JP3647130B2 - 絶縁体ガラス組成物とこれを用いた厚膜多層回路絶縁層用ガラス組成物 - Google Patents

絶縁体ガラス組成物とこれを用いた厚膜多層回路絶縁層用ガラス組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、厚膜多層回路基板の電気絶縁層の形成に用いられる結晶化ガラス組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
厚膜多層回路基板は、焼成されたアルミナなどのセラミック基板上に第一導体層として厚膜導体ペーストを印刷、焼成し、次いで上下の導体を分離、絶縁するために絶縁体粉末を有機ビヒクル中に分散させた絶縁体ペーストを印刷、焼成して絶縁層を形成し、その上に第二の導体層を印刷、焼成する工程を順次繰返すことにより、導体層と絶縁層を交互に積層していく方法で製造される。絶縁層には、一般に多数回の焼成を受けても再溶融による変形が起こらないよう、耐熱性の高い結晶化ガラスや、セラミックスフィラーを含有するガラス組成物が使用されている。
【0003】
このような多層回路の絶縁層には、絶縁抵抗が高いこと、絶縁耐圧が高いこと、洩れ電流が小さいこと、誘電率が小さいことなどの電気的特性に加えて、焼成による基板の反りをできるだけ小さくすることが要求される。反りは基板と絶縁層の熱膨張係数の違いが原因で生じ、反りが大きいと導体層や絶縁体層のスクリーン印刷が困難になる。印刷、焼成を順次行っていくために望ましいのは0もしくは(+)の小さい反りであるが、一般に10回以上印刷、焼成を繰返す厚膜多層回路基板では、積層数が多くなるほど焼成回数も多くなるので反りが大きくなり、極端な場合印刷が不可能になる。この問題は特に基板が大型化するほど重大である。尚、ここで(+)の反りは印刷、積層する側が凸面になるような基板の反りのことであり、逆に(−)の反りは印刷、積層する側が凹面になるような反りのことである。
例えば従来、特公昭46−42917号公報、特公昭51−10844号公報、特公昭57−20255号公報、特開昭46−7671号公報、特開昭59−137343号公報、特開昭62−137897号公報などに記載されているような酸化鉛を含有するガラスが知られている。このような酸化鉛系のガラスは、酸化鉛が熱膨張係数を大きくし、ガラスの柔軟性を増すので絶縁層形成用としては適していると考えられる。しかし鉛は有害であるため使用量の低減が望まれており、厚膜多層用にもできるだけ鉛を含まないガラスが要求されているが、鉛を減ずるか全く含まないガラスは熱膨張係数の調整が容易でないため反りの問題を解決するのが困難であった。
【0004】
特開昭64−56340号公報は、重量百分率でSiO2 20〜40%、B2 O3 0.5〜7%、Al2 O3 5〜20%、MgO10〜25%、CaO+BaO+SrO0.05〜15%、ZnO10〜30%、Bi2 O3 0.5〜10%、ZrO2 0.5〜10%からなる、鉛を含まない厚膜多層用の結晶化ガラス組成物、及びこれにセラミック粉末を0.1〜20重量%添加した組成物を開示している。しかしこの組成物は、熱膨張係数が大きいため基板の反りが大きく、多数回の焼成により印刷が困難になる。更に、上部導体におけるブリスタの発生や導体からのマイグレーションの助長等により漏れ電流が大きい。又Biを含有しているため絶縁耐圧が低く、特に多数回焼成後はその値がほぼ1/2にまで低下してしまい実用上問題となる。
特公昭58−51362号公報及び特公昭59−14203号公報には、基板の反りを低減するためMgTiO3 や、アルカリ土類金属のアルミン酸塩及びジルコン酸塩などをフィラーとして添加したガラス組成物が記載されているが、焼成回数が増すとやはり基板の反りが発生する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は基板の反り、漏れ電流、絶縁耐圧が改善され、信頼性の高い厚膜多層回路基板を製造することができ、かつ鉛を含まない絶縁体ガラス組成物を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
「1. (A)重量基準で、
SiO2 28〜38%、 B2 O3 4〜10%、
Al2 O3 8〜16%、 MgO 15〜23%、
CaO 1〜12%、 BaO 3〜9%、
ZnO 8〜16%、 ZrO2 3〜8%、
からなるガラス50〜85重量%と、
(B)アルミナ及びジルコンから選ばれる1種又は2種以上のフィラー50〜15質量%とからなる厚膜多層回路絶縁層用ガラス組成物。」
に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の厚膜多層回路絶縁層用ガラス組成物は、熱膨張係数を適切に調整し基板と適合させることに加えて、絶縁層の結晶化度をコントロールし、焼成回数の増加によって急激な結晶化を起こさないようにすることにより反りの問題を解決した。即ち従来のフィラーを含有するガラス組成物では、例えば結晶化度が850℃で1回目の焼成後29%、4回焼成後90%、10回焼成後90%であるものは4回焼成後で基板の反りが+150μmと非常に大きくなるのに対し、本発明の厚膜多層回路絶縁層用ガラス組成物では例えば結晶化度が850℃で1回目の焼成後38%、4回焼成後45%、10回焼成後72%であったものは、15回焼成後でも反りが0〜+50μm程度であり、焼成回数による反りの変化も少なかった。このことから本発明ではガラスは急激に結晶化せず、焼成1回毎に徐々に結晶化が進むので基板の反りが小さくなるのではないかと考えられる。
又本発明の厚膜多層回路絶縁層用ガラス組成物は800〜950℃で熱処理することにより結晶化するが、軟化開始温度と結晶化温度にやや開きがあり、十分焼結が進行して収縮が完了した後に結晶を析出するので、形成される絶縁層が非常に緻密になり、漏れ電流が小さく、かつ絶縁耐圧も改善される。
【0008】
以下に厚膜多層回路絶縁層用ガラス組成の限定理由を示す。
SiO2 が28%より少ないと誘電損失、基板の反りの焼成回数による変化が増大する。38%より多くなると絶縁抵抗や誘電損失が悪化する。 B2 O3 が4%より少ないとガラス作成時の溶融が困難となり、10%を越えると誘電損失、半田濡れ性が悪化する。
Al2 O3 は析出する結晶の構成成分であるが、8〜16%の範囲外では適切な結晶が得られず、反りのコントロールができなくなる。
MgOも析出する結晶の構成成分であり、15%より少ないと結晶化が不十分なため絶縁層の熱膨張係数が大きくなりすぎ、大きな基板の反りを生じる。又23%を越えると逆の反りが大きくなる。
CaOはガラスの溶融性を高める成分で、1%より少ないとその効果が小さく、又12%を越えると結晶化が進まず、半田濡れ性が低下する。
BaOは結晶の構成成分であるが、3%より少ないと半田濡れ性が悪く、9%より多いと基板の反りが大きくなる。
ZnOも結晶の構成成分であるが、8%より少ないと結晶析出が弱く、又基板の反りも大きくなる。16%を越えるとガラスの軟化点が低くなりすぎて、多数回焼成した時の耐熱性が劣化する。
ZrO2 は結晶の核形成剤として働く。3%より少ないと効果がなく、8%より多いと誘電損失が悪化する。
フィラーとしてはアルミナ、ジルコン又はその混合物が使用される。添加量は、基板の反りやブリスタの防止のため15〜50重量%の範囲とすることが必要である。15重量%より少ないと反りが(−)に大きくなるうえ、絶縁層がよりガラス質になるため脱ガス性が悪く、上部導体にブリスタが発生したり半田濡れ性が悪化し、又漏れ電流が増加する。逆に50重量%より多いと絶縁層がポーラスになるため、漏れ電流が増加し絶縁耐圧も低下する。好ましくは21〜40重量%の範囲で添加される。
【0009】
【実施例】
実施例1〜8
表1に示す組成のガラス粉末と、アルミナ及びジルコンからなるフィラー粉末とを混合し、有機ビヒクルと共に混練して絶縁体ペーストを製造した。尚、表中、フィラーの量はガラスとフィラーの合計量に対する比率(重量%)で示した。アルミナ基板上にAg/Pd導体ペーストを印刷し、850℃で焼成して下部導体とし、この上に上記絶縁体ペーストを印刷し、850℃で焼成した。重ねて同一の絶縁体ペーストを印刷し、更にこの上にAg/Pd導体ペーストを印刷した後、850℃で同時焼成して膜厚約40μmの絶縁層と上部導体を形成した。各試料につき、絶縁層の膜厚、絶縁抵抗、絶縁破壊電圧(絶縁耐圧)、1MHzにおける誘電率と誘電損失、漏れ電流及び上部導体の半田濡れ性を測定し、表1に併せて示した。尚、絶縁抵抗はDC100V印加時の抵抗値、絶縁破壊電圧はリーク電流が1.0mAを超えたときの電圧、漏れ電流は基板をNaCl水溶液に浸漬し、DC10Vを印加したときのリーク電流である。半田濡れ性は、230℃のPb−Sn共晶半田浴に5秒間浸漬し上部導体に半田が95%以上付いたものを○、95%未満のものを△として評価した。
次に29mm×95mm、厚さ0.635mmのアルミナ基板上に、上記絶縁体ペーストを用いて15mm×95mm、焼成膜厚200μmとなるように絶縁層を形成し、850℃で繰返し焼成を行って、1回焼成後及び8回焼成後の基板の反りを測定し、表1に示した。
【0010】
【表1】
Figure 0003647130
【0011】
比較例1〜6
表1に示した組成の絶縁体ペーストを用い、実施例と同様にして多層回路を製造した。各試料につき同様にして特性を調べ、表1に併せて示した。表1からも明らかなとおり、本発明のガラス組成物を用いて形成された回路基板は反りが極めて小さく、焼成を重ねても大きくなることがほとんどない。又電気特性も非常に優れたものであった。Bi2 O3 、PbOまたはTiO2含む比較例5〜7は反りが大きくなることがわかる。
【0012】
比較例7
重量でSiO2 31%、B2 O3 7%、Al2 O3 14%、MgO19%、CaO6%、BaO4%、ZnO13%、ZrO2 5%、Bi2 O3 1%からなるガラス粉末75重量%と、アルミナ及びジルコンからなるフィラー粉末25重量%とを混合し、有機ビヒクルと共に混練して絶縁体ペーストを製造した。このペーストを用い、実施例と同様にして多層回路を製造した後、更に850℃で10回の繰返し焼成を行った。絶縁破壊電圧を測定したところ、1回焼成後は3200Vであったのに対し、10回焼成後は1800Vに低下した。尚、実施例のペーストでは繰返し焼成を行っても絶縁破壊電圧の劣化はほとんど見られない
【0013】
【発明の効果】
本発明の厚膜多層回路絶縁層用ガラス組成物を絶縁層形成材料として用いることにより、多数回の焼成を受けても基板の反りが小さく、かつ漏れ電流、絶縁耐圧等の特性も優れた高信頼性の厚膜多層回路基板を製造することができる。又本発明のガラス組成物は鉛を含まないので、環境上の問題がない。

Claims (1)

  1. (A)重量基準で、
    SiO2 28〜38%、 B2 O3 4〜10%、
    Al2 O3 8〜16%、 MgO 15〜23%、
    CaO 1〜12%、 BaO 3〜9%、
    ZnO 8〜16%、 ZrO2 3〜8%、
    からなるガラス50〜85重量%と、
    (B)アルミナ及びジルコンから選ばれる1種又は2種以上のフィラー50〜15質量%とからなる厚膜多層回路絶縁層用ガラス組成物。
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