JP2008195148A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】ベルト層−ベルト補強層間のセパレーションを強力に抑制することができるとともに、トレッドゴムの偏摩耗を抑制することのできる安価で軽量な空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤの骨格部材であるボディプライ14と2枚のベルト層15a,15bから成る交錯ベルト15と、補強部材をタイヤ赤道面に略平行になるように巻き付けて成るベルト補強層16とを備えた空気入りタイヤ10において、上記ボディプライ14をタイヤクラウン部において、タイヤ径方向の最外層に配置することにより、トレッド部11の変形を抑制するとともに、交錯ベルト15端部とベルト補強層16のような故障が発生し易い箇所の温度上昇を抑制するようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、空気入りタイヤに関するもので、特に、高速走行時におけるタイヤの耐久性能及び偏摩耗特性に優れた空気入りタイヤに関する。
高性能乗用車用タイヤではタイヤの回転速度が高速となるため、遠心力の影響が大きく、タイヤのトレッド部分が外側に膨張してしまい、そのため、操縦安定性能が低下してしまう場合がある。
そこで、上記膨張を抑制するため、図7に示すような、タイヤトレッド部51の内側に配置された2つのベルト層52a,52bから成る交錯ベルト52の外側に、その全幅に亘って、有機繊維やスチールから成る補強部材(スパイラル部材)を、タイヤ赤道面に略平行になるように巻き付けたスパイラル補強層53を備えた構成の空気入りタイヤ50が開発されている。なお、同図において、符号54は、タイヤの骨格部材であるボディプライで、一般の空気入りタイヤにおいては、上記交錯ベルト52は上記ボディプライ54のタイヤ径方向外側に配置される(例えば、特許文献1参照)。
また、トラックバス用のタイヤや自動二輪車用のタイヤにおいても、近年は、同様の構造のタイヤが見られるようになってきている。
上記タイヤ赤道面に沿ってスパイラル状に巻き付けられる補強部材としては、ナイロン繊維や芳香族ポリアミド、スチールなどが用いられているが、中でも、芳香族ポリアミドやスチールは、高温時においても伸長せず、トレッド部分の膨張を効果的に抑制することができるため、注目されている。更に、芳香族ポリアミドはスチールに比べて軽量であるため、タイヤ重量を小さくすることができるので、操縦安定性能の向上の点から注目度が高い。
また、これらの補強部材をタイヤクラウン部に巻き付けた場合には、いわゆる「たが」効果により、補強部材がタイヤクラウン部を押さえつけるので、タイヤが高速で回転した場合でも、タイヤが遠心力で膨らむことがない。したがって、操縦安定性能と耐久性能とをともに高めることができる。
特開2001−180220号公報
しかしながら、上記スパイラル部材を巻き付けたタイヤでは、赤道方向に巻き付けられているスパイラル部材が張力を持つため硬く振る舞い、そのため、交錯ベルト52の端部とスパイラル補強層53との間で、その間に介挿されているゴム(交錯ベルトのコーティングゴムやスパイラル補強層のコーティングゴム)の剪断歪が大きくなり、亀裂が発生しやすいといった問題がある。特に、近年、車両の高速化、空気入りタイヤの偏平化が進行し、これにより、ベルト層−ベルト補強層間のセパレーションを強力に抑制する必要性が高まってきている。
上記セパレーションは、ベルト層とベルト補強層(スパイラル補強層)との間の歪が大きいと起こり易く、またセパレーションが発生する部位近傍の雰囲気温度が高いと発生し易い。すなわち、交錯ベルトのベルト層の端部は、路面に接したときにタイヤ周方向(赤道方向)にずれる動きをし、周方向に伸びようとする。これは、トレッド部はトレッドセンターからトレッド端に向かうにしたがい外径が小さくなって径差が生じることによる。このような径差は、接地時にトレッド部(ベルト層、ベルト強化層など)が幅方向に曲げ変形することで吸収されるが、タイヤは赤道方向にも360度丸いため、赤道方向についても丸みを吸収しようとして、半径の小さなベルト層の端部が伸びて平らな路面に接触するわけである。
ところで、上記スパイラル補強層53などのベルト強化層内には実質上周方向に伸びる補強素子(コード)が埋設されているため、ベルト強化層は周方向に殆ど伸びることができない。一方、上記のように、交錯ベルト52のベルト層52a,52bの端部は周方向に伸びようとする。このため、ベルト層52a,52bの端部とスパイラル補強層53との重なり合う部分で、変形に周方向のズレが生じる。このズレが歪となって、両者間に介在するゴムに加わり、そのため、この部分から亀裂が生じやすくなる。つまり、交錯ベルト52のベルト層52a,52bの両端部とスパイラル補強層53との間に大きな周方向の剪断歪が発生して、この剪断歪により亀裂が発生する。この亀裂は、交錯ベルト52のベルト層52a,52bの端部から発生するのが普通である。
上記図7に示したスパイラル補強層53を有する空気入りタイヤ50では、タイヤ周方向の伸びを強力に抑制することができるので、高速回転時のタイヤの膨張を抑制できる反面、トレッド周方向の変形を余計に大きくするというデメリットがある。タイヤクラウン部は、通常、赤道付近(トレッドセンター部)とトレッドショルダー部(トレッド端部)のタイヤ回転中心からの半径を比べた場合、トレッドセンター部の半径が大きい設計となっている。ここで転動時のベルト層の速度を考えると、タイヤの回転速度はトレッドの幅方向ではどの位置でも同じであるので、ベルトの赤道方向(周方向)の速度はベルト半径、すなわち、タイヤの回転軸からベルト層までの距離に比例する。したがって、ベルト半径の大きいセンター部の方がベルト層の速度が速くなり、ベルト半径の小さなショルダー部ではベルト層の速度が遅くなる。
スパイラル補強層を持たないタイヤでは、ベルト層が周方向に多少伸び縮みするため、上記の速度差をベルト層の伸び縮みで吸収できるが、スパイラル補強層を有するタイヤでは、スパイラル補強層が周方向に伸びにくいため、上記速度差が吸収されずに残る。そのため、トレッドの剪断変形をみると、トレッドセンター部ではベルト層の速度が速いので、トレッドが接地してから蹴り出すまでの間に、ベルト層がトレッド表面よりも先行し、トレッドはベルト層が先でトレッド表面が遅いような、いわゆるドライビング変形(タイヤ周方向についてのトレッド変形)となる。一方、ショルダー部はベルト層の速度が遅いため、トレッド周方向についての変形を見ると、トレッド表面が先行しベルト層が遅れる、いわゆるブレーキング変形を発生させる。すなわち、タイヤに駆動力や制動力が作用していない自由転動時において、上記のような余計な変形がトレッドに発生する。このような傾向は、周方向に伸びにくいスパイラル補強層を有するタイヤで顕著で、この変形によってタイヤセンター部とショルダー部とでは摩耗形態が異なり、そのため、タイヤの減り方にムラが発生する。より具体的には、タイヤを駆動力がかかる駆動軸に取付けた場合は、ドライビング変形の大きなタイヤセンター部の変形が更に大きくなり、タイヤセンター部が滑りがちとなり摩耗が進む。一方、ブレーキのかかるフロントについては、制動力がかかったときには、もともとブレーキング変形の大きなトレッドショルダー部の変形が更に大きくなり、ショルダー部が滑りがちとなりショルダー部の摩耗が進む。
このように、スパイラル補強層を有するタイヤでは、タイヤトレッドの場所による変形が異なることにより偏摩耗が発生し易いといった問題点がある。
そこで、本出願人は、スパイラル補強層の半径方向外側に更に、緩衝用ゴム部材と、赤道方向に対するコード角度が45度〜90度であるベルト部材を配置し、この緩衝用ゴム部材とベルト部材とが周方向に伸び縮みすることで、トレッド変形の一部を肩代わりさせて、トレッドの変形を抑制することのできる空気入りタイヤを提案している(特開2006−151212号公報)。しかしながら、このような構成では、ベルト層の数が増えてしまうため、コスト高になるだけでなく、タイヤの軽量化という点からも不利である。
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、ベルト層−ベルト補強層間のセパレーションを強力に抑制することができるとともに、トレッドゴムの偏摩耗を抑制することのできる安価で軽量な空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明者は鋭意検討の結果、スパイラル補強層の半径方向外側に新たに緩衝用ゴム部材とベルト部材とを配置する代わりに、通常は最内層に配置されるボディプライを最外層に配置することにより、従来と同じ構成部品を用いて、ベルト層−ベルト補強層間のセパレーションとトレッドゴムの偏摩耗をともに抑制することができることを見出し本発明に到ったものである。
すなわち、本願の請求項1に記載の発明は、タイヤトレッド部からサイドウォール部に延長しビードコア周りで折り返される、もしくは、ビードコアに係止される少なくとも1枚のボディプライと、少なくとも2枚の交錯ベルトから成る交錯ベルト層と、補強部材をタイヤ赤道面に略平行になるように巻き付けて成るベルト補強層とを備えた空気入りタイヤであって、上記ボディプライのうち少なくとも1枚が、タイヤクラウン部において、上記交錯ベルト及び上記ベルト補強層よりもタイヤ径方向外側に配置されていることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、上記ボディプライのタイヤクラウン部に配置されている部位のコード角が、トレッド中央部において、赤道方向に対して45度〜90度であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤにおいて、上記タイヤクラウン部に配置されるボディプライのタイヤ径方向内側に、その厚みが0.3mm〜3.0mmの緩衝ゴム層を配置したことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の空気入りタイヤにおいて、上記ボディプライは、ビードコアの周方向に連続する金属性のコードに挟まれ係止されていることを特徴とする。
本発明によれば、タイヤトレッド部からサイドウォール部に延長しビードコア周りで折り返される、もしくは、ビードコアに係止される少なくとも1枚のボディプライと、少なくとも2枚の交錯ベルトから成る交錯ベルト層と、補強部材をタイヤ赤道面に略平行になるように巻き付けて成るベルト補強層とを備えるとともに、上記ボディプライのうち少なくとも1枚を、タイヤクラウン部において、上記タイヤ径方向の最外層に配置するようにしたので、ベルト補強層を有するタイヤであっても、トレッド変形を十分に抑制することができる。したがって、高速走行時におけるタイヤの耐久性能を十分に確保しつつ、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。また、周方向のトレッドの変形が抑制され、滑りが抑えられるので、操縦安定性についても向上させることができる。
このとき、上記ボディプライのタイヤクラウン部に配置されている部位のコード角を、トレッド中央部において、赤道方向に対して45度〜90度とすれば、ボディプライが周方向に確実に伸びるので、トレッド変形を確実に抑制することができる。
また、上記タイヤクラウン部に配置されるボディプライのタイヤ径方向内側に、更に、その厚みが0.3mm〜3.0mmの緩衝ゴム層を配置すれば、ベルト補強層とトレッドゴムとの距離を更に大きくできるとともに、周方向の剪断歪を低減できるので、偏摩耗を更に抑制することができる。
また、上記ボディプライを、ビードコアの周方向に連続する金属性のコードに挟まれ係止するようにすれば、製造が容易となるので、生産性を向上させることができる。
以下、本発明の最良の形態について、図面に基づき説明する。
図1は、本最良の形態に係る空気入りタイヤ10の構成を示す断面図で、同図において、11はその表面にトレッドパターンを有するトレッド部、12はサイドウォール部、13はビード部、14はボディプライ、15は上記トレッド部11とボディプライ14との間に設けられた交錯ベルト、16はトレッドセンター部を中心に幅広い範囲で上記交錯ベルト15を覆うスパイラル補強層である。
本例の空気入りタイヤ10は、タイヤ骨格部材であるボディプライ14を最内層ではなく最外層に配置したもので、タイヤ径方向内側にそれぞれのコードが互いに交錯するように配置された第1及び第2のベルト層15a,15bを備えた交錯ベルト15があり、その外側にスパイラル補強層16があり、このスパイラル補強層16とトレッド部11を構成するゴム部材との間にボディプライ14が配置されている。つまり、本例の空気入りタイヤ10では、タイヤ骨格部材であるボディプライ14がタイヤクラウン部、すなわち、トレッドセンター部11aとトレッドショルダー部11bとにわたって、交錯ベルト15及びベルト補強層16よりもタイヤ径方向外側に配置されている。すなわち、亀裂が発生し易いスパイラル補強層16と交錯ベルト15の端部をプライ層であるボディプライ14により外側から覆った構造となっている。これにより、スパイラル補強層16を保護することができるので、スパイラル補強層16端部で歪及び熱の発生を低減することができる。この熱の発生は、タイヤの転動中にゴムが変形を繰り返すことで発生する。すなわち、タイヤが1回転する間に路面に接して変形し、更に、路面から蹴り出す時にタイヤクラウン部に変形が起こり、これがくり返し入力となってタイヤが発熱する。発熱は変形の大きなトレッド部で起こり易く、発熱源から故障が起こり易い箇所を離して、上記故障の起こり易い箇所の温度を低く保つことが故障発生抑制のポイントとなる。
上記図7に示した従来のタイヤ50では、スパイラル補強層53と交錯ベルト52との間での発熱が起こり易く、かつ、スパイラル補強層53がトレッド部51と直接接している構造となっているため、トレッド部51を構成するトレッドゴムの発熱がスパイラル補強層53に伝わり易い。一方、スパイラル補強層53と交錯ベルト52とのセパレーションは、スパイラル補強層53と交錯ベルト52間に発生する亀裂に起因するが、この亀裂は当該箇所の温度が高いほど発生し易い。
本発明では、スパイラル補強層16とトレッド部11との間にボディプライ14を配置することにより、亀裂の発生し易いスパイラル補強層16を発熱源であるトレッドゴムから離すようにしている。したがって、トレッド部11で発生した熱がスパイラル補強層16に伝わりにくくなるので、亀裂の発生を抑制することができる。
また、スパイラル補強層16の径方向外側にボディプライ14を配置する構成は、偏摩耗の点でも有利である。上述したように、周方向(赤道方向)に伸びないスパイラル補強層16を有するタイヤでは、トレッドが周方向に余計な変形をする。この変形は、トレッドセンター部ではドライビング変形傾向にあり、ショルダー部ではブレーキング変形傾向にある。これに対して、本発明のように、スパイラル補強層16とトレッド部11との間にボディプライ14が存在すると、ボディプライ14は赤道方向に伸びるため、トレッド部11の変形をプライ層(ボディプライ14)で吸収することができるからである。すなわち、上記変形はトレッド表面とトレッド下面のベルト層の位置が周方向において位置ズレすることが原因であり、両者の変位によってトレッドゴムに剪断変形が起こる。この変形はトレッドゴムを厚くすることで小さくできるが、本例のように、赤道方向に伸びるプライを配置しても同様の効果を得ることができる。また、ボディプライ14はプライコーティングゴムを有しているので、このプライコーティングゴムによる緩衝効果によっても上記トレッドゴムに剪断変形を小さくすることができる。
また、ボディプライ14のコードは通常に赤道方向に対して交錯しているが、プライを赤道方向に伸ばすためには、そのコード角を45度以上とすることが好ましい。すなわち、45度以上であれば、コードとコードとの間のゴムが赤道方向に伸びることでプライ層を十分に伸ばすことができる。これが45度未満、典型的には0度となると、コード自体が伸び縮みしないので、プライ層が伸びないだけでなく、ボディプライ14のコードはゴムよりも遥かに高い剛性を有しているので、赤道方向に伸びにくい部材となってしまう。その結果、ボディプライ14をスパイラル補強層16の外側に配置しても、トレッドの周方向の変形を吸収する効果がなくなる。
したがって、プライ層のコード角としては、45度以上、好ましくは、70度以上あれば、プライ層を十分に伸ばすことができる。一方、上限は90度であるが、この90度というのはコードの延長方向が幅方向になることを意味し、ラジアル構造となる。近年では、乗用車のタイヤはラジアル構造が主流であるため、実用上は90度とすることが好ましい。なお、90度であることは赤道方向に最も伸び易いので、特に好ましい角度である。
ところで、交錯ベルトやスパイラル補強層の半径方向外側にベルト部材(プライ)を配置する特殊性から、従来の製造方法ではこのようなタイヤは作りにくいため、本発明のタイヤ10を成型する際には、コア成型を用いている。コア成型とは、タイヤの内面形状をした硬いハリボテの上に部材を貼り付けていく方法で、通常のタイヤ製法では、プライはドラム缶状に作り上げ(そのドラム缶の直径はビードワイヤの直径と同じである。これを第1成型と呼ぶ)、これとは別にベルト部分をやはりドラム缶状に作り上げ(ベルト部分の直径はタイヤの外形よりやや小さい程度であり、上記したプライのドラム缶の径よりもはるかに大きい。これを第2成型と呼ぶ)、両者を合体させて加硫前のタイヤとする。この合体時には、プライのドラム缶状の貼付け物体を内側から膨らませてベルトの内面に押し付ける方法をとる。ところが、本発明のように、ベルトの外側にプライを配置するような場合には、この方法がとりにくい。そこで、上記コア成型を採用する。コア成型法では従来の第1成型と第2成型の両方を1つの工程で行ってしまう製法で、コアの上にプライを貼り付け、更にその上にベルトを貼り付け、トレッドを貼り付ける。そのため、コア製法ではプライを膨らませる工程がない。また、最初にベルトを貼り付け、次にプライを貼り付けても全く問題がない。また、コア製法を使った場合には、ビードコアの周りでプライを折り返しにくいため、ビードコアの中でプライを係止してしまう場合もある。
本例では、図1に示すように、金属製のコードから成るビードコア13cにボディプライ14を挟んで係止する構造を採用した。
このように、本最良の形態によれば、タイヤの骨格部材であるボディプライ14と2枚のベルト層15a,15bから成る交錯ベルト15と、補強部材をタイヤ赤道面に略平行になるように巻き付けて成るベルト補強層16とを備えた空気入りタイヤ10において、上記ボディプライ14をタイヤ径方向の最外層に配置することにより、トレッド部11の変形を抑制するとともに、交錯ベルト15端部とベルト補強層16のような故障が発生し易い箇所の温度上昇を抑制するようにしたので、ベルト補強層16を有するタイヤであっても、高速走行時におけるタイヤの耐久性能を十分に確保しつつ、タイヤの偏摩耗を抑制することができる。また、周方向のトレッドの変形が抑制され、滑りが抑えられるので、操縦安定性についても向上させることができる。
また、上記ボディプライ14を、ビードコア13cの周方向に連続する金属性のコードに挟まれて係止するようにしたので、製造が容易となり、生産性を向上させることができる。
また、本発明のタイヤ10では構成要素が従来のタイヤ50と同じであるので、高速走行時におけるタイヤの耐久性能を十分に確保しつつ、タイヤの偏摩耗を抑制することができる安価で軽量な空気入りタイヤを提供することができる。
なお、上記最良の形態では、径方向内側から、交錯ベルト15、スパイラル補強層16、ボディプライ14の順に配置したが、図2に示すように、スパイラル補強層16、交錯ベルト15、ボディプライ14の順であっても同様の効果を得ることができる。
また、図3に示すように、スパイラル補強層16とボディプライ14との間に緩衝ゴム層17を介挿させることにより、偏摩耗抑制効果を更に高めることができる。上記のように、スパイラル補強層16とボディプライ14のコードとの間にはプライコーティングゴムがあり、このプライコーティングゴムがスパイラル補強層16とトレッドゴムとの間の緩衝材の役割をして上記トレッドの変形を抑制しているが、スパイラル補強層16とボディプライ14との間に更に緩衝ゴム層17を設けることにより、スパイラル補強層16とトレッドとの間の距離が更に大きくなり、トレッドの変形を更に抑制することができる。
このとき、上記緩衝ゴム層17の厚さとしては、0.3mm〜3mmの範囲とすることが好ましい。これは、厚さが0.3mm未満であると緩衝ゴム層17が薄すぎて緩衝ゴム層17を配置した効果が現れにくいからである。また、厚さが3mmを超えると、緩衝ゴム層17そのものの変形が大きくなり、トレッド部分の剛性があっても、土台となる緩衝ゴム層17の剛性が低下するので、タイヤの剛性感が不足し、そのため、操縦安定性能が低下してしまうので、緩衝ゴム層17の厚さは0.3mm〜3mmの範囲とすることが好ましい。
また、上記緩衝ゴム層17の材質としては、ボディプライ14のプライコーティングゴムやスパイラル補強層16のゴムと同質のゴムとすることが好ましい。これにより、部材同士の間に余計な界面が存在しないので、界面からの剥離などの故障を防止することができる。
また、偏摩耗の観点からは、トレッドゴムよりも柔らかいゴムが好ましい。すなわち、トレッドゴムよりも柔らかいと、トレッドよりも多く変形することができるので、緩衝ゴム層17がトレッドゴムの変形を抑制することになるからである。
なお、上記緩衝ゴム層17はトレッドの全面にある必要はなく、トレッド幅の一部に存在するだけでも効果があるが、好ましくは、トレッド幅の50%以上であれば、効果が現れ易い。
また、上記例では、ボディプライ14が1枚の場合について説明したが、ボディプライ14は2枚以上あっても良い。但し、そのうち少なくとも1枚が最外層に配置する。例えば、ボディプライは2枚の場合には、図4に示すように、1枚目のボディプライ14aを最内層に配置し、2枚目のボディプライ14bを最外層に配置する構成であっても良い。なお、ボディプライ14a,14bを共に最外層に配置しても良いが、最内層が交錯ベルト層である場合には、ボディプライ14が2枚以上の場合には、最内層にもボディプライを配置する方が加硫時における不具合が生じることを防ぐ上で好ましい。
通常、タイヤの加硫時においては、タイヤは外側をタイヤモールドと呼ばれる金型で制限され、内側からブラダーと呼ばれるゴム製の風船のようなものを蒸気で膨らませることで、内側から圧力と熱とが加えられて加硫される。図7に示した従来のタイヤでは、内側にボディプライであり、このボディプライの内側(タイヤのタイヤ気室側)にインナーライナーと呼ばれる空気透過性の非常に低い、かつ、薄いゴムが配置されており、加硫時には、上記ボディプライが滑らかに拡張されてタイヤとなる。しかし、図1に示したタイヤのように最内層が交錯ベルト層で、特に、このベルト層が金属でできている場合には、加硫時において、上記ベルト端部が上記インナーライナーを突き抜けて内側へ露出する可能性がある。また、露出しなくても、インナーライナーが極めて薄くなる可能性がある。このようになると、ごくまれにではあるが、走行中にベルト層が内面から剥がれ落ちてしまい、タイヤが故障する可能性がある。したがって、図4に示すように、最内層にもボディプライを配置しておくことで、上記ベルト層の内面への脱落を防止することができる。
また、ボディプライ14は必ずしもトレッドの全領域で最外層に位置する必要はなく、例えば、図5に示すように、ボディプライ14のショルダー部のタイヤ径方向外側に、上記ベルト層15a,15bを覆うように、赤道方向に対して0度の幅狭の部材(レーヤ)18を一対配置した構成としても良い。
また、上記例では、ボディプライ14をビードコア13cの中で係止する構造としたが、ビード部13の周りでプライを折り返す構造であっても良い。但し、タイヤ製造上は、本例のように、ビードコア13cの中でプライを係止する方が有利である。
タイヤサイズ225/50R16の乗用車用の高性能タイヤにつき、図1〜図3に示した、ボディプライがタイヤクラウン部において最外層となる構成の本発明によるタイヤ(本発明1〜3)と、ボディプライが最内層となる従来のタイヤ(従来例)とをそれぞれ準備した。なお、従来のタイヤについては、図7のものではなく、図6に示すように、本発明1〜3と同様に、ボディプライをビードコア中で係止する構造のものを用いた。
これらのタイヤは、いずれも、1対のビードコアにトロイド状をなして跨るボディプライが1枚存在する。このボディプライは直径0.6mmの撚ったナイロンコードを使用している。打込み間隔はタイヤトレッドセンター部で50本/50mmであり、コード角はラジアル(赤道方向に対する角度が90度)である。このボディプライはビードコア内部で係止されており、ビードコアがボディプライの両側からボディプライを固定する。
また、タイヤクラウン部分(トレッド部分)を補強する2枚の交錯ベルト層は、それぞれ、直径0.18mmのスチールの単線を3本合わせて撚った、いわゆる1×3タイプのコードを、赤道面に対して40度傾けて、互いに交錯させて配置したもので、打込み間隔は35本/50mmである。
これらのタイヤのトレッド幅は225mmであり、交錯ベルトの径方向内側にある交錯ベルト層の幅は220mm、径方向外側にあるベルト層の幅は210mmである。
従来例のタイヤでは、スパイラル補強層は、直径が0.7mmの撚った芳香族ポリアミド(商品名ケブラー)コードを、打込み間隔50本/50mmで配置している。幅は230mmであり、交錯ベルトの外側に、交錯ベルトの全幅について1層の補強層で覆うように配置されている。つまり、最内層にボディプライ、次に、2枚の交錯ベルト層(幅の広い方が内側)、最外層がスパイラル補強層である。スパイラル補強層の製造は、ケブラーコードを2本平行に並べて未加硫ゴムで覆いストリップ状とし、これをタイヤ成型時に交錯ベルト上に巻き付けて製造した。
また、トレッド層は厚みが8mmのゴムであり、所定の溝が配置されている。
本発明1のタイヤは、図1に示すように、最内層に2枚の交錯ベルト層(幅の広い方が内側)、次にスパイラル補強層、最外層にボディプライが配置されており、その外側がトレッド層である。
一方、本発明2のタイヤでは、図2に示すように、最内層にスパイラル補強層、次に、2枚の交錯ベルト層(幅の広い方が内側)、最外層にボディプライが配置されており、その外側がトレッド層である。
また、本発明3のタイヤは、図3に示すように、スパイラル補強層と最外層のボディプライとの間に、厚みが0.7mmの緩衝ゴム層を配置したもので、この緩衝ゴム層の材質はボディプライのコーティングゴムと同種のゴムである。また、上記緩衝ゴム層の幅は200mmである。
耐久性の試験は、各タイヤについて、6kNの荷重を負荷しながら直径3mのドラム上をスリップ角1度、100km/hで走行を開始し、その後、5分毎に10km/hのステップで速度を増加させてベルト端が故障するまで走行させ、高速耐久性を求めた。
その結果は、従来例のタイヤを指数で100とすると、本発明1,3のタイヤは共に指数が116、本発明2のタイヤは指数が108であった。上記従来例のタイヤは、市場において高速耐久性が優れているとの評価を受けているタイヤであるが、本発明1〜3のタイヤはそれ以上の高速耐久性を示すことが確認された。
なお、いずれのタイヤも、故障は交錯ベルトとスパイラル補強層との間で発生した。
また、本発明2のタイヤが本発明1,3のタイヤに比べて耐久性が低いのは、スパイラル補強層が内側にあるために交錯ベルト層を十分に押え込めなかったからと考えられるが、いずれにしても、最外層にボディプライが配置されているタイヤは、従来例のタイヤに比べて高速耐久性が向上している。
次に、上記各タイヤの偏摩耗特性を調べた。
偏摩耗特性は上記各タイヤを国産乗用車(前輪駆動車)に装着した後、この試験車両を高速道路、市街地路、山坂路等を組み合せて走行させ、それぞれ、3200km、9600km、16000kmだけ走行したときの各タイヤのタイヤ赤道上での摩耗量とトレッド端部での摩耗量を測定した。摩耗量は、駆動輪である前輪で大きかったため、前輪についての測定結果を以下の表にまとめた。
以下の表1において、偏摩耗の評価指数である摩耗比Mは、(タイヤ赤道上での摩耗量)/(トレッド端部での摩耗量)の左右のタイヤの平均値である。
Figure 2008195148
上記摩耗比Mは、いずれのタイヤでも1以下であることから、センター部よりもショルダー部の摩耗が進んでいることがわかる。
表1から明らかなように、本発明1〜3のタイヤは、いずれも従来例のタイヤに比較して偏摩耗特性が大幅に改善されていることが分かる。
また、本発明1と本発明2の比較から、スパイラル補強層が最内層にある本発明2の方が本発明1よりも偏摩耗特性が優れていることが分かる。すなわち、本発明2は高速耐久性能で本発明1にやや劣るが、偏摩耗特性は優れている。
次に、上記各タイヤを高性能乗用車に装着した後テストコース走行させ、熟練ドライバーによって操縦安定性をフィーリング評価してもらった。なお、タイヤは4輪全て同じタイヤを用いた。
その結果を10点満点で評価すると、従来例のタイヤは6点であったが、本発明1,2のタイヤでは8点、本発明3のタイヤでは9点と、本発明1〜3のタイヤが高得点であった。これは、本発明によって周方向のトレッド変形が抑制され滑りが抑えられたるため、限界走行でのグリップが向上したためであると考えられる。
このように、本発明によれば、スパイラル補強層を備えた空気入りタイヤの高速耐久性及び偏摩耗性を向上させることができるとともに、操縦安定性についても向上させることができるので、高速運転時において優れた特性が要求される高性能乗用車タイヤを提供することができる。
本発明の最良の形態に係る空気入りタイヤの構成を示す断面図である。 本発明による空気入りタイヤの他の構成を示す図である。 緩衝ゴム層を付加した空気入りタイヤの構成を示す図である。 ボディプライが2枚の場合の空気入りタイヤの一構成例を示す図である。 本発明による空気入りタイヤの他の構成を示す図である。 実施例に用いた従来の空気入りタイヤの構成を示す図である。 従来のベルト補強層を有する空気入りタイヤの構成を示す図である。
符号の説明
10 空気入りタイヤ、11 トレッド部、12 サイドウォール部、
13 ビード部、13c ビードコア、14 ボディプライ、15 交錯ベルト、
15a 第1のベルト層、15b 第2のベルト層、16 ベルト補強層、
17 緩衝ゴム層、18 レーヤ。

Claims (4)

  1. タイヤトレッド部からサイドウォール部に延長しビードコア周りで折り返される、もしくは、ビードコアに係止される少なくとも1枚のボディプライと、少なくとも2枚の交錯ベルト層から成る交錯ベルトと、補強部材をタイヤ赤道面に略平行になるように巻き付けて成るベルト補強層とを備えた空気入りタイヤであって、上記ボディプライのうち少なくとも1枚が、タイヤクラウン部において、上記交錯ベルト及び上記ベルト補強層よりもタイヤ径方向外側に配置されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 上記ボディプライのタイヤクラウン部に配置されている部位のコード角が、トレッド中央部において、赤道方向に対して45度〜90度であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 上記タイヤクラウン部に配置されるボディプライのタイヤ径方向内側に、厚みが0.3mm〜3.0mmの緩衝ゴム層を配置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 上記ボディプライは、ビードコアの周方向に連続する金属性のコードに挟まれ係止されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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