JP3645132B2 - 孔版印刷装置とその制御方法 - Google Patents

孔版印刷装置とその制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、製版された孔版原紙が外周面に巻装されて回転駆動される版胴を備えた孔版印刷装置に関する。とくに本発明は、製版動作の開始ボタンを押してから最初の印刷物が排出されてくるまでの時間が従来よりも短い孔版印刷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
回転駆動される版胴を備えた孔版印刷装置が知られている。この版胴はインク通過性であり、内部にはインク供給手段が設けられている。版胴の外周面にはクランプ手段が設けられている。製版された孔版原紙は、その先端をクランプ手段によって固定され、外周面に巻装される。版胴の近傍には押圧手段が設けられている。印刷用紙は版胴と押圧手段の間に供給され、版胴と押圧手段によって挟まれて搬送される間に印刷される。
【0003】
上述したような輪転式の孔版印刷装置において、印刷用紙に印刷される画像の左右位置を調整するため、版胴の軸方向についての位置を調節できるようにした装置が提案されている。例えば、特許第2542489号には、版胴を軸方向に移動可能とし、駆動手段でこれを同方向に移動させる左右方向(軸方向)の位置調整装置が開示されている。
【0004】
また、特開平7−1817号にも、版胴の軸方向の位置を調整できる構造を備えた孔版印刷装置が開示されている。この装置では、操作者が製版ボタンを押すと、次のような製版動作が開始される。即ち、版胴が軸方向の原点(ホームポジション)に復帰し、原稿が読み込まれ、前に使用された孔版原紙が廃棄され、新しい孔版原紙が製版されて原点にある版胴に巻きつけられる。
【0005】
上述した孔版印刷装置において、製版ボタンを押した後に版胴が軸方向の原点に戻るのは、この原点が、製版された孔版原紙を版胴に装着する際の版胴の基準位置だからである。即ち、製版された孔版原紙は版胴に対して常に所定の状態で巻きつける。製版された孔版原紙は、軸方向に関して版胴の同じ位置に巻きつけられる。版胴の軸方向の所定位置に孔版原紙を巻きつけた後、版胴自体をを軸方向に移動させる。これによって、送り込まれてくる印刷用紙に対する版胴の軸方向の位置、即ち孔版原紙の軸方向の位置を調整し、印刷用紙に形成される画像の左右位置を調整する。
【0006】
従って、次の原稿を孔版印刷する場合には、再び軸方向の調整を行わなければならない。版胴の軸方向の位置を前の原稿の印刷で設定したままにしておくと、次の原稿の印刷において印刷画像の左右位置に不都合が生じる場合がある。例えば、次の原稿の印刷において、印刷しようとする画像の一部が印刷用紙から左右方向にはみだして印刷されなくなってしまう場合がある。これを画像欠けと呼ぶ。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した孔版印刷装置においては、製版動作の開始ボタンを押してから最初の印刷物(ファーストプリント)が排出されてくるまでの時間(ファーストプリント時間)が短いほど、印刷装置として性能が良いものと考えられている。
【0008】
上述したように、従来の孔版印刷装置における製版動作には、版胴の原点への復帰、原稿の読み込み、孔版原紙への書き込み、使用済みの孔版原紙の廃棄(排版)、製版された孔版原紙の版胴への装着が含まれる。ところが、版胴を原点に復帰させる動作は、その他の版胴の動作と同時に行わせることができない。例えば排版は版胴を回転させながら孔版原紙を剥ぎ取っていく動作であり、原点復帰は版胴を軸方向に移動させる動作である。このため、両方の動作を同時に行うと、孔版原紙の剥ぎ取りがうまく行われず、排版ミスが生じやすくなる。このため従来は、製版動作において版胴の原点復帰動作は他の版胴の動作と別に行わなければならず、従ってその分だけファーストプリント時間が長くなるという問題があった。
【0009】
本発明は、前述したような軸方向の位置調整機構を有する孔版印刷装置において、ファーストプリント時間を短くすることを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載された孔版印刷装置は、周壁の外周面に製版された孔版原紙が巻装されて自身の中心軸線の周りに回転駆動されるとともに、前記中心軸線上に原点を有し、前記原点を含む所定範囲内で前記中心軸線に沿って移動可能な版胴(10)と、前記版胴による印刷が停止した時に前記版胴を前記原点に移動する制御手段(15)とを有している。
【0011】
請求項2に記載された孔版印刷装置は、周壁の外周面に製版された孔版原紙が巻装されて自身の中心軸線の周りに回転駆動されるとともに、前記中心軸線上に原点を有し、前記原点を含む所定範囲内で前記中心軸線に沿って移動可能な版胴(10)と、前記版胴の近傍に設けられ、供給された印刷用紙を前記版胴との間に挟んで搬送することにより印刷用紙に印刷を施す押圧手段(紙胴8)と、前記版胴を回転駆動する回転駆動手段(11)と、前記版胴を前記中心軸線に沿って移動させる軸方向駆動手段(13、パルスモータ103)と、前記回転駆動手段を制御するとともに、前記版胴と前記押圧手段による印刷が停止した時に、前記軸方向駆動手段(13、パルスモータ103)を制御して前記版胴(10)を前記原点に移動する制御手段(15)とを有している。
【0012】
請求項3に記載された孔版印刷装置は、請求項2記載の孔版印刷装置において、孔版原紙を製版する製版手段(19)と、前記版胴(10)の外周面に設けられて製版された孔版原紙の先端部を固定する固定手段(クランプ板9)とをさらに有し、前記原点が、製版された孔版原紙を前記固定手段によって固定する際の基準位置であることを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載された孔版印刷装置は、請求項3記載の孔版印刷装置において、印刷用紙の供給方向について前記版胴(10)と前記押圧手段(紙胴8)の前方に設けられ、供給される印刷用紙を検知して信号を出力する給紙センサ(4)と、印刷用紙の供給方向について前記版胴(10)と前記押圧手段(紙胴8)の後方に設けられ、印刷された印刷用紙を検知して信号を出力する排紙センサ(6)とをさらに有し、前記制御手段(15)は、前記給紙センサと前記排紙センサからそれぞれ送られてくる前記信号の時間差によって印刷用紙が正常に搬送されているか否かを判断し、正常に搬送されていないと判断した時に前記回転駆動手段(11)を停止して前記版胴と前記押圧手段による印刷を停止させることを特徴としている。
【0014】
請求項5に記載された孔版印刷装置は、請求項3記載の孔版印刷装置において、印刷用紙の供給方向について前記版胴(10)と前記押圧手段(紙胴8)の後方に設けられ、印刷された印刷用紙を検知して信号を出力する排紙センサ(6)をさらに有し、前記制御手段(15)は、印刷すべき印刷用紙の枚数が設定されるメモリを有しており、さらに前記排紙センサから送られてくる前記信号をカウントし、このカウント数が前記メモリに設定されている枚数に達した時に前記回転駆動手段(11)を停止して前記版胴と前記押圧手段による印刷を停止させることを特徴としている。
【0015】
請求項6に記載された孔版印刷装置は、請求項3記載の孔版印刷装置において、前記制御手段(15)に接続され、前記版胴(10)と前記押圧手段(紙胴8)による印刷を停止させるための停止信号を前記制御手段(15)に入力できる入力手段(操作パネル17)をさらに有し、前記制御手段は、前記入力手段から前記停止信号が入力された時に前記回転駆動手段(11)を停止して前記版胴と前記押圧手段による印刷を停止させることを特徴としている。
【0016】
請求項7に記載された孔版印刷装置の制御方法は、周壁の外周面に製版された孔版原紙が巻装されて自身の中心軸線の周りに回転駆動されるとともに、前記中心軸線上に原点を有し、前記原点を含む所定範囲内で前記中心軸線に沿って移動可能な版胴(10)と、前記版胴の近傍に設けられ、供給された印刷用紙を前記版胴との間に挟んで搬送することにより印刷用紙に印刷を施す押圧手段(紙胴8)と、前記版胴を回転駆動する回転駆動手段(11)と、前記版胴を前記中心軸線に沿って移動させる軸方向駆動手段(13、パルスモータ104)とを有する孔版印刷装置の制御方法である。その特徴は、前記版胴(10)と前記押圧手段(紙胴8)による印刷が停止した時に、前記軸方向駆動手段(13、パルスモータ104)を制御して前記版胴を前記原点に移動することにある。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態の一例を図1〜図4を参照して説明する。
図1を参照して本孔版印刷装置の全体の構成を説明する。
版胴10は、所定間隔をおいて配置された二枚の円盤形の側板3と、これらを接続する剛体のクランプベース5を有している。さらに、二枚の側板3の外周面には、インキ通過性で可撓性の周壁7が巻かれている。周壁7はスクリーン部材により構成されている。スクリーン部材は、ステンレスワイヤなどの線材を網状に織製したものである。周壁7は、径方向に膨出変形可能である。
【0018】
クランプベース5には孔版原紙の先端部をクランプする固定手段としてのクランプ板9が取り付けられている。孔版原紙はクランプ板9によりクランプベース5に係止され、周壁7の外周面に巻き付け装着される。
【0019】
版胴10は当該版胴10を軸線方向に貫通する中心軸110の周りに回転可能に支持されている。版胴10は回転駆動機構によって図1において反時計周り方向に回転駆動される。
【0020】
本装置の版胴10は中心軸110の周りに回転駆動手段11によって回転する。また、本装置の版胴10は中心軸110に沿って軸方向駆動手段13によって移動する。軸方向駆動手段13による版胴10の軸方向の移動は、印刷用紙に対する印刷画像の左右方向(軸方向)の位置調整のためである。
【0021】
版胴10内にはインキ供給手段130が設けられている。インキ供給手段130は、周壁7の内周面にインキを供給する中押しロール150と、中押しロール150の外周面にインキを供給するドクターロール170を有している。中押しロール150は、版胴10の中心軸110に平行である。中押しロール150は図示しない揺動機構に取り付けられており、昇降可能である。そして、中押しロール150は版胴10の回転に同期して昇降駆動される。印刷時には周壁7の内周面を外向きに押圧し、非印刷時には周壁7の内周面から離れる。
【0022】
版胴10の下方には押圧手段としての紙胴8が自身の中心軸19の周りに回転可能に支持されている。紙胴8は版胴10と同一外径である。紙胴8と版胴10は平行である。紙胴8と版胴10は、回転方向について所定の位相となるように配置されている。紙胴8と外方に変形していない版胴10との間には所定の間隔がある。後述するように、紙胴8は版胴10を駆動する駆動機構によって図1において時計周り方向に版胴10に同期して回転駆動される。
【0023】
紙胴8の外周面には凹部21が形成されている。図1に示すように、凹部21とクランプ板9が対応するように紙胴8と版胴10の回転方向の位置関係が定められている。紙胴8と版胴10が回転駆動した時、クランプ板9は紙胴8に衝突しない。紙胴8の外周面には、印刷用紙の先端部を掴むための爪23が開閉可能に設けられている。
【0024】
給紙部25は、印刷用紙を積載する給紙台27と、給紙台27から印刷用紙を一枚づつ取り出す給紙ロール29および紙捌きロール31と、印刷用紙を所定タイミングで紙胴8に送り込むタイミングロール対33等を有している。また、紙捌きロール31とタイミングロール対33の間には用紙ガイド部材44がある。用紙ガイド部材44には印刷用紙が保持位置へ送り込まれたことを検出する光学式の給紙センサ4が設けられている。
【0025】
排紙部35は、排紙ピンチロール37と、印刷用紙を紙胴8から引き離す用紙分離爪39と、印刷用紙を用紙飛翔台41へ送り出す排紙ピンチロール対43と、印刷済みの印刷用紙を載置する排紙台45等を有している。用紙飛翔台41には、印刷用紙が飛翔台41から排紙台45へ向けて飛翔したことを検出する光学式の排紙センサ6が設けられている。
【0026】
製版部19は、サーマルヘッドとプラテンローラからなる製版手段21を有している。製版された孔版原紙23は、原点に設定された版胴10に図示しない搬送手段により搬送される。孔版原紙の先端は版胴10のクランプ板9により保持される。
【0027】
図1に示すように、本孔版印刷装置は、本装置の各部を統括的に制御するための制御手段15を有している。制御手段15は、印刷すべき印刷用紙の枚数等の印刷条件が設定されるメモリを有している。制御装置には、給紙センサ4と排紙センサ6が接続されている。制御手段15には、入力手段としてキーパネル等の操作パネル17が設けられている。操作パネル17には、製版ボタン、印刷ボタン、停止ボタンなどの操作ボタンが設けられている。制御手段15は、回転駆動手段11と軸方向駆動手段13に接続されている。制御手段15は、給紙センサ4と排紙センサ6からの信号や操作パネル17から入力された操作信号等に応じて、回転駆動手段11と軸方向駆動手段13を制御する。
【0028】
次に、版胴10とその周辺の機構についてさらに詳しく説明する。
図2及び図3に示すように、版胴10は版胴支持装置24に支持されている。版胴支持装置24内に支持された版胴10は、軸線方向には固定され、中心軸の周りには回転可能である。版胴支持装置24は、一対のサイドフレーム12,12、端板14,16、持ち上げ把手18、軸受20,22等から構成されている。
【0029】
本孔版印刷装置1は印刷機枠体32を有している。印刷機枠体32の一部である側板34,36には一対の固定レール30が固定されている。各固定レール30には、それぞれ中間移動レール26が長手方向に沿って移動可能に支持されている。一対の中間移動レール26,26には、版胴支持装置24がサイドフレーム12の懸架金具28を介して懸架されている。
【0030】
版胴支持装置24の端板16には引出し把手38が設けられている。取扱者が版胴支持装置を版胴10の軸線に沿って手動で移動させる場合には、引出し把手38を持てば作業が容易になる。
【0031】
図2及び図3に示す状態では、版胴支持装置24は、正規の装着位置よりもやや外方(引き出し方向)に移動した位置にあり、本孔版印刷装置1の印刷機枠体32に懸架されている。この時、版胴10は、孔版印刷装置1の回転駆動機構には連結されていないので、回転はしない。この状態から、更に版胴支持装置24を印刷機枠体32に対して図にて左方へ移動すれば、版胴支持装置24は完全に印刷機の側板36から外方へ引出される。この状態で取扱者が持ち上げ把手18を手で掴んで上方へ引き上げれば、一対のサイドフレーム12が中間移動レール26から外れる。これによって、版胴支持装置24に支持された版胴10は、孔版印刷装置1から完全に取り外される。
【0032】
ここで、図1に示した回転駆動手段11の駆動力を版胴10に伝える回転駆動機構について説明する。
版胴10の2つの側板3,3の外面には、それぞれ駆動歯車46及び48が固定されている。版胴支持装置の端板14,16の間には、版胴10の中心軸に平行に、回転軸54が回動可能に設けられている。回転軸54の両端には、駆動歯車46,48に噛合うピニオン50,52が固定されている。ピニオン50,52の回転軸54の端部には、ジョイント65が形成されている。ジョイント65は一対の凸部を有している。版胴10を印刷機枠体32の内部に向けて押込めば、このジョイント65は、図1に示した前記回転駆動手段11に連結される。図2中には回転駆動手段11は示されていない。回転駆動手段11が回転軸54を駆動すれば、版胴10は回転駆動される。
【0033】
版胴支持装置24を、図2及び3に示す位置から図にて右方へ移動させる。即ち、印刷機枠体32の内部に向けて押込む。これによって版胴10は、孔版印刷装置1の各部と機械的及び電気的に連結される。
【0034】
ここで、図1に示した軸方向駆動手段13の駆動力を版胴10に伝える機構について説明する。
まず、軸受20は、印刷機枠体の側板34に設けられた環状の軸受支持部56に嵌合する。版胴支持装置24の軸受20には、版胴10の中心軸線に一致して係合ロッド58が突出して取り付けられている。この係合ロッド58は、印刷機枠体32の側板34に設けられたソケット60に嵌合する。このソケット60が、図1に示した軸方向駆動手段13の駆動力を版胴10に伝達する。
【0035】
係合ロッド58の先端には環状溝72が形成されている。ソケット60には横方向溝74が形成されている。係合ロッド58をソケット60内に一杯に挿入すると、環状溝72と横方向溝74は一致する。ソケット60の近傍には係止片76が設けられている。係止片76は、横方向溝74内に入って環状溝72に嵌合し、係合ロッド58とソケット60を抜けないように固定する。係止片76はリンク78に連結されている。リンク78はソケット60に固定されたブラケット80に枢軸82で枢支されている。リンク78の一端は、ブラケット80に引張りコイルばねで連結されている。引張りコイルばねは、係止片76を横方向溝74内へ押込む方向に付勢する。リンク78の他端は、ソケット60に取り付けられたソレノイド86の作動子と枢軸で連結されている。ソレノイド86が励磁されると、リンク78は引張りコイルばねのばね力に抗して枢軸82の周りに回動する。これによって係止片76の先端は横方向溝74から引き抜かれる。これで係合ロッド58とソケット60の係合が解除される。
【0036】
ソケット60は、係合ロッド58が挿入される側と反対側の端部に、ねじ孔が形成されている。該ねじ孔には歯車98と一体になったねじ軸99が係合している。歯車98とねじ軸99は、軸受手段によって印刷機枠体32に回転可能に支持されており、軸線方向には移動しない。歯車98は歯車102により駆動される。歯車102は、図1に示した軸方向駆動手段13であるパルスモータ104の出力軸に取りつけられている。軸方向駆動手段13であるパルスモータ104を駆動すれば、歯車102,98及びねじ軸99を介してソケット60が軸方向に移動し、従ってソケット60に連結された版胴10も軸方向に移動する。軸方向駆動手段13であるパルスモータ104をパルス制御することにより、版胴10の軸方向の位置を任意に調整することができる。
【0037】
本例では、製版された孔版原紙を版胴10に装着する際の版胴10の基準位置が、版胴10の中心軸線上のある位置に設定されている。この基準位置を原点と呼ぶ。本例では、版胴10が原点にあるか否かを検出する原点検出手段が設けられている。
【0038】
版胴10の原点検出手段を説明する。まず、ブラケット80には舌片部92が設けられている。そして、印刷機枠体32には光センサ94が固定されている。これら舌片部92と光センサ94が原点検出手段を構成している。ソケット60は、ブラケット80及びソレノイド86を伴い、図示しない案内手段によりその軸線方向に沿って移動できる。原点検出手段は、印刷機枠体32に設定された原点にソケット60があるか否かを検出する。この原点検出手段からの信号は制御手段15に送られる。
【0039】
制御手段15は、この原点検出手段からの信号によって版胴10が原点にあるか否かを判断する。版胴10が原点にない場合、制御手段15はパルスモータ104を駆動して版胴10を原点に設定する。この場合、版胴10を原点から原点以外の第2の位置に設定した時のパルスモータ104の駆動方向と駆動量を制御手段15に記憶させておき、この記憶に基づいて版胴10を第2の位置から原点に復帰させてもよい。版胴10が原点に設定されれば、原点検出手段である光センサ94が信号を出力する。この信号に基づいて制御手段15はパルスモータ104の駆動を停止する。
【0040】
図2に示すように、ソケット60にはブラケット62が固定されている。このブラケット62には版胴有無センサ66と、版胴10に押されて版胴有無センサ66によって検出されるロッド63が設けられている。本例の版胴有無センサ66は光センサであり、ブラケット60に固定されている。ロッド63は版胴10の軸方向に平行に配置され、同方向に移動可能である。ロッド63とブラケット62の間にはばね68が介装されている。ロッド63は、版胴10に押されていない時にはばねによって版胴有無センサ66に検知されない位置に設定され、版胴10に押されて移動すると版胴有無センサ66の光路を遮断して検知される。この版胴有無センサ66は、版胴10が孔版印刷装置1内の作動位置(又はその近傍)にあるか否かを検出する。版胴10の軸線方向において作動位置の前後1mm以内に版胴10があればドラム有り信号(ON信号)を出力する。版胴有無センサ66及びロッド63は、ソケット60に取りつけられており、従ってソケット60とともに移動する。このため、ソケット60の移動によって版胴10の軸方向の位置を調整した場合にも、調整して新たに設定された位置を中心として版胴10の有無を検知することができる。
【0041】
図1において、紙胴8の凹部21は真上にあり、版胴10のクランプ手段は凹部21に対応した真下にある。これが、版胴10と紙胴8の正規の位相関係である。図1に示した紙胴8と版胴10の位置を定位置と呼ぶ。
【0042】
次に、以上説明した孔版印刷装置における制御手段15の作用を説明する。特に、何らかの理由で印刷動作が停止した場合の制御手段15による版胴10の制御について図4の流れ図を参照して説明する。
【0043】
図4のステップS1において印刷動作が開始される。
版胴10と紙胴8が同期して回転する。これに合わせて給紙部25から印刷用紙が一枚づつ取り出される。印刷用紙は、その先端を紙胴8の爪23に保持され、紙胴8の回転によって運ばれる。これに同期して版胴10の中押しローラ15が周壁7を外方に押し出す。印刷用紙は、紙胴8と版胴10の変形した部分の孔版原紙との間に挟まれて搬送され、印刷される。印刷された印刷用紙は排紙部35によって版胴10から剥がされ、排紙台45に排出される。
【0044】
図4のステップS2は何らかの理由で制御手段15が印刷動作を停止させる場合を示す。制御手段15が印刷動作停止命令を出すと、図4のステップS3において、版胴10の駆動手段(印刷部)と給紙部25の駆動手段が停止する。次に例示するような1)〜3)の場合に制御手段15は版胴10を停止させる。
【0045】
1)制御手段15は、給紙センサ4と排紙センサ6から送られてくる信号の時間差によって印刷用紙が正常に搬送されているか否かを判断する。制御手段15は、印刷用紙が正常に搬送されていないと判断した時、例えば印刷装置8が搬送経路に詰まった場合には印刷動作を停止する。版胴10の駆動手段と給紙部の駆動手段を停止する。
【0046】
2)制御手段15は、排紙センサ6から送られてくる信号をカウントし、メモリに設定された印刷枚数と比較する。印刷枚数は操作パネル17から操作者が入力する。このカウント数がメモリに設定された印刷枚数に達した時、制御手段15は印刷動作を停止する。即ち、版胴10の駆動手段と給紙部25の駆動手段を停止する。
【0047】
3)制御手段15は、操作パネル17の停止ボタンが押された時に、回転駆動手段11を停止して印刷動作を停止する。即ち、版胴10の駆動手段と給紙部25の駆動手段を停止する。
【0048】
図4のステップS4に示すように、制御手段15は版胴10の軸方向の位置を確認する。版胴10が原点にある場合には、版胴10の制御は行わず、ステップS5に示すように印刷動作が終了する。
【0049】
図4のステップS4において、版胴10が原点にない(非原点位置にある)と制御手段15が判断した場合には、ステップS6に示すように版胴原点位置復帰動作を行う。即ち、軸方向駆動手段13であるパルスモータ104を制御し、版胴10を軸線方向に移動させて原点に設定する。
【0050】
前述した1)〜3)の理由のいずれか、又はその他の理由であっても、とにかく印刷中の版胴10が回転を停止した時、版胴10が原点になければ、制御手段15は版胴10を軸線方向に移動させて原点に設定する。
【0052】
以上説明した孔版印刷装置における製版工程を説明する。
操作パネル17の製版ボタンを押す。この時、版胴10はすでに原点に設定されている。図示しない読み取り装置が図示しない原稿を読み取って画像信号を出力する。この画像信号に応じて孔版原紙が製版される。その間、前の印刷工程で使用された孔版原紙が版胴10から剥がされて除去される。製版された孔版原紙が、原点10にある版胴10に送られる。孔版原紙の先端部がクランプ板9に保持される。版胴10が回転して孔版原紙がその外周面に巻き付けられる。その時、版胴10と紙胴8の間に印刷用紙が供給される。孔版原紙は印刷用紙を介して紙胴8によって版胴10に押し付けられ、皺なく着版する。印刷用紙にはこの孔版原紙による最初の印刷が施される。この印刷物がファーストプリントである。ファーストプリントの印刷結果に基づいて版胴10の軸方向の位置や、濃度の調整が行われる。
【0053】
【発明の効果】
本発明の孔版印刷装置では、印刷が停止した場合には版胴が必ず原点に復帰する。このように印刷が停止した時点で版胴を原点に復帰させておけば、次に製版を行う場合に、その製版工程の中で版胴をあらためて原点に復帰させる必要がない。
【0054】
従来の孔版印刷装置では、操作パネルの製版ボタンを押して製版工程に入ってから版胴が原点に復帰していた。製版工程で版胴が軸方向に移動している間は、版胴を回転させて排版や着版を行うことができない。即ち、従来の孔版印刷装置による製版工程では、版胴の原点復帰動作は他の動作と別に独立して行わざるを得ず、よって前述した通り製版工程の全体に要する時間が長くなるという問題があった。
【0055】
これに対し、本例の孔版印刷装置によれば、前の印刷工程が終了した(あるいは停止した)時点で版胴を原点に戻しているので、次に製版工程を開始するときには版胴はすでに原点に設定されていて、あらためて版胴を軸方向に移動させる必要がない。よって、この製版工程では直ちに排版、製版、着版の動作が実行できる。製版工程に要する時間が従来よりも短くなる。ファーストプリント時間が従来よりも短くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例である孔版印刷装置の全体の構成を示す図である。
【図2】本例の孔版印刷装置における版胴の平面図である。
【図3】本例の孔版印刷装置における版胴の正面図である。
【図4】本例における制御手順を示す図である。
【符号の説明】
4 給紙センサ
6 排紙センサ
8 押圧手段としての紙胴
9 固定手段としてのクランプ板
10 版胴
11 回転駆動手段
13 軸方向駆動手段
15 制御手段
17 入力手段としての操作パネル
19 製版手段
103 軸方向駆動手段としてのパルスモータ

Claims (7)

  1. 製版された孔版原紙が周壁の外周面に巻装されて自身の中心軸線の周りに回転駆動されるとともに、前記中心軸線上に原点を有し、前記原点を含む所定範囲内で前記中心軸線に沿って移動可能な版胴と、
    前記版胴による印刷が停止した時に前記版胴を前記原点に移動する制御手段と、
    を有する孔版印刷装置。
  2. 製版された孔版原紙が周壁の外周面に巻装されて自身の中心軸線の周りに回転駆動されるとともに、前記中心軸線上に原点を有し、前記原点を含む所定範囲内で前記中心軸線に沿って移動可能な版胴と、
    前記版胴の近傍に設けられ、供給された印刷用紙を前記版胴との間に挟んで搬送することにより印刷用紙に印刷を施す押圧手段と、
    前記版胴を回転駆動する回転駆動手段と、
    前記版胴を前記中心軸線に沿って移動させる軸方向駆動手段と、
    前記回転駆動手段を制御するとともに、前記版胴と前記押圧手段による印刷が停止した時に、前記軸方向駆動手段を制御して前記版胴を前記原点に移動する制御手段と、
    を有する孔版印刷装置。
  3. 孔版原紙を製版する製版手段と、前記版胴の外周面に設けられて製版された孔版原紙の先端部を固定する固定手段とをさらに有し、
    前記原点が、製版された孔版原紙を前記固定手段によって固定する際の基準位置である請求項2記載の孔版印刷装置。
  4. 印刷用紙の供給方向について前記版胴と前記押圧手段の前方に設けられ、供給される印刷用紙を検知して信号を出力する給紙センサと、印刷用紙の供給方向について前記版胴と前記押圧手段の後方に設けられ、印刷された印刷用紙を検知して信号を出力する排紙センサとをさらに有し、
    前記制御手段は、前記給紙センサと前記排紙センサからそれぞれ送られてくる前記信号の時間差によって印刷用紙が正常に搬送されているか否かを判断し、正常に搬送されていないと判断した時に前記回転駆動手段を停止して前記版胴と前記押圧手段による印刷を停止させることを特徴とする請求項3記載の孔版印刷装置。
  5. 印刷用紙の供給方向について前記版胴と前記押圧手段の後方に設けられ、印刷された印刷用紙を検知して信号を出力する排紙センサをさらに有し、
    前記制御手段は、印刷すべき印刷用紙の枚数が設定されるメモリを有しており、さらに前記排紙センサから送られてくる前記信号をカウントし、このカウント数が前記メモリに設定されている枚数に達した時に前記回転駆動手段を停止して前記版胴と前記押圧手段による印刷を停止させることを特徴とする請求項3記載の孔版印刷装置。
  6. 前記制御手段に接続され、前記版胴と前記押圧手段による印刷を停止させるための停止信号を前記制御手段に入力できる入力手段をさらに有し、
    前記制御手段は、前記入力手段から前記停止信号が入力された時に前記回転駆動手段を停止して前記版胴と前記押圧手段による印刷を停止させることを特徴とする請求項3記載の孔版印刷装置。
  7. 製版された孔版原紙が周壁の外周面に巻装されて自身の中心軸線の周りに回転駆動されるとともに、前記中心軸線上に原点を有し、前記原点を含む所定範囲内で前記中心軸線に沿って移動可能な版胴と、
    前記版胴の近傍に設けられ、供給された印刷用紙を前記版胴との間に挟んで搬送することにより印刷用紙に印刷を施す押圧手段と、
    前記版胴を回転駆動する回転駆動手段と、
    前記版胴を前記中心軸線に沿って移動させる軸方向駆動手段と、
    を有する孔版印刷装置の制御方法において、
    前記版胴と前記押圧手段による印刷が停止した時に、前記軸方向駆動手段を制御して前記版胴を前記原点に移動することを特徴とする孔版印刷装置の制御方法。
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