合は、下塗り塗料中に防錆顔料としてクロム酸塩系化合
物を添加することが好ましい。このクロム酸塩系化合物
としては、ジンククロメート、ストロンチウムクロメー
ト、カルシウムクロメート、バリウムクロメート等が好
適であり、その含有量は塗料中の固形分の割合で1〜6
0重量%とすることが適当である。また、下塗り塗膜の
塗膜厚は、上述した効果を得るために5〜20μm程度
とすることが好ましい。
料、フッ素樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、塩ビ塗料、シ
リコーン塗料等の通常の塗料が使用できる。上塗り塗膜
の塗膜厚は加工性と耐白錆性の観点から5〜40μmが
好ましい。塗膜厚が5μm未満では塗膜の耐候性が低下
し(紫外線透過性が高まる)、且つ塗膜の白錆露出を抑
える能力も低下するので好ましくない。一方、40μm
を超えると塗装作業性の低下や塗膜外観の低下を招き、
また、コストも上昇するため好ましくない。
じて着色顔料、体質顔料、傷つき防止剤等の添加剤を配
合することができる。着色顔料としては、例えば、酸化
チタン、カーボンブラック、酸化鉄、クロム酸鉛、金属
粉末、焼成顔料、パール顔料等が挙げられる。体質顔料
としては、例えば、炭酸カルシウム、クレイ、タルク、
三酸化アンチモン、硫酸バリウム、カオリン等が挙げら
れる。傷付き防止剤としては、シリカ、アルミナ等のセ
ラミックスビーズ、ガラスビーズ、ガラス繊維、樹脂ビ
ーズ、フッ素ビーズ等が加工性の観点から好ましい。
る溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エ
チル、酢酸ブチル、セロソルブ系溶剤、メチルイソブチ
ルケトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、
イソホロン、シクロヘキサノン等が挙げられる。また、
塗料中には添加剤として、例えば、消泡剤、顔料分散
剤、たれ防止剤等を添加することができる。
く、従来一般に行われているロールコーター法、カーテ
ンフローコーター法、スプレー塗装、はけ塗り等の塗装
法を適用できるが、塗装鋼板の塗装においてはロールコ
ーター法が最も一般的である。ロールコーター法を使用
した場合、塗料を塗布した後の焼付処理は、通常、20
〜180秒間加熱して板温を150℃以上に到達させる
ことによって行われる。焼付時間が20秒未満では樹脂
成分の溶融硬化が不十分であり、一方、180秒を超え
ると下塗り塗料成分を含めた熱劣化が始まり、いずれの
場合にも塗料本来の性能が発揮されなくなるため好まし
くない。焼付処理の加熱方法についても特別な制限はな
く、熱風加熱方式、高周波加熱方式等の方法を適用でき
る。
洗および冷間圧延して得られた冷延鋼板(板厚0.28
〜1.8mm)を、連続式溶融めっき設備に装入して下
記[A浴](めっき金属の固液共存温度域:500〜5
80℃)または[B浴](めっき金属の固液共存温度
域:460〜550℃)の溶融めっき浴でめっきを行
い、溶融Al−Zn系合金めっき鋼板を製造した。 [A浴]:55重量%Al−1.4重量%Si−残部実
質的にZn [B浴]:42重量%Al−1.3重量%Si−残部実
質的にZn この溶融Al−Zn系合金めっき鋼板の製造において
は、ライン下流側に設置した誘導加熱方式の加熱炉を用
い、溶融めっき後、めっき皮膜が凝固した後のめっき鋼
板を再加熱し、種々の条件で保熱処理または徐冷処理
(平均冷却速度0.5℃/sec)を行った。また、比
較のために一部のめっき鋼板については再加熱及びその
後の保熱処理または徐冷処理は行わなかった。
合金めっき鋼板について、耐クラック性(めっき皮膜表
面のクラック開口幅とクラック改善率)と切断端部の耐
食性を下記の試験方法で評価した。 (1) 耐クラック性 試験片の0T曲げ加工部を20倍の光学顕微鏡で観察、
写真撮影してクラック開口幅を測定し、その平均値をク
ラック開口幅とした。また、通常製造材(同一板厚の鋼
板を同一めっき付着量でめっきした後、20℃/sec
の冷却速度で冷却し、めっき皮膜を凝固させたもの)の
クラック開口幅Dc(通常製造材の0T曲げ加工部を上
記と同様に観察、写真撮影して測定されたクラック開口
幅の平均値)に対する各試験片の上記クラック開口幅D
の改善率を[(Dc−D)/Dc]×100により求
め、これをクラック改善率とした。
露試験を実施し、6ヶ月後の試験片切断端部での赤錆発
生状況を評価した。その評価基準は以下の通りである。 ◎ :変色、赤錆発生なし ○+:僅かに変色発生 ○ :変色発生 △ :点錆発生 × :赤錆発生
使用しためっき浴、めっき付着量及びめっき後の保熱ま
た徐冷処理条件とともに表1〜表6に示す。これによれ
ば、本発明条件に従うことにより耐クラック性が大幅に
改善されためっき鋼板が製造できることが判る。また、
めっき皮膜の耐食性そのものには変りはないが、切断端
部の耐食性については、板厚1.2mm超のめっき鋼板
に較べて板厚1.2mm以下(特に、板厚0.7mm以
下)のめっき鋼板のほうが良好である。
の溶融Al−Zn系合金めっき鋼板の一部に塗布型クロ
メート処理(処理液のクロム酸中の6価Cr/全Crの
重量比:0.5,液温:50℃,塗布方法:スプレー
法)を施し、直ちに乾燥させてクロメート皮膜を形成
し、クロメート処理溶融Al−Zn系合金めっき鋼板を
得た。これらクロメート処理溶融Al−Zn系合金めっ
き鋼板の耐黒変性を下記の試験方法で評価した。
g/cm2の面圧でスタック状態とし、60℃、98%
RH以上の湿潤環境下に240時間放置した後の外観表
面の変化を下記評価基準にて目視評価した。 5:全く変化なし 4:1〜5%の面積で若干変化(黒変)あり 3:1〜5%の面積で明らかな黒変あり 2:6〜25%の面積で明らかな黒変あり 1:26%以上の面積で明らかな黒変あり これらの試験結果を表7〜表10に示すが、いずれの場
合も良好な耐黒変性が得られる。
l−Zn系合金めっき鋼板を製造し、このめっき鋼板に
塗布型クロメート処理を施してCr付着量が30mg/
m2のクロメート皮膜を形成し、次いで下塗り塗料とし
てエポキシ・メラミン樹脂系塗料を乾燥塗膜厚が5μm
になるように塗布した後、約200℃で60秒間焼き付
け、さらに上塗り塗料としてポリエステル樹脂塗料を乾
燥塗膜厚が20μmになるよう塗布した後、約250℃
で60秒間焼き付け、引き続き水冷して塗装鋼板を得
た。
部の耐食性を下記の試験方法で評価した。 (1) 塗膜の耐クラック性 試験片に対して20℃の室内にて180°の折り曲げ加
工を行い、その折り曲げ加工部を30倍のルーペで観察
してクラックを生じていない最少の板はさみ枚数で評価
した。 ◎:0T ○:1T △:2T ×:3T以上
露試験を実施し、2年後の試験片切断端部での赤錆発生
状況を評価した。その評価基準は以下の通りである。 ◎ :変色、赤錆発生なし ○+:僅かに変色発生 ○ :変色発生 △ :点錆発生 × :赤錆発生
す。これによれば本発明例の塗装鋼板は、比較例の塗装
鋼板に較べて塗膜の耐クラック性が大幅に改善されてい
る。また、切断端部の耐食性は、板厚1.2mm超のめ
っき鋼板に較べて板厚1.2mm以下(特に、板厚0.
7mm以下)のめっき鋼板のほうが良好である。
れた溶融Al−Zn系合金めっき鋼板は、従来法により
製造された溶融Al−Zn系合金めっき鋼板に較べて格
段に優れた耐クラック性を有する。
中のAl含有量:20〜95重量%)のめっき皮膜の断
面構造を模式的に示す説明図
き鋼板(めっき皮膜中のAl含有量:20〜95重量
%)のめっき皮膜の断面構造と膜厚方向でのクラックの
伝播形態を模式的に示す説明図
る際のめっき皮膜凝固後の再加熱−保熱処理において、
保熱処理温度が耐クラック性に及ぼす影響を示すグラフ
る際のめっき皮膜凝固後の再加熱−保熱処理において、
保熱処理時間が耐クラック性に及ぼす影響を示すグラフ
る際のめっき皮膜凝固後の再加熱−徐冷処理において、
徐冷処理温度が耐クラック性に及ぼす影響を示すグラフ
る際のめっき皮膜凝固後の再加熱−徐冷処理において、
徐冷処理時間が耐クラック性に及ぼす影響を示すグラフ
る際のめっき皮膜凝固後の再加熱−徐冷処理において、
徐冷処理の冷却速度が耐クラック性に及ぼす影響を示す
グラフ
図
Claims (5)
- 【請求項1】 連続式溶融めっき設備において鋼板を焼
鈍し、引き続きAlを20〜95重量%含む溶融Al−
Zn系めっき浴中で溶融めっきを施す溶融Al−Zn系
合金めっき鋼板の製造方法において、溶融めっき後、め
っき皮膜が凝固した後のめっき鋼板をめっき金属の固液
共存温度域以上の温度域まで再加熱した後、該固液共存
温度域内において1〜120秒間の保熱処理を施すこと
を特徴とする耐クラック性に優れた溶融Al−Zn系合
金めっき鋼板の製造方法。 - 【請求項2】 連続式溶融めっき設備において鋼板を焼
鈍し、引き続きAlを20〜95重量%含む溶融Al−
Zn系めっき浴中で溶融めっきを施す溶融Al−Zn系
合金めっき鋼板の製造方法において、溶融めっき後、め
っき皮膜が凝固した後のめっき鋼板をめっき金属の固液
共存温度域以上の温度域まで再加熱した後、該固液共存
温度域内において冷却速度10℃/sec以下で且つ5
〜120秒間の徐冷処理を施すことを特徴とする耐クラ
ック性に優れた溶融Al−Zn系合金めっき鋼板の製造
方法。 - 【請求項3】 製造された溶融Al−Zn系合金めっき
鋼板の表面に化成処理を施すことを特徴とする請求項1
または2に記載の耐クラック性に優れた溶融Al−Zn
系合金めっき鋼板の製造方法。 - 【請求項4】 製造された溶融Al−Zn系合金めっき
鋼板の表面に塗装を施すことを特徴とする請求項1また
は2に記載の耐クラック性に優れた溶融Al−Zn系合
金めっき鋼板の製造方法。 - 【請求項5】 製造された溶融Al−Zn系合金めっき
鋼板の表面に化成処理を施した後、その上層に塗装を施
すことを特徴とする請求項1または2に記載の耐クラッ
ク性に優れた溶融Al−Zn系合金めっき鋼板の製造方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP16618698A JP3324506B2 (ja) | 1998-05-30 | 1998-05-30 | 耐クラック性に優れた溶融Al−Zn系合金めっき鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP16618698A JP3324506B2 (ja) | 1998-05-30 | 1998-05-30 | 耐クラック性に優れた溶融Al−Zn系合金めっき鋼板の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11343557A JPH11343557A (ja) | 1999-12-14 |
JP3324506B2 true JP3324506B2 (ja) | 2002-09-17 |
Family
ID=15826682
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP16618698A Expired - Lifetime JP3324506B2 (ja) | 1998-05-30 | 1998-05-30 | 耐クラック性に優れた溶融Al−Zn系合金めっき鋼板の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3324506B2 (ja) |
-
1998
- 1998-05-30 JP JP16618698A patent/JP3324506B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH11343557A (ja) | 1999-12-14 |
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