JP2008080993A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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崇 川井
Seiji Koide
征史 小出
Makoto Ishiyama
誠 石山
Shinsaku Katayama
辰作 片山
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Abstract

【課題】亀裂自体が発生しにくく、また、たとえ亀裂が生じた場合でも亀裂の進展を抑制することができる。
【解決手段】一対のビードコア12を跨いで配置されたカーカス2と、カーカスのタイヤ径方向外側に配置され、かつベルトコードがタイヤ赤道面に対して所定の傾斜角度を持つ少なくとも1枚のベルト層28と、ベルト層のタイヤ径方向外側に配置され、かつタイヤ周方向に沿ってスパイラル状に巻回された補強コードを有するスパイラル補強層31,32とを備える。幅広である内側のベルト層26の端部を覆う部分のスパイラル補強層は、タイヤ径方向に重なる複数層とされ、内側のベルト層26の端部を覆う部分に対応する複数層のスパイラル補強層31、32の間の少なくとも1つに緩衝ゴム層33が介装されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両などに装着されて用いられる空気入りタイヤに関する。
従来、高性能乗用車に装着されるタイヤでは、回転速度が高速となるため、遠心力の影響が大きく、トレッド部分が外側に膨張してしまう不具合が生じる場合がある。このような不具合に対処するタイヤとして、トレッド部分に、有機繊維やスチールのコード部材を、タイヤ赤道面と概略平行になるように、スパイラル状に巻きつけた補強層(以下、これをスパイラル補強層と呼ぶ)を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)
特開平6−48114号公報 特開2001−121915号公報
タイヤ赤道面に沿って補強コードをクラウン部分にスパイラル状に巻きつけた場合に、いわゆる「たが」効果(風呂桶のたがのようにタイヤのクラウン部分を押さえつけて、高速でタイヤが回転した場合でもタイヤが遠心力で膨らむことなく、高い操縦安定性能や耐久性を示す)を高めることが出来る。したがって、このようなスパイラル補強層を備えるタイヤにあっては、高速時の操縦安定性能が優れ、トラクションが非常に高い利点を持つ。
しかし、この種のタイヤには、タイヤ周方向に巻きつけられたコード部材が張力を持つため硬く振る舞い、タイヤ赤道面とある角度を持って配置されたコード部材を内蔵するベルト層(以下、交錯ベルト層ともいう)の端部と該スパイラル補強層との間で、その間に介在するゴム(交錯ベルト層のコーティングゴムやスパイラル補強層のコーティングゴム)のせん断歪が大きくなり、亀裂が発生しやすくなるという問題があった。
特に近年、車両の高速化、並びにタイヤの偏平化がますます進行しているため、ベルト層とスパイラル補強層との間のセパレーションを強力に抑制することができる空気入りタイヤの出現が待たれていた。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、亀裂自体が発生しにくく、また、たとえ亀裂が生じた場合でも亀裂の進展を抑制することができ、もって、ベルト層とスパイラル補強層との間のセパレーションを強力に抑制することができる空気入りタイヤを提供することにある。
ここで、発明者等が本発明をなすに至った経緯について簡単に説明する。
本発明者等は、ベル卜層とスパイラル補強層との間でのセパレーションの原因について種々の検討を行った結果、次の挙動がセパレーション発生の主要因であることを見出した。
すなわち、ベルト層の端部は、路面に接地したときにタイヤ周方向(赤道方向)にずれる動きをして、周方向に伸びようとする。これは、トレッド部において、トレッドセンターからトレッド端に向かうに従い外径が小さくなって径差が設けられていることによる。このような径差は接地時にトレッド部(ベルト層、スパイラル補強層等)が幅方向に曲げ変形することで吸収されるが、タイヤは赤道方向にも360度にわたり丸く形成されているため、赤道方向(周方向)についても丸みを吸収しようとして、半径の小さいベルト層の端部が伸びて、平らな路面に接触する。
スパイラル補強層は、内部に実質上周方向に延在する有機繊維等からなるコード部材が埋設されているため、周方向に殆ど伸びることができない。しかし、前記のようにベルト層の端部は周方向に伸びようとする。そのため、ベルト層の端部とスパイラル補強層との重なりあう部分で変形に周方向のズレが生じる。これが歪となって、両者の間に介在するゴムに作用する。そのため、この部分から亀裂が生じやすくなる。つまり、ベルト層の端部とスパイラル補強層との間に大きな周方向の剪断歪が発生して亀裂を起こす。亀裂は、ベル卜層の端部から発生するのが普通である。これは、通常切り離しのベルト端部は、切断によって角度や長さを調整するという製造工程上の都合により、ゴムや接着剤で覆われていないことが多いからである。
そして、ベル卜層とスパイラル補強層との間でのセパレーションを抑制するための対策としては、下記のことが考えられる。
すなわち、このようなベルト層の端部とスパイラル補強層との間の周方向の剪断歪を抑制するのに、ベルト層の端部とスパイラル補強層との間にゴム層を配置して距離を確保し、歪のレベルを下げることが考えられる。
しかし、ベルト層のタイヤ径方向外側にスパイラル補強層があり、このスパイラル補強層においてコード部材が実質的にタイヤ周方向に平行となるように巻きつけられているため、ベル卜層の端部とスパイラル補強層との間に所定のゴム層を配置してタイヤを製造することは極めて難しい。
その理由は、次のとおりである。タイヤの製造工程の中には加硫工程があり、加硫時にはモールドと呼ばれる金型の中で未加硫状態の生タイヤが内側から熱と圧力を加えられながら、金型に押し付けられるようにして加硫される。このときに金型の中で生タイヤは2%〜7%程度、拡張されながら金型の形に製造される。この拡張時において、スパイラル補強層となる部分は内部にタイヤ周方向にほぼ平行なコード部材を含んでいるため拡張することができない。一方、ベルト層となる部分は内部のコード部材がタイヤ周方向に無限につながっているわけではなく、タイヤ周方向にある角度を持って傾斜しているために、それらコード部材どうしの間のゴムが広がることで、ベルト層となる部分は外周が伸びて(タイヤ周方向に伸びて)拡張することができる。前述したように、ベルト層となる部分の外側にはスパイラル補強層となる部分が、たがのように配置されているため、スパイラル補強層となる部分が周方向(タイヤ周方向)に伸びることができないのに対し、その内側のベルト層となる部分は赤道方向に拡張可能である。このとき、スパイラル補強層となる部分とベルト層となる部分との間に配置された未加硫ゴムは、スパイラル補強層となるコード部材同士の間を抜けてタイヤ径方向外側へ吸い上げられたり、スパイラル補強層となる部分の幅方向外側に流れ出されたりして、押し出されてしまい、結果的にベル卜層の端部とスパイラル補強層との間の距離を、間に介装させるゴムによって保つことが困難となる。
これは、硫工程初期に起こることであり、未加硫ゴムが極めてやわらかい流動体であるのに対して、ベル卜層やスパイラル補強層は、内部に配設されたコード部材によって流動できないことによる。
つまり、対策として有効なのは、ベルト層の端部とスパイラル補強層との間に距離(ゴム)をおくことであるが、それがタイヤ製法上、非常に難しい命題となっている。
前述は、ベルト層とスパイラル補強層の間でのセパレーションについての説明であったが、この不具合はベルト層の端部から亀裂が生じることで発生することが殆どである。そしてその亀裂がスパイラル補強層に伝わり、スパイラル補強層のコード部材が、これを覆うゴムから剥離し結果的にベルト層とスパイラル補強層の間でのセパレーションにつながる。
ここで、ベルト層とスパイラル補強層の間でのセパレーションの別の対策として、初期のベルト層の端部に発生する亀裂がスパイラル補強層のコード部材に到達しても、できるだけそれ以上亀裂が進展しないようにすることで大事に至らないようにするという方法も考えられる。例えば、端部の部分だけ2重にして、内側のスパイラル補強層が亀裂で剥がれても、外側のスパイラル補強層によって亀裂の進展を抑えられる構成とすること等も考えられる。
このように本発明者らは、亀裂の発生並びに亀裂の進展について鋭意研究を重ねた結果、本発明をなすに至った。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明の請求項1に係る空気入りタイヤは、一対のビードコアを跨いで配置されたボディプライと、該ボディプライのタイヤ径方向外側に配置され、かつベルトコードがタイヤ赤道面に対して所定の傾斜角度を持つ少なくとも1枚のベルト層と、該ベルト層のタイヤ径方向外側に配置され、かつタイヤ周方向に沿ってスパイラル状に巻回された補強コードを有するスパイラル補強層とを備え、最も幅広の前記ベルト層の端部を覆う部分の前記スパイラル補強層は、タイヤ径方向に重なる複数層とされ、最も幅広の前記ベルト層の端部を覆う部分に対応する複数層のスパイラル補強層の間の少なくとも1つに緩衝ゴム層が介装されていることを特徴とする。
上記のようにベル卜層を構成するベルトコードは、タイヤの赤道面に対して所定の角度を持つが、所定の角度とは15度から75度の範囲とをいう。これは、一般的にベルト層を2枚有する場合、ベルトコードをタイヤ赤道面に対して上述した15度から75度の範囲で交錯させることが多く、これにより、ベルト層の面内せん断剛性を高<保つためである。なお、ベルト層を1枚あるいは3枚以上ある場合にも、上記に準ずる。
ベルト層のタイヤ径方向外側にはスパイラル補強層が配置されるが、このスパイラル補強層は、具体的には、例えば、複数本並列配置された補強コードを一体的にゴム被覆してなるリボン状のコードストリップを、タイヤ赤道面と成す角度が5度以下になるよう所定のピッチで、スパイラル状に巻回して構成される。
そして、最も幅広のベルト層の端部を覆う部分に対応する複数層のスパイラル補強層の間の少なくとも1つに緩衝ゴム層が介装されている。
最も幅広のベルト層としたのは、ベルト層が複数あってそれらの幅寸法が異なる場合を想定し、この場合、もっと幅広のベルト層の端部で亀裂が発生し易く、この部分を複数層のスパイラル補強層で補強するためである。このため、ベルト層が1枚しかなかった場合には、この一枚のベルト層の端部を複数層のスパイラル補強層で覆うことになる。
また、緩衝ゴム層を少なくとも1つとしたのは、スパイラル補強層が例えば3層ある場合、互いに隣接するスパイラル補強層の間は2つあることとなるが、それらの間に各々緩衝ゴム層を介装させる場合と、それらの間の内1つのみに緩衝ゴム層を介装させる場合等を想定したためである。
上記空気式タイヤによれば、最も幅広のベルト層の端部を複数層のスパイラル補強層によって覆うことで、高速走行時のタイヤの径成長を押さえることができ、その結果、発熱やベルト端部の歪を抑制でき、耐久性能を向上させることができる。また、仮に内側のスパイラル補強層間に亀裂が入ったとしても、その外側にもう1枚あるいは複数枚のスパイラル補強層が存在するため、トレッド表層まで亀裂が進展するのを遅らせることができる。
また、最も幅広のベルト層の端部を覆う複数層のスパイラル補強層の間に緩衝ゴム層を介装させるので、ベルト層の端部を起点とした亀裂が発生し、その亀裂がスパイラル補強層間亀裂へと進展した場合において、この緩衝ゴム層がある分、タイヤ径方向外側のスパイラル補強層への亀裂進展を遅らせることができる。また、スパイラル補強層どうしの補強コード間に同一の入力(せん断歪)が入る場合において、スパイラル補強層間の距離(ゴムの厚み)が長いほど、単位長あたりの歪が小さくなるため、スパイラル補強層間亀裂の発生を抑制できる。
請求項2に係る空気入りタイヤは、前記緩衝ゴム層の厚さが0.7mm〜5mmの範囲に設定されていることを特徴とする。
これは、一般にスパイラル補強層の補強コード径として0.7mm前後を用いることが多いが、この径と同程度の厚みが緩衝ゴム層にないと、緩衝層としての意味をなさなくなり、また、5mm以上になると、ショルダー部が厚くなりすぎ、発熱面や重量面で不利となってしまうためである。
請求項3に係る空気入りタイヤは、最も幅広の前記ベルト層の端部を基準にそこからタイヤ幅方向の少なくとも内外5mmの範囲を覆うように、前記複数層のスパイラル補強層およびそれらの間の緩衝ゴム層がそれぞれ配置されていることを特徴とする。
これは、5mmより狭いと、狭すぎて実質上ベルト層の端部の補強の意味をなさないからであり、ベルト層の端部周辺を土5mmつまり10mm以上の幅をもって覆っていれば、最低限の補強層としての機能を発揮できるからである。また、最も幅広のベルト端部を基準としそこから所定距離の範囲を補強することの意味は、この最も幅広のベルト端部を起点とした亀裂の発生、およびその進展を抑制できるからである。
請求項4に係る空気入りタイヤは、前記緩衝ゴム層の材質が、前記スパイラル補強層の前記補強コードを覆うコーティングゴムと同じ材質であることを特徴とする。
これは、同一のゴムを用いることで、緩衝ゴム層とスパイラル補強層との間で、ゴムの界面からの剥離発生を抑制できるからである。
請求項5に係る空気入りタイヤは、前記緩衝ゴム層の弾性率が、前記スパイラル補強層の前記補強コードを覆うコーティングゴムの弾性率と同等以下に設定されていることを特徴とする。
これは、緩衝ゴム層の弾性率を同等以下に下げることによって、緩衝ゴム層内の歪を抑制し亀裂の進展を抑えることができるためである。
請求項6に係る空気入りタイヤは、前記タイヤ径方向に重なる互いに隣接する2層のスパイラル層が、それぞれトレッドセンター部を覆いしかも最も幅広の前記ベルト層の端部を覆うように配置され、該2層のスパイラル補強層間のショルダー部分にのみ、最も幅広の前記ベルト層の端部を覆うように前記緩衝ゴム層が介装されていることを特徴とする。
これにより、上述した耐久性向上の効果を同様に得ることができる他、2層のスパイラル補強層によってトレッド部を覆うので、より高い「たが」効果が得られ、かつ、製作時において緩衝ゴム層がタイヤ幅方向へずれにくい効果も得られる。
本発明によれば、最も幅広のベルト層の端部を複数層のスパイラル補強層によって覆うことで、高速走行時のタイヤの径成長を押さえることができ、結果発熱やベルト端部の歪を抑制できる。また、仮に内側のスパイラル補強層間に亀裂が入ったとしても、その外側にもう1層あるいは複数層のスパイラル補強層が存在するため、トレッド表層まで亀裂が進展するのを遅らせることができる。
また、最も幅広のベルト層の端部を覆う複数層のスパイラル補強層の間に緩衝ゴム層を介装するので、ベルト層の端部を起点とした亀裂が発生し、その亀裂がスパイラル補強層間亀裂へと進展した場合において、緩衝ゴム層がある分、タイヤ径方向外側のスパイラル補強層への亀裂進展を遅らせることができる。さらに、複数層のスパイラル補強層どうしの補強コード間に同一の入力(せん断歪)が入る場合において、スパイラル補強層間の距離(ゴムの厚み)が長いほど、単位長あたりの歪が小さくなるため、スパイラル補強層間亀裂の発生自体を抑制できる。
これらの結果。ベルト層とスパイラル補強層との間のセパレーションを強力に抑制することができる。
以下、この発明に係る空気入りタイヤの実施の形態を図1から図3の図面を参照して説明する。
図1に示すように、空気入りタイヤ1(以下、「タイヤ1」と略称する)は、ビード部2に配置された1対のビードコア12,12と、1対のビードコア12,12にトロイド状に跨り、ビード部2、サイド部3、ショルダー部4、クラウン部5に亘って配置されたカーカス(ボディプライ)14を備えている。このカーカス14は、2枚のカーカス層から構成される(図では、1枚のカーカス層しか表していない)。各カーカス層はタイヤ周方向に対して所定の角度(例えば70〜90度)を持つように配置されたコードをゴム被覆して構成される。
なお、この実施の形態では、カーカス14を2枚のカーカス層で構成したが、カーカス層は2枚に限るものではなく、1枚あるいは3枚以上であってもよい。
カーカス14は、ビードコア12の回りをタイヤ幅方向内側から外側へ向けて折り返されて配置されている。カーカス14の内側にはインナーライナが配置されている。
タイヤ1のクラウン部5において、カーカス14のタイヤ径方向外側には、内側ベルト層26と外側ベルト層27の2層からなるベルト層28がカーカス14に当接して設けられている。内側ベルト層26はカーカス14に当接してタイヤ径方向外側に配置され、外側ベルト層27は内側ベルト層26に当接してタイヤ径方向外側に配置されている。内側ベルト層26及び外側ベルト層27は、それぞれタイヤ周方向に対して比較的小さな角度で傾斜して延びるベルトコードをゴム被覆して構成されており、この実施の形態では、内側ベルト層26と外側ベルト層27は互いにベルトコードを交錯させるように配置されている。
内側ベルト層26は外側ベルト層27よりも幅広とされており、このため、内側ベルト層26のタイヤ幅方向端部26aは、外側ベルト層27のタイヤ幅方向端部27aよりもタイヤ幅方向外側へ突出している。
なお、この実施の形態では、ベルト層28を2層で構成したが、これに限られず1層で構成しても、あるいは3層以上で構成してもよい。また、ベルトコードの材質としては、一般的に用いられるもの、例えば、芳香族ポリアミドを代表とする有機繊維や、スチールが用いられる。
ベルト層28のタイヤ径方向外側には内側スパイラル補強層31が、いわゆるキャップ構造となるようトレッドのほぼ全面を覆うように、外側ベルト層27に当接して設けられている。内側スパイラル補強層31のタイヤ幅方向端部31aは、内側ベルト層26および外側ベルト層27のタイヤ幅方向端部26a、27aよりもタイヤ幅方向外側に延出している。
また、内側スパイラル補強層31のタイヤ径方向外側であって、いわゆるレイヤー構造となるよう左右のショルダー部4の近傍に、外側スパイラル補強層32がそれぞれ内側ベルト補強層31との間に間隔をあけて設けられている。外側スパイラル補強層32は、ベルト層28のうち幅広のベルト層である内側ベルト層26の端部26aを覆うように設けられている。
すなわち、内側ベルト層26の端部26aは、内側スパイラル補強層31と外側スパイラル補強層32との複数層のスパイラル補強層によってタイヤ径方向外側から覆われている。
なお、複数層のスパイラル補強層31,32で覆う部分は、ベルト層28のうちで最も幅広いベルト層の端部である。したがって、例えば、ベルト層が1枚しかない場合にはこのベルト層の端部を、また、ベルト層が3枚以上あるときにはそれらベルト層のうち最も幅広のベルト層の端部を覆うように配置されることとなる。また、ベルト層が3枚あるときに、最も幅広のベルト層の端部を覆えればよく、例えば3枚のベルト層すべての端部を覆っていても良いし、幅の狭い1枚を除いた残り2枚のベルト層の端部を覆っても良い。
内側スパイラル補強層31は、例えば、複数本並列に配置された補強コードを一体的にゴムで被覆してなるリボン状のコードストリップを、タイヤ赤道面となす角度が5度以下になるように所定ピッチで、スパイラル状に巻き付けて構成される。これは、外側スパイラル補強層32についても同様である。
内側および外側スパイラル補強層に内蔵される補強コードの材質としては、前記ベルトコードと同様、例えば、芳香族ポリアミドを代表とする有機繊維や、スチールが用いられる。
内側ベルト層26の端部26aを覆う、内側スパイラル補強層31および外側スパイラル補強層32の間には、緩衝ゴム層33が介装されている。
なお、この例では、スパイラル補強層が2層であって、それらの間に緩衝ゴム層が1枚だけしか介装されていないが、例えば、スパイラル補強層が3層あるいは4層ある場合には、スパイラル補強層間は2つあるいは3つあることとなり、そのうち緩衝ゴム層33は、1つのスパイラル補強層間にだけ介装されても、あるいはそれらすべてのスパイラル補強層間に介装されても良い。
緩衝ゴム層33の厚さtは0.7mm〜5mmの範囲に設定されている。これは、一般に補強コードの径は0.7mm前後を用いることが多いが、この径と同程度の厚みが緩衝ゴム層にないと、緩衝層としての意味を成さず、亀裂の進展を抑制する効果が実質上殆ど発生しないからである。また、5mm以上になると、ショルダー部が厚くなりすぎ、発熱面や重量面で不利となってしまうためである。具体的には、高速走行時の発熱によるゴムが沸騰して気泡が発生し亀裂となるプロ一故障が生じるおそれがあるからである。
また、前記複数層のスパイラル補強層31,32およびそれらの間の緩衝ゴム層33は、内側ベルト層26の端部26aを基準に、そこから少なくともタイヤ幅方向の内外5mmの範囲を覆うように配置されている。このように、複数層のスパイラル補強層の幅寸法および緩衝ゴム層の幅寸法Wを設定した理由は、複数層のスパイラル補強層31,32およびそれらの間の緩衝ゴム層33の寸法が5mmより狭いと、狭すぎて実質上ベルト端部の補強の意味を成さないためである。土5mmつまり10mm以上の幅を覆っていれば、最低限の補強層としての機能を発揮することができるからである。
また、緩衝ゴム層33の材質は、スパイラル補強層31、32の補強コードを覆うコーティングゴムと同じ材質に設定するとするのが好ましい。これは、同一のゴムを用いることで、ゴムの界面からの剥離発生を抑制できるためである。なお、ベルト層28のベルトコードを覆うコーティングゴムも、それら緩衝ゴム層33やスパイラル補強層31、32の補強コードを覆うコーティングゴムと同じ材質とするのが、より好ましい。
また、補強ゴム層33の材質が、スパイラル補強層31,32の補強コードを覆うコーティングゴムと同じ材質にできない事情がある場合には、緩衝ゴム層33の弾性率が、スパイラル補強層31,32の補強コードを覆うコーティングゴムの弾性率以下にできるよう、補強ゴム層33の材質を設定するのが好ましい。これは、緩衝ゴム層の弾性率を同等以下に下げることによって、緩衝ゴム層内の歪を抑制し亀裂の進展を抑えることができるためである。弾性率が高いと、例えば緩衝ゴム層とスパイラル層のコーティングゴムとの界面で歪が発生しやすくなり、最悪その界面を起点として剥離する恐れが生じるためである。
次に、上記構成タイヤ1の作用について説明する。
上記構成のタイヤ1によれば、最も幅広である内側ベルト層26の端部26aを複数層のスパイラル補強層31,32によって覆うことで、高速走行時のタイヤの径成長を押さえることができ、その結果、発熱やベルト端部の歪を抑制できる。また、仮に内側のスパイラル補強層31間に亀裂が入ったとしても、その外側に外側スパイラル補強層32が存在するため、トレッド表層まで亀裂が進展するのを遅らせることができる。
また、最も幅広である内側ベルト層26の端部26aを覆う複数層のスパイラル補強層31,32の間に緩衝ゴム層33を介装しているので、内側ベルト層26の端部26aを起点として亀裂が発生し、その亀裂がスパイラル補強層間亀裂へと進展した場合において、緩衝ゴム層33がある分、内側スパイラル補強層31から外側スパイラル補強層32への亀裂進展を遅らせることができる。
さらに、複数層のスパイラル補強層31、32間に同一の入力(せん断歪)が入る場合を仮定すると、スパイラル補強層間の距離(ゴムの厚み)が長いほど単位長あたりの歪が小さくなるため、複数層のスパイラル補強層31、32間スパイラル補強層間亀裂の発生自体を抑制できる。この実施の形態の場合、内外2層のスパイラル補強層31、32間に緩衝ゴム層33を介装させることで、それらスパイラル補強層31、32間の距離を所定値に保っており、これにより、スパイラル補強層間亀裂の発生自体を抑制できる。
これらの結果、ベルト層とスパイラル補強層との間のセパレーションを強力に抑制することができる。
なお、本発明は、前記実施形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能である。
例えば、前述の実施形態では、なお、スパイラル補強層の具体的配置としては、内側スパイラル補強層31を、トレッドのほぼ全面を覆うように配置したいわゆるキャップ構造とし、外側スパイラル補強層32をショルダー部のみを覆うレイヤー構造としたが、これに限られることなく、図3に示すように、内側スパイラル補強層31および外側のスパイラル補強層32をともにキャップ構造としてもよい。この場合、緩衝ゴム層33の配置は、スパイラル補強層31,32間の全幅にわたって介装しても良いが、図3に示すように、幅広である内側ベルト層26の端部26aを覆う位置にのみ配置されていれば足りる。
本発明を乗用車用の高性能タイヤに適用した実施例について説明する。
ここで、説明の便宜上、本発明の実施例を説明する前に、本発明の実施例と比較するための従来例について説明する。なお、本発明の実施例および従来例ともに、図1で示した本発明の実施の形態で示した構成要素と、同一の構成要素については同一の符号を用いる。
<従来例>
図4および図5はそれぞれ従来例のタイヤを示す。従来例のタイヤおよび実施例のタイヤとしては、タイヤサイズ245/45R18(タイヤの外径677mm、リム幅8.5インチ、リム径18インチ)のものを用いた。
タイヤは、カーカス層が2枚あるものを用いた。力一カス14には直径0.5mmのよったナイロンコードを使用した。カーカス14を構成するカーカス層は2枚とし、それらはいずれもラジアル(タイヤ周方向に対する角度が90度)であるものを用いた。
クラウン部5(トレッド部)を補強する2枚のベル卜層26,27は、直径0.18mmのスチールの単線を3本合わせて撚った、いわゆる1×3タイプのベルトコードを、赤道方向に対して45度傾けて、お互いに交錯させて配置したものを用いた。打ち込み間隔は35本/50mmとした。トレッド幅は245mmであり、内側ベルト層26の幅は240mm、外側ベルト層27の幅は220mmとした。
これらのベルト層28の上には内外2枚のスパイラル補強層31、32を配置した。内側スパイラル補強層31はトレッド全面を覆うキャップ構造のものとし、以下この内側スパイラル補強層31をキャップ層とも呼ぶこととする。また、外側スパイラル補強層32は、両ショルダー部を覆うレイヤー構造のもとし、以下この外側スパイラル補強層32をレイヤー層と呼ぶこととする。
キャップ層31およびレイヤー層32としては、直径0.7mmの拠った芳香族ポリアミド(商品名ケブラー)からなる補強コ−ドを、打ち込み間隔50本/50mmで配置したものを用いた。ケブラーの撚り数は30回/100mmとした(コード長さ100mmの中に30回の撚りがあるとの意)。
キャップ層31の幅は250mmであり、全幅について1層で形成した。また、レイヤー層32は、幅が35mmであり、幅方向IN側に1枚OUT側に1枚を、それぞれ前記キャップ層31の両端部に揃えてタイヤ径方向上側に重なる位置に配置した。これらキャップ層31とレイヤー層32の間には、緩衝ゴム層がないため(成型時にはキャップ構造の内側スパイラル補強層31となる部材を巻きつけた後に、その上に直接レイヤー構造の外側スパイラル補強層32となる部材を巻きつける)、実質上それら層の補強コード間はスパイラル補強層のコーティングゴムしか存在せず、両者の補強コード間距離は0.6mm以下であり、実質上補強コード同士が接触するほど近い位置になる。また、キャップ層31およびレイヤー層32の製造は、ケブラーコードを2本平行に並べて未加硫ゴムで覆いストリップ状として、これをタイヤ成型時にベルト層28の上に巻きつけることで行った。
<実施例1>
図1に示す構造であって、図4、図5に示す従来例のタイヤに対して、キャップ層31およびレイヤー層32間に、緩衝ゴム層33が配置されている点が異なる。緩衝ゴム層33のゴム種は、キャップ層31およびレイヤー層32のコーティングゴムと材質が異なるが、弾性率が同等のものを用いた。また、緩衝ゴム層33の厚さは0.7mmとした。これらキャップ層31およびレイヤー層32は、従来例のキャップ層31およびレイヤー層32と同じ材料、同じ打ち込みとした。また、巻き幅や位置についても同じとした。従来例1とこの実施例1のタイヤを比較することで、キャップ層31およびレイヤー層32(スパイラル補強層31,32)間に緩衝ゴム層33を介装した効果を見ることができる。
<実施例2>
実施例1のタイヤをベースとし、レイヤー層32の幅、および緩衝ゴム層33の幅を、50mmに変更した構造である。その他の変更はない。つまり、図2におけるレイヤー層32と緩衝ゴム層33の幅寸法Wを拡げた構造である。
実施例1と実施例2を比較することで、レイヤー層32(外側スパイラル補強層32)の幅の影響を見ることができる。
<実施例3>
実施例1のタイヤをベースとし、緩衝ゴム層33の厚さtを5mmに変更した構造である。その他の変更はない。つまり、図2における緩衝ゴム層33の厚さtを増した構造である。
実施例1と実施例3を比較することで、緩衝ゴム層33の厚さtの影響を見ることができる。
<実施例4>
実施例1のタイヤをベースとし、緩衝ゴム層33の材質を、キャップ層31およびレイヤー層32のコーティングゴムよりも弾性率の低いゴムにした(キャップ層31およびレイヤー層32のコーティングゴムの弾性率を100とすると、緩衝ゴム層33として弾性率80のものを用いた)。その他の変更はない。つまり、図2で緩衝ゴム層33のゴム種を変更した構造である。
以上実施例1〜4のタイヤは、本発明に基づいて試作されたタイヤである。その効果を実証すべく、比較例として次のタイヤを準備した。
<比較例1>
図6に示すように、外側スパイラル補強層31および緩衝ゴム層33のタイヤ幅方向外方端の位置が、内側ベルト層26の端部26aよりも内側(内側ベルト層26の端部26aと外側ベルト層27の端部27aの中間位置)から始まり、外側ベルト層27の端部27aを覆う位置になるように配置したものである。その他は実施例1と同一であって、変更はない。
この比較例1と実施例1を比較することで、緩衝ゴム層33の位置が最も幅広のベルト層である内側ベルト層26の端部26aを覆うか覆っていないかの比較ができる。
<比較例2>
実施例1のタイヤをべ−スとし、緩衝ゴム層33の厚さtを10mmに変更した構造である。その他の変更はない。
実施例1とこの比較例2を比較することで、緩衝ゴム層33の厚さtを必要以上厚くしたときの影響を見ることができる。
これらタイヤについて、耐久性の試験を実施し、実施例の効果を確認した。
耐久性の試験は次のとおりである。
すなわち、直径3mのスチール製のドラムに、タイヤを押し付けて高速回転させる。タイヤは、荷重5kNで押し付けた。 8.5J×18インチのリムに装着してタイヤ内圧は指定内圧220kPaよりも低めの180kPaとした。タイヤ内圧を指定内圧よりも低めに設定したのは、タイヤのたわみ量を大きくして、タイヤの故障を促進させるためである。
速度130km/hで、100時間連続走行させてドラムを止める。その後、タイヤを解剖して、亀裂の有無を調べた。従来例のタイヤと実施例のタイヤでこの試験を実施した。なお、ドラムの周りの温度は10℃に管理し、タイヤに向けて風速10m/sの風を吹き続けて、タイヤの極端な発熱を防止し、実際の走行状態をなるべく再現させるようにした。これを試験条件Aとする。
また、上記ドラム試験機を用いて、荷重を通常はありえない8kNに増して、時速130km/hで、100時間連続走行させる試験も実施した。荷重が増したこと以外の条件は先の試験条件Aと同じである。この条件を試験条件Bとする。
それぞれのタイヤを2本準備して、試験条件Aと試験条件Bを実施した。タイヤを解剖して、亀裂の有無を調べた。
以下に、結果を示す。
<従来例>
a)試験条件A実施後の解剖結果
完走した。空気圧の抜けはなかった。解剖調査したところ、内側ベルト層26に亀裂が発生しており、この亀裂は、内側ベルト層26に沿って水平方向へ延びて5mmあった。また亀裂は垂直方向(半径方向)外側にも進展しており、キャップ層31からレイヤー層32まで到達していた。レイヤー層32に微少のゴムの剥離が見られる箇所があった。
b)試験条件B実施後の解剖結果
完走できずに、走行中65時間でタイヤがバースト故障した。バースト後のタイヤを解剖調査したところ、内側ベルト層26、外側ベルト層27共に端部26a、27aより10mm以上の亀裂が発生していた。この亀裂は幅方向だけでなく、垂直方向にも進展していた。キャップ層31からレイヤー層32まで伝わっており、これらスパイラル補強層の補強コードのゴムが幅7mmに渡って全周剥離していることが確認された。
<実施例1>
a)試験条件A実施後の解剖結果
完走した。内側ベルト層26に亀裂が発生しており、その長さは内側ベルト層26に沿って水平方向に4mm。亀裂は垂直方向(半径方向)外側にも進展しており、キャップ層31には微小のゴム剥離が見られる箇所がある。また一部緩衝ゴム層33(厚さ0.7mm)まで亀裂が進展している箇所も散見されたが、緩衝ゴム層33の範囲で進展が止まっており、レイヤー層32へは達していなかった。
b)試験条件B実施後の解剖結果
完走した。空気圧の抜けはなかった。内側ベルト層26の亀裂は水平方向に延びて8mmあった。外側ベルト層27にも7mmの同様の亀裂があった。また、キャップ層31の内側にゴムの剥離が見られ、幅3mmでキャップ層31の下側を幅方向に沿うような形で周方向の全周360度の範囲に存在していた。また亀裂が垂直方向にも進展して緩衝ゴム層33を越えてレイヤー層32まで達しているところもあるが、レイヤー層32の亀裂は周方向には繋がっていなかった。
<実施例2>
a)試験条件A実施後の解剖結果
完走した。内側ベルト層26に亀裂が発生しており、その長さは内側交錯ベルトに沿って水平方向へ延びて4mmあった。亀裂は垂直方向(半径方向)外側にも進展しており、キャップ層31には微小のゴム剥離が見られる箇所があった。また一部緩衝ゴム層33(厚さ0,7mm)まで亀裂が進展している箇所も散見されたが、緩衝ゴム層33の範囲で進展が止まっており、レイヤー層32へは達していなかった。
b)試験条件B実施後の解剖結果
完走した。空気圧の抜けはなかった。内側ベルト層26の亀裂は水平方向へ延びて8mmあった。外側ベルト層27にも7mmの同様の亀裂あった。また、キャップ層31の内側にゴムの剥離が見られ、幅3mmでキャップ層31下側を幅方向に沿うような形で周方向の全周360度の範囲に存在していた。また亀裂が垂直方向にも進展して緩衝ゴム層33を越えてレイヤー層32まで達しているところもあるが、レイヤー層32の亀裂は周方向には繋がっていなかった。
<実施例3>
a)試験条件A実施後の解剖結果
完走した。内側ベルト層26に亀裂が発生しており、その長さは内側ベルト層26に沿って水平方向へ延びて4mmあった。亀裂は垂直方向(半径方向)外側にも進展しており、キャップ層31には微小のゴム剥離が見られる箇所があるが、緩衝ゴム層33(厚さ5mm)の範囲で亀裂進展が止まっており、レイヤー層32までは亀裂が届いていなかった。
b)試験条件B実施後の解剖結果
完走した。空気圧の抜けはなかった。内側ベルト層26の亀裂は水平方向へ延びて8mmあった。外側ベルトにも7mmの同様の亀裂あった。また、キャップ層31の内側にゴムの剥離が見られ、幅3mmでキャップ層31の下側を幅方向に沿うような形で周方向の全周360度の範囲に存在していた。また亀裂が垂直方向にも進展しているが、緩衝ゴム層33の内部で止まっており、レイヤー層32までは達していなかった。
<実施例4>
a)試験条件A実施後の解剖結果
完走した。内側ベルト層26に亀裂が発生しており、その長さは内側ベルト層26に沿って水平方向へ延びて4mmあった。亀裂は垂直方向(半径方向)外側にも進展しており、キャップ層31には微小のゴム剥離が見られる箇所がある。また一部緩衝ゴム層33(厚さ0.7mm)まで亀裂が進展している箇所も散見されたが、ゴム層の範囲で進展が止まっており、レイヤー層32へは達していなかった。
b)試験条件B実施後の解剖結果
完走した。空気圧の抜けはなかった。内側ベルト層26の亀裂は水平方向へ延び8mmあった。外側ベルト層27にも7mmの同様の亀裂あった。また、キャップ層31の内側にゴムの剥離が見られ、幅3mmでキャップ層31下側を幅方向に沿うような形で周方向の全周360度の範囲に存在していた。また亀裂が垂直方向にも進展して緩衝ゴム層33を越えてレイヤー層32まで達しているところもあるが、その箇所は実施例1と比較すると少なく、またレイヤー層32の亀裂は周方向には繋がっていなかった。
<比較例1>
a)試験条件A実施後の解剖結果
完走した。空気圧の抜けはなかった。解剖調査したところ、内側ベルト層26に亀裂が発生しており、亀裂長さは内側ベルト層26に沿って水平方向へ延びて5mmあった。また亀裂は垂直方向(半径方向)外側にも進展しており、キャップ層31からレイヤー層32まで到達していた。レイヤー層32に微少のゴムの剥離が見られる箇所があった。
b)試験条件B実施後の解剖結果
完走できずに、走行中70時間でタイヤがバースト故障した。バースト後のタイヤを解剖調査したところ、内側ベルト端部より10mm以上の亀裂が発生しており、この亀裂が垂直方向にも進展していた。キャップ層31からレイヤー層32まで伝わっており、これらスパイラル補強層の補強コードのゴムが幅7mmに渡って全周剥離していることが確認された。
<比較例2>
a)試験条件A実施後の解剖結果
完走した。内側ベルト層26に亀裂が発生しており、その長さは内側ベルト層26に沿って水平方向へ延びて4mmあった。亀裂は垂直方向(半径方向)外側にも進展しており、キャップ層には微小のゴム剥離が見られる箇所があった。また一部緩衝ゴム層33(厚さ0.7mm)まで亀裂が進展している箇所も散見されたが、緩衝ゴム層33の範囲で進展が止まっており、レイヤー層32へは達していなかった。
b)試験条件B実施後の解剖結果
完走できずに、走行中95時間で安全装置が作動し試験機が停止した。タイヤを解剖調査したところ、レイヤー層32の端部が周方向に剥がれ、それが周方向に進展し、はがれた補強コードが車軸に巻きついて安全装置が作動し停止したとみられる。空気圧は保持していた。内側ベルト層26、外側ベルト層27共に端部26a、27aより10mm以上の亀裂が発生していた。この亀裂は幅方向だけでなく、垂直方向にも進展していた。また、緩衝ゴム層33内部にブローが見られ、これが一部前記の亀裂とつながり、さらにレイヤー層32の亀裂へとつながっていた。
以上の検討から本発明の効果が以下のようにわかった。
従来例に比べて、実施例1のタイヤはキャップ層31とレイヤー層32の間に、亀裂進展を抑制することのできる緩衝ゴム層33を有しているため、内側ベルト層26の端部26aから発生した亀裂がキャップ層31からレイヤー層32に進展するのを抑えることができた。これは、キャップ層31とレイヤー層32間のゴムゲージが厚いほど同一の入力に対して単位長さあたりの歪が小さくなるため、亀裂発生を抑制できると考えられ、実施例1は従来例と比べて耐久性が向上したのだと考えられる。また、もし亀裂が入ったとしても、単純に距離が離れているほどレイヤー層32まで亀裂が達するまでの時間を稼ぐことができるため、結果的に耐久性が向上したのだと考えられる。
実施例2は、実施例1に対してレイヤー層32の幅を違えたものである。レイヤー層32の幅を違えることについては、試験結果は実施例1とほぼ同等で、耐久性上は殆ど差がないことがわかった。
実施例3は、緩衝ゴム層33の厚さを5mmにしたタイヤである。実施例1と比べて、緩衝ゴム層33の厚さが厚いため、亀裂がレイヤー層32まで達しておらず、耐久性は高くなっていることがわかった。
実施例4は、緩衝ゴム層33の材質を、スパイラル補強層のコーティングゴムよりも弾性率の低いゴムにした場合のタイヤである。試験結果はほぼ実施例1と同等であったが、やや緩衝ゴム層33内部の亀裂の箇所や進展度合いが小さくなっていた。これは、弾性率の低いゴムのほうが、同一入力に対して変形できる量(歪量)が大きくなるため、亀裂が発生しにくいためと考えられる。
比較例1のタイヤは、来例と同様にバースト故障してしまった。この理由は、故障の核である内側ベルト層26の端部26aのタイヤ径方向外側を、緩衝ゴム層33が覆っていないためである。このためベルト層の端部26aから発生した亀裂が、キャップ層31からレイヤー層32へと進展することを抑制できず、従来例1と同様の故障を発生したのだと考えられる。
比較例2は、緩衝ゴム層33の厚さを10mmと、本発明の請求項を超えて厚くした場合のタイヤである。こちらも故障を発生していた。
故障形態は従来例とは異なっており、内側ベルト層26の端部26aで発生した亀裂が、緩衝ゴム層33内部で発生したブロー(気泡)とつながり、レイヤー層32の剥離に繋がっていると考えられる。ブローが発生したのは、あまりに緩衝ゴム層33が厚すぎるため蓄無効果が高すぎ、過酷な試験条件下において発熱が過大となってしまったことによると考えられる。このため必要以上に緩衝ゴム層33を厚くすることは得策ではなく、本発明のように0.7mm〜5mmの範囲としたのが妥当であることがわかった。
次に、従来例と実施例のタイヤで操縦安定性能に差がないのかを確認するため、熟練ドライバーによるテストコース走行を実施した。車両は後輪駆動のスポーツタイプの車両を使用した。限界時の操縦安定性能を見るために激しい走行を行い、最高速度は200km・/hに達した。4輪に従来例のタイヤを付けた場合と、4輪を実施例1〜4、比較例1,2のタイヤを装着した場合について操縦安定性能と乗り心地性能を10点満点で比較した。
結果は下記の通りである。
Figure 2008080993
従来例と実施例1〜4の比較から、本発明で操縦安定性能と乗り心地性能を損なうことがないことが確認できた。実施例2でやや操縦安定性能が向上し乗り心地性能が低下しだのは、レイヤー層32の幅を拡げたことによってタイヤの剛性が上がり安定性が増した一方で、凹凸乗り越し時等の突き上げが厳しくなったためと考えられる。
比較例1では操縦安定性能が低下しているが、これは内側ベルト層26の端部26aをレイヤー層32で覆っていないため、ベルト層26の端部26aの拘束が弱まり、ショルダー部の剛性が下がってしまったためと考えられる。
本発明の実施形態の空気入りタイヤを示す断面図である。 図1のII円部の拡大図である。 本発明の変形例の空気入りタイヤを示す断面図である。 空気入りタイヤの従来例を示す断面図である。 図4のV円部の拡大図である。 本発明の比較例の空気入りタイヤを示す断面図である。
符号の説明
1 タイヤ(空気入りタイヤ)
12 ビードコア
3 サイドウォール部
4 トレッド部
5 カーカス(ボディプライ)
26 内側ベルト層
27 外側ベルト層
28 ベルト層
31 内側スパイラル補強層(キャップ層)
32 外側スパイラル補強層(レイヤー層)
33 緩衝ゴム層

Claims (6)

  1. 一対のビードコアを跨いで配置されたボディプライと、
    該ボディプライのタイヤ径方向外側に配置され、かつベルトコードがタイヤ赤道面に対して所定の傾斜角度を持つ少なくとも1枚のベルト層と、
    該ベルト層のタイヤ径方向外側に配置され、かつタイヤ周方向に沿ってスパイラル状に巻回された補強コードを有するスパイラル補強層とを備え、
    最も幅広の前記ベルト層の端部を覆う部分の前記スパイラル補強層は、タイヤ径方向に重なる複数層とされ、
    最も幅広の前記ベルト層の端部を覆う部分に対応する複数層のスパイラル補強層の間の少なくとも1つに緩衝ゴム層が介装されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記緩衝ゴム層の厚さが0.7mm〜5mmの範囲に設定されていることを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
  3. 最も幅広の前記ベルト層の端部を基準にそこからタイヤ幅方向の少なくとも内外5mmの範囲を覆うように、前記複数層のスパイラル補強層およびそれらの間の緩衝ゴム層がそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記緩衝ゴム層の材質が、前記スパイラル補強層の前記補強コードを覆うコーティングゴムと同じ材質であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記緩衝ゴム層の弾性率が、前記スパイラル補強層の前記補強コードを覆うコーティングゴムの弾性率と同等以下に設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記タイヤ径方向に重なる互いに隣接する2層のスパイラル層は、それぞれトレッドセンター部を覆いしかも最も幅広の前記ベルト層の端部を覆うように配置され、
    該2層のスパイラル補強層間のショルダー部分にのみ、最も幅広の前記ベルト層の端部を覆うように、前記緩衝ゴム層が介装されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の空気入りタイヤ。
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WO2020129970A1 (ja) * 2018-12-17 2020-06-25 株式会社ブリヂストン タイヤ

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