JP3649476B2 - 積層体 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、特定のポリアミドの層に対して金属層が接合している積層構造部分を有する積層体および該積層体からなる印刷回路または印刷回路用材料に関するものであり、本発明の積層体は、その優れた耐熱性、寸法安定性、耐剥離性、耐水性、耐薬品性などの特性を活かして、印刷回路や印刷回路用材料などとして電気・電子工業で極めて有効に使用することができ、更には電磁波シールド材、ランプリフレクターなどの反射体、金属代替装飾成形品などの用途においても有効に使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子・電気工業分野において機器の小型化、軽量化などの要求からフレキシブルプリント配線板(以下「FPC」ということがある)の需要が増大しつつある。このFPCの製造に当たっては、一般に、プラスチックからなる基材フイルムの少なくとも一方の面に銅箔などの金属箔を積層し、次いで金属箔に回路パターンを印刷した後不要な金属部分をエッチング等によって除いて回路を形成し、更に回路面に保護フイルムをラミネートするという工程が広く採用されている。そしてFPCにおける基材フイルムおよび保護フイルムとしては、ポリイミドフイルム、ポリエステルフイルムが多用されているが、特にFPCへの部品の実装時にハンダ浴にFPCを浸漬する必要があるため、ハンダ浴の高温に耐え得る高い耐熱性が要求されており、かかる点から、耐熱性に優れるポリイミドフイルムが広く用いられている。
【0003】
そして、FPCの基材フイルムとしてポリイミドフイルムを用いる場合は、ポリイミドフイルムに金属箔を直接そのまま接着することが困難であるために、ゴム系接着剤、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤、アクリル系接着剤などの接着剤を用いて金属箔を基材フイルムに接着させることが一般に行われている。しかしながら、上記した接着剤はその耐熱性が必ずしも充分ではないことにより高温で接着強度の低下が生じ易く、そのためFPCの耐熱温度が実際に用いられる接着剤の耐熱温度で左右されてしまい、ポリイミドフイルムが本来有する耐熱性が充分に活かされない場合が多い。
【0004】
また、最近、接着剤を用いずに基材フイルムに金属箔を熱融着によって接着して積層する方法が提案されているが、従来汎用されているポリイミドフイルムは溶融しないために熱融着法は採用できない。一方、熱融着が可能な樹脂フイルムとしてはポリエステルフイルムなどを挙げることができるが、ポリイミドフイルムに比べて耐熱性が低く、耐熱温度に限界がある。
【0005】
また、ポリイミドフイルムと金属箔を接着剤を用いて接着する代わりに、金属箔上にポリイミド前駆体の有機溶媒溶液を塗布し、それを乾燥した後にイミド化して金属箔上にポリイミドフイルム層を形成する方法も知られている。しかしながら、この方法による場合は、金属箔上に施したポリイミド前駆体をイミド化するために加熱すると、水分などの飛散によって表面荒れが生じて平滑なポリイミドフイルム層が形成されない。しかも、ポリイミドフイルム層と金属箔との接着強度が低く、商品価値の高い製品が得られない。その上、金属箔上にポリイミド前駆体の溶液を塗布した後、乾燥し、イミド化するという多段階の工程が必要であり、工程的に複雑であり、生産性が低いという欠点がある。
【0006】
一方、FPC以外の用途に用いられるプラスチックフイルムと金属箔との積層体としては、テレフタル酸単位含量が45〜80モル%である芳香族ジカルボン酸単位と炭素数6〜18の脂肪族アルキレンジアミン単位とからなるポリアミドから形成された延伸フイルムをアルミニウム箔と積層してなる包装用フイルムが知られている(特開平3−253324号公報)。しかしながら、この積層フイルムは包装に用いることを専ら意図して開発されているために、FPCにおけるハンダ付け作業などにおけるような極めて高温での耐熱性は何ら意図されていない。そして、本発明者らが、この積層フイルムの耐熱性などについて実際に検査したところ、FPCなどが用いられる使用雰囲気下での温度変化に対しては、ポリイミドフイルムと金属箔との積層体などと比較して著しく不安定であり、FPCなどのような高温での耐熱性が要求される用途には全く使用できないことが判明した。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、FPCなどにおいて要求されるような高温での耐熱性に優れ、且つ耐水性、寸法安定性、耐薬品性などの特性にも優れていて、プラスチック層と金属層との剥離が生じず、しかも接着剤を用いずに熱融着によって簡単に且つ強固に積層一体化して製造することのできる、FPCやその他の用途に有効に使用し得るプラスチックと金属との積層体を提供することである。
そして、本発明の目的は、上記した優れた特性を有するプラスチックと金属との積層体から形成した各種製品、特に、印刷回路や印刷回路用材料などを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、金属層に対して積層するプラスチックについてその素材面から種々検討を重ねてきた。その結果、ジカルボン酸単位としてテレフタル酸単位を特定以上の割合で有し且つジアミン単位として特定の脂肪族ジアミン単位を特定以上の割合で有するポリアミドが、高温での耐熱性に極めて優れており、しかも耐水性、寸法安定性、耐薬品性などの特性にも優れていて、ポリアミド層と金属層との剥離が生じないこと、その上接着剤を用いなくても熱融着によって金属と強固に積層一体化することができて簡単な工程で生産性よく積層体にすることができることを見出した。更に、本発明者らは、それにより得られる該特定のポリアミド層と金属層とを有する積層体が、電気・電子工業で広く用いられている印刷回路、印刷回路用材料をはじめとして、電磁波シールド材、ランプリフレクターなどの反射体、金属代替装飾品、その他の用途に極めて有効に使用でき、特に印刷回路または印刷回路用材料として好適であることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、特定のポリアミド層と金属層が接合している積層構造部分を少なくとも有している積層体であって、前記特定のポリアミド層が、ジカルボン酸単位とジアミン単位とから実質的になるポリアミドであって、ジカルボン酸単位の85モル%以上がテレフタル酸単位であり、ジアミン単位の60モル%以上が1,9−ノナンジアミン単位および2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位であり、ジアミン単位における1,9−ノナンジアミン単位:2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比が60:40〜99:1であり、且つ濃硫酸中30℃で測定した極限粘度[η]が0.6〜3.0dl/gであるポリアミド[以下このポリアミドを「ポリアミド(A)」と略記することがある]からなる層であることを特徴とする積層体である。
【0011】
更に、本発明は、上記した積層体からなる印刷回路または印刷回路用材料を包含する。
【0012】
以下本発明について詳細に説明する。
上記した本発明において、「特定のポリアミド層と金属層が接合している積層構造部分を少なくとも有している積層体」とは、本発明の積層体が、上記した特定のポリアミド(A)(すなわちテレフタル酸単位の割合が85モル%以上であるジカルボン酸単位と、1,9−ノナンジアミン単位および2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の合計の割合が60モル%以上であるジアミン単位から実質的になるポリアミド)の1つの層と1つの金属層のみからなる2層構造の積層体に限定されるものではなく、上記したポリアミド(A)の層と金属層とが接合した積層構造部分をその層構造の少なくとも一部として有している積層体のいずれをも包含することを意味しており、上記したポリアミド(A)の層と金属層とが接合した積層構造部分を有している限りは、本発明の積層体は2層構造であっても、3層構造であっても、またはそれ以上の多層構造であってもよい。
【0013】
したがって、本発明の積層体の例としては、何ら限定されるものではないが、金属層/ポリアミド(A)層の2層構造の積層体、金属層/ポリアミド(A)層/金属層の3層構造の積層体、ポリアミド(A)層/金属層/ポリアミド(A)層/金属層の4層構造の積層体、金属層/ポリアミド(A)層/金属層/ポリアミド(A)層/金属層の5層構造の積層体、それらの積層体において金属層が表面または裏面に存在する場合にその金属層を他のプラスチック層で被覆した積層体、金属層/ポリアミド(A)層の積層構造部分が更に他の材料からなる層に接合している積層体[例えば金属層/ポリアミド(A)層/他の材料の層/ポリアミド(A)層/金属層など]を挙げることができる。
【0014】
そして、本発明の積層体では、ポリアミド(A)の層は、膜状、フイルム状、シート状または板状などの平面状物の形態であるのが好ましい。また、本発明の積層体では、金属層が箔状、膜状、シート状、板状などの平面状であっても、または線状、点状、格子状やその他の不連続の形態であってもよい。したがって本発明の積層体には、限定されるものではないが、例えば、ポリアミド(A)のフイルム、シート、板などの平面材と金属箔や金属膜とからなる、印刷回路用材料、電磁波シールド材、ランプリフレクター、金属板代替装飾体などとして好適に用いられる積層体;ポリアミド(A)のフイルムまたはシートと金属箔または金属膜との積層体からなる印刷回路用材料に対して回路印刷、エッチング処理および場合により表面保護用ラミネートを施して得られる金属層が線状などの回路形態になっている(すなわち金属層が不連続層の形態になっている)印刷回路;更には前記の印刷回路に電装品等を取り付けた電気・電子部品などが包含される。また、本発明の積層体は必ずしも平板状でなくてもよく、各々の用途に応じて各種の形状に成形、加工されていてもよい。
【0015】
そして、本発明の積層体は、上記したように、ポリアミド層を構成するポリアミド(A)がジカルボン酸単位とジアミン単位とから実質的になるポリアミドであって、そのジカルボン酸単位の85モル%以上がテレフタル酸単位であることが必要である。ジカルボン酸単位に占めるテレフタル酸単位の割合が85モル%未満であると、ポリアミドの耐熱性、耐薬品性などの物性が低下して、その結果、本発明の積層体の耐熱性や耐薬品性も低下し、印刷回路用材料などに用いる場合にハンダ耐熱性などが低下する。積層体の耐熱性、耐薬品性などの点から、ジカルボン酸単位の90モル%以上がテレフタル酸単位からなっているのが好ましく、100モル%(すなわちジカルボン酸単位のすべて)がテレフタル酸単位であるのがより好ましい。
【0016】
主単位であるテレフタル酸単位と共に存在し得る他のジカルボン酸単位の例としては、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、ジ安息香酸、4,4’−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;またはそれらのポリアミド(A)形成性誘導体に由来する単位を挙げることができ、ポリアミド(A)は上記した単位の1種または2種以上を有していることができる。また、本発明で用いるポリアミド(A)は、上記したジカルボン酸単位と共に、ポリアミド(A)の溶融成形が可能な範囲内で、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸成分に由来する構造単位を有していてもよい。
【0017】
また、本発明の積層体では、ポリアミド層を構成するポリアミド(A)におけるジアミン単位の60モル%以上が、1,9−ノナンジアミン単位および2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位である。積層体の耐熱性、耐薬品性、柔軟性などの点から、ポリアミド(A)におけるジアミン単位の70モル%以上が1,9−ノナンジアミン単位であるのが好ましく、80モル%以上が1,9−ノナンジアミン単位であるのがより好ましい。
【0018】
ジアミン単位における主な単位である1,9−ノナンジアミン単位および2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位と共に、40モル%未満の少割合で存在し得る他のジアミン単位の例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンなどの直鎖脂肪族ジアミン;2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミンなどの分岐鎖状脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン;p−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、4、4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどの芳香族ジアミンなどに由来するジアミン単位を挙げることができ、本発明で用いるポリアミド(A)は上記したジアミン単位の1種または2種以上を有していることができる。
【0019】
ジアミン単位として、1,9−ノナンジアミン単位および2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を有するポリアミド(A)は、耐熱性、耐水性、可撓性、フイルムやシートなどへの成形性、該ポリアミド(A)の層を有する積層体の耐熱性、耐水性、可撓性などの点で優れている。ポリアミド(A)は、そのジアミン単位の60モル%以上が1,9−ノナンジアミン単位および2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位であり、且つジアミン単位における1,9−ノナンジアミン単位:2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比が60:40〜99:1であり、80:20〜95:5であるのが好ましい。
【0020】
また、本発明の積層体では、ポリアミド層を構成するポリアミド(A)の分子鎖の末端基の10%以上、好ましくは40%、より好ましくは70%以上が末端封止剤により封止されているのが、ポリアミド(A)の成形性の向上、ポリアミド(A)よりなるフイルムやシート、ひいては積層体におけるポリアミド(A)層の表面平滑性などの点から好ましい。
【0021】
ポリアミド(A)の末端封止剤としては、ポリアミド(A)の分子鎖の末端に存在するアミノ基またはカルボキシル基と反応性を有する単官能性の化合物であればいずれでもよく特に制限されず、例えばモノカルボン酸、モノアミン、無水フタル酸などの無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類などを挙げることができる。それらのうちでも、末端基との反応性および封止末端の安定性などの点から、モノカルボン酸またはモノアミンが好ましく、取り扱いの容易性などの点からモノカルボン酸がより好ましい。
【0022】
末端封止剤として使用されるモノカルボン酸としては、ポリアミド(A)の末端アミノ基と反応性を有するモノカルボン酸であれば特に制限はなく、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸などを挙げることができ、それらのモノカルボン酸は単独で使用してあっても2種以上を併用してあってもよい。そのうちでも、ポリアミド(A)の末端アミノ基との反応性、封止末端の安定性、価格などの点から、ポリアミド(A)の末端が酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸などによって封止されているのが好ましい。そして、ポリアミド(A)の末端基をモノカルボン酸で封止する場合は、ポリアミド(A)の製造に際してジカルボン酸成分に対するジアミン成分の使用モル数を僅かに多くして、ポリアミド(A)の両末端がアミノ基になるようにしてモノカルボン酸末端封止剤を加えるのがよい。
【0023】
また、末端封止剤としてモノアミンを使用する場合は、ポリアミド(A)の末端カルボキシル基と反応性を有するモノアミンであれば特に制限がなく、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミンなどの脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどの脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミンなどの芳香族モノアミンなどを挙げることができ、それらのモノアミンは単独で使用してあっても、または2種以上を併用してあってもよい。そのうちでも、反応性、沸点、封止末端の安定性および価格などの点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンが好ましく用いられる。ポリアミド(A)の末端基をモノアミンで封止する場合は、ポリアミド(A)の製造に際してジカルボン酸成分に対するジアミン成分の使用モル数を僅かに少なくして、ポリアミド(A)の両末端がカルボキシル基になるようにしてモノアミン末端封止剤を加えるのがよい。
【0024】
末端封止剤の使用量は、用いる末端封止剤の反応性、沸点、反応装置の形式、反応条件などに応じて変わり得るが、通常、ポリアミド(A)を形成するのに用いるジカルボン酸成分とジアミン成分の総モル数に対して、0.1〜15モル%の範囲内の量で使用するのが好ましい。
【0025】
そして、本発明の積層体で用いるポリアミド(A)は、濃硫酸中30℃で測定した極限粘度[η]が0.6〜3.0dl/gであり、0.9〜2.0dl/gであるのが好ましい。そのような極限粘度[η]のポリアミド(A)を用いていることにより、ポリアミド(A)のフイルム、シート、板などを成形性良く製造することができ、しかも得られるフイルム、シート、板などの力学的特性が優れているので、それを用いて得られる本発明の積層体の力学的特性も優れたものとなる。
【0026】
本発明の積層体で用いるポリアミド(A)の製造法は特に制限されず、ジカルボン酸成分とジアミン成分との反応によって結晶性ポリアミド(A)を製造する従来既知の任意の方法で製造することができる。何ら限定されるものではないが、本発明で用いるポリアミド(A)は、例えば、ジカルボン酸ジクロライドとジアミンを原料として用いる溶融重合法または界面重合法;ジカルボン酸とジアミンを原料として用いる溶融重合法、固相重合法、溶融押出重合法などにより製造することができる。
【0027】
より具体的には、本発明で用いるポリアミド(A)は、例えば次のようにして製造することができる。
すなわち、ジアミン成分およびジカルボン酸成分に対して、必要に応じて触媒や上記した末端封止剤を最初に加えて、ナイロン塩を形成させた後、200〜250℃の温度で反応させて、濃硫酸中30℃における極限粘度[η]が0.15〜0.25dl/gであるプレポリマーを製造し、そのプレポリマーを更に固相重合するかまたは溶融押出重合させることによって、本発明で使用する上記したポリアミド(A)、特に濃硫酸中30℃で測定した極限粘度[η]が0.6〜3.0dl/gであるポリアミド(A)を円滑に製造することができる。その際に、プレポリマーの極限粘度[η]を前記した0.15〜0.25dl/gの範囲にしておくと、その後の重合段階においてカルボキシル基とアミノ基のモルバランスのずれや重合速度の低下が少なくなり、しかも分子量分布の小さな、各種物性や成形性に優れたポリアミド(A)が得られるようになる。そして、プレポリマーを固相重合してポリアミド(A)を製造する場合は、減圧下または不活性ガス流通下に200〜250℃の範囲内の温度で固相重合すると、重合速度が大きくなって生産性が良好になり、しかも生成するポリアミド(A)の着色やゲル化が抑制される。また、プレポリマーを溶融押出重合してポリアミド(A)を製造する場合は、370℃以下の温度で重合を行うと、ポリアミド(A)の分解が防止されて劣化のないポリアミド(A)を得ることができる。
【0028】
また、ポリアミド(A)の製造に用いる触媒としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらの金属塩(カリウム、ナトリウム、マグネシウム、バナジウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、錫、タングステン、ゲルマニウム、チタン、アンチモンなどの金属塩)、エステル類(エチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、イソデシルエステル、オクタデシルエステル、デシルエステル、ステアリルエステル、フェニルエステルなど)などを挙げることができる。
【0029】
また、本発明の積層体におけるポリアミド(A)の層は、必要に応じて、臭素化ポリマー、酸化アンチモン、金属水酸化物などの難燃剤、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、チオ系などの有機系酸化防止剤、ヨウ化銅、酢酸銅、ヨウ素カリウムなどの無機系酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、結晶核剤、有機および無機フィラー、他のポリマーなどを含有していてもよい。これらの添加剤および/またはポリマーのポリアミド(A)中への添加方法は特に制限されず、例えば、ポリアミド(A)の製造時に添加しても、重縮合反応後のポリアミド(A)にドライブレンド法または押出機などを用いる溶融混練法などによって添加することができる。
【0030】
そして本発明の積層体では、ポリアミド(A)の層は、上記したように、好ましくは膜状、フイルム状、シート状または板状などの平面状の形態になっているが、金属と積層する前のポリアミド(A)の膜、フイルム、シート、板などは、熱可塑性樹脂を用いる従来公知の溶融成形法に製造すればよく、その製造法は特に制限されず、例えばTダイ押出成形法、インフレーション押出成形法、流延法などによって製造することができる。
【0031】
ポリアミド(A)よりなる膜、フイルム、シート、板などは溶融成形後にいったん冷却すると延伸が困難となる場合があるので、延伸した膜、フイルム、シート、板などを得たい場合は、成形装置から吐き出して冷却するまでの間に延伸処理を施すのが好ましい。延伸を行う場合は一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、機械軸方向(MD方向)およびそれと直交する方向(TD方向)の両方向に同時に延伸する二軸延伸を行うと、MD方向およびTD方向の機械的特性が共に優れるフイルムやシートなどを得ることができるので望ましい。二軸延伸を行う場合は、MD方向の延伸倍率を1.0以上、特に1.25〜15程度にし、TD方向の延伸倍率を1.0以上、特に1.5〜20程度にするのがよく、そのような二軸延伸は、インフレーション押出成形法により容易に行うことができる。
【0032】
本発明の積層体におけるポリアミド(A)層の厚さ、ひいては金属層と積層する前のポリアミド(A)の平面状物(膜、フイルム、シート、板など)の厚さは、積層体の用途や使用形態などに応じて調節することができる。例えば、本発明の積層体を印刷回路用材料として用いる場合は、積層体におけるポリアミド(A)層の厚さまたは金属層と積層する前のポリアミド(A)の平面状物の厚さは、500μm以下であるのが、積層体の柔軟性の点から好ましく、0.001〜500μmであるのがより好ましく、1〜250μmであるのが更に好ましい。また、本発明の積層体を、例えば、電磁波シールド材、ランプリフレクターなどの反射体、金属代替装飾成形品などに用いる場合は、積層体におけるポリアミド(A)層の厚さまたは金属層と積層する前のポリアミド(A)のフイルム、シート、板などの平面状物の厚さは、10μm〜100mm程度であるのが、積層体の強度などの点から好ましく、50μm〜10mm程度であるのがより好ましい。
【0033】
そして、上記した特定のポリアミド(A)より形成される膜、フイルム、シート、板など平面状物は、その熱膨脹係数が小さく、通常、1.0×10-4(1/℃)以下であるので、ポリアミド(A)の平面状物を金属層(特に銅箔)に熱融着させて積層体を製造する場合に、金属層(特に銅箔)とポリアミド(A)とで熱膨脹係数にあまり差がなく、積層体を常温に戻しても積層体の湾曲や層間剥離などのトラブルが生じず、また積層体をハンダ浴などの高温にさらした際にもやはり積層体の湾曲や層間剥離などのトラブルが生じにくい。
【0034】
また、積層体を250℃以上の高温にさらす場合(例えばFPCで用いるハンダ浴の温度は通常250〜260℃程度である)には、積層体におけるポリアミド(A)層の250℃における熱収縮率を2%以下、特に0.5%以下にしておくと、高温にさらしても積層体にシワの発生、層間剥離などのトラブルが生じなくなるので望ましい。積層体におけるポリアミド(A)層の熱収縮率は、ポリアミド(A)を構成するジカルボン酸単位やジアミン単位の組成を調節したり、金属層と積層する前のポリアミド(A)のフイルム、シート、板などの成形条件などを選ぶことによって、調節することができる。
【0035】
そして、本発明の積層体では、金属層を構成する金属の種類は、積層体の用途や使用態様などに応じて選択することができ、代表例としては、銅、金、銀、アルミニウム、ニッケル、コバルト、鉄、前記の金属を含む合金などを挙げることができる。また、本発明の積層体では、金属層の厚さも積層体の用途や使用態様などに応じて適宜調節することができ特に制限されず、金属層は金属箔、金属膜(金属蒸着膜など)、金属シート、金属板などから形成することができるが、一般に金属層の厚さが0.001μm〜1mm程度であるのが好ましい。本発明の積層体を特に印刷回路用材料として用いる場合は、金属層が金属箔から形成されているのが好ましく、その際の金属箔としては、電解銅箔、圧延銅箔、ベリリウム銅箔、金箔、銀箔、アルミニウム箔、ニッケル箔、コバルト箔などを挙げることができる。そのうちでも、電解銅箔、圧延銅箔、ベリリウム銅箔が好ましく、表面粗さの大きい電解銅箔がより好ましい。特に、本発明の積層体が印刷回路用材料である場合は、前記した金属箔の厚さは、0.001〜500μmであるのが好ましく、1〜500μmであるのがより好ましく、5〜500μmであるのが更に好ましい。
【0036】
本発明の積層体の製造法は、ポリアミド(A)の層と金属層とを強固に且つ円滑に接合し得る方法であればいずれでもよく特に制限されず、例えば熱融着によってポリアミド(A)層と金属層を接合する方法、金属蒸着によってポリアミド(A)層上に金属層を形成する方法などを挙げることができ、場合によってはポリアミド(A)層と金属層を接着剤によって接合する方法などを採用することができる。そのうちでも、ポリアミド(A)層と金属層を接着剤を用いずに熱融着によって直接接合する方法が好ましく、熱融着法による場合は、積層体の耐熱性やその他の物性が、接着剤の耐熱性やその他の物性に左右されることがなくなり、ポリアミド(A)層と金属層の性質をそのまま直接活かすことができ、しかも積層体を熱融着という簡単な工程で生産性よく製造することができる。しかも、ポリアミド(A)層と金属層との熱融着により得られる積層体は、ポリアミド(A)層と金属層との接着強度が高く、表面状態も良好であって、耐熱性、寸法安定性、耐水性、耐薬品性などに優れており、好ましい。
【0037】
そして、本発明の積層体を熱融着法で製造する場合は、ポリアミド(A)の軟化点以上、好ましくは融点以上の温度[ポリアミド(A)の化学構造によって異なるが通常310℃以上の温度]で、熱プレス、熱ローラなどを用いてポリアミド(A)よりなる膜、フイルム、シート、板などの平面状物と金属箔、金属シート、金属板などを熱融着(圧着)する方法が好ましく採用される。また、前記の方法に代えて、ポリアミド(A)をフイルム、シート、板などの平面状物に溶融成形する際に、溶融成形と同時に金属箔、金属シート、金属板などと熱融着させて本発明の積層体を製造してもよい。
【0038】
ポリアミド(A)層が膜状、フイルム状、シート状、板状などの平面状の形態であり且つ金属層が膜状、箔状、シート状、板状などの平面状の形態となっている本発明の積層体は、上記したように印刷回路用材料、電磁波シールド材、ランプリフレクターなどの反射体、金属代替装飾成形品、その他の多くの用途に有効に使用することができるが、そのうちでも特にFPC(フレキシブルプリント配線板)として極めて有用である。そして、本発明の積層体からFPCを製造する際のFPCの製法は特に制限されず、プラスチック層と金属層とからなる積層体からFPCを製造するのに従来から用いられている方法のいずれもが採用できるが、通常、本発明の積層体における金属層(金属箔層)に電気回路パターンを印刷した後、不要な金属部分をエッチングを行って除去して電気回路を形成し、次いで回路上に保護フイルムなどをラミネートした後、更に穴あけ、打ち抜きなどを行って所定の形状にしてFPCを製造する方法が、好ましく用いられる。その場合に、電気回路を多層に有するFPCを製造するときは、ポリアミド(A)フイルムと金属箔との積層−回路パターンの印刷−エッチング処理の一連の工程を繰り返して電気回路を多層に有する積層体を形成した後スルーホール加工などを行う方法を採用すればよい。
【0039】
そして、本発明の積層体を用いてFPCを製造する上記した場合において、FPC表面にラミネートする保護フイルムは、ポリアミド(A)のフイルムであっても、ポリイミドやその他のプラスチックからなるフイルムであってもよい。保護フイルムとしてポリイミドフイルムなどの他のプラスチックフイルムを用いる場合は、保護フイルムがFPCの最外層に位置し外気と接触して水分を吸収するとFPCにおける線間(回路間)の絶縁抵抗が低下することがあるので、水蒸気透過係数が3.0g/100平方インチ・24hr・ml以下のものを保護フイルムとして使用するのが好ましい。
【0040】
上記した説明から明らかなように、本発明の積層体には、FPCなどに加工する前のポリアミド(A)と金属層とからなる積層体のみならず、FPCなどに加工した後の積層体をも包含しており、したがってFPCなどに加工した後の本発明の積層体では、金属層は、箔、シート、板などの平面状の形態ではなく、電気回路などにみるように、線状、点状、格子状などの不連続な形態の層をなしていることになる。
【0041】
また、本発明の積層体を、例えば電磁波シールド材、ランプリフレクターなどの反射体、金属代替装飾成形品、その他の用途に用いる場合は、それぞれの用途に応じて、ポリアミド(A)と金属層を積層して得られた積層体に対して、曲げ加工、湾曲加工、絞り加工、打ち抜き加工、その他の加工、更には成形加工などを行って、それぞれの用途や使用状況に適した所定の形状や構造にすればよく、本発明の積層体には、そのような加工や、成形加工などを行ったポリアミド(A)の層と金属層との接合構造を有する製品も包含される。
【0042】
【実施例】
以下に本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。以下の例において、ポリアミドの極限粘度[η]、ポリアミドフイルムの融点、ポリアミドフイルムまたはポリイミドフイルムの熱膨脹係数および熱収縮率、並びに積層体の剥離強度、ハンダ耐熱温度および耐薬品性を下記のようにして測定または評価した。
【0043】
ポリアミドの極限粘度[η]:
ポリアミドを濃硫酸に溶かして、濃度が0.05dl/g、0.1dl/g、0.2dl/gおよび0.4dl/gの試料溶液をそれぞれ調製し、各試料溶液の30℃における滴下時間(秒)を測定して、下記の数式▲1▼より各試料溶液の固有粘度を算出し、それを濃度0に外挿した値を極限粘度[η](dl/g)とした。
【0044】
【数1】
ηinh(dl/g)={ln(t1/t0)}/c ▲1▼
式中、ηinh=各試料溶液の固有粘度(dl/g)
t0=溶媒(濃硫酸)の流下時間(秒)
t1=各試料溶液の流下時間(秒)
c =試料溶液中の試料(ポリアミド)の濃度(g/dl)
【0045】
ポリアミドフイルムの融点:
示差走査熱量計(メトラー社製「DSC30」)を用いて、試料フイルム(ポリアミドフイルム)を20℃/分の速度で昇温して完全に融解させた後、50℃/分の降温速度で50℃まで急冷し、再び20℃/分の速度で昇温した時に現れる吸熱ピークの位置を測定し、これを融点とした。
【0046】
ポリアミドフイルムまたはポリイミドフイルムの熱膨脹係数:
フイルムをいったん150℃まで加熱し、それを降温速度10℃/分で徐々に冷却していったときの80〜150℃の領域における寸法変化を熱機器分析(TMA)(装置:メトラー社製「TMA40」)によって測定し、下記の数式▲2▼によりフイルムの熱膨脹係数を算出した。
【0047】
【数2】
熱膨脹係数(1/℃)={(L1−L2)/(T1−T2)}・(1/L0) ▲2▼
式中、L0:初期の試料サイズ(mm)
L1:150℃における試料長(mm)
L2:80℃における試料長(mm)
T1:評価開始温度=150℃
T2:評価終了温度=80℃
【0048】
ポリアミドフイルムまたはポリイミドフイルムの熱収縮率:
フイルムのMD方向およびTD方向に一定長さの印を付け、250℃に設定した高温熱風乾燥機(TABAI製)内に無緊張下に30分間放置した後、熱処理前後の長さの変動を測定し、下記の数式▲3▼によりフイルムの熱収縮率を算出し、MD方向およびTD方向の平均値を採った。
【0049】
【数3】
熱収縮率(%)={(L0−L1)/L0}×100 ▲3▼
式中、L0=熱処理前の試長(印を付けた箇所までの長さ)
L1=熱処理後の試長(印を付けた箇所までの長さ)
【0050】
積層体の剥離強度:
(1)常温下での剥離強度:
下記の実施例および比較例において製造された積層体をMD方向に平行に切断して幅が20mmの試験片(積層体)を作製し、その試験片を用いてJIS C 5012に準じて90°剥離法による剥離試験を行い、その際の剥離強度を測定した。
(2)ヒートサイクル試験後の剥離強度:
上記(1)と同様にして作製した幅が20mmの試験片(積層体)を、−42±2℃のメタノール/ドライアイス溶液中に5分間浸漬した後、200±2℃の高温熱風乾燥機(TABAI製)内に5分間放置する処理を20回繰り返した後、試験片(積層体)の剥離強度を上記の(1)と同様にして測定した。
【0051】
積層体のハンダ耐熱温度:
積層体を所定の温度のハンダ浴に10秒間浸漬した後に取り出して、フクレおよびハガレ(層間剥離)が生じない最高温度を調べて、その温度をハンダ耐熱温度とした。
【0052】
積層体の耐薬品性:
積層体をメタノール、50%苛性ソーダ水溶液、および10%硫酸のそれぞれに23℃で7日間浸漬した後の外観変化の有無を肉眼で観察して耐薬品性の評価を行った。
【0053】
《参考例 1》[ポリアミドの製造]
テレフタル酸3272.9g(19.70モル)、1,9−ノナンジアミン3165.8g(20.0モル)、安息香酸73.27g(0.60モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物6.5g(前記のポリアミド原料3者の合計に対して0.1重量%)および蒸留水2.2リットルを、内容積20リットルのオートクレーブに入れ、窒素置換した。100℃で30分間撹拌した後、2時間かけて内部温度を210℃に昇温した。この時、オートクレーブは22kg/cm2まで昇圧した。そのまま1時間反応を続けた後230℃に昇温し、その後2時間の間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を22kg/cm2に保ちながら反応させた。次に、30分かけて圧力を10kg/cm2まで下げ、さらに1時間反応させて、極限粘度[η]が0.25dl/gのプレポリマーを得た。このプレポリマーを100℃の温度で減圧下に12時間乾燥した後、2mm以下の大きさにまで粉砕した。これを温度230℃、圧力0.1mmHgの条件下に10時間固相重合し、融点316℃、極限粘度[η]=1.35dl/gの白色のポリアミドを得た。
【0054】
《参考例2〜7》[ポリアミドの製造]
下記の表1に示したジカルボン酸成分、ジアミン成分および末端封止剤(安息香酸)を表1に示した割合で用いて、参考例1と同様にして、表1に示す極限粘度[η]および融点を有するポリアミドをそれぞれ製造した。
【0055】
《参考例 8》[ポリアミドの製造]
テレフタル酸1636.4g(9.85モル)、イソフタル酸1636.4g(9.85モル)、1,9−ノナンジアミン3165.8g(20.0モル)、安息香酸73.27g(0.60モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物6.5g(前記のポリアミド原料4者の合計に対して0.1重量%)および蒸留水2.2リットルを、内容積20リットルのオートクレーブに入れ、窒素置換した。100℃で30分間撹拌した後、2時間かけて内部温度を210℃に昇温した。この時、オートクレーブは22kg/cm2まで昇圧した。そのまま1時間反応を続けた後230℃に昇温し、その後2時間の間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を22kg/cm2に保ちながら反応させた。次に、30分かけて圧力を大気圧まで下げながら内部温度を260℃まで昇温し、約20mmHgの減圧下でさらに2時間反応させて、オートクレーブ下部のフラッシュバルブより290℃で内容物を取り出して、極限粘度[η]が1.40dl/gのポリアミドを得た。このポリアミドは非結晶であるため、融点は測定できなかった。
【0056】
【表1】
【0057】
《実施例1〜3および参照例1〜3》
(1) 上記の参考例1〜5で製造したポリアミドのそれぞれを単軸押出機(アイケージー社製「TMS65−36」)に供給し、各ポリアミドの融点よりも10〜20℃高い温度で加熱混練してTダイより溶融押出しして、幅600mm、厚さ100μmのポリアミドフイルムを製造した。得られたポリアミドフイルムの熱膨脹係数および熱収縮率を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった(実施例1〜3および参照例1〜2)。
(2) 上記(1)で得られたポリアミドフイルムを厚さ35μmの電解銅箔と重ね合わせて、ポリアミドの融点よりも10〜30℃高い下記の表2に示す圧着温度で、2kg/cm2の圧力下に加熱圧着して(フィード速度:1m/分)、ポリアミドフイルム層と銅箔とからなる積層体をそれぞれ製造した。得られたそれぞれの積層体の剥離強度、ハンダ耐熱温度および耐薬品性を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであった(実施例1〜3および参照例1〜2)。
(3) また、上記の参考例6で製造したポリアミドを用いて、上記の(1)と同様にしてフイルムの製造を行ったところ、ポリアミドの極限粘度[η]が低いために自己支持性のフイルムが製造できなかったので積層体を製造しなかった(参照例3)。
【0058】
《比較例 1》
(1) 上記の参考例7で製造したポリアミドを用いて、実施例1〜3および参照例1〜2の(1)と同様にしてポリアミドフイルムを製造した。得られたポリアミドフイルムの熱膨脹係数を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。また、得られたポリアミドフイルムの熱収縮率を上記した方法で測定しようとしたところ、加熱によりフイルムが著しく変形してしまい、熱収縮率の測定ができなかった。
(2) 上記(1)で得られたポリアミドフイルムを用いて、下記の表2に示す圧着温度を採用して、実施例1〜3および参照例1〜2の(2)におけるのと同様にしてポリアミドフイルムと銅箔の積層体を製造した。得られた積層体の剥離強度、ハンダ耐熱温度および耐薬品性を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0059】
《比較例 2》
(1) 上記の参考例8で製造したポリアミドを用いて、実施例1〜3および参照例1〜2の(1)と同様にしてポリアミドフイルムを製造した。得られたポリアミドフイルムの熱膨脹係数を上記した方法で測定しようとしたところ、加熱による変形が著しく、熱膨脹係数の測定ができなかった。また、得られたポリアミドフイルムの熱収縮率を上記した方法で測定しようとしたところ、加熱によりフイルムが著しく変形してしまって熱収縮率の測定もできなかった。
(2) 上記(1)で得られたポリアミドフイルムを用いて、下記の表2に示す圧着温度を採用して、実施例1〜3および参照例1〜2の(2)におけるのと同様にしてポリアミドフイルムと銅箔の積層体を製造した。得られた積層体の剥離強度、ハンダ耐熱温度および耐薬品性を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0060】
《比較例 3》
ポリアミドフイルムの代わりに市販のポリイミドフイルム(宇部興産株式会社製「ユーピロン」:厚さ100μm)を用いて、接着剤としてエポキシ系プリプレグ(ニッカン工業株式会社製「SAFV」)を使用して、下記の表2に示す圧着温度を採用して、実施例1〜3および参照例1〜2の(2)におけるのと同様にしてポリアミドフイルムと銅箔の積層体を製造した。得られた積層体の剥離強度、ハンダ耐熱温度および耐薬品性を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
なお、この比較例3で用いたポリイミドフイルムの熱膨脹係数および熱収縮率を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0061】
【表2】
【0062】
上記の表2の結果から、ジカルボン酸単位の85モル%以上がテレフタル酸単位であり、ジアミン単位が1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位からなっていて(1,9−ノナンジアミン単位:2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比が60:40〜99:1の範囲内)、且つ濃硫酸中30℃で測定した極限粘度[η]が0.6〜3.0dl/gの範囲にある参考例2、3または5のポリアミド[すなわちポリアミド(A)]の層と銅箔層とからなる実施例1〜3の積層体は、接着剤を用いなくてもポリアミド層と銅箔層とが熱融着によって強固に接合されていて、常温における剥離強度およびヒートサイクル試験後の剥離強度が高く、ポリアミド層と銅箔層との層間剥離がないこと、しかも耐熱温度(ハンダ耐熱温度)が高くてハンダ付け作業などに十分に耐えられること、その上耐薬品性にも極めて優れていることがわかる。
【0063】
それに対して、ジカルボン酸単位におけるテレフタル酸単位の割合が60モル%であり且つジアミン単位が1,6−ヘキサンジアミン単位である参考例7のポリアミドは熱収縮率の測定が不能であるほど耐熱収縮性に極めて劣っており、しかも参考例7のそのポリアミドから得られたフイルムと銅箔とを積層してなる比較例1の積層体は、ヒートサイクル試験後に変形が生じ耐剥離性に劣っており、さらにハンダ耐熱温度が250℃未満であってハンダ付け作業に適しておらず、その上耐薬品性にも劣っていて薬品にさらされるとポリアミドフイルム層と銅箔層との剥離が生ずることがわかる。
【0064】
また、表2の結果からは、ジカルボン酸単位におけるテレフタル酸単位の割合が50%で且つジアミン単位が1,9−ノナンジアミン単位である参考例8のポリアミドから得られるフイルムは、熱膨脹係数の測定が不能なほど熱膨脹が著しく、しかも熱収縮率の測定が不能であるほど耐熱収縮性に極めて劣っており、したがってその参考例8のポリアミドから得られたフイルムと銅箔とを積層してなる比較例2の積層体は、ヒートサイクル試験後に変形が生じ耐剥離性に劣っており、さらにハンダ耐熱温度が250℃未満であってハンダ付け作業に適しておらず、その上耐薬品性にも劣っていて薬品にさらされるとポリアミドフイルム層と銅箔層との剥離が生ずることがわかる。
【0065】
更に、表2の結果から、ポリイミドフイルムの層と銅箔層とからなる比較例3の積層体は、ポリイミドフイルム層と銅箔層との間の接着が弱く、常温およびヒートサイクル試験後の両層間の剥離強度が実施例1〜3の積層体に比べて極めて低いこと、しかも積層体のハンダ耐熱温度が250℃未満であってハンダ付け作業に十分に耐えられず、その上耐薬品性にも劣っていて薬品にさらされるとポリイミドフイルム層と銅箔層との剥離が生ずることがわかる。
【0066】
【発明の効果】
本発明の積層体は、耐熱性、寸法安定性、耐剥離性、耐水性、耐薬品性などの特性に優れており、ポリアミド(A)層と金属層との間の層間剥離が生じないので、前記した特性を活かして、印刷回路や印刷回路用材料をはじめとして、電磁波シールド材、ランプリフレクターなどの反射体、金属代替装飾成形品、その他の用途に極めて有効に使用することができる。そして、本発明の積層体は、特にハンダ付け時の高温(通常250℃以上)に充分に耐え得る高い耐熱性を備えているので、FPC(フレキシブルプリント配線板)を製造するための印刷回路用材料として特に有用である。
更に、本発明の積層体は、接着剤を用いなくても、熱融着による積層法によって簡単な工程で生産性よく製造することができる。そして、それにより得られる本発明の積層体は、接着剤の物性などに左右されることがなく、積層体を構成しているポリアミド(A)および金属層の特性を充分に活かすことができ、しかもポリアミド(A)層と金属層との接合が極めて強固である。
Claims (6)
- 特定のポリアミド層と金属層が接合している積層構造部分を少なくとも有している積層体であって、前記特定のポリアミド層が、ジカルボン酸単位とジアミン単位とから実質的になるポリアミドであって、ジカルボン酸単位の85モル%以上がテレフタル酸単位であり、ジアミン単位の60モル%以上が1,9−ノナンジアミン単位および2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位であり、ジアミン単位における1,9−ノナンジアミン単位:2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比が60:40〜99:1であり、且つ濃硫酸中30℃で測定した極限粘度[η]が0.6〜3.0dl/gであるポリアミドからなる層であることを特徴とする積層体。
- ポリアミド層と金属層とが熱融着により接合している請求項1の積層体。
- ポリアミド層が膜状、フイルム状、シート状または板状であり、金属層が箔状、膜状、シート状または板状である請求項1または2の積層体。
- ポリアミド層が膜状、フイルム状、シート状または板状であり、金属層が線状、点状または格子状をなしている請求項1または2の積層体。
- 請求項1〜4のいずれか1項の積層体からなる印刷回路。
- 請求項1〜4のいずれか1項の積層体からなる印刷回路用材料。
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