JP3648008B2 - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤ強度(プランジャーエネルギー値)と耐久性とを両立して向上しうる空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、道路網の整備化、車両の高速化、高性能化にともない、例えばトラック、バス用等の大型車両用タイヤ、及び小型トラック用タイヤ等においてもラジアル化が促進されている。又このようなラジアルタイヤでは、タイヤが路面の鋭い岩石等の異物を踏んだときにベルト層が破断してバーストするのを防止するために、タイヤ強度(プランジャー値)を向上させる必要がある。
【0003】
なおベルト破壊のメカニズムとして、以下のことが考えられる。
<1> タイヤが岩石等を踏んだとき、ベルト層はタイヤ半径方向内側にたわむと同時にベルトコード角度が変化するが、最内側に配される第1プライのプライ強度が大き過ぎる時には、その外側の第2、第3プライのコードの動きが抑制されすぎてコード角度が変化できず、この第2、第3プライがコード破断しやすくなる;
<2> 又ベルト層がタイヤ半径方向内側にたわむ時、岩石等から離れる側のプライほど大きな引っ張り歪みが発生し、従って、第3プライより第2プライの方が破断損傷しやすくなる;
【0004】
従って、このようなメカニズムに鑑み、例えば特開平8−244407号公報には、コード角度を35〜80度とした第1プライと、コード角度を15〜30度とした第2、第3プライとを有するベルト層において、前記第1プライのプライ強度を第2、第3プライのプライ強度に比べて減じることにより、エンベロープ効果を高めて前記タイヤ強度を向上させる技術が開示されている。
【0005】
このものは、第1プライにおけるコード角度を大きくかつそのプライ強度を減じることによって、第2、第3プライへのコード抑制力を緩和し、タイヤが岩石等を踏んだとき、ベルト層のたわみに準じてベルトコード角度を柔軟に変化せしめ、この第2、第3プライのコード破断を抑制して、ベルト層の破壊エネルギー値を総合的に向上させるものであり、又引張り歪みが最も大となる第1プライでは、大きなコード角度の付与によって屈曲に対して柔軟となり、プライ強度を減じたときにもコード破断は免れる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、第1プライのプライ強度を減じた前記タイヤにあっては、加硫時に高内圧の蒸気・ガスがタイヤ内腔に充填された時、第1プライがプライ強度の高い第2、第3プライ側に押し付けられることとなり、この第1プライのコードが第2プライに向かって湾曲を繰り返したり、又部分的に湾曲を発生したりしやすくなる。その結果、第1プライと第2プライとの間でコード間距離がバラつき、コード間距離の部分的な減少を招くこととなる。
【0007】
又第1プライと第2プライとの間のプライ強度に差があるために、タイヤ走行時の歪みが、このプライ間に集中する傾向にあり、前記コード間距離の部分的な減少と相俟って、プライルースを誘発させるなどトレッド部の耐久性を低下させるという問題がある。
【0008】
なお従来にあっては、第1プライのプライ強度を減じる手段として、例えば特開昭52−116503号公報、及び特開平8118912号公報の各表に記載のように、第2、第3プライに比してコード打込み数、及び/又はコード自体の引張り破断強度を減じることが行われている。
【0009】
そこで本発明は、コードの打込み数を増加させながらコードの引張り破断強度を減じることにより第1のベルトプライのプライ強度を低下せしめ、しかもこの時の打込み数の増加の度合いC(N) と、引張り破断強度の減少の度合いC(E) との比を特定することを基本として、耐久性を高く維持しながら前記タイヤ強度の向上効果を達成しうる空気入りラジアルタイヤの提供を目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の空気入りラジアルタイヤは、トレッド部の内方かつカーカスの半径方向外側に、スチールフィラメントを用いたベルトコードからなり前記カーカス側から半径方向外側に向かって順次重なる第1のベルトプライ、第2のベルトプライ及び第3のベルトプライを具えるベルト層を設けた空気入りラジアルタイヤであって、
前記第1のベルトプライのベルトコードのタイヤ赤道に対するコード角度α1 は35〜80度かつ第2、3の各ベルトプライのベルトコードのタイヤ赤道に対するコード角度α2、α3は夫々15〜30度、しかも第2のベルトプライのベルトコードのタイヤ赤道に対する傾斜の向きは第3のベルトプライのベルトコードの傾斜の向きと逆向きとするとともに、
前記第1、2、3の各ベルトプライのベルトコードの1本当りの引張り破断強度E1、E2、E3と各ベルトプライの単位巾当りのベルトコードの打込み数N1、N2、N3の積であるプライ強度をS1、S2、S3としたとき、第2、3の各ベルトプライのプライ強度S2、S3の平均値(S2+S3)/2は、第1のベルトプライのプライ強度S1 より大であり、しかも前記引張り破断強度E1、E2、E3と打込み数N1、N2、N3とは次式(1) 、
C(N) /C(E) ≧0.36 ---(1)
ここで
C(N) ={N1−(N2+N3)/2}/{(N2+N3)/2} ---(2)
C(E) ={(E2+E3)/2−E1}/{(E2+E3)/2} ---(3)
かつC(N) は正、
を満たすことを特徴としている。
【0011】
なお前記プライ強度S2、S3の平均値(S2+S3)/2を、プライ強度S1 の1.35倍以上とすることが、タイヤ強度をより高めるうえで好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態の一例を、空気入りラジアルタイヤが小型トラック用のタイヤである場合を例にとり、図面に基づき説明する。
図1において、空気入りラジアルタイヤ1(以下タイヤ1という)は、トレッド部2と、その両端からタイヤ半径方向内方にのびる一対のサイドウォール部3と、各サイドウオール部3のタイヤ半径方向内端に配されるビード部4とを具える。又タイヤ1は、前記ビード部4、4間に架け渡されるトロイド状のカーカス6と、このカーカス6の半径方向外側に配置される強靭なベルト層7とによって補強される。
【0013】
前記カーカス6は、前記トレッド部2からサイドウオール部3をへてビード部4のビードコア5の廻りで折返される1枚以上、本例では内外2枚のカーカスプライ6A、6Bからなり、各カーカスプライ6A、6Bは、カーカスコードをタイヤ赤道Cに対して75〜90度の角度で配列する。カーカスコードとしては、スチールコードの他、芳香族ポリアミド、ナイロン、レーヨン、ポリエステルなどの有機繊維コード等が使用できる。
【0014】
又ベルト層7は、カーカス6側からトレッド面2Aに向かって順に重ね合わされる第1のベルトプライ11、第2のベルトプライ12、第3のベルトプライ13から形成される。第1のベルトプライ11のタイヤ軸方向のプライ巾W1は、第2のベルトプライ12のプライ巾W2に比して小かつ第3のベルトプライ13のプライ巾W3と略等しく、最大巾となるプライ巾W2をトレッド巾TWの0.80〜0.95倍の範囲、本例では0.90倍とすることにより、トレッド部2の略全巾をタガ効果を有して補強する。
【0015】
前記ベルトプライ11、12、13は、スチールフィラメントを撚り合わせてなるベルトコード(スチールコード)20を互いに平行に配列したスチールプライから形成され、図2に示すように、第1、第2のベルトプライ11、12の各ベルトコード20A、20Bは、タイヤ赤道Cに対して同向き(例えば右上がりの向き)で傾斜し、又第3のベルトプライ13のベルトコード20Cは前記ベルトコード20A、20Bとは逆向き(例えば左上がりの向き)で傾斜する。
【0016】
又前記ベルトコード20A、20B、20Cのタイヤ赤道Cに対するコード角度をα1、α2、α3としたとき、35度≦α1 ≦80度、15度≦α2≦30度、15度≦α3≦30度、としている。これによって、ベルト層7は、ベルトコード20A、20B、20Cがトライアングル構造を構成し、ベルト剛性を高めて必要な操縦安定性を維持するとともに、コード角度が小なベルトコード20B、20Cが強いタガ効果を発揮し、タイヤの寸法変化を抑制する。
【0017】
又前記第1、2、3のベルトプライ11、12、13のプライ強度をS1、S2、S3としたとき、第2、3のベルトプライ12、13のプライ強度S2、S3の平均値(S2+S3)/2を、第1のベルトプライ11のプライ強度S1より大としている。言い換えると、第1のベルトプライ11は、そのプライ強度S1を他のプライ強度S2、S3に比して減じている。このため、前記高いコード角度α1の採用と相俟って、前記トライアングル構造におけるベルトコード20B、20Cの動きが適度に緩和される。その結果、タイヤが岩石等を踏んだときのトレッドのたわみに応じてベルトコード20B、20Cの角度が柔軟に変化でき、第2、3のベルトプライ12、13のコード破断を抑制し、ベルト層の破壊エネルギー値、すなわちタイヤ強度を向上できる。
【0018】
なお前記プライ強度Sとは、ベルトコード20の1本当りの引張り破断強度Eと、ベルトプライのコードと直角な方向の単位巾、例えば5cm巾当りのベルトコード20の打込み数Nとの積E×Nで示す、ベルトプライの単位巾当りの引っ張り破断強度であって、S1=E1×N1、S2=E2×N2、S3=E3×N3で表される。
【0019】
又トレッド部2の耐久性を維持するために、本願では、前記プライ強度S1の低減を、打込み数N1の増加と引張り破断強度E1の減少とによって行うとともに、この時の打込み数N1の増加の度合いC(N) と、引張り破断強度E1の減少の度合いC(E) との比を0.36以上、すなわち
C(N) /C(E) ≧0.36 ---(1)
に設定している。なおC(N) 、C(E) は、
C(N) ={N1−(N2+N3)/2}/{(N2+N3)/2} ---(2)
C(E) ={(E2+E3)/2−E1}/{(E2+E3)/2} ---(3)
で定義されるとともに、C(N)は正の値としている。
【0020】
ここでC(N) は、ベルトプライ12、13の打込み数N2、N3の平均値(N2+N3)/2に対するベルトプライ11の打込み数N1 の増加の割合を示しており、又C(E) は、ベルトプライ12、13の引張り破断強度E2、E3の平均値(E2+E3)/2に対するベルトプライ11の引張り破断強度E1の減少の割合を示す。
【0021】
このように、前記プライ強度S1の低減に際し、打込み数N1が特定の割合で増加させるため、その増加の分だけ、前記タイヤ加硫時の高内圧の負荷に起因する第1ベルトプライ11のコードの湾曲変形が減じ、コード間距離の部分的な減少の発生が抑制される。又前記プライ強度の差に基づく歪みの応力は、もっぱらベルトコード20A、20B間の最短距離部分に集中するが、前記ベルトコード20Aの打込み数N1が増加するに従い、この最短距離部分の形成箇所は増加する。その結果、個々の最短距離部分に作用する応力は分散されて低下する。そしてこれらの相互作用によって、ベルトプライ11、12間に発生しやすいプライルース等の損傷を効果的に抑制でき、前記タイヤ強度の向上と耐久性の向上とを両立して達成しうるのである。
【0022】
前記タイヤ強度の向上効果をより高く発揮させるためは、プライ強度S2、S3の平均値(S2+S3)/2がプライ強度S1の1.35倍以上、さらには1.7倍以上であることが好ましい。しかしながら、5.0倍より大の時、前記ベルトコード20のトライアングル構造がアンバランスとなって、ベルト剛性が大巾に減じ、偏磨耗を誘発するとともに、コーナリングフォースの低減によって操縦安定性を低下する恐れがある。従ってその上限は、好ましくは3.5倍以下さらに好ましくは2.4倍以下である。
【0023】
又タイヤ強度の向上効果をより確実なものとするためには、平均値だけでなくプライ強度S2、S3のそれぞれをプライ強度S1より大とすることが好ましく、より好ましくはプライ強度S2、S3は、それぞれプライ強度S1の1.35倍以上、さらには1.7倍以上であり、又その上限は、5.0倍以下、好ましくは3.5倍以下、さらには2.4倍以下が良い。
【0024】
他方、耐久性の向上効果をより高く発揮させるためは、前記比C(N) /C(E) を0.50以上として、打込み数N1の増加の割合を高めることが好ましい。しかしながら、2.0を超えると、打込み数N1が過大となってタイヤ製造上問題となるほか、引張り破断強度E1が過小となってベルト剛性の大巾な低下を招く。従ってその上限は2.0以下が好ましい。
【0025】
又前記耐久性の向上効果をより確実なものとするためには、打込み数N2に対する打込み数N1の増加の割合、すなわちC2(N)=(N1−N2)/N2と、引張り破断強度E2に対する引張り破断強度E1の減少の割合、すなわちC2(E)=(E2−E1)/E2との比C2(N)/C2(E)自体を0.35以上、さらには0.5以上とするのが良く、又その上限を2.0以下とするのが好ましい。
【0026】
又同様に、打込み数N3に対する打込み数N1の増加の割合、すなわちC3(N)=(N1−N3)/N3と、引張り破断強度E3に対する引張り破断強度E1の減少の割合、すなわちC3(E)=(E3−E1)/E3との比C3(N)/C3(E)自体も、0.35以上、さらには0.5以上とするのが良く、又その上限を2.0以下とするのが好ましい。
【0027】
なお本願においては、第3のベルトプライ13のさらに外側に、第4のベルトプライを設けてもよいが、特に本願の作用効果の妨げとならないよう、そのコード角度を、前記コード角度α3と5度以下の角度差でできるだけ近似させ、又プライ強度を、プライ強度S3より小とすることが好ましい。
【0028】
【実施例】
タイヤサイズが7.50R16でありかつ図1に示す構成をなすタイヤを表1の仕様に基づき試作するとともに、各試供タイヤのタイヤ強度(プランジャーエネルギー値)、耐久性及びタイヤ重量をそれぞれ測定し、その結果を表1に記載した。なお試供タイヤにおけるベルトコードの構成及びベルトコードの打ち込み数以外のベルト層の仕様、及びカーカスの仕様は表2に示す如く各タイヤとも共通としている。
【0029】
・タイヤ強度:
JISD4230に定められるタイヤ強度試験に準じ、使用リム6.00×16、内圧700kPaの条件の基で、試供タイヤのプランジャーエネルギー値を測定し、比較例品1を100として指数化した。指数が大なほど優れている。
測定条件は、
プランジャー径:φ19.0mmで先端が最大半径、
押込みスピード:50.0±2.5mm/min、
タイヤ強度(プランジャーエネルギー):効力(kgf)×侵入深さ(mm)÷2 で算出。
【0030】
・耐久性:
試供タイヤを6.00×16のリムに装着しかつ内圧700kPaを充填するとともに、荷重1930kgf、速度50km/hのもとでドラム上を走行させ、外観目視にて確認可能な損傷が発生した時点でテストを終了し、、損傷発生距離L1と完走距離L0(30000km)との比L1/L0×100によってなる指数によって評価した。
表中、損傷状態における※1、※2、OKは、下記の状態を意味する。
※1−−−ベルトプライルースによりトレッド部に膨れが発生。
※2−−−完走後の解体にてベルトプライルースの発生が発見された。
OK−−−完走後に解体しても損傷は発見できず。
【0031】
・タイヤ重量
従来例1を100として指数で表示した。数値が小さいほど軽量であることを示す。
【0032】
【表1】
Figure 0003648008
【0033】
【表2】
Figure 0003648008
【0034】
表1に示すように、プライ強度の比(S2+S3)/S1が大なほどタイヤ強度が高まるが、ベルトコードの打込み数N1のある程度の増加が伴わないときには、耐久性を著しく損ねるのが確認できる。又実施例の如く比C(N) /C(E) を0.35以上として、打込み数N1を指定の割合で増加することによって、耐久性を高く維持しながら前記タイヤ強度の向上効果を達成しうるのが確認できる。
【0035】
【発明の効果】
本発明の重荷重用ラジアルタイヤは叙上の如く構成しているため、タイヤ強度と耐久性とを両立して向上しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すタイヤの子午断面図である。
【図2】ベルト層のみを取り出して示す展開図である。
【符号の説明】
2 トレッド部
6 カーカス
7 ベルト層
11 第1のベルトプライ
12 第2のベルトプライ
13 第3のベルトプライ
20、20A、20B、20C ベルトコード
C タイヤ赤道

Claims (2)

  1. トレッド部の内方かつカーカスの半径方向外側に、スチールフィラメントを用いたベルトコードからなり前記カーカス側から半径方向外側に向かって順次重なる第1のベルトプライ、第2のベルトプライ及び第3のベルトプライを具えるベルト層を設けた空気入りラジアルタイヤであって、
    前記第1のベルトプライのベルトコードのタイヤ赤道に対するコード角度α1は35〜80度かつ第2、3の各ベルトプライのベルトコードのタイヤ赤道に対するコード角度α2、α3は夫々15〜30度、しかも第2のベルトプライのベルトコードのタイヤ赤道に対する傾斜の向きは第3のベルトプライのベルトコードの傾斜の向きと逆向きとするとともに、
    前記第1、2、3の各ベルトプライのベルトコードの1本当りの引張り破断強度E1、E2、E3と各ベルトプライの単位巾当りのベルトコードの打込み数N1、N2、N3の積であるプライ強度をS1、S2、S3としたとき、第2、3の各ベルトプライのプライ強度S2、S3の平均値(S2+S3)/2は、第1のベルトプライのプライ強度S1より大であり、しかも前記引張り破断強度E1、E2、E3と打込み数N1、N2、N3とは次式(1) を満たすことを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
    C(N)/C(E)≧0.36 ---(1)
    ここで
    C(N) ={N1−(N2+N3)/2}/{(N2+N3)/2} ---(2)
    C(E) ={(E2+E3)/2−E1}/{(E2+E3)/2} ---(3)
    かつC(N) は正とする。
  2. 前記プライ強度S2、S3の平均値(S2+S3)/2は、プライ強度S1の1.35倍以上であることを特徴とする請求項1記載の空気入りラジアルタイヤ。
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