JP3788576B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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- F16H57/021—Shaft support structures, e.g. partition walls, bearing eyes, casing walls or covers with bearings
- F16H2057/0213—Support of worm gear shafts
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は操舵補助力の発生源としてモータを用いてなる電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の舵取りは、車室の内部に配された操舵輪の回転操作を、舵取用の車輪(一般的には前輪)の操向のために車室の外部に配された舵取機構に伝えて行われる。
【0003】
図6は従来における電動パワーステアリング装置の断面図、図7は減速機構部分の断面図である。
自動車用の電動パワーステアリング装置としては、図6に示すように例えば舵取りのための操舵輪100に連結される第1の操舵軸101と、該操舵軸101の下端にトーションバー102を介してその上端が同軸的に連結され、その下端が車輪に繋がる舵取機構に連結される第2の操舵軸103と、操舵輪100を回転することによって第1の操舵軸101に加わるトルクを前記トーションバー102に生じる捩れによって検出するトルクセンサ104と、該トルクセンサ104の検出結果に基づいて駆動される操舵補助用のモータ105と、該モータ105の出力軸に繋がり、該出力軸の回転を減速して前記第2の操舵軸103に伝達するウォーム106及びウォームホイール107を有する減速機構とを備え、操舵輪100の回転に応じた舵取機構の動作を前記モータ105の回転により補助し、舵取りのための運転者の労力負担を軽減するように構成されている。
【0004】
減速機構を構成するウォーム106は、図7に示すように一対の転がり軸受108,108を介してハウジング110の嵌合孔に支持され、ウォームホイール107が設けられている第2の操舵軸103は図6に示すように一対の転がり軸受109,109を介してハウジング110の嵌合孔に支持され、ラジアル方向及びアキシアル方向への移動が阻止されている。
【0005】
このように減速機構が用いられる場合、ウォーム106及びウォームホイール107の噛合部のバックラッシュ量を少なくするため、ウォーム106及びウォームホイール107の回転中心間距離と、前記転がり軸受108,109が嵌合される嵌合孔の中心間距離とが許容範囲内で一致するように加工されたウォーム106、ウォームホイール107、転がり軸受108,109、第2の操舵軸103、ハウジング110が選択され組み立てられているが、この組立てに多くの時間を要することになり、また、ウォーム106及びウォームホイール107の歯の摩耗が増大することによってバックラッシュ量が増加することになり、改善策が要望されていた。
【0006】
そこで、特開2000−43739に記載されている如くモータ側軸部が転がり軸受を介してハウジングに回転可能に支持されたウォームのモータと反対側軸部をラジアル方向へ移動可能とし、該軸部に嵌合された軸受の周面に当接する押付体を介して前記軸受を付勢し、前記ウォームのウォームホイールとの噛合部に予圧を加えるばね体を設け、該ばね体の撓み量を調整することにより前記回転中心間距離を調整し、バックラッシュ量を調整することができるようにした電動パワーステアリング装置が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、以上の如く押付体及びばね体を用いて前記回転中心間距離を調整するようにした伝動パワーステアリング装置にあっては、ウォームが収容されるハウジングに、前記ウォームの軸心と直交する取付孔を穿設する必要があるため、ハウジングの加工性が悪化することになり、さらに、偏倚手段の部品点数が増加するとともに、偏倚手段の組み付け作業性が悪化することになり改善が要望されていた。
【0008】
本発明は斯る事情に鑑みてなされたものであり、駆動歯車を支持する軸受が嵌合された内側周面及び静止側部材に嵌合された外側周面の間に設けられた弧状の凹所と、該凹所よりもラジアル方向の内側で撓みが可能な弧状の撓み板部とを有する筒体を用いて駆動歯車を従動歯車の方向へ偏倚させる構成とすることにより、バックラッシュ量を少なくすることができるとともに、駆動歯車を収容する静止側部材の加工性及び偏倚手段の組み付け作業性を良好にすることができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、前記凹所を筒部の一端に開放され、他端で閉鎖された環状とすることにより、筒体を成形によって簡易を形成することができ、偏倚手段のコストの低減化を図ることができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、前記凹所よりもラジアル方向の外側で撓みが可能な弧状の撓み板部を有する筒体とすることにより、撓み板部の肉厚を減少することなく撓み板部の撓み量に対する弾性復元力を小さくすることができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0011】
また、筒体が嵌合された嵌合部をウォームの軸長方向へ貫通する貫通孔とし、一端において前記凹所よりもラジアル方向の内側が閉鎖された筒体とすることにより、筒体の嵌合部への組込を簡易にできるとともに、嵌合部の一端を筒体によって閉鎖することができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
第1発明に係る電動パワーステアリング装置は、軸受で支持されており、操舵補助用のモータによって回転される駆動歯車と、該駆動歯車に噛合し、舵取機構に繋がる従動歯車と、前記駆動歯車を従動歯車の方向へ偏倚させる偏倚手段とを備え、前記モータの回転によって操舵補助するようにした電動パワーステアリング装置において、前記偏倚手段は前記軸受が嵌合された内側周面及び静止側部材に嵌合された外側周面の間に設けられた弧状の凹所と、該凹所よりもラジアル方向の内側で撓みが可能な弧状の撓み板部とを有する筒体であることを特徴とする。
【0013】
第1発明にあっては、筒体の撓み可能な撓み板部によって駆動歯車を従動歯車の方向へ偏倚させることができるため、バックラッシュ量を少なくすることができる。しかも、偏倚手段が駆動歯車と同心的に形成される筒体であるため、該筒体が嵌合される嵌合部を前記駆動歯車が収容される収容部とともに加工することができるとともに、筒体を駆動歯車の軸長方向へ挿入して組み込むことができる。また、駆動歯車が従動歯車と噛合する噛合部に加わる噛合反力によって駆動歯車が従動歯車に対しラジアル方向へ離間するとき、撓み板部が凹所内で撓みつつ外側板部に当接し、前記撓み板部の撓み量を制限することができるため、駆動歯車が許容偏倚量を超えて移動することを防止でき、ウォーム及びウォームホイールの噛合いを良好にできる。
【0014】
第2発明に係る電動パワーステアリング装置は、前記凹所は筒体の一端に開放され、他端で閉鎖された環状であることを特徴とする。
【0015】
第2発明にあっては、筒体を成形によって簡易を形成することができ、偏倚手段の部品点数を1つにすることが可能であり、偏倚手段のコストの低減化を図ることができる。
【0016】
第3発明に係る電動パワーステアリング装置は、前記筒体は前記凹所よりもラジアル方向の外側で撓みが可能な弧状の撓み板部を有していることを特徴とする。
【0017】
第3発明にあっては、凹所よりも外側の撓み板部を撓ませつつ内側の撓み板部を撓ませることができるため、撓み板部の肉厚を減少することなく撓み板部の撓み量に対する弾性復元力を小さくすることができる。
【0018】
第4発明に係る電動パワーステアリング装置は、前記静止側部材は前記外側周面が嵌合された嵌合部を前記駆動歯車の軸長方向へ貫通する貫通孔としてあり、前記筒体は一端において前記凹所よりもラジアル方向の内側が閉鎖されていることを特徴とする。
【0019】
第4発明にあっては、駆動歯車の軸長方向へ貫通する嵌合部に筒体の外側周面を嵌合することにより、前記嵌合部の一端を筒体によって閉鎖することができるため、換言すれば、筒体が前記収容部の蓋部材を兼ねるため、部品点数の削減化及びコストの低減化を図ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
実施の形態1
図1は本発明に係る電動パワーステアリング装置の断面図である。
電動パワーステアリング装置は、一端が舵取りのための操舵輪1に繋がり、他端に筒部を有する第1の操舵軸2と、前記筒部内に挿入されてその一端が前記操舵軸2の他端に同軸的に連結され、前記操舵輪1に加わる操舵トルクの作用によって捩れるトーションバー3と、その他端が前記トーションバー3の他端に同軸的に連結される第2の操舵軸4と、前記トーションバー3の捩れに応じた第1及び第2の操舵軸2,4の相対回転変位量によって前記操舵輪1に加わる操舵トルクを検出するトルクセンサ5と、該トルクセンサ5が検出したトルクに基づいて駆動される操舵補助用のモータ6(図2参照)と、該モータ6の回転に連動し、該回転を減速して第2の操舵軸4に伝達する駆動歯車(以下ウォームと云う)71及び従動歯車(以下ウォームホイールと云う)72を有する減速機構7と、前記トルクセンサ5及び前記減速機構7が収容されるハウジング8とを備え、このハウジング8に前記モータ6が取付けられている。
【0021】
ハウジング8は、前記トルクセンサ5を収容する第1の収容部8aと、該収容部8aに連続し、前記ウォームホイール72を収容する第2の収容部8bと、該収容部8bに連続し、前記ウォーム71を収容する第3の収容部8cとを備えている。
【0022】
図2は減速機構部分の拡大断面図である。
第3の収容部8cはウォーム71の軸長方向に長くなっており、その長手方向一端に第1の嵌合孔81及び環状の抜止溝82が設けられている。また、第3の収容部8cの他端には第2の嵌合孔83と、該嵌合孔83の一端に連続する当接部84と、嵌合孔83の他端に連続するねじ孔85とが設けられ、該ねじ孔85にねじ環9が螺着されている。また、ハウジング8には前記第3の収容部8cに連通するケースを有する前記モータ6が取付けられている。
【0023】
減速機構7は、両端に軸部71a,71bを有し、他端の軸部71bが前記モータ6の出力軸60に繋がるウォーム71と、前記第2の操舵軸4の中間に嵌合固定されるウォームホイール72とを備え、これらウォーム71及びウォームホイール72の噛合により前記出力軸60の回転を減速して第2の操舵軸4に伝達し、該第2の操舵軸4からユニバーサルジョイントを経て例えばラックピニオン式の舵取機構(図示せず)へ伝達するようにしている。
【0024】
ウォーム71は第2の操舵軸4の軸芯と交叉するように配置されており、その一端の軸部71aに第1の転がり軸受10の内輪が嵌合され、該転がり軸受10の外輪に固定された合成樹脂製の筒体20が前記第1の嵌合孔81に嵌合されることによって、一端の軸部71aが第1の嵌合孔81に回転可能に支持され、他端の軸部71bが第2の転がり軸受11を介して前記第2の嵌合孔83に回転可能に支持され、前記ねじ孔85に螺着されたねじ環9が第2の転がり軸受11の外輪に当接し、さらに、転がり軸受11の外輪が前記当接部84に当接し、第2の転がり軸受11及びウォーム71の軸長方向への移動を拘束している。また、他端の軸部71bが継筒12の内面にスプライン嵌合されて前記出力軸60に連結されている。
【0025】
図3はウォーム支持部分の拡大断面図、図4は図3のIV−IV線の断面図である。
筒体20は、比較的柔軟性を有するナイロン樹脂、ポリアセタール、テフロン(登録商標)等の熱可塑性合成樹脂を成形してなり、前記転がり軸受10が嵌合された内側周面及び前記第1の嵌合孔81に嵌合された外側周面の間に設けられた環状の凹所21と、該凹所21よりもラジアル方向の内側で撓みが可能な環状の撓み板部22と、該撓み板部22の他端に連なり、凹所21よりもラジアル方向の外側で撓みが可能な環状の撓み板部23と、撓み板部22の一端に連なり、該撓み板部22の一端が閉鎖された蓋部24とを有している。従って、図2、図3に示すように筒体20は、一端において凹所21よりもラジアル方向の内側が蓋部24により閉鎖されている。
【0026】
単体状態では内側の撓み板部22の中心は外側の撓み板部23の中心に対しウォーム71をウォームホイール72との噛合点へ偏倚させる側へ偏倚し、内側の撓み板部22の弾性復元力が転がり軸受10を介してウォーム71に加わり、該ウォーム71をウォームホイール72との噛合点へ偏倚させている。
【0027】
凹所21は筒体20の一端に開放され、他端で閉鎖された環状であり、その幅寸法を例えば0.1mm乃至0.5mm程度、好適には略0.3mmとし、さらに、この凹所21によって形成された撓み板部22,23の肉厚を夫々0.5mm乃至2.0mm程度とし、凹所21の幅寸法以内で凹所21の底部分を支点として内側の撓み板部22を撓み可能とし、この撓みにより転がり軸受10を介してウォーム71をウォームホイール72の方向へ偏倚させるようにしてある。
【0028】
外側の撓み板部23は、その一端側と他端側とで肉厚寸法を異ならせ、他端側の肉厚寸法を一端側の肉厚寸法よりも小さくして他端側を一端側に対して撓み可能とし、一端側を前記嵌合孔81に嵌合し、他端側を非嵌合としてある。
【0029】
さらに、内側の撓み板部22の一端部内側には前記転がり軸受10の外輪に当接する当接部25を設け、該当接部25及び軸部71aに突設された鍔部71cによって転がり軸受10の移動を阻止してある。また、前記抜止溝82に嵌合された抜止環13によって筒体20の嵌合孔81からの抜出しが阻止されている。
【0030】
以上の如く構成した電動パワーステアリング装置において、ウォーム71を組み込む場合、第2の転がり軸受11が嵌合されたウォーム71を第2の嵌合孔83から第3の収容部8cに挿入し、第2の転がり軸受11を第2の嵌合孔83に夫々嵌合させ、ねじ環9をねじ孔85に螺着することによりウォーム71のモータ側軸部71bをハウジング8に支持することができるとともに、ウォーム71の軸長方向への移動を規制することができる。
【0031】
次に内側の撓み板部22の中心が外側の撓み板部22の中心に対して前記噛合点側となるようにして筒体20の内側周面を転がり軸受10に嵌合するとともに、外側の撓み板部23の一端側を嵌合孔81に嵌合することにより、筒体20の内側の撓み板部22が凹所21の底部分を支点としてウォームホイール72と反対側へ撓み、該内側の撓み板部22の弾性復元力によって転がり軸受を介してウォーム71をウォームホイール72との噛合点へ偏倚させることができる。
【0032】
このウォーム71の偏倚によりウォーム71及びウォームホイール72の噛合部のバックラッシュ量を少なくすることができ、また、ウォーム71及びウォームホイール72の歯の摩耗量が増大したりすることによって噛合状態が経時変化したときにおいてもバックラッシュ量を少なくすることができる。しかも、ウォーム71がウォームホイール72と噛合する噛合部に加わる噛合反力によってウォーム71がウォームホイール72に対しラジアル方向へ離間するように押圧されたとき、内側の撓み板部22が凹所21内で撓みつつ外側の撓み板部23に当接し、前記内側の撓み板部22の撓み量を制限することができる。従って、ウォームが許容偏倚量を超えて移動することを防止でき、ウォーム71及びウォームホイール72の噛合いを良好にできる。
【0033】
また、筒体20はウォーム71と同心的に形成されているため、該筒体20が嵌合される嵌合孔81を前記ウォーム71が収容される第3の収容部8cとともに加工することができ、さらに、筒体20をウォーム71と同方向に挿入して簡易に組み込むことができる。組み込まれた筒体20は第1の嵌合孔81を閉鎖するため、換言すれば、筒体20が前記収容部8cの蓋部材を兼ねるため、部品点数の削減化及びコストの低減化を図ることができる。
【0034】
また、以上の如く筒体を組み込んだ後、前記抜止溝82に抜止環13を嵌合することによりウォーム71の一端軸部をハウジング8に支持することができるとともに、転がり軸受10及び筒体20の軸長方向への移動を規制することができる。
【0035】
実施の形態2
図5は実施の形態2の筒体の構成を示すもので、(a) は拡大断面図、(b) は(a) のV−V線の断面図である。
この実施の形態2の電動パワーステアリング装置は、実施の形態1の如く環状の凹所21を有する筒体20を用いる代わりに、ウォーム71をウォームホイール72との噛合点へ偏倚させるべき力が発生する第1位置及び該第1位置と反対側の第2位置に弧状の凹所21aと、該凹所21aよりもラジアル方向の内側及び外側で撓みが可能な弧状の撓み板部22a,23aとを有する筒体20aを用いたものである。
【0036】
実施の形態2においては、筒体20aの非凹所部分が転がり軸受10の動き方向を、ウォーム71をウォームホイール72との噛合点へ偏倚させる方向に規制しているため、ウォーム71はウォームホイール72の軸長方向に関して適正な噛合位置を保持することができる。
【0037】
即ち、減速機構7のウォーム71等は、回転中心線に対しその歯すじが回転方向へ捩じれており、ウォーム71からウォームホイール72へ回転トルクが加わるとき、換言すればモータ6の回転によって操舵補助するとき、ウォーム71がウォームホイール72の歯すじに沿ってラジアル方向へ動くように分力(噛合反力)が発生し、該分力によりウォーム71がラジアル方向へ押圧されることになるが、実施の形態2では、転がり軸受10の動き方向を前記凹所21aが設けられた方向に規制し、非凹所方向への動きを防ぐようにしてあるため、ウォーム71の噛合位置をウォームホイール72の軸長方向に関して適正に保持することができる。
【0038】
その他の構成及び作用は実施の形態1と同様であるため、同様の部品については同じ符号を付し、その詳細な説明及び作用の説明を省略する。
【0039】
尚、以上説明した実施の形態において、前記筒体20,20aは合成樹脂製である他、ゴム製、金属製の板ばねであってもよい。また、筒体20,20aが有する凹所21,21aは実施の形態1の如く環状としたり、実施の形態2の如くウォーム71をウォームホイール72の方向へ偏倚させるべき力が発生する第1位置及び該第1位置と反対側の第2位置としたりする他、例えば前記第1位置にのみ設けた構成としてもよい。
【0040】
また、以上説明した実施の形態では、筒体20の内側の撓み板部22を外側の撓み板部22の中心に対し偏倚させたが、その他、内側及び外側の撓み板部22,23を同心とし、前記第1の嵌合孔81を第2の嵌合孔83の中心に対し偏倚させ、筒体20の撓み板部22によって転がり軸受10を介してウォーム71をウォームホイール72の方向へ偏倚させるようにしてもよい。
【0041】
また、以上説明した実施の形態では、ウォーム71の一端の軸部71aをハウジング8に支持する軸受として転がり軸受10を用いたが、その他、この軸受はすべり軸受であってもよい。
【0042】
また、以上説明した実施の形態の減速機構7は、ウォームである駆動歯車71及びウォームホイールである従動歯車72を備えたウォーム歯車である他、ハイポイドピニオンである駆動歯車及びハイポイドホイールである従動歯車を備えたハイポイド歯車であってもよい。さらに、減速機構はベベルギヤであってもよい。
【0043】
【発明の効果】
第1発明によれば、筒体によってバックラッシュ量を少なくすることができるとともに、駆動歯車を収容する静止側部材の加工性及び偏倚手段の組み付け作業性を良好にすることができ、さらに、駆動歯車が許容偏倚量を超えて移動することを防止でき、ウォーム及びウォームホイールの噛合いを良好にできる。
【0044】
第2発明によれば、筒体を成形によって簡易を形成することができ、偏倚手段のコストの低減化を図ることができる。
【0045】
第3発明によれば、凹所よりも外側の撓み板部を撓ませつつ内側の撓み板部を撓ませることができるため、撓み板部の肉厚を減少することなく撓み板部の撓み量に対する弾性復元力を小さくすることができる。
【0046】
第4発明によれば、嵌合部の一端を筒体によって閉鎖することができるため、部品点数の削減化及びコストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電動パワーステアリング装置の断面図である。
【図2】本発明に係る電動パワーステアリング装置の減速機構部分の拡大断面図である。
【図3】本発明に係る電動パワーステアリング装置のウォーム支持部分の拡大断面図である。
【図4】図3のIV−IV線の断面図である。
【図5】本発明に係る電動パワーステアリング装置の実施の形態2の筒体の構成を示すもので、(a) は拡大断面図、(b) は(a) のV−V線の断面図である。
【図6】従来における電動パワーステアリング装置の断面図である。
【図7】従来における電動パワーステアリング装置の減速機構部分の断面図である。
【符号の説明】
6 モータ
8 ハウジング(静止側部材)
10 転がり軸受(軸受)
20 筒体
21 凹所
22 内側の撓み板部
23 外側の撓み板部
71 ウォーム(駆動歯車)
72 ウォームホイール(従動歯車)
81 嵌合部(嵌合孔)
【発明の属する技術分野】
本発明は操舵補助力の発生源としてモータを用いてなる電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の舵取りは、車室の内部に配された操舵輪の回転操作を、舵取用の車輪(一般的には前輪)の操向のために車室の外部に配された舵取機構に伝えて行われる。
【0003】
図6は従来における電動パワーステアリング装置の断面図、図7は減速機構部分の断面図である。
自動車用の電動パワーステアリング装置としては、図6に示すように例えば舵取りのための操舵輪100に連結される第1の操舵軸101と、該操舵軸101の下端にトーションバー102を介してその上端が同軸的に連結され、その下端が車輪に繋がる舵取機構に連結される第2の操舵軸103と、操舵輪100を回転することによって第1の操舵軸101に加わるトルクを前記トーションバー102に生じる捩れによって検出するトルクセンサ104と、該トルクセンサ104の検出結果に基づいて駆動される操舵補助用のモータ105と、該モータ105の出力軸に繋がり、該出力軸の回転を減速して前記第2の操舵軸103に伝達するウォーム106及びウォームホイール107を有する減速機構とを備え、操舵輪100の回転に応じた舵取機構の動作を前記モータ105の回転により補助し、舵取りのための運転者の労力負担を軽減するように構成されている。
【0004】
減速機構を構成するウォーム106は、図7に示すように一対の転がり軸受108,108を介してハウジング110の嵌合孔に支持され、ウォームホイール107が設けられている第2の操舵軸103は図6に示すように一対の転がり軸受109,109を介してハウジング110の嵌合孔に支持され、ラジアル方向及びアキシアル方向への移動が阻止されている。
【0005】
このように減速機構が用いられる場合、ウォーム106及びウォームホイール107の噛合部のバックラッシュ量を少なくするため、ウォーム106及びウォームホイール107の回転中心間距離と、前記転がり軸受108,109が嵌合される嵌合孔の中心間距離とが許容範囲内で一致するように加工されたウォーム106、ウォームホイール107、転がり軸受108,109、第2の操舵軸103、ハウジング110が選択され組み立てられているが、この組立てに多くの時間を要することになり、また、ウォーム106及びウォームホイール107の歯の摩耗が増大することによってバックラッシュ量が増加することになり、改善策が要望されていた。
【0006】
そこで、特開2000−43739に記載されている如くモータ側軸部が転がり軸受を介してハウジングに回転可能に支持されたウォームのモータと反対側軸部をラジアル方向へ移動可能とし、該軸部に嵌合された軸受の周面に当接する押付体を介して前記軸受を付勢し、前記ウォームのウォームホイールとの噛合部に予圧を加えるばね体を設け、該ばね体の撓み量を調整することにより前記回転中心間距離を調整し、バックラッシュ量を調整することができるようにした電動パワーステアリング装置が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、以上の如く押付体及びばね体を用いて前記回転中心間距離を調整するようにした伝動パワーステアリング装置にあっては、ウォームが収容されるハウジングに、前記ウォームの軸心と直交する取付孔を穿設する必要があるため、ハウジングの加工性が悪化することになり、さらに、偏倚手段の部品点数が増加するとともに、偏倚手段の組み付け作業性が悪化することになり改善が要望されていた。
【0008】
本発明は斯る事情に鑑みてなされたものであり、駆動歯車を支持する軸受が嵌合された内側周面及び静止側部材に嵌合された外側周面の間に設けられた弧状の凹所と、該凹所よりもラジアル方向の内側で撓みが可能な弧状の撓み板部とを有する筒体を用いて駆動歯車を従動歯車の方向へ偏倚させる構成とすることにより、バックラッシュ量を少なくすることができるとともに、駆動歯車を収容する静止側部材の加工性及び偏倚手段の組み付け作業性を良好にすることができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、前記凹所を筒部の一端に開放され、他端で閉鎖された環状とすることにより、筒体を成形によって簡易を形成することができ、偏倚手段のコストの低減化を図ることができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、前記凹所よりもラジアル方向の外側で撓みが可能な弧状の撓み板部を有する筒体とすることにより、撓み板部の肉厚を減少することなく撓み板部の撓み量に対する弾性復元力を小さくすることができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0011】
また、筒体が嵌合された嵌合部をウォームの軸長方向へ貫通する貫通孔とし、一端において前記凹所よりもラジアル方向の内側が閉鎖された筒体とすることにより、筒体の嵌合部への組込を簡易にできるとともに、嵌合部の一端を筒体によって閉鎖することができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
第1発明に係る電動パワーステアリング装置は、軸受で支持されており、操舵補助用のモータによって回転される駆動歯車と、該駆動歯車に噛合し、舵取機構に繋がる従動歯車と、前記駆動歯車を従動歯車の方向へ偏倚させる偏倚手段とを備え、前記モータの回転によって操舵補助するようにした電動パワーステアリング装置において、前記偏倚手段は前記軸受が嵌合された内側周面及び静止側部材に嵌合された外側周面の間に設けられた弧状の凹所と、該凹所よりもラジアル方向の内側で撓みが可能な弧状の撓み板部とを有する筒体であることを特徴とする。
【0013】
第1発明にあっては、筒体の撓み可能な撓み板部によって駆動歯車を従動歯車の方向へ偏倚させることができるため、バックラッシュ量を少なくすることができる。しかも、偏倚手段が駆動歯車と同心的に形成される筒体であるため、該筒体が嵌合される嵌合部を前記駆動歯車が収容される収容部とともに加工することができるとともに、筒体を駆動歯車の軸長方向へ挿入して組み込むことができる。また、駆動歯車が従動歯車と噛合する噛合部に加わる噛合反力によって駆動歯車が従動歯車に対しラジアル方向へ離間するとき、撓み板部が凹所内で撓みつつ外側板部に当接し、前記撓み板部の撓み量を制限することができるため、駆動歯車が許容偏倚量を超えて移動することを防止でき、ウォーム及びウォームホイールの噛合いを良好にできる。
【0014】
第2発明に係る電動パワーステアリング装置は、前記凹所は筒体の一端に開放され、他端で閉鎖された環状であることを特徴とする。
【0015】
第2発明にあっては、筒体を成形によって簡易を形成することができ、偏倚手段の部品点数を1つにすることが可能であり、偏倚手段のコストの低減化を図ることができる。
【0016】
第3発明に係る電動パワーステアリング装置は、前記筒体は前記凹所よりもラジアル方向の外側で撓みが可能な弧状の撓み板部を有していることを特徴とする。
【0017】
第3発明にあっては、凹所よりも外側の撓み板部を撓ませつつ内側の撓み板部を撓ませることができるため、撓み板部の肉厚を減少することなく撓み板部の撓み量に対する弾性復元力を小さくすることができる。
【0018】
第4発明に係る電動パワーステアリング装置は、前記静止側部材は前記外側周面が嵌合された嵌合部を前記駆動歯車の軸長方向へ貫通する貫通孔としてあり、前記筒体は一端において前記凹所よりもラジアル方向の内側が閉鎖されていることを特徴とする。
【0019】
第4発明にあっては、駆動歯車の軸長方向へ貫通する嵌合部に筒体の外側周面を嵌合することにより、前記嵌合部の一端を筒体によって閉鎖することができるため、換言すれば、筒体が前記収容部の蓋部材を兼ねるため、部品点数の削減化及びコストの低減化を図ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
実施の形態1
図1は本発明に係る電動パワーステアリング装置の断面図である。
電動パワーステアリング装置は、一端が舵取りのための操舵輪1に繋がり、他端に筒部を有する第1の操舵軸2と、前記筒部内に挿入されてその一端が前記操舵軸2の他端に同軸的に連結され、前記操舵輪1に加わる操舵トルクの作用によって捩れるトーションバー3と、その他端が前記トーションバー3の他端に同軸的に連結される第2の操舵軸4と、前記トーションバー3の捩れに応じた第1及び第2の操舵軸2,4の相対回転変位量によって前記操舵輪1に加わる操舵トルクを検出するトルクセンサ5と、該トルクセンサ5が検出したトルクに基づいて駆動される操舵補助用のモータ6(図2参照)と、該モータ6の回転に連動し、該回転を減速して第2の操舵軸4に伝達する駆動歯車(以下ウォームと云う)71及び従動歯車(以下ウォームホイールと云う)72を有する減速機構7と、前記トルクセンサ5及び前記減速機構7が収容されるハウジング8とを備え、このハウジング8に前記モータ6が取付けられている。
【0021】
ハウジング8は、前記トルクセンサ5を収容する第1の収容部8aと、該収容部8aに連続し、前記ウォームホイール72を収容する第2の収容部8bと、該収容部8bに連続し、前記ウォーム71を収容する第3の収容部8cとを備えている。
【0022】
図2は減速機構部分の拡大断面図である。
第3の収容部8cはウォーム71の軸長方向に長くなっており、その長手方向一端に第1の嵌合孔81及び環状の抜止溝82が設けられている。また、第3の収容部8cの他端には第2の嵌合孔83と、該嵌合孔83の一端に連続する当接部84と、嵌合孔83の他端に連続するねじ孔85とが設けられ、該ねじ孔85にねじ環9が螺着されている。また、ハウジング8には前記第3の収容部8cに連通するケースを有する前記モータ6が取付けられている。
【0023】
減速機構7は、両端に軸部71a,71bを有し、他端の軸部71bが前記モータ6の出力軸60に繋がるウォーム71と、前記第2の操舵軸4の中間に嵌合固定されるウォームホイール72とを備え、これらウォーム71及びウォームホイール72の噛合により前記出力軸60の回転を減速して第2の操舵軸4に伝達し、該第2の操舵軸4からユニバーサルジョイントを経て例えばラックピニオン式の舵取機構(図示せず)へ伝達するようにしている。
【0024】
ウォーム71は第2の操舵軸4の軸芯と交叉するように配置されており、その一端の軸部71aに第1の転がり軸受10の内輪が嵌合され、該転がり軸受10の外輪に固定された合成樹脂製の筒体20が前記第1の嵌合孔81に嵌合されることによって、一端の軸部71aが第1の嵌合孔81に回転可能に支持され、他端の軸部71bが第2の転がり軸受11を介して前記第2の嵌合孔83に回転可能に支持され、前記ねじ孔85に螺着されたねじ環9が第2の転がり軸受11の外輪に当接し、さらに、転がり軸受11の外輪が前記当接部84に当接し、第2の転がり軸受11及びウォーム71の軸長方向への移動を拘束している。また、他端の軸部71bが継筒12の内面にスプライン嵌合されて前記出力軸60に連結されている。
【0025】
図3はウォーム支持部分の拡大断面図、図4は図3のIV−IV線の断面図である。
筒体20は、比較的柔軟性を有するナイロン樹脂、ポリアセタール、テフロン(登録商標)等の熱可塑性合成樹脂を成形してなり、前記転がり軸受10が嵌合された内側周面及び前記第1の嵌合孔81に嵌合された外側周面の間に設けられた環状の凹所21と、該凹所21よりもラジアル方向の内側で撓みが可能な環状の撓み板部22と、該撓み板部22の他端に連なり、凹所21よりもラジアル方向の外側で撓みが可能な環状の撓み板部23と、撓み板部22の一端に連なり、該撓み板部22の一端が閉鎖された蓋部24とを有している。従って、図2、図3に示すように筒体20は、一端において凹所21よりもラジアル方向の内側が蓋部24により閉鎖されている。
【0026】
単体状態では内側の撓み板部22の中心は外側の撓み板部23の中心に対しウォーム71をウォームホイール72との噛合点へ偏倚させる側へ偏倚し、内側の撓み板部22の弾性復元力が転がり軸受10を介してウォーム71に加わり、該ウォーム71をウォームホイール72との噛合点へ偏倚させている。
【0027】
凹所21は筒体20の一端に開放され、他端で閉鎖された環状であり、その幅寸法を例えば0.1mm乃至0.5mm程度、好適には略0.3mmとし、さらに、この凹所21によって形成された撓み板部22,23の肉厚を夫々0.5mm乃至2.0mm程度とし、凹所21の幅寸法以内で凹所21の底部分を支点として内側の撓み板部22を撓み可能とし、この撓みにより転がり軸受10を介してウォーム71をウォームホイール72の方向へ偏倚させるようにしてある。
【0028】
外側の撓み板部23は、その一端側と他端側とで肉厚寸法を異ならせ、他端側の肉厚寸法を一端側の肉厚寸法よりも小さくして他端側を一端側に対して撓み可能とし、一端側を前記嵌合孔81に嵌合し、他端側を非嵌合としてある。
【0029】
さらに、内側の撓み板部22の一端部内側には前記転がり軸受10の外輪に当接する当接部25を設け、該当接部25及び軸部71aに突設された鍔部71cによって転がり軸受10の移動を阻止してある。また、前記抜止溝82に嵌合された抜止環13によって筒体20の嵌合孔81からの抜出しが阻止されている。
【0030】
以上の如く構成した電動パワーステアリング装置において、ウォーム71を組み込む場合、第2の転がり軸受11が嵌合されたウォーム71を第2の嵌合孔83から第3の収容部8cに挿入し、第2の転がり軸受11を第2の嵌合孔83に夫々嵌合させ、ねじ環9をねじ孔85に螺着することによりウォーム71のモータ側軸部71bをハウジング8に支持することができるとともに、ウォーム71の軸長方向への移動を規制することができる。
【0031】
次に内側の撓み板部22の中心が外側の撓み板部22の中心に対して前記噛合点側となるようにして筒体20の内側周面を転がり軸受10に嵌合するとともに、外側の撓み板部23の一端側を嵌合孔81に嵌合することにより、筒体20の内側の撓み板部22が凹所21の底部分を支点としてウォームホイール72と反対側へ撓み、該内側の撓み板部22の弾性復元力によって転がり軸受を介してウォーム71をウォームホイール72との噛合点へ偏倚させることができる。
【0032】
このウォーム71の偏倚によりウォーム71及びウォームホイール72の噛合部のバックラッシュ量を少なくすることができ、また、ウォーム71及びウォームホイール72の歯の摩耗量が増大したりすることによって噛合状態が経時変化したときにおいてもバックラッシュ量を少なくすることができる。しかも、ウォーム71がウォームホイール72と噛合する噛合部に加わる噛合反力によってウォーム71がウォームホイール72に対しラジアル方向へ離間するように押圧されたとき、内側の撓み板部22が凹所21内で撓みつつ外側の撓み板部23に当接し、前記内側の撓み板部22の撓み量を制限することができる。従って、ウォームが許容偏倚量を超えて移動することを防止でき、ウォーム71及びウォームホイール72の噛合いを良好にできる。
【0033】
また、筒体20はウォーム71と同心的に形成されているため、該筒体20が嵌合される嵌合孔81を前記ウォーム71が収容される第3の収容部8cとともに加工することができ、さらに、筒体20をウォーム71と同方向に挿入して簡易に組み込むことができる。組み込まれた筒体20は第1の嵌合孔81を閉鎖するため、換言すれば、筒体20が前記収容部8cの蓋部材を兼ねるため、部品点数の削減化及びコストの低減化を図ることができる。
【0034】
また、以上の如く筒体を組み込んだ後、前記抜止溝82に抜止環13を嵌合することによりウォーム71の一端軸部をハウジング8に支持することができるとともに、転がり軸受10及び筒体20の軸長方向への移動を規制することができる。
【0035】
実施の形態2
図5は実施の形態2の筒体の構成を示すもので、(a) は拡大断面図、(b) は(a) のV−V線の断面図である。
この実施の形態2の電動パワーステアリング装置は、実施の形態1の如く環状の凹所21を有する筒体20を用いる代わりに、ウォーム71をウォームホイール72との噛合点へ偏倚させるべき力が発生する第1位置及び該第1位置と反対側の第2位置に弧状の凹所21aと、該凹所21aよりもラジアル方向の内側及び外側で撓みが可能な弧状の撓み板部22a,23aとを有する筒体20aを用いたものである。
【0036】
実施の形態2においては、筒体20aの非凹所部分が転がり軸受10の動き方向を、ウォーム71をウォームホイール72との噛合点へ偏倚させる方向に規制しているため、ウォーム71はウォームホイール72の軸長方向に関して適正な噛合位置を保持することができる。
【0037】
即ち、減速機構7のウォーム71等は、回転中心線に対しその歯すじが回転方向へ捩じれており、ウォーム71からウォームホイール72へ回転トルクが加わるとき、換言すればモータ6の回転によって操舵補助するとき、ウォーム71がウォームホイール72の歯すじに沿ってラジアル方向へ動くように分力(噛合反力)が発生し、該分力によりウォーム71がラジアル方向へ押圧されることになるが、実施の形態2では、転がり軸受10の動き方向を前記凹所21aが設けられた方向に規制し、非凹所方向への動きを防ぐようにしてあるため、ウォーム71の噛合位置をウォームホイール72の軸長方向に関して適正に保持することができる。
【0038】
その他の構成及び作用は実施の形態1と同様であるため、同様の部品については同じ符号を付し、その詳細な説明及び作用の説明を省略する。
【0039】
尚、以上説明した実施の形態において、前記筒体20,20aは合成樹脂製である他、ゴム製、金属製の板ばねであってもよい。また、筒体20,20aが有する凹所21,21aは実施の形態1の如く環状としたり、実施の形態2の如くウォーム71をウォームホイール72の方向へ偏倚させるべき力が発生する第1位置及び該第1位置と反対側の第2位置としたりする他、例えば前記第1位置にのみ設けた構成としてもよい。
【0040】
また、以上説明した実施の形態では、筒体20の内側の撓み板部22を外側の撓み板部22の中心に対し偏倚させたが、その他、内側及び外側の撓み板部22,23を同心とし、前記第1の嵌合孔81を第2の嵌合孔83の中心に対し偏倚させ、筒体20の撓み板部22によって転がり軸受10を介してウォーム71をウォームホイール72の方向へ偏倚させるようにしてもよい。
【0041】
また、以上説明した実施の形態では、ウォーム71の一端の軸部71aをハウジング8に支持する軸受として転がり軸受10を用いたが、その他、この軸受はすべり軸受であってもよい。
【0042】
また、以上説明した実施の形態の減速機構7は、ウォームである駆動歯車71及びウォームホイールである従動歯車72を備えたウォーム歯車である他、ハイポイドピニオンである駆動歯車及びハイポイドホイールである従動歯車を備えたハイポイド歯車であってもよい。さらに、減速機構はベベルギヤであってもよい。
【0043】
【発明の効果】
第1発明によれば、筒体によってバックラッシュ量を少なくすることができるとともに、駆動歯車を収容する静止側部材の加工性及び偏倚手段の組み付け作業性を良好にすることができ、さらに、駆動歯車が許容偏倚量を超えて移動することを防止でき、ウォーム及びウォームホイールの噛合いを良好にできる。
【0044】
第2発明によれば、筒体を成形によって簡易を形成することができ、偏倚手段のコストの低減化を図ることができる。
【0045】
第3発明によれば、凹所よりも外側の撓み板部を撓ませつつ内側の撓み板部を撓ませることができるため、撓み板部の肉厚を減少することなく撓み板部の撓み量に対する弾性復元力を小さくすることができる。
【0046】
第4発明によれば、嵌合部の一端を筒体によって閉鎖することができるため、部品点数の削減化及びコストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電動パワーステアリング装置の断面図である。
【図2】本発明に係る電動パワーステアリング装置の減速機構部分の拡大断面図である。
【図3】本発明に係る電動パワーステアリング装置のウォーム支持部分の拡大断面図である。
【図4】図3のIV−IV線の断面図である。
【図5】本発明に係る電動パワーステアリング装置の実施の形態2の筒体の構成を示すもので、(a) は拡大断面図、(b) は(a) のV−V線の断面図である。
【図6】従来における電動パワーステアリング装置の断面図である。
【図7】従来における電動パワーステアリング装置の減速機構部分の断面図である。
【符号の説明】
6 モータ
8 ハウジング(静止側部材)
10 転がり軸受(軸受)
20 筒体
21 凹所
22 内側の撓み板部
23 外側の撓み板部
71 ウォーム(駆動歯車)
72 ウォームホイール(従動歯車)
81 嵌合部(嵌合孔)
Claims (4)
- 軸受で支持されており、操舵補助用のモータによって回転される駆動歯車と、該駆動歯車に噛合し、舵取機構に繋がる従動歯車と、前記駆動歯車を従動歯車の方向へ偏倚させる偏倚手段とを備え、前記モータの回転によって操舵補助するようにした電動パワーステアリング装置において、前記偏倚手段は前記軸受が嵌合された内側周面及び静止側部材に嵌合された外側周面の間に設けられた弧状の凹所と、該凹所よりもラジアル方向の内側で撓みが可能な弧状の撓み板部とを有する筒体であることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
- 前記凹所は筒体の一端に開放され、他端で閉鎖された環状である請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記筒体は前記凹所よりもラジアル方向の外側で撓みが可能な弧状の撓み板部を有している請求項1又は請求項2記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記静止側部材は前記外側周面が嵌合された嵌合部を前記駆動歯車の軸長方向へ貫通する貫通孔としてあり、前記筒体は一端において前記凹所よりもラジアル方向の内側が閉鎖されている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置。
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