JP3646205B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は操舵補助力の発生源としてモータを用いてなる電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の舵取りは、車室の内部に配された操舵輪の回転操作を、舵取用の車輪(一般的には前輪)の操向のために車室の外部に配された舵取機構に伝えて行われる。
【0003】
図5は従来における電動パワーステアリング装置の断面図、図6は減速機構部分の断面図である。
自動車用の電動パワーステアリング装置としては、図5に示すように例えば舵取りのための操舵輪100に上端が連結される第1の操舵軸101と、該操舵軸101の下端にトーションバー102を介してその上端が同軸的に連結され、その下端が車輪に繋がる舵取機構に連結される第2の操舵軸103と、操舵輪100を回転することによって第1の操舵軸101に加わるトルクを前記トーションバー102に生じる捩れによって検出するトルクセンサ104と、該トルクセンサ104の検出結果に基づいて駆動される操舵補助用のモータ105と、該モータ105の出力軸に繋がり、該出力軸の回転を減速して前記第2の操舵軸103に伝達するウォーム106及びウォームホイール107を有する減速機構とを備え、操舵輪100の回転に応じた舵取機構の動作を前記モータ105の回転により補助し、舵取りのための運転者の労力負担を軽減するように構成されている。
【0004】
減速機構を構成するウォーム106は、図6に示すように一対の転がり軸受108,108を介してハウジング110の嵌合孔に支持され、ウォームホイール107が設けられている第2の操舵軸103は一対の転がり軸受109,109を介してハウジング110の嵌合孔に支持され、ラジアル方向及びアキシアル方向への移動が阻止されている。
【0005】
このように減速機構が用いられる場合、ウォーム106及びウォームホイール107の噛合部のバックラッシュ量を少なくし、転舵時のバックラッシュによる歯打ち音をなくするため、ウォーム106及びウォームホイール107の回転中心間距離と、前記転がり軸受108,109が嵌合される嵌合孔の中心間距離とが許容範囲内で一致するように加工されたウォーム106、ウォームホイール107、転がり軸受108,109、第2の操舵軸103、ハウジング110が選択され組み立てられているが、この組立てに多くの時間を要することになり、改善策が要望されていた。
【0006】
そこで、特開2000−43739号に記載されている如くモータ側軸部が転がり軸受を介してハウジングに回転可能に支持されたウォームのモータと反対側軸部をラジアル方向へ移動可能とし、該軸部に嵌合された軸受の周面に当接する押付体を介して前記軸受を付勢し、前記ウォームのウォームホイールとの噛合部に予圧を加えるバネ体を設け、該ばね体の撓み量を調整することにより前記回転中心間距離を調整し、バックラッシュ量を調整することができるようにした電動パワーステアリング装置が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の減速機構のウォーム歯車等は回転中心線に対しその歯すじが回転方向へ捩じれており、ウォーム106からウォームホイール107へ回転トルクが加わるとき、換言すればモータ105の回転によって操舵補助するとき、ウォーム106がウォームホイール107の歯すじに沿ってラジアル方向へ動くように比較的大きな分力(噛合反力)が発生し、該分力によりウォーム106がラジアル方向へ強く押圧されることになるのに対し、特開2000−43739号の電動パワーステアリング装置は、ウォームの一端の軸部に嵌合され、ラジアル方向へ移動可能としてある軸受が前記噛合部に予圧を加える方向へ付勢されているだけであり、該軸受が前記付勢方向と交差する方向へ動くことを阻止していないため、ウォームのウォームホイールとの噛合部に予圧を加え、ウォームの回転中心線が非予圧時の回転中心線に対して傾斜した状態で操舵補助するとき、上述したラジアル方向への分力(噛合反力)によって予圧時の回転中心線に対してウォームがラジアル方向へと動き、該ウォームが偏心回転、換言すれば振れ回りすることになり、噛合部の噛合不良及びトルクむらが発生することになるという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点を解決することができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
第1発明に係る電動パワーステアリング装置は、ハウジング内に軸受で支持されており、操舵補助用のモータによって回転される駆動歯車と、該駆動歯車に噛合し、舵取機構に繋がる従動歯車と、前記駆動歯車の従動歯車との噛合部に予圧を加えるべく前記軸受をラジアル方向へ付勢する付勢手段とを備え、前記モータの回転によって操舵補助するようにした電動パワーステアリング装置において、前記軸受の周りに、該軸受の周面に接触して軸受の付勢方向への動きを案内する案内部を有する合成樹脂製の案内部材が設けてあることを特徴とする。
【0010】
第1発明にあっては、駆動歯車を支持した軸受の周面が、該軸受の周りに設けられた合成樹脂製の案内部材の案内部に接触し、該案内部が軸受の動き方向を、噛合部に予圧を加える方向に規制しているため、駆動歯車は従動歯車に対して適正な噛合伝達を保持することができ、トルクむらをなくすることができるとともに、噛合反力の変動による駆動歯車のラジアル方向への動きをより一層スムーズに行わせることができる。
【0011】
第2発明に係る電動パワーステアリング装置は、ハウジング内に両端部が一対の軸受で支持されており、操舵補助用のモータによって回転される駆動歯車と、該駆動歯車に噛合し、舵取機構に繋がる従動歯車と、前記駆動歯車の従動歯車との噛合部に予圧を加えるべく一方の軸受をラジアル方向へ付勢する付勢手段とを備え、前記モータの回転によって操舵補助するようにした電動パワーステアリング装置において、前記一対の軸受は転がり軸受であり、一方の軸受の周面に接触して該軸受の付勢方向への動きを案内する案内部を有する合成樹脂製の案内部材と、他方の軸受の外輪をアキシャル方向へ押すことによって前記駆動歯車のアキシャル方向への移動を規制するねじ環とを備えていることを特徴とする。
【0012】
第2発明にあっては、ねじ環の締め込み力が他方の軸受から駆動歯車を介して一方の軸受に伝達され、夫々の軸受の外輪及び内輪を相対移動させて駆動歯車のアキシャル方向へのガタつきをなくし、操舵補助するとき駆動歯車に加わるスラスト荷重を内輪及び外輪間の転動体部分で受止めることができ、しかも、駆動歯車を支持した一方の軸受の周面が、該軸受の周りに設けられた合成樹脂製の案内部材の案内部に接触し、該案内部が軸受の動き方向を、噛合部に予圧を加える方向に規制しているため、駆動歯車は従動歯車に対して適正な噛合伝達を保持することができ、トルクむらをなくすることができるとともに、噛合反力の変動による駆動歯車のラジアル方向への動きをより一層スムーズに行わせることができる。
【0013】
第3発明に係る電動パワーステアリング装置は、前記案内部材は前記軸受のアキシャル方向一端面に接触して軸受の動きを案内する案内片が設けてあることを特徴とする。
【0014】
第3発明にあっては、駆動歯車を支持する軸受の一端面が案内部材の案内片に接触した状態で軸受のラジアル方向への動きを案内するため、噛合反力の変動による駆動歯車のラジアル方向への動きをより一層スムーズに行わせることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る電動パワーステアリング装置の断面図である。
電動パワーステアリング装置は、一端が舵取りのための操舵輪1に繋がり、他端に筒部を有する第1の操舵軸2と、前記筒部内に挿入されてその一端が前記操舵軸2の他端に同軸的に連結され、前記操舵輪1に加わる操舵トルクの作用によって捩れるトーションバー3と、その他端が前記トーションバー3の他端に同軸的に連結される第2の操舵軸4と、前記トーションバー3の捩れに応じた第1及び第2の操舵軸2,4の相対回転変位量によって前記操舵輪1に加わる操舵トルクを検出するトルクセンサ5と、該トルクセンサ5が検出したトルクに基づいて駆動される操舵補助用のモータ6と、該モータ6の回転に連動し、該回転を減速して第2の操舵軸4に伝達する駆動歯車(以下ウォームと云う)71及び従動歯車(以下ウォームホイールと云う)72を有する減速機構7と、前記トルクセンサ5及び前記減速機構7が収容されるハウジング8とを備え、このハウジング8に前記モータ6が取付けられている。
【0016】
ハウジング8は、前記トルクセンサ5を収容する第1の収容部8aと、該収容部8aに連続し、前記ウォームホイール72を収容する第2の収容部8bと、該収容部8bに連続し、前記ウォーム71を収容する第3の収容部8cとを備えている。
【0017】
図2は減速機構部分の断面図、図3は図2のIII −III 線の拡大断面図である。
収容部8cはウォーム71のアキシャル方向に長くなっており、その長手方向一端に第1の嵌合孔81及び該嵌合孔81の内面に臨むように穿設された保持孔82が設けられ、該保持孔82に前記ウォーム71の一端の軸部71aを支持する第1の転がり軸受9をウォーム71のウォームホイール72との噛合部に予圧を加えるべくラジアル方向へ付勢する付勢手段10が保持してある。
【0018】
この付勢手段10はコイルスプリング等のばね体を用いてなり、前記転がり軸受9の外輪(外周面)に当接し、保持孔82内で移動可能な押付体11と、保持孔82に螺着された調整ねじ12との間に付勢手段10を介在し、調整ねじ12を回転操作することにより付勢手段10の撓み量を調節し、該付勢手段10の力によって転がり軸受9を前記噛合部に予圧を加える方向へ付勢している。尚、前記調整ねじ12には該調整ねじ12の弛緩を防止するロックナット13を螺着してある。
【0019】
収容部8cの他端には第2の嵌合孔83及び該嵌合孔83に連続するねじ孔84が設けられ、該ねじ孔84にウォーム71のアキシャル方向位置を調節するねじ環20が螺着されており、該ねじ環20にロックナット21が螺着されている。さらに、ハウジング8には前記第3の収容部8cに連通するケースを有する前記モータ6が取付けられている。
【0020】
減速機構7は、前記モータ6の出力軸60に繋がる軸部71b及び前記軸部71aを有するウォーム71と、前記第2の操舵軸4の中間に嵌合固定されたウォームホイール72とを備え、これらウォーム71及びウォームホイール72の噛合により前記出力軸60の回転を減速して第2の操舵軸4に伝達し、該第2の操舵軸4からユニバーサルジョイントを経て例えばラックピニオン式の舵取機構(図示せず)へ伝達するようにしている。
【0021】
ウォーム71は第2の操舵軸4の軸芯と交叉するように配置してあり、その両端に一体に設けられた軸部71a,71bに第1及び第2の転がり軸受9,22が嵌合してある。
【0022】
第1の転がり軸受9の周りには、該転がり軸受9の周面に接触して転がり軸受9のラジアル方向への動きを案内する案内部31,31を有する案内部材30が設けてある。
【0023】
図4は案内部材の斜視図である。
この案内部材30は、比較的摩擦係数が小さい合成樹脂等の材料によって円筒形に形成してあり、前記第1の嵌合孔81に嵌合固定してある。案内部材30の内面にはほぼ平行な平坦面からなる2つの案内部31,31が設けてあり、また、前記保持孔82に臨む位置にはラジアル方向に貫通する孔32が設けてあり、さらに、アキシャル方向の一端にはラジアル方向へ延出され、前記転がり軸受9のアキシャル方向一端面(外輪)に接触して転がり軸受9のラジアル方向への動きを案内する円板形の案内片33が設けてある。
【0024】
以上の如く構成した電動パワーステアリング装置において、ウォーム71を組み込む場合、例えば転がり軸受9,22が嵌合されたウォーム71を第2の嵌合孔83から第3の収容部8cに挿入し、第1の転がり軸受9を案内部材30内に、また、第2の転がり軸受22を第2の嵌合孔83に夫々位置させ、ねじ環20をねじ孔84に螺着する。
【0025】
このねじ環20の回転操作力は転がり軸受22の外輪、転動体、内輪を介してウォーム71に伝達され、転がり軸受22のアキシャル方向への隙間がなくなるとともにウォーム71が第1の転がり軸受9に向けて移動し、さらに、ねじ環20の回転操作力がウォーム71から第1の転がり軸受9の内輪、転動体及び外輪を介して案内部材30の案内片33に伝達され、転がり軸受9のアキシャル方向への隙間がなくなり、ウォーム71のアキシャル方向へのガタつきを防止することができる。
【0026】
次に調整ねじ12を回転操作することにより付勢手段10及び押付体11を介して転がり軸受9が案内部材30の案内部31,31に沿ってラジアル方向へと付勢され、ウォーム71のウォームホイール72との噛合部に予圧を加えることができ、噛合部のバックラッシュ量を少なくすることができ、また、ウォーム71及びウォームホイール72の歯の摩耗量が増大したりすることによって噛合状態が経時変化したときにおいてもバックラッシュ量を少なくすることができる。
【0027】
しかも、第1の転がり軸受9は、その周面が案内部材30の案内部31,31に接触し、該案内部31,31が転がり軸受9の動き方向を、噛合部に予圧を加える方向に規制しているため、ウォーム71はウォームホイール72の軸長方向に関して適正な噛合位置を保持することができるとともに、トルクむらをなくすることができる。
【0028】
また、ねじ環20の締め込み力が第2の転がり軸受22からウォーム71を介して第1の転がり軸受9に伝達され、夫々の軸受22,9の外輪及び内輪を相対移動させてウォーム71のアキシャル方向へのガタつきをなくし、操舵補助するときウォーム71に加わるスラスト荷重を内輪及び外輪間の転動体部分で受止めることができ、しかも、ウォーム71を支持した第1の転がり軸受9の外輪が案内部材30の案内部31,31に接触し、該案内部31,31が転がり軸受9の動き方向を、噛合部に予圧を加える方向に規制しているため、ウォーム71はウォームホイール72の軸長方向に関して適正な噛合位置を保持することができるとともに、噛合反力の変動によるウォーム71のラジアル方向への移動をスムーズに行わせることができる。
【0029】
また、案内部材30は比較的摩擦係数が小さい材料で形成してあり、さらに、案内部材30の一端に案内片33が設けてあるため、噛合反力の変動によるウォーム71のラジアル方向への移動をより一層スムーズに行わせることができる。
【0030】
尚、以上説明した実施の形態では、ウォーム71の一端部を支持する軸受として転がり軸受9を用いたが、その他、すべり軸受を用いてもよい。
【0031】
また、以上説明した実施の形態の減速機構7は、ウォーム71である駆動歯車71及びウォームホイールである従動歯車72を備えたウォーム歯車である他、ハイポイドピニオンである駆動歯車及びハイポイドホイールである従動歯車を備えたハイポイド歯車であってもよい。さらに、減速機構はベベルギヤであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電動パワーステアリング装置の断面図である。
【図2】本発明に係る電動パワーステアリング装置の減速機構部分の断面図である。
【図3】図2のIII −III 線の拡大断面図である。
【図4】本発明に係る電動パワーステアリング装置の案内部材の斜視図である。
【図5】従来における電動パワーステアリング装置の断面図である。
【図6】従来における電動パワーステアリング装置の減速機構部分の断面図である。
【符号の説明】
6 モータ
9 第1の転がり軸受(軸受)
10 付勢手段
20 ねじ環
22 第2の転がり軸受(軸受)
30 案内部材
31 案内部
33 案内片
71 駆動歯車(ウォーム)
72 従動歯車(ウォームホイール)
Claims (3)
- ハウジング内に軸受で支持されており、操舵補助用のモータによって回転される駆動歯車と、該駆動歯車に噛合し、舵取機構に繋がる従動歯車と、前記駆動歯車の従動歯車との噛合部に予圧を加えるべく前記軸受をラジアル方向へ付勢する付勢手段とを備え、前記モータの回転によって操舵補助するようにした電動パワーステアリング装置において、前記軸受の周りに、該軸受の周面に接触して軸受の付勢方向への動きを案内する案内部を有する合成樹脂製の案内部材が設けてあることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
- ハウジング内に両端部が一対の軸受で支持されており、操舵補助用のモータによって回転される駆動歯車と、該駆動歯車に噛合し、舵取機構に繋がる従動歯車と、前記駆動歯車の従動歯車との噛合部に予圧を加えるべく一方の軸受をラジアル方向へ付勢する付勢手段とを備え、前記モータの回転によって操舵補助するようにした電動パワーステアリング装置において、前記一対の軸受は転がり軸受であり、一方の軸受の周面に接触して該軸受の付勢方向への動きを案内する案内部を有する合成樹脂製の案内部材と、他方の軸受の外輪をアキシャル方向へ押すことによって前記駆動歯車のアキシャル方向への移動を規制するねじ環とを備えていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
- 前記案内部材は前記軸受のアキシャル方向一端面に接触して軸受の動きを案内する案内片が設けてある請求項1又は請求項2記載の電動パワーステアリング装置。
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