JP2024065974A - 塗装鋼板及び塗装鋼板の製造方法 - Google Patents

塗装鋼板及び塗装鋼板の製造方法 Download PDF

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修 進
哲平 尾崎
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Abstract

【課題】塗装時の黄変を抑制でき、加工性に優れた塗装鋼板及び塗装鋼板の製造方法を提供する。【解決手段】上記目的を達成するべく、本発明は、溶融Al-Zn系めっき鋼板上に、直接又は中間層を介して、着色塗膜が形成された塗装鋼板であって、前記着色塗膜は、平均分子量が1,000~30,000、ガラス転位点が-20~60℃であるポリエステル樹脂と、硬化剤と、有機球状骨材と、を少なくとも含む塗料を用いて形成し、前記塗料における、(a)ポリエステル樹脂の含有量、硬化剤としての、(b)ピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤の含有量及び(c)メラミン系硬化剤の含有量が、下記(1)又は(2)の関係を満たす。(b)>(c)> 0且つ(b)/(a)≦ 0.3 ・・・(1)(b)>(c)= 0且つ(b)/(a)≦ 0.5 ・・・(2)【選択図】なし

Description

本発明は、塗装時の黄変を抑制でき、加工性に優れた塗装鋼板及び塗装鋼板の製造方法に関するものである。
Al-Zn系めっき鋼板に代表される、めっき層中にAlを20~95質量%含有する溶融Al-Zn系めっき鋼板は、優れた耐食性を示すことから、近年、建材分野を中心に需要が増加しつつある。
また、工場や商業施設及び住宅等の屋根や壁には、溶融Al-Zn系めっき鋼板上に塗膜を形成し、塗装鋼板として使用されることが一般的である。
ここで、上述のAl-Zn系めっき鋼板については、酸洗脱スケールした熱延鋼板又はこれをさらに冷間圧延して得られた冷延鋼板を下地鋼板として用い、連続式溶融めっき設備によって製造することができる。
このような連続式溶融めっき設備によって製造されたAl-Zn系めっき鋼板のめっき層の組織は、主に、Znを過飽和に含有したAlがデンドライト凝固した部分(デンドライト相)と、残りのデンドライト間隙の部分(インターデンドライト相)から構成されており、該デンドライト相は、めっき層の膜厚方向に積層している。このような特徴的な皮膜構造により、Al-Zn系めっき鋼板は良好な耐食性を実現できる。
ただし、Al-Zn系めっき鋼板のような溶融Al-Zn系めっき鋼板は、良好な耐食性を有する反面、機械的特性、特に、伸び特性に劣る傾向があった。そのため、折り曲げ等の加工を行うと、加工の程度によっては加工部のめっき層に亀裂が生じ、該亀裂部分に起因した耐食性悪化等を引き起こすおそれがあり、使用上問題となる場合がある。
このような問題に対して、例えば、特許文献1には、Al-Zn系めっき鋼板に、所定の熱処理を施すことによって、その延性を改善する技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1の技術によって、一定の延性改善効果が得られるものの、屋根や壁の部材として成型される際の加工のような、複雑な加工に対しては、めっき層の亀裂を十分に抑えることは困難であり、依然として加工性を改善できる技術の開発が望まれていた。
また、特許文献2には、溶融Al-Zn系めっき鋼板上に、特定の塗膜を形成することにより、加工性の改善を図る技術が開示されている。
しかしながら、特許文献2のようなめっき層上に塗膜を設ける技術については、塗膜に柔軟性がある場合には、めっき層に生じた亀裂を塗膜で覆い隠すことができるため、加工後の外観性の向上は望めるものの、塗膜の下ではめっき層に亀裂が存在しており、厳しい腐食環境で使用される際には、十分な加工後耐食性が得られないという問題や、めっき層上に形成された塗膜に柔軟性を持たせる場合、表面硬度が小さくなるため、耐傷つき性が悪化するという問題があった。
さらに、めっき鋼板板上に形成された塗膜を構成する樹脂の硬化剤としてウレタン系硬化剤を用いた場合、硬化剤中に含有されるブロック剤の影響により、塗料を焼付塗装した際に形成された塗膜が黄変するという問題もあった。
特公昭61-28748号公報 特許第3507823号公報
かかる事情を鑑み、本発明は、塗装時の黄変を抑制でき、加工性に優れた塗装鋼板及び塗装鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、溶融Al-Zn系めっき鋼板上に、直接又は中間層を介して、着色塗膜が形成された塗装鋼板について、上記の課題を解決すべく検討を行った結果、着色塗膜は、ポリエステル樹脂を基材とし、硬化剤として、少なくともピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤を含む塗料を用いることによって、加工性を改善しつつ、塗装時の黄変も抑制できることに着目した。そして、塗料における、(a)ポリエステル樹脂の含有量や(c)メラミン系硬化剤の含有量に対する(b)ピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤の含有量について適正化を図ることによって、塗装時の黄変をより確実に抑制できることを見出した。
加えて、本発明者らは、めっき層の亀裂発生等は、加工に伴うめっき層の伸び変形と密接に関係すること、及び、塗装鋼板の成形は主に曲げ加工によるものであることに着目し、曲げ加工に基づくめっき層の伸び率(変形率)と前記亀裂との関係で塗膜の応力緩和効果を定量的に評価することによって、実際の使用環境に適合する優れた加工性を実現できることも見出した。
本発明は、以上の知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
1.溶融Al-Zn系めっき鋼板上に、直接又は中間層を介して、着色塗膜が形成された塗装鋼板であって、
前記着色塗膜は、平均分子量が1,000~30,000、ガラス転位点が-20~60℃であるポリエステル樹脂と、硬化剤と、有機球状骨材と、を少なくとも含む塗料を用いて形成し、
前記塗料における、(a)ポリエステル樹脂の含有量、硬化剤としての、(b)ピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤の含有量及び(c)メラミン系硬化剤の含有量が、下記(1)又は(2)の関係を満たし、
(b)>(c)> 0且つ(b)/(a)≦ 0.3 ・・・(1)
(b)>(c)= 0且つ(b)/(a)≦ 0.5 ・・・(2)
前記着色塗膜は、表面の、ハンターLab色空間のL値が60以上であり、且つ、下記(3)によって示される、連続カラーラインで焼付塗装が施された際の色調変動Δbが0.25以下(Δb≦0.25)であり、
Δb = b(T)― b(E) ・・・(3)
b(T):連続焼付塗装開始時の着色塗膜表面の、分光測色計により測定されたハンターLab色空間のb値
b(E):連続焼付塗装中の着色塗膜表面の、分光測色計により測定されたハンターLab色空間のb値
JIS G 3321(2019年)に記載のめっきの密着性試験に準拠した曲げ試験を行った際の、曲げ試験による伸び率Elが式(4)から得られ、試験片にクラックの発生が認められない最大の伸び率El(限界伸び率)が、10%以上(El≧10)である
El(%)=t/(2r-t)×100(%) ・・・(4)
t:鋼板の板厚(mm)、r:曲げ加工した試験片の外R
ことを特徴とする、塗装鋼板。
2.前記有機球状骨材が、平均粒径8~40μmのアクリル樹脂であることを特徴とする、前記1に記載の塗装鋼板。
3.前記Elが板温度40℃での限界伸び率El40が、14%以上(El40≧14)であることを特徴とする、前記1又は2に記載の塗装鋼板。
4.前記溶融Al-Zn系めっき鋼板のめっき層が、Al:50~60質量%、Si:1~3質量%及び任意添加成分:5%以下を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする、前記1~3のいずれか1項に記載の塗装鋼板。
5.前記溶融Al-Zn系めっき鋼板のめっき層中のデンドライト相のビッカース硬さが、10~110HV0.01であることを特徴とする、前記1~4のいずれかに記載の塗装鋼板。
6.前記めっき層が、前記任意添加成分として、Mg:0.01~5質量%をさらに含有することを特徴とする、前記4に記載の塗装鋼板。
7.溶融Al-Zn系めっき鋼板上に、直接又は中間層を介して、着色塗膜を形成する塗装鋼板の製造方法であって、
前記着色塗膜は、平均分子量が1,000~30,000、ガラス転位点が-20~60℃であるポリエステル樹脂と、硬化剤と、有機球状骨材と、を少なくとも含む塗料を用いて形成し、
前記塗料における、(a)ポリエステル樹脂の含有量、硬化剤としての、(b)ピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤の含有量及び(c)メラミン系硬化剤の含有量は、焼付塗装時、前記塗料中のブロックイソシアネートの解離温度T(℃)を超える温度領域での在炉時間t(min)が0.2以上0.3未満の場合には、下記(1)の関係を満たし、前記在炉時間tが0.30以上の場合には、下記(2)の関係を満たす
(b)>(c)> 0且つ(b)/(a)≦ 0.3 ・・・(1)
(b)>(c)= 0且つ(b)/(a)≦ 0.5 ・・・(2)
ことを特徴とする、塗装鋼板の製造方法。
本発明によれば、塗装時の黄変を抑制でき、加工性に優れた塗装鋼板及び塗装鋼板の製造方法を提供できる。
本発明の塗装鋼板を曲げ加工した際の加工部のめっき層の断面を、SEMを用いて拡大観察したときの画像である。 本発明の塗装鋼板を曲げ加工した際の、加工部の着色塗膜及びめっき層の様子を模式的に示した断面図である。
本発明の塗装鋼板は、溶融Al-Zn系めっき鋼板上に、直接又は中間層を介して、着色塗膜が形成された塗装鋼板である。
以下、本発明の塗装鋼板を構成する各部材について説明する。
(溶融Al-Zn系めっき鋼板)
前記溶融Al-Zn系めっき鋼板は、Al-Zn系めっき層が形成された鋼板である。
前記Al-Zn系めっき層は、Al及びZnを主成分として含んでいれば特に限定はされない。例えば、耐食性の観点からは、Al:20~95質量%、Si:1~3質量%及び任意添加成分:5質量%以下を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成とすることができる。前記溶融Al-Zn系めっき鋼板のめっき層が、上述した組成を有することによって、めっき層中にデンドライト相及び該デンドライト相を網目状に取り囲んだインターデンドライト相を形成でき、耐食性の向上を図ることができる。
また、同様の観点から、前記めっき層は、JIS G 3321(2019年)5.1に規定された「めっき浴成分」の組成、具体的には、Al:50~60質量%、Si:1~3質量%及び任意添加成分:5質量%以下を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有することが好ましい。
ここで、前記めっき層中のAl含有量は、耐食性と操業面のバランスから、20~95質量%とし、好ましくは50~60質量%である。前記めっき層のAl含有量が少なくとも20質量%あれば、Alのデンドライト凝固が十分に起こる。これにより、前記めっき層は主としてZnを過飽和に含有し、Alがデンドライト凝固した部分(α-Alのデンドライト相)と残りのデンドライト間隙の部分(インターデンドライト相)からなり且つ該デンドライト相がめっき層の膜厚方向に積層した耐食性に優れる構造を実現できる。
また、このα-Al相のデンドライト部分が、多く積層するほど、腐食進行経路が複雑になり、腐食が容易に下地鋼板に到達しにくくなるので、耐食性が向上する。一方、前記めっき層中のAl含有量が95質量%を超えると、Feに対して犠牲防食作用をもつZnの含有量が少なくなり、耐食性が劣化する。このため、前記めっき層中のAl含有量は95質量%以下とする。
また、前記めっき層中のSiは、下地鋼板との界面に生成する界面合金層の成長を抑制する目的で、耐食性や加工性の向上を目的にめっき浴中に添加され、必然的に前記めっき層に含有される。本発明の塗装鋼板で用いる溶融Al-Zn系めっき鋼板の場合、めっき浴中にSiを含有させて溶融めっき処理を行うと、下地鋼板がめっき浴中に浸漬されると同時に、鋼板表面のFeと浴中のAlやSiが合金化反応し、Fe-Al系及び/又はFe-Al-Si系の化合物からなる合金を生成する。このFe-Al-Si系界面合金層の生成によって、界面合金層の成長を抑制することができる。そして、前記めっき層中のSi含有量が1質量%以上の場合には、前記界面合金層の成長を十分に抑制できる。一方、めっき層のSi含有量が、3質量%を超えた場合、めっき層において、加工性を低下させ、カソードサイトとなるSi相が析出し易くなる。このため、めっき層中のSi含有量は3質量%以下とする。
前記めっき層は、該めっき層の主成分としてZnを含有する。前記めっき層にZnを含有することで、犠牲防食作用を得ることができ、耐食性の向上を図ることが可能となる。一方、前記Znの含有量が80質量%以下の場合には、Alの含有量を確保でき、上述したデンドライト相とインターデンドライト相による耐食性を実現できる点で好ましい。
さらに、前記めっき層は、上述したAl、Si及びZnに加えて、任意添加成分を5質量%以下含有することができる。
ここで、前記任意添加成分としては、めっき層に要求される性能に応じて適宜選択することが可能である。例えば、CaやMg等のアルカリ土類金属や、Mn、V、Cr、Mo、Ti、Sr、Ni、Co、Sb及びB等の添加成分が挙げられる。
これらの任意添加成分については、耐食性をより向上できる等の効果が得られるものの、めっき層の加工性が低下し、塗装鋼板の限界伸び率を悪化させるおそれがあるため、任意添加の含有量は5質量%以下であることが好ましい。
前記めっき層は、前記任意添加成分として、Mg及び/又はCaを含有することができる。前記めっき層が腐食した際、腐食生成物中にMg及び/又はCaが含まれることとなり、腐食生成物の安定性が向上し、腐食の進行が遅延する結果、耐食性が向上するという効果が得られる。前記Ca及び/又はMgの合計含有量は、5質量%以下であれば特に限定はされないが、0.01~5質量%であることが好ましい。含有量を0.01質量%以上とすることで、十分な腐食遅延効果が得られ、一方、含有量を5質量%以下とすることで、効果が飽和することなく、製造コストの上昇を抑え、めっき浴の組成管理を容易に行えるためである。
また、前記めっき層は、前記Mgを少なくとも含有することが好ましい。前記めっき層がMgを含有することで、上述したSiとともにMg2Siを生成できるようになり、腐食遅延効果を得ることができるからである。ここで、前記めっき層中のMgの含有量は、0.01~5質量%であることが好ましく、2~4.9質量%であることがより好ましい。
さらに、前記任意添加成分としてのCaやMgのアルカリ土類金属と同様に、腐食生成物の安定性を向上させ、腐食の進行を遅延させる効果を奏することから、前記めっき層は、前記任意添加成分として、さらにMn、V、Cr、Mo、Ti、Sr、Ni、Co、Sb及びBのうちから選択される一種又は二種以上を、合計で5質量%以下、好ましくは0.01~5質量%含有することもできる。
なお、前記めっき層は、めっき処理中にめっき浴と下地鋼板の反応でめっき中に取り込まれる下地鋼板成分や、めっき浴中の不可避的不純物が含まれる。前記めっき中に取り込まれる下地鋼板成分としては、Feが最大で2%程度含まれることがある。めっき浴中の不可避的不純物の種類としては、例えば、Fe、Cu、Zr等が挙げられる。前記めっき層中のFeについては下地鋼板から取り込まれるものと、めっき浴中にあるものとを区別して定量することはできない。不可避的不純物の総含有量は特に限定はしないが、めっきの耐食性と均一な溶解性を維持するという観点から、Feを除いた不可避的不純物量は合計で1質量%以下であることが好ましい。
なお、前記界面合金層については、前記めっき層のうち、下地鋼板との界面に存在する層であり、上述したように、鋼板表面のFeと浴中のAlやSiが合金化反応して必然的に生成するFe-Al系及び/又はFe-Al-Si系の化合物である。この界面合金層は、硬くて脆いため、厚く成長すると加工時のクラック発生の起点となることから、できるだけ薄くすることが好ましい。界面合金層の厚みは2μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下である。
なお、下地鋼板上に前記めっき層を形成する手段としては、特に限定はされず、通常の連続式溶融めっき設備を用いることができる。例えば、下地鋼板は還元性雰囲気に保持された焼鈍炉内で所定温度に加熱され、焼鈍と同時に鋼板表面に付着する圧延油等の除去、酸化膜の還元除去が行われた後、下端がめっき浴に浸漬されたスナウト内を通って所定濃度のAl及びZnを含有した溶融亜鉛めっき浴中に浸漬される。その後、めっき浴に浸漬された鋼板は、シンクロールを経由してめっき浴の上方に引き上げられた後、めっき浴上に配置されたガスワイピングノズルから鋼板の表面に向けて加圧した気体を噴射することによりめっき付着量が調整され、次いで冷却装置により冷却されることで、めっき層が形成される。
また、前記めっき層が、任意添加成分を含有しない場合、例えば200℃×24時間程度の熱処理を施すことによって、塗膜形成前の溶融Al-Zn系めっき鋼板の限界伸び率を20%程度、あるいはそれ以上にまで向上させることができる。これは、アルミリッチなデンドライト相中に過飽和固溶したZnが上記の熱処理によって排出されることでめっき層が軟質化するためと考えられる。
一方で、任意添加成分を含んだ組成を有するめっき層の場合には、このような熱処理による加工性の向上効果は小さく、例えば、前記任意添加成分としてMgを2~4.9%添加した場合には、熱処理後の限界伸び率は5%未満に留まる。この理由は、未だ明らかでは無いが、Al中の溶解度が高いことから熱処理後もアルミリッチなデンドライト相中に固溶元素として留まることなどが影響していると推定される。
さらに、前記めっき層の組織中には、デンドライト相及びインターデンドライト相を有するが、デンドライト相のビッカース硬さが10~110Hv0.01であることが好ましい。前記デンドライト相のビッカース硬さを10~110Hv0.01と小さくすることで、塗装鋼板の加工性を高め、加工後耐食性をより高めることができる。前記デンドライト相のビッカース硬さが110Hv0.01を超えると、加工性を十分に得られないおそれがあり、一方、前記デンドライト相のビッカース硬さが10Hv0.01未満の場合には、めっき層表面の耐傷つき性を低下させるおそれがあるためである。同様の観点から、前記デンドライト相のビッカース硬さは、20~100Hv0.01であることが好ましく、30~90Hv0.01であることがより好ましい。このような場合、前記めっき層単体での加工時の限界伸び率をおよそ20%以上に高めることができ、前記着色塗膜形成後の限界伸び率をおよそ25%以上に高めることができる。
なお、前記ビッカース硬さについては、10gの試験力(Hv0.01)で試験を実施している。
(中間層)
本発明の塗装鋼板は、前記溶融めっき鋼板のめっき層と前記着色塗膜との間に形成される中間層として、化成処理皮膜を形成することができる。前記めっき層と前記着色塗膜との間に化成処理膜を形成することで、塗装鋼板の耐食性をより高めることができる。
前記化成処理皮膜の種類や形成条件については、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜選択することができる。
例えば、クロメート処理液又はクロムフリー化成処理液を塗布し、水洗することなく、鋼板温度として80~300℃となる乾燥処理を行うクロメート処理又はクロメートフリー化成処理により形成することが可能である。なお、前記化成処理皮膜は、労働作業環境等に配慮する場合には、クロメートフリー処理によって形成すること(つまり、化成処理皮膜中にクロムを含有しないこと)が好ましい。
また、本発明の塗装鋼板は、前記溶融Al-Zn系めっき鋼板のめっき層と前記着色塗膜との間に形成される中間層として、プライマー層(下塗り塗膜)を形成することもできる。前記めっき層と前記着色塗膜との間にプライマー層を形成することで、後述する着色塗膜(上塗り塗膜)の溶融めっき鋼板との接着性をより高めることができ、耐食性や防錆性についてさらに向上させることもできる。なお、塗装鋼板において、前記溶融Al-Zn系めっき鋼板上に前記化成皮膜が形成される場合には、前記プライマー層は前記化成皮膜上に形成される。
前記プライマー層の膜厚については、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜調整することが可能である。
例えば、防錆性と加工性との両立を図る観点から、前記プライマー層の膜厚を、2~15μmとすることができる。膜厚が2μm以上の場合には十分な防錆性が得られ、一方、15μm以下の場合には十分な加工性を確保できる。
ここで、前記プライマー層は、塗装鋼板の防錆性を向上させる観点から、防錆剤を含有することができる。前記防錆剤については、クロム酸塩を含むクロメートタイプ又はクロム酸塩を用いないクロメートフリータイプのどちらを用いることもできる。ただし、労働作業環境等に配慮する場合は、クロメートフリータイプ(つまり、プライマー層中にクロムを含有しないこと)が好ましく、以下は、クロメートフリータイプのプライマー層について説明する。
前記プライマー層のマトリックス成分を構成する樹脂としては、特に限定はされないが、作業性、耐食性、防錆性等の観点から、ポリエステル系樹脂及び/又はエポキシ系樹脂を用いることが好ましい。
また、前記ポリエステル系樹脂については、ウレタン結合を有するポリエステル樹脂を主成分とすることが好ましい。
ここで、前記ウレタン結合を有するポリエステル樹脂としては、ポリエステルポリオールと、イソシアネート基を2個以上もつ、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートとの反応によって得られる樹脂など、公知のものが使用できる。
また、ポリエステルポリオールと、イソシアネート基を2個以上もつ、ジイソシアネート又はポリイソシアネートとを水酸基過剰な状態で反応させた樹脂(ウレタン変性ポリエステル樹脂)を、ブロック化ポリイソシアネートで硬化させた樹脂も使用できる。
前記ポリエステルポリオールは、多価アルコール成分と多塩基酸成分との脱水縮合反応を利用した、公知の方法により得ることができる。
前記多価アルコールは、グリコール及び3価以上の多価アルコールが挙げられる。グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、メチルプロパンジオール、シクロヘキサンジメタノール、3,3-ジエチル-1,5-ペンタンジオールなどが挙げられる。また、3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらの多価アルコールは、単独で使用することもでき、二種以上組み合わせて使用することもできる。
前記多塩基酸は、通常、多価カルボン酸が使用されるが、必要に応じて1価の脂肪酸などを併用することができる。多価カルボン酸としては、例えば、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、トリメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、アゼライン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ピロメリット酸、ダイマー酸等及びこれらの酸無水物や、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、テトラヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸等が挙げられる。これらの多塩基酸は、単独で使用することもでき、二種以上組み合わせて使用することもできる。
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、そして、キシリレンジイソシアネート(XDI)、メタキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)などの芳香族ジイソシアネート、さらに、イソホロンジイソシアネート、水素化XDI、水素化TDI、水素化MDIなどの環状脂肪族ジイソシアネート、及び、これらのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で使用することもでき、二種以上組み合わせて使用することもできる
前記ウレタン結合を有するポリエステル樹脂は、可撓性と強度を兼ね備えており、加工を受けた際、前記プライマー層にクラックが発生するのを抑えることができる等の効果が得られる。また、ウレタン樹脂を含有する化成処理皮膜との親和性が高く、特に加工部の耐食性向上に寄与する。
ここで、前記ウレタン結合を有するポリエステル樹脂の水酸基価は、耐溶剤性、加工性等の点から、30~150mgKOH/gであり、好ましくは、30~120mgKOH/gであり、さらに好ましくは40~100mgKOH/gである。
また、前記ウレタン結合を有するポリエステル樹脂の数平均分子量は、耐溶剤性、加工性等の点から、好ましくは500~15,000であり、より好ましくは、700~12,000であり、さらに好ましくは800~10,000である。
なお、前記ポリエステル樹脂は、プライマー層中に、40~88質量%含まれることが好ましい。40質量%未満では、プライマー層としてのバインダー機能が低下し、88質量%を超えると、下記に示す無機物による機能、例えばインヒビター作用が低下することがあるためである。なお、前記プライマー層に含有する無機物は、インヒビターとして機能するバナジウム化合物、リン酸化合物、マグネシウム酸化物等が含まれてもよい。
前記インヒビターとして作用するバナジウム化合物の種類については、例えば、五酸化バナジウム、メタバナジン酸、メタバナジン酸アンモニウム、オキシ三塩化バナジウム、三酸化バナジウム、二酸化バナジウム、バナジン酸マグネシウム、バナジルアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネート等が挙げられる。これらの中でも、前記バナジウム化合物として、4価のバナジウム化合物又は還元若しくは酸化することによって得られる4価のバナジウム化合物を用いることが好ましい。前記プライマー層中に添加するバナジウム化合物は、化成処理皮膜に添加するバナジウム化合物と同種であっても異種であってもよい。前記バナジン酸化合物は、外部から侵入してくる水分に徐々に溶出するバナジン酸イオンと亜鉛系めっき鋼板表面のイオンが反応し、密着性の良い不働態皮膜を形成し、金属露出部を保護し防錆作用が現れると考えられている。
また、前記プライマー層中のバナジウム化合物の含有量は、4~20質量%であることが好ましい。4質量%未満ではインヒビター効果が低下して耐食性の低下を招くおそれがあり、20質量%を超えるとプライマー層の耐湿性の低下を招くおそれがあるからである。
前記インヒビターとして作用するリン酸化合物の種類については、例えば、リン酸、リン酸のアンモニウム塩、リン酸のアルカリ金属塩、リン酸のアルカリ土類金属塩等を使用できる。これらの中でも、リン酸カルシウム等の、リン酸のアルカリ金属塩を用いることが好適である。
また、前記プライマー層中のリン酸化合物の含有量は、4~20質量%であることが好ましい。4質量%未満ではインヒビター効果が低下して耐食性の低下を招くおそれがあり、20質量%を超えるとプライマー層の耐湿性の低下を招くおそれがあるからである。
前記インヒビターとして作用する酸化マグネシウムは、初期の腐食によって生じた生成物を難溶性のマグネシウム塩として、安定化する効果がある。前記プライマー層中の酸化マグネシウムの添加量は、4~20質量%であることが好ましい。4質量%未満では上記効果が低下して耐食性の低下を招くおそれがあり、20質量%を超えるとプライマー層の可撓性が低下することにより特に加工部の耐食性が低下するおそれがあるからである。
なお、前記プライマー層を形成する際に用いられる架橋剤は、前記ウレタン結合を有するポリエステル樹脂と反応して架橋塗膜を形成するものであり、ブロック化ポリイソシアネート化合物であることが好ましい。前記ブロック化ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、例えば、ブタノール等のアルコール類、メチルエチルケトオキシムなどのオキシム類、ε-カプロラクタム類などのラクタム類、アセト酢酸ジエステルなどのジケトン類、イミダゾール、2-エチルイミダゾールなどのイミダゾール類、又はm-クレゾールなどのフェノール類等によりブロックしたものが挙げられる。
(着色塗膜)
本発明の塗装鋼板は、上述した溶融Al-Zn系めっき鋼板及び中間層に加えて、着色塗膜をさらに備える。
前記着色塗膜は、上述しためっき層と並んで本発明にとって重要な役割を果たす構成の一つであり、塗膜構成の適正化を図ることにより、良好な加工や、耐食性、耐傷つき性等を有することができる。
そして、本発明の塗装鋼板では、前記着色塗膜は、平均分子量が1,000~30,000、ガラス転位点が-20~60℃であるポリエステル樹脂と、ピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤と、メラミン系硬化剤と、有機球状骨材と、を含む塗料を用いて形成し、
前記塗料における、(a)ポリエステル樹脂の含有量、(b)ピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤の含有量、及び、(c)メラミン系硬化剤の含有量が、下記(1)又は(2)の関係を満たし、
(b)>(c)> 0且つ(b)/(a)≦ 0.3 ・・・(1)
(b)>(c)= 0且つ(b)/(a)≦ 0.5 ・・・(2)
前記着色塗膜は、表面の、ハンターLab色空間のL値が60以上であり、且つ、下記(3)によって示される、連続カラーラインで焼付塗装が施された際の色調変動Δbが0.25以下(Δb≦0.25)であり、
Δb = b(T)― b(E) ・・・(3)
b(T):連続焼付塗装開始時の着色塗膜表面の、分光測色計により測定されたハンターLab色空間のb値
b(E):連続焼付塗装中の着色塗膜表面の、分光測色計により測定されたハンターLab色空間のb値である。
前記着色塗膜を構成する塗料が、平均分子量が1,000~30,000、ガラス転位点が-20~60℃であるポリエステル樹脂と、少なくともピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤を含有する硬化剤と、有機球状骨材と、を含むことで、加工性を改善しつつ、塗装時の黄変の抑制が可能となる。
ここで、前記ポリエステル樹脂は、基材となる樹脂であり、塗装鋼板の加工性改善に寄与できる。前記ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、シリコン変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂を含むものであり、後述する硬化剤と共に用いることが可能である。
前記ポリエステル樹脂は、その数平均分子量が1,000~30,000であり、1,000~20,000であることが好ましい。前記ポリエステル樹脂の数平均分子量が1,000未満では、加工性が低下する場合があり、一方、数平均分子量が30,000を超えると耐候性が低下し、高粘度になるため過剰の希釈溶剤が必要となり、塗料中の樹脂の比率が低下するため、適切な塗膜が得られなくなり、他の配合成分との相溶性も低下する場合がある。
また、前記ポリエステル樹脂は、そのガラス転位点が-20~60℃である。前記ポリエステル樹脂のガラス転移点を、-20~60℃とした理由としては、ガラス転移点を-20℃以上とすることで、前記着色塗膜の硬度を高めることができ、60℃以下とすることで、前記着色塗膜の柔軟性を高め加工時の塗膜クラック抑制することができる。
さらに、前記ポリエステル樹脂の分子中の水酸基は、分子中の末端または側鎖のいずれにあってもよい。ここで、前記ポリエステル樹脂の水酸基価は、10~150mgKOH/gであり、20~140mgKOH/gであることが好ましく、30~130mgKOH/gであることがより好ましい。
なお、前記ポリエステル樹脂の数平均分子量は、GPCにより測定したポリスチレン換算分子量とする。
前記ポリエステル樹脂は、多塩基と多価アルコールを常法で加熱反応させて得られる共重合体である。
多塩基酸成分としては例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水トリメリット酸、マレイン酸、アジピン酸、フマル酸等を用いることができる。
また、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどを用いることができる。
なお、市販されているポリエステル樹脂としては、例えば、アルマテックス(商品名、三井化学(株)製)、デスモフェン(商品名、住化コベストロウレタン(株)製)、バイロン(商品名、東洋紡績(株)製)等が挙げられる。
また、前記主樹脂であるポリエステル樹脂は、硬化剤と組み合わせて使用される。ここで、前記硬化剤としては、ピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤が用いられ、任意成分として、メラミン系硬化剤も併用できる。前記硬化剤として、ピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤を用いることで、前記ポリエステル樹脂の硬化剤としての作用を発揮できるとともに、他の硬化剤を用いた場合に比べて、ブロック剤に起因した塗装時の前記着色塗膜の黄変を抑制することができる。
なお、上述した「塗装時の塗膜の黄変」については、塗膜形成後、水分や熱、紫外線に反応して、塗膜が経時的に黄変する事象(従来の黄変)ではなく、塗料を焼付塗装した際、ブロック剤に起因して、着色塗膜が黄変して色調安定性の不良を招くような事象を指している。
ここで、前記ピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤としては、例えば、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾール等が挙げられる。
なお、前記ピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤は、単独使用又は2種類以上併用することができる。
また、前記メラミン系硬化剤としては、メチル化メラミン樹脂、n-ブチル化メラミン樹脂、iso-ブチル化メラミン樹脂等が挙げられる。
なお、前記メラミン系硬化剤は、単独使用又は2種類以上併用することができる。
そして、本発明の塗装鋼板では、前記塗料における、(a)ポリエステル樹脂の含有量、(b)ピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤の含有量、及び、(c)メラミン系硬化剤の含有量が、下記(1)又は(2)の関係を満たす。
(b)>(c)> 0且つ(b)/(a)≦ 0.3 ・・・(1)
(b)>(c)= 0且つ(b)/(a)≦ 0.5 ・・・(2)
硬化剤として、ピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤及びメラミン系硬化剤を用いる場合には(1)の関係、硬化剤としてピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤のみ用いる場合には、(2)の関係を満足することで、硬化剤中のブロックイソシアネートの含有量を黄変が発生しにくい範囲に留めることができるため、通常の速度で焼付塗装が施された場合であっても、前記着色塗膜の加工性を良好に維持しつつ、前記着色塗膜の黄変を抑えることができる。
上記(1)の、(b)/(a)が0.3を超える場合や、上記(2)の、(b)/(a)が0.5を超える場合には、硬化剤中のブロックイソシアネートの含有割合が多くなるため、前記着色塗膜の塗装時の黄変を抑えることができないことがある。また、上記(2)の、(b)/(a)が0.2未満の場合には、塗膜の強度や加工性が低下するおそれがあるため、上記(2)の(b)/(a)は、0.2以上であることが好ましい。
同様の観点から、上記(1)の(b)/(a)は、0.1≦(b)/(a)≦0.3であることが好ましく、上記(2)の(b)/(a)は、0.2≦(b)/(a)≦0.5であることが好ましい。
なお、前記塗料中に含まれる有機球状骨材については、前記塗膜の集中応力の緩和効果や補強効果を高め、前記塗膜中に含まれることによって、曲げ加工性の向上や耐疵付き性の向上や耐圧痕性の向上を図ることができる。
前記有機球状骨材については、特に限定はされないが、平均粒径が8~40μmであることが好ましく、10~35μmであることがより好ましい。
ここで、前記有機球状骨材としては、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
そして、形成された着色塗膜は、表面の、ハンターLab色空間のL値(以下、単に「L値」ということもある。)が60以上であり、且つ、下記(3)によって示される、連続カラーラインで焼付塗装が施された際の色調変動Δbが0.25以下(Δb≦0.25)である。
Δb = b(T)― b(E) ・・・(3)
b(T):連続焼付塗装開始時の着色塗膜表面の、分光測色計により測定されたハンターLab色空間のb値
b(E):連続焼付塗装中の着色塗膜表面の、分光測色計により測定されたハンターLab色空間のb値
前記着色塗膜が、その表面のL値が60以上であることで、明度が高く、本発明による黄変抑制効果がより顕著に確認できる。前記着色塗膜の表面のL値が60未満の場合、黄変の有無がわかりにくく、本発明による効果を把握しにくくなる。
なお、前記着色塗膜の表面のL値については、60以上であれば特に限定はされず、着色塗膜に要求される性能に応じて適宜変更することができる。
前記L値は、ハンターLab色空間のL値であり、ハンターLab色空間の測定に対応した市販の分光測色計を用いることで、把握することが可能である。
上記(3)は、連続カラーラインで焼付塗装が施された際の色調変動Δbを示すための関係式である。
連続焼付塗装開始時の着色塗膜表面の分光測色計により測定されたb値(b(T))と、連続焼付塗装中の着色塗膜表面の分光測色計により測定されたb値(b(E))を、0.25以下と小さくすることで、塗装時の黄変が抑えられ、着色塗膜の優れた表面外観を得ることができる。同様の観点から、前記色調変動Δbは、0.2以下であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましく、0.13以下であることが特に好ましい。
なお、前記b値は、ハンターLab色空間のb値であり、ハンターLab色空間の測定に対応した市販の分光測色計を用いることで、把握することが可能である。
なお、一般的な連続カラーラインでは、1色あたり1トン~数百トンの溶融亜鉛めっき鋼板が1回の塗装で連続的に処理されている。
なお、前記塗膜の連続カラーラインで焼付塗装が施された際の色調変動Δbを0.25以下に抑える方法については、特に限定はされない。例えば、塗料中の硬化剤として、ピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤を用いることに加え、後述する塗装鋼板の製造方法の中でも述べているように、前記塗料における、(a)ポリエステル樹脂の含有量、(b)ピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤の含有量、及び、(c)メラミン系硬化剤の含有量を、カラーラインのライン速度、鋼板の大きさ、塗装装置の排出ガス量等の塗装条件に応じて調整することによって、塗装時の黄変を抑えることができる。
また、塗料や塗装の条件の他にも、めっき皮膜や中間層等の条件を変えることで前記色調変動Δbを低く抑えることができるのであれば、その方法も用いることができる。
なお、前記着色塗膜には、目的、用途に応じて、酸化チタン、弁柄、マイカ、カーボンブラック、その他の各種着色顔料、アルミニウム粉やマイカ等のメタリック顔料、炭酸塩や硫酸塩等の顔料、シリカ微粒子、ナイロン樹脂ビーズ、アクリル樹脂ビーズ、ガラス繊維、ガラスビーズ等の各種微粒子、p-トルエンスルホン酸、ジブチル錫ジラウレート等の硬化触媒、ワックス等、その他の添加剤を適量配合することもできる。
また、前記塗料の塗装方法は、特に限定されない。例えば、着色塗膜の材料となる塗料を、ロールコーター塗装、カーテンフロー塗装などの方法で塗布することができる。前記塗料組成物を塗装後、熱風加熱、赤外線加熱、誘導加熱等の加熱手段により焼き付け、上塗り塗膜を形成することができる。焼付処理の温度は、通常、最高到達板温を180~270℃程度とし、この温度範囲で約30秒~3分行う。
なお、前記着色塗膜の膜厚については、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜調整することが可能である。
例えば、生産性を悪化させることなく、より優れた耐傷つき性及び加工後の耐食性を得る観点から、前記着色塗膜の膜厚は、5~30μmとすることが好ましく、10~25μmとすることがより好ましく、12~22μmとすることがさらに好ましい。前記着色塗膜の膜厚が5μm以上の場合には、より優れた耐傷つき性及び加工後の耐食性を実現でき、一方、30μm以下の場合には製造の煩雑さや製造コストの上昇を招くこともない。
(塗装鋼板の加工性)
本発明の塗装鋼板は、加工性及び加工後の耐食性の改善を目的として、めっき層の加工性に関わる塗膜の効果指数ともいえる限界伸び率を適切な値にすることが非常に有効である。
そして、本発明の塗装鋼板では、JIS G 3321(2019年)に記載のめっきの密着性試験に準拠した曲げ試験を行った際の、曲げ試験による伸び率Elが式(4)から得られ、試験片にクラックの発生が認められない最大の伸び率El(限界伸び率)が、10%以上(El≧10)であることを特徴とする。
El(%)=t/(2r-t)×100(%) ・・・(4)
t:鋼板の板厚(mm)、r:曲げ加工した試験片の外R
ここで、図1は、本発明の塗装鋼板を曲げ加工した際の加工部のめっき層の断面を、SEMによって300倍の倍率で観察した写真であるが、めっき層上に形成された塗膜の応力緩和効果によって、インターデンドライト相内の亀裂の発生が抑えられていることがわかる。また、めっき層上に形成された塗膜については、曲げ加工時に生じた応力によって、局所的に伸びが発生し、膜厚が小さくなっていることがわかる。
一方、図2は、本発明の塗装鋼板を曲げ加工した際の、加工部の塗膜及びめっき層の断面を模式的に示したものであるが、前記めっき層の曲げ加工が施され、鋼板とめっき層との界面に平行な方向に対して引っ張り応力σがかかった際、めっき層上に形成された塗膜へ応力(破線の矢印)が生じ、これがめっき層の応力緩和効果となる。その結果、従来の溶融Al-Zn系めっき鋼板に比べて、めっき層に発生する応力(実線の矢印)が小さくなり、加工性、ひいては加工後の耐食性の向上が可能となる。
そして、本発明の塗装鋼板では、JIS G 3321(2019年)に記載のめっきの密着性試験に準拠した曲げ試験を行った際の、試験片にクラックの発生が認められない最大の伸び率El(限界伸び率)が10%以上(El≧10)である。この限界伸び率を有することによって、前記めっき層中のインターデンドライトに集中する応力を緩和でき、優れた加工後耐食性を実現することができる。
同様の観点から、前記最大の伸び率Elは、12%以上であること(El≧12)が好ましく、14%以上であること(El≧14)がより好ましく20%以上であること(El≧20)がさらに好ましい。
なお、前記塗装鋼板の伸び率Elについては、JIS G 3321(2019年)に記載のめっきの密着性試験(JIS G 3321(2019年)13.3.3の「めっきの密着性試験」)に準拠した曲げ試験を行った結果、得られた伸び率を用いている。
上述のJIS G 3321(2019年)では、内側に挟む鋼板は表示厚さの板の枚数と規定されており、この場合、決まった伸び率しか得られないが、これに代わり任意の厚さの板を用いることもでき、本発明では、以下の式(4)で示される伸び率を採用することで、塗膜形成前の溶融Al-Zn系めっき鋼板の限界伸び率El(%)を測定することができる。
El(%)=t/(2r-t)×100(%) ・・・(4)
(t:鋼板の板厚(mm)、r:曲げ加工した試験片の外R)
なお、前記試験片の外Rを測定する方法については、特に限定はされず、例えば、Rゲージによる測定、レーザー顕微鏡による測定、3Dマイクロスコープによる測定等が挙げられる。
なお、本発明の塗装鋼板における前記限界伸び率Elの測定条件は、上記式(4)から算出すればよく、180°曲げ加工時の内側間隔として、2枚や3枚の鋼板を挟んだ試験(2T曲げ、3T曲げ)とすることもできるし、何も挟まずに曲げ180°曲げ加工を施すこともできる。また、内側に挟む鋼板は表示厚さの板の枚数と規定されているが、それでは決まった伸び率しか得られないため任意の厚さの板を用いることもできる。
また、前記曲げ試験を行った際の、試験片にクラックの発生がしたか否かの確認手段については、確実にクラックの確認ができる方法であれば特に限定されない。例えば、確実に試験片のクラックを確認できる点からは、ルーペを用いて、曲げ加工部を10倍の倍率で観察を行うことができる。ここで、試験片のクラックとは、塗装鋼板の表層から確認できるクラックであり、めっき層あるいは鋼板素地が露出し金属面が見えている状態である。
なお、前記限界伸び率Elを調整する方法については、特に限定はされない。前記めっき層の構成や、着色塗膜の構成、熱処理条件の調整等、複合的に組み合わせて、所望の限界伸び率Elを得ることができる。
<塗装鋼板の製造方法>
本発明の塗装鋼板の製造方法は、溶融Al-Zn系めっき鋼板上に、直接又は中間層を介して、着色塗膜を形成する塗装鋼板の製造方法である。
ここで、前記着色塗膜は、平均分子量が1,000~30,000、ガラス転位点が-20~60℃であるポリエステル樹脂と、ピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤と、有機球状骨材と、を少なくとも含む塗料を用いて形成する。
前記着色塗膜を構成する塗料が、平均分子量が1,000~30,000、ガラス転位点が-20~60℃であるポリエステル樹脂と、ピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤と、メラミン系硬化剤と、有機球状骨材と、を含むことで、加工性を改善しつつ、塗装時の黄変の抑制が可能となる。
そして、本発明の塗装鋼板の製造方法は、前記塗料における、(a)ポリエステル樹脂の含有量、(b)ピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤の含有量、及び、(c)メラミン系硬化剤の含有量は、焼付塗装時、前記塗料中のブロックイソシアネートの解離温度T(℃)を超える温度領域での在炉時間t(min)が0.2以上0.3未満の場合には、下記(1)の関係を満たし、前記在炉時間tが0.30以上の場合には、下記(2)の関係を満たすことを特徴とする。
(b)>(c)> 0且つ(b)/(a)≦ 0.3 ・・・(1)
(b)>(c)= 0且つ(b)/(a)≦ 0.5 ・・・(2)
前記塗料における、(a)ポリエステル樹脂の含有量、(b)ピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤の含有量、及び、(c)メラミン系硬化剤の含有量が、式(1)又は(2)を満たすことによって、硬化剤中のブロックイソシアネートの含有量を、黄変が発生しにくい範囲に留めることができるため、ある程度の速度で焼付塗装が施された場合であっても、前記着色塗膜の加工性を良好に維持しつつ、前記着色塗膜の黄変を抑えることができる。
上記(1)の、(b)/(a)が0.3を超える場合や、上記(2)の、(b)/(a)が0.5を超える場合には、硬化剤中のブロックイソシアネートの含有割合が多くなるため、前記着色塗膜の塗装時の黄変を抑えることができないことがある。また、上記(2)の、(b)/(a)が0.2未満の場合には、塗膜の強度や加工性が低下するおそれがある。
同様の観点から、上記(1)の(b)/(a)は、0.1≦(b)/(a)≦0.3であることが好ましく、上記(2)の(b)/(a)は、0.2≦(b)/(a)≦0.5であることが好ましい。
なお、上記(1)又は(2)の関係を選択するための条件としての、「焼付塗装時、塗料中のブロックイソシアネートの解離温度T(℃)を超える温度領域での在炉時間t(min)」については、焼付塗装を行う炉内でブロック剤の揮発速度に関係し、ブロック剤の解離温度に達したときから塗膜の焼付終了までの時間(在炉時間)が短いほど、ブロック剤の揮発速度が上がり、炉内のブロック剤濃度が上昇することが考えられる。つまり、「焼付塗装時の塗料中のブロックイソシアネートの解離温度T(℃)を超える温度領域での在炉時間t(min)」は、焼付塗装時に塗料から揮発したブロック剤がどの程度塗装装置内(炉内)に留まっているかを把握するための指標となるものである。
前記在炉時間t(min)を、0.30以上又は0.2以上0.3未満の場合で分けた理由としては、前記在炉時間t(min)が0.30以上の場合には、焼付塗装時に塗料から揮発したブロック剤が比較的少なくなるため、塗料中の(b)ピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤を多めに含むことができ、一方、前記塗装条件Xが0.2以上0.3未満の場合には、ある程度残ることが考えらえるため、(b)ピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤を抑えて、より確実に塗膜の黄変を抑えるためである。なお、前記在炉時間t(min)を0.2以上0.3未満とし、下限(0.2min)を定めた理由としては、前記在炉時間tが0.2minを下回ると、焼付塗装時に塗料から揮発したブロック剤が炉内に多く存在するため、黄変の発生を十分に抑えることができないためである。
前記ブロックイソシアネートの解離温度Tについては、一般的に120℃以上であり、ブロック剤の種類や、イソシアネートの種類、反応相手の種類、触媒種・量によって変わる。ピラゾール系ブロック剤は他のブロック剤に比べ解離温度が低く、上記の在炉時間tの観点より黄変に有利である。なお、解離温度Tは、DSC(示差走査熱量測定)より測定できる。
なお、本発明の塗装鋼板の製造方法の、上述した条件以外の、溶融Al-Zn系めっき鋼板、中間層、着色塗膜及び塗料の構成については、上述した本発明の塗装鋼板の中で説明したものと同様である。
また、前記溶融Al-Zn系めっき鋼板上に、中間層を形成する条件については、特に限定はされず、公知の化成皮膜及び/又はプライマーの塗布及び硬化条件を適宜用いることができる。
<塗装鋼板のサンプル1~29>
以下に示す、(1)溶融Al-Zn系めっき鋼板、(2)化成処理皮膜、(3)下塗り塗膜、(4)着色塗膜の条件に従って、塗装鋼板の各サンプルを製造した。
(1)溶融Al-Zn系めっき鋼板
以下の溶融Al-Zn系めっき鋼板を用いた。各サンプルが用いためっき種については、表1に示す。なお、めっき種1~3の板幅はいずれも1166mmである。
めっき種1:板厚0.35mm、めっき付着量が片面あたり80g/m2、Zn-55%Al-1.6%Siの組成を有するめっき層を備えた溶融Al-Zn系めっき鋼板
めっき種2:板厚0.35mm、めっき付着量が片面あたり80g/m2、Zn-55%Al-1.6%Siの組成を有するめっき層を備え、めっき層形成後に200℃雰囲気下で、4時間熱処理をした溶融Al-Zn系めっき鋼板
めっき種3:板厚0.35mm、めっき付着量が片面あたり80g/m2、Zn-55%Al-4%Mg-2%Siの組成を有するめっき層を備えた溶融Al-Zn系めっき鋼板
(2)化成処理皮膜
化成処理皮膜の樹脂成分として、エステル結合を有するアニオンウレタン樹脂である第一工業製薬(株)製「スーパーフレックス210」と、ビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂である吉村油化学(株)製「ユカレジンRE-1050」とを混合した。化成処理皮膜が含有する防錆成分として、アセチルアセトンでキレート化した有機バナジウム化合物、炭酸ジルコニウムアンモニウム、フッ化アンモニウムを用いた。これらの原料を混合して化成処理液を得た。化成処理のpHは8~10とした。
得られた化成処理液を、溶融Al-Zn系めっき鋼板上に連続カラーラインで塗布し、鋼板の到達温度90℃、焼き付け時間10秒で乾燥させ、付着量0.2g/m2になるように、化成処理皮膜を形成した。
(3)下塗り塗膜
下塗り塗膜の主成分は、ウレタン結合を有するポリエステル樹脂として、ウレタン変性ポリエステル樹脂をブロック化イソシアネートで硬化させたものを用いた。防錆成分として、バナジン酸マグネシウム、リン酸カルシウムを用いた。これらの原料を混合後ボールミルで約1時間攪拌して下塗り塗膜用塗料を得た。
得られた下塗り塗膜用塗料は、化成処理皮膜上に連続カラーラインで塗布し、鋼板到達温度230℃、焼き付け時間35秒で焼き付け、焼き付け後の膜厚が4μmになるように塗膜を形成した。
(4)着色塗膜
(4-1)塗料の調製
サンプル1~22、25、30~37では、着色塗膜を構成する塗料は、主成分としてのポリエステル樹脂(数平均分子量3000、ガラス転移温度25度)、硬化剤としての、(b)ピラゾール系のブロック剤を含有するブロックイソシアネート(解離温度120℃)及び(c)メチル化メラミンを、表1で示す配合した。その後、塗料中に有機球状樹脂としての平均粒子径の異なる(表1を参照。)アクリル樹脂を用いた。また、塗料には、着色顔料として、酸化チタン顔料(白)、鉄クロム複合酸化物顔料(黒)を15~40質量%の範囲で含有させることで、L値の調整を行った。さらに、塗料には、塗膜表面の鏡面60°における光沢値が5~10%になるよう、艶消し剤(シリカ)を2~10質量%含有させた。
サンプル23及び24では、ピラゾール系のブロック剤を含有するブロックイソシアネートに代えて、オキシム系のブロック剤を含有するブロックイソシアネート(解離温度150℃)を用いたこと以外は、サンプル1~22と同様の条件で塗料を調製した。
サンプル26では、ポリエステル樹脂として、数平均分子量3000、ガラス転移温度70℃のものを用いたこと以外は、サンプル1~22、25、30~37と同様の条件で塗料を調製した。
サンプル28では、ポリエステル樹脂として、数平均分子量3000、ガラス転移温度40℃のものを用いたこと以外は、サンプル1~22、25、30~37と同様の条件で塗料を調製した。
サンプル29では、有機球状樹脂を含有しなかったこと以外は、サンプル1~22、25、30~37と同様の条件で塗料を調製した。
(4-2)塗膜の焼付
その後、調製した塗料を、ロールコーター法式で連続カラーラインを用いて塗装し、塗膜を形成した。前記下塗り塗膜上にロールコーターで塗布し、鋼板到達温度240℃で焼き付け、焼付塗装時の、塗料中のピラゾールの解離温度120(℃)又はオキシムの150(℃)を超える温度領域での在炉時間t(min)を測定した。在炉時間t(min)は、表1に示す。
<評価>
上記のように得られた塗装鋼板の各サンプルについて、以下の評価を行った。
(1)L値
各サンプルの塗装鋼板について、分光測色計(Hunter Lab:Ultrascan VIS)を用いて、ハンターLab色空間のL値を測定した。
(2)黄変性
各サンプルの塗装鋼板について、分光測色計(Hunter Lab:Ultrascan VIS)を用いて、ハンターLab色空間のb値を測定した。
b値の測定は、連続カラーライン塗装の塗装開始から長手方向に30m塗装した位置のb値をb(T)とし、b(T)から長手方向に500m連続塗装した位置のb値をb(E)とし、以下の式に従ってΔbを算出した。
Δb = b(T)― b(E)
Δbは、0.25以下であれば良(〇)とし、0.2以下であれば十分に優(◎)とし、0.25を超えた場合は不良(×)とした。
(3)鉛筆硬度評価
各サンプルの塗装鋼板の表面について、JIS G3322に規定された内容に準拠し、鉛筆硬度の測定を行った。
測定後の鉛筆硬度がH以上を合格(〇)、F以下を不合格(×)とし、評価を行った。評価結果を表2に示す。
(4)塗膜形成前後の限界伸び率(El、El
塗膜形成後の限界伸び率Elの測定は、各サンプルの塗装鋼板を、JIS G 3321(2019年)に記載のめっきの密着性試験に準拠した曲げ試験に準拠して、50mm幅で180度曲げを行い、両端10mmを除く30mm幅内の曲げ加工部の表面を、ルーペを用いて倍率10倍で観察し、クラックの発生が認められない最大の伸び率(El値)を測定した。得られた値を表1に示す。
なお、最大の伸び率(El値)については、20℃及び40℃の条件下で伸び試験を実施し、測定を行った。
(5)摺動試験
各サンプルの塗装鋼板について、新東科学株式会社製表面性測定機14FWを用いて、摺動試験を実施した。塗装鋼板のオモテ面を、エリクセンで2mm押し出し摺動子を作製し、平坦な塗装鋼板オモテ面と前記摺動子を荷重200gf、摺動速度5000mm/min、ストローク3mmの条件で100往復毎摺動子側の塗膜疵付きの有無を確認し、めっき露出往復回数を測定した。
めっき面露出までの往復回数が、3000回以上の場合には、優(◎)、1000回以上を良(〇)、1000回未満を不良(×)とした。
(6)耐候性
各サンプルの塗装鋼板の表面について、スガ試験器製のメタリングウェザーメーターM6Tを用いて連続照射試験を実施し、耐候性を評価した。連続照射試験は、照射照度1000mW/cm2で240h試験し、試験後の光沢保持率が30%以上のサンプルを合格(〇)とし、30%未満のサンプルを不合格(×)とした。
Figure 2024065974000001
表1の結果から、本発明例の各サンプルは、比較例のサンプル23、24、27、28、30~37に比べて、黄変性に優れることがわかる。また、本発明例の各サンプルは、比較例のサンプル25、26に比べて加工性に優れることがわかる。さらに、本発明例の各サンプルは、比較例のサンプル25に比べて耐候性に優れ、比較例のサンプル29に比べて鉛筆硬度に優れることがわかる。
本発明によれば、塗装時の黄変を抑制でき、加工性に優れた塗装鋼板及び塗装鋼板の製造方法を提供できる。

Claims (7)

  1. 溶融Al-Zn系めっき鋼板上に、直接又は中間層を介して、着色塗膜が形成された塗装鋼板であって、
    前記着色塗膜は、平均分子量が1,000~30,000、ガラス転位点が-20~60℃であるポリエステル樹脂と、硬化剤と、有機球状骨材と、を少なくとも含む塗料を用いて形成し、
    前記塗料における、(a)ポリエステル樹脂の含有量、硬化剤としての、(b)ピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤の含有量及び(c)メラミン系硬化剤の含有量が、下記(1)又は(2)の関係を満たし、
    (b)>(c)> 0且つ(b)/(a)≦ 0.3 ・・・(1)
    (b)>(c)= 0且つ(b)/(a)≦ 0.5 ・・・(2)
    前記着色塗膜は、表面の、ハンターLab色空間のL値が60以上であり、且つ、下記(3)によって示される、連続カラーラインで焼付塗装が施された際の色調変動Δbが0.25以下(Δb≦0.25)であり、
    Δb = b(T)― b(E) ・・・(3)
    b(T):連続焼付塗装開始時の着色塗膜表面の、分光測色計により測定されたハンターLab色空間のb値
    b(E):連続焼付塗装中の着色塗膜表面の、分光測色計により測定されたハンターLab色空間のb値
    JIS G 3321(2019年)に記載のめっきの密着性試験に準拠した曲げ試験を行った際の、曲げ試験による伸び率Elが式(4)から得られ、試験片にクラックの発生が認められない最大の伸び率El(限界伸び率)が、10%以上(El≧10)である
    El(%)=t/(2r-t)×100(%) ・・・(4)
    t:鋼板の板厚(mm)、r:曲げ加工した試験片の外R
    ことを特徴とする、塗装鋼板。
  2. 前記有機球状骨材が、平均粒径8~40μmのアクリル樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の塗装鋼板。
  3. 前記Elが板温度40℃での限界伸び率El40が、14%以上(El40≧14)であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の塗装鋼板。
  4. 前記溶融Al-Zn系めっき鋼板のめっき層が、Al:50~60質量%、Si:1~3質量%及び任意添加成分:5%以下を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の塗装鋼板。
  5. 前記溶融Al-Zn系めっき鋼板のめっき層中のデンドライト相のビッカース硬さが、10~110HV0.01であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の塗装鋼板。
  6. 前記めっき層が、前記任意添加成分として、Mg:0.01~5質量%をさらに含有することを特徴とする、請求項4に記載の塗装鋼板。
  7. 溶融Al-Zn系めっき鋼板上に、直接又は中間層を介して、着色塗膜を形成する塗装鋼板の製造方法であって、
    前記着色塗膜は、平均分子量が1,000~30,000、ガラス転位点が-20~60℃であるポリエステル樹脂と、硬化剤と、有機球状骨材と、を少なくとも含む塗料を用いて形成し、
    前記塗料における、(a)ポリエステル樹脂の含有量、硬化剤としての、(b)ピラゾール系ブロックイソシアネート硬化剤の含有量及び(c)メラミン系硬化剤の含有量は、焼付塗装時、前記塗料中のブロックイソシアネートの解離温度T(℃)を超える温度領域での在炉時間t(min)が0.2以上0.3未満の場合には、下記(1)の関係を満たし、前記在炉時間tが0.30以上の場合には、下記(2)の関係を満たす
    (b)>(c)> 0且つ(b)/(a)≦ 0.3 ・・・(1)
    (b)>(c)= 0且つ(b)/(a)≦ 0.5 ・・・(2)
    ことを特徴とする、塗装鋼板の製造方法。
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