JP2008143347A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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辰作 片山
Seiji Koide
征史 小出
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誠 石山
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Abstract

【課題】スパイラルベルトを用いた高性能タイヤの操縦安定性能を損なうことなく、ベルト端部における亀裂の発生を抑制して、高速耐久性能および高荷重時耐久性能をいずれも向上させた空気入りタイヤを実現する。
【解決手段】カーカスプライ1と、そのタイヤ半径方向外側に配置されたスパイラルベルト2と、カーカスプライ1とスパイラルベルト2との間に配置された2枚の交錯ベルト層3と、を備える空気入りタイヤである。交錯ベルト層3のうちカーカスプライに隣接する内層側交錯ベルト層3aの配設幅BWが、トレッド幅TWおよびスパイラルベルトの配設幅SWより広く、内層側交錯ベルト層のタイヤ半径方向外側に配置された外層側交錯ベルト層3bの配設幅BWがスパイラルベルトの配設幅SWより狭く、かつ、内層側交錯ベルト層3aのコード方向弾性率が、外層側交錯ベルト層3bのコード方向弾性率より低い。
【選択図】図1

Description

本発明は空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称する)に関し、詳しくは、実質的にタイヤ周方向に延びる補強コードからなるスパイラルベルトを備える空気入りタイヤの改良に関する。
一般に、高性能乗用車用タイヤでは、タイヤの回転速度が高速となるために遠心力の影響が大きく、タイヤのトレッド部分が外側に膨張してしまい、操縦安定性能を害する場合がある。このため、タイヤのトレッド部分に、有機繊維やスチールの補強部材を、タイヤ赤道面と概略平行となるように螺旋状に巻きつけるベルト補強層、いわゆるスパイラルベルトを配置するタイヤ構造が開発されている(例えば、特許文献1等)。また、近年では、トラックバス用のタイヤや自動二輪車用のタイヤにおいても、同様の構造が見られるようになってきている。
上記スパイラルベルトの補強部材としては、例えば、ナイロン繊維や芳香族ポリアミド(アラミド)繊維、スチール素線等が用いられている。中でも、芳香族ポリアミド繊維やスチール素線は、高温時においても伸張せずにトレッド部分の膨張を抑制することができるため、有効な補強部材として注目されている。特に、芳香族ポリアミドは、スチールに比べて軽量であるため、タイヤ重量を低減することができ、かつ、操縦安定性能に優れるという利点を有する。これらの部材をタイヤのクラウン部分に巻き付けると、いわゆる「たが」効果、すなわち、風呂桶のたがのようにタイヤのクラウン部分を押さえつけて、高速でタイヤが回転した場合でもタイヤが遠心力で膨らむことなく、高い操縦安定性能や耐久性を示す効果を高めることができる。これらスパイラルベルトを巻き付けたタイヤは、高速走行時における操縦安定性能に優れ、トラクションが非常に高いことが知られている。
また、空気入りタイヤに関する改良技術として、例えば、特許文献2には、操縦安定性、耐偏摩耗性を共に効果的に向上させることを目的として、トレッドとベルト層およびベルト強化層との間に薄肉の緩衝ゴム層を配置するとともに、トレッドと緩衝ゴム層との間に、内部にタイヤ赤道に対して45〜90度の範囲で傾斜した補強コードが埋設された補強層を配置した空気入りタイヤが開示されている。
特開2002−59706号公報(特許請求の範囲等) 特開2006−151212号公報(特許請求の範囲等)
上記のように、スパイラルベルトを適用したタイヤにおいては、高速走行時における操縦安定性能に優れ、トラクションが非常に高いというメリットが得られるが、その反面、タイヤ周方向に巻き付けられた補強部材が張力を持つため硬く振る舞い、タイヤ周方向に対し所定の角度を持つ交錯ベルト層のベルト端部とスパイラルベルトとの間で、その間に介在するゴム(すなわち、交錯ベルト層のコーティングゴムやスパイラルベルトのコーティングゴム)のせん断歪が大きくなって、亀裂が発生しやすいという問題があった。特に近年、車両の高速化や空気入りタイヤの偏平化が進行して、このような交錯ベルト層とスパイラルベルトとの間のセパレーションをより大幅に抑制する必要性が高まってきている。
また一方、空気入りタイヤのトレッド外表面には通常クラウンアールが設けられており、タイヤ赤道に接近するにしたがって外径が大きくなるような凸状の形状を呈しているが、この径差のために、タイヤが転動する際には、トレッド中央部の外表面では駆動方向の周方向接線力が、トレッド幅方向の両端部では制動方向の周方向接線力が、それぞれ発生し、この異なる方向の接線力により、特にトレッド両端部で滑りが発生して耐偏摩耗性能が悪化するという現象が生ずる。したがって、上記スパイラルベルトを備えるタイヤにおいても、かかるタイヤ中央部と幅方向端部とにおける偏摩耗の発生を抑制することが望まれている。
そこで本発明の目的は、交錯ベルト層とスパイラルベルトとの間におけるセパレーション発生の大幅な抑制を実現することにより、操縦安定性能を維持しつつ、高速走行時の耐久性能を向上させた空気入りタイヤを提供することにあり、さらには、耐久性能面だけでなく、耐偏摩耗性能についても向上させた空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者らは、上記のベルト層とスパイラルベルトとの間で生ずるセパレーションの原因について検討を行った結果、以下の挙動がセパレーション発生の主要因であることを見出した。
すなわち、2枚の交錯ベルト層のベルト端部は、路面に接地したときにタイヤ周方向(赤道方向)にずれる動きをして、周方向に伸びようとする。これは、トレッド部にトレッドセンターからトレッド端に向かうに従い外径が小さくなるよう径差が設けられていることによる。このような径差は接地時にトレッド部(交錯ベルト層およびスパイラルベルト等)が幅方向に曲げ変形することで吸収されるわけであるが、タイヤは周方向にも360度丸いため、周方向についても丸みを吸収しようとして、半径の小さいベルト端部が伸びて、平らな路面に接触することになる。
ここで、スパイラルベルト内には周方向に延びにくい補強素子が埋設されているため、スパイラルベルトは周方向にほとんど延びることができない。しかし、前記のように交錯ベルト層のベルト端部は周方向に伸びようとする。そのため、交錯ベルト層のベルト端部とスパイラルベルトとの重なり合う部分で、前記変形の差による周方向のズレが生じる。これが歪みとなって両者の間に介在するゴムに集中し、この部分から亀裂が生じやすくなる。つまり、交錯ベルト層の両端部とスパイラルベルトとの間に大きな周方向のせん断歪みが発生して亀裂を起こすのである。
また、交錯ベルト層とスパイラルベルトとの間でのセパレーションは、交錯ベルト層のベルト端部から亀裂が生じることで発生する場合がほとんどである。そして、生じた亀裂がスパイラルベルトに伝わり、スパイラルベルトのコード素子がこれを覆うゴムから剥離して、大きな故障に至ることになる。
これに対する対策としては、故障のきっかけであるベルト端部の亀裂発生を防ぐことが有効である。前述したように、この亀裂の要因は、交錯ベルト層の端部とスパイラルベルトとの変形の差である歪みであり、また、交錯ベルト層の端部が同一個所で重なり合っている場合に特に歪は大きくなりやすいため、まず、交錯ベルト層の端部をスパイラルベルトに重ならないようにして、かつ、交錯ベルト層のベルト端部同士の距離をできるだけ取ることが有効である。
一方、交錯ベルト層の端部をスパイラルベルトに重ならないよう配置しても、完全にはこの歪をなくすことができない。この歪の大きさは、交錯ベルト層とスパイラルベルトとの間に介在するゴムに、各ベルトの変形差がどれだけ集中したかにより決まるため、歪を小さくするためには、この一層に集中する歪を分散させることも有効である。具体的には、スパイラルベルトから離れた層に配置するベルトほど剛性の低い部材で構成し、歪を他の層に拡散させることが考えられる。
上記のような観点から、本発明者らは、上記亀裂の発生メカニズムについてさらに研究を重ねた結果、以下に示すようなベルト構造とすることにより、亀裂の発生をより効果的に防止することができることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の空気入りタイヤは、少なくとも1枚のカーカスプライと、該カーカスプライのタイヤ半径方向外側に配置され、単線または並列した複数本のコードをゴム中に埋設してなる帯状のゴム被覆コードが実質的にタイヤ周方向に向かう角度で螺旋状に巻回されてなる少なくとも1枚のスパイラルベルトと、該カーカスプライとスパイラルベルトとの間に配置され、タイヤ周方向に対し15°〜75°の角度をなす2枚の交錯ベルト層と、を備える空気入りタイヤにおいて、
前記交錯ベルト層のうち、前記カーカスプライに隣接する内層側交錯ベルト層の配設幅が、トレッド幅および前記スパイラルベルトの配設幅より広く、該内層側交錯ベルト層のタイヤ半径方向外側に配置された外層側交錯ベルト層の配設幅が該スパイラルベルトの配設幅より狭く、かつ、
前記内層側交錯ベルト層のコード方向弾性率が、前記外層側交錯ベルト層のコード方向弾性率より低いことを特徴とするものである。
本発明における前記交錯ベルト層の具体的構成としては、前記内層側交錯ベルト層の補強コードが芳香族ポリアミドの撚りコードからなり、かつ、前記外層側交錯ベルト層の補強コードがスチールコードからなることが好ましく、前記内層側交錯ベルト層の補強コードがカーボン繊維の撚りコードからなり、かつ、前記外層側交錯ベルト層の補強コードがスチールコードからなることも好ましく、また、前記内層側交錯ベルト層の補強コードがガラス繊維の撚りコードからなり、かつ、前記外層側交錯ベルト層の補強コードがスチールコードからなることも好ましい。
また、本発明においては、前記交錯ベルト層の補強コードがスチールコードからなり、かつ、前記内層側交錯ベルト層の補強コードの撚り数が、前記外層側交錯ベルト層の補強コードの撚り数より多いことが好ましく、前記交錯ベルト層の補強コードが有機繊維からなり、かつ、前記内層側交錯ベルト層の補強コードの撚り数が、前記外層側交錯ベルト層の補強コードの撚り数より多いことも好ましい。
さらに、前記交錯ベルト層の補強コードが同じ撚り数を有するスチールコードからなり、かつ、前記内層側交錯ベルト層の補強コードのコード径が、前記外層側交錯ベルト層の補強コードのコード径より細いことが好ましく、前記交錯ベルト層の補強コードが同じ撚り数を有する有機繊維からなり、かつ、前記内層側交錯ベルト層の補強コードのコード径が、前記外層側交錯ベルト層の補強コードのコード径より細いことも好ましい。
さらにまた、前記交錯ベルト層の補強コードが同じ撚り数を有するスチールコードからなり、かつ、前記内層側交錯ベルト層の補強コードの打ち込み数が、前記外層側交錯ベルト層の補強コードの打ち込み数より少ないことが好ましく、前記交錯ベルト層の補強コードが同じ撚り数を有する有機繊維からなり、かつ、前記内層側交錯ベルト層の補強コードの打ち込み数が、前記外層側交錯ベルト層の補強コードの打ち込み数より少ないことも好ましい。
さらにまた、本発明においては、前記スパイラルベルトのタイヤ半径方向外側に、厚さ0.5〜3.0mmの緩衝ゴム層と、タイヤ周方向に対し45〜90°の角度をなす補強ベルト層とが、ともにトレッド幅の30〜100%の配設幅で、順次配設されてなることが好ましい。
本発明によれば、2枚の交錯ベルト層の配設幅およびコード方向弾性率の関係を、それぞれ上記のように規定したことで、スパイラルベルトを用いた高性能タイヤにおいて、操縦安定性能を損なうことなくベルト端部における亀裂の発生を抑制して、高速耐久性能および高荷重時耐久性能をいずれも向上させた空気入りタイヤを実現することが可能となった。また、スパイラルベルトのタイヤ半径方向外側に緩衝ゴム層と補強ベルト層とを追加配置した場合には、さらに、耐偏摩耗性能向上効果についても得ることができる。
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明の一好適実施形態に係る空気入りタイヤの概略断面図を示す。図示するように、本発明の空気入りタイヤ10は、少なくとも1枚のカーカスプライ1と、そのタイヤ半径方向外側に配置された少なくとも1枚のスパイラルベルト2と、カーカスプライ1とスパイラルベルト2との間に配置された2枚の交錯ベルト層3と、を備えている。
本発明のタイヤ10は、図示するように、ベルト補強層であるスパイラルベルト2を有することが前提である。スパイラルベルト2は、単線または並列した複数本の補強コードをゴム中に埋設してなる帯状のゴム被覆コードを、実質的にタイヤ周方向に向かう角度でスパイラル(螺旋)状に巻回してなるベルトであり、一般的に、そのタイヤ周方向となす角度は5°以下である。本発明において、スパイラルベルト2の補強コードの材質としては、特に制限されるものではなく、スチールであっても有機繊維であってもよい。
また、交錯ベルト層3は、2枚にて配置され、互いに交錯している。交錯ベルト層3のタイヤ周方向に対しなす角度としては、交錯層としてベルトの面内せん断剛性を高く保つために、15°〜75°が適当である。
本発明においては、交錯ベルト層3のうち、カーカスプライ1に隣接する内層側交錯ベルト層3aの配設幅BWが、トレッド幅TWおよびスパイラルベルト2の配設幅SWよりも広く、かつ、内層側交錯ベルト層3aのタイヤ半径方向外側に配置された外層側交錯ベルト層3bの配設幅BWが、スパイラルベルト2の配設幅SWよりも狭い。これにより、交錯ベルト層3の端部が同一個所で重なり合うことで増大する歪を抑制することができる。一般的に、ベルト補強層であるスパイラルベルト2はトレッド幅TWとほぼ同等の幅で配置するため、交錯ベルト層3の端部同士に距離を持たせるためには、交錯ベルト層3のうちの一層をトレッド幅TWよりも広く、かつ、他の層をトレッド幅TWよりも狭く、配置する必要がある。ここで、内層側交錯ベルト層3aの幅をスパイラルベルト2より広く規定したのは、内層側交錯ベルト層3aの幅をスパイラルベルト2の幅よりも広く配置すると、ケースとしての剛性が向上して、タイヤ周方向への動きを抑制する効果が得られ、また、その外層側に配置したベルトの幅が狭く、端部がスパイラルベルト層と重なっていても、歪が抑制されていることから、亀裂が発生しにくいためである。本発明においては、以上の、交錯ベルト層の端部同士に距離を持たせることと、歪を抑制する効果を狙って、各交錯ベルト層の幅位置を規定したものである。
また、本発明においては、内層側交錯ベルト層3aのコード方向弾性率が、外層側交錯ベルト層3bのコード方向弾性率よりも低いことが必要である。これにより、交錯ベルト層3とスパイラルベルト2との間の一層に集中する歪を分散させる効果を得ることができる。すなわち、内層側交錯ベルト層3aに、コード方向弾性率が低い補強コードを使用することで、内層側にも歪を負担させることができ、亀裂発生部である交錯ベルト層とスパイラルベルト2との間の歪を分散・低減させることができる。なお、本発明において「コード方向弾性率」とは、引張側および圧縮側の双方の剛性を含む概念である。
本発明において、交錯ベルト層3に用いる補強コードの材質としては、上記コード方向弾性率に係る条件を満足するものであれば、特に制限されるものではなく、一般に用いられるスチール等の金属素材などを用いることができる。スチールコードからなるベルトと、芳香族ポリアミドなどの有機繊維コードからなるベルトとの組み合わせを用いることもできる。
好適には例えば、内層側交錯ベルト層3aの補強コードとして芳香族ポリアミド(アラミド)の撚りコードを用いるとともに、外層側交錯ベルト層3bの補強コードとしてスチールコードを用いることができる。一般的に、芳香族ポリアミドの方が、スチール対比コード方向弾性率が低い。そこで、交錯ベルト層の補強材として、内層側に芳香族ポリアミドを、外層側にスチールを、それぞれ使用することで、内層側交錯ベルト層3aの補強コードを外層側交錯ベルト層3bの補強コード対比コード方向弾性率が低いものとすることができ、亀裂発生部である交錯ベルト層とスパイラルベルトとの間の歪を分散・低減させることができる。
また、内層側交錯ベルト層3aの補強コードとしてカーボン繊維の撚りコードを用いるとともに、外層側交錯ベルト層3bの補強コードとしてスチールコードを用いることも好ましい。一般的に、カーボン繊維の方が、スチール対比コード方向弾性率が低い。そこで、交錯ベルト層の補強材として、内層側にカーボン繊維を、外層側にスチールを、それぞれ使用することで、内層側交錯ベルト層3aの補強コードを外層側交錯ベルト層3b対比コード方向弾性率が低いものとすることができ、この場合も、亀裂発生部である交錯ベルト層とスパイラルベルトとの間の歪を分散・低減させることができる。
さらに、内層側交錯ベルト層3aの補強コードとしてガラス繊維の撚りコードを用いるとともに、外層側交錯ベルト層3bの補強コードとしてスチールコードを用いることも好ましい。一般的に、ガラス繊維の方が、スチール対比コード方向弾性率が低い。そこで、交錯ベルト層の補強材として、内層側にガラス繊維を、外層側にスチールを、それぞれ使用することで、内層側交錯ベルト層3aの補強コードを外層側交錯ベルト層3b対比コード方向弾性率が低いものとすることができ、この場合も、亀裂発生部である交錯ベルト層とスパイラルベルトとの間の歪を分散・低減させることができる。
さらにまた、交錯ベルト層3の補強コードとしてスチールコードを用いて、内層側交錯ベルト層3aの補強コードの撚り数を、外層側交錯ベルト層3bの補強コードの撚り数より多くすることも好適である。コード素子の撚り数が多い方が、コード方向弾性率は低くなる。そこで、交錯ベルト層のうち内層側に、外層側より撚り数の多い補強コードを使用することで、内層側交錯ベルト層3aの補強コードを外層側交錯ベルト層3b対比コード方向弾性率が低いものとすることができ、この場合も、亀裂発生部である交錯ベルト層とスパイラルベルトとの間の歪を分散・低減させることができる。
ここで、この場合の補強コードの撚り数は、100mmの間に10回程度が一般的である。コードの撚り数は、撚りが少ないほどコードに剛性があるが、撚りが少ないとスチール素線がコード方向を向いているため、コードの圧縮に対して直接的な圧縮を受け、タイヤに使った場合には座屈変形を生じやすく耐久面で問題となる場合がある。逆に、撚りが多いと、コードの初期引張り剛性は低下するが、スチール素線の方向がコード方向に対して高い角度を持ってねじられるため、コード方向の圧縮を受けてもスチール素線が直接圧縮されることはなく、耐疲労性に優れたコードとなる。撚りの少ないコードは疲労性が悪く、撚りの多いコードは低歪での強度が不足する長所短所から、両者をバランスさせた10回の撚り数が一般的になっている。撚り数を多くする場合の具体的な撚り数としては、好適には15回/100mm以上であり、より好適には20回/100mm以上にすることで、十分な効果を得ることができる。なお、撚り数の上限は、30回/100mm程度である。それ以上はあまりにもネジリ量が多くなりすぎてしまいスチール素線では加工が不可能であり、実際問題として100mmの中に35ないし40回/100mmの撚りを入れるのは不可能であることによる。
さらにまた、交錯ベルト層3の補強コードとして有機繊維からなるものを用いて、内層側交錯ベルト層3aの補強コードの撚り数を、外層側交錯ベルト層3bの補強コードの撚り数より多くすることも好適である。交錯ベルト層3の補強コードとして有機繊維からなるものを用いた場合も、上記スチールコードを用いた場合と同様に、交錯ベルト層のうち内層側に、外層側より撚り数の多い補強コードを使用することで、内層側交錯ベルト層3aの補強コードを外層側交錯ベルト層3b対比コード方向弾性率が低いものとすることができ、亀裂発生部である交錯ベルト層とスパイラルベルトとの間の歪を分散・低減させることができる。
ここで、この場合の補強コードの撚り数は、100mmの間に30回程度が一般的である。コードの撚り数は、撚りが少ないほどコードに剛性があるが、撚りが少ないと繊維がコード方向を向いているため、コードの圧縮に対して繊維が直接的な圧縮を受け、タイヤに使った場合には疲労しやすく耐久面で問題が出る場合がある。逆に、撚りが多いと、コードの初期引張り剛性が低下するが、繊維の方向がコード方向に対して高い角度を持ってねじられるため、コード方向の圧縮を受けても繊維が直接圧縮されることはなく、耐疲労性に優れたコードとなる。撚りの少ないコードは疲労性が悪く、撚りの多いコードは低歪での強度が不足する長所短所から、両者をバランスさせた30回の撚り数が一般的になっている。撚り数を多くする場合の具体的な撚り数としては、好適には35回/100mm以上であり、より好適には45回/100mm以上にすることで、十分な効果を得ることができる。なお、撚り数の上限は、70回/100mm程度である。それ以上はあまりにもネジリ量が多くなりすぎてしまいコードの強度が低下してしまうこと、また、実際問題として100mmの中に80ないし90回/100mmの撚りを入れるのは不可能であることによる。
なお、本発明において補強コードに用いることができる有機繊維としては、特に制限されるものではなく、例えば、芳香族ポリアミド(アラミド)繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、炭素繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維、リヨセル繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維および脂肪族ポリケトン(PK)繊維などを挙げることができる。
さらにまた、交錯ベルト層の補強コードに同じ撚り数を有するスチールコードを用いて、内層側交錯ベルト層3aの補強コードのコード径を、外層側交錯ベルト層3bの補強コードのコード径より細くすることも好適である。コード径が細い方が、コード方向弾性率は低い。そこで、交錯ベルト層のうち内層側に、外層側よりコード径が細い補強コードを使用することで、内層側交錯ベルト層3aの補強コードを外層側対比コード方向弾性率が低いものとすることができ、亀裂発生部である交錯ベルト層とスパイラルベルトとの間の歪を分散・低減させることができる。
ここで、スチール単線のコード径は、0.18mmが一般的である。コード径を細くする場合の具体的な径としては、好適には0.15mm以下であり、より好適には0.11mm以下にすることで、十分な効果を得ることができる。なお、コード径の下限は0.02mm程度であり、それ以下では、タイヤに使用する際の十分な強度が得られない。
さらにまた、交錯ベルト層の補強コードに同じ撚り数を有する有機繊維を用いて、内層側交錯ベルト層3aの補強コードのコード径を、外層側交錯ベルト層3bの補強コードのコード径より細くすることも好適である。交錯ベルト層3の補強コードとして有機繊維からなるものを用いた場合も、上記スチールコードを用いた場合と同様に、交錯ベルト層のうち内層側に、外層側より撚り数の多い補強コードを使用することで、内層側交錯ベルト層3aの補強コードを外層側交錯ベルト層3b対比コード方向弾性率が低いものとすることができ、亀裂発生部である交錯ベルト層とスパイラルベルトとの間の歪を分散・低減させることができる。
ここで、撚った有機繊維のコード径は、0.7mmが一般的である。コード径を細くする場合の具体的な径としては、好適には0.55mm以下であり、より好適には0.4mm以下にすることで、十分な効果を得ることができる。なお、撚った有機繊維コード径の下限は0.1mm程度であり、それ以下では、タイヤに使用する際の十分な強度が得られない。また、この場合も、補強コードに用いることができる有機繊維としては前述と同様のものを用いることができ、特に制限されない。
さらにまた、交錯ベルト層の補強コードに同じ撚り数を有するスチールコードを用いて、内層側交錯ベルト層3aの補強コードの打ち込み数を、外層側交錯ベルト層3bの補強コードの打ち込み数より少なくすることも好適である。補強コードの打ち込み数が少ないほうが、ベルトとしてのコード方向弾性率は低くなる。そこで、交錯ベルト層のうち内層側に、外層側よりコードの打ち込み数が少ないベルトを使用することで、内層側交錯ベルト層3aを外層側対比コード方向弾性率が低いものとすることができ、亀裂発生部である交錯ベルト層とスパイラルベルトとの間の歪を分散・低減させることができる。
ここで、この場合の打ち込み数としては、直径0.18mmのスチール素線の単線を3本合わせて撚ったタイプのコードの場合で、35本/50mmが一般的である。打ち込み数を少なくする場合の具体的な打ち込み間隔としては、好適には30本/50mm以下であり、より好適には25本/50mm以下にすることで、十分な効果を得ることができる。なお、この場合の打ち込み数の下限は、7本/50mm程度であり、それ以下では、タイヤに使用する際の十分な強度が得られない。
さらにまた、交錯ベルト層の補強コードに同じ撚り数を有する有機繊維を用いて、内層側交錯ベルト層3aの補強コードの打ち込み数を、外層側交錯ベルト層3bの補強コードの打ち込み数より少なくすることも好適である。交錯ベルト層3の補強コードとして有機繊維からなるものを用いた場合も、上記スチールコードを用いた場合と同様に、交錯ベルト層のうち内層側に、外層側よりコードの打ち込み数が少ないベルトを使用することで、内層側交錯ベルト層3aを外層側対比コード方向弾性率が低いものとすることができ、亀裂発生部である交錯ベルト層とスパイラルベルトとの間の歪を分散・低減させることができる。
ここで、この場合の打ち込み数としては、撚ったコードの径が0.7mmの場合で、50本/50mmが一般的である。打ち込み数を少なくする場合の具体的な打ち込み間隔としては、好適には40本/50mm以下であり、より好適には30本/50mm以下にすることで、十分な効果を得ることができる。なお、この場合の打ち込み数の下限は、10本/50mm程度であり、それ以下では、タイヤに使用する際の十分な強度が得られない。また、この場合も、補強コードに用いることができる有機繊維としては前述と同様のものを用いることができ、特に制限されない。
また、本発明の空気入りタイヤにおいては、図2に示すように、スパイラルベルト2のタイヤ半径方向外側にさらに、厚さ0.5〜3.0mmの薄肉の緩衝ゴム層5と、タイヤ周方向に対し45〜90°の角度をなす補強ベルト層6とを、順次配設することが好適であり、これにより、耐偏摩耗性能の向上効果についても得ることができる。これは、前述した径差をもつタイヤが転動する際に、周方向で異なる方向の接線力によって発生するトレッドとスパイラルベルトとの周方向せん断変形を、かかる緩衝ゴム層5および補強ベルト層6により吸収することができるためである。
具体的には、途中に介装されている緩衝ゴム層5が変形することで、接地領域の周方向せん断変形の一部を吸収し、トレッドにおける周方向せん断変形が緩和され、これにより、接地領域内におけるトレッド外表面と路面との間での滑りおよび接線力の幅方向分布が均一化される。また、緩衝ゴム層5とトレッドのせん断変形は、補強ベルト層6に伝達されて補強ベルト層6を変形させるが、この補強ベルト層6内にはタイヤ周方向に対して45〜90°の範囲で傾斜した補強コードが埋設されているため、これら補強コードが前記変形に対し抵抗体として機能しながら該変形に追従して若干屈曲し、これにより、接地領域内におけるトレッド外表面と路面との間での滑りおよび接線力の幅方向分布がさらに均一化されるのである。
ここで、補強ベルト層6の補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角が45°未満であると、補強ベルト層6がスパイラルベルト2と同様のたが効果を発揮し始め、トレッドにおける周方向せん断変形が増加傾向となるため、かかる傾斜角は45°以上とすることが必要である。なお、補強コードの材質については特に制限はなく、スパイラルベルト2や交錯ベルト層3と同様に、スチールを用いても有機繊維を用いてもよい。
また、緩衝ゴム層5の厚みは、0.5〜3.0mmの範囲内であることが必要であり、その理由は、この厚みが0.5mm未満であると、路面とスパイラルベルト2との間で発生する周方向せん断変形を十分に吸収することができないからであり、一方、3.0mmを超えると、高速走行時のトレッド部における遠心力が増加して、周方向せん断変形が増大してしまうからである。
ここで、緩衝ゴム層5および補強ベルト層6の配設幅GWおよびBWcは、トレッド幅TWの30〜100%(図示する例では100%)の幅とすることが必要である。これは、この幅が30%未満であると、上述の周方向せん断変形緩和の効果が十分に得られないためであり、また一方、100%を超えると、製造が困難となるとともに、サイド部までベルトが配置されることにより故障の原因となるためである。
本発明においては、交錯ベルト層3が、スパイラルベルトとの関係で上記条件を満足するものであればよく、これにより本発明の所期の効果を得ることができるものであり、それ以外のタイヤ構造の詳細や材質等については特に制限されるものではない。例えば、本発明のタイヤは、図示するように、一対のビード部11と、それに連なる一対のサイドウォール部12と、両サイドウォール部12間にトロイド状をなして連なるトレッド部13とを備えており、これら各部をビード部相互間にわたり補強するカーカスプライ1は、比較的高弾性のテキスタイルコードを互いに平行に配列して形成される。また、タイヤの最内層にはインナーライナーが配置され(図示せず)、トレッド部13の表面には、適宜トレッドパターンが形成されている。なお、図中の参照符号4はビードコアを示す。
以下、本発明を、実施例を用いてより具体的に説明する。
下記条件に従い、タイヤサイズ245/45R18(タイヤの外径677mm、リム幅8.5インチ×リム径18インチ,乗用車用の高性能タイヤ)にて、従来例、実施例および比較例の供試タイヤを作製し、比較を行った。
<従来例>
図3に示すように、従来例の供試タイヤは、一対のビード部11間にトロイド状をなして跨るカーカスプライ1を2枚備えており、カーカスプライ1には直径0.5mmの撚ったナイロンコードを使用している(図中ではカーカス2を1本の線で示しているが、2枚重なっているものである)。2枚のカーカスプライ1のコード角度はラジアル方向(タイヤ周方向に対する角度が90°)であり、これらカーカスプライはビードコア4の周りに、ビードコア4を中心として折り返されている。
また、クラウン部分(トレッド部)を補強する2枚の交錯ベルト層3としては、直径0.18mmのスチール素線の単線を3本合わせて撚り数を10回/100mmとした、いわゆる1×3タイプのスチールコードを、タイヤ周方向に対し40°傾けて、互いに交錯させて配置した。各交錯ベルト層の打ち込み数は35本/50mmとした。トレッド幅TWは245mmであり、交錯ベルト層のうち内層側交錯ベルト層3aの幅BWは240mm、外層側交錯ベルト層3bの幅BWは220mmである。この従来例の供試タイヤにおいては、カーカスプライ1に隣接する内層側交錯ベルト層3aの幅が、トレッド幅より狭くなっている。また、内層側交錯ベルト層3aと外層側交錯ベルト層3bとのコード方向弾性率は同等である。
さらに、上記交錯ベルト層3のタイヤ半径方向外側には、スパイラルベルト2を配置した。スパイラルベルト2は、直径0.7mmの撚った芳香族ポリアミド(東レ・デュポン(株)製,ケブラー(登録商標))からなる補強コードを、打ち込み間隔50本/50mmで配置したものであり、その撚り数は30回/100mmとした(コード長さ100mmの中に30回の撚りがあるとの意)。また、スパイラルベルト2の幅SWは250mmであり、全幅について一層で形成されている。さらに、スパイラルベルト2は、ケブラーコードを2本平行に並べて未加硫ゴムで覆い、ストリップ状として、これをタイヤ成型時に交錯ベルト層の上に巻き付けて製造した。さらにまた、トレッド部には、所定の溝を配置した。
この従来例のタイヤに対して、交錯ベルト層3の剛性配分を変えた実施例の供試タイヤを、以下に示すようにして準備した。
<実施例>
図1に示すように、スパイラルベルト2の幅SWは従来例と同様とし、交錯ベルト層の幅を変えて、内層側交錯ベルト層3aの幅BWを270mm、外層側交錯ベルト層3bの幅BWを220mmとした(コード角度は従来例と同様とした)。したがって各実施例の供試タイヤにおいては、カーカスプライに隣接する内層側交錯ベルト層3aの幅BWはトレッド幅TWおよびスパイラルベルト2の幅SWより広く、外層側交錯ベルト層3bの幅BWはスパイラルベルト2の幅SWよりも狭くなっている。また、スパイラルベルト2は、従来例のスパイラルベルトと同じ材質および打ち込み数とした。これを基本として、交錯ベルト層の材質を以下に示すようにそれぞれ変更して、各実施例の供試タイヤを準備した。なお、下記実施例のいずれにおいても、内層側交錯ベルト層3aのコード方向弾性率が、外層側交錯ベルト層3bのコード方向弾性率よりも低くなっている。
<実施例1>
交錯ベルト層の補強コードとして、外層側交錯ベルト層3bには従来例と同じ直径0.18mmのスチール素線の単線を3本合わせて撚り数10回/100mmにて撚ったコードを使用し、内層側交錯ベルト層3aについては、外層側交錯ベルト層3b対比コード方向弾性率の低い線径0.7mmの撚った芳香族ポリアミド(ケブラー)コードを使用した。
<実施例2>
交錯ベルト層の補強コードとして従来例と同じ直径0.18mmのスチール素線の単線を3本合わせて撚ったコードを使用し、外層側交錯ベルト層3bについては従来例と同じ撚り数10回/100mmとし、内層側交錯ベルト層3aについては従来例より撚り数を多く15回/100mmとした。
<実施例3>
交錯ベルト層の補強コードとして従来例と同じスチール素線の単線を3本合わせて撚り数10回/100mmにて撚ったコードを使用し、外層側交錯ベルト層3bについては従来例と同じ直径0.18mmのコードを使用し、内層側交錯ベルト層3aについては従来例より径が細い0.15mmのコードを使用した。
<実施例4>
交錯ベルト層の補強コードとして従来例と同じ直径0.18mmのスチール素線の単線を3本合わせて撚り数10回/100mmにて撚ったコードを使用し、外層側交錯ベルト層3bについては従来例と同じ打ち込み数35本/50mmとし、内層側交錯ベルト層3aについては従来例より打ち込み数を少なく30本/50mmとした。
また、比較例の供試タイヤを、以下に示すようにして準備した。
<比較例1>
交錯ベルト層3の補強コードとして、内層側および外層側ともに、従来例と同じ直径0.18mmのスチールの単線を3本合わせて撚り数10回/100mmにて撚ったコードを使用した。この比較例1は、内層側交錯ベルト層3aのコード方向弾性率が外層側より低いとする本発明の規定を逸脱している。
<比較例2>
交錯ベルト層の補強コードとして、従来例と同じスチール素線の単線を3本合わせて撚り数10回/100mmにて撚ったコードを使用し、外層側交錯ベルト層3bについては従来例と同じ直径0.18mmのコードを使用し、内層側交錯ベルト層3aについては従来例より径が太い0.21mmのコードを使用した。この比較例2も、内層側交錯ベルト層3aのコード方向弾性率が外層側より低いとする本発明の規定を逸脱している。
<耐久性試験>
次に、上記供試タイヤについて、耐久性試験を実施して、実施例の効果を確認した。試験方法を以下に示す。
(試験条件A)
直径3.0mのスチール製ドラムに、タイヤを押し付けて高速回転させることにより、耐久性試験を行った。タイヤは、C.A.(キャンバー角)1.0°、S.A.(スリップ角)0°、荷重5.0kNで押し付けた。リムサイズ8.5J×18インチのリムに装着し、タイヤ内圧は指定内圧である220kPaよりも低めの180kPaとした。タイヤ内圧を指定内圧よりも低めに設定したのは、タイヤのたわみ量を大きくして、タイヤの故障を促進させるためである。この状態で、速度130km/hで100時間連続走行させて、ドラムを止めた。その後、タイヤを解剖して、亀裂の有無を調査した。なお、ドラムの周りの温度は10℃に管理し、タイヤに向け風速10m/sの風を吹き付け続けてタイヤの極端な発熱を防止し、実際の走行状態をなるべく再現させるようにした。
(試験条件B)
また、上記と同じドラム試験機を用いて、荷重を、実使用条件を大幅に超える8.0kNに増して、時速130km/hで100時間連続走行させる試験についても実施した。荷重を増加させた以外の条件は先の試験条件Aと同じとした。
各供試タイヤをそれぞれ2本準備して、上記試験条件Aおよび試験条件Bの双方につき、試験を実施した。その後、タイヤを解剖して、亀裂の有無を調べた。その結果を、下記の表1中に示す。
Figure 2008143347
上記表1に示すように、カーカスプライに隣接する内層側の交錯ベルト層の幅がトレッド幅およびスパイラルベルトの配設幅より広い実施例1〜4および比較例1の供試タイヤにおいては、交錯ベルト層の端部同士に距離を持たせることと、歪を抑制する効果により、亀裂の進展が抑制されていることが分かる。これに対し、従来例は、厳しい試験条件Bの試験においては完走できなかった。
また、比較例1,2と実施例1〜4との比較から、内層側の交錯ベルト層に外層側対比コード方向弾性率が低い補強コードを使用することで、亀裂発生部である交錯ベルト層とスパイラルベルトとの間の歪を分散・低減させることができるという効果が分かる。実施例1〜4においては、比較例1,2に比して亀裂長さが抑制されており、内層側のベルトに外層側対比コード方向弾性率が低くなるような剛性を持たせることで、耐久性能を上げることができることがわかる。比較例2のように、内層側のベルトに外層側対比コード方向弾性率が高い補強コードを使用した場合に耐久性向上効果が失われていることからも、上記の点は明らかである。
なお、上記実施例に挙げた以外の実施態様のタイヤにおいても、本発明の条件を満足し、内層側のベルトが外層側対比コード方向弾性率が低い位置づけとなるものであれば、同様の効果を得ることができることはいうまでもない。
<操縦安定性能試験>
次に、各供試タイヤで操縦安定性能に差がないかどうかを確認するために、熟練ドライバーによるテストコース走行を実施した。テスト車両としては、後輪駆動のスポーツタイプの車両を使用した。限界時の操縦安定性能を見るために激しい走行を行い、最高速度は200km/hに達した。4輪に、従来例のタイヤを装着した場合と、実施例1〜4、比較例1,2のタイヤを装着した場合について、操縦安定性能および乗り心地性能を、ドライバーのフィーリングに評価より10点満点で採点した。点数が高いほど性能が良好である。その結果を、下記の表2中に、テストドライバーの評価コメントも付記して示す。
Figure 2008143347
上記表2に示すように、従来例と実施例1〜4との比較から、本発明により操縦安定性能および乗り心地性能を損なうことはないことが確認できた。実施例1〜4については、乗り心地性能がより良くなった。これは、内層側のベルトに外層側対比コード方向弾性率が低くなるような剛性を持たせることで、よりタイヤがしなやかに変形できることによるものである。一方、比較例2ではタイヤに硬さが現れた。これは、幅が広い内層側のベルトにコード方向弾性率が高くなるような剛性を持たせることで、タイヤがたわみにくくなったことによるものである。本発明のように、幅が広いベルトには、コード方向弾性率が低くなるような剛性を持たせることが必要である。
<実施例5>
実施例1のタイヤのスパイラルベルトのタイヤ半径方向外側に、厚さ1.0mmの緩衝ゴム層と、実施例1のスパイラルベルトと同材質、同打ち込み数、同撚り数のコードからなり、タイヤ周方向に対し90°の角度をなす補強ベルト層とを、共にトレッド幅の100%の配設幅で配置して、実施例5の供試タイヤを作製した。
実施例1,5の供試タイヤにつき、下記に従い、耐偏摩耗性能評価試験を行った。
<耐偏摩耗性能評価試験>
前述の操縦安定性能評価試験と同条件でテストコース走行を繰り返して、長距離走行を実施することにより、耐偏摩耗性能の評価を行った。タイヤ赤道S上での摩耗量、トレッド端部での摩耗量をそれぞれ測定し、これらの比(タイヤ赤道S上での摩耗量/トレッド端部での摩耗量)を偏摩耗の評価指数「偏摩耗比M」として求めた結果を、下記の表3中に示す。
Figure 2008143347
上記表3の結果から明らかであるように、スパイラルベルトのタイヤ半径方向外側に緩衝ゴム層および補強ベルト層を追加配置した実施例5の供試タイヤにおいては、配置しない実施例1の供試タイヤに比べて、耐偏摩耗性が大幅に向上していることがわかった。これにより、緩衝ゴム層および補強ベルト層の配置により径差にともなう変形を吸収することで、ベルト層間のセパレーション耐久性能と耐偏摩耗性能とを両立させることが可能となることが確かめられた。
本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤを示す幅方向断面図である。 本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤを示す幅方向断面図である。 従来例に係る空気入りタイヤを示す幅方向断面図である。
符号の説明
1 カーカスプライ
2 スパイラルベルト
3 交錯ベルト層
4 ビードコア
5 緩衝ゴム層
6 補強ベルト層
10 空気入りタイヤ
11 ビード部
12 サイドウォール部
13 トレッド部

Claims (11)

  1. 少なくとも1枚のカーカスプライと、該カーカスプライのタイヤ半径方向外側に配置され、単線または並列した複数本のコードをゴム中に埋設してなる帯状のゴム被覆コードが実質的にタイヤ周方向に向かう角度で螺旋状に巻回されてなる少なくとも1枚のスパイラルベルトと、該カーカスプライとスパイラルベルトとの間に配置され、タイヤ周方向に対し15°〜75°の角度をなす2枚の交錯ベルト層と、を備える空気入りタイヤにおいて、
    前記交錯ベルト層のうち、前記カーカスプライに隣接する内層側交錯ベルト層の配設幅が、トレッド幅および前記スパイラルベルトの配設幅より広く、該内層側交錯ベルト層のタイヤ半径方向外側に配置された外層側交錯ベルト層の配設幅が該スパイラルベルトの配設幅より狭く、かつ、
    前記内層側交錯ベルト層のコード方向弾性率が、前記外層側交錯ベルト層のコード方向弾性率より低いことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記内層側交錯ベルト層の補強コードが芳香族ポリアミドの撚りコードからなり、かつ、前記外層側交錯ベルト層の補強コードがスチールコードからなる請求項1記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記内層側交錯ベルト層の補強コードがカーボン繊維の撚りコードからなり、かつ、前記外層側交錯ベルト層の補強コードがスチールコードからなる請求項1記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記内層側交錯ベルト層の補強コードがガラス繊維の撚りコードからなり、かつ、前記外層側交錯ベルト層の補強コードがスチールコードからなる請求項1記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記交錯ベルト層の補強コードがスチールコードからなり、かつ、前記内層側交錯ベルト層の補強コードの撚り数が、前記外層側交錯ベルト層の補強コードの撚り数より多い請求項1記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記交錯ベルト層の補強コードが有機繊維からなり、かつ、前記内層側交錯ベルト層の補強コードの撚り数が、前記外層側交錯ベルト層の補強コードの撚り数より多い請求項1記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記交錯ベルト層の補強コードが同じ撚り数を有するスチールコードからなり、かつ、前記内層側交錯ベルト層の補強コードのコード径が、前記外層側交錯ベルト層の補強コードのコード径より細い請求項1記載の空気入りタイヤ。
  8. 前記交錯ベルト層の補強コードが同じ撚り数を有する有機繊維からなり、かつ、前記内層側交錯ベルト層の補強コードのコード径が、前記外層側交錯ベルト層の補強コードのコード径より細い請求項1記載の空気入りタイヤ。
  9. 前記交錯ベルト層の補強コードが同じ撚り数を有するスチールコードからなり、かつ、前記内層側交錯ベルト層の補強コードの打ち込み数が、前記外層側交錯ベルト層の補強コードの打ち込み数より少ない請求項1記載の空気入りタイヤ。
  10. 前記交錯ベルト層の補強コードが同じ撚り数を有する有機繊維からなり、かつ、前記内層側交錯ベルト層の補強コードの打ち込み数が、前記外層側交錯ベルト層の補強コードの打ち込み数より少ない請求項1記載の空気入りタイヤ。
  11. 前記スパイラルベルトのタイヤ半径方向外側に、厚さ0.5〜3.0mmの緩衝ゴム層と、タイヤ周方向に対し45〜90°の角度をなす補強ベルト層とが、ともにトレッド幅の30〜100%の配設幅で、順次配設されてなる請求項1〜10のうちいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
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