JP2007099068A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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誠 石山
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真幸 松本
Yutaka Tomizuka
裕 富塚
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Abstract

【課題】 操縦安定性を損なうことなく、ベルト層とベルト強化層の間に生じるせん断歪みを低減し、セパレーション等の故障の発生を抑制して空気入りタイヤの耐久性を向上させる。
【解決手段】 ベルトプライ11、12からなるベルト層10のタイヤ半径方向外側に、それらよりも幅広で周方向に延びる補強素子25が埋設されたベルト強化層20を配置する。ベルト層10の端部とベルト強化層20の間に、幅狭な補強層30を、ベルトプライ11、12の端部を跨いで重ね合わせて配置する。補強層30内には、幅広なベルトプライ12内の補強素子15とタイヤ赤道面Sに対して逆方向に傾斜する補強素子35、例えば芳香族ポリアミドからなる補強素子35を複数埋設する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、空気入りタイヤに関し、特に、周方向に延びる補強素子が埋設されたベルト強化層をベルト層に重ね合わせて配置した空気入りタイヤに関する。
乗用車用タイヤ等の空気入りタイヤは、一般に、一対のビードコアと、その間をトロイダル状に延びる少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカス層とを備え、トレッド部のカーカス層の外周には、剛性の高い補強素子が埋設された1枚以上のベルトプライからなるベルト層が設けられている。このベルト層は、カーカス層を保護するだけでなく空気入りタイヤを径方向に圧縮する役目をしており、周方向の剛性を保ちいわゆるたが効果を発揮する。
しかしながら、このような構造の空気入りタイヤでは、回転速度が速くなる高速走行時に、遠心力が作用してタイヤのトレッド部がタイヤ半径方向(以下、単に半径方向という)外側に膨張変形することがある。その結果、高速走行時の操縦安定性が低下するとともに、遠心力が作用してベルト層に下層の部材から剥がれようとする力が繰り返し生じたり、或いは、トレッド部の路面との接地圧が上昇して接地面付近が発熱し、ベルト層付近等にセパレーションや熱による故障等が生じてタイヤの耐久性が低下する怖れがある。
このような問題に対処するため、従来、トレッド部のベルト層に、実質上タイヤ周方向(以下、単に周方向という)に延びる補強素子が埋設されたベルト強化層を重ね合わせて配置し、トレッド部を強化して高速走行時の遠心力による膨張変形等を抑制した空気入りタイヤが知られている(特許文献1参照)。
図3は、この従来の空気入りタイヤ90の要部を示すタイヤ幅方向断面図である。
図示のように、この空気入りタイヤ90は、トレッド部2に、トロイダル状に延びるカーカス層3とその外周側に設けられたトレッド4とを有し、トレッド4の半径方向内側に、半径方向に重ねて配置された少なくとも2枚(図では2枚)のベルトプライ11、12からなるベルト層10と、このベルト層10の半径方向内側に隣接し、かつカーカス層3との間に配置されたベルトプライ11、12よりも幅狭な少なくとも1枚(図では1枚)の強化プライからなるベルト強化層20とを備える。
ベルト層10を構成する各ベルトプライ11、12には、内部にタイヤ赤道面に対してそれぞれ逆方向に傾斜したスチールコード等からなる複数本の非伸張性の補強素子が埋設されている。また、ベルト強化層20に隣接する半径方向内側のベルトプライ12が、外側のベルトプライ11よりも幅広に形成されている。一方、ベルト強化層20を構成する強化プライには、内部に実質上タイヤ周方向(以下、単に周方向という)に延びる補強素子が埋設されている。この強化プライは、例えば1本又は複数本の補強素子をゴムで被覆したストリップ状の部材をカーカス層3の外周に螺旋状(スパイラル状)に多数回巻き付ける等して形成される。
この従来の空気入りタイヤ90では、ベルト強化層20内の補強素子により周方向の変形を抑制できるため、周方向の剛性を高めて前記たが効果を向上できる。その結果、トレッド部2を押さえ付けて高速転動時の遠心力により膨張変形するのを抑制でき、高速走行時の空気入りタイヤ90の操縦安定性や耐久性を大きく向上できる。
このような効果に着目して、近年では、トラック・バス用タイヤや自動二輪車用タイヤ等の乗用車用以外の種々の空気入りタイヤにおいても、同様の構造を有するベルト強化層20を設けることが行われている。これらの空気入りタイヤに設けるベルト強化層20の補強素子としては、従来から用いられているナイロンや芳香族ポリアミド等の有機繊維やスチール等からなるコードが広く採用されているが、中でも芳香族ポリアミドやスチールは、高温時においても伸張しにくくトレッド部2の膨張変形を効果的に抑制できるため、近年、特に注目されている。
しかしながら、このような構造を有する空気入りタイヤ90では、以下で説明するように、ベルト強化層20の周方向の変形に対する剛性の高さを原因として、ベルト層10のタイヤ幅方向(以下、単に幅方向という)の端部とベルト強化層20との間のゴムに大きなせん断歪みが発生しやすいという問題がある。その結果、ベルト強化層20とベルト層10間に亀裂が生じて層間にセパレーションが発生しやすいという問題が生じる。
即ち、空気入りタイヤ90のトレッド部2の外周面には、最大外径のトレッド4中央部から最小外径の端部に向かうに従い、外径が徐々に小さくなるように径差が設けられているが、この径差は、接地時にトレッド部2の接地面が路面形状に合わせて幅方向の曲げ変形を受けて平らになることで消滅する。このとき、トレッド部2の接地面は、中央部が縮み、端部付近が伸びることで平面状に変形する。この変形に合わせて、ベルト層10及びベルト強化層20にも同様の接地面内の曲げ変形が生じる結果、各層10、20に幅方向外側に向かうに従い大きくなる周方向の引っ張り力が発生する。
ところが、ベルト強化層20には、内部に周方向に延びる補強素子が埋設されているため同方向に変形しにくく、接地時の周方向の引っ張り力による伸びが非常に小さくなる。一方、ベルト層10には、内部にタイヤ赤道面に対して傾斜した補強素子が埋設されているため、補強素子間のゴムが伸びること等で周方向に変形でき、接地時の周方向の伸びがベルト強化層20に比べて大きくなる。その結果、隣接するベルト強化層20とベルト層10(ベルトプライ12)の間に伸びの差が生じ、これによりベルト強化層20とベルト層10(ベルトプライ12)の間のゴムに大きな周方向のせん断歪みが繰り返し発生する。
この層間ゴムのせん断歪みは、周方向の伸びの差が大きくなるほど大きくなり、従って、最も大きな周方向の引っ張り力を受けて伸びが最も大きくなる幅広なベルトプライ12の幅方向両端部付近で最大となる。その結果、この従来の空気入りタイヤ90では、ベルトプライ12の両端部とベルト強化層20との間のゴムに亀裂が生じ、この亀裂を核として層間にセパレーションが進展しやすく、従って、空気入りタイヤ90の耐久性が低下するという問題がある。
特に、近年では、車両の高速化や空気入りタイヤの偏平化に伴い、空気入りタイヤに要求される性能や安全性、及び各部材が受ける負荷等が増加する傾向にあり、ベルト層10とベルト強化層20間のセパレーションの発生等を効果的に抑制し、空気入りタイヤの耐久性、特に高速走行時の耐久性を更に向上させる必要がある。
そこで、ベルト強化層20をベルト層10よりも幅広に形成するとともに、ベルト強化層20をベルト層10の半径方向外側に配置することで、高速走行時のトレッド部2の膨張変形を効果的に抑制し、空気入りタイヤの耐久性を向上させることが提案されている(特許文献2参照)。
図4は、特許文献に記載されたものではないが、このようなベルト強化層20を備えた空気入りタイヤ91の一例を示す幅方向半断面図である。
この空気入りタイヤ91は、上記した図3に示す従来の空気入りタイヤ90と同様に、トレッド部2に、一対のビードコア5間をトロイダル状に延びるカーカス層3と、その外周側に設けられたトレッド4を備える。また、カーカス層3とトレッド4の間に、内部にタイヤ赤道面Sに対してそれぞれ逆方向に傾斜して延びる補強素子が埋設された2枚のベルトプライ11、12からなるベルト層10と、内部に実質上周方向に延びる補強素子が埋設された1枚の強化プライからなるベルト強化層20を備える。
しかし、この空気入りタイヤ91では、トレッド4の半径方向内側に、ベルト層10よりも幅広で、トレッド部2の端部付近まで延びるベルト強化層20を配置し、ベルト強化層20とカーカス層3の間にベルト層10を重ねて配置した点で、前記図3の従来の空気入りタイヤ90と相違する。なお、ベルト層10内では、ベルト強化層20と隣接する半径方向外側のベルトプライ11が、内側のベルトプライ12よりも幅狭に形成されている。
この空気入りタイヤ91は、以上のように構成され、幅広なベルト強化層20をベルト層10の外周側に配置して、高速転動時に掛かる遠心力で下層の部材から剥がれようとするベルト層10を半径方向外側から押さえるとともに、ベルト強化層20をトレッド部2の端部まで配置して周方向の剛性を高め、膨張変形を効果的に抑制して高速走行時の操縦安定性や耐久性等を更に向上させている。
しかしながら、この空気入りタイヤ91でも、幅広のベルトプライ12の両端部とベルト強化層20の間のゴムに亀裂が生じてセパレーションが発生することがある。これは、幅狭のベルトプライ11には、その補強素子と交錯して延びる補強素子を有する幅広のベルトプライ12が重ねて配置されているため、その両端部が拘束されて周方向に動きにくいのに対し、幅広のベルトプライ12の両端部は、拘束を受けずに周方向に動きやすくなっているため、ベルト強化層20との間のゴムに生じる周方向のせん断歪みが大きくなるからである。
このような問題に対処する方法の1つとして、ベルト層10の両端部とベルト強化層20との間にゴム層を配置して、各層10、20間の距離を大きくする方法が考えられる。これにより、各層10、20の周方向の伸びの差が大きい場合であっても、層間のゴムに生じるせん断歪みを低く抑えることができ、亀裂やセパレーションの発生を抑制できる。しかし、以下で説明するように、このような構造の空気入りタイヤ91を製造することは極めて難しい。
即ち、空気入りタイヤ91の製造工程の一部である加硫成型工程では、未加硫のグリーンタイヤ(生タイヤ)を金型(モールド)内に装入した後、グリーンタイヤの内側から熱と圧力を加えて加硫及び型付けを行って所定形状の製品タイヤ91を製造する。この金型内の圧力で、グリーンタイヤは、2%から7%程度、外方向に拡張して金型内周面に押し付けられて型付けされる。このとき、ベルト強化層20は、実質上周方向に延びる補強素子を有するため、周方向にほとんど変形・拡張しないのに対し、ベルト層10は、タイヤ赤道面Sに対して傾斜した補強素子を有するため、補強素子間のゴムが周方向に伸びる等して周方向に変形・拡張する。
この周方向の変形挙動の差により、ベルト層10とベルト強化層20の間の体積が減少し、その部分の未加硫ゴムには、内周側の拡張するベルト層10から外周側の拡張しないベルト強化層20に向かう圧力が生じる。この圧力により、前記未加硫ゴムは、ベルト強化層20の補強素子間から半径方向外側に押し出されて移動したり、或いはベルト強化層20の内周に沿って幅方向外側に流動する等して、ベルト層10とベルト強化層20の間から流出する。これは、加熱された未加硫ゴムが極めて柔らかい流動体であるのに対して、ベルト層10やベルト強化層20が内部の補強素子により流動できないために生じる現象であり、特にゴムの流動性が高い加硫初期に生じる。
このように、加硫前にベルト層10とベルト強化層20の間にゴム層を配置しても加硫時に流出してしまうため、この方法で加硫後の空気入りタイヤ91の各層10、20間の距離を確保することは極めて難しい。従って、この空気入りタイヤ91でも、ベルト層10の両端部とベルト強化層20の距離が接近して接地時の層間ゴムに生じるせん断歪みが大きくなり、その結果、亀裂やセパレーションの発生を十分に抑制できない。
以上のような問題に対し、幅狭な補強層をベルト層10に重ねて配置して周方向の伸びを低減するとともに、ベルト層10とベルト強化層20の間の距離を確保してセパレーションの発生を抑制した空気入りタイヤが知られている(特許文献3参照)。
図5は、この従来の空気入りタイヤ92の幅方向半断面図である。
この空気入りタイヤ92は、トレッド部2に、カーカス層3の半径方向外側に配置された、内部に実質上周方向に延びる補強素子が埋設された2枚の強化プライ21、22からなるベルト強化層20と、ベルト層20の半径方向外側に配置された、内部にタイヤ赤道面に対して傾斜した補強素子が埋設された1枚のベルトプライからなるベルト層10とを備える。ベルト強化層20の強化プライ21、22は略同幅に形成され、ベルト層10はベルト強化層20よりも幅広に形成されている。
また、この空気入りタイヤ92は、ベルト層10の半径方向外側に重ねて配置された幅狭な補強層30と、ベルト層10の端部とベルト強化層20の間に配置されたゴム層40とを備える。補強層30は、ベルト層10の補強素子とタイヤ赤道面に対して逆方向に傾斜した補強素子を埋設して形成されており、これにより周方向の剛性を高めてベルト層10の周方向の伸びを低減し、ベルト層10とベルト強化層20の間のゴムに生じるせん断歪みを低下させている。同時に、ゴム層40により、ベルト層10の端部とベルト強化層20の距離を大きくして層間のゴム層40に生じるせん断歪みを低減し、亀裂やセパレーションの発生を抑制している。なお、図4の空気入りタイヤ91とは異なり、加硫成型時に、拡張しないベルト強化層20が拡張するベルト層10の半径方向内側にあるため、各層10、20間の体積が減少せず、ゴム層40は加硫後も流出せずに各層10、20間の距離が保たれる。
しかしながら、この従来の空気入りタイヤ92では、ベルト層10の半径方向内側にベルト強化層20を配置しているため、半径方向外側にベルト強化層20を配置した図4の空気入りタイヤ91に比べて高速走行時にベルト層10を抑える効果が小さいという問題がある。また、ベルト強化層20の幅が狭くトレッド部2の端部まで配置されていないため、その付近の周方向の剛性が低くなり高速走行時に膨張変形して路面との接地圧が上昇し、接地面付近が発熱する怖れがある。従って、この従来の空気入りタイヤ92では、特に高速走行時の操縦安定性が低下する怖れがあるとともに、ベルト層10が剥離してセパレーションが生じたり、或いはトレッド部2に熱による故障が生じる等して耐久性が低下する怖れもある。
特開平2−208101号公報 特開2000−203215号公報 特開2005−178650号公報
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、操縦安定性を損なうことなく、ベルト層とベルト強化層の間に生じるせん断歪みを低下させ、セパレーション等の故障の発生を抑制して空気入りタイヤの耐久性を向上させることである。
請求項1の発明は、一対のビードコアと、該ビードコア間をトロイダル状に延びるカーカス層と、トレッド部の前記カーカス層の外周側に配置されたトレッドとを備えた空気入りタイヤであって、前記カーカス層と前記トレッドの間に、前記カーカス層のタイヤ半径方向外側に配置された、複数本の金属製の補強素子を有する少なくとも1枚のベルトプライを含むベルト層と、該ベルト層のタイヤ半径方向外側に配置された、該ベルト層よりも幅広で実質上タイヤ周方向に延びる補強素子を有する少なくとも1枚の強化プライからなるベルト強化層と、前記ベルト層のタイヤ幅方向外側の両端部と前記ベルト強化層の間のそれぞれに、かつ前記ベルト層の端部を跨いで重ね合わせて配置された、複数本の補強素子を有する幅狭の補強層と、を備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載された空気入りタイヤにおいて、前記ベルトプライの補強素子が、タイヤ赤道面に対して15度から70度の角度で傾斜していることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載された空気入りタイヤにおいて、前記補強層の補強素子が、タイヤ赤道面に対して20度から90度の角度で傾斜していることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載された空気入りタイヤにおいて、前記ベルト層のベルトプライが1枚である場合には該ベルトプライの補強素子と、前記ベルト層のベルトプライが複数枚である場合にはタイヤ幅方向の幅が最も広いベルトプライの補強素子と、前記補強層の補強素子が、タイヤ赤道面に対して逆方向に傾斜していることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載された空気入りタイヤにおいて、前記補強層のタイヤ幅方向の幅が、20mmから70mmであることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載された空気入りタイヤにおいて、前記補強層の補強素子が、有機繊維からなることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項6に記載された空気入りタイヤにおいて、前記有機繊維が、芳香族ポリアミドからなることを特徴とする。
(作用)
本発明によれば、空気入りタイヤのベルト層に金属製の補強素子を有するベルトプライを含め、ベルト層の面内せん断剛性を高くして接地時等にトレッド部が過大に変形するのを抑制する。また、ベルト層の半径方向外側にベルト層よりも幅広で実質上周方向に延びる補強素子を有するベルト強化層を配置し、ベルト層等を外周側から押さえ付けて、高速転動時の遠心力で生じるトレッド部の膨張変形や、ベルト層が下層の部材から剥がれようとするのを抑制する。更に、複数本の補強素子を有する幅狭の補強層を、ベルト層の幅方向外側の両端部とベルト強化層の間のそれぞれに、ベルト層の端部を跨いで重ね合わせて配置し、ベルト層端部とベルト強化層間の距離を大きくするとともに、ベルト層端部の周方向の伸びを抑制し、ベルト層端部とベルト強化層間のせん断歪みを低下させる。
本発明によれば、高速転動時や接地時に生じるトレッド部やベルト層の変形等を抑制できるため、空気入りタイヤの操縦安定性を維持しつつ、ベルト層の剥離や熱による故障の発生を抑制できる。また、ベルト層の両端部とベルト強化層間に補強層を配置したため、ベルト層とベルト強化層間のせん断歪みを低下でき、層間に亀裂が生じるのを抑制できる。従って、操縦安定性を損なうことなく、セパレーション等の故障の発生を効果的に抑制でき、空気入りタイヤの耐久性を向上できる。
以下、本発明の空気入りタイヤの一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向半断面図であり、図2は、この空気入りタイヤ1のトレッド部2の構造を模式的に示す一部破断平面展開図である。
この空気入りタイヤ1は、乗用車等に装着される空気入りラジアルタイヤであり、図1に示すように、半径方向内側(図では下側)に位置する一対のビード部6と、ビード部6から略半径方向外側(図では上側)に向かってそれぞれ延びるサイドウォール部7と、サイドウォール部7の半径方向外側の端部同士を連結する略円筒状のトレッド部2とを備える。
また、この空気入りタイヤ1は、図4に示す前記従来の空気入りタイヤ91と同様に、ビード部6の半径方向内側端部付近に埋設された一対のビードコア5と、ビードコア5周りに折り返され、かつ一対のビードコア5間に渡ってトロイダル状に延びるカーカス層3と、トレッド部2の外周側に設けられ、リブ溝50等からなるトレッドパターンが形成されたトレッド4とを備える。加えて、トレッド部2内のカーカス層3とトレッド4の間に、カーカス層3の外周側に隣接し、半径方向に重ねて配置された少なくとも1枚(図では2枚)のベルトプライ11、12からなるベルト層10と、ベルト層10の半径方向外側に配置されたベルト層10よりも幅広な少なくとも1枚(図では1枚)の強化プライからなるベルト強化層20とを備える。しかしながら、この空気入りタイヤ1では、ベルト層10とベルト強化層20間の幅方向両端部付近のそれぞれに幅狭な補強層30を更に備える点で、前記従来の空気入りタイヤ91と相違する。
ビードコア5は、複数本のスチールワイヤ等を巻き重ねた環状の部材であり、カーカス層3の両端部を固定する他に、車両装着後の内部空気圧の保持や、空気入りタイヤ1がリムから外れるのを防ぐ役割等を有する。
カーカス層3は、図1に示すように、サイドウォール部7とトレッド部2内を通って各部7、2を補強するととともに、ビードコア5を包み込むように、即ち、ビードコア5の周りを幅方向内側から外側に向かって折り返して半径方向外側(図では上側)に向かって巻き上げられ、内圧充填時の引っ張り力等でビードコア5から引き抜かれるのを防止する。このカーカス層3は、少なくとも1枚のカーカスプライから構成され、図2に示すように、カーカスプライの内部には実質上ラジアル方向、即ちタイヤ赤道面Sに対する角度が90度である子午線方向に延びる非伸張性の補強素子9、例えばスチールコードやナイロンコード等の補強素子9が複数本埋設されている。
ベルト層10は、図1に示すように、タイヤ赤道面Sから幅方向両外側に向かって略等しい長さに渡って延びる少なくとも1枚(図では2枚)のベルトプライ11、12から構成され、カーカス層3を保護してトレッド部2を補強するとともに、周方向等の剛性を高めて、たが効果を発揮する。ベルトプライ11、12の内部には、図2に示すように、タイヤ赤道面Sに対して所定の角度で傾斜して延びる非伸張性の補強素子15、例えばスチールコード等の金属からなる補強素子15や芳香族ポリアミド等の有機繊維コードからなる補強素子15が複数本埋設されている。
本実施形態のベルト層10は、図1に示すように、2枚のベルトプライ11、12を半径方向に重ねて構成され、半径方向内側のベルトプライ12が外側のベルトプライ11よりも幅広に形成されている。各ベルトプライ11、12は互いに交錯する、即ち、その内部には、図2に示すように、タイヤ赤道面Sに対してそれぞれ逆方向に傾斜して延びる補強素子15、ここではスチールコード等の金属からなる補強素子15が複数本埋設されている。
ここで、補強素子15として、比較的剛性が低く柔軟性を有する有機繊維コードを用いた場合には、ベルト層10が、内圧充填時や接地時等にトレッド部2の変形に対応して柔軟に変形できるため、ベルト層10の端部に過大な張力等が掛かることが少なく、周方向の変形等に対しても柔軟に対応できる。その結果、上記したベルト層10の端部とベルト強化層20の間のゴムに生じる周方向のせん断歪みも過大にならず、その部分でのセパレーションは生じにくい。
これに対し、剛性の高い金属からなる補強素子15を用いた場合には、ベルト層10の剛性も高くなるため、上記したように隣接するベルト強化層20との間のゴムに大きな周方向のせん断歪みが生じてセパレーション等が発生しやすくなる。しかしながら、金属からなる補強素子15は、有機繊維コードに比べて圧縮変形に対する剛性も高いため、ベルト層10の面内せん断剛性も高くなり、接地時にトレッド部2が過大に変形するのが抑制されて操縦安定性がより高くなるという利点を有する。本実施形態のベルト層10では、この利点を考慮して金属からなる補強素子15により各ベルトプライ11、12を形成している。
なお、このようなベルトプライが1枚あればベルト層10の面内せん断剛性を高めることができ、従って、このベルト層10のように2枚、又はそれ以上のベルトプライからなるベルト層10では、1枚のベルトプライを金属からなる補強素子15から形成すれば、他のベルトプライは、芳香族ポリアミド等の有機繊維コードから形成してもよい。
ベルト強化層20は、図1に示すように、タイヤ赤道面Sから幅方向両外側に向かって略等しい長さに渡って延びる少なくとも1枚(図では1枚)の強化プライから構成される。このベルト強化層20は、前記ベルト層10の幅広のベルトプライ12よりも幅広に形成され、トレッド部2の両端部のショルダー部(肩部)8付近まで、ベルト層10を半径方向外側から覆うように配置されている。その内部には、図2に示すように、実質上周方向に延びる補強素子25、例えばスチールコード等の金属からなる補強素子25や芳香族ポリアミド等の有機繊維コードからなる補強素子25が埋設され、トレッド部2の周方向の剛性を高めて高速転動時のトレッド部2の膨張変形等を抑制する。
ここで、ベルト強化層20の強化プライは、例えば1本又は複数本の並列な補強素子25をゴムで被覆したストリップ状の部材を、カーカス層3の外周に螺旋状(スパイラル状)に多数回巻き付ける等して形成される。この補強素子25は、上記したように実質上周方向に延びるように配置すればよく、従って、図2に示すように、互いに平行な直線状の補強素子25を周方向に延びるように配置してもよく、又は、ベルト強化層20の表裏面に平行な平面内において、例えば方形波、三角波、正弦波等の波状やジグザグ状に屈曲した補強素子25を周方向に延びるように同一位相で配置してもよい。
補強層30は、図1に示すように、ベルト層10とベルト強化層20の間の所定位置に配置されたときに、それぞれの幅方向内側端部間に十分な距離が開くように幅狭に形成されている。この各補強層30は、ベルト層10を構成するベルトプライ11、12の幅方向外側の両端部と、その半径方向外側のベルト強化層20との間に、ベルトプライ11、12の幅方向外側の端部を跨いで半径方向外側から覆うように重ね合わせて配置されている。即ち、各補強層30は、その幅方向外側端部が、ベルト強化層20の幅方向外側端部よりも幅方向内側に、かつ、ベルト層10の内周側の幅広なベルトプライ12の幅方向外側端部よりも幅方向外側に位置するように配置され、その幅方向内側端部が、ベルト層10外周側の幅狭なベルトプライ11の幅方向外側端部よりも幅方向内側に位置するように配置されている。
補強層30は、図2に示すように、内部にタイヤ赤道面Sに対して所定の角度で傾斜して延びる非伸張性の補強素子35が複数本埋設された補強プライからなる。本実施形態では、各補強素子35を、半径方向内側に隣接するベルト層10の幅広なベルトプライ12内の各補強素子15と、タイヤ赤道面Sに対して逆方向に傾斜させている。即ち、補強層30の補強素子35と、これに重なり合うベルトプライ12の端部付近の補強素子15は互いに交錯する。
ここで、補強層30の補強素子35としては、例えばスチールコード等の金属からなる補強素子35を用いてもよいが、有機繊維からなる補強素子35を用いてもよい。金属からなる補強素子35の場合には、引っ張り等に対する強度が高くなるものの、接地時等の変形時に、隣接するベルト層10内の補強素子15やベルト強化層20内の補強素子25とゴムを挟んで互いに擦れ合い、その間のゴムが削られる等して亀裂、及びセパレーションが発生する怖れがある。しかし、有機繊維からなる補強素子35の場合には、繊維自体の硬さが低く、擦れ合いによりゴムを削るようなことが少ないため、セパレーションをより発生させにくいという利点を有する。特に、補強素子35の有機繊維が芳香族ポリアミドからなる場合には、引っ張り等に対する強度も他の有機繊維に比べて高くなるとともに耐熱性に優れるため、高速転動時に高温となるベルト層10の端部に配置しても、溶解せずにその機能を発揮する。
なお、上記したようにグリーンタイヤの加硫成型時に、補強層30には、半径方向内側の拡張するベルト層10に押されて、半径方向外側の拡張しないベルト強化層20に向かう圧力が生じる。しかし、補強層30は、内部に複数本の補強素子35を有するために、この加硫成型時の圧力によっても流動しにくく、従って、周囲のゴムが各層10、20間から流出するのが抑制され、加硫成型後も各層10、20間のゴムを確保しつつ、ほぼ同様の位置に残留する。
本実施形態の空気入りタイヤ1は、以上のように構成され、以下で説明する種々の特長を有する。
即ち、ベルト層10を構成するベルトプライの少なくとも1枚に、圧縮変形に対する剛性の高い金属からなる補強素子15を埋設したため、全てのベルトプライを有機繊維からなる補強素子15で形成した場合に比べて、ベルト層10の面内せん断剛性を高くでき、接地時等にトレッド部2が過大に変形するのを抑制して操縦安定性を高くできる。同時に、補強素子15をタイヤ赤道線Sに対して傾斜させたため、幅方向の曲げ変形等に対しても剛性が高くなり、接地時等の面内せん断剛性を高くできる。また、このベルト層10では、各ベルトプライ11、12の内部に、タイヤ赤道面Sに対してそれぞれ逆方向に傾斜して延びる補強素子15を埋設して交錯させたため、それぞれの面内せん断変形の向きが逆になり、互いに変形を抑制し合って面内せん断剛性が高くなり操縦安定性がより高くなる。
ここで、本実施形態のベルト層10のように、2枚のベルトプライ11、12を逆方向に交錯させて配置した場合には、各補強素子15のタイヤ赤道面Sに対する傾斜角度が45度から60度のときにベルト層10の面内せん断剛性が最大となる。このベルト層10の面内せん断剛性が高いと、特に操舵初期のタイヤの操縦安定性が向上して好ましい。しかし、本実施形態の空気入りタイヤ1のように、ベルト層10に加えて周方向に延びる補強素子25を有するベルト強化層20を設けた場合には、ベルトプライ11、12の補強素子15の傾斜角度の範囲を45度から60度より広くしても、ベルト強化層20があるため、充分に大きな面内せん断剛性を得ることができる。
しかしながら、補強素子15の傾斜角度が15度未満である場合には、2枚のベルトプライ11、12内の各補強素子15の角度差があまりにも小さくなりすぎることに加えて、ベルト強化層20の周方向に延びる補強素子25との角度差もあまりにも小さくなりすぎるため、充分なベルト層10の面内せん断剛性を得ることができなくなる。逆に、補強素子15の傾斜角度が大きい場合、例えば90度である場合には、2枚のベルトプライ11、12の各補強素子15は互いに平行に幅方向に配置されることになり、ベルト層10の面内せん断剛性が大きく低下し、ベルト層10は横方向に簡単にせん断されてしまい操縦安定性が著しく悪化する。同様に、傾斜角度が70度よりも大きい場合には、2枚のベルトプライ11、12同士の角度差があまりにも小さすぎて、充分な面内せん断剛性が得られず、操縦安定性が低下する怖れがある。
従って、ベルト層10の補強素子15のタイヤ赤道面Sに対する傾斜角度は、15度から70度であることが望ましい。この範囲内であれば、ベルト強化層20内の補強素子25、又は他のベルトプライの補強素子15との交錯角度が適切になり、ベルト層10の面内せん断剛性を高めて操縦安定性の低下を防止できる。
また、ベルト層10よりも幅広なベルト強化層20をベルト層10の半径方向外側に配置したため、高速転動時の遠心力で下層の部材から剥がれようとするベルト層10全体を半径方向外側から押さえ付けて、その剥離やセパレーション等を効果的に抑制できるとともに、トレッド部2の膨張変形を抑制する効果も大きくなる。加えて、その幅方向両端部がトレッド部2の両端部付近に位置するように、ベルト強化層20を充分な幅に形成して配置したため、トレッド部2の端部まで周方向の剛性を高めることができ、その部分の遠心力による膨張変形を確実に抑制できる。その結果、トレッド部2全体の路面との接地圧を均一化でき、上記した接地圧上昇に伴う発熱を防止して、トレッド部2の熱による故障を抑制できる。従って、このベルト強化層20により、操縦安定性を低下させることなく、セパレーション等の故障の発生を抑制して空気入りタイヤ1の耐久性を向上できる。
更に、補強層30を、ベルト層10の両端部と、その半径方向外側のベルト強化層20との間に、ベルトプライ11、12の幅方向外側の端部を跨いで重ね合わせて配置したため、周方向の層間せん断歪みを低下させてセパレーションの発生を抑制できる。即ち、その部分は、上記したようにベルト層10とベルト強化層20の間の周方向の伸びの差、及びせん断歪みが最も大きくなり、層間ゴムに亀裂が生じてセパレーションが最も発生しやすい部分である。しかし、補強層30を配置することで、各層10、20間の距離を大きくすることができ、その周方向の伸びの差が同じ場合であっても、層間のゴムに生じる周方向のせん断歪みを低下できる。
これと同時に、補強層30の内部には、タイヤ赤道面Sに対して所定の角度で傾斜して延びる非伸張性の補強素子35が複数本埋設されているため、ベルト層10,特に幅広なベルトプライ12端部の周方向の伸びを抑制でき、各層10、20間の伸びの差を少なくして周方向のせん断歪みを低下できる。その結果、各層10、20間にセパレーションが発生するのを抑制でき、空気入りタイヤ1の耐久性を向上できる。
以上の効果に加えて、補強層30の補強素子35と、ベルト層10の幅広なベルトプライ12の補強素子15を、タイヤ赤道面Sに対して逆方向に傾斜させた場合、即ち、補強層30とベルトプライ12を交錯させた場合には、互いに変形を抑制し合ってベルトプライ12の端部付近が周方向に更に動きにくくなり、周方向の伸びが減少してベルト強化層20との間の周方向のせん断歪みをより低下できる。同時に、各補強素子15、35が互いに交錯する箇所が増加するため、ベルトプライ12の補強素子15の端部が補強層30内に食い込もうとするのを、より多くの箇所で受け止めて防止できる。その結果、ベルトプライ12の端部がベルト強化層20に接近するのを防止でき、周方向のせん断歪みが増加するのを抑制できる。
また、上記したように、補強層30を、有機繊維からなる補強素子35により形成した場合には、上記したように他の補強素子15、25との擦れ合いによるセパレーションの発生を抑制でき、有機繊維が芳香族ポリアミドである場合には、高速転動時(高温時)の補強層30の機能低下を抑制できる。更に、芳香族ポリアミドからなる補強素子35は、引っ張り等に対する強度も高いため、上記したベルト層10の補強素子15端部の動きを効果的に抑制でき、周方向のせん断歪みを低下させてセパレーションの発生を抑制できる。
ここで、補強層30の周方向の剛性が高すぎる場合には、ベルト層10との間の伸びの差、及びせん断歪みが大きくなって、補強層30とベルト層10との間にセパレーションが生じる怖れがある。しかし、本実施形態では、補強層30を充分幅狭に形成したため、幅広のベルト層10等に比べて、他の部材から受ける変形応力や接地時に生じる引っ張り応力等に柔軟に追従でき、その結果、周方向の剛性が必要以上に高くならず、ベルト層10との間せん断歪みが高くなるのを抑制できる。
なお、ベルト強化層20やベルト層10(ベルトプライ11、12)の幅等にもよるが、補強層30の幅は、20mmから70mm程度であることが望ましい。補強層30の幅が20mm未満の場合には、周方向の剛性が低くなりすぎてベルト層10端部の周方向の変形を抑制できないからであり、逆に70mmよりも大きい場合には、周方向の剛性が高くなって、ベルト層10との間にセパレーションが生じる怖れがあるからである。
また、補強層30内に埋設する補強素子35のタイヤ赤道面Sに対する傾斜角度が20度未満の場合には、補強素子35の延在方向が周方向に近くなって補強層30が周方向に変形しにくくなる。その結果、補強層30の周方向の剛性が高くなって、上記と同様に、ベルト層10との間のせん断歪みが大きくなってセパレーションが生じる怖れがある。この場合には、更に、加硫成型時に補強層30が周方向に伸びにくくなり、半径方向内側の比較的伸びやすいベルト層10と干渉して欠陥等が生じる怖れもある。従って、補強素子35のタイヤ赤道面Sに対する傾斜角度は20度から90度であることが望ましい。上限値の90度は、補強素子35を傾斜させうる最大の角度であるが、補強層30の周方向の剛性を考慮して、補強素子35の傾斜角度は、20度から70度であることがより望ましい。
以上説明したように、本実施形態の空気入りタイヤ1では、ベルト層10とベルト強化層20間の周方向のせん断歪みを低下させて、ベルト層10の端部付近でのセパレーションの発生を抑制する等して、空気入りタイヤ1の操縦安定性を損なうことなく耐久性、特に高速耐久性を向上できる。
(タイヤ試験)
本発明の空気入りタイヤ1の効果を確認するため、以上説明した構造(図1参照)の3種類の実施例のタイヤ(以下、実施品という)と、実施品から補強層30を取り除いた構造(図4参照)の1種類の比較例のタイヤ(以下、比較品という)を用いて、以下の条件でタイヤの耐久性等を試験した。
以下の実施品と比較品は全て、JATMA YEAR BOOK(2004、日本自動車タイヤ協会規格)で定めるタイヤサイズ225/50R17(タイヤ外径658mm)の乗用車用ラジアルタイヤである。実施品と比較品は、補強層30の有無以外は全て同様に構成し、例えばトレッド4には、所定形状の溝等からなるトレッドパターンを形成した。また、カーカス層3は、補強素子9として直径0.5mmの撚ったナイロンコードを実質上ラジアル方向に延びるように埋設したカーカスプライを2枚重ねて構成した。
実施品と比較品はともに、カーカス層3の半径方向外側に、2枚のベルトプライ11、12を半径方向に重ね合わせて形成したベルト層10を配置した。ベルトプライ11、12には、補強素子15として3本のスチール線(直径0.2mm)を撚った、いわゆる1×3タイプのコードを、打ち込み間隔35本/50mmで埋設した。また、各ベルトプライ11、12内の補強素子15が、タイヤ赤道面Sに対して40度の角度で傾斜するとともに、傾斜方向が互いに逆方向になるように、即ちベルトプライ11、12が互いに交錯するようにベルト層10を形成した。その半径方向外側には、1枚の強化プライからなるベルト強化層20を配置した。ベルト強化層20の補強素子25には、直径0.7mmの撚った芳香族ポリアミド繊維コードを用いた。このコードを3本並列させてゴムで被覆してストリップ状にした後、コードの打ち込み間隔が50本/50mmになるように周方向にスパイラル状に巻き付けてベルト強化層20を形成した。
なお、ベルト層10の半径方向内側のベルトプライ12は幅210mmに、外側のベルトプライ11は幅190mmに形成し、ベルト強化層20は幅230mmに形成した。従って、ベルト強化層20が最も幅が広く、その端部から幅方向内側へ向かって10mmの位置にベルトプライ12の端部が位置し、更に10mm内側にベルトプライ11の端部が位置する。
3種類の実施品には、以上に加えて、ベルト層10とベルト強化層20の間の両端部近傍のそれぞれに補強層30を配置した。補強層30の幅は30mmに形成し、その幅方向外側端部を、ベルト強化層20とベルト層10の各端部の中間に、即ち幅広なベルトプライ12の端部から幅方向外側に向かって5mmの位置に配置した。従って、その内側端部は、幅狭なベルトプライ11の端部から幅方向内側に向かって15mmの位置に配置される。
各実施品の補強層30には、補強素子35を打ち込み間隔40本/50mmで埋設するとともに、補強素子35のタイヤ赤道面Sに対する傾斜角度が60度になるように配置した。この補強素子35の傾斜方向と材質を変更して、以下で説明する3種類の実施品(以下、実施品A、B、Cという)を作製した。
実施品Aの補強層30には、補強素子35に直径0.7mの撚った芳香族ポリアミド繊維コードを用い、補強素子35をベルト層10の幅広なベルトプライ12内の補強素子15とタイヤ赤道面Sに対して同じ方向に傾斜するように配置した。
実施品Bの補強層30には、補強素子35に直径0.7mmの撚った芳香族ポリアミド繊維コードを用い、補強素子35をベルト層10の幅広なベルトプライ12内の補強素子15とタイヤ赤道面Sに対して逆方向に傾斜するように配置した。即ち、実施品Aとは、補強素子35の傾斜方向が相違する。
実施品Cの補強層30には、補強素子35に直径0.7mmの撚ったナイロン製の繊維コードを用い、補強素子35をベルト層10の幅広なベルトプライ12内の補強素子15とタイヤ赤道面Sに対して逆方向に傾斜するように配置した。即ち、実施品Bとは、補強素子35の材質が相違し、実施品Aとは、補強素子35の材質及び傾斜方向が相違する。
以上の比較品、及び各実施品を用いて、2種類の耐久性試験と操縦安定性試験を行った。なお、以下の各試験は、それぞれ新品のタイヤを用いて行った。
耐久性試験は、直径3mのスチール製のドラムの外周に、タイヤをキャンバー角度0度、スリップ角度0度で、2種類の荷重(6kN、9kN)で押し付けて高速回転させて行った。このとき、タイヤには、7J×17インチのリムに装着した後、指定内圧220kPaよりも低い180kPaの内圧を充填した。このようにタイヤ内圧を指定内圧よりも低めに設定したのは、タイヤのたわみ量を大きくして、タイヤの故障を促進させるためである。以上の条件で、速度120km/hで200時間連続走行させた後、タイヤを解剖して亀裂の有無等を調べて耐久性を比較した。
その結果、タイヤを6kNでドラムに押し付けたときには、比較品の幅狭なベルトプライ11の端部では亀裂が確認されなかったのに対し、幅広なベルトプライ12の端部に長さ2mmの亀裂が発生した。これに対し、実施品A、B、Cでは、亀裂は全く確認されなかった。従って、この条件では、比較品に比べて、全ての実施品でセパレーションの発生を抑制できることが分かる。
また、通常の走行では生じ得ない荷重9kNの試験では、実施品A、B、Cは200時間走行したのに対し、比較品は182時間走行したときにベルト層10の端部が剥離してバーストが発生した。しかし、各実施品を解剖したところ、実施品Bでは亀裂等の欠陥が全く確認されなかったのに対し、実施品A、Cでは、欠陥が確認された。具体的に、実施品Aでは、幅広なベルトプライ12の芳香族ポリアミドコードの上部に長さ2mmの亀裂が発生(他の部分には故障なし)した。実施品Cでは、補強層30のナイロンコードが幅広なベルトプライ12の端部と隣接する位置で若干ほつれるとともに、幅広なベルトプライ12の端部に長さ1mmの亀裂が発生(他の部分には故障なし)した。
ここで、実施品Aでは、幅広なベルトプライ12と補強層30の各補強素子15、35の傾斜方向が同じ方向であるため、逆方向である実施品Bに比べて、ベルトプライ12端部が周方向に動きやすくなり、せん断歪みが僅かに大きくなって亀裂が生じたものと考えられる。また、実施品Cでは、幅広なベルトプライ12と補強層30の各補強素子15、35の傾斜方向が逆向きに交錯しているものの、補強層30の補強素子35がナイロン製であり、引っ張り剛性が低いことに加えて、特に発熱時に軟化しやすいため、繰り返し加えられる周方向の変形に抗しきれずに若干のほつれが生じたものと考えられる。同様に、ナイロン製の補強素子35では、ベルトプライ12端部の周方向の動きを抑制する効果が十分に得られずに僅かに亀裂が生じたものと考えられる。これらに対し、実施品Bでは、剛性と耐熱性に優れる芳香族ポリアミド製の補強素子35を幅広なベルトプライ12の補強素子15と交錯させたため、最も亀裂の発生が抑制されたものと考えられる。
このように、より過酷な耐久条件では、実施品の一部に故障が生じたものの、比較品では亀裂の長さが少なくとも20mm以上になって故障していることが伺え、これに比べて各実施品の故障の程度は極めて小さく、セパレーションの発生を効果的に抑制できることが分かる。
次に、比較品と実施品A、B、Cのそれぞれを、後輪駆動のスポーツタイプの車両の4輪全てに取り付けて、熟練ドライバーによるテストコース走行を行って、操縦安定性を比較した。その結果、4つのタイヤの操縦安定性に差は認められなかった。
以上の結果から、本発明により、操縦安定性を損なうことなく、ベルト層10端部の亀裂の発生及びセパレーションの発生を効果的に抑制して、空気入りタイヤ1の耐久性、特に高速耐久性や高荷重耐久性を向上できることが証明された。
本実施形態の空気入りタイヤのタイヤ幅方向半断面図である。 本実施形態の空気入りタイヤのトレッド部の構造を模式的に示す一部破断平面展開図である。 従来の空気入りタイヤの要部を示すタイヤ幅方向断面図である。 従来の空気入りタイヤのタイヤ幅方向半断面図である。 従来の空気入りタイヤのタイヤ幅方向半断面図である。
符号の説明
1・・・空気入りタイヤ、2・・・トレッド部、3・・・カーカス層、4・・・トレッド、5・・・ビードコア、6・・・ビード部、7・・・サイドウォール部、8・・・ショルダー部、9・・・補強素子、10・・・ベルト層、11・・・ベルトプライ、12・・・ベルトプライ、15・・・補強素子、20・・・ベルト強化層、25・・・補強素子、30・・・補強層、35・・・補強素子、50・・・リブ溝。

Claims (7)

  1. 一対のビードコアと、該ビードコア間をトロイダル状に延びるカーカス層と、トレッド部の前記カーカス層の外周側に配置されたトレッドとを備えた空気入りタイヤであって、
    前記カーカス層と前記トレッドの間に、
    前記カーカス層のタイヤ半径方向外側に配置された、複数本の金属製の補強素子を有する少なくとも1枚のベルトプライを含むベルト層と、
    該ベルト層のタイヤ半径方向外側に配置された、該ベルト層よりも幅広で実質上タイヤ周方向に延びる補強素子を有する少なくとも1枚の強化プライからなるベルト強化層と、
    前記ベルト層のタイヤ幅方向外側の両端部と前記ベルト強化層の間のそれぞれに、かつ前記ベルト層の端部を跨いで重ね合わせて配置された、複数本の補強素子を有する幅狭の補強層と、
    を備えたことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 請求項1に記載された空気入りタイヤにおいて、
    前記ベルトプライの補強素子が、タイヤ赤道面に対して15度から70度の角度で傾斜していることを特徴とする空気入りタイヤ。
  3. 請求項1又は2に記載された空気入りタイヤにおいて、
    前記補強層の補強素子が、タイヤ赤道面に対して20度から90度の角度で傾斜していることを特徴とする空気入りタイヤ。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載された空気入りタイヤにおいて、
    前記ベルト層のベルトプライが1枚である場合には該ベルトプライの補強素子と、前記ベルト層のベルトプライが複数枚である場合にはタイヤ幅方向の幅が最も広いベルトプライの補強素子と、前記補強層の補強素子が、タイヤ赤道面に対して逆方向に傾斜していることを特徴とする空気入りタイヤ。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載された空気入りタイヤにおいて、
    前記補強層のタイヤ幅方向の幅が、20mmから70mmであることを特徴とする空気入りタイヤ。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載された空気入りタイヤにおいて、
    前記補強層の補強素子が、有機繊維からなることを特徴とする空気入りタイヤ。
  7. 請求項6に記載された空気入りタイヤにおいて、
    前記有機繊維が、芳香族ポリアミドからなることを特徴とする空気入りタイヤ。
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