JP3651228B2 - 成形加工性に優れたポリエステルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は成形加工性に優れるポリエステルの製造方法に関する。さらに詳しくは成形加工性及びポリマ色調に優れるポリエステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルは、その優れた性質のゆえに、繊維用、フィルム用、ボトル用をはじめ広く種々の分野で用いられている。なかでもポリエチレンテレフタレ−トは機械的強度、化学特性、寸法安定性などに優れ、好適に使用されている。
【0003】
一般にポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールから製造されるが、高分子量のポリマを製造する商業的なプロセスでは、重縮合触媒としてアンチモン化合物が広く用いられている。しかしながら、アンチモン化合物を含有するポリマは以下に述べるような幾つかの好ましくない特性を有している。
【0004】
例えば、アンチモン触媒を使用して得られたポリエステルを溶融紡糸して繊維とするときに、アンチモン触媒の残渣が口金孔周りに堆積することが知られている。この堆積が進行するとフィラメントに欠点が生じる原因となるため、適時除去する必要が生じる。アンチモン触媒残渣の堆積が生じるのは、アンチモンがポリマ中でアンチモングリコラートの形で存在しており、これが口金近傍で変成を受け、一部が気化、散逸した後、アンチモンを主体とする成分が口金に残るためであると考えられている。
【0005】
また、ポリマ中のアンチモン触媒残渣は比較的大きな粒子状となりやすく、異物となって成形加工時のフィルターの濾圧上昇、紡糸の際の糸切れあるいは製膜時のフィルム破れの原因になるなどの好ましくない特性を有している。
【0006】
上記のような背景からアンチモン含有量が極めて少ないか、あるいは含有しないポリエステルが求められている。
このような課題に対して、例えばUSP5,512,340等では、無機アルミニウム化合物である塩化アルミニウムや水酸化塩化アルミニウムをコバルト化合物と併用して用いることが提案されている。しかしながら一般にアルミニウム化合物は、エチレングリコールなどのグリコールやポリエステルの反応系に溶解しにくく、そのまま重縮合触媒としてポリエステルの反応系に添加すると不溶性異物を形成し、該異物に起因した紡糸の糸切れやフィルム破れを発生する。また、可溶性アルミニウム化合物を用いた場合にも、反応性を上げるために相当量のアルミニウム化合物を添加すると異物発生を生じ、結局、アンチモンの問題点を十分に回避できない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は上記のアンチモン化合物を含有するポリエステルの欠点を解消した、アルミニウム化合物及びチタン化合物を添加してなるポリエステルの製造方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記した本発明の目的は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体とのエステル化反応またはエステル交換反応により得られた生成物を重縮合せしめてポリエステルを製造する方法において、重縮合触媒としてアルミニウム化合物及びチタン化合物を使用することを特徴とするポリエステルの製造方法により達成される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエステルはジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマであって、繊維、フィルム、ボトル等の成形品として用いることが可能なものであれば特に限定はない。
【0010】
このようなポリエステルとして具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリプロピレンテレフタレートなどが挙げられる。本発明は、なかでも最も汎用的に用いられているポリエチレンテレフタレートまたは主としてポリエチレンテレフタレートからなるポリエステル共重合体において好適である。
【0011】
また、これらのポリエステルには、共重合成分としてアジピン酸、イソフタル酸、セバシン酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸などのジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオキシ化合物、p−(β−オキシエトキシ)安息香酸などのオキシカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体などを共重合してもよい。
【0012】
本発明におけるアルミニウム化合物は、特に限定されない。具体的には、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムなどの無機アルミニウム化合物、酢酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム等のカルボン酸塩、アルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムトリ−n−ブチレート、アルミニウムトリ−sec−ブチレート、アルミニウムトリ−tert−ブチレート、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルコールの水酸基の水素をアルミニウム元素で置き換えた構造の化合物であるアルミニウムアルコレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)、アルミニウムモノイソプロポキシモノオレオキシエチルアセトアセテート、アルミニウムアセチルアセトネート等のアルミニウムアルコレートのアルコキシ基の一部または全部をアルキルアセト酢酸エステルやアセチルアセトン等のキレート化剤で置換した化合物であるアルミニウムキレートが挙げられる。
【0013】
中でも比較的安価で、分子量が低くアルミニウム原子の含有比率の高い水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、酢酸アルミニウムが好ましく用いられる。
【0014】
さらには、水酸化アルミニウムまたは酢酸アルミニウムを用いると、ハロゲンを含有しないため得られるポリマの耐熱性や色調がより良好となり特に好ましい。なお、本発明の酢酸アルミニウムは、一般に市販されている、いわゆる塩基性酢酸アルミニウムであっても良い。
【0015】
同様に、本発明におけるチタン化合物も、特に限定されない。具体的には、チタンメチネート、チタンエチレート、チタン−n−プロピレート、チタンイソプロピレート、チタンテトラ−n−ブチレート、チタンテトラ−sec−ブチレート、チタンテトラ−tert−ブチレート、チタンテトラエチレングリコレート等のアルコールの水酸基の水素をチタン元素で置き換えた構造の化合物であるチタンアルコレート、蓚酸チタン、オキシ蓚酸チタン等の脂肪族カルボン酸塩、フタル酸、トリメリット酸、ヘミトリメリット酸、ピロトリメリット酸等の芳香族多価カルボン酸又はこれらの無水物と上記チタンのアルコレートとを予め反応させて得られる反応生成物、チタンサリチレート、チタンサリチルアセトネート、チタンアセチルアセトネート等のチタンアルコレートのアルコキシ基の一部または全部をアルキルアセト酢酸エステルやアセチルアセトン等のキレート化剤で置換した化合物であるチタンキレート、四塩化チタン、四臭化チタン等の無機チタン化合物が挙げられる。また、これらのチタン化合物の複数の混合物や一部重合体を含有していても良い。中でも比較的安価で、分子量が低くアルミニウム原子の含有比率の高いチタンアルコレート、脂肪族カルボン酸塩、芳香族多価カルボン酸またはその無水物とチタンのアルコキシドとの生成物が好ましく用いられる。
【0016】
本発明のアルミニウム化合物及びチタン化合物は、アルミニウム原子及びチタン原子換算で得られるポリエステル化合物に対して重量でそれぞれ1〜500ppmとなるよう添加することが好ましい。より好ましくは1〜200ppm、さらに好ましくは1〜100ppmである。
【0017】
また、本発明のアルミニウム化合物及びチタン化合物は、アルミニウム原子及びチタン原子換算の合計量で得られるポリエステル化合物に対して重量で2〜500ppmとなるよう添加することが好ましい。添加量が2ppmより少ないと触媒活性が不十分で、結果として得られるポリマの分子量が低く成形物の強度が不十分となる。また500ppmを越える量添加すると、異物が生成しやすくなり、成形時の濾圧上昇が顕著になったり、ポリマ色調が悪化する場合がある。より好ましくは2〜200ppm、さらに好ましくは2〜100ppmである。
【0018】
本発明においては上記アルミニウム化合物及びチタン化合物と併せてコバルト化合物を用いると、得られるポリエステルの色調がより改善されるため好ましい。
【0019】
本発明のコバルト化合物としては特に限定はないが、具体的には例えば、塩化コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルト、酢酸コバルト4水塩等が挙げられる。
【0020】
該コバルト化合物の添加量は、アルミニウム原子及びチタン原子の合計量とコバルト原子のモル比((Al+Ti)/Co)で0.5〜20とすることが好ましい。該モル比範囲であると、重合活性の向上効果が高く、ポリマ色調の向上効果が大きく、また耐熱性も良好に維持できる。より好ましくは1〜15、さらに好ましくは2〜10である。
【0021】
本発明においてはアルカリを併用すると異物がさらに抑制され好ましい。
【0022】
本発明のアルカリとは広義のアルカリであって、例えば理化学辞典(第3版増補版、岩波書店、1982)等で示されるように、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物とそれ以外にアルカリ金属炭酸塩、アンモニア、アミン及びその誘導体からなる群の全体のことをいう。
【0023】
本発明のアルカリの添加量は、得られるポリエステルに対して50〜5000ppmであることが好ましい。50ppm未満では異物生成抑制の効果が得られにくく、また5000ppmを越えて添加すると得られるポリエステルの色調を悪化させたりする場合がある。添加量としては、70〜3000ppmがより好ましく、特に好ましくは80〜1000ppmである。
【0024】
本発明においてはこれらのアルカリのうち、含窒素化合物を用いると、得られるポリエステルの色調が特に良好となり好ましい。
【0025】
本発明の含窒素化合物は、特に限定されないが、例えば次の式1または式2で表される化合物を挙げることができる。
【0026】
【化1】
【化2】
より具体的には、式1の化合物としては、アンモニアや、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。式2の化合物としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム等を挙げることができる。
【0027】
また式1または式2以外の化合物として、式1または式2の化合物の誘導体や、エチレンジアミン、テトラエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ピリジン、キノリン、ピロリン、ピロリドン、ピペリジン等を用いても良い。
【0028】
本発明の含窒素化合物としては上記した化合物のなかでも、第3アミン化合物または第4アンモニウム化合物が、得られるポリエステル中での異物生成が特に少なくなり好ましい。さらに好ましくは、280℃以下の温度で揮発する化合物であると、最終的に得られるポリエステル中の残留量が少なくなり、該ポリエステルの色調がより良好となり好ましい。このような化合物としてはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の第3アミン化合物や、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム、等の第4アンモニウム化合物が挙げられる。
【0029】
本発明の含窒素化合物の添加量は、得られるポリエステルに対して窒素原子換算で10〜1000ppmであることが好ましい。10ppm未満では異物生成抑制の効果が得られにくく、また1000ppmを越えて添加すると得られるポリエステルの色調を悪化させたりする場合がある。添加量としては、30〜800ppmがより好ましく、特に好ましくは50〜500ppmである。
【0030】
本発明のアルミニウム化合物は、ポリエステルの反応系にそのまま添加してもよいが、あらかじめアルカリを含有する水、有機溶媒または水及び有機溶媒の混合物に混合した後、反応系へ添加するとアルミニウム化合物のポリエステル中での異物生成がより抑制されるため好ましい。特に、アルカリを水と混合し、水溶液とした後、該水溶液にアルミニウム化合物を混合すると、アルミニウム化合物が水溶液に均一分散あるいは溶解し、ポリエステル中での異物生成がより抑制されるため好ましい。また、このアルミニウム化合物を添加した水溶液をエチレングリコール等のポリエステルを形成するジオール成分で希釈したのち反応系に添加すると、急激な温度変化による局部的な濃縮等が起こりにくくなるため、好ましい。
【0031】
このようにアルミニウム化合物をあらかじめアルカリを含有する水、有機溶媒または水及び有機溶媒の混合物と混合する場合には、水、有機溶媒または水及び有機溶媒の混合物に対してアルカリ化合物の濃度が0.5〜50重量%、より好ましくは1〜40重量%であると、その後に添加するアルミニウム化合物が分散あるいは溶解がより容易に進行するため好ましい。
【0032】
また、ポリエステルの反応系に添加する溶液としては、アルミニウム化合物をアルミニウム原子換算で0.05〜20重量%、アルカリ化合物の濃度を0.05〜30重量%とすると、得られるポリエステル中の異物が特に少なく好ましい。また、アルカリが含窒素化合物の場合には窒素原子換算で0.05〜20重量%の濃度とすると、得られるポリエステル中の異物が特に少なく好ましい。
【0033】
また、チタン化合物は、ポリエステルの反応系にそのまま添加してもよいが、エチレングリコール等のポリエステルを形成するジオール成分で希釈したのち反応系に添加すると、急激な温度変化による局部的な濃縮等が起こりにくくなるため、好ましい。
【0034】
また本発明のポリエステルの製造方法においては、アンチモン化合物を併用しても良いがアンチモン原子として添加量がポリマに対して50ppm以下であると、繊維の紡糸時の糸切れや、フィルム製膜時の破れが抑制され、ボトル等では透明性が良好となり好ましい。より好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。
【0035】
また、本発明においては必要に応じて公知の化合物、例えば各種のリン化合物等の着色防止剤や粒子等を添加、含有しても良い。
【0036】
本発明のポリエステルの製造方法について、ポリエチレンテレフタレートの例で説明する。
【0037】
繊維やフィルム等に使用する高分子量ポリエチレンテレフタレートは通常、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低分子量のポリエチレンテレフタレートまたはオリゴマーを得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレート(DMT)とエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低分子量体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマを得るプロセスである。ここでエステル化は無触媒でも反応は進行するが、エステル交換反応においては、通常、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム等の化合物を触媒に用いて進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、該反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加することが行われる。
【0038】
本発明の製造方法は、(1)または(2)の一連の反応の初期または前半で得られた低重合体に、本発明の特定のアルミニウム化合物及びチタン化合物を添加し、しかる後に、後半の重縮合反応を進行させ、高分子量のポリエチレンテレフタレートを得るというものである。
【0039】
また上記の反応は回分式、半回分式あるいは連続式等の形式で実施されるが、本発明の製造方法はそのいずれの形式にも適用し得る。
【0040】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測定した。
【0041】
(1)ポリマの固有粘度[η]
オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。
【0042】
(2)ポリマ中の金属含有量
蛍光X線により求めた。
【0043】
(3)ポリマの色調
スガ試験機(株)社製の色差計(SMカラーコンピュータ型式SM−3)を用いて、ハンター値(L、a、b値)として測定した。
【0044】
(4)ポリマのカルボキシル末端基量
Mauriceらの方法[Anal.Chim.Acta,22,p363(1960)]によった。
【0045】
(5)繊維の強伸度
東洋ボールドウイン(株)社製テンシロン引張り試験器により、試長250mm、引張り速度300mm/分でS−S曲線を求め強伸度を算出した。
【0046】
実施例1
あらかじめ水酸化テトラエチルアンモニウムを20wt%含有する水100部に水酸化アルミニウムを10部添加、攪拌し均一な水溶液を得た。さらに該水溶液をエチレングリコール90部で希釈し、水酸化テトラエチルアンモニウム、水及び水酸化アルミニウムを含有する均一なエチレングリコール液を調製した。また、チタンテトラ−n−ブチレートをエチレングリコール90部に添加し、チタンテトラ−n−ブチレートを含有する均一なエチレングリコール液を調製した。
【0047】
一方、高純度テレフタル酸とエチレングリコールから常法に従って製造した、触媒を含有しないオリゴマーを250℃で溶融し、該溶融物に、先に調製した水酸化テトラエチルアンモニウム、水及び水酸化アルミニウムを含有するエチレングリコール液を最終的に得られるポリエステル中でのアルミニウム原子の含有量が50ppmとなるように添加し、さらにチタンテトラ−n−ブチレートを含有するエチレングリコール液を最終的に得られるポリエステル中でのチタン化合物原子の含有量が50ppmとなるように添加し、最後に酢酸コバルト4水塩をコバルト原子の含有量が20ppmとなるように添加した。その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし常圧に戻し重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングしてポリエステルのペレットを得た。
【0048】
得られたポリマの固有粘度は0.68、カルボキシル末端基量29当量/ton、ポリマの色調はL=59、a=0.6、b=5.0であった。また蛍光X線で分析し、アルミニウム原子及びチタン原子成分含有量がそれぞれ50ppmであることを確認した。
【0049】
このように重合反応性、ポリマ特性とも良好なポリエステルのペレットを得た。
【0050】
このペレットを乾燥した後、エクストルーダ型紡糸機に供給し、紡糸温度295℃で溶融紡糸した。このときフィルターとして絶対濾過精度10μmの金属不織布を使用し、口金は0.6mmφの丸孔を用いた。口金から吐出した糸を長さ30cm、内径25cmφ、温度300℃の加熱筒で徐冷後、チムニー冷却風を当てて冷却固化し、給油した後、引き取り速度550m/分で引き取った。この未延伸糸を延伸温度95℃で延伸糸の伸度が14〜15%となるように適宜延伸倍率を変更しながら延伸した後、熱処理温度220℃、リラックス率2.0%で熱処理し延伸糸を得た。
【0051】
溶融紡糸工程においては、紡糸時の濾圧上昇はほとんど認められず、また延伸時の糸切れもほとんどなく成形加工性の良好なポリマであった。
【0052】
実施例2〜10、比較例1〜3
金属化合物またはアルカリの種類、量を変更する以外は実施例1と同様にしてポリマを重合し、溶融紡糸を行った。結果を表1及び表2に示した。
【0053】
本発明の特許請求の範囲にあるものはポリマ物性及び溶融紡糸工程とも良好に推移したが、三酸化アンチモン単独で重合したものや本発明の特許請求の範囲外のものは溶融紡糸工程において濾圧上昇が顕著となったり、糸切れが多く発生し成形加工性に劣るものであった。
【0054】
尚、製糸性において濾圧や糸切れは種々の要因によって引き起こされるが、ポリマ中の異物もその主原因の一つである。実施例において製糸工程で濾圧上昇がないか、ほとんど認められなかったものを良好とした。実施例6や7においては若干の濾圧上昇が認められるが、通常の濾過フィルター交換周期に影響を与えない程度であり、許容範囲内と判断された。また糸切れについても、実施例において糸切れが発生しないか、ほとんど発生しなかったものを良好とした。実施例6や7においては良好レベルの水準のバラツキ上限で推移したものであり、操業性の観点からは許容範囲内と判断された。
【0055】
【表1】
【表2】
【0056】
【発明の効果】
本発明のポリエステルの製造方法及び溶液で得られるポリエステルは成形加工性に優れ、繊維用、フイルム用、ボトル用等の成形体の製造において口金汚れ、濾圧上昇、糸切れなどの問題が解消される。
Claims (13)
- 芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体とのエステル化反応またはエステル交換反応により得られた生成物を重縮合せしめてポリエステルを製造する方法において、重縮合触媒としてアルミニウム化合物及びチタン化合物を使用することを特徴とするポリエステルの製造方法。
- 得られるポリエステル組成物に対して、アルミニウム化合物及びチタン化合物をアルミニウム原子及びチタン原子換算でそれぞれ1〜500ppm添加することを特徴とする請求項1記載のポリエステルの製造方法。
- 得られるポリエステル組成物に対して、アルミニウム化合物及びチタン化合物をアルミニウム原子及びチタン原子換算の合計量で2〜500ppm添加することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項記載のポリエステルの製造方法。
- 重縮合触媒としてコバルト化合物を、アルミニウム原子及びチタン原子の合計量とコバルト原子のモル比が0.5〜20((Al+Ti)/Co)となるように添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のポリエステルの製造方法。
- ポリエステルの製造方法において、得られるポリエステルに対して、アルカリを50〜5000ppm触媒に対し添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のポリエステルの製造方法。
- アルミニウム化合物がアルミニウムの水酸化物、塩化物、水酸化塩化物及び酢酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のポリエステルの製造方法。
- チタン化合物がチタンのアルコキシド、脂肪族カルボン酸塩、芳香族多価カルボン酸またはその無水物とチタンのアルコキシドとの生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のポリエステルの製造方法。
- コバルト化合物がコバルトの塩化物、硝酸塩、炭酸塩、カルボン酸塩及び酢酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項記載のポリエステルの製造方法。
- アルカリが含窒素化合物であることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項記載のポリエステルの製造方法。
- 含窒素化合物が第3アミン化合物または第4アンモニウム化合物であることを特徴とする請求項9記載のポリエステルの製造方法。
- アルミニウム化合物をあらかじめ、アルカリを含有する水または有機溶媒に混合した後、該混合物として添加することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載のポリエステルの製造方法。
- ポリエステルが主としてポリエチレンテレフタレートからなるポリマーであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載のポリエステルの製造方法。
- 繊維用途に用いることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項記載のポリエステルの製造方法。
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