以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1〜図3を参照して、本発明の第1実施形態に係るステアリング装置100の全体構成について説明する。
ステアリング装置100は、車両に搭載され、ドライバーが操舵ハンドルに加える操舵トルクを変換して車輪6を転舵する装置である。
図1に示すように、ステアリング装置100は、ドライバーの操作によって操舵トルクが入力される操舵ハンドルとしてのバーハンドル1と、バーハンドル1から入力される操舵トルクによって回転するステアリングシャフト2と、ステアリングシャフト2の回転を変換して車輪6を転舵するリンク機構10と、を備える。
バーハンドル1は、中立位置から左右に90°の範囲内で操舵可能なハンドル、つまり最大操舵角が180°以下のハンドルである。
ステアリングシャフト2は、バーハンドル1に連係して操舵トルクが伝達される入力軸3と、下端がリンク機構10に連係する出力軸4と、入力軸3と出力軸4を連結するトーションバー5と、を有する。ドライバーの操作によってバーハンドル1に入力される操舵トルクが入力軸3及びトーションバー5を介して出力軸4に伝達されて、出力軸4が回転する。出力軸4の回転がリンク機構10によって直線運動に変換されることにより、車輪6が転舵される。
リンク機構10は、図2に示すように、出力軸4に連結され出力軸4の回転に伴って回転するアーム部材11と、車輪6に連結されるタイロッド12と、アーム部材11とタイロッド12とを連結するロッドエンド13と、を有する。
アーム部材11は、出力軸4が挿入されて連結される出力軸孔11Aと、出力軸孔11Aから離間すると共に出力軸孔11Aと略平行に設けられる一対の連結孔11B,11Cと、を有する。
ロッドエンド13は、タイロッド12とアーム部材11とを連結するボールジョイントである。ロッドエンド13における一方の軸13Aは、アーム部材11の連結孔11Bに挿入されて連結される。ロッドエンド13における他方の軸13Bは、タイロッド12の一方の端部に連結される。タイロッド12の他方の端部には、ナックルアーム等(図示省略)を介して車輪6が連結される。図2では、一方の車輪6と連結されるタイロッド12及びロッドエンド13のみを図示し、他方の車輪6と連結されるタイロッド及びアーム部材11の連結孔11Cに連結されるロッドエンドは図示を省略している。
アーム部材11は、出力軸4の回転に伴い出力軸4を中心に回転する。出力軸4から離れた位置に連結されるロッドエンド13は、アーム部材11の回転に伴い出力軸4を中心に円弧運動する。これにより、出力軸4の回転はロッドエンド13を介してタイロッド12に直線運動として伝達される。このように、リンク機構10によってステアリングシャフト2における出力軸4の回転トルクが車輪6の転舵力に変換される。したがって、ラックアンドピニオンを有していなくても、リンク機構10により操舵トルクを車輪6の転舵力に変換できるため、車両前方部内、特に車両の足回りを省スペース化できる。言い換えれば、車両前方部内のスペースが少なくラックアンドピニオンを設けることが困難な場合であっても、リンク機構10によって出力軸4の回転トルクを車輪6の転舵力へ変換することができる。
図1及び図2に示すように、ステアリング装置100は、操舵トルクを補助する回転トルクをステアリングシャフト2に付与する電動モータ20と、電動モータ20の回転をステアリングシャフト2に減速して伝達する伝達機構30と、をさらに備える。
電動モータ20は、ドライバーによるバーハンドル1の操舵を補助する回転トルクを付与するための動力源である。電動モータ20が回転軸21(図3参照)から出力する回転トルクは、ドライバーのバーハンドル1の操作によってねじれるトーションバー5のねじれ量をトルクセンサ7により検出し、検出されたねじれ量に基づいてコントローラ(図示省略)により演算される。電動モータ20が出力する回転トルクは、伝達機構30によって減速されてステアリングシャフト2の出力軸4にアシスト力として伝達される。このように、バーハンドル1から入力される操舵トルクを検出するトルクセンサ7の検出結果に基づいて電動モータ20が駆動され、ドライバーによるバーハンドル1の操舵が補助される。
図3に示すように、伝達機構30は、電動モータ20の回転を減速して出力する第1減速部40と、第1減速部40の出力を減速して出力軸4に伝達する第2減速部50と、を有する。第1減速部40及び第2減速部50は、電動モータ20が連結されるギヤケース31に収容される。
第1減速部40は、電動モータ20の回転軸21に連結されるサンギヤ41と、サンギヤ41の外側に設けられギヤケース31に固定されるリングギヤ42と、サンギヤ41とリングギヤ42との間に設けられサンギヤ41及びリングギヤ42のそれぞれと噛み合う複数のプラネタリギヤ43と、複数のプラネタリギヤ43を互いに連結するキャリア44と、を有する遊星歯車機構である。
複数のプラネタリギヤ43は、サンギヤ41の外側に等角度間隔で設けられ、サンギヤ41及びリングギヤ42のそれぞれと噛み合う。電動モータ20の回転に伴いサンギヤ41が回転すると、プラネタリギヤ43はサンギヤ41の周りを回転する。図3では、単一のプラネタリギヤ43のみを図示し、その他のプラネタリギヤ43は図示を省略している。
キャリア44は、一方の端部からウォーム軸52の一端52Bが挿入されてウォーム軸52に連結される筒部45Bと、筒部45Bの他方の端部から径方向に突出して設けられるフランジ部45Aと、フランジ部45Aに設けられ複数のプラネタリギヤ43のそれぞれに連結される連結ピン46と、を有する。
第2減速部50は、ステアリングシャフト2の出力軸4に連結されるウォームホイール51と、ギヤケース31に形成された収容穴32に収容されウォームホイール51と噛み合うウォーム軸52と、を有する。
ウォーム軸52には、ウォームホイール51の歯部51Aと噛み合う歯部52Aが形成される。ウォーム軸52は、電動モータ20の回転軸21と同軸状にギヤケース31に収容される。
ウォーム軸52は、ギヤケース31の収容穴32に支持される一対の軸受53,54によって両端部52B,52Dが回転自在に軸支される。軸受53、54は、それぞれ内輪53a、54aと、外輪53b、54bと、図示しない保持器によって支持され内輪53a、54aと外輪53b、54bとの間に収容される転動体としてのボール53c、54cと、を備えるボール軸受である。
ウォーム軸52の電動モータ20側の一端部52Bを支持する軸受53の外輪53bは、ギヤケース31に形成される段差部31Aとギヤケース31に螺合するロックナット55との間で保持される。また、ウォーム軸52には、軸受53の段差部31A側の側面に当接し軸受53の内径よりも大きい外径を有する係止部52Cが形成される。ウォーム軸52の電動モータ20側の他端部52Dを支持する軸受54は、外輪54bがギヤケース31に形成される底部31Bに当接する。ウォーム軸52には、軸受54の電動モータ20側の側面に当接し軸受54の内径よりも大きい外径を有する係止部52Eが形成される。これら係止部52C、52Eにより、ウォーム軸52の軸方向への移動が規制される。
次に、第1減速部40及び第2減速部50による減速作動について説明する。
電動モータ20が駆動して回転軸21が回転すると、第1減速部40のサンギヤ41が回転する。サンギヤ41の回転に伴い、プラネタリギヤ43がリングギヤ42及びサンギヤ41それぞれに噛み合いながらサンギヤ41の周りを回転する。これにより、電動モータ20の回転は、サンギヤ41とリングギヤ42との歯数に応じた減速比により減速されて、キャリア44の回転として出力される。
キャリア44の回転に伴い、第2減速部50のウォーム軸52が回転する。ウォーム軸52の回転に伴い、ウォームホイール51は、ウォーム軸52における歯部52Aの歯数とウォームホイール51における歯部51Aの歯数とに応じた減速比により減速されて回転する。よって、ウォーム軸52の回転は、ウォーム軸52における歯部52Aの歯数とウォームホイール51における歯部51Aの歯数とに応じた減速比により減速されて出力軸4に伝達される。
このように、電動モータ20の回転は、サンギヤ41とリングギヤ42の歯数の応じた減速比で第1減速部40により減速され、さらにウォーム軸52とウォームホイール51の歯数に応じた減速比で第2減速部50により減速されて出力軸4に伝達される。このため、ステアリング装置100は、電動モータ20によって出力軸4に大きな回転トルクを付与することができ、電動モータ20による操舵トルクのアシスト力を向上させることができる。
ラックアンドピニオンを有さずにリンク機構10によって出力軸4の回転を車輪6の転舵力に変換すると、ラックアンドピニオンによる出力軸4の回転の減速がないため車輪6の転舵力が不足するおそれがある。しかしながら、ステアリング装置100では、電動モータ20と出力軸4の間に第1減速部40及び第2減速部50の2つの減速部が設けられるため、電動モータ20によって出力軸4に大きな回転トルクを付与することができる。したがって、リンク機構10によって出力軸4の回転を車輪6の転舵力に変換する場合であっても、車輪6の転舵力を確保することができる。このように、ステアリング装置100によれば、車輪6の転舵力を確保できると共に、車両前方部内を省スペース化できる。
ステアリング装置100は、ラックを備えていない。このため、ラックを出力軸に押し付けるコイルバネの付勢力を変化させて操舵感を調整することができない。しかしながら、ステアリング装置100は、動力伝達機構がリンク機構であっても操舵感を調整することができるように、伝達機構30における摩擦力を調整する摩擦力調整機構60を備えている。以下に、図3を参照しながら、摩擦力調整機構60について説明する。
摩擦力調整機構60は、ウォーム軸52を支持する軸受54の外周面を付勢することでウォーム軸52をウォームホイール51に向けて付勢する付勢部材としてのコイルスプリング61を有する。具体的には、ギヤケース31には、ウォーム軸52を挟んでウォームホイール51とは反対側であって軸受54に臨む位置に、外周面から収容穴32に貫通する貫通孔63が形成される。コイルスプリング61は、貫通孔63に収容され軸受54の外輪54bの外周面と貫通孔63に螺合されたプラグ62との間で圧縮された状態で保持される。これにより、コイルスプリング61は、ウォーム軸52を支持する軸受54の外周面を付勢する。さらに、軸受54に支持されるウォーム軸52は、ウォームホイール51に向けて付勢される。この結果、ウォームホイール51の歯部51Aとウォーム軸52の歯部52Aとの間のバックラッシュが低減されるとともに、ウォーム軸52とウォームホイール51との間の摩擦力が増加する。
上述のように、ドライバーのバーハンドル1の操作に応じて電動モータ20が出力する回転トルクは、伝達機構30を介してステアリングシャフト2の出力軸4にアシスト力として伝達される。このとき、コイルスプリング61の付勢力によって生じるウォーム軸52とウォームホイール51との間の摩擦力が増加すると、電動モータ20から出力されたアシスト力は増加した摩擦力分減少して出力軸4に伝達される。これにより、バーハンドル1を操舵するのに必要な操舵力が大きくなるので、ドライバーにはバーハンドル1の操舵が重く感じられる。これに対して、コイルスプリング61の付勢力を弱めると、コイルスプリング61の付勢力によって生じるウォーム軸52とウォームホイール51との間の摩擦力が減少するので、電動モータ20から出力されたアシスト力は減少した摩擦力分増加して出力軸4に伝達される。これにより、バーハンドル1を操舵するのに必要な操舵力が小さくなるので、ドライバーにはバーハンドル1の操舵が軽く感じられる。
このように、コイルスプリング61の付勢力を適宜設定することでウォーム軸52とウォームホイール51との間の摩擦力を調整することができ、摩擦力調整機構60によって操舵感を調整することができる。
なお、摩擦力調整機構60は、軸受54に設けられているが、軸受53に設けられてもよい。また、軸受53及び軸受54の両方に設けられてもよい。さらに、プラグ62に換えてばね力調整機構を設けてもよい。
以上の第1実施形態によれば以下の効果を奏する。
ステアリング装置100によれば、コイルスプリング61の付勢力を適宜調整することによって、操舵系の摩擦力を調整することができる。したがって、リンク機構を備えたステアリング装置であっても、簡単に操舵感を調整することができる。
また、ステアリング装置100では、プラグ62を取り外すことによって、コイルスプリング61をギヤケース31から取り出すことができる。これにより、コイルスプリング61をばね荷重が異なるものと交換することにより摩擦力を調整することができる。さらに、プラグ62の長さやプラグ62のねじ込み量を調整することで摩擦力を調整することもできる。
<第2実施形態>
次に、図4を参照して本発明の第2実施形態に係るステアリング装置200について説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態のステアリング装置100と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
第1実施形態におけるステアリング装置100は、コイルスプリング61によってウォーム軸52とウォームホイール51との間の摩擦力を調整することで操舵感を調整する構成であるのに対し、第2実施形態におけるステアリング装置200は、皿ばね157、158によって軸受53、54の内輪53a、54a及び外輪53b、54bとボール53c、54cとの間にそれぞれ生じる摩擦力を調整することで操舵感を調整する構成である点で相違する。
ステアリング装置200は、図4に示すように、伝達機構30における摩擦力を調整する摩擦力調整機構160を備える。
摩擦力調整機構160は、軸受53の内輪53aとウォーム軸52の係止部52Cとの間に設けられる付勢部材としての皿ばね157と、軸受54の内輪54aとウォーム軸52の係止部52Eとの間に設けられる付勢部材としての皿ばね158と、を有する。ウォーム軸52の軸方向において、皿ばね157は軸受53の内輪53aをボール53cに向けて付勢し、皿ばね158は軸受54の内輪54aをボール54cに向けて付勢する。図4に示す構成では、皿ばね157は、軸受53の内輪53aをウォーム軸52に固定された係止リング156に向けて付勢し、皿ばね158は、軸受54の内輪54aを底部31Bに向けて付勢する。なお、軸受53は、ウォーム軸52の軸方向における皿ばね157と反対方向への移動が係止リング156によって制限される。
上述のように、軸受53の外輪53bは、段差部31Aとロックナット55との間で保持されているので、軸受54の内輪53aは皿ばね157によって外輪53bに対して電動モータ20側に向かって付勢される。このため、ボール53cには、ウォーム軸52の軸方向において内輪53a及び外輪53bによって挟み込まれるような力が作用する。これにより、ボール53cと内輪53a、及びボール53cと外輪53bとの間に生じる摩擦力が大きくなる。
また、上述のように軸受54の外輪54bは、底部31Bに当接しているので、内輪53aは皿ばね158によって外輪54bに対して底部31B側に向かって付勢される。このため、ボール54cには、ウォーム軸52の軸方向において内輪54a及び外輪54bによって挟み込まれるような力が作用するので、ボール54cと内輪54a、及びボール54cと外輪54bとの間に生じる摩擦力が大きくなる。
このとき、皿ばね157、158の付勢力によってボール54cと内輪54a、及びボール54cと外輪54bとの間に生じる摩擦力が大きくなると、電動モータ20から出力されたアシスト力は増加した摩擦力分減少して出力軸4に伝達される。これにより、バーハンドル1を操舵するのに必要な操舵力が大きくなるので、ドライバーにはバーハンドル1の操舵が重く感じられる。これに対して、皿ばね157、158の付勢力を弱めると、皿ばね157、158の付勢力によってボール54cと内輪54a、及びボール54cと外輪54bとの間に生じる摩擦力が減少するので、電動モータ20から出力されたアシスト力は減少した摩擦力分増加して出力軸4に伝達される。これにより、バーハンドル1を操舵するのに必要な操舵力が小さくなるので、ドライバーにはバーハンドル1の操舵が軽く感じられる。
このように、皿ばね157、158の付勢力を適宜設定することで軸受53、54の内輪53a、54aをボール53c、54cに向けて付勢する皿ばね157、158によって軸受53、54の内輪53a、54aとボール53c、54c、及び外輪53b、54bとボール53c、54cとの間にそれぞれ生じる摩擦力を調整することができ、摩擦力調整機構160によって簡単に操舵感を調整することができる。なお、皿ばね157、158の付勢力は、ばね荷重が異なるものと交換したり、皿ばねを複数枚用いて枚数を変化させることで調整すればよい。
摩擦力調整機構160は、皿ばね157及び皿ばね158のいずれか一方のみを設けた構成であってもよい。例えば、皿ばね157のみを設ける場合には、係止部52Eを軸受54の内輪54aに当接させる。これにより、皿ばね157によって軸受53の内輪53aがボール53cに向けて付勢されるとともに、ウォーム軸52を介して軸受54の内輪54aがボール54cに向けて付勢される。また、内輪53a、54aをウォーム軸52に固定して、皿ばね157及び皿ばね158が外輪53b、54bを付勢するように構成してもよい。
以上の第2実施形態によれば以下の効果を奏する。
ステアリング装置200によれば、皿ばね157、158の付勢力を適宜調整することによって、伝達機構30における摩擦力を調整することができる。したがって、リンク機構10を備えたステアリング装置200であっても簡単に操舵感を調整することができる。
また、皿ばね157、158は、付勢力が互いに反対方向に向かって作用するので、ウォーム軸52が軸方向に動いても、いずれか一方の皿ばね157、158によって軸受53、54の内輪53a、54a及び外輪53b、54bの少なくとも一方とボール53c、54cとの間の摩擦抵抗が付与される。したがって、安定して摩擦抵抗を付与することができる。
ステアリング装置200では、摩擦力調整機構160は皿ばね157、158をウォーム軸52に設けるだけでよいので、ギヤケース31にコイルスプリングを収容する貫通孔を加工する必要がない。よって、加工工数を削減できる。
<第3実施形態>
次に、図5を参照して本発明の第3実施形態に係るステアリング装置300について説明する。以下では、上記第2実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第2実施形態のステアリング装置200と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
第2実施形態のステアリング装置200は、皿ばね157、158によって軸受53、54のボール53c、54cと内輪53a、54a、及びボール53c、54cと外輪53b、54bとの間にそれぞれ生じる摩擦力を調整することで操舵感を調整する構成であるのに対し、第3実施形態におけるステアリング装置300は、ウォーム軸52の軸方向において、調整ナット255によってアンギュラ玉軸受253、259のボール253c、259cと内輪253a、259a、及びボール253c、259cと外輪253b、259bとの間の摩擦力を調整することで操舵感を調整する構成である点で相違する。
図5に示すように、ステアリング装置300は、伝達機構30における摩擦力を調整する摩擦力調整機構260を備える。
摩擦力調整機構260は、ウォーム軸52の一端部52Bを支持するアンギュラ玉軸受253及びアンギュラ玉軸受259と、アンギュラ玉軸受253の外輪253b及びアンギュラ玉軸受259の外輪259bを段差部31Aとの間で保持する環状の調整ナット255と、を有する。アンギュラ玉軸受253及びアンギュラ玉軸受259は、いわゆる正面合わせに組み合わされている。アンギュラ玉軸受253の内輪253a及びアンギュラ玉軸受259の内輪259aは、係止部52C及び係止リング156によってウォーム軸52の外周に係止される。
調整ナット255は、ギヤケース31に形成されたねじ部に螺合している。調整ナット255を段差部31A側に向かってねじ込むことによって、アンギュラ玉軸受253の外輪253b及びアンギュラ玉軸受259の外輪259bには予圧が与えられる。言い換えると、調整ナット255は、付勢部材として機能し、外輪253bをアンギュラ玉軸受253のボール253cに向けて付勢するとともに、外輪259bをアンギュラ玉軸受259のボール259cに向けて付勢する。
アンギュラ玉軸受253及びアンギュラ玉軸受259は正面合わせであるので、外輪253b及び外輪259bが調整ナット255をねじ込むことによって付勢されると、ボール253cと内輪253a、及びボール253cと外輪253bとの間に生じる摩擦力が増加する。これと同時に、ボール259cと内輪259a、及びボール259cと外輪259bとの間に生じる摩擦力も増加する。これにより、電動モータ20から出力されたアシスト力は増加した摩擦力分減少して出力軸4に伝達される。したがって、バーハンドル1を操舵するのに必要な操舵力が大きくなるので、ドライバーにはバーハンドル1の操舵が重く感じられる。これに対して、調整ナット255を緩めると、ボール253cと内輪253a、及びボール253cと外輪253bの間に生じる摩擦力が減少する。これと同時に、ボール259cと内輪259a、及びボール259cと外輪259bとの間に生じる摩擦力も減少する。これにより電動モータ20から出力されたアシスト力は減少した摩擦力分増加して出力軸4に伝達される。したがって、バーハンドル1を操舵するのに必要な操舵力が小さくなるので、ドライバーにはバーハンドル1の操舵が軽く感じられる。
このように、アンギュラ玉軸受253の外輪253b及びアンギュラ玉軸受259の外輪259bをそれぞれボール253c及びボール259cに向けて付勢する調整ナット255によって、ボール253cと内輪253a、及びボール253cと外輪253bとの間に生じる摩擦力を調整することができるとともに、ボール259cと内輪259a、及びボール259cと外輪259bとの間に生じる摩擦力を調整することができ、摩擦力調整機構260によって簡単に操舵感を調整することができる。
なお、アンギュラ玉軸受253及びアンギュラ玉軸受259を背面合わせにしてもよい。この場合には、係止リング156と調整ナット255の機能を逆にすればよい。
以上の第3実施形態によれば以下の効果を奏する。
ステアリング装置300によれば、調整ナット255によってアンギュラ玉軸受253の外輪253b及びアンギュラ玉軸受259の外輪259bに対する付勢力(予圧)を適宜調整することによって、伝達機構30における摩擦力を調整することができる。したがって、リンク機構10を備えたステアリング装置300であっても簡単に操舵感を調整することができる。
また、アンギュラ玉軸受253、259は、背面組み合わせ形式または正面組み合わせであるので、ウォーム軸52の軸方向のいずれの方向の荷重も受けることができる。したがって、安定して摩擦抵抗を付与することができる。
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
ステアリング装置100、200、300は、操舵ハンドル(バーハンドル1)から入力される操舵トルクによって回転するステアリングシャフト2と、操舵トルクを補助する回転トルクをステアリングシャフト2に付与する電動モータ20と、電動モータ20の回転を減速してステアリングシャフト2に伝達する伝達機構30と、ステアリングシャフト2の回転を変換して車輪6を転舵するリンク機構10と、伝達機構30における摩擦力を調整する摩擦力調整機構60、160、260と、を備える。
この構成によれば、摩擦力調整機構60、160、260によって伝達機構30の摩擦抵抗を調整することができる。したがって、リンク機構10を備えたステアリング装置100、200、300であっても、簡単に操舵感を調整することができる。
また、ステアリング装置100、200、300では、伝達機構30は、ステアリングシャフト2に連結されるウォームホイール51と、電動モータ20の出力が伝達されウォームホイール51と噛み合うウォーム軸52と、ウォーム軸52の両端部52B、52Dそれぞれを回転自在に支持する軸受53、54、253、259と、を有し、ウォームホイール51、ウォーム軸52、及び軸受53、54、253、259は、ギヤケース31内に収容される。
また、ステアリング装置100では、摩擦力調整機構60は、ウォーム軸52の両端部52B、52Dを支持する軸受53、54の少なくとも一方の外周面を付勢することでウォーム軸52をウォームホイール51に向けて付勢する付勢部材(コイルスプリング61)によってウォーム軸52とウォームホイール51との間の摩擦力を調整する。
この構成によれば、付勢部材(コイルスプリング61)を適宜調整することで、ウォーム軸52とウォームホイール51の間の摩擦抵抗を調整することができる。
また、ステアリング装置100では、付勢部材(コイルスプリング61)は、ギヤケース31に取り出し可能に収容される。
この構成によれば、付勢部材(コイルスプリング61)をギヤケースから取り出せるので、付勢部材(コイルスプリング61)を簡単に調整または交換することができる。
また、ステアリング装置200では、軸受53、54は、ウォーム軸52に支持される内輪53a、54aと、ギヤケース31に支持される外輪53b、54bと、内輪53a、54aと外輪53b、54bとの間に転動可能に収容される複数の転動体(ボール53c、54c)と、を有し、摩擦力調整機構160は、ウォーム軸52の軸方向において、軸受53、54の内輪53a、54a及び外輪53b、54bの少なくとも一方を転動体(ボール53c、54c)に向けて付勢する付勢部材(皿ばね157、158)によって軸受53、54の内輪53a、54aと転動体(ボール53c、54c)、及び外輪53b、54bと転動体(ボール53c、54c)との間に生じる摩擦力を調整する。
この構成では、付勢部材(皿ばね157、158)を適宜調整することで、軸受53、54の内輪53a、54aと転動体(ボール53c、54c)、及び外輪53b、54bと転動体(ボール53c、54c)との間の摩擦抵抗を調整することができる。
また、ステアリング装置200では、付勢部材(皿ばね157、158)は、ウォーム軸52の両端部52B、52Dの軸受53、54それぞれに対して設けられ、軸受53、54それぞれに対して設けられた付勢部材(皿ばね157、158)は、付勢力が互いに反対方向に向かって作用する。
この構成では、軸受53、54それぞれに対して設けられた付勢部材(皿ばね157、158)は付勢力が互いに反対方向に向かって作用する。したがって、ウォーム軸52が軸方向に動いても、いずれか一方の付勢手段(皿ばね157、158)によって軸受53、54の内輪53a、54a及び外輪53b、54bの少なくとも一方と転動体(ボール53c、54c)との間の摩擦抵抗が付与される。したがって、安定して摩擦抵抗を付与することができる。
また、ステアリング装置300では、両端部52B、52Dの少なくとも一方の軸受54、253、259は、アンギュラ玉軸受であり、摩擦力調整機構260は、ウォーム軸52の軸方向において、アンギュラ玉軸受253、259の内輪253a、259a及び外輪253b、259bの少なくとも一方を転動体(ボール253c、254c)に向けて付勢する付勢部材(調整ナット255)によって内輪253a、259aと転動体(ボール253c、254c)、及び外輪253b、259bと転動体(ボール253c、254c)との間に生じる摩擦力を調整する。
この構成では、付勢部材(調整ナット255)を適宜調整することで、アンギュラ玉軸受253、259の内輪253a、259aと転動体(ボール253c、254c)、及び外輪253b、259bと転動体(ボール253c、254c)との間の摩擦抵抗を調整することができる。
また、ステアリング装置300では、アンギュラ玉軸受253、259は、背面組み合わせ形式または正面組み合わせ形式である。
この構成では、アンギュラ玉軸受253、259は、ウォーム軸52の軸方向のいずれの方向の荷重も受けることができる。したがって、安定して摩擦抵抗を付与することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。